(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】双方向信号測位方法及びその双方向信号測位システム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/74 20060101AFI20230418BHJP
G01S 5/14 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
G01S13/74
G01S5/14
(21)【出願番号】P 2021016174
(22)【出願日】2021-02-04
【審査請求日】2021-02-04
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】513018143
【氏名又は名称】グニテック コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ユ-チー テン
(72)【発明者】
【氏名】ティン-ファイ チャン
(72)【発明者】
【氏名】ファイ-ウェイ ペン
(72)【発明者】
【氏名】チェン-ジュ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ファン-リュエイ シウ
(72)【発明者】
【氏名】チャン-リャン シュ
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-204028(JP,A)
【文献】特開2017-223645(JP,A)
【文献】特開2017-015555(JP,A)
【文献】特開2011-139503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 -13/95
G01S 5/00 - 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間内における測位対象物の機器位置を測位する双方向信号測位方法であり、双方向信号測位システムで使用され、前記空間において複数の既知点にある機器をさらに利用する双方向信号測位方法であって、
処理モジュールが、前記測位対象物を制御して複数の異なる送信電力で複数の測位信号を送信するステップと、
前記処理モジュールが、前記複数の既知点にある機器に複数の測位信号を受信させ、その後複数の応答信号を前記測位対象物に返すステップと
前記処理モジュールが、前記複数の測位信号強度、前記複数の応答信号強度、及び前記複数の既知点にある機器の座標をデータベースに記録するステップと、
前記処理モジュールが、前記データベースに記録された前記複数の測位信号強度、前記複数の応答信号強度、及び前記複数の既知点にある機器の座標を参照して、受信した前記複数の測位信号及び前記複数の応答信号の中で信号強度が比較的強い前記既知点にある機器を抽出するステップと、
コンピューティングモジュールが、前記データベース内から信号強度-距離関数及び信号強度-距離標準偏差関数を取り出すステップと、
前記コンピューティングモジュールが、前記信号強度-距離関数及び前記信号強度-距離標準偏差関数に基づいて前記測位対象物の前記機器位置を測位するステップ
であって、前記信号強度-距離関数に従って当該信号強度下での距離を求めて得られ、すなわち、当該距離をベース半径として設定すると共に、前記信号強度-距離標準偏差関数に従って当該信号強度下での距離標準偏差を求めて得られ、すなわち、当該標準偏差を半径調整の準拠として設定する、ステップと、
を含む、双方向信号測位方法。
【請求項2】
前記処理モジュールが、前記信号強度-距離関数及び前記信号強度-距離標準偏差関数に基づいて信号強度が比較的強い複数の前記既知点にある機器及び前記複数の異なる送信電力における機器の複数の確率分布平面を得るステップと、
前記コンピューティングモジュールが、前記複数の確率分布平面を乗算した後、最終的な確率分布平面を得るステップと、
前記コンピューティングモジュールが、前記測位対象物の前記機器位置として設定するため、前記最終的な確率分布平面から最大確率位置を抽出するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の双方向信号測位方法。
【請求項3】
前記処理モジュールが、前記信号強度-距離関数及び前記信号強度-距離標準偏差関数に基づいて、異なる前記送信電力の中に強度が比較的強い複数の前記既知点にある機器を抽出するステップと、
前記処理モジュールが、複数の電力グループにより、複数の前記既知点にある機器を円心として設定し、前記信号強度-距離関数で得られた距離、前記信号強度-距離標準偏差関数で得られた標準偏差を用いて複数の円を描画するステップと、
前記処理モジュールが、複数の円の間の複数の交点を得るステップと、
前記コンピューティングモジュールが、複数の三角形を得るため、前記複数の交点について三角形分割フローを行うステップと、
