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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】フェーズドアレイアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 3/26 20060101AFI20230418BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20230418BHJP
   H01Q 23/00 20060101ALI20230418BHJP
   H01Q 13/06 20060101ALI20230418BHJP
   H01Q 9/28 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
H01Q3/26 Z
H01Q21/06
H01Q23/00
H01Q13/06
H01Q9/28
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020516748
(86)(22)【出願日】2018-09-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2018075791
(87)【国際公開番号】W WO2019057965
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】17192899.7
(32)【優先日】2017-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515096169
【氏名又は名称】ギャップウェーブス アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ジャン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、エマニュエルソン
(72)【発明者】
【氏名】アシュラフ、ウッザマン
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-147725(JP,A)
【文献】特表2017-519404(JP,A)
【文献】特表2012-514431(JP,A)
【文献】特開2001-313581(JP,A)
【文献】国際公開第2017/086855(WO,A1)
【文献】特開2003-163513(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105428800(CN,A)
【文献】国際公開第2012/128127(WO,A1)
【文献】Ashraf Uz Zaman,Gap Waveguide PMC Packaging for Improved Isolation of Circuit Components in High-Frequency Microwave Modules,IEEE Transactions on Components, Packaging and Manufacturing Technology,Volume 4, Issue 1,2013年10月18日,Pages 16-25
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/26
H01Q 21/06
H01Q 23/00
H01Q 13/06
H01Q 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の突出ポストを伴う基板を備えるベース層であって、前記ポストが前記ベース層に沿う波の伝搬を停止させるためのものである、ベース層と、
前記ベース層上に配置されるプリント回路基板(PCB)であって、前記ベース層及び前記突出ポストに面する前記PCBの第1の側に少なくとも1つのフェーズドアレイ無線周波数(RF)集積回路(IC)を備え、前記PCBが、フェーズドアレイRF ICから前記PCBの反対の第2の側にRF信号を転送するためのフィードを備える、プリント回路基板(PCB)と、
フェーズドアレイアンテナからRF信号を送信及び/又は受信するための複数の放射素子を備える放射層と、
前記第2の側の前記PCBのフィードと前記放射層の前記放射素子との間に配置されるRF信号の転送のための供給層と、
を備えるものであり、
前記供給層は、前記PCBのフィードと前記放射素子との間でRF信号を伝送するためのギャップ導波路を備えるギャップ導波路層であり、
前記アンテナは、前記PCBと前記供給層との間に配置されるフィルタ層を更に備えるものであり、
