(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】力覚提示システム、制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/04845 20220101AFI20230418BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20230418BHJP
G06F 3/0362 20130101ALI20230418BHJP
G06T 19/00 20110101ALI20230418BHJP
【FI】
G06F3/04845
G06F3/01 560
G06F3/0362 463
G06T19/00 C
(21)【出願番号】P 2020039531
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】東條 直也
【審査官】木村 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-096171(JP,A)
【文献】特表2012-527004(JP,A)
【文献】特開2017-123039(JP,A)
【文献】特開2005-141102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/04845
G06F 3/01
G06F 3/0362
G06T 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
力覚を提示する力覚提示装置と、前記力覚提示装置を制御する制御装置、とを備え、
前記力覚提示装置は、
押されることにより変位した量に応じた大きさの可動部反力を発生する可動部と、
前記可動部が押されることによって前記可動部が変位した量である可動部変位量を検出する変位量検出部と、
前記力覚提示装置の向きを特定する向き特定部と、
を有し、
前記制御装置は、
複数の物体に関連付けて、
前記複数の物体それぞれにおける位置と、前記可動部変位量と、前記可動部に発生させる可動部反力との関係を示す反力情報を取得する情報取得部と、
前記複数の物体から選択された1つの選択物体を特定する選択物体特定部と、
前記選択物体に関連付けられた前記反力情報において、前記向き特定部が特定した前記力覚提示装置の向きに対応する前記選択物体における位置と、前記力覚提示装置から通知された前記可動部変位量
と、に関連付けられた前記可動部反力を発生させるように前記可動部を制御する力覚制御部と、
前記選択物体の画像データである物体画像データを取得する画像データ取得部と、
前記可動部変位量に基づいて前記物体画像データを変形させることにより変形画像データを作成する画像データ作成部と、
前記変形画像データを表示装置に表示させる表示制御部と、
を有する力覚提示システム。
【請求項2】
前記画像データ取得部は、複数の前記可動部変位量それぞれに対応する複数の前記変形画像データを取得し、
前記画像データ作成部は、前記複数の変形画像データから、前記可動部変位量に対応する前記変形画像データを選択する、
請求項1に記載の力覚提示システム。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記可動部変位量が変化することに応じて、それぞれ形状が異なる前記変形画像データを順次前記表示装置に表示させる、
請求項1又は2に記載の力覚提示システム。
【請求項4】
前記情報取得部は、複数の物体に関連付けて、前記可動部変位量と、前記選択物体の弾性及び粘性を示す前記反力情報を取得する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の力覚提示システム。
【請求項5】
力覚を提示する力覚提示装置の可動部を制御する制御装置であって、
複数の物体に関連付けて、
前記複数の物体それぞれにおける位置と、前記可動部が押されることによって前記可動部が変位した量である可動部変位量と、前記可動部に発生させる反力である可動部反力との関係を示す反力情報を取得する情報取得部と、
前記複数の物体から選択された1つの選択物体を特定する選択物体特定部と、
前記選択物体に関連付けられた前記反力情報において、前記力覚提示装置が特定した前記力覚提示装置の向きに対応する前記選択物体における位置と、前記力覚提示装置から取得した可動部変位量
と、に関連付けられた前記可動部反力を発生させるように前記可動部を制御する力覚制御部と、
前記選択物体の画像データである物体画像データを取得する画像データ取得部と、
前記可動部変位量に基づいて前記物体画像データを変形させることにより変形画像データを作成する画像データ作成部と、
