(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】結晶性シリカを含まない低生体内持続性の無機繊維
(51)【国際特許分類】
C03C 13/00 20060101AFI20230418BHJP
F16L 59/02 20060101ALI20230418BHJP
D01F 9/08 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
C03C13/00
F16L59/02
D01F9/08 A
(21)【出願番号】P 2020519435
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 US2018054636
(87)【国際公開番号】W WO2019074794
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-05-29
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520085268
【氏名又は名称】ユニフラックス アイ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ザオ、ダンフイ
(72)【発明者】
【氏名】ゾイトス、ブルース ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】アンドレジャック、マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハミルトン、ジェイソン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ハンソン、カレン エル.
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-513730(JP,A)
【文献】特開2015-025218(JP,A)
【文献】特表2002-526364(JP,A)
【文献】特表2002-512937(JP,A)
【文献】特表2017-508705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)15~50molパーセントのシリカ、
(ii)10~25molパーセントのアルミナ、
(iii)
21.1~35molパーセントの酸化カリウム、および、
(iv)15~35molパーセントの酸化マグネシウ
ムの
繊維化生成物を有する無機繊維であって、
前記シリカ+アルミナ+酸化カリウムの量は80molパーセント以下であり、
前記アルミナに対する前記酸化カリウムのモル比は、1.25~2であり、
前記アルミナ+酸化カリウムの量は、30molパーセント以上であり、
前記無機繊維は、1260℃に24時間曝した後、5%以下の線形収縮を示す、
無機繊維。
【請求項2】
請求項1記載の無機繊維において、前記繊維は、1260℃に24時間曝した後にX線回折(XRD)によって測定すると、結晶性シリカ相を示さないものである、無機繊維。
【請求項3】
請求項2記載の無機繊維において、前記無機繊維は、中性またはほぼ中性の媒体での6時間の溶解速度よりも大きい酸性媒体での6時間の溶解速度を示すものである、無機繊維。
【請求項4】
請求項1記載の無機繊維において、
(i)20~50molパーセントのシリカ、
(ii)10~25molパーセントのアルミナ、
(iii)
21.1~35molパーセントの酸化カリウム、および、
(iv)15~35molパーセントの酸化マグネシウムの
繊維化生成物を有する無機繊維。
【請求項5】
請求項1記載の無機繊維において、
(i)15~50molパーセントのシリカ、
(ii)10~25molパーセントのアルミナ、
(iii)
21.1~30molパーセントの酸化カリウム、および、
(iv)15~35molパーセントの酸化マグネシウムの
繊維化生成物を有する無機繊維。
【請求項6】
請求項1記載の無機繊維において、前記アルミナ+酸化カリウムの量は34molパーセント以上である、無機繊維。
【請求項7】
請求項1記載の無機繊維において、前記アルミナの量は14molパーセント以上である、無機繊維。
【請求項8】
請求項
6記載の無機繊維において、前記アルミナの量は14molパーセント以上である、無機繊維。
【請求項9】
無機繊維を作製する方法であって、前記方法は、
(i)15~50molパーセントのシリカ、(ii)10~25molパーセントのアルミナ、(iii)
21.1~35molパーセントの酸化カリウム、および、(iv)15~35molパーセントの酸化マグネシウ
ムを有する原料成分を結合して、原料成分の溶融物を形成する工程であって、
前記シリカ+アルミナ+酸化カリウムの量は80molパーセント以下であり、
前記アルミナに対する前記酸化カリウムのモル比は、1.25~2であり、
前記アルミナ+酸化カリウムの量は、30molパーセント以上であり、
前記無機繊維は、1260℃に24時間曝した後、5%以下の線形収縮を示す、
形成する工程と、
前記溶融物から繊維を製造する工程と
を有する、方法。
【請求項10】
1260℃以上の温度で物品を断熱する方法であって、前記方法は、複数の請求項1記載の無機繊維を有する断熱材料を、断熱される物品の上、中、近く、または周囲に配置する工程を有する、方法。
【請求項11】
1400℃以上の温度で物品を断熱する、または前記物品に防火を提供する方法であって、前記方法は、複数の請求項1記載の無機繊維を有する断熱材料を、断熱される物品の上、中、近く、または周囲に配置する工程を有する、方法。
【請求項12】
複数の請求項1記載の無機繊維から調製された断熱材または防火材であって、前記材は、ブランケット、ブロック、ボード、コーキング組成物、セメント組成物、コーティング、フェルト、マット、成形可能な組成物、モジュール、紙、ポンプ輸送可能な組成物、パテ組成物、シート、タンピング混合物、真空鋳造立体的形状、真空鋳造平面的形状、または、織物、編組、布、布地、ロープ、テープ、スリーブおよび芯から選択されるものである、断熱材または防火材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
