(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】食品組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20230418BHJP
A23D 7/005 20060101ALI20230418BHJP
A23G 9/46 20060101ALI20230418BHJP
A23D 9/007 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A23L5/00 L
A23D7/005
A23G9/46
A23D9/007
(21)【出願番号】P 2019566828
(86)(22)【出願日】2018-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2018064881
(87)【国際公開番号】W WO2018224541
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-06-03
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ベリンガー, ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】デストリバッツ, マチュー, ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】デュボワ, セドリック
(72)【発明者】
【氏名】デュパ-ラングレー, マリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ムニエ, ヴィンセント, ダニエル, モーリス
(72)【発明者】
【氏名】レイ, ジョイディープ
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトハウス, アンドリュー, スティーブン
【審査官】山本 英一
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-505624(JP,A)
【文献】特表2013-539656(JP,A)
【文献】国際公開第00/011973(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0136182(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0143312(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L,A23D,A23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
20℃で柔らかい食感を有する食品組成物であって、
前記食品組成物は、連続脂肪相中における多孔性粒子の分散を含み、
前記粒子は、甘味料と、増量剤と、所望により界面活性剤とを含む非晶質連続相を含み、
前記食品組成物の前記食感は、20℃で1500g未満の最大貫入力を示し、
前記連続脂肪相が、シアバター、コクムバター、サルバター、ココアバター、パーム油、藻類油、及びこれらの組み合わせのステアリン画分又は中鎖画分からなる群から選択される高融点脂肪2~30重量%と、
高オレイン酸ヒマワリ油、高オレイン酸ベニバナ油、高オレイン酸大豆油、高オレイン酸菜種油、高オレイン酸藻類油、オリーブ油、マカダミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、アボカド油、ヒマワリ油、菜種油、大豆油、ブドウ種子油、綿実油、コーン油、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される低融点脂肪70~98重量%と、を含む、食品組成物。
【請求項2】
前記粒子が、10~80%の閉鎖気孔率を有する、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項3】
前記粒子が、微細化されている、請求項1又は2に記載の食品組成物。
【請求項4】
前記高オレイン酸菜種油が、高オレイン酸キャノーラ油である、請求項1~3のいずれか一項に記載の食品組成物。
【請求項5】
前記連続脂肪相が、含気されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の食品組成物。
【請求項6】
前記連続脂肪相が、35℃~80℃の融点を有する高融点脂肪と、15℃~30℃の融点を有する中融点脂肪と、-50℃~5℃の融点を有する低融点脂肪とを含む、請求項5に記載の食品組成物。
【請求項7】
前記粒子の前記非晶質連続相が、スクロースと脱脂乳とを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の食品組成物。
【請求項8】
前記粒子の前記非晶質連続相が、部分的に凝集したタンパク質を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の食品組成物。
【請求項9】
ヘーゼルナッツ及び/又はココアを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の食品組成物。
【請求項10】
前記食品組成物が、菓子フィリング又はスプレッドである、請求項1~9のいずれか一項に記載の食品組成物。
【請求項11】
20℃で柔らかい食感を有する請求項1~10のいずれか一項に記載の食品組成物の製造方法であって、前記食品組成物の前記食感は、20℃で1500g未満の最大貫入力を示すものであり、前記方法は、
a)甘味料と、増量剤と、所望により界面活性剤とを含む混合物を、高圧にさらす工程と、
b)前記混合物にガスを添加する工程と、
c)前記混合物を乾燥させて、連続非晶質相を含む多孔性粒子を形成する工程と、
d)前記多孔性粒子を脂肪と混合する工程と、
を含む、方法。
【請求項12】
工程dで作製された混合物が、微細化される、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
工程dにおいて、前記粒子が、粉乳、結晶性スクロース、ヘーゼルナッツ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される成分と更に混合される、請求項
11又は12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品組成物、特に非晶質連続相を有する多孔性粒子を含む柔らかい食品組成物に関する。本発明の更なる態様は、甘味知覚性の増強されたスプレッド、及び柔らかい食感を有する食品組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康志向の消費者により、食生活における糖摂取の低減への関心が高まっており、糖の量がより少ない食品製品が強く要望されるようになっている。しかしながら、糖は重要な食品原料であり、食品製品に天然の甘味を付与するのに加えて、かさ高さを付与するようにも機能し、したがって最終的な食品製品の構造、体積、及び口当たりにおいて重要な役割を果たす。
【0003】
スクロースは、消費者に強く好まれる甘味を食品製品にもたらす天然の糖甘味料であるが、高カロリーでもあることから、より健康的で、ノンカロリー又は低カロリーである代替甘味料が強く求められている。当該技術分野では、例えば、天然の糖(スクロース)を置き換えるのに人工甘味料又は糖アルコールを使用するなど、食品製品中の糖の置き換え又は低減を用いる多くのアプローチが知られている。その他のアプローチには、スクロースを置き換えるのにノンカロリー繊維又は低カロリー繊維などの増量剤を使用することなどがある。しかしながら、これらのアプローチには欠点もあり、例えば、多くの糖アルコールは望ましくない緩下効果を有することが知られており、更には、人工甘味料は、添加物を含まない(clean label)製品を好む消費者からはよく思われていない。食品製品中のスクロースを置き換えるために増量剤を使用することに関しても、いくらかの欠点があり、それは主として甘味に対する望ましくない影響、通常は甘みの低下に関連する。
【0004】
したがって、食品製造の分野の当業者には、食品組成物中の糖の代替又は減量により、通常は、香り並びにその他の味覚構成要素に負の影響が生じることが一般によく知られている。例えば、糖代替物は、甘みの知覚の発生を遅らせ、かつ天然の糖と比較して甘みを長時間持続させるため、食品組成物の味わいのバランスに変化が生じる場合がある。
【0005】
これに加え、糖代替物では、天然の糖と同様の甘い味わいを送達することはできず、かつ金属味、冷感、収斂性、甘草のような食感、及び後味の苦さも呈する。
【0006】
含気組成物は、食品産業が特に関心を寄せており、新たな食感及び感覚特性を提供する可能性がある。人々が食生活において摂取する脂肪の量についての懸念が高まっている。脂肪含有材料に空気を組み込むことは、脂肪含有量を減少させつつ製品体積を維持する方法を提供する。
【0007】
甘みの知覚に悪影響を及ぼすことなく、かつ/又は上記の従来の解決法に関連する問題をいずれも有することなく、糖レベルがより低い、甘味のある食品組成物を提供することが業界で必要とされている。このような食品組成物は、消費者にとって馴染みがある成分を含有し、人工甘味料を含まないことが望ましい。
【0008】
本発明の目的は、現況技術を改良し、改善された解決策を提供して上記の不都合の少なくともいくつかを克服する、又は少なくとも有用な代替物を提供することである。本明細書における先行技術文献のいかなる参照も、かかる先行技術が周知であること、又は当分野で共通の一般的な認識の一部を形成していることを認めるものとみなされるべきではない。本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」という語、及び同様の語は、排他的又は網羅的な意味で解釈されるべきではない。換言すれば、これらは「含むが、これらに限定されない」ことを意味することを目的としている。本発明の目的は、独立請求項の主題によって達成される。従属請求項は、本発明の着想を更に展開するものである。
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明は、第1の態様において、20℃で柔らかい食感を有する食品組成物を提供し、当該食品組成物は、連続脂肪相における多孔性粒子の分散を含み、粒子は、甘味料と、増量剤と、所望により界面活性剤とを含む非晶質連続相を含む。第2の態様では、本発明は、40~65%のスクロース含有量を有する対照スプレッドと同じ甘味を有するスプレッドであって、スクロース含有量が対照と比較して少なくとも20%低減されており、スクロース又はラクトース以外の単糖類、二糖類又は三糖類を含有せず、かつ糖アルコール又は高強度甘味料を含有しない、スプレッドに関する。第3の態様では、本発明は、20℃で柔らかい食感を有する食品組成物を製造する方法に関し、当該プロセスは、a)甘味料と、増量剤と、所望により界面活性剤とを含む混合物を高圧にかける工程と、b)上記混合物にガスを添加する工程と、c)上記混合物を噴霧及び乾燥させて、連続非晶質相を含む多孔性粒子を形成する工程と、d)粒子を脂肪と混合する工程と、を含む。
【0010】
驚くべきことに、甘味料と、増量剤と、界面活性剤とを含む非晶質多孔性粒子を使用して、菓子用フィリング又はスプレッドなどの柔らかい食品組成物を調製することによって、フィリング又はスプレッドの甘味に悪影響を及ぼすことなく、甘味料(例えば、スクロース)の総量を低減できることが、本発明者らによって見出された。等体積で、含気非晶質多孔性粒子は、従来の結晶性スクロースと比較して少なくとも同等の甘味をもたらした。したがって、本発明の組成物による多孔性粒子は、人工甘味料(例えば高強度甘味料)を使用する必要なく、及び/又はシリカ若しくはセルロースなどの材料を使用する必要なく、糖含有量の低減をもたらし得る。
【0011】
理論に束縛されるものではないが、非晶質状態の甘味料(例えばスクロース)を含み、かつ多孔性(特に内部閉鎖気孔)を有する多孔性粒子は、同様のサイズの結晶性糖粒子よりも迅速に溶解する材料を提供すると考えられる。消費した際のこの口腔内での迅速な溶解により、甘味の知覚が強化され、確実により多くの糖が溶解し、かつ嚥下により味がわからなくなるのではなく舌に達することになる。
【0012】