前記変形画像データを表示装置に表示させる表示制御部と、
を有する制御装置。
【請求項6】
力覚を提示する力覚提示装置の可動部を制御する制御装置が有するプロセッサを、
複数の物体に関連付けて、
前記複数の物体それぞれにおける位置と、前記可動部が押されることによって前記可動部が変位した量である可動部変位量と、前記可動部に発生させる反力である可動部反力との関係を示す反力情報を取得する情報取得部、
前記複数の物体から選択された1つの選択物体を特定する選択物体特定部、
前記選択物体に関連付けられた前記反力情報において、前記力覚提示装置が特定した前記力覚提示装置の向きに対応する前記選択物体における位置と、前記力覚提示装置から取得した可動部変位量
と、に関連付けられた前記可動部反力を発生させるように前記可動部を制御する力覚制御部、
前記選択物体の画像データである物体画像データを取得する画像データ取得部、
前記可動部変位量に基づいて前記物体画像データを変形させることにより変形画像データを作成する画像データ作成部、及び
前記変形画像データを表示装置に表示させる表示制御部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体に触った時の感触を示す力覚を提示するための力覚提示システム、制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商品の触感を体感させるための装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載された装置においては、ユーザが選択した商品の画像を表示するとともに、商品によってタッチパネルの変位量を変えることで、ユーザが商品の触感を確かめることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の装置においては、商品の触感をユーザに提示するためのタッチパネルをユーザが触っている間に商品の画像が表示される。しかしながら、商品の通常状態の形状を示す画像が表示されるだけなので、ユーザは、商品を触った時に商品がどのような形状になるかを把握することができないという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、ユーザが物体を触った時の力覚を提示する際に、物体の形状をユーザが把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の力覚提示システムは、力覚を提示する力覚提示装置と、前記力覚提示装置を制御する制御装置、とを備える。前記力覚提示装置は、押されることにより変位した量に応じた大きさの可動部反力を発生する可動部と、前記可動部が押されることによって前記可動部が変位した量である可動部変位量を検出する変位量検出部と、を有する。前記制御装置は、複数の物体に関連付けて、前記可動部変位量と、前記可動部に発生させる可動部反力との関係を示す反力情報を取得する情報取得部と、前記複数の物体から選択された1つの選択物体を特定する選択物体特定部と、前記反力情報において前記力覚提示装置から通知された前記可動部変位量に関連付けられた前記可動部反力を発生させるように前記可動部を制御する力覚制御部と、前記選択物体の画像データである物体画像データを取得する画像データ取得部と、前記可動部変位量に基づいて前記物体画像データを変形させることにより変形画像データを作成する画像データ作成部と、前記変形画像データを表示装置に表示させる表示制御部と、を有する。
【0007】
前記画像データ取得部は、複数の前記可動部変位量それぞれに対応する複数の前記変形画像データを取得し、前記画像データ作成部は、前記複数の変形画像データから、前記可動部変位量に対応する前記変形画像データを選択してもよい。
【0008】
前記表示制御部は、前記可動部変位量が変化することに応じて、それぞれ形状が異なる前記変形画像データを順次前記表示装置に表示させてもよい。
【0009】
前記情報取得部は、複数の物体に関連付けて、前記可動部変位量と、前記選択物体の弾性及び粘性を示す前記反力情報を取得してもよい。
【0010】
前記力覚提示装置は、前記力覚提示装置の向きを特定する向き特定部をさらに有し、前記情報取得部は、前記複数の物体それぞれの位置に関連付けて、前記可動部変位量と、前記可動部に発生させる前記可動部反力との関係を示す前記反力情報を取得し、前記力覚制御部は、前記反力情報において前記向き特定部が特定した向きに対応する位置と、前記可動部変位量と、に対応する前記可動部反力を発生させるように前記可動部を制御してもよい。
【0011】