前記フィルタ層が共振キャビティを形成する第2のギャップ導波路層である、フェーズドアレイアンテナ。
【請求項2】
前記放射素子は、前記放射層を貫通して延びるスロット開口、好ましくは長方形のスロット開口である、請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項3】
前記放射素子がボウタイアンテナである、請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項4】
前記PCBの前記フィードは、前記供給層の前記ギャップ導波路層の対応する開口に接続される貫通穴であり、前記PCBの前記貫通穴は、前記PCBの前記第1の側のマイクロストリップラインによって供給される、請求項1から3のいずれか一項に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項5】
前記ギャップ導波路層がリッジ供給構造体を備え、前記リッジ供給構造体は、前記リッジに沿う方向以外の方向での波の伝搬を停止するように配置される突出ポストにより取り囲まれる、請求項1から4のいずれか一項に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項6】
前記ベース層は、前記PCBの全領域を覆うのに十分な延在部を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項7】
前記ベース層が金属、好ましくはアルミニウムから形成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項8】
全ての層が本質的に同じ幅及び長さ寸法を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項9】
前記ベース層が金属、好ましくはアルミニウムから形成される、請求項1から8のいずれか一項に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項10】
前記ベース層の前記突出ポストは、前記動作周波数での空気中の波長の半分未満の最大断面寸法を有し、及び/又は、前記突出ポストは、動作周波数での空気中の波長の半分より小さい間隔だけ離間される、請求項1から9のいずれか一項に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項11】
前記ベース層の前記突出ポストは、周期的又は準周期的なパターンで配置されて前記ベース層に接続固定される、請求項1から10のいずれか一項に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項12】
前記ベース層の前記突出ポストは、少なくとも前記ベース層を介してそれらのベースで互いに電気的に接続される、請求項1から11のいずれか一項に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項13】
前記突出ポストの少なくとも幾つか、好ましくは全てが、前記プリント回路基板と機械的に接触している、請求項1から12のいずれか一項に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェーズドアレイアンテナに関し、特に、2D大規模MIMOビームステアリングアンテナに関する。より具体的には、本発明は、ビーム制御及び送信/受信機能のための集積電子機器を有するRF/マイクロ波/ミリ波アンテナに関する。アンテナの典型的な応用分野は、通信、自動車レーダー、軍事用途又は衛星用途向けのレーダーである。
【背景技術】
【0002】
フェーズドアレイアンテナは、1960年代後半から主に軍用レーダー用途向けに開発されてきた。それ以来、全ての電子機器の集積レベルがミリ波周波数でも大幅に増加したため、手頃な価格のフェーズドアレイアンテナを構築できる可能性が、商業用途にも適したコストレベルに達してきた。既存のシステムは、通常は「ブリック」及び「タイル」とそれぞれ呼ばれる主に2つの異なる方法で構築される。
【0003】
ブリックシステムは、アンテナ平面に対して垂直に取り付けられる送信/受信モジュールを使用しており、それにより、電子機器のために利用できる空間が簡略的な方法で増大されるとともに、冷却可能性が高められる。ブリック構築方法における大きな問題は、通常は高価で嵩張るとともに公差の影響を受け易い同軸コネクタを介して行われるアンテナへの接続である。したがって、この構築方法は、高コストで、高性能の軍事レーダーシステムでのみ使用される。
【0004】