前記コンピューティングモジュールが、前記複数の三角形から最小外接円の半径を有する三角形を抽出することで、前記外接円の円心を前記測位対象物の前記機器位置と設定するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の双方向信号測位方法。
【請求項4】
前記処理モジュールが、測位信号強度及び応答信号強度が比較的強い3台の前記既知点にある機器を抽出するステップをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の双方向信号測位方法。
【請求項5】
前記複数の既知点にある機器が、前記測位対象物の識別子を受信するステップをさらに含む、請求項1に記載の双方向信号測位方法。
【請求項6】
データ設定フローを実行するステップをさらに含み、
前記データ設定フローは、
前記処理モジュールが、試験用送信機の複数の送信電力を設定し、前記試験用送信機が対応する複数距離で複数の試験信号を受信機に送信させ、異なる試験信号が異なる前記送信電力に対応することと、
前記処理モジュールが、前記受信機が受信した前記複数の試験信号強度を検出することと、
前記処理モジュールが、前記複数の試験信号強度及び前記対応する複数距離をデータベースに記録することと、
前記コンピューティングモジュールが、前記信号強度-距離関数及び前記信号強度-距離標準偏差関数を算出すると共に前記データベースに保存することと、
を含む、請求項1に記載の双方向信号測位方法。
【請求項7】
空間内における測位対象物の機器位置を測位する双方向信号測位システムであり、前記空間において複数の既知点にある機器をさらに含む双方向信号測位システムであって、
前記測位対象物を制御して複数の異なる送信電力で複数の測位信号を送信し、前記複数の既知点にある機器に前記複数の測位信号を受信させ、その後複数の応答信号を前記測位対象物に返すための処理モジュールと、
前記処理モジュールに電気的に接続され、信号強度-距離関数及び信号強度-距離標準偏差関数を格納し、かつ前記複数の既知点にある機器が前記複数の測位信号を受信した後、前記複数の測位信号強度、前記複数の応答信号強度、及び前記複数の既知点にある機器の座標を記録することで、当該記録した前記複数の測位信号強度、前記複数の応答信号強度、及び前記複数の既知点にある機器の座標を参照して、前記処理モジュールが受信した前記複数の測位信号及び前記複数の応答信号強度の中で信号強度が比較的強い前記既知点にある機器を抽出するためのデータベースと、
前記データベースに電気的に接続され、前記複数の測位信号強度、前記複数の応答信号強度、及び前記強度が比較的強い前記既知点にある機器により、前記信号強度-距離関数及び前記信号強度-距離標準偏差関数を照会して前記測位対象物の前記機器位置を測位するためのコンピューティングモジュール
であって、前記信号強度-距離関数に従って当該信号強度下での距離を求めて得られ、すなわち、当該距離をベース半径として設定すると共に、前記信号強度-距離標準偏差関数に従って当該信号強度下での距離標準偏差を求めて得られ、すなわち、当該標準偏差を半径調整の準拠として設定する、コンピューティングモジュールと、
を含む、双方向信号測位システム。
【請求項8】
前記処理モジュールは、前記信号強度-距離関数及び前記信号強度-距離標準偏差関数に基づいて信号強度が比較的強い複数の前記既知点にある機器、及び前記複数の異なる送信電力における機器の複数の確率分布平面を得、したがって、コンピューティングモジュールが前記複数の確率分布平面を乗算した後、最終的な確率分布平面を得、前記測位対象物の前記機器位置として設定するため、前記最終的な確率分布平面から最大確率位置を抽出する、請求項7に記載の双方向信号測位システム。
【請求項9】
前記処理モジュールは、前記信号強度-距離関数及び前記信号強度-距離標準偏差関数に基づいて、異なる前記送信電力の中に強度が比較的強い複数の前記既知点にある機器を抽出し、複数の電力グループにより、複数の前記既知点にある機器を円心として設定し、前記信号強度-距離関数で得られた距離、前記信号強度-距離標準偏差関数で得られた標準偏差を用いて複数の円を描画して、複数の円の間の複数の交点を得、それにより、コンピューティングモジュールは前記複数の交点について三角形分割フローを行うことで、外接円の半径が最小となる三角形の中で最小外接円の円心を抽出して前記測位対象物の前記機器位置と設定する、請求項7に記載の双方向信号測位システム。
【請求項10】
前記処理モジュールは、測位信号強度及び応答信号強度が比較的強い3台の前記既知点にある機器を抽出する、請求項7~9のいずれか一項に記載の双方向信号測位システム。
【請求項11】
前記測位対象物の識別子を受信することを含む、請求項7に記載の双方向信号測位システム。
【請求項12】