粒子の多孔性の性質は、フィリングに含気させる役割、又はフィリングの密度を減少させる役割を果たす。非晶質多孔性粒子から得られる含気は、熱損傷に対して安定である。対照的に、フィリング又はスプレッドなどの柔らかい脂肪ベース材料の脂肪相内にそのまま存在する従来の気泡は、脂肪の融解の影響を非常に受けやすい。含気体積は、多くの場合、フィリング又はスプレッドが1回以上の熱サイクルにさらされると失われる。
【0013】
本発明の組成物による非晶質連続相を含む多孔性粒子は、非晶質糖ベース粉末材料に通常伴う問題を克服するものであり、既知の非晶質糖ベースの材料とは対照的に、例えば、脂肪ベースのフィリング又はスプレッド組成物に使用することができる。したがって、例えば、吸湿性のため、及びその含水率のため、非晶質糖は、典型的にはこのような組成物に使用されない。非晶質糖は、環境から及び存在する他の成分から不必要なことに水を吸収し、望ましくない粘度の増加を招く。更に、非晶質状態は不安定である場合があり、例えばスクロース又はデキストロースなどといった非晶質の糖は、水分の存在下では急速に結晶化し、及び/又は結晶化に伴い水分を放出する傾向がある。甘味料と、増量剤と、界面活性剤とを含む非晶質多孔性粒子は、単純な非晶質糖よりも水分安定性が高いことが確認されている。
【0014】
界面活性剤の存在は、高い多孔性を有する粒子の形成、並びにフィリング及びスプレッドなどの組成物の加工中に適用される物理的力に抵抗することができ、かつその多孔性の少なくとも一部をなおも保持することができる多孔性構造の形成を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1で形成された脱脂乳とスクロースの非晶質多孔性粒子のサンプルの走査電子顕微鏡写真を示す。粒子は、調製中に破砕されている。
【
図2】スクロースと脱脂粉乳の非晶質多孔性粒子について、25℃及び水分活性0.1におけるガラス転移温度(Tg/℃)対スクロース含有量のプロットを示す。
【
図3】組成の異なる多孔性非晶質粉末の溶解度(%)(縦軸)対時間(横軸)のプロットである。
【
図4】閉鎖気孔率のレベルが異なる非晶質粉末の溶解度(%)(縦軸)対時間(横軸)のプロットである。
【
図5a】非晶質粉末の、シンクロトロン放射X線断層顕微鏡画像である。
【
図5b】非晶質粉末の、シンクロトロン放射X線断層顕微鏡画像である。
【
図5c】非晶質粉末の、シンクロトロン放射X線断層顕微鏡画像である。
【
図5d】非晶質粉末の、シンクロトロン放射X線断層顕微鏡画像である。
【
図6】多孔性非晶質粉末の走査電子顕微鏡写真を示す。I:スクロース/Nutriose(登録商標)/カゼイン酸ナトリウム、J:スクロース/Nutriose(登録商標)/エンドウ豆タンパク質、K:スクロース/ラクトース/エンドウ豆タンパク質、L:スクロース/Nutriose(登録商標)/小麦グルテン、及びM:スクロース/Nutriose(登録商標)/ジャガイモタンパク質。
【
図7】スクロースと、マルトデキストリンと、N:スペルトミルク、O:ココナッツミルク、P:オーツミルク、Q:アーモンドミルク、R:ライスミルク、及びS:豆乳と、を有する多孔性非晶質粉末の走査電子顕微鏡写真を示す。
【
図8】多孔性非晶質粉末の溶解速度を示す。スクロースと脱脂粉乳(B)、ラクトースとエンドウ豆(K)、Nutriose(登録商標)と小麦グルテン(L)、マルトデキストリンとアーモンドミルク(Q)、マルトデキストリンとココナッツミルク(O)、及びマルトデキストリンと豆乳(S)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
したがって、本発明は、部分的には、20℃で柔らかい食感を有する食品組成物に関し、この食品組成物は、連続脂肪相中における多孔性粒子の分散を含み、粒子は、甘味料と、増量剤と、所望により界面活性剤とを含む非晶質連続相を含む(例えば、食品組成物の食感は、20℃で1500g未満の最大貫入力を示すものである)。柔らかい食感の食品組成物としては、菓子フィリング及びスプレッドが挙げられる。スプレッド及びフィリングは非常に柔らかくてもよく、例えば、20℃で10~60gの最大貫入力を有してもよい。フィリングは、より広範囲の食感を有し、20℃で10~1500gの最大貫入力を有し得る。柔らかい食感を有する材料は、20℃で1500g未満、例えば20℃で1000g未満、更なる例では500g未満、更なる例では100g未満、更なる例では60g未満の最大貫入力を有する材料と考えることができる。最大貫入力は、例えば、60°円錐プローブを使用して測定され得る。円錐プローブは、軟質材料に好適である。円錐プローブは、測定を完了する前に硬質材料を破砕し得る。チョコレートなどの硬質材料は、一般に、20℃で3000gを超える貫入力を有すると考えられる。硬質材料には円筒形プローブの方が好適である。
【0017】
本発明の文脈において、脂肪という用語は、トリグリセリドを意味する。脂肪は、動物脂肪組織及び多くの植物種子の主成分である。一般的にその液体形態で存在する脂肪は、総じて油と呼ばれる。本発明において、油及び脂肪という用語は互換可能である。脂肪の融点は、例えば、パルスNMRによって測定したときに1%の固体脂肪含有量を有する温度であってもよい。
【0018】
本発明の食品組成物の脂肪含有量は、15~70重量%、例えば20~50重量%、更なる例では25~35重量%のレベルで存在してもよい。
【0019】
非晶質連続相を含む多孔性粒子は、本発明の食品組成物中に、2~40重量%、例えば5~35重量%、更なる例では10~30重量%のレベルで存在してもよい。
【0020】
本発明によれば、用語「非晶質」は、本明細書で使用するとき、結晶性材料を本質的に含まないガラス状固体として定義される。
【0021】
本発明によれば、用語「ガラス転移温度(Tg)」は、本明細書で使用するとき、一般的に理解されるとおり、加熱時に非晶質固体が軟化する温度として解釈される。ガラス転移温度は常に材料の結晶状態の融解温度(Tm)よりも低い。したがって、非晶質の物質は、通常はTgと表記されるガラス転移温度をもとに特徴付けされ得る。材料は、そのガラス転移温度未満であるとき、非晶質固体(ガラス)の形態である。
【0022】
ガラス転移温度の測定にはいくつかの手法を使用することができ、例えば、示差走査熱量測定(DSC)及び動的機械的熱分析(DMTA)といった何らかの利用可能な又は適切な手法が使用され得る。
【0023】
本発明の一実施形態では、多孔性粒子の非晶質連続相は、40℃以上、例えば50℃以上、更なる例では60℃以上のガラス転移温度を有することを特徴とする。
【0024】
本発明の一実施形態では、食品組成物は、60°円錐プローブを使用して測定したときに、20℃で10~1500g(例えば15~100g、更なる例では15~60g)の最大貫入力を示す。
【0025】
有利には、従来技術の解決策とは対照的に、本発明の多孔性粒子の非晶質連続相は、吸湿性がより低く、それにより当該材料の取り扱いと、例えばフィリング及びスプレッドなどの食品の従来調製物への組み込みとを容易にする。
【0026】
本発明によれば、用語「多孔性」は、本明細書で使用するとき、例えば空気又は液体が通過できるサイズの、複数の小さな孔、空隙又は隙間を有するものとして定義される。本発明の文脈において、多孔性は、本発明の粒子の含気性を説明するためにも使用される。
【0027】
本発明において、用語「気孔率」は、本明細書で使用するとき、材料中の空の空間(すなわち空隙又は孔)の測定値として定義され、空隙体積の材料塊の総体積に対する比は0~1であり、すなわち0~100%のパーセンテージである。
【0028】
気孔率は、当該技術分野で既知の手法により測定され得る。例えば、粒子の気孔率は、以下の式により求めることができる。
気孔率=Vp-Vcm/Vp×100[式中、Vpは粒子の体積であり、Vcmはマトリックスの体積又は物質のかさ体積である。]
【0029】
本発明に関し、本明細書で使用するとき、用語「閉鎖又は内部気孔率」は、固体内に取り込まれている空隙又は空間の総量についての一般的な用語を指す。
図1からわかるように、断片化された本発明の非晶質多孔性粒子は、空隙又は孔が上記粒子の外表面と連通していない内部微細構造を示す。本発明において、用語「閉鎖気孔率」は、閉鎖している空隙又は孔の体積の粒子体積に対する比として更に定義される。
【0030】
粒子の気孔率が増すと、水への溶解速度が増大する(実施例4参照)。この溶解速度の増加は、粒子のもつ甘味効果(sweetness impact)を増強する。しかしながら、粒子の気孔率が増加することで、脆性も増加することになる。本発明による多孔性粒子が閉鎖気孔性を示すことは有利である。欠けのない壁(complete walls)を備える球の形状は加えられた荷重を均一に分散させることから、閉鎖型多孔を備える粒子、特に小型の球形孔を多く備える粒子は、開放気孔を備える粒子よりも丈夫である。脂肪連続相を有する柔らかい食品組成物に加えられたとき、閉鎖気孔性は、脂肪が粒子の内部に浸透しないという点で、開放気孔性に勝る更なる利点を有する。この粒子内部への浸透は、組成物中の全ての粒子をコーティングするために利用可能な「遊離」脂肪を低減させ、粘度の増加をもたらす。
【0031】
本発明の食品組成物に含まれる多孔性粒子は、10~80%、例えば15~70%、更なる例では20~60%の閉鎖気孔率を有し得る。
【0032】
本発明による多孔性粒子は、0.10~0.18m
-1、例えば、0.12~0.17m
-1の正規化された比表面積を有し得る。本発明による多孔性粒子は、0.10~0.18m
-1(例えば、0.12~0.17m
-1)の正規化された比表面積、及び30~140μm(例えば、40~90μm)のD90粒径分布を有し得る。
【数1】
【0033】
本発明によると、用語「密度」は、材料の単位体積当たりの質量である。多孔性粉末の場合、見かけ密度、タップ密度、及び絶対密度の3つの用語が一般的に使用される。見かけ密度(又はエンベロープ密度)は、単位体積当たりの質量であり、粒子内の孔隙は体積に含まれる。タップ密度(又はかさ密度)は、容器をサンプル材料で充填し、それを振動させて、近最適充填を得ることから得られる密度である。タップ密度は体積内の粒子間空隙を含むのに対し、見かけ密度はこれを含まない。絶対密度(又はマトリックス密度)では、密度計算で使用される体積は、孔及び粒子間の空隙の両方を除外する。
【0034】
本発明の一実施形態では、本発明の組成物による多孔性粒子は、0.3~1.5g/cm3、例えば0.5~1.0g/cm3、更なる例では0.6~0.9g/cm3の見かけ密度を有する。
【0035】
前述のとおり、粒子の非晶質及び多孔性の性質により、口腔内でのより迅速な溶解が導かれる。かかる迅速な溶解は甘味効果を増強させるだけでなく、粒子を舌及び口蓋により知覚されにくくする。有利には、本発明の粒子の高多孔性かつ非晶質の性質は、特に、スクロースを従来の増量剤で置き換えると、通常は、ざらざらした舌触り及び甘味不足などの質のよくない感覚刺激を生じる脂肪ベースのフィリング及びスプレッドにおいて、増強された甘味及び魅力的な口当たりを提供する。
【0036】
D90値は、粒子径分布を記述するに当たり一般的な手法である。D90は、サンプル中の粒子の質量のうち90%の直径がかかる値未満の直径を有するような直径である。本発明の文脈において、質量によるD90は、体積によるD90と等価である。D90値は、例えば、レーザー光散乱粒子径分析機により測定され得る。サンプルの性質に応じて粒子径分布についてのその他の測定法を使用してもよい。例えば、粉末のD90値は、一般的に、デジタル画像解析(Camsizer XTを使用するなど)により測定される一方で、チョコレートなどの脂肪連続材料から構成される粒子のD90値はレーザー光散乱により測定され得る。
【0037】
本発明の組成物に含まれる多孔性粒子は、450μm未満、例えば140μm未満、更なる例では30~140μmの粒径分布D90を有し得る。本発明の飲料粉末に含まれる多孔性粒子は、90μm未満、例えば80μm未満、更なる例では70μm未満の粒径分布D90を有し得る。本発明の飲料粉末に含まれる多孔性粒子は、40~90μm、例えば50~80μmの粒径分布D90を有し得る。
【0038】
本発明の組成物に含まれる多孔性粒子は、ほぼ球状であってもよく、例えば、0.8~1の真球度を有してもよい。あるいは、粒子は非球状であってもよく、例えば、粒子は、ロールリファイニングによって微細化されていてもよい。
【0039】