タイル構築方法は、垂直なアンテナ接続でないことによりアンテナが電子機器と一体化されるより簡単な方法に起因して、理想的であるように思われる。しかしながら、アンテナを構築するこの方法にも幾つかの欠点がある。主な問題は、隣接するアンテナ素子間の最大距離を半波長(例えば30GHzで5mm)にする必要があるため電子機器の利用可能な空間が限られていること、チャネル間の絶縁のためにシールド壁が必要であること、送信/受信経路にフィルタリングを付加するための余地が限られていること、電子機器が密集している場合に単位面積当たりの電力が高いことに起因して熱が制限されることなどである。これらの制限又は境界条件は、タイルアンテナの使用を、フィルタリング及び走査範囲の制限を伴わない低電力デバイスに制限する。
【0005】
したがって、比較的費用効率高く製造され得るとともに前述の問題の少なくとも一部を軽減する新規なフェーズドアレイアンテナが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、比較的費用効率高く製造され得るとともに前述の問題の少なくとも一部を軽減する新規なフェーズドアレイアンテナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、添付の特許請求の範囲に係るフェーズドアレイアンテナにより達成される。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、
複数の突出ポストを伴う基板を備えるベース層であって、前記ポストが前記ベース層に沿う波の伝搬を停止させるためのものである、ベース層と、
前記ベース層上に配置されるプリント回路基板(PCB)であって、ベース層及び突出ポストに面するPCBの第1の側に少なくとも1つのフェーズドアレイ無線周波数(RF)集積回路(IC)を備え、PCBが、フェーズドアレイRF ICからPCBの反対の第2の側にRF信号を転送するためのフィードを更に備える、プリント回路基板(PCB)と、
フェーズドアレイアンテナからRF信号を送信及び/又は受信するための複数の放射素子を備える放射層と、
第2の側のPCBのフィードと放射層の放射素子との間に配置されるRF信号の転送のための供給層と、
を備えるフェーズドアレイアンテナが提供される。
【0009】
新規なフェーズドアレイアンテナは、ギャップ導波路技術の1つ又は幾つかの層を使用することによりタイルアンテナ構築方法で以前に経験した多くの固有の問題を解決する。
【0010】
別の言い方をすれば、本発明は、低損失多層ギャップ導波路構造を含むとともに効率的な電気結合と電子機器冷却用の組み込み高効率熱経路とを伴うマイクロ波/ミリ波構成部品のためのボードを含む新規なアンテナを提供する。ギャップポスト/ピン技術は、アンテナのチャネル内又はチャネル間の伝搬を抑制している。
【0011】
電子機器、すなわち、少なくとも1つのフェーズドアレイ無線周波数(RF)集積回路(IC)は、PCBの他の側の供給構造体に結合するマイクロストリップボードなどのPCBに実装される。突出ポストを伴うベース層により非常に効率的な供給が可能であり、それにより、ベース層に沿う波の伝搬が抑制される。したがって、突出ポストは、ギャップ人工磁気導体(AMC)表面を形成する。突出ポストを伴うベース層はPCBの全領域を覆うことが好ましい。このベース層の効果は、PCBに沿う又はPCB内での任意の波の伝搬を完全に抑制し、それにより、隣り合うチャネルを分離するためにさもなければ常に存在する全てのシールド壁を省くことができ、したがって、PCB面積の非常に効率的な使用を可能にするという大きな利点をもたらす。これにより、ボードの経路付け問題も最小限に抑えられる。
【0012】
ギャップ導波路構造体、すなわち、突出ポストを含む構造体は、好ましくは金属表面を備えており、最も好ましくは全体が金属から形成される。例えば、構造体は、例えばアルミニウム又は亜鉛を使用して、ダイカスト又は射出成形により製造され得る。
【0013】
また、突出ポストを伴うベース層は、特に金属製の場合、PCTに実装されるマイクロ波回路がボードから離れる非常に効果的な熱経路を有し、それにより、アンテナの効率的な冷却がなされるという点で他の大きな利点ももたらす。これは、非常に高い電力処理能力をもたらし、それにより、アンテナからのより高い出力電力が可能となる。これは、例えば通信システムやレーダーシステムなどで非常に重要である。突出ポストを伴うベース層は、上面などからの冷却が必要な回路のための冷却面としても機能する。システムの低電力及びデジタル部品のために一般的にBGAパッケージCMOS回路が使用される。
【0014】