前記処理モジュールは、複数の試験信号を送信するため、試験用送信機の複数の送信電力を設定し、受信機に前記試験用送信機から対応する複数距離で、前記複数の試験信号を受信させ、異なる試験信号が異なる前記送信電力に対応し、これにより、前記処理モジュールは、前記受信機が受信した複数の試験信号強度を検出することで、前記複数の試験信号強度及び前記対応する複数距離を前記データベースに記録し、前記コンピューティングモジュールが前記信号強度-距離関数及び前記信号強度-距離標準偏差関数を算出すると共に前記データベースに保存させる、請求項7に記載の双方向信号測位システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向信号測位方法及びその双方向信号測位システムに関し、特に、異なる電力の信号の受信及び送信を利用して測位する双方向信号測位方法及びその双方向信号測位システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の屋内機器の測位方法は、3点測位が使用されることが多く、3点測位に必要な距離は通常、信号強度又は到達時間(ToA,Time of Arrivial)を使用して算出される。したがって、信号強度又は到達時間の計算の精度は、推定された距離に影響を与え、3点測位の精度に影響を及ぼしていた。従来技術における測位方法は、定電力送信信号に依存している。定電力送信信号に基づく測位方法は、測位精度が単一電力信号の減衰形式に制限される。
【0003】
携帯電話などの現在のモバイルデバイスには、往々にしてさまざまな機能を備えた他のセンサーが装備されていることが多く、ジャイロスコープや電子コンパスなどを搭載したセンサーは、測位精度を支援又は改善できる。ただし、デバイスのコストを考慮すると、屋内測位機器にはさまざまなセンサーが搭載されていない場合がある。他のセンサーを使用しない屋内測位では、信号強度のみに依存して距離を推定し、このデータを使用して測位する。しかしながら、従来技術では、ブルートゥース(登録商標)装置の信号強度は大きく変化することで、大きな測位誤差が生じる。
【0004】
したがって、従来技術の欠陥を解決するため、新しい双方向信号測位方法及びその双方向信号測位システムを発明する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】デービッド,H.A.(David, H. A.,)等「単一の正規サンプルにおける,標準偏差に対する範囲の比率の分布(The Distribution of the Ratio, in a Single Normal Sample, of Range to Standard Deviation)」,バイオメトリカ(Biometrika),41巻,no.3/4,[オックスフォード大学出版局,バイオメトリカトラスト(Oxford University Press, Biometrika Trust)],1954年,482-93ページ
【文献】ベンキッチ,カール(Benkic, Karl),等「ジグビーを用いたワイヤレスセンサネットワークにおけるRSSI値の距離推定への利用(Using RSSI value for distance estimation in wireless sensor networks based on ZigBee)」,2008年第15回システム、信号、画像処理に関する国際会議.米国電気電子学会(2008 15th international conference on systems, signals and image processing. IEEE),2008年
【文献】アワド,アブダルカリム,トーステン フルンツキー,及びファルコ ドレスラー.(Awad, Abdalkarim, Thorsten Frunzke, and Falko Dressler.)「RSSI測度を用いたWSNにおける適応的距離推定と位置特定(Adaptive distance estimation and localization in WSN using RSSI measures)」,デジタルシステム設計のアーキテクチャ、方法、ツールに関する第10回ユーロマイクロ会議(DSD 2007).米国電気電子学会(10th Euromicro Conference on Digital System Design Architectures, Methods and Tools (DSD 2007). IEEE),2007年
【文献】チョン,J.,ヨン,S.,キム,T.(Jeong, J., Yeon, S., Kim, T.),等 SALA:屋内IoTデバイスの位置決めのためのスマートフォン支援型ローカライゼーションアルゴリズム ワイヤレスネットワーク 24,27-47(SALA: Smartphone-Assisted Localization Algorithm for Positioning Indoor IoT Devices. Wireless Netw 24, 27-47) (2018年)