本発明の組成物に含まれる多孔性粒子は、発泡乾燥、凍結乾燥、トレイ乾燥、流動床乾燥などによって得ることができる。好ましくは、多孔性粒子は、加圧ガス注入による噴霧乾燥によって得られる。
【0040】
噴霧乾燥機内での噴霧は、ほぼ球状の液滴を生成し、これを乾燥させて、ほぼ球状の粒子を形成することができる。しかしながら、凝集粉末は流動性及び低粉塵性の点で、成分として利点をもたらし、例えば、補助的な(secondary)空気再循環を伴う上面開放式噴霧乾燥機は粒子の凝集を引き起こすことから、噴霧乾燥機は一般的に凝集粒子の製造に設定される。凝集した粒子は、120~450μmのD90粒径分布を有し得る。凝集又は非凝集の噴霧乾燥粒子のサイズは、噴霧乾燥ノズルの開口サイズを大きくすることにより増大させることができる(噴霧乾燥機は大きな粒子から水分を除去するのに十分なサイズであると仮定する)。本発明の組成物に含まれる多孔性粒子は、非凝集粒子を含んでもよく、例えば、本発明の組成物中に含まれる非晶質多孔性粒子の少なくとも80重量%は非凝集粒子であってもよい。本発明の組成物に含まれる多孔性粒子は、微細化された凝集粒子であってもよい。
【0041】
有利なことに、微細化などの菓子フィリング及び脂肪ベーススプレッドの製造の過酷な加工条件は、本発明の粒子の多孔性を損なわない。例えば、上記の凝集粒子の粒径は、ローラーリファイニングによって低減され得るが、なおも元の閉鎖気孔率の大部分を保持する。例えば、微細化後、粒子は内部の閉鎖気孔率のうち少なくとも20%、30%、40%、又は50%を保持することができ、更に例えば、微細化後、粒子は20~60%の閉鎖気孔率を有し得る。
【0042】
凝集体へと形成されたとき、凝集した粒子は、概して個々の球状粒子の表面から構成される凸状の丸みをもつ表面を保持する。球状粒子又は凝集した球状粒子を微細化することにより粒子の破損が生じ、これにより丸みを帯びていない表面が形成されることになる。本発明の実施形態による微細化粒子は、その表面の70%未満、例えば50%未満、更なる例では25%未満が凸状であり得る。
【0043】
微細化後、粒子の30%未満は実質的に球状となり、例えば、20%未満は実質的に球状となり、例えば、10%未満は実質的に球状となり、例えば、5%未満は実質的に球状となり、例えば、本質的にすべての粒子は実質的に球状でないものであり得る。本発明に関し、本明細書で使用するとき、用語「真球度(sphericity)」は、物体がどの程度球形(丸みを帯びている)かの尺度についての標準的な用語を指す。本発明の文脈において、真球度は粒子の真球度を指す。
【0044】
真球度=4πA/P2[式中、Aは、粒子の突出部により覆われている面積の測定値として定義され、Pは粒子の突出部の周囲長の測定値である。]
【0045】
例えば、理想的な球は、真球度1を有すると予想される。しかしながら、1未満の値でも高度の真球度が達成され得ることは一般に理解される。例えば、物体又は粒子の値が0.6~1である場合、実質的に球形であるとみなされる。
【0046】
撮像実験は、本発明の組成物に含まれる粒子が、フィリング又はスプレッド調製工程後に顕著な多孔性を保持することを明らかに示す。実施した官能評価により、粒子の多孔性が製品内でもそのまま保持されていることを示す、良好な食味、軽くクリーミーな食感及び口当たりが示された。
【0047】
脂肪連続系に球状粒子を使用することで、粘度を増加させることなく、より低い脂肪含有量を用いることが可能になる。球状粒子は、粒子間の立体相互作用が低減されることから、不規則な形状の粒子よりも充填率が高くなる。同じ粒径分布及び脂肪含有量の場合、球状粒子は、より滑らかな口当たりを提供する。しかしながら、微細化された場合でも、本発明の組成物による多孔性非晶質粒子は素早く溶解し、そのため、同等のサイズの結晶性材料よりも口内で認識されにくい。
【0048】
本発明の組成物に含まれる多孔性粒子は、甘味料と、増量剤と、界面活性剤と(すべてが粒子の連続固相全体にわたって分布している)を含んでもよい。ガス界面には、連続相の残りの部分よりも高濃度の界面活性剤が存在し得るが、界面活性剤は、粒子の外側にコーティングされるだけではなく、粒子内部の連続相にも存在する。例えば、界面活性剤は、本発明の組成物による粒子の内部に存在し得る。
【0049】
本発明によると、本明細書で使用するとき、用語「甘味料」は、甘味を提供する物質を指す。甘味料は、糖、例えば、単糖、二糖、及びオリゴ糖であってもよい。甘味料は、スクロース、フルクトース、グルコース、デキストロース、ガラクトース、アルロース、マルトース、高デキストロース当量加水分解デンプンシロップ、キシロース、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。したがって、本発明による非晶質多孔性粒子に含まれる甘味料は、スクロース、フルクトース、グルコース、デキストロース、ガラクトース、アルロース、マルトース、高デキストロース当量加水分解デンプンシロップキシロース、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。甘味料はスクロースであってもよい。
【0050】
好ましい実施形態では、本発明による多孔性粒子は、5~70%、好ましくは10~50%、更により好ましくは20~40%の量の甘味料(例えばスクロース)を含む。
【0051】
好ましい一実施形態では、本発明による多孔性粒子は、少なくとも70%の甘味料(例えばスクロース)を含む。
【0052】
本発明によれば、用語「増量剤」は、風味に顕著な影響を与えることなく食品の体積又は重量を増加させる食品成分を指す。本発明による増量剤は、食品の有用性又は機能性に影響を与えることなく食品の体積又は重量を増加させる材料であってもよい。本発明の一実施形態では、本発明の増量剤は、かさを増し、有利には健康的な代替物(例えば、スクロース代替物)を提供する、低カロリー又はノンカロリーの添加物である。増量剤は、バイオポリマー、例えば、糖アルコール、糖オリゴマー又は多糖類であってもよい。一実施形態では、増量剤は、重量を基準として、結晶性スクロースよりも甘味が少ない糖アルコール、糖オリゴマー又は多糖類であってもよい。
【0053】
一実施形態では、本発明の多孔性粒子は、5~70%、例えば10~40%、更なる例では10~30%、なお更なる例では40~70%の量の増量剤を含む。
【0054】
一実施形態では、本発明の多孔性粒子は、10~25%の増量剤を含む。
【0055】
本発明によると、増量剤は、糖アルコール(例えば、イソマルト、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、及び水素添加デンプン加水分解物)、ラクトース、マルトース、フルクトオリゴ糖、αグルカン、βグルカン、デンプン(変性デンプンを含む)、天然ガム、食物繊維(不溶性繊維と可溶性繊維の両方を含む)、ポリデキストロース、メチルセルロース、マルトデキストリン、イヌリン、可溶性小麦デキストリン又はトウモロコシデキストリン(例えば、Nutriose(登録商標))などのデキストリン、Promitor(登録商標)などの可溶性繊維、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0056】
本発明の一実施形態では、増量剤は、ラクトース、マルトース、マルトデキストリン、可溶性小麦デキストリン又はトウモロコシデキストリン(例えば、Nutriose(登録商標))、ポリデキストロース、Promitor(登録商標)などの可溶性繊維、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0057】
本発明による多孔性粒子は、0.5~6重量%、例えば1~5重量%、更なる例では1.5~3重量%の含水率を有し得る。
【0058】
本発明の組成物による粒子に含まれる界面活性剤は、多孔性、特に閉鎖気孔性の形成を補助する。一実施形態では、本発明の非晶質多孔性粒子は、0.5~15重量%、例えば1~10重量%、更なる例では1~5重量%、更なる例では1~3重量%の量の界面活性剤を含む。
【0059】
本発明によると、界面活性剤は、レシチン、ホエイタンパク質、乳タンパク質、非乳タンパク質、カゼイン酸ナトリウム、リゾレシチン、脂肪酸塩、リゾチーム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム、ラウロイルアルギネート、スクロースモノオレエート、スクロースモノステアレート、スクロースモノパルミテート、スクロースモノラウレート、スクロースジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリステアレート、PGPR、PGE、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0060】
本発明の一実施形態では、界面活性剤はカゼイン酸ナトリウム又はレシチンであってもよい。
【0061】
増量剤が脱脂粉乳、カゼイン酸ナトリウムなどの乳粉末から誘導される本発明による実施形態では、カゼイン酸ナトリウムが本質的に存在する。増量剤がホエイ粉末である本発明による実施形態では、ホエイタンパク質が本質的に存在する。
【0062】
本発明の組成物による界面活性剤は、非乳タンパク質であってもよい。本発明の文脈において、用語「非乳タンパク質」は、牛乳中に見出されないタンパク質を指す。牛乳中の主要タンパク質は、カゼイン及びホエイタンパク質である。一部の消費者は、自分の食生活において乳タンパク質を避けることを望み、例えば、一部の消費者は乳タンパク質不耐性又は牛乳アレルギーにかかっている場合があり、したがって、乳タンパク質を含まない食品を提供することができることは有利である。本発明の粒子に含まれる非乳タンパク質は、界面活性剤として作用して、粒子内の多孔性構造の形成を促進し、加工中に構造を安定化させ得る。非乳タンパク質は、閉鎖気孔性を有する粒子の形成、具体的には、球状又はほぼ球状の形状であり、かつ粒子の加工中に破裂に耐える複数の内孔を有する粒子の形成を強化し得る。本発明の粒子に含まれる非乳タンパク質は、エンドウ豆タンパク質、ジャガイモタンパク質、アーモンドタンパク質、ヘーゼルナッツタンパク質、小麦グルテン、オート麦タンパク質、卵アルブミンタンパク質(例えばオボアルブミン、オボトランスフェリン、オボムコイド、オボグロブリン、オボムチン、及び/又はリゾチーム)、クルペイン、大豆タンパク質、トマトタンパク質、アブラナ科種子タンパク質、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。例えば、本発明の粒子に含まれる非乳タンパク質は、エンドウ豆タンパク質、アーモンドタンパク質、小麦グルテン、大豆タンパク質、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0063】
一実施形態では、本発明の多孔性粒子は、0.5~15%、好ましくは1~10%、より好ましくは1~5%、更により好ましくは1~3%の量の非乳タンパク質を含む。
【0064】
多孔性粒子は、スクロースと、可溶性繊維と、エンドウ豆タンパク質、小麦グルテン、アーモンドタンパク質、ココナッツタンパク質、及び大豆タンパク質からなる群から選択される植物性タンパク質(例えば、小麦グルテン又はアーモンドタンパク質)とを含んでもよく(例えば、乾燥ベースでスクロースと可溶性繊維と植物性タンパク質とからなってもよく)、スクロースは粒子中に少なくとも30%のレベルで存在し、スクロース対可溶性繊維の比は、乾燥重量を基準として0.5対1~2.5対1、例えば、乾燥重量を基準として0.6対1~1.7対1である。多孔性粒子は、スクロースと、可溶性繊維と、小麦グルテン又はアーモンドタンパク質である植物性タンパク質とを含んでもよく(例えば、乾燥ベースでスクロースと可溶性繊維と植物性タンパク質とからなってもよく)、スクロースは粒子中に少なくとも30%のレベルで存在し、スクロース対可溶性繊維の比は、乾燥重量を基準として0.5対1~2.5対1、例えば、乾燥重量を基準として0.6対1~1.7対1である。
【0065】
本発明の多孔性粒子は、コーティングされてもよく、例えば、ココアバターなどの脂肪の薄層でコーティングされてもよい。脂肪の薄層は、輸送及び保管中の粒子の安定性を更に増強する。
【0066】
本発明の粒子は、その多孔性の性質により、スクロース結晶などの固体結晶性材料よりも色が明るくなり得る。この作用は、乳白色又は色付きの物質の添加により影響を受け得る。本発明による多孔性粒子は、着色成分、例えば、カラメル化糖又は許可された食品着色料、例えば天然食品着色料を含んでもよい。