断熱材、電気絶縁材、防音材として有用な高温耐熱無機繊維、複数の高温耐熱無機繊維で調製された断熱材、高温耐熱無機繊維の製造方法、および、物品を音響的、電気的および熱的に絶縁する方法において、高温耐熱無機繊維および絶縁材料を使用する方法。
【背景技術】
【0002】
アルミナシリケート化学に基づくものなどの耐火性セラミック繊維は、1940年代の開発以来、断熱および電気絶縁用途向けに広く販売されてきた。1980年代に行われたげっ歯類の吸入研究は、生理的肺液において生体内持続性である耐火性セラミック繊維に関連する発がん性のレベルを示した。これらの研究は、耐火性セラミック繊維に代わるものとして、生理的肺液に可溶で低生体内持続性の無機繊維を開発するよう業界に動機を与えてきた。
【0003】
特定の種類の無機繊維を吸入すると、呼吸器疾患が増加する可能性がある。例えば、アスベスト繊維の吸入によって引き起こされる呼吸器疾患は、よく研究され、文書化されている。アスベスト繊維は、IARC-1材料として分類されているように、人間に対して発がん性がある。アスベスト繊維の吸入は、例えば、石綿症および肺がんなどの中皮腫および他の呼吸器疾患を引き起こすことが知られている。
【0004】
繊維の吸入に関連する潜在的な健康被害は、一般に3つの要因の影響を受ける。WHO2000によれば、呼吸可能な繊維は、長さが5μmを超え、直径が3μmを超え、アスペクト比(繊維の長さを繊維の幅で割ったもの)が3を超えると定義されている。長さが20μm未満の繊維は、ヒトの肺胞マクロファージによって飲み込まれ、肺領域から除去される。一方、長い繊維は、溶解するか、短い断片に分解されるまで肺に残る。
【0005】
1990年代以降、生理的肺液中で耐久性の低い繊維を使用して、無機繊維の吸入に関連する潜在的な健康リスクを低減する戦略が進化してきた。これらの繊維は、現在、当技術分野では低生体内持続性繊維と呼ばれている。戦略は、生理的肺液中でより高い溶解速度を示すように繊維組成を設計することである。より高い繊維溶解速度は、ヒトの肺における繊維のより速いクリアランス、またはより短い滞留時間をもたらし、そしてより長い繊維を短いものへと分解することにも役立つ。
【0006】
肺からの無機繊維のクリアランスに関連して、考慮すべき人間の肺には2つのpH環境がある。肺の細胞外液は中性に近いpH、すなわちpH7.4~7.8の範囲を示す。ヒト肺の肺胞マクロファージ内の環境は酸性であり、pH4.5~5の範囲のpHを有する。インビトロ試験で中性またはほぼ中性のpHのシミュレートされた生理的肺液(SLF)で低い溶解速度を示す繊維は、インビボ動物試験で迅速に除去できると考えられている(Bellman and Muhle et al., Persistence of man-made mineral fibers and asbestos in rat lungs, Ann. Occup. Hyg. 31: 693-709 (1987))。繊維は中性の細胞外肺液に溶解しない可能性があるが、酸性環境でより溶解性の高い繊維は、肺胞マクロファージ内の酸性攻撃により短い長さに断片化され、飲み込まれて肺から除去される。
【0007】
結晶性シリカの形成を回避しようとする候補繊維が提案されているが、これらの繊維の使用温度限界は、高温耐性のある耐火性セラミック繊維が伝統的に使用される多くの用途に対応するには十分高いとはいえない。例えば、このような候補の低生体内持続性の繊維は、通常の耐火性セラミック繊維のパフォーマンスと比較して、1260℃以上の連続使用温度にさらされた場合、連続使用温度で高い線形収縮および/または機械的特性の低下を示す可能性がある。そのような低生体内持続性繊維はまた、広い粘度範囲にわたって製造することがより困難である。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許出願公開第2016/0168019号明細書
(特許文献2) 米国特許出願公開第2014/0170921号明細書
(特許文献3) 米国特許第8,103,377号明細書
(特許文献4) 米国特許出願公開第2017/0101338号明細書
(特許文献5) 米国特許出願公開第2015/0175477号明細書
【発明の概要】
【0008】
(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物、または少なくとも1つの遷移金属酸化物、または少なくともランタニド系列の金属酸化物、またはそれらの組み合わせの繊維化生成物を有する無機繊維が提供される。
【0009】
さらに、無機繊維を製造する方法が提供され、この方法は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物、または少なくとも1つの遷移金属酸化物、または少なくともランタニド系列の金属酸化物、またはそれらの組み合わせを有する成分とともに溶融物を形成する工程、および、前記溶融物から繊維を生成する工程を有する。
【0010】
さらに、1260℃以上の温度で物品を断熱する方法が提供され、この方法は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物、または少なくとも1つの遷移金属酸化物、または少なくともランタニド系列の金属酸化物、またはそれらの組み合わせを有する繊維化生成物を有する複数の無機繊維を有する断熱材料を断熱される物品の上、中、近く、または周囲に配置する工程を有する。
【0011】
さらに、ブランケット、ブロック、ボード、コーキング組成物、セメント組成物、コーティング、フェルト、マット、成形可能な組成物、モジュール、紙、ポンプ輸送可能な組成物、パテ組成物、シート、タンピング混合物、真空鋳造立体的形状、真空鋳造平面的形状、または、織物、編組、布、布地、ロープ、テープ、スリーブ、芯から選択される無機繊維含有断熱材が提供され、前記繊維含有品は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物、または少なくとも1つの遷移金属酸化物、または少なくともランタニド系列の金属酸化物、またはそれらの組み合わせの繊維化生成物を有する複数の無機繊維を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、特定の繊維溶融組成物に対する粘度の温度依存性を示すグラフ温度-粘度グラフである。
【
図2】