【文献】エルナーラウィ,E.,リー,エックス.,及びマーティン,R.P.(Elnahrawy, E., Li, X., & Martin, R. P)(2004年)無線LANにおける定位システムのためのエリアベースのプレゼンテーションとメトリックの使用(Using area-based presentations and metrics for localization systems in wireless LANs).650-657. 講演論文集で発表した論文,ローカルコンピュータネットワークに関する第29回米国電気電子学会国際会議,LCN 2004(29th Annual IEEE International Conference on Local Computer Networks, LCN 2004),タンパ,フロリダ州,米国
【文献】台湾特許公報第I708957号
【文献】米国公開特許公報2019/0331760号明細書
【文献】米国公開特許公報2015/0153443号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、異なる電力の信号の受信及び送信を利用して測位する効果を奏する双方向信号測位方法を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、上記方法に使用される双方向信号測位システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の双方向信号測位方法は、空間内の測位対象物の機器位置を測位するため、双方向信号測位システムで使用され、空間において複数の既知点にある機器をさらに利用される。方法は、測位対象物を制御して複数の送信電力で複数の測位信号を送信するステップと、複数の既知点にある機器に複数の測位信号を受信させることで、複数の応答信号を測位対象物に返すステップと、前記複数の測位信号強度、複数の応答信号強度、複数の対応する受信時間及び前記複数の既知点にある機器の座標をデータベースに記録するステップと、受信した複数の測位信号及び複数の応答信号の中で信号強度が比較的強い既知点にある機器を抽出するステップと、データベース内から信号強度-距離関数及び信号強度-距離標準偏差関数を取り出すステップと、信号強度-距離関数及び信号強度-距離標準偏差関数に基づいて測位対象物の機器位置を測位するステップと、を含む。
【0009】
本発明の双方向信号測位システムは、処理モジュールと、データベースと、コンピューティングモジュールと、を含む。処理モジュールは、測位対象物を制御して複数の送信電力で複数の測位信号を送信し、複数の既知点にある機器に複数の測位信号を受信させることで、複数の応答信号を測位対象物に返すために用いられる。データベースは、処理モジュールに電気的に接続され、信号強度-距離関数及び信号強度-距離標準偏差関数を格納し、かつ複数の既知点にある機器が複数の測位信号を受信した後、前記複数の測位信号強度、複数の応答信号強度、複数の対応する受信時間及び前記複数の既知点にある機器の座標を記録することで、処理モジュールが受信した前記複数の測位信号の中で信号強度が比較的強い既知点にある機器を抽出するために用いられる。コンピューティングモジュールは、データベースに電気的に接続され、複数の測位信号強度、複数の応答信号強度、複数の対応する受信時間及び強度が比較的強い既知点にある機器により、信号強度-距離関数及び信号強度-距離標準偏差関数を照会して、測位対象物の機器位置を測位するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る双方向信号測位システムで設定するシステム構成図である。
【
図2】本発明に係るデータ設定フローを示すフローチャートである。
【
図3】本発明に係る双方向信号測位システムで測位するシステム構成図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る双方向信号測位方法のフローチャートである。
【
図5】
図4に基づき、本発明の第1の実施形態に係る双方向信号測位方法の確率分布を示す模式図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る双方向信号測位方法のフローチャートである。
【
図7A】
図6に基づき、本発明の第2の実施形態に係る双方向信号測位方法の異なる送信電力における同心円の相関図である。
【
図7B】
図6に基づき、本発明の第2の実施形態に係る双方向信号測位方法の異なる送信電力における同心円の相関図である。
【
図7C】
図6に基づき、本発明の第2の実施形態に係る双方向信号測位方法の交点で行った三角形分割の相関図である。
【
図7D】
図6に基づき、本発明の第2の実施形態に係る双方向信号測位方法の最小の同心円を
抽出する相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
