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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】電池用非水電解液及びリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20230418BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20230418BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230418BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20230418BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/052
H01M10/058
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020533429
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2019028479
(87)【国際公開番号】W WO2020026853
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2018142884
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018171411
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 敬
(72)【発明者】
【氏名】藤山 聡子
(72)【発明者】
【氏名】大西 仁志
【審査官】式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-192143(JP,A)
【文献】特開2018-056426(JP,A)
【文献】国際公開第2017/204225(WO,A1)
【文献】特開2016-167437(JP,A)
【文献】特許第6065367(JP,B2)
【文献】特許第4379743(JP,B2)
【文献】特許第5935318(JP,B2)
【文献】特開2010-219011(JP,A)
【文献】特開2016-110900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
H01M 10/0568
H01M 10/052
H01M 10/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサフルオロリン酸リチウム及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含む電解質と、
下記式(A)で表される化合物、下記式(B)で表される化合物、及び下記式(D)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤と、
を含有する電池用非水電解液。
【化1】

〔式(A)中、Ra1は、炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素オキシ基、又は、炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。〕
【化2】

〔式(B)中、Rb1は、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素オキシ基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。〕
【化3】

〔式(D)中、Rd21~Rd24は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、式(a)で表される基、又は式(b)で表される基を表す。式(a)及び式(b)において、*は、結合位置を表す。〕
【請求項2】
前記ヘキサフルオロリン酸リチウムと前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドとの合計に対する前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有モル比が0.01以上0.85以下である請求項1に記載の電池用非水電解液。
【請求項3】
前記ヘキサフルオロリン酸リチウムと前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドとの合計に対する前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有モル比が0.08以上0.85以下である請求項1又は請求項2に記載の電池用非水電解液。
【請求項4】
前記ヘキサフルオロリン酸リチウム及び前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの総濃度が、0.1mol/L以上3mol/L以下である請求項1~請求項のいずれか1項に記載の電池用非水電解液。
【請求項5】
前記添加剤の含有量が、電池用非水電解液の全量に対し、0.001質量%以上10質量%以下である請求項1~請求項のいずれか1項に記載の電池用非水電解液。
【請求項6】
正極と、
金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属若しくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種を負極活物質として含む負極と、
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の電池用非水電解液と、
を含むリチウム二次電池。
【請求項7】
請求項に記載のリチウム二次電池を充放電させて得られたリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池用非水電解液及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウム二次電池は、携帯電話やノート型パソコンなどの電子機器、或いは電気自動車や電力貯蔵用の電源として広く使用されている。特に最近では、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載可能な、高容量で高出力かつエネルギー密度の高い電池の要望が急拡大している。
リチウム二次電池は、例えば、リチウムを吸蔵放出可能な材料を含有する正極及び負極、並びに、リチウム塩と非水溶媒とを含有する電池用非水電解液を含む。
正極に用いられる正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiFePOのようなリチウム金属酸化物が用いられる。
また、電池用非水電解液としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどのカーボネート類の混合溶媒(非水溶媒)に、LiPF、LiBF、LiN(SOCF、LiN(SOCFCFのようなLi電解質を混合した溶液が用いられている。
一方、負極に用いられる負極用活物質としては、金属リチウム、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物(金属単体、酸化物、リチウムとの合金など)や炭素材料が知られており、特にリチウムを吸蔵、放出が可能なコークス、人造黒鉛、天然黒鉛を採用したリチウム二次電池が実用化されている。
【0003】
電池用非水電解液を含む電池(例えばリチウム二次電池)の性能を改善するために、電池用非水電解液に対し、種々の添加剤を含有させることが行われている。
例えば、電池の充電後の保存特性を改善できる電池用非水電解液として、モノフルオロリン酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムの少なくとも一方を添加剤として含有する電池用非水電解液が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
また、電池の充放電特性及び寿命特性を向上させることができる電池用非水電解液として、特定構造のスルトン化合物を含有する電池用非水電解液が知られている(例えば、下記特許文献2参照)。
また、電池の容量維持性能を改善しながら、かつ、電池の充電保存時における開放電圧の低下を抑制できる電池用非水電解液として、特定構造の環状硫酸エステル化合物を含有する電池用非水電解液が知られている(例えば、下記特許文献3参照)。
【0004】
特許文献1:特許第3439085号公報
特許文献2:特許第4424895号公報
特許文献3:特許第5524347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の電池用非水電解液及び電池に対し、保存後の電池抵抗を更に低減することが求められる場合がある。
従って、本開示の課題は、保存後の電池抵抗を低減できる電池用非水電解液、並びに、この電池用非水電解液を用いたリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1> ヘキサフルオロリン酸リチウム及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含む電解質と、