図2は、アルミナ粉末と既知の繊維の混合物と比較した、アルミナ粉末と本発明の繊維の混合物のDSC曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
無機繊維は、1260℃以上の使用温度で優れた熱性能を発揮し、使用温度にさらされた後も機械的完全性を保持し、失透時に結晶シリカがなく、耐アルカリ流動性であり、酸性媒体での生体内持続性が低く、中性媒体での溶解性が低い。無機繊維の原料成分の溶融物は、アルミナシリケートなどの従来のセラミック繊維よりも低温で長い粘度曲線を有し、これにより、溶融物から繊維が形成される繊維化温度が下がり、全体的な溶融と繊維製造が容易になる。これは、繊維化の粘度範囲が短く、冷却プロセス中に急速に凝固する、耐火性セラミック繊維およびアルカリ土類シリカ繊維の溶融物に対する改善である。
【0014】
本無機繊維の溶融物は、耐火性セラミック繊維またはアルカリ土類シリケート繊維と比較して拡張された粘度範囲を有し、それにより、例えば、繊維延伸プロセスによる連続繊維の形成にそれらが適切になる。市販のアルミナ-シリケート繊維およびカリウム-アルミナ-シリケート繊維と比較して、本無機繊維の拡張された粘度範囲が
図1に示されている。カリウムアルミノシリケート繊維の粘度は、アルミナシリケート化学に基づく典型的な耐火性セラミック繊維の粘度と比較してはるかに高い。酸化マグネシウムがカリウム-アルミナ-シリケートの化学物質に添加されると、粘度が大幅に低下する。結果として、本発明の繊維(例えば、カリウム-酸化マグネシウム-アルミノ-シリケート)の温度-粘度曲線は、はるかに低い温度、約1640℃から約1465℃にシフトする。本発明の繊維の温度-粘度曲線におけるこのシフトは、溶融の操作温度および繊維化の温度を低下させる。本発明の無機繊維化学物質の溶融物は、それが冷却されるときに結晶化することなくその液体/ガラス状態を保持し、したがって、拡張された範囲の粘度を提供する。拡張された粘度範囲により、適切な繊維延伸法による連続繊維の形成が可能になる。
【0015】
無機繊維は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物、または少なくとも1つの遷移金属酸化物、または少なくともランタニド系列の金属酸化物、またはそれらの組み合わせの繊維化生成物を有する。
【0016】
特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物の繊維化生成物を有する。
【0017】
特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの少なくとも1つの遷移金属酸化物の繊維化生成物を有する。
【0018】
特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの少なくともランタニド系列の金属酸化物の繊維化生成物を有する。
【0019】
特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物および少なくとも1つの遷移金属酸化物の組み合わせの繊維化生成物を有する。
【0020】
特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物および少なくともランタニド系列の金属酸化物の繊維化生成物を有する。
【0021】
特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの少なくとも1つの遷移金属酸化物および少なくともランタニド系列の金属酸化物の繊維化生成物を有する。
【0022】
特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの酸化カリウム、および、(iv)約15~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物、または少なくとも1つの遷移金属酸化物、または少なくともランタニド系列の金属酸化物、またはそれらの組み合わせの繊維化生成物を有する。
【0023】
特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの酸化マグネシウムの繊維化生成物を有する。
【0024】
特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの酸化カリウム、および、(iv)約15~約35molパーセントの酸化マグネシウムの繊維化生成物を有する。
【0025】
特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの酸化カリウム、および、(iv)約15~約35molパーセントの酸化マグネシウムの繊維化生成物を有し、シリカ+アルミナ+酸化カリウムの量は、80molパーセント以下である。
【0026】
特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの酸化カリウム、および、(iv)約15~約35molパーセントの酸化マグネシウムの繊維化生成物を有し、シリカ+アルミナ+酸化カリウムの量は、80molパーセント以下であり、高温での結晶化後の繊維は、X線回折(XRD)で測定すると、結晶性シリカ相を示さない。すなわち、高温での無機繊維の結晶化後の結晶性シリカ相は、XRDによって検出されない。
【0027】
特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの酸化カリウム、および、(iv)約15~約35molパーセントの酸化マグネシウムの繊維化生成物を有し、シリカ+アルミナ+酸化カリウムの量は、80molパーセント以下であり、高温での結晶化後の繊維は、X線回折(XRD)で測定すると、結晶性シリカ相を示さず、この無機繊維は、酸性媒体において低い生体内持続性を示す。
【0028】