波が望ましくない方向に伝搬するのを抑制する表面を形成するための突出ポストの使用は、それ自体、とりわけ、国際公開第10/003808号パンフレット、国際公開第13/189919号パンフレット、国際公開第15/172948号パンフレット、国際公開第16/058627号パンフレット、国際公開第16/116126号パンフレット、国際公開第17/050817号パンフレット、及び、国際公開第17/052441号パンフレットから知られており、これらは全て同じ出願人によるものであり、前記文書のそれぞれは参照によりそれらの全体が本願に組み入れられる。
【0015】
突出ポストを使用して望ましくない方向の波の抑制を成すことは、ギャップ導波路技術と称される場合があり、この技術は、平行な導電プレート間の狭い隙間での波伝搬を制御するため又は波伝搬を抑制する表面を形成するために使用される。波の伝搬は、2つの平行な導電表面の一方又は両方に金属ポスト(ピンとも呼ばれる)などの周期的要素を使用することによって停止され、また、導波路が形成されるようになっている場合、波は、例えば2つの導電表面のうちの1つに配置される金属リッジに沿って案内される。2つの平行な導電表面間の金属接続は必要ない。電界は、主に2つの表面間の隙間内に存在し、テクスチャや層構造自体には存在しないため、損失は僅かである。このタイプのマイクロ波導波路技術は、周波数が非常に高いため、既存の伝送ライン及び導波路の損失が大きすぎるか或いは必要な許容範囲内で費用効率良く製造できないため、特に有利である。
【0016】
放射素子は、放射層を貫通して延びるスロット開口、好ましくは長方形のスロット開口であってもよい。スロット開口は、好ましくは比較的短く、放射層の平行なラインに沿って配置され、各ラインは複数のスロット開口を備える。しかしながら、放射層の幅のほぼ全体にわたって延びるスロット開口など、より長いスロット開口が使用されてもよい。
【0017】
放射層の前述のスロット開口の代わりに、放射パッチなどの他の放射素子が使用されてもよい。
【0018】
実施形態の1つのラインによれば、放射素子はボウタイアンテナである。ボウタイアンテナは、非常に効率的であり、生産するのに費用効率も高い。ボウタイアンテナ自体は、例えば、国際公開第14/062112号パンフレット、国際公開第17/086853号パンフレット、及び、国際公開第17/086855号パンフレットから知られており、これらの全ては同じ出願人によるものであり、前記文書のそれぞれは、参照によりそれらの全体が本願に組み入れられる。
【0019】
供給層は、PCBのフィードと放射素子との間でRF信号を伝送するためのギャップ導波路を備えるギャップ導波路層であってもよい。そのようなギャップ導波路は、前述のように、それ自体、とりわけ、国際公開第10/003808号パンフレット、国際公開第13/189919号パンフレット、国際公開第15/172948号パンフレット、国際公開第16/058627号パンフレット、国際公開第16/116126号パンフレット及び国際公開第17/050817号パンフレットから知られており、これらの全ては同じ出願人によるものであり、前記文書のそれぞれは、参照によりそれらの全体が本願に組み入れられる。供給層にギャップ導波路を使用すると、更に驚くべき利点がもたらされる。ギャップ導波路は、低損失と非常に低い製造コストとの組み合わせを可能にする。ここで、PCBに実装される電子機器は、例えばスロット開口の開放端マイクロストリップラインからギャップ導波路に結合してもよい。したがって、PCBのフィードは、ギャップ導波路層の対応する開口に接続される貫通穴となることができ、PCBの貫通穴は、PCBの第1の側のマイクロストリップラインによって供給される。その後、前述の突出ポストを伴うベース層により、非常に効率的な結合が可能になり、それにより、電界がスロットに効果的に押し込まれ、したがって、他の解決策を使用しなければならない非常に空間を消費する1/4波長ショートが回避される。
【0020】
更に、これにより、PCBに実装されるマイクロ波回路は、ギャップ導波路層のおかげで、PCBのグランド側に直接に更なる非常に効果的な熱経路も有し、それにより、アンテナからのより一層高い出力電力を可能にする更に一層高い電力処理能力がもたらされる。この効果は、ギャップ導波路構造体が金属から形成される場合に特に顕著である。
【0021】
ギャップ導波路供給層を使用すると、例えばPCBと供給層との間にギャップ導波路構造体の余分な層を付加することにより、送信/受信経路に低損失フィルタを組み込むこともできる。多くの場合、フィルタリングは、例えばノイズや干渉を抑制するための通信システムにおいて重要な機能であり、マイクロストリップやストリップライン基板など、他のビルド実践で低損失で組み込むことは非常に困難である。