下記式(A)で表される化合物、下記式(B)で表される化合物、下記式(C)で表される化合物、及び下記式(D)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤と、
を含有する電池用非水電解液。
【0007】
【化1】
【0008】
式(A)中、Ra1は、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素オキシ基、又は、炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
【0009】
【化2】
【0010】
式(B)中、Rb1は、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素オキシ基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
【0011】
【化3】
【0012】
式(C)中、Rc1~Rc4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6のハロゲン化炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素オキシ基、又は、炭素数1~6のハロゲン化炭化水素オキシ基を表す。
【0013】
【化4】
【0014】
式(D)中、Rd21~Rd24は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、式(a)で表される基、又は式(b)で表される基を表す。式(a)及び式(b)において、*は、結合位置を表す。
【0015】
<2> 前記ヘキサフルオロリン酸リチウムと前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドとの合計に対する前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有モル比が0.01以上0.85以下である<1>に記載の電池用非水電解液。
<3> 前記ヘキサフルオロリン酸リチウムと前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドとの合計に対する前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有モル比が0.08以上0.85以下である<1>又は<2>に記載の電池用非水電解液。
【0016】
<4> ヘキサフルオロリン酸リチウム及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含む電解質と、
下記式(E)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤と、
を含有し、
前記ヘキサフルオロリン酸リチウムと前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドとの合計に対する前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有モル比が0.050以上0.85以下である電池用非水電解液。
【0017】
【化5】
【0018】
式(E)中、R11~R14は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は炭素数1~3のフッ化炭化水素基を表す。
【0019】
<5> 前記ヘキサフルオロリン酸リチウム及び前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの総濃度が、0.1mol/L以上3mol/L以下である<1>~<4>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液。
<6> 前記添加剤の含有量が、電池用非水電解液の全量に対し、0.001質量%以上10質量%以下である<1>~<5>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液。
【0020】
<7> 正極と、
金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属若しくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種を負極活物質として含む負極と、
<1>~<6>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液と、
を含むリチウム二次電池。
<8> <7>に記載のリチウム二次電池を充放電させて得られたリチウム二次電池。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、保存後の電池抵抗を低減できる電池用非水電解液、並びに、この電池用非水電解液を用いたリチウム二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示のリチウム二次電池の一例である、ラミネート型電池の一例を示す概略斜視図である。
図2図1に示すラミネート型電池に収容される積層型電極体の、厚さ方向の概略断面図である。
図3】本開示のリチウム二次電池の別の一例である、コイン型電池の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0024】
以下、本開示の電池用非水電解液として、本開示の第1実施形態及び第2実施形態の電池用非水電解液について、順次説明する。
【0025】
〔電池用非水電解液(第1実施形態)〕
本開示の第1実施形態の電池用非水電解液(以下、単に「第1実施形態の非水電解液」ともいう)は、
ヘキサフルオロリン酸リチウム及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含む電解質と、
下記式(A)で表される化合物、下記式(B)で表される化合物、下記式(C)で表される化合物、及び下記式(D)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤と、
を含有する。
【0026】
【化6】
【0027】
式(A)中、Ra1は、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素オキシ基、又は、炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
【0028】
【化7】
【0029】
式(B)中、Rb1は、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素オキシ基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
【0030】
【化8】
【0031】
式(C)中、Rc1~Rc4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6のハロゲン化炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素オキシ基、又は、炭素数1~6のハロゲン化炭化水素オキシ基を表す。
【0032】
【化9】

【0033】
式(D)中、Rd21~Rd24は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、式(a)で表される基、又は式(b)で表される基を表す。式(a)及び式(b)において、*は、結合位置を表す。
【0034】
第1実施形態の非水電解液によれば、保存後の電池抵抗を低減できる。
かかる効果が奏される理由は明らかではないが、上記式(A)で表される化合物、上記式(B)で表される化合物、上記式(C)で表される化合物、及び上記式(D)で表される化合物から選択される少なくとも1つである添加剤を含有する非水電解液に対し、電解質として、ヘキサフルオロリン酸リチウム及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを組み合わせたものを使用することにより、電池保存後における抵抗が低い良質な被膜が、電極表面に形成されるためと考えられる。
【0035】
したがって、第1実施形態の非水電解液では、電解質として、ヘキサフルオロリン酸リチウム及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを併用することにより、電解質として、ヘキサフルオロリン酸リチウムを単独で使用した場合と比較して、保存時の電解質の安定性が向上すると考えられる。その結果、電池の保存特性(特に高温保存特性)に優れる。詳細には、保存後(特に高温保存後)の電池抵抗が低減される。
【0036】
以下、第1実施形態の非水電解液の各成分について説明する。
【0037】
<電解質>
第1実施形態の非水電解液は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(以下、LiPFともいう)及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(以下、LiFSIともいう。)を両方含む電解質を含有する。
【0038】
第1実施形態の非水電解液における電解質において、LiPF及びLiFSIの合計に対するLiFSIの含有モル比(以下、モル比〔LiFSI/(LiPF+LiFSI)〕ともいう)は、電池の高温保存特性をより向上させる観点から、好ましくは0.01以上0.85以下である。