特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維中のモルパーセントによるシリカ(i)の量は、約15~約45molパーセント、約15~約40molパーセント、約20~約40molパーセント、約15~約35molパーセント、約15~約30molパーセント、約20~約30molパーセント、約15~約25molパーセント、約15~約20molパーセント、約40~約50molパーセント、約40~約45molパーセント、および、約40~約44molパーセントであり得る。特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維中のモルパーセントによるアルミナ(ii)の量は、約15~約30molパーセント、約15~約25molパーセント、および、約15~約20molパーセントであり得る。特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維中のモルパーセントによるアルカリ金属酸化物(iii)の量は、約15~約30molパーセント、約15~約25molパーセント、および、約15~約20molパーセントであり得る。特定の例示的な実施形態によれば、モルパーセントにおけるアルカリ土類金属酸化物、または遷移金属酸化物、またはランタニド系列の金属酸化物、またはそれらの組み合わせは、約15~約30molパーセント、約15~約25molパーセント、および、約15~約20molパーセントであり得る。(i)、(ii)、(iii)および(iv)の繊維成分の上記のmolパーセントのいずれかを組み合わせて、無機繊維を形成することができる。繊維成分(i)、(ii)、(iii)および(iv)のmolパーセントは、100molパーセントを超えることはできない。
【0029】
特定の例示的な実施形態によれば、アルミナと少なくとも1つのアルカリ金属酸化物とを合わせた量は、30molパーセント以上である。
【0030】
特定の例示的な実施形態によれば、アルミナと少なくとも1つのアルカリ金属酸化物とを合わせた量は、34molパーセント以上である。
【0031】
特定の例示的な実施形態によれば、アルミナと少なくとも1つのアルカリ金属酸化物とを合わせた量は、30molパーセント以上であり、アルミナの量は14molパーセント以上である。
【0032】
特定の例示的な実施形態によれば、アルミナと少なくとも1つのアルカリ金属酸化物とを合わせた量は、34molパーセント以上であり、アルミナの量は14molパーセント以上である。
【0033】
本開示にある範囲の値が記載されている場合、終了点を含む範囲内のありとあらゆる値が開示されたと見なされるべきであることが意図されていることを理解されたい。例えば、「約15~約50molパーセントのシリカの範囲」は、15~50の連続体に沿ってありとあらゆる可能な数を示すものとして読まれるべきである。発明者は、範囲内のありとあらゆる値が特定されたと見なされるべきであり、発明者が範囲全体および範囲内のすべての値を所有していることを認識および理解することを理解されたい。
【0034】
本開示では、値に関連して使用される「約」という用語は、述べられた値を含み、文脈によって決定される意味を有する。例えば、少なくとも特定の値の測定に関連するエラーの程度が含まれる。当業者は、用語「約」が本明細書において使用され、列挙された値の「約」の量が、本開示の組成物および/または方法において所望の程度の有効性を生じることを意味することを理解する。当業者は、一実施形態における任意の成分のパーセンテージ、量(amount)または量(quantity)の値に関する「約」の境界が、値を変えること、各値の構成の有効性を決定すること、本開示に従って、所望の程度の有効性を有する組成物を生成する値の範囲を決定することによって、決定できることをさらに理解するであろう。「約」という用語はさらに、組成物が、組成物の有効性または安全性を変更しない他の物質の微量成分を含み得る可能性を反映するために使用される。
【0035】
本開示では、「実質的に」という用語は、識別された特性または状況を測定可能な程度に損なうことがないように十分に小さい偏差の程度を指す。許容可能な偏差の正確な程度は、特定の状況に依存する場合がある。「実質的に含まない」という語句は、組成物が、繊維溶融物に意図的に添加されないが繊維が製造される原材料中に存在し得る痕跡量以上の不純物を排除することを意味する。
【0036】
本明細書に開示される組成molパーセントは、繊維の成分の総molパーセントに基づく。当業者には、繊維の総molパーセントが100%を超えることができないことが理解されよう。例えば、当業者は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物、または少なくとも1つの遷移金属酸化物、または少なくともランタニド系列の金属酸化物、またはそれらの組み合わせの繊維化生成物が100molパーセントを超えないことを容易に認識し、理解するであろう。当業者は、繊維成分のモルパーセントが、100モルパーセントを超えずに所望の量の成分を含むように調整されることを理解するであろう。
【0037】
特定の例示的な実施形態によれば、アルカリ金属酸化物:アルミナのモル比は、約1:1~約2:1の範囲である。特定の例示的な実施形態によれば、アルカリ金属酸化物:アルミナのモル比は、約1:1~約1.75:1の範囲である。特定の例示的な実施形態によれば、アルカリ金属酸化物:アルミナのモル比は、約1:1~約1.5:1の範囲である。特定の例示的な実施形態によれば、アルカリ金属酸化物:アルミナのモル比は、約1:1~約1.25:1の範囲である。特定の例示的な実施形態によれば、アルカリ金属酸化物:アルミナのモル比は、約1.25:1~約1.75:1の範囲である。特定の例示的な実施形態によれば、アルカリ金属酸化物:アルミナのモル比は、約1.5:1~約1.75:1の範囲である。特定の例示的な実施形態によれば、アルカリ金属酸化物:アルミナのモル比は、約1:3~約1:5の範囲である。特定の例示的な実施形態によれば、アルカリ金属酸化物:アルミナのモル比は、約1:3~約1:4の範囲である。
【0038】
1260℃に24時間の曝露後にXRDによって検出される無機繊維の主要な結晶相は、ケイ酸アルミニウムカリウム(KA1SiO4)である。他の結晶相には、例えば、フォルステライト、スピネル、ケイ酸マグネシウムカリウム(K2MgSi3O8)、リューサイト、およびペリクレースが含まれる。特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、繊維を1260℃に24時間曝露した後のXRDによって検出されるように、70パーセント以上のケイ酸アルミニウムカリウムを含有する。繊維には、XRDで検出可能な結晶性シリカ相は含まれていない。
【0039】