【0067】
本発明の組成物に含まれる多孔性粒子の非晶質連続相は、クロースと脱脂乳とを含んでもよく(例えば、乾燥ベースでスクロースと脱脂乳とからなってもよく)、スクロースは粒子中に少なくとも30重量%のレベルで存在する。スクロース対脱脂粉乳の比は、乾燥重量を基準として0.5対1~2.5対1でよく、例えば、乾燥重量を基準として0.6対1~1.5対1でよい。脱脂乳は、乾燥重量を基準として1.5重量%未満、例えば1.2重量%未満の脂肪含有量を有し得る。脱脂乳の成分は、個別に提供されてスクロースと組み合わされてもよく、例えば、本発明の多孔性粒子の非晶質連続相は、スクロースと、ラクトースと、カゼインと、ホエイタンパク質とを含んでもよい。スクロース及び脱脂乳は、還元糖又はポリマーの添加を必須とせずに、再結晶化に対して良好な安定性を有する非晶質連続相を提供する。例えば、本発明の多孔性粒子は、還元糖(例えば、フルクトース、グルコース、又はデキストロース当量値を有するその他の糖類。デキストロース当量値は、例えば、Lane-Eynon法によって測定され得る)を含まなくてもよい。例えば、多孔性粒子の非晶質連続相は、還元糖を含まなくてもよい。更なる例では、本発明の多孔性粒子(例えば、粒子の非晶質連続相)は、3つ以上の糖単位を有するオリゴ糖又は多糖類、例えばマルトデキストリン又はデンプンを含まなくてもよい。
【0068】
本発明の組成物による多孔性粒子は、消費者が自分の台所で食品を準備する際に一般的には使用しない成分を含まなくてもよく、換言すれば、本発明の多孔性粒子は、いわゆる「台所戸棚」にある原料(“kitchen cupboard”ingredient)からなってもよい。
【0069】
粒子の非晶質連続相がスクロースと脱脂乳とを含む(例えば、乾燥ベースでスクロースと脱脂粉乳とからなる)本発明の組成物の一実施形態では、脱脂乳のスクロースに対する比率を増やして、組成物全体におけるスクロースの量を低減する。多くの消費者が、糖分が低減された美味しいフィリング又はスプレッドを歓迎し、かつ乳含有量が高いことを高く評価することから、これは有利となり得る。粒子中のスクロースの割合を低減させると、甘味が直接的に低減されるだけでなく粒子の溶解速度も低下し、これにより口腔内での甘味効果が更に低減される。しかしながら、粒子の気孔率、特に粒子の閉鎖気孔率を増大させると、溶解速度が増大し得るため、甘味の低減とは反対に作用し得る。本発明は、脂肪を含む食品組成物(例えば、フィリング又はスプレッド)を提供することができ、当該組成物は、連続脂肪相を有し、5~60%(例えば20~55%)の多孔性粒子を含み、上記多孔性粒子は、1%~5%(例えば、2%~3%)の含水率を有し、スクロース及び脱脂乳を含む非晶質連続相を、乾燥ベースで少なくとも95%(例えば、少なくとも98%)のレベルで含み、スクロース対脱脂乳の比が0.5:1~0.6:1であり、20%~60%、例えば25%~50%、更なる例では25%~40%の閉鎖気孔率を有する。多孔性粒子は、30~140μm、例えば40~90μm、更なる例では50~80μmのD90粒径分布を有し得る。食品組成物は、30~60重量%の脂肪、例えば35~50重量%の脂肪を含んでもよい。
【0070】
一実施形態では、本発明の食品組成物は、部分的に凝集したタンパク質を含んでもよく、例えば、本発明の食品組成物による多孔性粒子は、部分的に凝集したタンパク質を含んでもよい。本発明の食品組成物は、1~30重量%の部分的に凝集したタンパク質を含み得る。部分的に凝集したタンパク質は、大豆タンパク質(例えば、大豆グリシニン、更なる例では、コングリシニン)、卵タンパク質(例えば、オボアルブミン、更なる例ではオボグロブリン)、米タンパク質、アーモンドタンパク質、オート麦タンパク質、エンドウ豆タンパク質、ジャガイモタンパク質、小麦タンパク質(例えば、グルテン)、乳タンパク質(例えば、ホエイタンパク質、更なる例ではカゼイン)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質を含み得る。部分的に凝集したタンパク質は、大豆タンパク質、卵タンパク質、米タンパク質、アーモンドタンパク質、オート麦タンパク質、エンドウ豆タンパク質、ジャガイモタンパク質、小麦タンパク質、カゼイン、ホエイタンパク質、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2種類のタンパク質を含んでもよい(例えば、当該タンパク質からなってもよい)。タンパク質は、65℃~100℃の温度で、30秒~90分の時間及び5.5~7.1のpHにおける熱処理によって部分的に凝集されてもよく、例えば、85℃~100℃の温度で50~400秒の時間及び5.8~6.2のpHにおける熱処理によって、部分的に凝集されていてもよい。高温になるほど、部分的な凝集に到達するのに必要な時間が短くなる。長すぎる加熱は、タンパク質を完全に変性させて、不溶性粒子として沈殿させることから、避けるべきである。一実施形態では、タンパク質は、pH5.5~7.1にて、90℃~100℃の温度で、30秒間~4分間熱処理することによって部分的に凝集されていてもよい。一実施形態では、タンパク質は、pH5.5~7.1にて、65℃~75℃の温度で、10分間~30分間熱処理することによって部分的に凝集されていてもよい。部分的に凝集したタンパク質は、多孔性粒子の非晶質連続相中に分散されたタンパク質凝集体の形態であってもよい。部分的に凝集したタンパク質は、食品組成物、例えば、菓子フィリング又はスプレッドの、滑らかでクリーミーな食感を向上させる。
【0071】
本発明の文脈において、用語「部分的に凝集したタンパク質」は、ある割合のタンパク質が凝集していることを意味する。凝集プロセス後の可溶性タンパク質の含有量は、総タンパク質含有量に対して好ましくは30%以下、好ましくは20%以下であり、タンパク質の大部分は、凝集構造に埋め込まれている。部分的に凝集した粒子は、ネットワークを形成し得る。部分的に凝集したタンパク質は、水及び脂肪粒子を結合又は捕捉して、粘度及び口当たりを増大/向上し得る。部分的に凝集した粒子は、例えばタンパク質沈殿物として不溶性粒子を形成しない場合がある。
【0072】
本発明の一実施形態では、食品組成物は、60°円錐プローブを使用して測定したときに、20℃で60g未満の最大貫入力を示す。60g未満の最大貫入力は、スプレッドに一般的である。食品組成物は、60°円錐プローブを使用して測定したときに、20℃で60g未満の最大貫入力を示し、かつ20~35重量%の脂肪含有量を有してもよい。
【0073】
本発明の食品組成物の連続脂肪相は、高融点脂肪と低融点脂肪とを含み得る(例えば、高融点脂肪と低融点脂肪とからなる)。一実施形態では、連続脂肪相内に含まれる高融点脂肪は、シアバター、コクムバター、サルバター、ココアバター、パーム油、藻類油、及びこれらの組み合わせのステアリン画分又は中鎖画分(stearin or mid-fractions)からなる群から選択され得る。一実施形態では、連続脂肪相に含まれる低融点脂肪は、高オレイン酸ヒマワリ油、高オレイン酸ベニバナ油、高オレイン酸大豆油、高オレイン酸キャノーラ油などの高オレイン酸菜種油、高オレイン酸藻類油、オリーブ油、マカダミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、アボカド油、ヒマワリ油、菜種油、大豆油、ブドウ種子油、綿実油、コーン油、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。一実施形態では、本発明の食品組成物の連続脂肪相は、シアバター、コクムバター、サルバター、ココアバター、パーム油、藻類油、及びこれらの組み合わせのステアリン画分又は中鎖画分からなる群から選択される高融点脂肪2~30重量%と、高オレイン酸ヒマワリ油、高オレイン酸ベニバナ油、高オレイン酸大豆油、高オレイン酸キャノーラ油などの高オレイン酸菜種油、高オレイン酸藻類油、オリーブ油、マカダミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、アボカド油、ヒマワリ油、菜種油、大豆油、ブドウ種子油、綿実油、コーン油、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される低融点脂肪70~98重量%と、を含む。
【0074】
本発明の組成物による連続脂肪相は、含気されてもよい。本発明の文脈において、連続脂肪相が含気されているとは、多孔性粒子に含まれる空気セルとは対照的に、連続脂肪相と直接接触する空気セルが存在することを意味する。多孔性粒子を含ませることに加えて、連続脂肪相を含気させることで、組成物の軽い食感が更に増し、同じ体積で消費されるカロリーが減少する。用語「含気された」は、発泡体、換言すれば、固体媒体又は液体媒体へのガスの分散体を指して使用される。ガスは、CO2、N2又はN2Oなどの泡生成に一般的に使用される任意のガスであってもよいが、典型的には、ガスは空気である。含気された連続脂肪相は、1~80%、例えば10~75%の気孔率を有し得る。
【0075】
一実施形態では、本発明の食品組成物は、35℃~80℃(例えば、40℃~50℃)の融点を有する高融点脂肪と、15℃~30℃(例えば、18℃~25℃)の融点を有する中融点脂肪と、-50℃~5℃の融点を有する低融点脂肪とを含み得る。例えば、本発明の食品組成物の連続脂肪相は、含気されてもよく、35℃~80℃(例えば、40℃~50℃)の融点を有する高融点脂肪と、15℃~30℃(例えば、18℃~25℃)の融点を有する中融点脂肪と、-50℃~5℃の融点を有する低融点脂肪とからなってもよい。一実施形態では、食品組成物は、非エステル交換脂肪のみを含んでもよく、非エステル交換脂肪は、高融点脂肪と、中融点脂肪と、低融点脂肪とを含んでもよく(例えば、高融点脂肪と、中融点脂肪と、低融点脂肪とからなってもよく)、食品組成物は、総脂肪を基準として、45重量%未満(例えば40重量%未満)の飽和脂肪酸と、9~60重量%(例えば、15~50重量%)の一価不飽和脂肪酸と、30重量%未満の多価不飽和脂肪酸と、を含む。例えば、食品組成物の連続脂肪相は、総脂肪を基準として、45重量%未満(例えば40重量%未満)の飽和脂肪酸と、9~60重量%(例えば、15~50重量%)の一価不飽和脂肪酸と、30重量%未満の多価不飽和脂肪酸と、を含み得る。
【0076】
エステル交換脂肪は、脂肪の一種であり、脂肪酸残基が、1つのトリグリセリド分子から別のトリグリセリド分子に移動した、又はグリセロール骨格上の1つの位置から別の位置へと移動した、脂肪である。一般的には、天然のトリグリセリドの中央の「2位」にあるのは飽和脂肪酸ではない。飽和脂肪酸は、エステル交換脂肪において、より一般的なものであり、エステル交換脂肪では、エステル交換プロセスにより、脂肪酸の位置が再配置されている。本発明の組成物の脂肪相は、SSUトリグリセリドのSUSトリグリセリドに対する比が0.1未満であってもよい[式中、Sは、16~24個の炭素原子を有する飽和脂肪酸残基を示し、Uは18個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸残基を示す]。SSUという記載は、グリセロール骨格の1位にS、2位にS、3位にUを有するトリグリセリドを示す。(この文脈において、1位と3位が互換可能であることからSSUとUSSは等価であることに注意すべきである。)同様に、SUSトリグリセリドは、グリセロール骨格の1位にS、2位にU、3位にSを有する。
【0077】
本発明の食品組成物は、低含水率、例えば2.5%重量未満の含水率を有し得る。例えば、本発明の食品組成物の連続脂肪相は、含気されてもよく、かつ低含水率、例えば、2.5重量%未満の含水率を有してもよい。本発明の食品組成物の含気連続脂肪相は、水分がなくとも形成され得るものであり、例えば、界面活性剤の水溶液を使用せずとも、又は水を含有するエマルションを形成せずとも形成され得ることに注目されたい。水分をまったく含まない食品成分はまれであるが、本発明の組成物は、本質的に水を含まなくてもよい。
【0078】