モル比〔LiFSI/(LiPF+LiFSI)〕が、0.01以上である場合には、保存後の電池抵抗がより低減される。保存後の電池抵抗をより低減させる観点から、モル比〔LiFSI/(LiPF+LiFSI)〕は、より好ましくは0.08以上であり、更に好ましくは0.10以上であり、更に好ましくは0.15以上である。
一方、モル比〔LiFSI/(LiPF+LiFSI)〕が、0.85以下であると、電気伝導率、耐酸化性等の点で有利である。電気伝導率及び耐酸化性の観点から、モル比〔LiFSI/(LiPF+LiFSI)〕は、0.50以下であってもよいし、0.50未満であってもよいし、0.40以下であってもよいし、0.30以下であってもよいし、0.20以下であってもよい。
【0039】
第1実施形態の非水電解液において、ヘキサフルオロリン酸リチウム及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの総濃度は特に制限はないが、総濃度は、好ましくは0.1mol/L~3mol/Lであり、より好ましくは0.5mol/L~2mol/Lである。
【0040】
第1実施形態における電解質は、ヘキサフルオロリン酸リチウム及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド以外のその他の化合物を少なくとも1種含んでいてもよい。
その他の化合物としては、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSiF、LiPF[C(2k+1)(6-n)(n=1~5、k=1~8の整数)、LiC(SO27)(SO28)(SO29)(ここでR27~R29は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1~8のパーフルオロアルキル基である)、LiN(SOOR30)(SOOR31)(ここでR30及びR31は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1~8のパーフルオロアルキル基である)、LiN(SO32)(SO33)(ここでR32及びR33は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1~8のパーフルオロアルキル基である;但し、R32が、炭素数1又は2のパーフルオロアルキル基である場合、R33は、炭素数3~8のパーフルオロアルキル基である)、等が挙げられる。
【0041】
第1実施形態における電解質中に占める、ヘキサフルオロリン酸リチウム及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの合計の質量比率は、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは80質量%~100質量%であり、更に好ましくは90質量%~100質量%である。
【0042】
<添加剤>
第1実施形態の電池用非水電解液は、下記式(A)で表される化合物(以下、「添加剤A」ともいう)、下記式(B)で表される化合物(以下、「添加剤B」ともいう)、下記式(C)で表される化合物(以下、「添加剤C」ともいう)、及び下記式(D)で表される化合物(以下、「添加剤D」ともいう)からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤を含有する。
【0043】
上記の添加剤の含有量は、非水電解液の全量に対し、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.003質量%~5質量%がより好ましく、0.003質量%~3質量%であることが更に好ましく、0.03質量%~3質量%であることが更に好ましく、0.3~3質量%であることが特に好ましい。
【0044】
添加剤Aは、下記式(A)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0045】
【化10】
【0046】
式(A)中、Ra1は、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素オキシ基、又は、炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
【0047】
a1で表される「炭素数1~6のフッ化炭化水素基」は、無置換の炭素数1~6の炭化水素基が少なくとも1つのフッ素原子によって置換された構造を有する。
無置換の炭素数1~6の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-メチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基等のアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、イソプロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基等のアルケニル基;等が挙げられる。
【0048】
a1で表される「炭素数1~6のフッ化炭化水素基」としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロイソブチル基等のフルオロアルキル基;2-フルオロエテニル基、2,2-ジフルオロエテニル基、2-フルオロ-2-プロペニル基、3,3-ジフルオロ-2-プロペニル基、2,3-ジフルオロ-2-プロペニル基、3,3-ジフルオロ-2-メチル-2-プロペニル基、3-フルオロ-2-ブテニル基、パーフルオロビニル基、パーフルオロプロペニル基、パーフルオロブテニル基等のフルオロアルケニル基;等が挙げられる。
【0049】
a1で表される「炭素数1~6のフッ化炭化水素基」としては、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルケニル基が好ましく、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基がより好ましい。
a1で表される「炭素数1~6のフッ化炭化水素基」は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されていればよいが、パーフルオロ炭化水素基であることが好ましい。
a1で表される「炭素数1~6のフッ化炭化水素基」の炭素数は、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0050】
式(A)中、Ra1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」は、無置換の炭素数1~6の炭化水素基を表す。
a1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」は、直鎖炭化水素基であっても分岐炭化水素基であっても環状炭化水素基であってもよい。
【0051】
a1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」としては、例えば、
メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルペンチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、3,3-ジメチルブチル基等のアルキル基;
ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、イソプロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基等のアルケニル基;
フェニル基;
等が挙げられる。
a1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」としては、アルキル基、アルケニル基、又はフェニル基が好ましく、アルキル基又はアルケニル基がより好ましく、アルキル基が更に好ましい。
a1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」の炭素数は、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0052】
a1で表される「炭素数1~6の炭化水素オキシ基」の構造中の「炭素数1~6の炭化水素基」の具体例及び好ましい態様は、前述した、Ra1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」の具体例及び好ましい態様と同様である。
【0053】
a1としては、炭素数1~6のフッ化炭化水素基が好ましく、炭素数1~6のフッ化アルキル基がより好ましく、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基が更に好ましく、パーフルオロメチル基(別名:トリフルオロメチル基)又はパーフルオロエチル基(別名:ペンタフルオロエチル基)が更に好ましく、パーフルオロメチル基(別名:トリフルオロメチル基)が特に好ましい。
【0054】
式(A)で表される化合物としては、トリフルオロメチルスルホン酸リチウム又はペンタフルオロエチルスルホン酸リチウムが好ましく、トリフルオロメチルスルホン酸リチウムが特に好ましい。
また、式(A)で表される化合物としては、下記式(A-1)~下記式(A-5)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物(A-1)~化合物(A-5)ともいう)も好ましい。
【0055】
【化11】
【0056】