本発明の第2の態様の制御装置は、力覚を提示する力覚提示装置の可動部を制御する制御装置であって、複数の物体に関連付けて、前記可動部が押されることによって前記可動部が変位した量である可動部変位量と、前記可動部に発生させる反力である可動部反力との関係を示す反力情報を取得する情報取得部と、前記複数の物体から選択された1つの選択物体を特定する選択物体特定部と、前記反力情報において前記力覚提示装置から取得した可動部変位量に関連付けられた前記可動部反力を発生させるように前記可動部を制御する力覚制御部と、前記選択物体の画像データである物体画像データを取得する画像データ取得部と、前記可動部変位量に基づいて前記物体画像データを変形させることにより変形画像データを作成する画像データ作成部と、前記変形画像データを表示装置に表示させる表示制御部と、を有する。
【0012】
本発明の第3の態様のプログラムは、力覚を提示する力覚提示装置の可動部を制御する制御装置が有するプロセッサを、複数の物体に関連付けて、前記可動部が押されることによって前記可動部が変位した量である可動部変位量と、前記可動部に発生させる反力である可動部反力との関係を示す反力情報を取得する情報取得部、前記複数の物体から選択された1つの選択物体を特定する選択物体特定部、前記反力情報において前記力覚提示装置から取得した可動部変位量に関連付けられた前記可動部反力を発生させるように前記可動部を制御する力覚制御部、前記選択物体の画像データである物体画像データを取得する画像データ取得部、前記可動部変位量に基づいて前記物体画像データを変形させることにより変形画像データを作成する画像データ作成部、及び前記変形画像データを表示装置に表示させる表示制御部、として機能させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザが物体を触った時の力覚を提示する際に、物体の形状をユーザが把握できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】力覚提示装置1及び制御装置2の構成を示す図である。
【
図3】変位量検出部12の動作を説明するための図である。
【
図4】記憶部22が記憶する反力情報データを示す図である。
【
図6】制御装置2が力覚提示装置1に力覚を提示させる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】変形例に係る力覚提示システムSの概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[力覚提示システムSの概要]
図1は、力覚提示システムSの概要を示す図である。力覚提示システムSは、力覚提示装置1と、制御装置2と、表示装置3と、を備える。力覚提示システムSは、ユーザUに対して、ユーザUの手元にない物体を押したときの感触である力覚をユーザに提示するためのシステムである。
【0016】
力覚提示装置1は、ユーザUに力覚を提示するための装置である。力覚提示装置1は、本体部10と、可動部11とを有する。本体部10は、力覚提示装置1を机又は床等に載置するための土台であり、例えば直方体形状をしている。
【0017】
可動部11は、本体部10の一つの面において、長手方向に移動可能な状態で本体部10に取り付けられている。可動部11は、ユーザUによって押されることにより変位した量に応じた大きさの可動部反力を発生するアクチュエータを有する。可動部11は、例えば、ユーザUが押す量が増えるにつれて、より大きな反力を発生する。可動部11は、制御装置2の制御によって可動部反力の大きさを変化させることができる。
【0018】
制御装置2は、可動部11を制御するとともに、表示装置3に画像を表示させる。制御装置2は、例えば、ユーザUが選択した物体に対応する可動部反力を発生するように可動部11を制御する。また、制御装置2は、ユーザUが選択した物体の画像を表示装置3に表示させる。この際、制御装置2は、ユーザUが可動部11を押すにつれて表示装置3に表示される物体の画像を変形させる。
【0019】
具体的には、制御装置2は、可動部11の変位量を示す情報を力覚提示装置1から取得し、取得した変位量に基づいて物体の画像を変形させる。力覚提示装置1がこのように動作することで、ユーザUは、可動部11を押している間に物体が変形する様子を視認することができる。その結果、ユーザUは、あたかも物体を実際に押しているように感じることができる。
【0020】
制御装置2は、物体の画像を表示する前に、例えば、ユーザUが購入することが可能な複数の商品を特定するための情報を表示する。制御装置2は、複数の商品から一つの商品をユーザUが選択すると、選択された商品の画像を表示装置3に表示させる。また、選択された商品の粘弾性に対応する可動部反力を可動部11が発生するように可動部11を制御する。
以下、力覚提示装置1及び制御装置2の構成及び動作を詳細に説明する。
【0021】
