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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02M 53/00 20060101AFI20230418BHJP
   F01P 3/12 20060101ALI20230418BHJP
   F02F 1/36 20060101ALI20230418BHJP
   F02M 31/20 20060101ALI20230418BHJP
   F02M 55/00 20060101ALI20230418BHJP
   F02M 55/02 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
F02M53/00 C
F01P3/12
F02F1/36 Z
F02M31/20 F
F02M55/00 B
F02M55/00 D
F02M55/02 350P
F02M55/02 350U
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020008037
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2021116688
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】長井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 怜央
(72)【発明者】
【氏名】秋朝 智也
(72)【発明者】
【氏名】小村 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】沖見 昇一
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-192077(JP,A)
【文献】特開2018-115640(JP,A)
【文献】特開2004-019516(JP,A)
【文献】特開2016-044580(JP,A)
【文献】特開2013-113162(JP,A)
【文献】特開2017-002794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00~71/04
F01P 3/12
F02F 1/36
F02M 31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッド(16)と、シリンダヘッド(16)に組み付けられたシリンダヘッドカバー(17)と、シリンダヘッドカバー(17)内でシリンダヘッド(16)に取り付けられた燃料インジェクタ(9)と、燃料インジェクタ(9)のオーバーフローパイプ(9a)と、シリンダヘッドカバー(17)内のオーバーフローパイプ(9a)の出口が接続されるシリンダヘッド(16)の燃料放出孔(16a)と、燃料放出孔(16a)から燃料タンク(8)に至る燃料導出経路(10)を備えた、エンジンにおいて、
シリンダヘッド(16)がヘッド冷却水ジャケット(16b)を備え、ヘッド冷却水ジャケット(16b)は、ラジエータ(11)を備えた冷却水循環経路(12)中に配置され、燃料放出孔(16a)の周壁外周面(16aa)がヘッド冷却水ジャケット(16b)内を通過するエンジン冷却水(16c)と接触するように構成され、
シリンダヘッド(16)の燃料放出孔(16a)内に調圧弁(6)が収容され、
調圧弁(6)は、弁体(6a)と、弁体(6a)を閉弁方向に付勢する弁バネ(6b)を備え、
シリンダヘッド(16)の肉壁を露出させた燃料放出孔(16a)内に弁バネ(6b)が露出状態で収容されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載されたエンジンにおいて、
燃料導出経路(10)に燃料クーラ(13)を備えている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたエンジンにおいて、