添加剤Bは、下記式(B)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0057】
【化12】
【0058】
式(B)中、Rb1は、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素オキシ基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
【0059】
b1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」は、無置換の炭素数1~6の炭化水素基を表す。
b1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」は、直鎖炭化水素基であっても分岐炭化水素基であっても環状炭化水素基であってもよい。
b1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」としては、アルキル基、アルケニル基、又はフェニル基が好ましく、アルキル基又はアルケニル基がより好ましく、アルキル基が更に好ましい。
b1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」の炭素数は、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0060】
b1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルペンチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、3,3-ジメチルブチル基等のアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、イソプロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基等のアルケニル基;等が挙げられる。
【0061】
b1で表される「炭素数1~6の炭化水素オキシ基」の構造中の「炭素数1~6の炭化水素基」の具体例及び好ましい態様は、前述した、Rb1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」の具体例及び好ましい態様と同様である。
【0062】
b1で表される「炭素数1~6のフッ化炭化水素基」の具体例及び好ましい態様は、前述した、式(A)中のRa1で表される「炭素数1~6のフッ化炭化水素基」の好ましい態様と同様である。
【0063】
式(B)中、Rb1としては、炭素数1~6の炭化水素基(即ち、無置換の炭素数1~6の炭化水素基)が好ましく、炭素数1~6のアルキル基が特に好ましい。
【0064】
式(B)で表される化合物としては、
メタンスルホニルフルオリド、エタンスルホニルフルオリド、プロパンスルホニルフルオリド、2-プロパンスルホニルフルオリド、ブタンスルホニルフルオリド、2-ブタンスルホニルフルオリド、ヘキサンスルホニルフルオリド、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド、パーフルオロエタンスルホニルフルオリド、パーフルオロプロパンスルホニルフルオリド、パーフルオロブタンスルホニルフルオリド、エテンスルホニルフルオリド、1-プロペン-1-スルホニルフルオリド、又は2-プロペン-1-スルホニルフルオリドが好ましく、
メタンスルホニルフルオリド、エタンスルホニルフルオリド、プロパンスルホニルフルオリド、2-プロパンスルホニルフルオリド、ブタンスルホニルフルオリド、2-ブタンスルホニルフルオリド、ヘキサンスルホニルフルオリド、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド、パーフルオロエタンスルホニルフルオリド、パーフルオロプロパンスルホニルフルオリド、又はパーフルオロブタンスルホニルフルオリドがより好ましく、
メタンスルホニルフルオリド、エタンスルホニルフルオリド、プロパンスルホニルフルオリド、2-プロパンスルホニルフルオリド、ブタンスルホニルフルオリド、2-ブタンスルホニルフルオリド、又はヘキサンスルホニルフルオリドが更に好ましく、
メタンスルホニルフルオリド、エタンスルホニルフルオリド、又はプロパンスルホニルフルオリドが更に好ましく、
メタンスルホニルフルオリドが特に好ましい。
【0065】
添加剤Cは、下記式(C)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0066】
【化13】
【0067】
式(C)中、Rc1~Rc4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6のハロゲン化炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素オキシ基、又は、炭素数1~6のハロゲン化炭化水素オキシ基を表す。
【0068】
式(C)中、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子がより好ましく、フッ素原子又は塩素原子が更に好ましく、フッ素原子が更に好ましい。
【0069】
式(C)中、Rc1~Rc4で表される炭素数1~6の炭化水素基は、直鎖の炭化水素基であってもよいし、分岐及び/又は環構造を有する炭化水素基であってもよい。
式(C)中、Rc1~Rc4で表される炭素数1~6の炭化水素基の具体例は、式(B)中のRb1で表される炭素数1~6の炭化水素基の具体例と同様である。
式(C)中、Rc1~Rc4で表される炭素数1~6の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基が好ましく、アルキル基又はアルケニル基がより好ましく、アルキル基が特に好ましい。
式(C)中、Rc1~Rc4で表される炭素数1~6の炭化水素基の炭素数としては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
【0070】
式(C)中、Rc1~Rc4で表される炭素数1~6のハロゲン化炭化水素基は、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数1~6の炭化水素基を意味する。
ハロゲン化炭化水素基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子がより好ましく、フッ素原子又は塩素原子が更に好ましく、フッ素原子が更に好ましい。
【0071】
式(C)中、Rc1~Rc4で表される炭素数1~6のハロゲン化炭化水素基は、直鎖のハロゲン化炭化水素基であってもよいし、分岐及び/又は環構造を有するハロゲン化炭化水素基であってもよい。
式(C)中、Rc1~Rc4で表される炭素数1~6のハロゲン化炭化水素基としては、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、又はハロゲン化アルキニル基が好ましく、ハロゲン化アルキル基又はハロゲン化アルケニル基がより好ましく、ハロゲン化アルキル基が特に好ましい。
式(C)中、Rc1~Rc4で表される炭素数1~6のハロゲン化炭化水素基の炭素数としては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
【0072】
式(C)中、Rc1~Rc4で表される炭素数1~6の炭化水素オキシ基は、直鎖の炭化水素オキシ基であってもよいし、分岐及び/又は環構造を有する炭化水素オキシ基であってもよい。
式(C)中、Rc1~Rc4で表される炭素数1~6の炭化水素オキシ基としては、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、又はアルキニルオキシ基が好ましく、アルコキシ基又はアルケニルオキシ基がより好ましく、アルコキシ基が特に好ましい。
式(C)中、Rc1~Rc4で表される炭素数1~6の炭化水素オキシ基の炭素数としては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
【0073】
式(C)中、Rc1~Rc4で表される炭素数1~6のハロゲン化炭化水素オキシ基は、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数1~6の炭化水素オキシ基を意味する。
ハロゲン化炭化水素オキシ基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子がより好ましく、フッ素原子又は塩素原子が更に好ましく、フッ素原子が更に好ましい。
【0074】
式(C)中、Rc1~Rc4で表される炭素数1~6のハロゲン化炭化水素オキシ基は、直鎖のハロゲン化炭化水素オキシ基であってもよいし、分岐及び/又は環構造を有するハロゲン化炭化水素オキシ基であってもよい。
式(C)中、Rc1~Rc4で表される炭素数1~6のハロゲン化炭化水素オキシ基としては、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アルケニルオキシ基、又はハロゲン化アルキニルオキシ基が好ましく、ハロゲン化アルコキシ基又はハロゲン化アルケニルオキシ基がより好ましく、ハロゲン化アルコキシ基が特に好ましい。
式(C)中、Rc1~Rc4で表される炭素数1~6のハロゲン化炭化水素オキシ基の炭素数としては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