特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、繊維を1260℃に24時間曝した後にXRDによって検出されるように、70パーセント以上のケイ酸アルミニウムカリウムおよび約10~約30パーセントのフォルステライト(Mg2SiO4)を含む。繊維には、XRDで検出可能な結晶性シリカ相は含まれていない。
【0040】
特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、繊維を1260℃に24時間曝した後にXRDによって検出されるように、70パーセント以上のケイ酸アルミニウムカリウムと、約2~約10パーセントのフォルステライト(Mg2SiO4)を含む。繊維には、XRDで検出可能な結晶性シリカ相は含まれていない。
【0041】
特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、繊維を1260℃に24時間曝した後にXRDによって検出されるように、70パーセント以上のケイ酸アルミニウムカリウムと、約10~約30パーセントのフォルステライト(Mg2SiO4)とリューサイト(KAlSi2O6)の組み合わせを含む。繊維には、XRDで検出可能な結晶性シリカ相は含まれていない。
【0042】
特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、繊維を1260℃に24時間曝した後にXRDによって検出されるように、70パーセント以上のケイ酸アルミニウムカリウムと、約10~約30パーセントのフォルステライト(Mg2SiO4)と、約2~約10パーセントのスピネル(MgAl2O4)を含む。繊維には、XRDで検出可能な結晶性シリカ相は含まれていない。
【0043】
特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、繊維を1260℃に24時間曝した後にXRDによって検出されるように、70パーセント以上のケイ酸アルミニウムカリウムと、約10~約30パーセントのフォルステライト(Mg2SiO4)と、約2~約10パーセントのスピネル(MgAl2O4)とケイ酸マグネシウムカリウムの組み合わせを含む。繊維には、XRDで検出可能な結晶性シリカ相は含まれていない。
【0044】
さらに、無機繊維を作製する方法が提供される。特定の例示的な実施形態によれば、繊維を作製する方法は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物、または少なくとも1つの遷移金属酸化物、または少なくともランタニド系列の金属酸化物、またはそれらの組み合わせを有する原料成分を結合して、原料成分の溶融物を形成する工程、および、前記溶融物から繊維を製造する工程を有する。
【0045】
特定の実施形態によれば、繊維を作製する方法は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物を有する原料成分の溶融物を形成する工程を有する。
【0046】
特定の実施形態によれば、繊維を作製する方法は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの少なくとも1つの遷移金属酸化物を有する原料成分の溶融物を形成する工程を有する。
【0047】
特定の実施形態によれば、繊維を作製する方法は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの少なくともランタニド系列の金属酸化物を有する原料成分の溶融物を形成する工程を有する。
【0048】
特定の実施形態によれば、繊維を作製する方法は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの、少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物および少なくとも1つの遷移金属酸化物の組み合わせを有する原料成分の溶融物を形成する工程を有する。
【0049】
特定の実施形態によれば、繊維を作製する方法は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの、少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物および少なくともランタニド系列の金属酸化物の組み合わせを有する原料成分の溶融物を形成する工程を有する。
【0050】
特定の実施形態によれば、繊維を作製する方法は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの、少なくとも1つの遷移金属酸化物および少なくともランタニド系列の金属酸化物の組み合わせを有する原料成分の溶融物を形成する工程を有する。
【0051】
特定の実施形態によれば、繊維を作製する方法は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの酸化カリウム、および、(iv)約15~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物、または少なくとも1つの遷移金属酸化物、または少なくともランタニド系列の金属酸化物、またはそれらの組み合わせを有する原料成分の溶融物を形成する工程を有する。
【0052】
特定の実施形態によれば、繊維を作製する方法は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの酸化マグネシウムを有する原料成分の溶融物を形成する工程を有する。
【0053】
特定の実施形態によれば、繊維を作製する方法は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの酸化カリウム、および、(iv)約15~約35molパーセントの酸化マグネシウムを有する原料成分の溶融物を形成する工程を有する。
【0054】
特定の実施形態によれば、原料成分の溶融物中のシリカ+アルミナ+酸化カリウムの量は、80molパーセント以下である。
【0055】
特定の実施形態によれば、原料成分の溶融物中のアルミナ+少なくとも1つのアルカリ金属酸化物の量は、30molパーセント以上である。
【0056】
特定の実施形態によれば、原料成分の溶融物中のアルミナ+少なくとも1つのアルカリ金属酸化物の量は、34molパーセント以上である。
【0057】