本発明の食品組成物の連続脂肪相は、50℃~0℃の間の2つの別個の温度で結晶化し得る。これは、連続脂肪相が含気される場合、特に有益である。2段階結晶化は、気泡安定化の加工中の分離(高融点脂肪結晶の少なくとも一部分が結晶化した後)、及びバルクにおけるネットワークの形成(中融点脂肪結晶の少なくとも一部が結晶化した後)を可能にする。本発明の食品組成物の連続脂肪相は、20℃で5~35%の固体脂肪含有量を有してもよく、10℃における固体脂肪含有量は、20℃の値から10~20%増加した。例えば、本発明の食品組成物の連続脂肪相は、20℃で10%及び10℃で25%の固体脂肪含有量を有してもよく、含有量は15%増加している。固体脂肪含有量は、例えばIUPAC法2.150(テンパー型)に従って、パルスNMRによって測定することができる。固形脂肪含有量は、示差走査熱量測定によって測定することもできる。
【0079】
本発明の食品組成物の連続脂肪相は含気されてもよく、かつ表面がグリセリド結晶で包まれた気泡を含んでもよい。このような結晶で包まれた気泡は、高融点脂肪の少なくとも一部が結晶化する(例えばゲルを形成する)ように冷却し、次いで組成物を泡立てることによって得ることができる。結晶で包まれた気泡の特に安定な集合体(assemblies)は、長時間かつ集中的な泡立てのプロセスを使用することによって得ることができる。本発明の食品組成物の連続脂肪相は、モノグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドのエステル、ジグリセリドのエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるグリセリドを含み得る。例えば、35℃~60℃、例えば40℃~50℃の融点を有するグリセリド。これらのグリセリドは、結晶で包まれた気泡の形成を補助することができる。連続脂肪相が0.1~80%(例えば、5~20%)の固形脂肪含有量を有する条件下で、本発明の組成物は、表面の少なくとも50%が結晶によって占有されている気泡を含んでもよく、結晶は、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、モノグリセリドのエステル、ジグリセリドのエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるグリセリドを含む。結晶は、トリグリセリドを含んで(例えば、トリグリセリドからなって)もよい。
【0080】
ゲルは、その体積全体にわたって連続液体であることを特徴とする非流体網状組織である。ゲルは、そのレオロジーによって定義することもできる。例えば、1Hzの周波数では、ゲルの線形剪断弾性率G’の測定値は10Pa超となり得、粘性率G”はG’未満となり得る。泡の生成に最も好適なゲルは、最初に1Hzで102~107Paの範囲の線形剪断弾性率G’を有し、例えば、最初に1Hzで102~106Paの範囲の線形剪断弾性率G’を有し、更なる例としては、最初に1Hzで103~106Paの範囲の線形剪断弾性率G’を有する。
【0081】
結晶によって占有される気泡表面の割合は、顕微鏡(例えば、光学及び/又は共焦点顕微鏡)を、好適な画像解析技術と併せて使用して測定することができる。表面被覆率が高レベルの場合、顕微鏡による検査後、気泡の表面の少なくとも50%が結晶によって占有されることが直ちに明らかとなり得る。
【0082】
気泡の表面の少なくとも50%を専有する結晶がぎっしりと詰まる(jam together)ことで、気泡のいかなる収縮にも抵抗し、例えば、脂肪相が0.1~80%の固体脂肪含有量を有する場合など、連続相が流体であるとき、安定な流動性発泡体を提供する。気泡の表面の少なくとも50%を占有する結晶は、発泡体が油で希釈されたときに、気泡を非弛緩形状にすることがある。気泡の表面を占有するグリセリドを含む結晶は、5μm未満の平均厚さを有する層を形成し得る。
【0083】
本発明の文脈において、流動性発泡体という用語は、典型的な食品加工装置を使用して、明らかな構造的粗大化又は崩壊を受けさせることなく、圧送又は撹拌ユニットで加工することができる発泡体を指す。流動性発泡体は、撹拌後(例えば、20℃で)、重力下で流動性となり得る。
【0084】
本発明の食品組成物は、表面がグリセリド結晶、例えばトリグリセリド結晶によって占有されている気泡を、気泡の表面密度が少なくとも15mg.m-2、例えば少なくとも25mg.m-2、例えば少なくとも50mg.m-2、更なる例では少なくとも200mg.m-2となるように含み得る。
【0085】
本発明の食品組成物の一実施形態に含まれる高融点脂肪は、総脂肪の10~30重量%のレベルで存在し得る。本発明の食品組成物の一実施形態に含まれる中融点脂肪は、総脂肪の35~75重量%のレベルで存在し得る。本発明の食品組成物の一実施形態に含まれる低融点脂肪は、総脂肪の15~35重量%のレベルで存在し得る。融点の異なる3種類の脂肪は、特に食品組成物の連続相が含気されたときに、このような量で所望の食感及び加工特性をもたらす。
【0086】
本発明の食品組成物の一実施形態に含まれる高融点脂肪は、58%を超える飽和脂肪酸含有量を有し得る。本発明の食品組成物の一実施形態に含まれる中融点脂肪は、35~55%の飽和脂肪酸含有量を有し得る。本発明の食品組成物の一実施形態に含まれる低融点脂肪は、20%未満の飽和脂肪酸含有量を有し得る。本発明の食品組成物の全飽和脂肪酸含有量は、総脂肪を基準として45%未満であってもよい。
【0087】
本発明の食品組成物の一実施形態に含まれる高融点脂肪は、シアバター、コクムバター、サルバター、ココアバター、パーム油、及び藻類油のステアリン画分又は中鎖画分、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。本発明の食品組成物の一実施形態に含まれる中融点脂肪は、パーム油、シアバター、コクムバター、サルバター、ココアバター、及び藻類油のソフトオレイン画分、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。本発明の食品組成物の一実施形態に含まれる低融点脂肪は、高オレイン酸ヒマワリ油、高オレイン酸ベニバナ油、高オレイン酸大豆油、高オレイン酸キャノーラ油などの高オレイン酸菜種油、高オレイン酸藻類油、オリーブ油、マカダミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、アボカド油、ヒマワリ油、菜種油、大豆油、ブドウ種子油、綿実油、コーン油、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0088】
連続脂肪相の含気による良好な結果は、1位及び3位に飽和脂肪酸を有するトリグリセリドを高レベルで有する脂肪相を使用して得られる。本発明の食品組成物の一実施形態の脂肪相は、0.5~1.5重量%のSSSと、2.0~3.5重量%のSSUと、40重量%超のSUSと、20~35重量%のSUUと、15~35重量%のUUUと、を含み得る[式中、Sは16~24個の炭素原子を有する(C16:0~C24:0)飽和脂肪酸残基を示し、Uは18個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸残基を示す]。本発明の食品組成物の脂肪相に含まれている16個の炭素を有する(C16:0)飽和脂肪酸残基の、18~24個の炭素原子を有する(C18:0~C24:0)飽和脂肪酸残基に対する比は、0.5~4.0、例えば1~3.5であり得る。脂肪相中のC16:0(パルミチン)脂肪酸残基の量が、より長鎖の脂肪酸残基と比較して多いことで、15~20℃の含気温度における粘度低下をもたらし、より良好な含気を可能にする。
【0089】
本発明の食品組成物は、菓子フィリング又はスプレッドであってもよい。食品組成物は、脂肪連続ムース、例えば脂肪連続チョコレートムースなどの脂肪連続含気材料であってもよい。本発明による食品組成物は、チョコレート及びヘーゼルナッツスプレッド、又はホワイトチョコレートスプレッドなどの、甘い脂肪ベースのスプレッドであってもよい。本発明の食品組成物は、ヘーゼルナッツ及び/又はココアを含み得る。本発明の食品組成物は、パーム油を含まなくてもよい。食品組成物がヘーゼルナッツスプレッドである本発明の一実施形態では、多孔性粒子は、非晶質連続相中に分散されたココア及び/又はヘーゼルナッツ片を含んでもよい。
【0090】
本発明による多孔性粒子は、非晶質連続相中に分散された追加の食品成分、例えば、ナッツ片、ココア片、及び乳粉末からなる群から選択される成分を含んでもよい。食品組成物がチョコレート及びヘーゼルナッツスプレッドである本発明の一実施形態では、多孔性粒子は、ヘーゼルナッツ及び/又はアーモンドタンパク質、例えばアーモンド又はヘーゼルナッツの植物性ミルクを含んでもよい。
【0091】
本発明による食品組成物は、魅力的な口内感覚をもたらす。組成物は、わずかに口内加温性(mouth-warming)であり、例えば、スイートスプレッドにおいて、贅沢感(indulgence)の知覚を増強する感覚をもたらすことができる。理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、このわずかな口内加温性は、粒子の非晶質構成成分が唾液に溶解したときに急速に熱を放出するためであると考える。非晶質糖は溶解に発熱エンタルピーを有し、多孔性構造が粒子を迅速に溶解させる。連続脂肪相を有する柔らかい食感の組成物は、一般に、チョコレートなどの、より硬い食感の組成物よりも少ない結晶性脂肪を含有する。これは、口内で起こる吸熱性の結晶融解は、発熱性の溶解を打ち消すには少ないことを意味する。したがって、液体脂肪を高レベルで含む連続脂肪相を有する柔らかい食感の組成物では、発熱効果は、口内知覚を変化させるのに十分な強さである。
【0092】
本発明の食品組成物は、菓子フィリング、例えば、ペストリー、ビスケット、押出シリアル、又は成形チョコレート製品用の甘いフィリングであってもよい。
【0093】
本発明による食品組成物は、ウエハースなどのビスケット用の菓子フィリングであってもよい。ウエハースは、ウエハースのバッターから製造され、サクサク感、脆性(brittle)及び破砕性(fragile)が調和した焼成製品である。ウエハースは薄く、全体的な厚さは通常1~4mm未満であり、典型的には製品密度は0.1~0.3g/cm3の範囲である。表面は、その間でウエハースが焼成される複数のプレートの表面形状に従って正確に形成される。ウエハースは、多くの場合、片面又は両面にパターンを有する。ウエハースは押出成形により生成されてもよい。基本となる2種のウエハースが、K.F.Tiefenbacherにより、「Encyclopaedia of Food Science,Food Technology and Nutrition p 417~420-Academic Press Ltd London-1993」に記載されている。
【0094】
1)無糖又は低糖のウエハース。完成したビスケットは、スクロース又は他の糖類をゼロ~低含有率で含む。典型的な製品は、平坦で中空のウエハースシート、成形されたコーン形状又は装飾形状である。
【0095】
2)糖の多いウエハース。10%を超えるスクロース又は他の糖類は、焼き立てのシートの可塑性の原因となる。糖の再晶出が起こる前に、それらが異なる形状に成形されうる。典型的な製品は、成形して巻いたシュガーコーン、巻いたウエハーススティック及び、深絞り形成された(deep-formed)装飾形状である。
【0096】
本発明による組成物中に含まれる非晶質多孔性粒子は、消費者に馴染みのない成分を必要とすることなく、スプレッドなどの柔らかい脂肪ベース組成物のスクロース含有量を低減することを可能にする。一実施形態では、本発明は、40~65重量%(例えば、45~60重量%)のスクロース含有量を有する対照スプレッドと同じ甘味を有するスプレッドであって、スクロース含有量(例えば、質量基準のスクロース含有量又は体積基準のスクロース含有量)が対照と比較して少なくとも20%(例えば、少なくとも30%)低減されており、スクロース又はラクトース以外の単糖類、二糖類又は三糖類を含有せず、かつ糖アルコール又は高強度甘味料を含有しない、スプレッドを提供する。例えば、スプレッドは、スクロース又はラクトース以外の糖類を含有しなくてもよく、糖アルコール又は高強度甘味料を含まなくてもよい。例えば、本発明によって提供される対照及びスプレッドは、単に比率が異なる同じ成分からなってもよい。本発明によるスプレッドは、連続脂肪相を有し、スクロース、ミルク、ココア、及びヘーゼルナッツを含んでもよい。
【0097】