【0075】
式(C)中、Rc1~Rc4としては、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、エチル基、ビニル基、エチニル基、アリル基、トリフルオロメチル基、又はメトキシ基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0076】
式(C)で表される化合物の具体例としては、
スルホ安息香酸無水物、
フルオロスルホ安息香酸無水物、
クロロ安息香酸無水物、
ジフルオロスルホ安息香酸無水物、
ジクロロスルホ安息香酸無水物、
トリフルオロスルホ安息香酸無水物、
テトラフルオロスルホ安息香酸無水物、
メチルスルホ安息香酸無水物、
ジメチルスルホ安息香酸無水物、
トリメチルスルホ安息香酸無水物、
エチルスルホ安息香酸無水物、
プロピルスルホ安息香酸無水物、
ビニルスルホ安息香酸無水物、
エチニルスルホ安息香酸無水物、
アリルスルホ安息香酸無水物、
(トリフルオロメチル)スルホ安息香酸無水物、
ジ(トリフルオロ)(メチル)スルホ安息香酸無水物、
(トリフルオロメトキシ)スルホ安息香酸無水物、
(フルオロ)(メチル)スルホ安息香酸無水物、
(クロロ)(メチル)スルホ安息香酸無水物、
(フルオロ)(メトキシ)スルホ安息香酸無水物、
(クロロ)(メトキシ)スルホ安息香酸無水物、
ジ(フルオロ)(メトキシ)スルホ安息香酸無水物、
ジ(トリフルオロ)(ビニル)スルホ安息香酸無水物、
(フルオロ)(ビニル)スルホ安息香酸無水物、
ジ(トリフルオロ)(エチニル)スルホ安息香酸無水物、
(フルオロ)(エチニル)スルホ安息香酸無水物、
等が挙げられる。
これらのうち、スルホ安息香酸無水物(以下、「化合物(C-1)」ともいう)が特に好ましい。
【0077】
添加剤Dは、下記式(D)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0078】
【化14】
【0079】
式(D)中、Rd21~Rd24は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、式(a)で表される基、又は式(b)で表される基を表す。式(a)及び式(b)において、*は、結合位置を表す。
【0080】
式(D)中、Rd21~Rd24で表される炭素数1~6の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基が好ましく、アルキル基又はアルケニル基がより好ましく、アルキル基が特に好ましい。
式(D)中、Rd21~Rd24で表される炭素数1~6の炭化水素基の炭素数としては、1又は2が好ましく、1が特に好ましい。
【0081】
式(D)で表される化合物の具体例としては、下記式(D2-1)~下記式(D2-4)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物(D2-1)~化合物(D2-4)ともいう)が挙げられるが、式(D)で表される化合物は、これらの具体例には限定されない。
これらのうち、化合物(D2-1)~化合物(D2-3)が特に好ましい。
【0082】
【化15】
【0083】
<非水溶媒>
非水電解液は、一般的に、非水溶媒を含有する。
非水電解液に含有される非水溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
非水溶媒としては、種々公知のものを適宜選択することができる。
非水溶媒としては、例えば、特開2017-45723号公報の段落0069~0087に記載の非水溶媒を用いることができる。
【0084】
非水溶媒は、環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物を含むことが好ましい。
この場合、非水溶媒に含まれる環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物は、それぞれ、1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
【0085】
環状カーボネート化合物としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート等が挙げられる。
これらのうち、誘電率が高い、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートが好適である。黒鉛を含む負極活物質を使用した電池の場合は、非水溶媒は、エチレンカーボネートを含むことがより好ましい。
【0086】
鎖状カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、メチルペンチルカーボネート、エチルペンチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、メチルヘプチルカーボネート、エチルヘプチルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、メチルヘキシルカーボネート、エチルヘキシルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、メチルオクチルカーボネート、エチルオクチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、等が挙げられる。
【0087】
環状カーボネートと鎖状カーボネートの組み合わせとして、具体的には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネートなどが挙げられる。
【0088】
環状カーボネート化合物と鎖状カーボネート化合物の混合割合は、質量比で表して、環状カーボネート化合物:鎖状カーボネート化合物が、例えば5:95~80:20、好ましくは10:90~70:30、更に好ましくは15:85~55:45である。このような比率にすることによって、非水電解液の粘度上昇を抑制し、電解質の解離度を高めることができるため、電池の充放電特性に関わる非水電解液の伝導度を高めることができる。また、電解質の溶解度をさらに高めることができる。よって、常温または低温での電気伝導性に優れた非水電解液とすることができるため、常温から低温での電池の負荷特性を改善することができる。
【0089】
非水溶媒は、環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物以外のその他の化合物を含んでいてもよい。
この場合、非水溶媒に含まれるその他の化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
その他の化合物としては、環状カルボン酸エステル化合物(例えばγブチロラクトン)、環状スルホン化合物、環状エーテル化合物、鎖状カルボン酸エステル化合物、鎖状エーテル化合物、鎖状リン酸エステル化合物、アミド化合物、鎖状カーバメート化合物、環状アミド化合物、環状ウレア化合物、ホウ素化合物、ポリエチレングリコール誘導体、等が挙げられる。
これらの化合物については、特開2017-45723号公報の段落0069~0087の記載を適宜参照できる。
【0090】
非水溶媒中に占める、環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物の割合は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは95質量%以上である。
非水溶媒中に占める、環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物の割合は、100質量%であってもよい。
【0091】
非水電解液中に占める非水溶媒の割合は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。
非水電解液中に占める非水溶媒の割合の上限は、他の成分(添加剤、電解質、等)の含有量にもよるが、上限は、例えば99質量%であり、好ましくは97質量%であり、更に好ましくは90質量%である。
【0092】
第1実施形態の非水電解液は、リチウム二次電池用の非水電解液として好適であるばかりでなく、一次電池用の非水電解液、電気化学キャパシタ用の非水電解液、電気二重層キャパシタ、アルミ電解コンデンサー用の電解液としても用いることができる。
【0093】
〔電池用非水電解液(第2実施形態)〕
本開示の第2実施形態の電池用非水電解液(以下、単に「第2実施形態の非水電解液」ともいう)は、
ヘキサフルオロリン酸リチウム及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含む電解質と、
下記式(E)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤と、を含有する。
【0094】
【化16】
【0095】
式(E)中、R11~R14は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は炭素数1~3のフッ化炭化水素基を表す。
【0096】
第2実施形態の非水電解液によれば、保存後の電池抵抗を低減できる。
かかる効果が奏される理由は明らかではないが、上記式(E)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つである添加剤を含有する非水電解液に対し、電解質として、ヘキサフルオロリン酸リチウム及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを組み合わせたものを使用することにより、電池保存後における抵抗が低い良質な被膜が、電極表面に形成されるためと考えられる。