特定の実施形態によれば、原料成分の溶融物中のアルミナ+少なくとも1つのアルカリ金属酸化物の量は30molパーセント以上であり、原料成分の溶融物中のアルミナの量は14molパーセント以上である。
【0058】
特定の実施形態によれば、原料成分の溶融物中のアルミナ+少なくとも1つのアルカリ金属酸化物の量は34molパーセント以上であり、原料成分の溶融物中のアルミナの量は14molパーセント以上である。
【0059】
無機繊維は、繊維ブローイングまたは繊維紡糸技術によって調製することができる。適切な繊維ブロー技術は、出発原料を一緒に混合して成分の材料混合物を形成する工程、成分の材料混合物を適切な容器または容器に導入する工程、適切なノズルを介して排出するために成分の材料混合物を溶融する工程、および、放出された成分の溶融材料混合物の排出された流れに高圧ガスをブローイングして、繊維を形成する工程を含む。
【0060】
適切な繊維紡糸技術は、出発原料を一緒に混合して成分の材料混合物を形成する工程、成分の材料混合物を適切な容器または容器に導入する工程、適切なノズルからスピニングホイールに排出するために、原料の混合物を溶融する工程を含む。次に、溶融ストリームはホイール上をカスケードし、ホイールをコーティングし、求心力によって放出され、それによって繊維が形成される。
【0061】
成分の材料溶融物の粘度は、所望の用途に必要な繊維化を提供するのに十分な量で、他の粘度調整剤の存在によって任意に制御されてもよい。粘度調整剤は、溶融物の主成分を供給する原材料中に存在してもよく、または少なくとも部分的に、別個に添加されてもよい。原材料の望ましい粒子サイズは、炉サイズ(SEF)、注入速度、溶融温度、滞留時間などを含む炉条件によって決定される。
【0062】
1260℃、または1400℃、またはそれ以上の温度で物品を断熱する方法も提供される。それを必要とする物品を断熱する方法は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物、または少なくとも1つの遷移金属酸化物、または少なくともランタニド系列の金属酸化物、またはそれらの組み合わせを有する複数の無機繊維を有する断熱材料を、断熱される物品の上、中、近く、または周囲に配置する工程を有する。
【0063】
それを必要とする物品または構造物に防火材料を提供する方法も提供される。この方法は、(i)約15~約50molパーセントのシリカ、(ii)約10~約35molパーセントのアルミナ、(iii)約10~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、および、(iv)約15~約35molパーセントの少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物、または少なくとも1つの遷移金属酸化物、または少なくともランタニド系列の金属酸化物、またはそれらの組み合わせの繊維化生成物を有する複数の無機繊維を有する防火材料を、保護される物品の上、中、近く、または周囲に配置する工程を有する。
【0064】
無機繊維は、複数の異なる断熱製品形態に形成されることができる。断熱製品の形態は、これに限定されないが、繊維含有ブランケット、ボード、紙、フェルト、マット、ブロック、モジュール、コーティング、セメント、成形可能な組成物、ポンプ可能な組成物、パテ、ロープ、編組、芯、織物(布、テープ、スリーブ、紐、糸など)、真空キャスト形状および複合材を含む。繊維は、繊維含有紙およびフェルトの製造において、単独で、またはバインダー、フィラー、膨張材料、吸熱材料、異なる化学組成の無機繊維などの他の材料と組み合わせて使用することができる。
【0065】
実施例
以下の実施例は、無機繊維の例示的な実施形態をさらに詳細に説明し、無機繊維を調製し、繊維を含む断熱物品を調製し、繊維を断熱材として使用する方法を例示するために示される。しかしながら、実施例は、繊維、繊維含有物品、または断熱材としての繊維を製造または使用するプロセスを何らかの方法で制限するものとして解釈されるべきではない。
【0066】
線形収縮
収縮パッドは、フェルト針の横傾斜を使用して繊維マットをニードリングすることによって調製された。パッドから3インチx5インチの試験片を切り取り、収縮試験に使用した。試験パッドの長さと幅を注意深く測定した。次に、試験パッドを加熱炉に入れ、24時間1400℃の温度にした。24時間加熱した後、試験パッドを試験炉から取り出し、冷却した。冷却後、試験パッドの長さと幅を再度測定した。試験パッドの線形収縮は、「前」と「後」の寸法測定値を比較することによって決定された。
【0067】
第2の収縮パッドは、第1の収縮パッドについて開示されたのと同様の方法で調製された。ただし、2つ目の収縮パッドを炉に入れ、24時間1260℃の温度にした。24時間加熱した後、試験パッドを試験炉から取り出し、冷却した。冷却後、試験パッドの長さと幅を再度測定した。試験パッドの線形収縮は、「前」と「後」の寸法測定値を比較することによって決定された。
【0068】
圧縮回復
使用温度に曝された後の無機繊維の機械的強度を保持する能力は、圧縮回復試験によって評価された。圧縮回復は、特定の期間、繊維を望ましい使用温度に曝したときの無機繊維の機械的性能の測定値である。圧縮回復は、無機繊維材料から製造された試験パッドを、選択された期間、試験温度まで焼成することによって測定される。その後、焼成された試験パッドは、元の厚さの半分に圧縮され、反発する。リバウンドの量は、パッドの圧縮された厚さの回復率として測定される。1260℃で24時間および168時間、1400℃で24時間および168時間使用した後の圧縮回復を測定した。
【0069】
繊維持続性試験
生体内持続性に関して、肺には2種類のpH環境がある。一般に約7.4~約7.8の範囲のpHを有する細胞外肺液中に見られる中性に近いpH環境がある。2番目のpH環境は、肺胞マクロファージに見られるより酸性の環境であり、pHは約4.5~約5の範囲である。
【0070】
無機繊維の生体内持続性は、酸性または中性、ヒトの肺に見られる温度と化学的条件をシミュレートする条件下で繊維から質量が失われる速度(ng/cm2-時)を測定することで試験できる。この試験は、約0.1gのデショット繊維を50mlの模擬肺液(「SLF」)に6時間曝す工程からなる。人体の温度をシミュレートするために、試験系全体が37℃に維持される。