【0022】
ギャップ導波路層、すなわち、ギャップ導波路を伴う供給層は、好ましくは、前記リッジに沿った方向以外の方向での波の伝搬を停止するように配置される突出ポストにより取り囲まれるリッジ供給構造体を備える。
【0023】
特にギャップ導波路を組み込む場合、ベース層及び供給層の少なくとも一方、好ましくは両方は、金属、好ましくはアルミニウムから形成される。
【0024】
ベース層及びギャップ導波路を伴う供給層の少なくとも一方、好ましくは両方において、突出ポストは、動作周波数での空気中の波長の半分未満の最大断面寸法を有し、及び/又は、突出ポスト間の間隔は、動作周波数での空気中の波長の半分よりも小さい。更に、突出ポストは、周期的又は準周期的なパターンで配置され、ベース層/供給層に接続固定されることが好ましい。好ましくは、突出ポストは、少なくとも前記ベース層/供給層を介して、それらのベースで互いに電気的に接続される。
【0025】
熱経路を改善するために、少なくとも幾つかの、好ましくは全ての突出したポストを、プリント回路基板と機械的に接触するように配置することができる。しかしながら、代わりに、短い分離ギャップによってPCBが突出ポストから分離されてもよい。更に、ベース層は、PCBの全領域を覆うのに十分な延在部を有してもよい。更にまた、ベース層は金属、好ましくはアルミニウムから形成されてもよい。
【0026】
一実施形態において、アンテナは、PCBと供給層との間に配置されるフィルタ層を更に備える。フィルタ層は、共振キャビティを形成する第2のギャップ導波路層として実現されてもよい。
【0027】
好ましくは、アンテナの全ての層は、本質的に同じ幅及び長さの寸法を有する。これにより、コンパクトなアンテナが提供され、優れたシールド及び放熱特性を伴う。しかしながら、例えば放射層及び/又はベース層など、幾つかの層を他のものよりもいくらか大きくすることも可能である。
【0028】
本発明の更なる実施形態及び利点は、本発明の現在好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかになる。
【0029】
目的を実証するため、以下、添付図面に示される本発明の実施形態に関連して、本発明を更に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係るフェーズドアレイアンテナの分解図である。
図2】PCB層からギャップ導波路供給層への移行部を形成する本発明の一実施形態に係るアンテナの一部の異なる方向から見た詳細図である。
図3】PCB層とギャップ導波路供給層との間にフィルタ層を伴う、PCB層からギャップ導波路供給層への移行部を形成する本発明の一実施形態に係るアンテナの一部の詳細な断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るPCB層及びベース層の詳細な斜視図である。
図5】本発明の他の実施形態に係るベース層の詳細な斜視図である。
図6】本発明の一実施形態で使用するためのボウタイアンテナの上方から見た詳細な斜視図である。
図7】本発明の他の実施形態で使用するためのボウタイアンテナの上方から見た詳細な斜視図である。
図8】本発明の一実施形態で使用するためのボウタイアンテナのアレイの上方から見た詳細な斜視図である。
図9】本発明に係るアンテナの他の実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1を参照すると、第1の実施形態に係るフェーズドアレイアンテナ1はベース層2を備える。ベース層は、ベース層に沿う波の伝搬を止めるための複数の突出ポスト22を伴う基板21を備える。突出ポストは、周期的又は準周期的なパターンで配置されてもよく、好ましくは、動作周波数で空気中の波長の半分未満の最大断面寸法、及び、動作周波数で空気中の波長の半分よりも小さい突出ポスト間の間隔を有する。突出ポストは、基板に接続固定されるとともに、前記基板を介して互いに電気的に接続される。基板及び突出ポストは、導電性金属表面を有し、好ましくは全体的に金属により形成される。例えば、ベース層は、アルミニウム又は亜鉛からダイカストで鋳造され又は射出成形され得る。突出ポスト22は、例えば、長方形又は円形の断面形状を有し得る。
【0032】
プリント回路基板(PCB)3がベース層上に配置される。PCBは、好ましくは、電子部品、より具体的には少なくとも1つのフェーズドアレイ無線周波数(RF)集積回路(IC)を備える一方側の構成部品側と、接地層を備える他の側とを備える。構成部品側は、ここでは、ベース層及び突出ポストへ向けて配置される。
【0033】