【0097】
したがって、第2実施形態の非水電解液では、電解質として、ヘキサフルオロリン酸リチウム及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを併用することにより、電解質として、ヘキサフルオロリン酸リチウムを単独で使用した場合と比較して、保存時の電解質の安定性が向上すると考えられる。その結果、電池の保存特性(特に高温保存特性)に優れる。
【0098】
以下、第2実施形態の非水電解液の各成分について説明する。
【0099】
<電解質>
第2実施形態の非水電解液は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(以下、LiPFともいう)及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(以下、LiFSIともいう。)を両方含む電解質を含有する。
【0100】
第2実施形態の非水電解液における電解質において、LiPF及びLiFSIの合計に対するLiFSIの含有モル比(以下、モル比〔LiFSI/(LiPF+LiFSI)〕ともいう)は、0.050以上0.85以下である。
モル比〔LiFSI/(LiPF+LiFSI)〕が0.050以上であることにより、保存後の電池抵抗が低減される。保存後の電池抵抗をより低減させる観点から、モル比〔LiFSI/(LiPF+LiFSI)〕は、好ましくは0.080以上であり、より好ましくは0.10以上であり、更に好ましくは0.15以上である。
一方、モル比〔LiFSI/(LiPF+LiFSI)〕が、0.85以下であることは、電気伝導率、耐酸化性等の点で有利である。電気伝導率及び耐酸化性の観点から、モル比〔LiFSI/(LiPF+LiFSI)〕は、0.50以下であってもよいし、0.50未満であってもよいし、0.40以下であってもよし、0.30以下であってもよいし、0.20以下であってもよい。
【0101】
第2実施形態の非水電解液において、ヘキサフルオロリン酸リチウム及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの総濃度は特に制限はないが、総濃度は、好ましくは0.1mol/L~3mol/Lであり、より好ましくは0.5mol/L~2mol/Lである。
【0102】
第2実施形態の非水電解液における電解質は、ヘキサフルオロリン酸リチウム及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド以外のその他の化合物を少なくとも1種含んでいてもよい。
第2実施形態における電解質に含まれ得るその他の化合物の例は、前述した第1実施形態における電解質に含まれ得るその他の化合物の例と同様である。
【0103】
第2実施形態における電解質中に占める、ヘキサフルオロリン酸リチウム及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの合計の質量比率は、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは80質量%~100質量%であり、更に好ましくは90質量%~100質量%である。
【0104】
<添加剤>
第2実施形態の非水電解液は、下記式(E)で表される化合物(以下、「添加剤E」ともいう)からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤を含有する。
【0105】
上記の添加剤Eの含有量は、非水電解液の全量に対し、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.003質量%~5質量%がより好ましく、0.003質量%~3質量%であることが更に好ましく、0.03質量%~3質量%であることが更に好ましく、0.1~3質量%であることが特に好ましい。
【0106】
添加剤Eは、下記式(E)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0107】
【化17】
【0108】
式(E)中、R11~R14は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は炭素数1~3のフッ化炭化水素基を表す。
【0109】
式(E)中、R11~R14で表される炭素数1~3の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基が好ましく、アルキル基又はアルケニル基がより好ましく、アルキル基が特に好ましい。
式(A)中、R11~R14で表される炭素数1~3の炭化水素基の炭素数としては、1又は2が好ましく、1が特に好ましい。
【0110】
式(E)中、R11~R14で表される炭素数1~3のフッ化炭化水素基としては、フッ化アルキル基、フッ化アルケニル基、又はフッ化アルキニル基が好ましく、フッ化アルキル基又はフッ化アルケニル基がより好ましく、フッ化アルキル基が特に好ましい。
式(E)中、R11~R14で表される炭素数1~3のフッ化炭化水素基の炭素数としては、1又は2が好ましく、1が特に好ましい。
【0111】
式(E)中、R11~R14は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、又はペンタフルオロエチル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0112】
式(E)で表される化合物の具体例としては、下記式(E-1)~下記式(E-21)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物(E-1)~化合物(E-21)ともいう)が挙げられるが、式(E)で表される化合物は、これらの具体例には限定されない。
これらのうち、化合物(E-1)(即ち、1,3-プロペンスルトン;以下、「PRS」ともいう)が特に好ましい。
【0113】
【化18】
【0114】
<非水溶媒>
第2実施形態の非水電解液は、一般的に、非水溶媒を含有する。
第2実施形態の非水電解液に含有される非水溶媒の好ましい態様は、第1実施形態の非水電解液に含有される非水溶媒の好ましい態様と同様である。
【0115】
第2実施形態の非水電解液は、リチウム二次電池用の非水電解液として好適であるばかりでなく、一次電池用の非水電解液、電気化学キャパシタ用の非水電解液、電気二重層キャパシタ、アルミ電解コンデンサー用の電解液としても用いることができる。
【0116】
〔リチウム二次電池〕
次に、本開示のリチウム二次電池について説明する。
本開示のリチウム二次電池は、正極と、負極と、本開示の非水電解液(即ち、前述した第1実施形態の非水電解液又は第2実施形態の非水電解液。以下同じ。)と、を含む。
【0117】
(負極)
負極は、負極活物質及び負極集電体を含んでもよい。
負極における負極活物質としては、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれた少なくとも1種(単独で用いてもよいし、これらの2種以上を含む混合物を用いてもよい)を用いることができる。
リチウム(又はリチウムイオン)との合金化が可能な金属もしくは合金としては、シリコン、シリコン合金、スズ、スズ合金などを挙げることができる。また、チタン酸リチウムでもよい。
これらの中でもリチウムイオンをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料が好ましい。このような炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、黒鉛材料(人造黒鉛、天然黒鉛)、非晶質炭素材料、等が挙げられる。上記炭素材料の形態は、繊維状、球状、ポテト状、フレーク状いずれの形態であってもよい。
【0118】
上記非晶質炭素材料として具体的には、ハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチカーボンファイバー(MCF)などが例示される。
上記黒鉛材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。人造黒鉛としては、黒鉛化MCMB、黒鉛化MCFなどが用いられる。また、黒鉛材料としては、ホウ素を含有するものなども用いることができる。また、黒鉛材料としては、金、白金、銀、銅、スズなどの金属で被覆したもの、非晶質炭素で被覆したもの、非晶質炭素と黒鉛を混合したものも使用することができる。
【0119】
これらの炭素材料は、1種類で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
上記炭素材料としては、特にX線解析で測定した(002)面の面間隔d(002)が0.340nm以下の炭素材料が好ましい。また、炭素材料としては、真密度が1.70g/cm以上である黒鉛又はそれに近い性質を有する高結晶性炭素材料も好ましい。以上のような炭素材料を使用すると、電池のエネルギー密度をより高くすることができる。
【0120】
負極における負極集電体の材質には特に制限はなく、公知のものを任意に用いることができる。
負極集電体の具体例としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられる。中でも、加工しやすさの点から特に銅が好ましい。
【0121】
(正極)