本発明の更なる態様は、20℃で柔らかい食感を有する食品組成物を製造する方法を提供し(例えば、食品組成物の食感は、20℃で1500g未満の最大貫入力を示すものである)、当該方法は、a)甘味料と、増量剤と、界面活性剤とを含む混合物を、例えば50~300bar、更なる例では100~200barの高圧にかける工程と、b)上記混合物にガスを添加する工程と、c)上記混合物を乾燥させて、連続非晶質相を含む多孔性粒子を形成する(例えば、混合物を噴霧及び乾燥させて、連続非晶質相を含む多孔性粒子を形成する)工程と、d)多孔性粒子を脂肪と混合する工程と、を含む。
【0098】
一実施形態では、甘味料と、増量剤と、界面活性剤とを含む混合物は、完全な溶解が達成されるまで、30%の水、好ましくは40%の水、より好ましくは50%の水と混合されてもよい。甘味料と、増量剤と、界面活性剤とを含む混合物は、高圧、例えば、2bar超、典型的には50~300bar、好ましくは100~200bar、より好ましくは100~150barの圧力にかけられ得る。
【0099】
ガスは、好ましくは、乾燥(例えば、噴霧及び乾燥)の前に混合物中に溶解される。溶解ガスを含む混合物は、乾燥(例えば、噴霧及び乾燥)時まで高圧下で保持される。典型的には、ガスは、窒素、空気、二酸化炭素、亜酸化窒素、及びアルゴンからなる群から選択される。ガスは空気であってもよい。例えば、ガスは窒素であってもよく、上記混合物中へのガスの完全な溶解が達成されるまで添加される。例えば、十分な溶解となるには、少なくとも2分間であってよく、例えば、少なくとも4分間、更に例えば少なくとも10分間、更に例えば少なくとも20分間、更に例えば少なくとも30分間であってよい。
【0100】
乾燥は、噴霧乾燥のプロセスの間に起こってもよい。加圧した混合物を噴霧して液滴を形成し、次いで、液滴を空気のカラム内、例えば温風のカラム内で乾燥すると、液滴は粉末を形成する。
【0101】
本発明の方法の一実施形態では、甘味料と、増量剤と、所望により界面活性剤とを含む混合物は、部分的に凝集したタンパク質、例えば、大豆タンパク質(例えば、大豆グリシニン、更なる例では、コングリシニン)、卵タンパク質(例えば、オボアルブミン、更なる例ではオボグロブリン)、米タンパク質、アーモンドタンパク質、小麦タンパク質(例えば、グルテン)、乳タンパク質(例えば、ホエイタンパク質、更なる例ではカゼイン)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される部分的に凝集したタンパク質を更に含み得る。混合物が乾燥される(例えば噴霧乾燥される)とき、部分的に凝集したタンパク質は、多孔性粒子の非晶質連続相中に分散され、例えば、当該タンパク質は、部分的に凝集したタンパク質の小塊として粒子の連続非晶質相内に分散される。部分的に凝集したタンパク質は、粒子内における多孔の形成を安定させるように作用し得る。タンパク質は、剪断の適用によって、例えば、高剪断ミキサー内でタンパク質溶液又は懸濁液を少なくとも15分間加工することによって、部分的に凝集されていてもよい。タンパク質は、pH5.8~6.2にて、85℃~100℃の温度で、50~400秒間熱処理することによって、部分的に凝集されていてもよい。例えば、全乳粉末又は脱脂粉乳を水中に分散させ、有機酸でpH5.8~6.2に調整して、85℃~100℃の温度まで50~400秒間加熱して、部分的に凝集した乳タンパク質を形成してもよい。
【0102】
更なる例では、部分的に凝集したタンパク質を形成するために、ホエイタンパク質とカゼインとを水中に分散させ、pHを5.8~6.2に調整し、得られた組成物を85℃~100℃の温度まで1分~10分間加熱してもよい。
【0103】
更なる例では、部分的に凝集したタンパク質を形成するために、脱脂粉乳又は全乳を含む水性組成物のpHを6.0~6.2に調整し、組成物を90℃~100℃の温度まで3分~8分間加熱してもよい。
【0104】
部分的に凝集したタンパク質は、カチオンの存在下で形成され得る。例えば、タンパク質の濃度が1~15重量%であり、ミセルカゼインとホエイタンパク質とを、カゼイン対ホエイタンパク質の比90/10~60/40で含む水性タンパク質組成物を、pH6.1~7.1に調整し、二価カチオンを添加して、遊離二価カチオンの濃度を3~8mMとしてもよい。得られた組成物を、85℃~100℃の温度まで30秒~3分間加熱してもよい。二価カチオンは、例えば、Caカチオン、Mgカチオン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0105】
非乳タンパク質を使用して、部分的に凝集したタンパク質を形成してもよい。例えば、大豆(例えば、大豆グリシニン又はコングリシン)、卵(例えば、オボアルブミン又はオボグロブリン)、米、アーモンド、小麦(例えばグルテン)及びこれらの組み合わせからなる群から選択される非乳タンパク質を含む水性タンパク質組成物のpHは、5.8~6.1に調整されてもよく、組成物は、65℃~95℃(例えば68℃~93℃)の温度まで3分~90分間加熱されてもよい。
【0106】
記載されている加工条件は、スプレーノズルを(例えば、噴霧乾燥中に)通過するのに十分小さいサイズを有する部分的に凝集したタンパク質の塊を提供するが、なおも本発明の食品組成物の口当たりに対してプラスの影響を与える。
【0107】
本発明の方法の工程(d)において多孔性粒子を脂肪と混合することによって得られた混合物は、微細化されてもよく、例えば、ロールリファイニングされてもよい。本発明による多孔性粒子の気孔率が、ロールリファニニングなどの菓子フィリング及びスプレッド製造に使用される粒径低減加工に耐えることができることは、有利である。ほぼ球形の孔は、粒子に強い構造をもたらし、多数の小さな閉鎖気孔を有することは、粒子が内部多孔性の顕著な減少を生じずに破砕され得ることを意味する。
【0108】
本発明の方法の工程(d)において多孔性粒子を脂肪と混合することによって得られた混合物は、乳粉末、結晶性スクロース、ヘーゼルナッツ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される成分と更に混合されてもよい。本発明の方法の一実施形態では、乳粉末、結晶性スクロース、ヘーゼルナッツ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を、脂肪と混合し、例えば、ロールリファイナー内で微細化して、脂肪混合物を形成してもよく、次いで、この脂肪混合物を、微細化させていない多孔性粒子と組み合わせてもよい。
【0109】
本発明の方法の工程(d)において多孔性粒子を脂肪と混合することによって得られた混合物は、含気されてもよい。
【0110】
一実施形態では、本発明の方法の工程(d)において多孔性粒子と混合される脂肪は、液体であってもよく、かつ35℃~80℃(例えば、40℃~50℃)の融点を有する高融点脂肪と、15℃~30℃(例えば、18℃~25℃)の融点を有する中融点脂肪と、-50℃~5℃の融点を有する低融点脂肪とを含み得る。上記実施形態における本発明の方法は、当該組成物に第1の結晶化を起こさせる工程当該組成物を含気する工程、並びに含気させた当該組成物において第2の結晶化を生じさせるために、含気させた当該組成物の温度を制御する工程といった、更なる加工工程を含んでもよい。本発明の文脈において、脂肪が液体であるとは、脂肪の固形脂肪含有量が0.1%未満であることを意味する。組成物に第1の結晶化を起こさせることは、組成物を冷却すること、例えば、組成物を高融点脂肪の融点未満であるが中融点脂肪の融点を超える温度まで冷却することを含んでもよい。第1の結晶化は、種結晶を添加することによって開始されてもよく、例えば、組成物を高融点脂肪の融点未満に冷却して、高融点脂肪の種結晶を添加することによって開始されてもよい。本発明の方法のこの実施形態による含気中の組成物の固形脂肪含有量は、総脂肪の5~20%であってもよい。驚くべきことに、脂肪を含む液体組成物を、部分的に結晶化が存在しており、かつゲルが形成される温度まで冷却し、次いで組成物を泡立てることで、安定した泡が生成されることが確認された。組成物は、本発明の方法で含気される前にゲルを形成してもよい。ゲル構造は、含気中及び含気後に発達し続けてもよい。部分結晶化した組成物を含気前に熟成させることによって、良好な結果が得られる場合がある。本発明の方法のこの実施形態では、第1の結晶化と含気の開始との間に少なくとも2分の時間間隔が存在し得る。本発明の方法のこの実施形態における第1の結晶化の温度は、組成物中の高融点脂肪の少なくとも一部の結晶化が、中融点脂肪の顕著な結晶化を伴わずに、例えば、中融点脂肪のいかなる結晶化も伴わずに、可能となるように選択されるべきである。本発明の方法のこの実施形態における第1の結晶化は、16~24℃の組成物温度で実施することができる。加工を容易にするために、いくらかの結晶が残っている場合に限り、温度を含気前に上昇させてもよいが、本発明の方法は、第1の結晶化と第2の結晶化との間に組成物を加熱することなく実施されてもよい。本発明の方法のこの実施形態における第2の結晶化の温度は、組成物中の中融点脂肪の少なくとも一部を結晶化させるように選択されるべきである。第2の結晶化は、第1の結晶化の組成物温度よりも少なくとも5℃低い(例えば、第1の結晶化の組成物温度よりも5℃~20℃低い)組成物温度で実施されてもよい。第2の結晶化は、例えば、冷却トンネル内、例えば、最低温度が5~15℃の冷却トンネル内で、行われてもよい。組成物の固形脂肪含有量は、本発明の方法における第2の結晶化中に、総脂肪の少なくとも10%増加し得る。
【0111】
本発明の方法の実施形態では、方法は、組成物に第1の結晶化を起こさせる工程と、組成物を含気させる工程と、含気組成物の温度を制御して第2の結晶化を生じさせる工程とを含み、本発明の方法は、第2の結晶化の前に、流体であり、かつ優れた泡安定性を有する、部分加工された含気組成物を提供する。これにより、発泡体に、発泡体を破損することが通常予想される加工工程を行うことが可能となる。例えば、本発明の方法における第2の結晶化の前に、2mmを超える平均直径を有する含有物が、含気組成物に混合されてもよい。平均直径が2mmを超える含有物とは、2mmの開口部を有するふるいによって保持されるものである。
【0112】
本発明の方法の実施形態では、方法は、組成物に第1の結晶化を起こさせる工程と、組成物を含気させる工程と、含気組成物の温度を制御して第2の結晶化を生じさせる工程と、を含み、含気は機械的撹拌、例えば、泡立てを含んでもよい。発泡体は、圧力下でガスを溶解又は分散させ、次いでこのガスを解除するなどの非機械的撹拌方法によって得ることができるが、最も安定な発泡体を得るには、機械的撹拌を適用することが好ましい。理論に束縛されるものではないが、機械的撹拌はグリセリド結晶による気泡の包囲(wrapping)を増加させるというものが提案されている。機械的撹拌は、例えば、Haas-Mondomix含気システムなどのローターステーター型の装置を使用して適用できる。第1の結晶化、及び熟成(実施する場合)の後、部分結晶化組成物を穏やかに剪断して、含気システムへの容易な移動を可能にしてもよい。機械的撹拌、例えば泡立ては、少なくとも5秒間(連続ローターステーターシステム内での滞留時間など)、例えば少なくとも1分間、例えば少なくとも5分間(バッチ式泡立て機内など)、例えば少なくとも10分間、更なる例では少なくとも30分間適用されてもよい。泡安定性は、一般的に、機械的撹拌時間の延長とともに増大する。本発明の方法における含気工程は、ガスの減圧に続く機械的泡立てを含み得る。溶解/分散ガスを使用した初期泡発生と、圧力低下に続く機械的撹拌のこのような組み合わせを有効に使用可能であるものの、全ての加工工程は、大気圧又は大気圧付近、例えば、800hPa~2100hPa、例えば850hPa~1100hPaの絶対圧力で実施されてもよい。
【0113】
本発明の方法は、食品組成物を成形型に充填する工程を更に含んでもよく、例えば、組成物が菓子フィリングである場合、組成物はチョコレートシェル成形プロセスにおいて中心として配置され得る。組成物は、押出シリアルと組み合わされてもよく、例えば、端を閉じられたシリアルピロー(cereal pillow)を形成し得るシリアルチューブのフィリングとして共押出されてもよい。含気後の組成物は、ウェハシート間に積層され、例えばウェハ「ブック」を形成してもよい。
【0114】
更なる態様では、本発明はまた、本発明の方法によって得られた(例えば取得可能な)、20℃で柔らかい食感を有する食品組成物を提供する。
【0115】