審査官に本発明の技術内容をより理解してもらうため、以下、好ましい実施例を挙げて説明する。
【0012】
まず
図1を参照すると、本発明に係る双方向信号測位システムで設定するシステム構成図である。
【0013】
本発明の一実施例において、双方向信号測位システム1は、互いに電気的に接続された処理モジュール11と、データベース12と、コンピューティングモジュール13と、を含む。双方向信号測位システム1は、空間内で既知点にある機器50(
図3)を利用して測位対象物40の機器位置を
測位するために用いられる。測位対象物40を
測位する前、前記双方向信号測位システム1は、先に試験用送信機20及び受信機30を利用して必要な信号強度-距離関数及び信号強度-距離標準偏差関数のデータを確立することもできるが、本発明はこれに限定されない。試験用送信機20、受信機30、測位対象物40及び既知点にある機器50は、いずれも無線信号を送信及び受信でき、この無線信号がブルートゥース信号であてもよく、かつ試験用送信機20、受信機30、測位対象物40及び既知点にある機器50が同じ又は異なる家電製品、コンピュータ或いはモバイルデバイスなどであってもよいが、本発明はそれらに限定されない。
【0014】
双方向信号測位システム1が備えた各モジュールは、ハードウェアデバイス、ハードウェアデバイスと組み合わされたソフトウェア、ハードウェアデバイスと組み合わされたファームウェアなどの方式によって構築できることに留意されたい。例えばコンピュータプログラム製品をコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納し、読み取って実行して本発明の様々な機能を達成することができるが、本発明は上記方式に限定されない。またこの実施形態は、本発明の好ましい実施例を例示するのみであり、冗長な説明を避けるため、変更のすべての可能な組み合わせは詳細に説明されない。しかしながら、上記の各モジュール又は構成要素は必ずしも必要ではないことを当業者は理解すべきである。かつ本発明を実施するために、他のより詳細な従来のモジュール又は構成要素も含めることができる。各モジュール又は構成要素は、必要に応じて省略或いは変更する可能性があり、かつ任意の2つのモジュール間に他のモジュール又は構成要素が存在する場合がある。処理モジュール11、データベース12又はコンピューティングモジュール13は、同じデバイ内にインストール或いは異なるデバイス内にそれぞれインストールされてもよいし、若しくは試験用送信機20、受信機30、測位対象物40又は既知点にある機器50のうちのいずれか機器内にインストールさせることができるが、本発明はこれに限定されない。
【0015】
したがって、本発明の一実施例において、前記処理モジュール11は、前記試験用送信機20の複数の送信電力を設定するため、試験用送信機20が複数の試験信号を送信できる。次に、受信機30に前記試験用送信機20から対応する複数距離で、前記複数の試験信号を受信させ、例えば10cm、20cm又は1m~6m範囲の異なる距離で、それぞれ異なる送信電力で異なる試験信号を送信する。ただし、本発明はこの値に限定されない。これにより、前記処理モジュール11は、前記受信機30が受信した複数の試験信号強度を検出することで、前記複数の試験信号強度及び前記対応する複数距離を前記データベース12に記録する。最後に前記コンピューティングモジュール13は、データベース12の数値計算により信号強度-距離関数及び信号強度-距離標準偏差関数を得ると共に前記データベース12内にリストアする。
【0016】
次に、
図2を参照すると、本発明に係るデータ設定フローを示すフローチャートである。ここで、上記双方向信号測位システム1を例として本発明に係るデータ設定フローを説明したが、本発明に係るデータ設定フローは、上記と同じ構造で使用される双方向信号測位システム1に限定されないことに留意されたい。
【0017】
まず、試験用送信機の複数の送信電力を設定し、前記試験用送信機が対応する複数距離で複数の試験信号を受信機に送信させるステップ201を実行する。
【0018】
まず、前記処理モジュール11は、前記試験用送信機20の複数の送信電力を設定する。したがって、試験用送信機20は、複数の試験信号を送信でき、次に受信機30に前記試験用送信機20から対応する複数距離(例:10cm、20cm又は1m~6m範囲の異なる距離)で、前記複数の試験信号を受信させる。
【0019】
次に、前記受信機が受信した複数の試験信号強度を検出するステップ202を実行する。
【0020】
次に、処理モジュール11は、受信機30が受信したすべての信号強度を検出する。
【0021】
さらに、前記複数の試験信号強度及び前記対応する複数距離をデータベースに記録するステップ203を実行する。
【0022】
さらに、処理モジュール11は、受信機30が受信した全ての試験信号の強度及び前記試験信号に対応する距離をデータベース12内に保存する。
【0023】