正極は、正極活物質及び正極集電体を含んでもよい。
正極における正極活物質としては、MoS、TiS、MnO、Vなどの遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物、LiCoO、LiMnO、LiMn、LiNiO、LiNiCo(1-X)〔0<X<1〕、α-NaFeO型結晶構造を有するLi1+αMe1-α(Meは、Mn、Ni及びCoを含む遷移金属元素、1.0≦(1+α)/(1-α)≦1.6)、LiNiCoMn〔x+y+z=1、0<x<1、0<y<1、0<z<1〕(例えば、LiNi0.33Co0.33Mn0.33、LiNi0.5Co0.2Mn0.3等)、LiFePO、LiMnPOなどのリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアセン、ジメルカプトチアジアゾール、ポリアニリン複合体などの導電性高分子材料等が挙げられる。これらの中でも、特にリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物が好ましい。負極がリチウム金属又はリチウム合金である場合は、正極として炭素材料を用いることもできる。また、正極として、リチウムと遷移金属との複合酸化物と、炭素材料と、の混合物を用いることもできる。
正極活物質は、1種類で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。正極活物質は導電性が不充分である場合には、導電性助剤とともに使用して正極を構成することができる。導電性助剤としては、カーボンブラック、アモルファスウィスカー、グラファイトなどの炭素材料を例示することができる。
【0122】
正極における正極集電体の材質には特に制限はなく、公知のものを任意に用いることができる。
正極集電体の具体例としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、タンタルなどの金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパーなどの炭素材料;等が挙げられる。
【0123】
(セパレータ)
本開示のリチウム二次電池は、負極と正極との間にセパレータを含むことが好ましい。
セパレータは、正極と負極とを電気的に絶縁し且つリチウムイオンを透過する膜であって、多孔性膜や高分子電解質が例示される。
多孔性膜としては微多孔性高分子フィルムが好適に使用され、材質としてポリオレフィン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル等が例示される。
特に、多孔性ポリオレフィンが好ましく、具体的には多孔性ポリエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルム、又は多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとの多層フィルムを例示することができる。多孔性ポリオレフィンフィルム上には、熱安定性に優れる他の樹脂がコーティングされてもよい。
高分子電解質としては、リチウム塩を溶解した高分子や、電解液で膨潤させた高分子等が挙げられる。
本開示の非水電解液は、高分子を膨潤させて高分子電解質を得る目的で使用してもよい。
【0124】
(電池の構成)
本開示のリチウム二次電池は、種々公知の形状をとることができ、円筒型、コイン型、角型、ラミネート型、フィルム型その他任意の形状に形成することができる。しかし、電池の基本構造は、形状によらず同じであり、目的に応じて設計変更を施すことができる。
【0125】
本開示のリチウム二次電池(非水電解液二次電池)の例として、ラミネート型電池が挙げられる。
図1は、本開示のリチウム二次電池の一例であるラミネート型電池の一例を示す概略斜視図であり、図2は、図1に示すラミネート型電池に収容される積層型電極体の厚さ方向の概略断面図である。
図1に示すラミネート型電池は、内部に非水電解液(図1中では不図示)及び積層型電極体(図1中では不図示)が収納され、且つ、周縁部が封止されることにより内部が密閉されたラミネート外装体1を備える。ラミネート外装体1としては、例えばアルミニウム製のラミネート外装体が用いられる。
ラミネート外装体1に収容される積層型電極体は、図2に示されるように、正極板5と負極板6とがセパレータ7を介して交互に積層されてなる積層体と、この積層体の周囲を囲むセパレータ8と、を備える。正極板5、負極板6、セパレータ7、及びセパレータ8には、本開示の非水電解液が含浸されている。
上記積層型電極体における複数の正極板5は、いずれも正極タブを介して正極端子2と電気的に接続されており(不図示)、この正極端子2の一部が上記ラミネート外装体1の周端部から外側に突出している(図1)。ラミネート外装体1の周端部において正極端子2が突出する部分は、絶縁シール4によってシールされている。
同様に、上記積層型電極体における複数の負極板6は、いずれも負極タブを介して負極端子3と電気的に接続されており(不図示)、この負極端子3の一部が上記ラミネート外装体1の周端部から外側に突出している(図1)。ラミネート外装体1の周端部において負極端子3が突出する部分は、絶縁シール4によってシールされている。
なお、上記一例に係るラミネート型電池では、正極板5の数が5枚、負極板6の数が6枚となっており、正極板5と負極板6とがセパレータ7を介し、両側の最外層がいずれも負極板6となる配置で積層されている。しかし、ラミネート型電池における、正極板の数、負極板の数、及び配置については、この一例には限定されず、種々の変更がなされてもよいことは言うまでもない。
【0126】
本開示のリチウム二次電池の別の一例として、コイン型電池も挙げられる。
図3は、本開示のリチウム二次電池の別の一例であるコイン型電池の一例を示す概略斜視図である。
図3に示すコイン型電池では、円盤状負極12、非水電解液を注入したセパレータ15、円盤状正極11、必要に応じて、ステンレス、又はアルミニウムなどのスペーサー板17、18が、この順序に積層された状態で、正極缶13(以下、「電池缶」ともいう)と封口板14(以下、「電池缶蓋」ともいう)との間に収納される。正極缶13と封口板14とはガスケット16を介してかしめ密封する。
この一例では、セパレータ15に注入される非水電解液として、本開示の非水電解液を用いる。
【0127】
なお、本開示のリチウム二次電池は、負極と、正極と、上記本開示の非水電解液と、を含むリチウム二次電池(充放電前のリチウム二次電池)を、充放電させて得られたリチウム二次電池であってもよい。
即ち、本開示のリチウム二次電池は、まず、負極と、正極と、上記本開示の非水電解液と、を含む充放電前のリチウム二次電池を作製し、次いで、この充放電前のリチウム二次電池を1回以上充放電させることによって作製されたリチウム二次電池(充放電されたリチウム二次電池)であってもよい。
【0128】
本開示のリチウム二次電池の用途は特に限定されず、種々公知の用途に用いることができる。例えば、ノート型パソコン、モバイルパソコン、携帯電話、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、電子手帳、電卓、ラジオ、バックアップ電源用途、モーター、自動車、電気自動車、バイク、電動バイク、自転車、電動自転車、照明器具、ゲーム機、時計、電動工具、カメラ等、小型携帯機器、大型機器を問わず広く利用可能なものである。
【実施例
【0129】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例によって制限されるものではない。
以下の実施例において、「添加量」は、最終的に得られる非水電解液中における含有量(即ち、最終的に得られる非水電解液全量に対する量)を意味する。
また、「wt%」は、質量%を意味する。
【0130】
以下、実施例1~6、並びに、比較例1~6、A、及びBは、第1実施形態の非水電解液の実施例及び比較例であり、実施例101及び比較例101~104は、第2実施形態の非水電解液の実施例及び比較例である。
【0131】
〔実施例1〕
以下の手順にて、リチウム二次電池であるコイン型電池(試験用電池)を作製した。
<負極の作製>
アモルファスコート天然黒鉛(97質量部)、カルボキシメチルセルロース(1質量部)及びSBRラテックス(2質量部)を水溶媒で混練してペースト状の負極合剤スラリーを調製した。
次に、この負極合剤スラリーを厚さ10μmの帯状銅箔製の負極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して負極集電体と負極活物質層からなるシート状の負極を得た。このときの負極活物質層の塗布密度は12mg/cmであり、充填密度は1.5g/mlであった。
【0132】
<正極の作製>
LiNi0.5Mn0.3Co0.2(90質量部)、アセチレンブラック(5質量部)及びポリフッ化ビニリデン(5質量部)を、N-メチルピロリジノンを溶媒として混練してペースト状の正極合剤スラリーを調製した。
次に、この正極合剤スラリーを厚さ20μmの帯状アルミ箔の正極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して正極集電体と正極活物質層とからなるシート状の正極を得た。このときの正極活物質層の塗布密度は22mg/cmであり、充填密度は2.5g/mlであった。
【0133】
<非水電解液の調製>