PCBは、フェーズドアレイRF ICからPCBの反対側へRF信号を転送するためのフィード31を更に備える。ここで、フィードはPCBを貫通するスロット開口を備える。PCB上に実装される電子機器は、スロット開口に結合し、例えば、開放端マイクロストリップラインからスロット開口へと延びる。
【0034】
随意的なフィルタ層4がPCB層3上に配置されてもよい。フィルタは、低損失導波路フィルタリングをもたらすことが好ましい。フィルタ層は、電磁波をフィルタリングするために共振キャビティを形成するギャップ導波路を備えてもよい。ギャップ導波路は、前述したのと同じ方法で、意図された方向以外の方向で波を停止又は抑制するための突出ポスト42により囲まれるリッジ41として実現されてもよい。
【0035】
供給層5は、フィルタ層4上に配置され、又は、フィルタ層が省かれる場合にはPCB3上に直接に配置される。供給層5は、PCBのフィードから来るRF信号を場合により随意的なフィルタ層を介して放射層の放射素子へ又はその逆に伝達するように構成される。この実施形態において、供給層は、前述したのと同じ方法で、信号が伝搬するリッジ51と、他の方向への波の伝搬を停止又は抑制するように配置される突出ポスト52とを備えるギャップ導波路構造体として実現される。突出ポストは、好ましくは、各導波経路に沿って両側で少なくとも2つの平行な横列を成して配置される。しかしながら、幾つかの用途に関して、1つの横列で十分な場合がある。
【0036】
更に、3つ、4つ、又は、それ以上の平行な横列など、3つ以上の平行な横列が多くの実施形態で有利に使用されてもよい。
【0037】
PCB層のフィード31、及び、そのような層が設けられる場合の供給層5の又はフィルタ層4の対応する開口/入力は、PCBの2つの反対の側の近傍に配置される2本の線に沿って配置されてもよい。これにより、供給層の側面から中心に向かって、供給層の平行ラインで信号が供給される。しかしながら、もう1つの方法として、フィードは、1つ以上の中心ラインに沿って、又は、中心に比較的近傍に配置される1つ又は幾つかのラインに沿って配置されてもよい。これにより、中心から外側へ、側面に向かって、供給層の平行ラインで信号が供給される。分離されてPCB上にわたって分布されるフィード31の3つ又は4つの平行ラインをもたらすこともできる。しかしながら、フィードの他の配置も実行可能である。
【0038】
放射層6が、供給層5上に配置されるとともに、アレイとして配置される複数の放射素子61を備える。放射素子は、RF信号を送信及び/又は受信するようになっている。放射層は、好ましくは、平面放射面を形成する。
【0039】
この実施形態において、放射素子は、放射層を貫通して延びるスロット開口であり、供給層5のギャップ導波路に結合されるように配置される。
【0040】
スロット開口は、好ましくは比較的短く、放射層の平行なラインに沿って配置され、各ラインは複数のスロット開口を備える。
【0041】
例えばスロットの形態を成すアンテナ素子間の間隔は、動作周波数で空気中の1波長よりも小さいことが好ましい。
【0042】
図2には、PCB層からギャップ導波路供給層への移行がより詳細に示される。ギャップ導波路は、波のための伝搬経路を形成して突出ポスト52により囲まれるリッジ51を備える。波は、基板の開口53を通じて供給される。開口53は、PCB3上のマイクロストリップライン32の開放端に結合される。更に、突出ピンを伴うベース層2がPCBの他の側に配置される。図2には、ベース層2及びPCBの僅かな部分のみが示される。
【0043】
前述したように、フィルタ層4が使用される場合には、フィルタ層への供給を同じ方法で行うことができる。これは、PCB3からフィルタ層への信号/波の供給を示す図3に示される。ここでの供給は、開口31で、PCB3の側で行われる。その後、信号/波は、リッジギャップ導波路に沿って伝搬し、その後、開口53を介して供給層5のリッジギャップ導波路へと伝送される。ここで、信号/波は、アンテナ層6のスロット開口61に向かって案内される。この説明された信号伝搬は、アンテナから信号を送信するためのものである。信号を受信する場合、同じ経路にしたがうが、順序及び方向が逆となる。
【0044】
フェーズドアレイRF ICは、好ましくは、複数の位相制御されたフィード、及び/又は、振幅制御されたフィードを備える。フェーズドアレイRF ICは、放射層のアンテナ素子の1つ又は幾つかに対して異なる位相/振幅を有する信号を与え、それにより、それ自体既知の方法でビームステアリングをもたらすようになっていてもよい。フェーズドアレイRF ICは、例えば異なる縦列又はラインを個別に成して配置されるアンテナ素子の位相を制御して、一方向のビームステアリングをもたらすようになっていてもよい。しかしながら、フェーズドアレイRF ICは、代わりに、放射層の幅方向及び長さ方向の両方に別々に分配されるセクションのアンテナ素子を制御して、2つの直交方向のビームステアリングをもたらすようになっていてもよい。また、フェーズドアレイRF ICは、全てのアンテナ素子を個別に制御するようになっていてもよい。