燃料インジェクタ(9)は、コモンレール燃料噴射式である、ことを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに関し、詳しくは、燃料タンクの熱損傷を防止できるエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンダヘッドと、シリンダヘッドに組み付けられたシリンダヘッドカバーと、シリンダヘッドカバー内でシリンダヘッドに取り付けられた燃料インジェクタと、燃料インジェクタのオーバーフローパイプと、シリンダヘッドカバー内のオーバーフローパイプの出口が接続されるシリンダヘッドの燃料放出孔と、燃料放出孔から燃料タンクへの燃料導出経路を備えた、エンジンがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-223167号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題点》 燃料タンクが熱損傷するおそれがある。
特許文献1のエンジンでは、燃料タンクに戻るオーバーフロー燃料の温度が高く、燃料タンクが熱損傷するおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、燃料タンクの熱損傷を防止することができるエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の主要な構成は、次の通りである。
図1に例示するように、シリンダヘッド(16)と、シリンダヘッド(16)に組み付けられたシリンダヘッドカバー(17)と、シリンダヘッドカバー(17)内でシリンダヘッド(16)に取り付けられた燃料インジェクタ(9)と、燃料インジェクタ(9)のオーバーフローパイプ(9a)と、シリンダヘッドカバー(17)内のオーバーフローパイプ(9a)の出口が接続されるシリンダヘッド(16)の燃料放出孔(16a)と、燃料放出孔(16a)から燃料タンク(8)に至る燃料導出経路(10)を備えた、エンジンにおいて、
図1図2(A)(B)に例示するように、シリンダヘッド(16)がヘッド冷却水ジャケット(16b)を備え、ヘッド冷却水ジャケット(16b)は、ラジエータを備えた冷却水循環経路中に配置され、燃料放出孔(16a)の周壁外周面(16aa)がヘッド冷却水ジャケット(16b)内を通過するエンジン冷却水(16c)と接触するように構成され、
図2(B)に例示するように、シリンダヘッド(16)の燃料放出孔(16a)内に調圧弁(6)が収容され、
調圧弁(6)は、弁体(6a)と、弁体(6a)を閉弁方向に付勢する弁バネ(6b)を備え、
シリンダヘッド(16)の肉壁を露出させた燃料放出孔(16a)内に弁バネ(6b)が露出状態で収容されている、ことを特徴とするエンジン。
【発明の効果】
【0007】
本願発明は、次の効果を奏する。
《効果》 燃料タンク(8)の熱損傷を防止できる。
図1図2(A)(B)に示すように、燃料放出孔(16a)を通過する高温のオーバーフロー燃料(9b)の熱が、燃料放出孔(16a)の周壁外周面(16aa)からヘッド冷却水ジャケット(16b)のエンジン冷却水(16c)に放熱され、温度が低下して図1に示す燃料タンク(8)に戻るため、燃料タンク(8)の燃料(8a)の温度上昇が抑制され、燃料タンク(8)の熱損傷を防止できる。
《効果》燃料インジェクタ(9)の燃料噴射精度を高く維持できる。
オーバーフロー燃料(9b)の背圧が調圧弁(6)によって調圧されるため、燃料インジェクタ(9)の燃料噴射精度を高く維持できる。
《効果》調圧弁(6)の追加が周辺部品の配置の邪魔にならない。
図1に例示するように、シリンダヘッド(16)の燃料放出孔(16a)内に調圧弁(6)が収容されているため、調圧弁(6)の追加が周辺部品の配置の邪魔にならない。
《効果》燃料インジェクタ(9)の燃料噴射精度を高く維持できる。
弁バネ(6b)の調圧設定により弁体(6a)の安定した開弁圧が得られ、燃料インジェクタ(9)の燃料噴射精度を高く維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るエンジンの平面模式図である。
図2図1のエンジンのシリンダヘッドの燃料放出孔とその周辺部分を説明する図で、図2(A)は平面図、図2(B)は図2(A)のB-B線断面図である。
図3図1のエンジンのオーバーフロー導出経路とその周辺部分の斜視図である。
図4図1のエンジンの右側面図である。
図5図1のエンジンの正面図である。