最後に、信号強度-距離関数及び信号強度-距離標準偏差関数を算出すると共に前記データベースにリストアするステップ204を実行する。
【0024】
最後に、前記コンピューティングモジュール13は、上記のすべての信号の強度及び前記信号の対応する距離によって計算すると、異なる送信電力ごとについて計算して信号強度-距離関数及び信号強度-距離標準偏差関数を得ることで、受信機30が受信した信号強度と試験用送信機20との間の距離関係及びその標準偏差を知ることができる。これにより前記データベース12内にリストアできる。このようにして、本発明に係るデータ設定フローを完了することができる。
【0025】
次に
図3を参照すると、本発明に係る双方向信号測位システムで測位するシステム構成図である。
【0026】
信号強度-距離関数及び信号強度-距離標準偏差関数がデータベース12に確立された後、双方向信号測位システム1は既知点にある機器50を利用して空間内において測位対象物40の機器位置を測位することができる。本発明の一実施形態では、先にデータ設定フローを直接実行する方式により信号強度-距離関数及び信号強度-距離標準偏差関数を得るが、本発明は毎回データ設定フローを実行してデータベース12内で信号強度-距離関数及び信号強度-距離標準偏差関数を再確立することに限定されないことに留意されたい。これらの信号強度-距離関数及び信号強度-距離標準偏差関数は、測位対象物40又は既知点にある機器50に予め設定することができる。
【0027】
このように、前記処理モジュール11は、前記測位対象物40を制御して複数の送信電力で複数の測位信号を送信し、前記複数の既知点にある機器50に前記複数の測位信号を受信させ、次に前記複数の既知点にある機器50が複数の応答信号を前記測位対象物40に返すようにさせる。処理モジュール11は、前記複数の測位信号強度、前記複数の応答信号強度、複数の対応する受信時間及び複数の既知点にある機器50の位置を前記データベース12に記録できる。複数の既知点にある機器50は、測位対象物40を識別するため、前記測位対象物40の識別子も受信する。この識別子はデータベース12にも格納される。これを介して前記処理モジュール11は、受信した前記複数の測位信号及び複数の応答信号の中で信号強度が比較的強い機器、例えば既知点にある機器51、52、53を抽出する。最後に前記コンピューティングモジュール13は、既知点にある機器51、52、53の位置から前記信号強度-距離関数及び前記信号強度-距離標準偏差関数に基づいて測位対象物40の機器位置を測位することができる。
【0028】
測位対象物40の機器位置を
測位する詳細方法は、
図4の本発明の第1の実施形態に係る機器測位フローを示すフローチャートを参照のこと。
【0029】
まず、前記測位対象物を制御し、複数の送信電力で複数の測位信号を送信するステップ401を実行する。
【0030】
まず、測位対象物40が空間に入ると、処理モジュール11は、先に測位対象物40を制御して異なる送信電力で測位信号を送信する。
【0031】
次に、前記複数の既知点にある機器に前記複数の測位信号を受信させることで、複数の応答信号を前記測位対象物に返すステップ402を実行する。
【0032】
このようにして異なる既知点にある機器50は、測位対象物40の測位信号を受信でき、処理モジュール11が異なる既知点にある機器50を制御して、複数の応答信号を測位対象物40に返すことができる。この時複数の既知点にある機器50は、前記測位対象物40の識別子も受信できる。
【0033】
次に、前記複数の測位信号強度、前記複数の応答信号、複数の対応する受信時間及び前記複数の既知点にある機器の座標を記録するステップ403を実行する。
【0034】
測位対象物40は、異なる送信電力で測位信号を送信するため、既知点にある機器50が測位信号を受信すると共に応答信号を返した後、すべての測位信号、対応する受信時間及び既知点にある機器50の座標をデータベース12に送り返し、測位対象物40が全ての応答信号のデータをデータベース12内に送り返す。
【0035】
さらに、受信した前記複数の測位信号及び複数の応答信号の中で信号強度が比較的強い前記既知点にある機器を抽出するステップ404を実行する。
【0036】
処理モジュール11は、データベース12のデータから複数の測位信号及び複数の応答信号の中で信号強度が比較的強い前記既知点にある機器51、52、53を抽出する。
【0037】
次に、前記信号強度-距離関数及び前記信号強度-距離標準偏差関数に基づいて、複数の異なる電力における機器の複数の確率分布平面を得るステップ405を実行する。
【0038】