当業者であれば、本明細書に開示される本発明のすべての特徴を自由に組み合わせることができることを理解するであろう。特に、本発明の組成物のために記載された特徴を本発明の方法と組み合わせてよく、逆もまた同様である。更に、本発明の異なる実施形態について記載された特徴を組み合わせてもよい。周知の均等物が特定の特徴について存在する場合、このような均等物は、本明細書で具体的に言及されているのと同様に組み込まれる。本発明の更なる利点及び特徴は、図及び非限定例から明らかである。
【0116】
実験項
ガラス転移温度の測定
示差走査熱量測定(TA Instrument Q2000)によりガラス転移温度(Tg)を測定した。エンタルピー緩和(enthalpy of relaxation)の消去にはダブルスキャン法を用い、ガラス転移について良好な観察を得た。スキャン速度は5℃/分とした。1回目のスキャンはTgよりも約30℃高温で停止した。この系を次に20℃/分で冷却した。2回目のスキャン中にガラス転移を検出し、熱容量の段階的な変化の発生として定義した。
【0117】
クライオスキャン電子顕微鏡を用いる構造決定
クライオ走査型電子顕微鏡(Cryo-SEM)とX線断層撮影顕微鏡(μCT)を使用して、脂肪ベース食品のマトリックス内の本発明の非晶質多孔性粒子の微細構造を調査する。
【0118】
TissueTekを使用して、1cm3のサンプル片をCryo-SEMサンプルホルダ内に糊付けした。サンプルをcryo-プレパレーションユニットGatan Alto 2500内へ-170℃で移送する前に、スラッシュ窒素中にて迅速に冷却した。凍結させたサンプルを、冷却したナイフを使用して破砕し、内部構造を観察可能にした。チョコレートの外部表面を解析するときには破砕は実施しなかった。プレパレーションユニット内で、表面にある水を、-95℃において15分間、わずかにエッチングし、続いてサンプルを-120℃で安定化させた。最終的なコーティングは、5nmの白金層を表面に適用することにより実施した。可視化のため、高真空モード下、8kVにてFEI Quanta 200 FEGを使用した。
【0119】
真球度の測定
真球度はCamsizer XTにより測定した。Camsizer XTは、粉末、エマルジョン及び懸濁物の大きさ及び形状のパラメータの測定を可能にする光学/電子装置である。デジタル画像解析技術は、277枚/秒のフレームレートで、2台の異なるカメラで同時に撮影した多数のサンプル画像を、コンピュータープロセシングすることによるものである。測定中、サンプルは、2パルスのLED光源により照らされる。粒子径及び粒子形状(真球度を含む)は、それぞれの各分布曲線をリアルタイムで計算する、ユーザーにとって使いやすいソフトウェアにより分析される。粒子の突出部の周囲長と、被覆面積とを測定して、真球度を得た。
【実施例1】
【0120】
【0121】
全ての成分を別々に秤量し、次いで、ポリトロンPT3000Dミキサーを用いて、室温にて、6000~12000rpmの速度で、完全に溶解するまで混合した。インレット溶液を55℃の制御温度で容器に移し、次いで100~130barで圧送する。高圧窒素を、0.5~2NL/分で少なくとも10分間又は少なくとも(a least)ガスが溶液に十分に溶解するまで注入する。60℃で予熱した後、下表に掲載のパラメータによりワンストリーム上面閉鎖式噴霧乾燥機(one-stream closed-top spray drier)を使用して、この溶液を噴霧乾燥する。
【表2】
【0122】
閉鎖気孔性を有する内部構造を有する非晶質多孔性粒子を得た。
図1の顕微鏡写真参照のこと。粉末は、2.17重量%の水分を含有し、50.3%の閉鎖気孔率、46.3μmのD90、及び52.1℃のTgを有した。同様の非晶質多孔性粒子は、50重量%の水と、33.95重量%のスクロースと、14.55重量%のPromitor(登録商標)可溶性繊維(Tate & Lyle)と、1.5重量%のカゼイン酸ナトリウムとを含有する混合物から製造した。測定された真球度の値は、0.85~0.89であった。
【0123】
実施例2
2つのモデルスプレッドレシピを製造した。重量基準での全体的組成は同じであったが、1つのスプレッドでは、結晶性スクロースと脱脂粉乳の一部を、実施例1のスクロース/脱脂粉乳多孔性非晶質粒子で置き換えた。
【表3】
【0124】
スクロース、ヘーゼルナッツ、ココア、レシチン、バニラ、高オレイン酸油及び脱脂乳のプレミックスを、3ロールリファイナー(Refine Exaakt,Haslas GmbH)を使用して微細化した。いずれのリファイナーギャップも30μmに設定した。次いで、実施例1のスクロース/脱脂粉乳多孔性非晶質粒子を添加し、均質な塊が得られるまで5~10分間混合した。
【0125】
多孔性粒子を含む試料は、重量基準では同じパーセンテージのスクロースを有するが、体積基準では糖が22%少ない。試食は、12名の味覚検査員のパネルによって実施した。スプレッドをスプーン上に用意し、各サンプルについて同じ重量をスプーン上に置いた。パネリストは、スプーン一杯を全部口に入れるように指示された。12名のパネリストのうち11名は、多孔性粒子を含むスプレッドの方が甘いとみなした。低脂肪ココア粉末を含有する同様のスプレッドを調製した。
【0126】
多孔性非晶質粒子を含有するスプレッドの食感を測定した。
【0127】
スプレッドのサンプルを、食感解析用のプラスチックカップ(約30mL)に集めた。サンプルを、冷蔵庫内で4℃で30分間硬化させた後、20℃及び28℃で1週間保管した。保管したサンプルの貫入試験を1日後及び7日後に行った。スプレッドの硬度は、5kgのロードセル及び円錐プローブ(60°)を備えたテクスチャーアナライザーHDi-Stable Micro Systemsを使用して評価した。室温における貫入の最大力を測定した。10.0mmの距離での試験速度は1.00mm/秒であった。トリガ力は2gであった。
【0128】
10mmの深さに貫入するために必要な最大力を以下に示す。3回の反復から平均値を抽出した。
【表4】
【0129】
更なるスプレッドのレシピの例を以下に示す。
【表5】
【0130】
実施例3
非晶質粒子の非晶質マトリックスの組成変化による影響を、異なる乳粉末(SMP)及びスクロース比について調べた。非晶質マトリックスは、結晶化に対して安定であるべきである。例えば、菓子フィリング製造の場合、マトリックスは、混合及び微細化中に経験される温度及び湿度条件下で非晶質のままであるべきである。加工条件又は保管条件が、非晶質材料がガラス転移する条件に達する場合、その後、粒子の崩壊をもたらす結晶化が生じる可能性があり、例えば、脱脂粉乳及びスクロースの非晶質多孔性粒子中に存在するラクトースが結晶化し得る。
【0131】
40:60、50:50、60:40、70:30の異なるスクロース:SMP比を有する非晶質多孔性粒子を製造し、純粋な非晶質スクロース及びSMPと比較した。非晶質SMPを噴霧乾燥した。凍結乾燥(Millrock,US)により非晶質スクロースを得た。10%(重量ベース)のスクロースを含有している溶液を調製した。この溶液を-40℃で6時間凍結させて、氷晶を形成させた。150mTorrで一次乾燥を実施した。氷晶は昇華し、空隙を後に残し、高度に多孔性の構造がもたらされる。二次乾燥は、1℃/時間で-40℃~40℃の温度傾斜からなる。この段階の間、マトリックスに結合している残留水を脱着により除去して非常に低い含水率、典型的には、熱重量分析により測定して1~2%の含水率とする。
【0132】
サンプルは最初に異なる水分活性(aw)値を有することから、吸着等温線は同じawでは理論Tgに引き寄せられた。
【0133】
1)短時間の間(すなわち、典型的には、48時間より長く)、2種類のデシケーター(1つは部分乾燥のためのもの、及び1つは加湿のためのもの)にサンプルを回収して、吸着等温線を作成した。各サンプルのTgは、5℃/分の加熱速度(heating ramp)でのDSC実験の2回目のスキャンにより得た。緩和エンタルピーがTg測定に干渉することを避けるため、1回目のスキャンは、Tgより約30℃高い温度で停止させる必要がある。次に、2回目のスキャンにより製品のTgの始まりを求める。Tg+5℃での2時間の加熱後、25℃でawを測定する。
【0134】
2)aw(0.08~0.35)の関数としての含水率のデータに対しBETフィッティングを実施し、及びaw(対応する範囲)の関数としてのTgデータに対しGordon Taylorを実施する。
【0135】
a.ブルナウアー・エメット・テラー式(BET):
【数2】
【0136】
式中、Cは定数であり、MmはBET単分子層水分(monolayer moisture)含有量(乾燥ベース)である。
【0137】
b.Gordon-Taylor式(Gordon及びTaylor、1952):
【数3】
【0138】
式中、wは重量を基準とした含水率であり、Tg,水は-135℃で推定される水のガラス転移温度であり、Tg,乾燥は、スクロースのガラス転移温度であり、kは定曲率である。
【0139】
図2に、25℃及び水分活性0.1の非晶質粒子のガラス転移温度(Tg)をスクロース含有量に対してプロットしている。スクロース含有量が40%(0.66:1の比)以上に増加すると、ガラス転移温度の顕著な低下を見ることができる。これは、スクロース及び脱脂粉乳を含有する非晶質マトリックスにおいて、スクロースのレベルが40%より多いと、安定性(結晶化に対する)が顕著に低下することを意味する。したがって、結晶性スクロースを、スクロースと脱脂粉乳とを含有する本発明の非晶質多孔性粒子で置き換えることにより、食品製品中のスクロース含有量を低減しようとするとき、使用に際しての最適割合は、おおよそ、スクロース40%と脱脂粉乳60%である。
【0140】
実施例4
気孔率及び組成の変更が、溶解速度及び甘味効果に与える影響を調査した。50重量%の水と、50重量%のスクロース+SMP(脱脂粉乳粉末)とを適切な比で含むインレット溶液(inlet solution)を用いて、実施例1と同様に非晶質多孔性粒子を調製した。カゼイン酸ナトリウムは、もともとSMP中に存在していることから添加しなかった。Camsizer XT(Retsch Technology GmbH,Germany)を使用して粒径分布を測定した。
【表6】
【0141】
気孔率のレベルは異なるが類似の粒子径分布及び同じ組成を有するサンプルを調製した。サンプルGは、ガスを注入せずに調製した。これにより非常に低レベルの閉鎖気孔率(6%)が生じた。ガス流を2ノルマルリットル毎分まで変化させて、生成される閉鎖気孔率のレベルを増加させた。
【表7】
【0142】
マトリックス密度及び見かけの密度を測定することにより、閉鎖気孔率を得た。
【0143】
マトリックス密度は、DMA 4500 M(Anton Paar,Switzerland AG)により求めた。サンプルの密度によって異なる固有の振動数で振動するよう励起されるU字形のホウケイ酸ガラス管にサンプルを導入した。装置の精度は、密度については0.00005g/cm3、温度については0.03℃である。
【0144】
粉末の見かけ密度は、Accupyc 1330 Pycnometer(Micrometrics Instrument Corporation,US)により測定した。この装置は、読み取り精度0.03%に公称フルスケールのセル室容積の精度0.03%を加えた範囲内で、体積の補正されたヘリウムの圧力変化を測定することにより、密度及び体積を求める。
【0145】
閉鎖気孔率は、以下の式により、マトリックス密度と見かけ密度とから計算される。
【数4】
【0146】
以下のとおり溶解試験を実施した。磁気撹拌子(L=30mm Φ=6mm)を入れた100mLビーカー(h=85mm Φ=44mm)に、30.0g±0.1gの水(milliQ等級)を入れた。撹拌速度を350rpmに調整し、当該溶液に1.000g±0.002gの粉末を加えた。溶解中、溶液の屈折率は、溶解が完了したことに相当する平坦域に達するまでに要した各秒数として記録された。FISO FTI-10 Fiber Optic Conditionerを使用して屈折率を測定した。これらの試験は室温(23~25℃)で実施した。
【0147】
組成を変化させた結果を
図3に示す。スクロースの割合の低い粉末はよりゆっくりと溶解する。気孔率を変化させた結果を
図4に示す。気孔率が大きい粉末(A及びF)は、ガスを導入しなかったサンプル(G)よりもはるかに迅速に溶解した。
【0148】
実施例5