【0045】
図4において最もよく分かるように、ベース層2の突出ポスト22は、PCB3のアクティブ部分の上方/下方に配置される。突出ポスト22は、PCB及びPCB上の構成部品から僅かな距離を隔てて配置されてもよい。しかしながら、代わりに、突出ポストは、PCB及び/又はPCB上に設けられる構成部品32と直接に接触するように配置され、それにより、熱放散をより効率的に行ってもよい。
【0046】
突出ポストは全て同じ高さを有してもよい。多少異なる高さの突出ピンを使用することもできる。例えば、構成部品32の真上/真下にある突出ポストは、より低い高さを有してもよい。
【0047】
これにより、突出ポストが存在する表面に凹領域が形成され得、そこに集積回路などが挿入される。
【0048】
また、ベース層の様々なセクションに様々な高さの突出ポストを有することもできる。図5には、そのような実施形態が概略的に示される。ここで、第1のセクションの突出ポスト22’は、他のセクションの突出ポスト22’’よりも高い。この実施形態は、例えば、PCBの異なる部分で異なる周波数の信号が使用され、それにより各部分のシールドをより効率的にする場合に有用である。
【0049】
放射層の前述のスロット開口の代わりに、放射パッチなどの他の放射素子が使用されてもよい。
【0050】
実施形態の1つのラインによれば、放射素子はボウタイアンテナである。ボウタイアンテナは、非常に効率的であり、生産するのに費用効率も高い。ボウタイアンテナ自体は、例えば、国際公開第14/062112号パンフレット、国際公開第17/086853号パンフレット、及び、国際公開第17/086855号パンフレットから知られており、これらの全ては同じ出願人によるものであり、前記文書のそれぞれは、参照によりそれらの全体が本願に組み入れられる。
【0051】
ボウタイアンテナは、接地面に配置される自己接地アンテナである。この接地面は、アンテナの熱放散を更に高める。ボウタイアンテナは、製造が簡単で費用効率が高いことが知られており、小型でコンパクトである。
【0052】
図6に示されるように、各ボウタイアンテナ素子は、接地面611上に配置される多くのアンテナペタル610を備えてもよい。接地面611は、アンテナのアレイ内の全てのアンテナ素子に共通の接地面であってもよい。好ましくは、2つ又は4つのアンテナペタルが設けられてフィードの周りに対称的に配置される。各アンテナペタルは、中心端部613に向かって先細るアームセクション612を備え、導電性材料から形成される。中心端部から、各アンテナペタルは、弓状を成して、接地面611に接続されるより幅広い外側端部614まで延びる。
【0053】
中心端部613は、接地面611に導電接続されてもよく、例えば開口615の形態を成すアンテナフィードの近傍に配置されてもよい。これにより、アンテナペタルはいわゆるTEMホーンの機能に似ている。このタイプのボウタイアンテナは、例えば国際公開第2017/086855号パンフレットにおいて論じられる。開口615は、スロット開口の形態の前述のアンテナ素子の場合と同様の方法で、供給層の開口に結合されてもよい。
【0054】
図7に示される他の実施形態において、各アンテナペタルの中心端部は、1つ又は幾つかのアンテナフィードに接続される。特に、端部は、供給ポートに接続されるようになっている端部先端部を有してもよく、特定のポートがそれぞれのアンテナペタルごとに設けられる。このタイプのボウタイアンテナは、例えば、国際公開第2014/062112号パンフレット及び国際公開第2017/086855号パンフレットでも論じられる。
【0055】
ボウタイアンテナは、図8に示されるように、第1のタイプか又は第2のタイプかに関係なく、放射層の表面上にアンテナ素子のアレイとして配置されてもよい。
【0056】
図7に関連して前述したような第2のタイプのボウタイアンテナの場合、フェーズドアレイアンテナの供給構造は多少異なる場合がある。この場合、例えばビアホール、同軸ケーブルなどの形態を成す導電ラインは、PCB層からの供給出力を放射層のフィード入力と接続するように供給層を貫通して配置されてもよい。
【0057】