非水溶媒として、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とメチルエチルカーボネート(EMC)とをそれぞれ30:35:35(質量比)の割合で混合し、混合溶媒を得た。
得られた混合溶媒中に、電解質としてのLiPF及びLiFSI(リチウムビス(フルオロメチルスルホニル)イミドを、最終的に得られる非水電解液中におけるLiPFの濃度が1.0mol/Lとなり、かつ、最終的に得られる非水電解液中におけるLiFSIの濃度が0.2mol/Lとなるように溶解させた。即ち、最終的に得られる非水電解液中において、LiPF及びLiFSIの総濃度は1.2mol/Lであり、モル比〔LiFSI/(LiPF+LiFSI)〕は、0.17である。
上記で得られた溶液に対して、
添加剤としてトリフルオロメチルスルホン酸リチウム(以下、「TFMSL」ともいう;添加剤Aの具体例)(添加量0.5質量%)、を添加し、非水電解液を得た。
【0134】
<コイン型電池の作製>
上述の負極を直径14mmで、上述の正極を直径13mmで、それぞれ円盤状に打ち抜き、コイン状の負極及びコイン状の正極をそれぞれ得た。また、厚さ20μmの微多孔性ポリエチレンフィルムを直径17mmの円盤状に打ち抜き、セパレータを得た。
得られたコイン状の負極、セパレータ、及びコイン状の正極を、この順序でステンレス製の電池缶(2032サイズ)内に積層し、次いで、この電池缶内に、上述の非水電解液20μLを注入し、セパレータと正極と負極とに含漬させた。
次に、正極上にアルミニウム製の板(厚さ1.2mm、直径16mm)及びバネを乗せ、ポリプロピレン製のガスケットを介して、電池缶蓋をかしめることにより電池を密封した。
以上により、直径20mm、高さ3.2mmの図3で示す構成を有するコイン型電池(即ち、コイン型のリチウム二次電池)を得た。
【0135】
<電池抵抗の評価>
得られたコイン型電池に対し、コンディショニングを施し、コンディショニング後のコイン型電池について、電池抵抗の評価を行った。
ここで、「コンディショニング」とは、コイン型電池を、恒温槽内で25℃にて、2.75Vと4.2Vとの間で充放電を三回繰り返すことを指す。
以下、「高温保存」とは、コイン型電池を、恒温槽内で、80℃で48時間保存する操作を意味する。
以下、電池抵抗(DCIR)は、-20℃の温度条件にて測定した。
【0136】
(高温保存前の電池抵抗(DCIR)の測定)
コンディショニング後のコイン型電池のSOC(State of Charge)を80%に調整し、次いで、以下の方法により、コイン型電池の高温保存前のDCIR(Direct current internal resistance;直流抵抗)を測定した。
上述のSOC80%に調整されたコイン型電池を用い、放電レート0.2CでのCC10s放電を行った。
ここで、CC10s放電とは、定電流(Constant Current)にて10秒間放電することを意味する。
上記「放電レート0.2CでのCC10s放電」における、電流値(即ち、放電レート0.2Cに相当する電流値)と、電圧低下量(=放電開始前の電圧-放電開始後10秒目の電圧)と、に基づき直流抵抗を求め、得られた直流抵抗(Ω)を、コイン型電池の高温保存前の電池抵抗(Ω)とした。
【0137】
(高温保存後の電池抵抗(DCIR)の測定)
コンディショニング後であってSOCを80%に調整する前のコイン型電池に対し、恒温槽内で25℃にて充電レート0.2Cで4.25VまでCC-CV充電し、次いで高温保存を施す操作を追加したこと以外は前述の高温保存前の電池抵抗の測定と同様にして、高温保存後の電池抵抗(Ω)を測定した。
結果を表1に示す。
ここで、CC-CV充電とは、定電流定電圧(Constant Current - Constant Voltage)を意味する。
【0138】
(高温保存による電池抵抗の上昇率の測定)
下記式により、高温保存による電池抵抗の上昇率(表1中では、単に「上昇率(%)」とする)を算出した。結果を表1に示す。
高温保存による電池抵抗の上昇率(%)
= 〔(高温保存後の電池抵抗(Ω)-高温保存前の電池抵抗(Ω))/高温保存前の電池抵抗(Ω)〕×100
【0139】
上昇率(%)は、正の値となる場合だけでなく、負の値となる場合や0となる場合もある。
上昇率(%)が正の値であることは、高温保存により、電池抵抗が上昇したことを意味し、上昇率(%)が負の値であることは、高温保存により、電池抵抗が低減されたことを意味し、上昇率(%)が0であることは、高温保存により、電池抵抗が変化しなかったことを意味する。
【0140】
〔実施例2~6、比較例1~6、A、B〕
電解質の種類、電解質の濃度、添加剤の添加量の組み合わせを、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0141】
表1中、「-」は、該当する成分を含有しないことを意味する。
表1中、添加剤の略称の下のかっこ内の数値は、その添加剤の添加量(質量%)を意味する。例えば、「TFMSL(0.5)」は、トリフルオロメチルスルホン酸リチウム(添加量0.5質量%)という意味である。また、「MSF(0.5)」は、メタンスルホニルフルオリド(添加量0.5質量%)という意味である。
表1中、スルホ安息香酸は、式(C)で表される化合物のRc1~Rc4全てがそれぞれ水素原子であるものである。また、表1中、(D2-1)、(D2-2)、(D2-3)は、式(D)で表される化合物の具体例であり、詳細には、下記の化合物である。
【0142】
【化19】
【0143】
【表1】
【0144】
表1に示すように、非水電解液中の電解質としてLiPF及びLiFSIを含有し、かつ、添加剤(添加剤A~Dの少なくとも1つ)を含有する実施例1~6の電池では、これらの条件のいずれか一つを満足しない比較例1~6、A、Bの電池と比較して、高温保存後の電池抵抗が低減されていた。
特に、実施例1~6の電池では、LiPF及びLiFSIを含有するが、添加剤が含まれていない比較例Aの電池と比べ、いずれも高温保存後の電池抵抗が低減されていた。
また、実施例1の電池と、実施例1と同様の添加剤を含有するがLiFSIが含有されていない比較例1の電池とを対比すると、実施例1の電池は高温保存後の電池抵抗が低減されていた。さらに、実施例1の電池は、同じ添加剤を含有する比較例1の電池と比べ、高温保存による電池抵抗の上昇率が抑制されていた。他の実施例2~6の電池についても同様の結果であった。
【0145】
〔実施例101〕
以下の手順にて、リチウム二次電池であるコイン型電池(試験用電池)を作製した。
<負極の作製>
実施例1における負極の作製と同様にして、負極を作製した。
【0146】
<正極の作製>
実施例1における正極の作製と同様にして、正極を作製した。
【0147】
<非水電解液の調製>
非水溶媒として、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とメチルエチルカーボネート(EMC)とをそれぞれ30:35:35(質量比)の割合で混合し、混合溶媒を得た。
得られた混合溶媒中に、電解質としてのLiPF及びLiFSI(リチウムビス(フルオロメチルスルホニル)イミドを、最終的に得られる非水電解液中におけるLiPFの濃度が1.0mol/Lとなり、かつ、最終的に得られる非水電解液中におけるLiFSIの濃度が0.2mol/Lとなるように溶解させた。即ち、最終的に得られる非水電解液中において、LiPF及びLiFSIの総濃度は1.2mol/Lであり、モル比〔LiFSI/(LiPF+LiFSI)〕は、0.17である。
上記で得られた溶液に対して、
添加剤として1,3-プロペンスルトン(以下、「PRS」ともいう;添加剤Eの具体例)(添加量0.5質量%)、を添加し、非水電解液を得た。
【0148】
<コイン型電池の作製>
非水電解液として、本実施例101における非水電解液を用いたこと以外は実施例1におけるコイン型電池の作製と同様にして、コイン型電池を得た。
【0149】
<電池抵抗の評価>
上記で得られたコイン型電池に対し、電池抵抗(DCIR)の温度条件を、-20℃から25℃に変更したこと以外は実施例1における電池抵抗の評価と同様にして、電池抵抗の評価を行った。
結果を表2に示す。
【0150】
〔比較例101~104〕
電解質の種類、電解質の濃度、添加剤の添加量の組み合わせを、表2に示すように変更したこと以外は実施例101と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
【0151】
表2中、「-」は、該当する成分を含有しないことを意味する。
表2中、添加剤の略称の下のかっこ内の数値は、その添加剤の添加量(質量%)を意味する。例えば、「PRS(0.5)」は、1,3-プロペンスルトン(添加量0.5質量%)という意味である。
【0152】
【表2】
【0153】
表2に示すように、非水電解液中の電解質としてLiPF及びLiFSI、及び添加剤Eを含有し、かつ、モル比〔LiFSI/(LiPF+LiFSI)〕が0.050以上0.85以下の範囲内である実施例101の電池では、これらの条件のいずれか一つでも満足しない比較例101~104と比較して、高温保存後の電池抵抗が低減されていた。また、同様に実施例101の電池は、比較例101~104の電池と比較して、高温保存による電池抵抗の上昇が抑制されていた(表2の「上昇率」参照)。
【0154】
2018年9月13日に出願された日本国特許出願2018-171411の開示及び2018年7月30日に出願された日本国特許出願2018-142884の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3