図6図1のエンジンの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1図6は、本発明の実施形態に係るエンジンを説明する図で、この実施形態では、立形の直列多気筒ディーゼルエンジンについて説明する。
【0010】
このエンジンの概要は、次の通りである。
図4に示すように、このエンジンは、シリンダブロック(15)と、シリンダブロック(15)の上部に組み付けられたシリンダヘッド(16)と、シリンダヘッド(16)の上部に組み付けられたシリンダヘッドカバー(17)と、クランク軸(1)の架設方向を前後方向、前後方向の一方を前として、シリンダブロック(15)の前側に配置された伝動カバー(3a)と、シリンダブロック(15)の後部に配置されたフライホイール(20)と、シリンダブロック(15)の下部に組み付けられたオイルパン(29)を備えている。
【0011】
図5に示すように、伝動装置(3)は、調時伝動ギヤトレインで、クランクギヤ(3c)と、クランクギヤ(3c)と噛み合わされた第1アイドルギヤ(3d)と、第1アイドルギヤ(3d)にそれぞれ噛み合わされた動弁カムギヤ(3e)、第2アイドルギヤ(3f)、並びに第3アイドルギヤ(3g)と、第2アイドルギヤ(3f)に噛み合わされた燃料サプライポンプ入力ギヤ(3h)と、第3アイドルギヤ(3g)に噛み合わされたPTO入力ギヤ(3b)を備えている。
PTOは、パワーテイクオフの略称で、動力取り出しを意味する。
図4に示すPTO駆動装置(5)には、油圧ポンプが用いられている。図4に示すように、PTO駆動装置(5)は、PTO軸ケース(4)を介して伝動カバー(3a)に接続されている。
【0012】
図5に示すエンジンオイルの循環経路(18)は、次の通りである。
オイルパン(29)内のエンジンオイルは、オイルポンプ(図示せず)の圧送力で、オイルギャラリ(図示せず)を介して伝動装置(3)の軸受等の摺動部に供給され、オイルパン(29)に戻るが、オイルギャラリの途中でオイルクーラ(7)により冷却され、オイルフィルタ(27)により浄化される。
【0013】
このエンジンは、前後方向と直交する水平方向を左右横方向として、図4,5に示すように、シリンダヘッド(16)の右側面に組み付けられた吸気マニホルド(21)と、吸気マニホルド(21)の吸気入口に組み付けられた吸気スロットル(22)と、シリンダヘッドカバー(17)の右側に架設されたコモンレール(23)と、シリンダブロック(15)の右側に配置された燃料サプライポンプ(24)を備え、図6に示すように、シリンダヘッド(16)の左側面に組み付けられた排気マニホルド(25)と、排気マニホルド(25)の排気出口に組み付けられた過給機(26)を備えている。
【0014】
このエンジンの燃料供給装置は、図4,5に示す燃料サプライポンプ(24)やコモンレール(23)からなるコモンレール式燃料噴射装置である。
このエンジンの吸気装置は、エアクリーナ(図示せず)と、図6に示す過給機(26)のエアコンプレッサ(26a)と、図4,5に示す吸気スロットル(22)と、吸気マニホルド(21)を備えている。
このエンジンの排気装置は、図5,6に示す排気マニホルド(25)と、過給機(26)の排気タービン(26b)と、排気処理装置(28)を備えている。排気処理装置(28)は、排気処理ケース(28a)内にDOC(図示せず)とDPF(図示せず)を収容している。DOCはディーゼル酸化触媒の略称、DPFはディーゼル・パティキュレート・フィルタの略称である。
【0015】
図1に示すように、このエンジンは、シリンダヘッド(16)と、シリンダヘッド(16)に組み付けられたシリンダヘッドカバー(17)と、シリンダヘッドカバー(17)内でシリンダヘッド(16)に取り付けられた燃料インジェクタ(9)と、燃料インジェクタ(9)のオーバーフローパイプ(9a)と、シリンダヘッドカバー(17)内のオーバーフローパイプ(9a)の出口が接続されるシリンダヘッド(16)の燃料放出孔(16a)と、燃料放出孔(16a)から燃料タンク(8)に至る燃料導出経路(10)を備えている。
【0016】
図1図2(A)(B)に示すように、このエンジンでは、シリンダヘッド(16)がヘッド冷却水ジャケット(16b)を備え、ヘッド冷却水ジャケット(16b)は、ラジエータ(11)を備えた冷却水循環経路(12)中に配置され、燃料放出孔(16a)の周壁外周面(16aa)がヘッド冷却水ジャケット(16b)内を通過するエンジン冷却水(16c)と接触するように構成されている。