[力覚提示装置1及び制御装置2の構成]
図2は、力覚提示装置1及び制御装置2の構成を示す図である。力覚提示装置1と制御装置2との間は、シリアル通信ケーブル、又はBluetooth(登録商標)等の無線通信回線等の通信回線により接続されている。
【0022】
力覚提示装置1は、上述した本体部10及び可動部11の他に、変位量検出部12を有する。変位量検出部12は、可動部11が押されることによって可動部11が変位した量である可動部変位量を検出する。変位量検出部12は、通信回線を介して、検出した可動部変位量を制御装置2に送信する。
【0023】
図3は、変位量検出部12の動作を説明するための図である。
図3(a)は、可動部11が押されていない状態を示しており、
図3(b)は、可動部11が押されている状態を示している。変位量検出部12は、
図3(a)に示す状態における位置を基準とする可動部11の長手方向の変位量を検出する。
図3(a)に示す状態において、可動部11の上面の位置がx=x0(m)であり、可動部11は、重力及び摩擦力を補償するためのF=F0(N)の力を発する。
【0024】
図3(b)に示す状態において、可動部11の上面の位置がx=x1(m)である。この場合、変位量検出部12は、
図3(b)の状態における可動部変位量をΔx=x1-x0と検出する。この状態で、可動部11は、F=F0+F1(N)の力を発し、ユーザは、F1(N)の反力を感じる。
【0025】
変位量検出部12は、可動部11の変位速度をさらに検出してもよい。
図3(a)の状態においては可動部11が動いていないので、変位速度v=0(m/s)である。一方、
図3(b)の状態においては可動部11が動いており、v=v1(m/s)である。変位量検出部12は、検出した可動部変位量及び変位速度を制御装置2に通知する。
【0026】
可動部11は、力覚提示装置1との間の通信回線を介して、可動部反力を発生するために用いる反力情報を制御装置2から受信する。反力情報は、可動部変位量と可動部反力との関係を示す情報である。可動部11は、受信した反力情報において変位量検出部12から通知された可動部変位量に関連付けられた可動部反力を発生させる。
【0027】
続いて、制御装置2の構成及び動作を説明する。制御装置2は、通信部21と、記憶部22と、制御部23とを有する。
【0028】
通信部21は、外部装置との間でデータを送受信するための通信インターフェースである。通信部21は、例えばインターネット又はイントラネットに接続するための通信コントローラを有する。
【0029】
記憶部22は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等の記憶媒体を有する。記憶部22は、制御部23が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部22は、物体に関連付けられた反力情報を含む反力情報データを記憶する。
【0030】
図4は、記憶部22が記憶する反力情報データを示す図である。
図4に示す反力情報データは、複数の物体に対応する反力情報を含んでいる。
図4に示す反力情報データにおいては、情報IDと、物体名と、弾性係数と、粘性係数と、物体画像データ名とが関連付けられている。物体画像データは、表示装置3に表示される物体の画像データである。
【0031】
図5は、物体画像データの一例を示す図である。物体画像データにおいては、可動部変位量と、物体の変形状態を示す変形画像データとが関連付けられている。変位量0には、物体が変形していない状態の変形画像データが関連付けられている。変位量xaには、物体が少し凹んだ状態の変形画像データが関連付けられている。変位量xbには、物体がさらに凹んだ状態の変形画像データが関連付けられている。これらの変形画像データにおいては、物体における凹んだ部分に先端が当たっている指の画像も示されている。
【0032】
制御部23は、例えばCPU(Central Processing Unit)を有する。制御部23は、記憶部22に記憶されたプログラムを実行することにより、情報取得部231、選択物体特定部232、力覚制御部233、画像データ取得部234、画像データ作成部235及び表示制御部236として機能する。
【0033】
情報取得部231は、複数の物体に関連付けて、可動部変位量と、可動部11に発生させる可動部反力との関係を示す反力情報を取得する。具体的には、情報取得部231は、複数の物体に関連付けて、可動部変位量と、後述する選択物体特定部232が特定する選択物体の弾性及び粘性との関係を示す反力情報を取得する。情報取得部231は、例えば、外部装置から反力情報を取得してもよく、予め記憶部22に記憶された反力情報を取得してもよい。情報取得部231は、複数の物体に対応する複数の反力情報を外部装置から同時に取得して記憶部22に記憶させてもよく、ユーザUにより指定された物体に対応する1つの反力情報を取得し、取得した反力情報を力覚制御部233に通知してもよい。