非晶質粒子の多孔性構造を、Swiss Light Source(SLS)(Paul Scherrer Institut,Switzerland)のTOMCAT beamlineで、シンクロトロン放射X線トモグラフィ顕微鏡法(SRXTM)を使用して調査した。取得は、視野の中央に位置させた回転軸を用いる標準アプローチに従った。15keVでの曝露時間は300msであり、180°にわたり等角度で分割して(equi-angulary distributed)1,501枚の画像を取得した。
【0149】
画像を後処理し、補正したサイノグラムへと再構成した。1画素あたり0.1625μmの解像度で、16ビットのTiff画像(2560×2560ピクセル)のスタックを2161個作成した。
【0150】
薄片データを分析し、コンピューター断層撮影のためAvizo 9.0.0(https://www.fei.com/software/amira-avizo/)ソフトウェアを使用して操作した。
【0151】
測定に使用したルーチンは以下のとおりであった。各サンプルについて、500枚の画像を3スタック解析した。サブボリュームの抽出後、マトリックス材料を特定して選択し、その体積を算出する、自動化ルーチンを用い、画像スタックの閾値を処理した。次に、ソフトウェアの表面生成モジュールを用い、各サンプルの表面を評価し、表面の値を抽出した。材料の全表面(外面及び孔)をもとに、正規化された比表面積をマトリックス体積の比として計算した。
【0152】
異なるレベルの閉鎖気孔率を有する粉末(実施例5のA、F及びG)を、タンパク質を含有していない比較例としての粉末(H)と共に撮像した。粉末Hは、インレット溶液が、50%の水と、25%のスクロースと、25%の21DEマルトデキストリン(Roquette)と、を含有したこと、並びに窒素の代わりに二酸化炭素を使用したことを除き、実施例1における記載と同様の方法で調製した。粉末Hは、31%の閉鎖気孔率を有し、粒子径D90は184μmであった。画像を
図5a(A)、
図5b(F)、
図5c(G)及び
図5d(H)に示す。計算した正規化された比表面積(各々が500の断面からなる3セットの平均)は以下のとおり。
【表8】
【0153】
画像から見て取れるとおり、粉末A及びFの多孔性構造は、多数の小孔を含む。これらの孔の内面により、正規化された比表面積値は高くなる。サンプルFの正規化された比表面積はサンプルAよりも低く、測定された閉鎖気孔率値が低いことと一致する。ガスを導入しなかったサンプルGは気孔率が低く、正規化された比表面積値も低い。サンプルHに関しては、サンプルFと同様の閉鎖気孔率値を有するものの、その構造は非常に異なっており、粒子内に大きな空隙を有することが見て取れる。かかる構造は、小孔が多数の場合よりも物理的に弱く、粒子の外壁が壊れた場合には全く(又はほとんど)多孔性が保持されない。サンプルHは、相応の低い正規化された比表面積値を有する。
【0154】
実施例6
非乳タンパク質を用いた非晶質多孔性粒子の調製
異なる資源(植物、炭水化物、穀類)に由来する3種類の非乳タンパク質を、非晶質多孔性粉末の構成成分として試験した。
【0155】
小麦グルテンタンパク質、エンドウ豆タンパク質、及びジャガイモタンパク質を使用して、3重量%のレベルで非晶質多孔性粉末を調製した。他の構成成分は、60重量%のスクロースと、37重量%のNutriose(登録商標)(Roquetteからの植物性繊維)であった。Nutriose(登録商標)の代わりにラクトースを増量剤として使用して、エンドウ豆タンパク質を含む更なるサンプルを調製した。比較のために、3重量%のカゼイン酸ナトリウムと、60重量%のスクロースと、37重量%のNutriose(登録商標)とを用いて粉末を調製した。構成成分を50%の全固形分で水に溶解し、実施例1に記載のガス注入により噴霧乾燥した。全てのバリエーションについて、10~12L/hのスループットで製造に成功した。
【0156】
粉末の物理的及び化学的特性評価を実施した。水分、ガラス転移、及び水分活性の結果を以下に示す。
【表9】
【0157】
粒子特性の結果を以下に示す。
【0158】
界面活性剤(タンパク質)を変更すると、気孔率が変化する。エンドウ豆タンパク質、ジャガイモタンパク質、及び小麦グルテンタンパク質は、高レベルの閉鎖気孔率をもたらすが、カゼイン酸ナトリウムによって得られる気孔率よりわずかに低い。繊維Nutriose(登録商標)の使用は、閉鎖気孔の形成に有利であると思われる。
【表10】
【0159】
粒子の微細構造をSEM解析により調査した(
図6)。サンプルは、2つの主なサブグループで区別することができる。まず、カゼイン酸ナトリウムを含有する粒子とエンドウ豆タンパク質を含有する粒子とは、ほぼ同等の構造を有することが観察された。粒径は、5~70μmである。これらは高度に含気されており、主に5~10μmの小さな気泡又は空気チャネルが観察される。粒子の外表面上に存在する含気と定義される開放気孔は、ごく限られる。
【0160】
他のサブグループは、小麦グルテンタンパク質を含有する粒子及びジャガイモタンパク質を含有する粒子を含む。粒子壁がより薄いことから、開放気孔率はわずかに高い。内部空隙率は、より大きな気泡又は空気チャネルを示し、比較して、はるかに混沌としている。観察された粒径も、より大きく、最大100μmの粒子が観察される。
【0161】
実施例7
植物性ミルクを用いた非晶質多孔性粒子の調製
固体ベースで5%の植物性ミルクと、35%のマルトデキストリンと、60%のスクロースとが存在するよう、植物性ミルクをマルトデキストリン(DE12-20)及びスクロースと組み合わせた。混合物を、水を用いて全固形分50%で調製し、実施例1と同様にガス注入器で噴霧乾燥した。全てのバリエーションについて、10~12L/hのスループットで問題なく製造される。
【0162】
粉末の物理化学的特性評価を実施した。水分、ガラス転移、及び水分活性の結果を以下に示す。
【表11】
【0163】
粒子特性の結果を以下に示す。
【0164】
植物性ミルクの種類を変化させると、気孔率の変化を招く。全てのバリエーションは高度に含気されており、35%を超える閉鎖気孔率を有した。
【表12】
【0165】
粒子の微細構造をSEM解析により調査した(
図7)。微細構造に関しては、粒子は全てほぼ同等である。粒径は、70μmのオーダーであるが、粒径分布は比較的多分散である。重要なことに、本発明者らは、いくつかの粉末がかなり凝集しており、D90レーザー散乱測定に影響があることを観察した。粒子1つ当たりに、約10μmのサイズで数個の気泡又は空気チャネルとして含気が観察される。
【0166】
実施例8
溶解の速度論
5種類の非晶質多孔性粉末の溶解速度を測定し、同じ方法であるが固体ベースで60%のスクロースと40%の脱脂乳(牛)とを用いて製造した多孔性非晶質粉末(B)と比較した。評価したサンプルは、ラクトースとエンドウ豆(K)、Nutriose(登録商標)と小麦グルテン(L)、マルトデキストリンとアーモンドミルク(Q)、マルトデキストリンとココナッツミルク(O)、及びマルトデキストリンと豆乳(S)であった。結果を
図8にプロットする。スクロースと、アーモンドミルクとマルトデキストリンとを含む粉末の溶解は、スクロースと脱脂乳の溶解よりもはるかに速い。いずれの粉末も同様の粒径を有する。甘味付与材料が速く溶解するほど、甘味の知覚が増加し、これらは相関することが示されている。
【0167】
実施例9
湿潤性測定
スクロース、マルトデキストリン及び植物性ミルクを用いて調製した多孔性非晶質粉末(サンプルN、O、P、Q、R、S)の湿潤特性を評価するために、接触角の測定を実施し、スクロースと脱脂粉乳から調製した多孔性非晶質粉末(B)と比較した。全ての植物性ミルクのサンプルは、完全湿潤性(接触角0°)であることが確認されたのに対し、脱脂粉乳(SMP)を用いた多孔性非晶質粉末は、良好な湿潤性を示すが、完全湿潤性ではなく、接触角は10°である。これは、植物性ミルクのサンプルがSMPサンプルよりも優れた湿潤特性を有することを示すが、粉末床における湿潤性は、粉末の粒径及び粗さによって異なることに注意する必要がある。また、タンパク質の量は、バリエーション間で等しくない。
【0168】
粒子形状及びタンパク質の量の影響を排除するために、20%タンパク質溶液の薄膜層上で接触角測定を行った。以下の表の値は、4回の実験の平均である。
【表13】
【0169】
純粋な溶解したエンドウ豆タンパク質、ジャガイモタンパク質及び小麦グルテンタンパク質は、カゼイン酸ナトリウムよりも良好な湿潤を有することが観察できる。粉末の湿潤性の改善は、粉末が食品の一部であるとき、特に粉末が高レベルで存在するときに、改善された口当たりをもたらし得る。
【0170】
実施例10
非晶質含気糖粒子を含む脂肪ベースの組成物の含気
【0171】
含気スプレッドを、一定体積に対して異なる脂肪含有量で調製した。レシピTは93.5mLに約45gの脂肪、レシピUは84.8mLに約30gの脂肪を含む。レシピは、結晶性スクロース(レシピT1及びU1)又は非晶質連続相を含む多孔性粒子(レシピT2及びU2)のいずれかである。これらの材料は、スプレッドとして使用するのに好適な稠度であるが、特に柔らかいフィリングとして使用することもできる。非晶質連続相を含む多孔性粒子は、残りの実施例において非晶質多孔性糖と呼ばれる。非晶質多孔性糖は、スクロース対脱脂粉乳の比が60:40であり、閉鎖気孔率が58%であった。
【0172】
非晶質多孔性糖が含気されるほど、及び結晶性の糖が体積基準で含気糖によって置き換えられるほど、非晶質糖を含むレシピが示す体積密度は、多孔性により低くなると予想されることをここで述べることは有益である。したがって、比較のために、本明細書に報告される実施例では、非晶質多孔性糖を含むレシピの全ての成分組成は、同様の体積について、参照組成物重量(結晶性スクロースを含む)に基づく重量%で表される。
【0173】
加えて、非晶質多孔性糖粒子は、その組成中に脱脂粉乳を既に含有しており、当該スプレッドのレシピに添加される脱脂粉乳の量は、同一のスプレッド体積を考慮して、結晶性の糖、及び脱脂粉乳、脂肪、及びレシチン含有量に関して同等の組成を有する非晶質多孔性糖と同等のレシピを製造するために調整されている。
【0174】
スプレッドのレシピを以下の表に報告する。
【0175】
最初に、乾燥成分を脂肪ブレンドの一部と混合し、続いて微細化した(3ロールリファイナーを使用して)。非晶質多孔性糖は微細化せず、残留脂肪及びレシチンと共に微細化前の塊に直接添加した。最終組成物混合物を、適用前に50℃のStephanミキサーでブレンドした。
【0176】
2と付記された非晶質多孔性糖を含むレシピは、より低い体積密度を示すことが予想された(以下の表における総重量の減少及び気孔率値の増加によって表される)。したがって、同一のコーティング体積を考慮すると、レシピT1及びT2、並びにレシピU1及びU2は、同様の脱脂乳、脂肪及びレシチン含有量を有する。
【0177】
標準化された3cLプラスチックカップ内のサンプルの重量を測定することにより、体積密度を計算した。体積密度は、三連の平均である。
【0178】
非晶質多孔性糖によってもたらされる初期気孔率(Φ
S)は、基準組成物の体積密度(ρ)と、非晶質多孔性糖を含む組成物のうちの1つを使用することによって計算した。一例として、非晶質多孔性糖を含有するレシピの気孔率を、以下の式に示すように計算した。
【数5】
【表14】
【0179】
IKAスクリューポンプに連結されたMegatron MT-FM30(Kinematica AG)含気ユニットを使用して、スプレッド組成物を含気させ、以下の表に提示される設定パラメータに従って工業用含気システムを模倣した。
【表15】
【0180】
含気後に得られる含気のレベルは、標準化された3cLプラスチックカップ内の体積密度(ρ)測定値に基づく多孔性(Φ)の推定によって評価され、以下の表に報告されている。
【0181】
含気ユニットを通した組成物の脂肪相の含気に由来する気孔率Φ
Fを、以下の式に示すように計算した。
【数6】
【0182】
非晶質多孔性糖粒子による多孔性及び脂肪相の含気の両方を考慮して、含気後の総気孔率、Φ
Tを以下の式に示すように計算した。
【数7】
【表16】
【0183】
見て分かるように、はるかに高いレベルの総気孔率が、非晶質多孔性糖粒子を含む組成物で達成できた。この増加には2つの因子が関係しているものと考えることができる。第1には、非晶質多孔性糖自体によってもたらされる気孔性が関係しているのだが、第2には、驚くべきことに、含気処理中に脂肪相が良好に含気されることが関係しているものと考えられる。後者の因子は、特に低脂肪含有量を変更させた場合(レシピU)のΦFの増大によってよく示されている。