【0071】
SLFが繊維に曝された後、収集され、誘導結合プラズマ分光法を使用してガラス成分が分析される。「ブランク」SLF試料も測定され、SLFに存在する要素を修正するために使用される。このデータが取得されると、調査の時間間隔で繊維が質量を失った速度を計算できる。模擬肺液中の繊維の溶解率を測定するために、約0.1gの繊維を、37℃に温めた模擬肺液を含む50ml遠心チューブに入れる。次に、これを振盪培養器に6時間入れ、100サイクル/分で撹拌する。試験の最後に、チューブを遠心分離し、溶液を60mlシリンジに注ぐ。次に、溶液を0.45μmフィルターに通して粒子を除去し、誘導結合プラズマ分光分析を使用してガラス成分を試験する。この試験は、中性に近いpH溶液または酸性溶液のいずれかを使用して実施できる。特定の溶解速度基準はないが、100ng/cm2-時を超える溶解値を持つ繊維は、生体内持続性の低い繊維を示していると見なされる。
【0072】
本発明の繊維組成物の耐久性を試験するために使用された模擬肺液用の組成物:
【0073】
約18リットルの脱イオン水に、上記の試薬を上の表に示されている量で順次加える。混合物を脱イオン水で20リットルに希釈し、磁気撹拌棒または他の適切な手段で内容物を少なくとも15分間撹拌し続けた。酸性SLFの調製では、溶液のpH値が4.5に達するまで撹拌混合しながら、塩酸の液滴を基礎液(上記の組成)にピペットでゆっくりと添加した。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0074】
無機繊維の例示的な実施形態の生体内持続性を試験し、結果を上記の表IVに示す。生体内持続性は、細胞外ヒト肺液のおおよそのpHを表す中性付近のpHで測定された。生体内持続性は、マクロファージの内部環境のおおよそのpHを表す約4.5の酸性pHでも測定された。繊維持続性試験の結果は、現在の無機繊維が、中性またはほぼ中性の媒体における溶解速度と比較して、酸性媒体におけるより高い溶解速度を示すことを示している。これは、繊維が耐水性または湿気環境での耐性を示すと同時に、マクロファージの酸性環境によって小さい繊維断片に分解され、体から効果的に排除されることを意味する。特定の実施形態によれば、無機繊維は、約500~約1200(ng/cm2/時)の酸性媒体中での溶解速度、および約100~約500(ng/cm2/時)の中性またはほぼ中性媒体中の溶解速度を示す。特定の実施形態によれば、無機繊維は、約900~約1000(ng/cm2/時)の酸性媒体中での溶解速度、および約200~約300(ng/cm2/時)の中性またはほぼ中性媒体中の溶解速度を示す。特定の実施形態によれば、無機繊維は、約950~約1000(ng/cm2/時)の酸性媒体中での溶解速度、および約250~約300(ng/cm2/時)の中性またはほぼ中性媒体中の溶解速度を示す。
【0075】
特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、実質的に中性のpHにおいて、約100(ng/cm2/時)、または約200(ng/cm2/時)、または約225(ng/cm2/時)、または約250(ng/cm2/時)、または約275(ng/cm2/時)、または約300(ng/cm2/時)、または約400(ng/cm2/時)、または約500(ng/cm2/時)の溶解速度を示す。特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、実質的に中性のpHにおいて、約100~約500(ng/cm2/時)、または約100~約400(ng/cm2/時)、または約100~約300(ng/cm2/時)、または約100~約200(ng/cm2/時)の溶解速度を示す。さらなる例示的な実施形態によれば、無機繊維は、実質的に中性のpHにおいて、約125~約200(ng/cm2/時)、または約150~約200(ng/cm2/時)、または約175~約200(ng/cm2/時)、または約200~約500(ng/cm2/時)、または約200~約400(ng/cm2/時)、または約200~約300(ng/cm2/時)、または約225~約300(ng/cm2/時)、または約250~約300(ng/cm2/時)、または約275~約300(ng/cm2/時)、または約300~約500(ng/cm2/時)、または約300~約400(ng/cm2/時)、または約400~約500(ng/cm2/時)の溶解速度を示す。
【0076】
特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、酸性pHにおいて、少なくとも300(ng/cm2/時)、または少なくとも400(ng/cm2/時)、または少なくとも500(ng/cm2/時)、または少なくとも600(ng/cm2/時)、または少なくとも700(ng/cm2/時)、または少なくとも800(ng/cm2/時)、または少なくとも900(ng/cm2/時)、または少なくとも1000(ng/cm2/時)、または少なくとも1100(ng/cm2/時)、または少なくとも1200(ng/cm2/時)の溶解速度を示す。特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、酸性pHにおいて、約300~約1200(ng/cm2/時)、または約400~約1100(ng/cm2/時)、または約400~約1000(ng/cm2/時)、または約400~約900(ng/cm2/時)、または約500~約1100(ng/cm2/時)、または約600~約1100(ng/cm2/時)、または約700~約1100(ng/cm2/時)、または約800~約1100(ng/cm2/時)、または約900~約1100(ng/cm2/時)、または約700~約1100(ng/cm2/時)、または約700~約1000(ng/cm2/時)、または約700~約900(ng/cm2/時)、または約400~約700(ng/cm2/時)の溶解速度を示す。
【0077】