【0034】
選択物体特定部232は、複数の物体から選択された1つの選択物体を特定する。選択物体特定部232は、例えば、通信部21を介して、ユーザUが使用する情報端末(例えばスマートフォン又はコンピュータ)において選択された物体を特定するための情報を取得し、取得した情報に基づいて、ユーザUに力覚を提示する対象となる選択物体を特定する。選択物体特定部232は、特定した選択物体を特定するための情報(例えば物体識別情報)を力覚制御部233に通知する。
【0035】
力覚制御部233は、反力情報において可動部変位量に関連付けられた可動部反力を発生させるように可動部11を制御する。力覚制御部233は、
図4に示した反力情報データにおいて、選択物体特定部232から通知された選択物体に対応する弾性係数k(N/m)及び粘性係数d(Ns/m)を読み出して、以下の式を用いて、可動部11の可動部変位量がx、速度がvの場合の反力Fの大きさを算出する。
F=F0+kx+dv
【0036】
ここで、F0は、上述したように、可動部11に加わる重力及び摩擦力等の外乱力を同定することにより決定された値である。k及びdの値も事前に試験を行って、実際の物体を人が押した場合の感触と可動部11を押した場合の感触とを同定することにより決定された値である。
【0037】
画像データ取得部234は、選択物体の画像データである物体画像データを取得する。画像データ取得部234は、例えば複数の可動部変位量それぞれに対応する複数の変形画像データを取得する。画像データ取得部234は、物体画像データを記憶している外部装置から選択物体に対応する物体画像データを取得してもよく、予め記憶部22に記憶されている複数の物体画像データから、選択物体に対応する物体画像データを取得してもよい。
【0038】
画像データ作成部235は、可動部変位量に基づいて物体画像データを変形させることにより変形画像データを作成する。画像データ作成部235は、例えば
図5に示した物体画像データを参照し、複数の変形画像データから、可動部変位量に対応する変形画像データを選択することにより、変形画像データを作成する。画像データ作成部235は、可動部変位量が0の場合の変形画像データを基準として、演算処理をすることによって可動部変位量に応じた変形画像データを作成してもよい。画像データ作成部235は、作成した変形画像データを表示制御部236に通知する。
【0039】
表示制御部236は、画像データ作成部235から通知された変形画像データを表示装置3に表示させる。表示制御部236は、可動部変位量が変化することに応じて、それぞれ形状が異なる変形画像データを順次表示装置3に表示させる。表示制御部236は、所定の時間間隔(例えば100ミリ秒)ごとに、可動部変位量に対応する変形画像データを順次表示装置3に表示させることで、ユーザUが可動部11を押す動作に応じて物体の形状が変化するような動画像をユーザUに視認させることができる。
【0040】
[制御装置2の処理の流れ]
図6は、制御装置2が力覚提示装置1に力覚を提示させる処理の流れを示すフローチャートである。
図6に示すフローチャートは、ユーザUが、感触を確認する対象となる物体を選択することが可能なアプリケーションソフトウェアを起動した時点から開始している。
【0041】
情報取得部231は、ユーザUが選択した物体を特定するための情報を取得することにより、選択物体を特定する(S11)。続いて、力覚制御部233は、ユーザUが、力覚の提示を開始する操作をしたか否かを判定する(S12)。力覚制御部233は、力覚の提示を開始する操作を受けたと判定した場合(S12においてYES)、可動部11の初期位置を示す初期位置情報を力覚提示装置1から取得する(S13)。
【0042】
続いて、力覚制御部233は、力覚提示装置1から可動部変位量の取得を開始する(S14)。力覚制御部233は、取得した可動部変位量に対応する可動部反力を算出し(S15)、算出した可動部反力を可動部11に通知することにより可動部11が発生する反力を制御する(S16)。
【0043】
また、力覚制御部233は、可動部変位量を画像データ作成部235に通知し、画像データ作成部235は、可動部変位量に対応する変形画像データを作成する(S17)。表示制御部236は、画像データ作成部235が作成した変形画像データを表示装置3に表示させる(S18)。
【0044】
力覚制御部233は、力覚の提示を終了する操作をユーザUから受けたか否かを確認し(S19)、終了操作を受けていない場合(S19においてNO)、S14からS19までの処理を繰り返す。力覚制御部233は、終了操作を受けた場合、力覚を提示する処理を終了する。