図9にはそのような実施形態が概略的に示される。ここで、放射層6’は、図7に関連して論じられる図8に示されるタイプのボウタイアンテナの形態のアンテナ素子61’のアレイを備える。PCB層3’は、供給層4’を通る導電ライン41’に接続される供給出力を備える。供給層は、例えば、アルミニウム層などの金属層として形成されてもよく、同軸接続ラインが金属層の貫通穴に配置される。
【0058】
前述の実施形態の場合と同様の方法で、供給層とPCB層との間に随意的なフィルタ層を設けることもできる。
【0059】
PCB層3’の他の側には、突出ポストを有するベース層2が配置され、ここで、ベース層は、前述の実施形態の場合と同じ方法で構造化されて、同じ機能を果たしてもよい。
【0060】
フェーズドアレイアンテナの前述の実施形態は、非常に良好な性能を有しており、非常に高い周波数まで動作し得る。アンテナは、高周波数での使用に適合されることが好ましい。アンテナは、特に、300MHzより高い、好ましくは1GHzより高い周波数での動作の周波数/波領域での使用に適合されることが好ましい。また、アンテナは、10GHzを超える、20GHzを超える、30GHzを超える、又は、100GHzを超えるなど、更に高い周波数で使用されてもよい。特に、図1に関連して説明した第1の論じられた実施形態は、10GHzを超える周波数で動作してもよく、一方、図9に関連して説明したその後の論じられた実施形態は、少なくとも6GHzまで動作してもよい。
【0061】
更に、フェーズドアレイアンテナは、スタンドアロンアンテナとして使用されてもよい。しかしながら、フェーズドアレイアンテナは、他の構成部品と一体化されてもよい。前述のタイプの複数のフェーズドアレイアンテナを一緒に組み立ててより大きなアレイにし、共通のソースから同期させて、より多くの電力を提供することも可能である。
【0062】
本発明のアンテナは、電磁波の送信又は受信或いはその両方に使用することができる。
【0063】
アンテナは、好ましくは平坦であり、本質的に長方形の形状を成している。しかしながら、円形、楕円形など、他の形状も実現可能である。形状は、六角形、八角形又は他の多角形の形態を成してもよい。アンテナ表面は、形状が凸状など、非平面でもよい。
【0064】
アンテナの導波路及び/又は突出ポスト間の空間は、機械的理由から、誘電体発泡体などの誘電体材料で満たされていてもよい。しかしながら、好ましくは、少なくとも幾つかの、好ましくは全ての導波路及び/又は突出ポスト間の全ての空間は、空気で満たされ、誘電材料はない。
【0065】
突出ポストは、任意の断面形状を有してもよいが、正方形、長方形、又は、円形の断面形状を有することが好ましい。
【0066】
更に、突出ポストは、動作周波数における空気中の波長の半分よりも小さい最大断面寸法を有することが好ましい。
【0067】
好ましくは、最大寸法はこれよりもかなり小さい。最大断面寸法は、円形断面の場合には直径であり、
正方形又は長方形の断面の場合には対角線である。
【0068】
複数の突出ポストは、ピングリッドアレイと称されてもよい。
【0069】
突出ポストは全て、好ましくは固定され、1つの導電表面に電気的に接続される。しかしながら、突出要素の少なくとも幾つか、好ましくは全ては、突出ポストの上方に配置される表面と直接的又は間接的に機械的に更に接触していてもよい。
【0070】
前述の層に加えて、フェーズドアレイアンテナは、前述の配置の層の上方又は下方、或いは、これらの層のいずれかの間に配置される、支持層、スペーサ層などの更なる層を備えてもよい。また、例えば、互いの上に配置される、サンドイッチ構造を成して配置される、或いは、間に他の層を伴って配置される複数のPCB層が設けられてもよい。
【0071】
そのような及び他の明白な変更は、本発明が添付の特許請求の範囲により規定されるように本発明の範囲内にあると見なされなければならない。前述の実施形態が本発明の例示であって本発明を限定するものではなく、また、当業者は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく多くの別の実施形態を設計できることに留意すべきである。特許請求の範囲において、括弧内にある任意の参照符号は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。「備える(comprising)」という語は、特許請求の範囲に挙げられる要素又はステップ以外の要素又はステップの存在を排除しない。要素に先行する単語「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、複数のそのような要素の存在を排除しない。更に、単一のユニットが特許請求の範囲に挙げられた幾つかの手段の機能を果たしてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9