特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、実質的に中性のpHにおいて、少なくとも100(ng/cm2/時)の溶解速度、酸性のpHにおいて、少なくとも300(ng/cm2/時)の溶解速度を示す。特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、実質的に中性のpHにおいて、少なくとも200(ng/cm2/時)の溶解速度、酸性のpHにおいて、少なくとも400(ng/cm2/時)の溶解速度を示す。特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、実質的に中性のpHにおいて、少なくとも250(ng/cm2/時)の溶解速度、酸性のpHにおいて、少なくとも450(ng/cm2/時)の溶解速度を示す。特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、実質的に中性のpHにおいて、少なくとも200(ng/cm2/時)の溶解速度、酸性のpHにおいて、少なくとも700(ng/cm2/時)の溶解速度を示す。特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、実質的に中性のpHにおいて、少なくとも250(ng/cm2/時)の溶解速度、酸性のpHにおいて、少なくとも900(ng/cm2/時)の溶解速度を示す。特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、実質的に中性のpHにおいて、少なくとも250(ng/cm2/時)の溶解速度、酸性のpHにおいて、少なくとも1000(ng/cm2/時)の溶解速度を示す。特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、実質的に中性のpHにおいて、少なくとも250(ng/cm2/時)の溶解速度、酸性のpHにおいて、少なくとも1100(ng/cm2/時)の溶解速度を示す。特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、実質的に中性のpHにおいて、少なくとも300(ng/cm2/時)の溶解速度、酸性のpHにおいて、少なくとも1000(ng/cm2/時)の溶解速度を示す。特定の例示的な実施形態によれば、無機繊維は、実質的に中性のpHにおいて、少なくとも500(ng/cm2/時)の溶解速度、酸性のpHにおいて、少なくとも1000(ng/cm2/時)の溶解速度を示す。
【0078】
フラックス耐性試験
本開示の無機繊維から調製された繊維パッドの耐フラックス性を分析した。3インチx5インチx1インチのニードルパッドに直径1インチの円柱状の穴があけられ、次に、同じサイズと繊維の別の2つのニードルパッドの間に配置した。一方のニードルパッドは下部にあり、もう一方のニードルパッドは上部にある。次に、円筒状の穴に一定量の粉末フラックス剤を充填する。積み重ねたパッドを1260℃で6時間焼成する。フラックス剤が繊維パッドと接触している場所の外観を調べて、フラックス剤の下での繊維の腐食の程度を決定する。K
2CO
3、Na
2CO
3、Na
2B
4O
7は、この試験のフラックス剤として使用された。
【表5】
【0079】
アルミナ適合性試験
本発明の無機繊維の繊維パッドの適合性を評価した。針状の繊維パッドをアルミナ粉末の層の上に置き、1150℃で14日間焼成した。焼成後、アルミナ粉末と接触していた繊維パッドの外観を調べて、アルミナと繊維の間の反応の程度を決定した。アルミナ粉末が繊維パッド表面に付着していた場合、それは反応が起こっていることを示しており、したがって、アルミナと繊維の間の不十分な適合性を示している。そうでなければ、アルミナ粉末と針状繊維パッドとの間の反応がほとんどまたはまったく観察されなかった場合、繊維はアルミナと適合性がある。アルミナ適合性試験の結果を以下の表VIに示す。
【表6】
【0080】
無機繊維とアルミナの適合性を評価する別の方法は、50wt%繊維と50wt%アルミナの混合物の示差走査熱量測定(DSC)を観察することである。繊維とアルミナの混合物をボールミルで粉砕した。DSCは、20℃/分の加熱速度で1400℃まで実行された。
図2のグラフは、アルミナと試料5の繊維の混合物、アルカリ土類シリケート繊維(カルシア酸化マグネシウムシリケート繊維、酸化マグネシウムシリケート繊維)、およびアルミナケイ酸塩繊維(SiO
2 56wt3/4、Al
2O
3 44wt3/4)のDSC曲線を示している。アルミナを含むアルカリ土類シリケート繊維のDSC曲線の高温端での減衰は、反応が発生したことを示している。一方、これは、アルミナを含む本発明の無機繊維またはアルミナを含む参照アルミナ-シリケート繊維のDSC曲線では観察されず、本発明の繊維とアルミナとの間の反応がほとんどまたはまったくなかったことを示している。
【0081】
XRD試験
繊維試料を1260℃で24時間熱処理した。各熱処理済み繊維試料10グラムを3分間粉砕した。粉末繊維試料のX線回折(XRD)測定は、Jadeソフトウェアによって実行されるPhillips APD 3600システムで実行された。XRDスキャンは、6~60度の0.02度のステップ幅あたり2秒カウントの条件で実行された。2-θXRD分析は、分析の内部標準としてα-A12O3を使用して、RIR半定量分析によって行われた。
【0082】
1260℃で24時間の熱処理後にXRDによって検出された特定の例示的な無機繊維の結晶相を、以下の表VIIに示す。
【表7】
【0083】
無機繊維、断熱材、無機繊維を調製する方法、および断熱材を使用して物品を断熱する方法は、様々な実施形態に関連して説明されてきたが、同じ機能を実行するために、他の同様の実施形態を使用することができ、または説明した実施形態に修正および追加を行うことができることを理解されたい。さらに、様々な例示的な実施形態を組み合わせて、所望の結果を生成することができる。したがって、無機繊維、断熱材、無機繊維の調製方法、および断熱材を使用して物品を断熱する方法は、単一の実施形態に限定されるべきではなく、むしろ、添付の特許請求の範囲の記載に従って、一定の幅および範囲をもって解釈されるべきである。本明細書に記載の実施形態は単なる例示であり、当業者は本発明の精神および範囲から逸脱することなく変更および修正を行うことができることが理解されるであろう。そのようなすべての変更および修正は、上記の本発明の範囲内に含まれることが意図されている。さらに、本発明の様々な実施形態を組み合わせて所望の結果を提供することができるため、開示されるすべての実施形態は、必ずしも二者択一であるとは限らない。