【0045】
以上のように力覚提示システムSが動作することで、ユーザUは、可動部11を押すことによって物体の感触を確かめつつ、物体が変形する様子を視認することができる。したがって、ユーザUが物体を触った時の力覚を提示する際に、物体の形状をユーザUが把握できる。
【0046】
[第1変形例]
図7は、変形例に係る力覚提示システムSの概要を示す図である。以上の説明においては、可動部11の可動方向が上下方向であり、ユーザUが可動部11を上方から下方に向けて押す場合を例示したが、
図7に示す力覚提示システムSにおいては、ユーザUが他の向きに可動部11を押すという点で異なっている。
【0047】
本変形例に係る力覚提示装置1は、力覚提示装置1の向きを特定する向き特定部をさらに有している。向き特定部は、例えばジャイロセンサーを有しており、可動部11の可動方向を特定する。向き特定部は、特定した可動方向を力覚制御部233及び画像データ作成部235に通知する。可動方向は、例えば上下方向を基準とする角度を示す情報である。
【0048】
情報取得部231は、複数の物体それぞれの位置に関連付けて、可動変位量と、選択物体が発する反力との関係を示す反力情報を取得する。物体の位置は、例えば、物体が所定の向きに載置された場合の中心位置に対する極座標によって表される。情報取得部231は、例えば、物体の上方に対応する反力情報、物体の右方に対応する反力情報、物体の左方に対応する反力情報、物体の前方に対応する反力情報、物体の後方に対応する反力情報等を取得する。
【0049】
物体のそれぞれの位置に対応する反力情報は異なっていてもよい。例えば、上下方向の弾性及び粘性が大きく、左右方向の弾性及び粘性が小さい物体の場合、物体の上方に対応する反力情報に含まれる弾性係数及び粘性係数と、物体の右方及び左方に対応する弾性係数及び粘性係数とが異なっている。
【0050】
力覚制御部233は、反力情報において向き特定部が特定した向きに対応する位置と、可動部変位量と、に対応する可動部反力を発生させるように可動部11を制御する。
図7に示す例の場合、向き特定部は、可動部11が右向きであることを特定し、力覚制御部233は、物体の右方に対応する反力情報に基づいて可動部11に発生させる可動部反力を決定する。
【0051】
さらに、画像データ作成部235は、向き特定部から通知された力覚提示装置1の向きに対応する位置の形状が可動部変位量に応じて変化する変形画像データを作成し、表示制御部236は当該変形画像データを順次表示装置3に表示させる。
図7に示す例においては、物体の右側が変形している画像が表示装置3に表示されており、指の位置も力覚提示装置1の向きに対応する位置に表示されている。
【0052】
このように力覚提示システムSが動作することで、ユーザUは、物体のさまざまな位置の感触を確かめることができるので、位置によって弾性や粘性が異なる物体の感触をユーザUが詳細に確認することが可能になる。
【0053】
[第2変形例]
以上の説明においては、1本の指で物体を押している画像が表示装置3に表示されたが、画像の態様はこれに限らない。力覚提示装置1は、ユーザUが可動部11に触れている指の数を検出し、検出した指の数を制御装置2に通知してもよい。表示制御部236は、通知された数の指で物体を押している状態を示す変形画像データを表示装置3に表示させてもよい。
【0054】
[第3変形例]
以上の説明においては、変位量検出部12が可動部11の変位速度を検出する場合を例示したが、変位量検出部12が変位速度を検出せず、変位量検出部12が検出した可動部変位量に基づいて、力覚制御部233が可動部11の変位速度を検出してもよい。力覚制御部233は、例えば、変位量検出部12から通知された可動部変位量を時間微分することによって可動部11の変位速度を検出することができる。
【0055】
[第4変形例]
以上の説明においては、表示装置3が大型のディスプレイである場合を例示したが、表示装置3の態様は任意であり、例えばヘッドマウントディスプレイであってもよい。この場合、制御装置2と表示装置3とが一体になっており、ヘッドマウントディスプレイが制御装置2として機能するプロセッサ、及び表示装置3として機能するディスプレイを有していてもよい。
【0056】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0057】
1 力覚提示装置
2 制御装置
3 表示装置
10 本体部
11 可動部
12 変位量検出部
21 通信部
22 記憶部
23 制御部
231 情報取得部
232 選択物体特定部
233 力覚制御部
234 画像データ取得部
235 画像データ作成部
236 表示制御部