【0017】
上記構成によれば、図1図2(A)(B)に示すように、燃料放出孔(16a)を通過する高温のオーバーフロー燃料(9b)の熱が、燃料放出孔(16a)の周壁外周面(16aa)からヘッド冷却水ジャケット(16b)のエンジン冷却水(16c)に放熱され、温度が低下して図1に示す燃料タンク(8)に戻るため、燃料タンク(8)の燃料(8a)の温度上昇が抑制され、燃料タンク(8)の熱損傷を防止できる。燃料タンク(8)は、合成樹脂製である。
【0018】
図2(A)に示す冷却水循環経路(12)は、ヘッド冷却水ジャケット(16b)と、ラジエータ(11)と、水ポンプ(14)と、シリンダブロック(15)(図4参照)のシリンダ(図示せず)を周囲から取り囲むシリンダ冷却水ジャケット(15a)を備え、ヘッド冷却水ジャケット(16b)のエンジン冷却水(16c)は、水ポンプ(14)の圧送力で、ラジエータ(11)、水ポンプ(14)、シリンダ冷却水ジャケット(15a)を順に通過し、ヘッド冷却水ジャケット(16b)に戻る。
【0019】
図1に示すように、このエンジンは、燃料導出経路(10)に燃料クーラ(13)を備えている。
上記構成によれば、図1に示す燃料放出孔(16a)で放熱されたオーバーフロー燃料(9b)が更に燃料クーラ(13)で温度低下して燃料タンク(8)に戻るため、燃料タンク(8)の燃料の温度上昇が抑制され、燃料タンク(8)の熱損傷を防止できる。
更に、上記構成によれば、図1に示すヘッド冷却水ジャケット(16b)を通過するエンジン冷却水(16c)で予め冷却したオーバーフロー燃料(9b)を燃料クーラ(13)で冷却するため、冷却性能が低い小型の燃料クーラ(13)を用いることができる。
【0020】
このエンジンは、図1に示すように、シリンダヘッド(16)の燃料放出孔(16a)内に調圧弁(6)が収容されている。
上記構成によれば、図1に示すように、オーバーフロー燃料(9b)の背圧が調圧弁(6)によって調圧されるため、燃料インジェクタ(9)の燃料噴射精度を高く維持できる。
また、図1に示すように、シリンダヘッド(16)の燃料放出孔(16a)内に調圧弁(6)が収容されているため、調圧弁(6)の追加が周辺部品の配置の邪魔にならない。
【0021】
図2(B)に示すように、調圧弁(6)は、弁体(6a)と、弁体(6a)を閉弁方向に付勢する弁バネ(6b)を備えている。
上記構成によれば、弁バネ(6b)の調圧設定により弁体(6a)の安定した開弁圧が得られ、燃料インジェクタ(9)の燃料噴射精度を高く維持できる。
弁体(6a)は鋼球で、弁バネ(6b)の閉弁力で弁座(6c)に着座する。
また、シリンダヘッド(16)の肉壁を露出させた燃料放出孔(16a)内に弁バネ(6b)が露出状態で収容されている。
【0022】
図1に示すように、燃料インジェクタ(9)は、コモンレール燃料噴射式である。
上記構成によれば、図1に示すように、コモンレール噴射式の燃料導出経路(10)には、燃料インジェクタ(9)からのオーバーフロー燃料(9b)を燃料サプライポンプ(24)やコモンレール(23)からのオーバーフロー燃料(24b)と合流させ、この合流した合流燃料(10a)を燃料タンク(8)に戻すオープン経路と、この合流燃料を、再度、燃料サプライポンプ(24)のポンプ入口(24a)に戻すクローズド経路があるが、いずれの経路の場合でも、オーバーフロー燃料(9b)の背圧が調圧弁(6)によって調圧されるため、燃料導出経路(10)の仕様に拘わらず、燃料インジェクタ(9)の燃料噴射精度を同程度に高く維持できる。
なお、図1中の符号(8a)は燃料(軽油)、(24c)は供給燃料、(9c)は加圧燃料である。
【符号の説明】
【0023】
(6)…調圧弁、(6a)…弁体、(6b)…弁バネ、(8)…燃料タンク、(9)…燃料インジェクタ、(9a)…オーバーフローパイプ、(10)…オーバーフロー導出経路、(11)…ラジエータ、(12)…冷却水循環経路、(13)…燃料クーラ(16)…シリンダヘッド、(16a)…燃料放出孔、(16aa)…周壁外周面、(16b)…ヘッド冷却水ジャケット、(16c)…エンジン冷却水、(17)…シリンダヘッドカバー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6