次に、コンピューティングモジュール13は、前記複数の測位信号の強度、前記複数の応答信号の強度、前記複数の対応する受信時間及び前記強度が比較的強い前記既知点にある機器に応じて、前記信号強度-距離関数及び前記信号強度-距離標準偏差関数を照会し、既知点にある機器51、52、53の固定点座標を円心とし、信号強度-距離関数に従ってこの信号強度下での距離を求めて得られ、すなわち、この距離をベース半径として設定する。さらに、信号強度-距離標準偏差関数でこの信号強度下での距離標準偏差を求めて得られ、すなわち、この標準偏差を半径調整の準拠として設定する。これにより、異なる電力における既知点にある機器51、52、53の複数の確率分布平面を算出する。
【0039】
図5を参照すると、
図5は
図4に基づき、本発明の第1の実施形態に係る機器測位フローの確率分布関連を示す模式図である。
【0040】
例えばこの実施形態では、高、中、低電力下で既知点にある機器51、52、53が受信した測位信号に可能な9つの確率分布平面及び応答信号に可能な9つの確率分布平面を得ることができる。
図5に示されているのは、既知点にある機器51、52、53が受信した測位信号に可能な9つの確率分布平面のほんの一例である。
図5では、高電力下で既知点にある機器51、52、53が受信した測位信号の確率分布平面A1、A2、A3が得られ、中電力下で既知点にある機器51、52、53が受信した測位信号の確率分布平面A4、A5、A6が得られ、低電力下で既知点にある機器51、52、53が受信した測位信号の確率分布平面A7、A8、A9が得られる。
【0041】
さらに、前記複数の確率分布平面を乗算した後、最終的な確率分布平面を得るステップ406を実行する。
【0042】
次に、コンピューティングモジュール13は、得られた確率分布平面A1~A9を乗算すると、最終的な確率分布平面が得られる。
【0043】
最後に、前記測位対象物の前記機器位置として設定するため、前記最終的な確率分布平面から最大確率位置を抽出するステップ407を実行する。
【0044】
最後に、コンピューティングモジュール13は、最終的な確率分布平面から最大確率位置を抽出して最大確率位置を前記測位対象物40の前記機器位置41として設定すると、測位対象物40の座標を知ることができる。
【0045】
次に
図6を参照すると、本発明の機器測位フローの第2実施形態に係るステップのフローチャートである。
【0046】
まず、前記測位対象物を制御し、複数の送信電力で複数の測位信号を送信するステップ601を実行する。次に、前記複数の既知点にある機器に前記複数の測位信号を受信させることで、複数の応答信号を前記測位対象物に返すステップ602を実行する。さらに、前記複数の測位信号強度、前記複数の応答信号、複数の対応する受信時間及び前記複数の既知点にある機器の座標を記録するステップ603を実行する。受信した前記複数の測位信号及び複数の応答信号の中で信号強度が比較的強い前記既知点にある機器を抽出するステップ604を実行する。
【0047】
上記ステップ601~ステップ604の技術は、ステップ401~ステップ404と同じであるため、ここではこれ以上説明しない。
【0048】
次に、複数の電力グループにより、複数の前記既知点にある機器を円心として設定し、前記信号強度-距離関数で得られた距離、前記信号強度-距離標準偏差関数で得られた標準偏差を用いて複数の円を描画すると共に複数の円の間の複数の交点を得るステップ605を実行する。
【0049】
次に、コンピューティングモジュール13は、前記複数の測位信号の強度、前記複数の応答信号の強度、前記複数の対応する受信時間及び前記強度が比較的強い前記既知点にある機器に応じて、前記信号強度-距離関数及び前記信号強度-距離標準偏差関数を照会し、異なる電力における既知点にある機器をグルーピングすることができる。同じ電力下で測位対象物40によって検出された最高強度の測位信号及び応答信号は、同じ既知点にある機器によって送信され得るので、同じ電力下で1つの座標のみを円心として留保する。したがって、この実施形態において、高、中、低電力下で既知点にある機器の最大で18つの座標を得ることができ、最少でも9つの座標を得ることができる。信号強度-距離関数に従ってこの信号強度下での距離を求めて得られ、すなわち、この距離をベース半径として設定し、さらに信号強度-距離標準偏差関数でこの信号強度下での距離標準偏差を求めて得られ、すなわち、この標準偏差を半径調整の準拠として設定する。
【0050】
図7A乃至7Bを同時に参照すると、
図6に基づき、本発明の第2の実施形態に係る双方向信号測位方法の異なる送信電力における同心円の相関図である。
【0051】
図7A乃至
図7Bは、3つの既知点にある機器51、52、53の座標を見つけることを説明の例として取り上げるが、本発明はこの数に限定されない。したがって、本実施例において、既知点にある機器51、52、53の固定点座標を円心として複数の円を描き出した後、2つの固定点で交点を求める。
図7Aでは、先に元の半径距離から0.67標準偏差を引いたものを最小半径として設定し、元の半径距離に0.67標準偏差を加えたものを最大半径として設定し、2つの円が接する或いは交わると、終了できる。2つの円が交わらない場合は、別の円との交点ができるまで、さらに0.0134(すなわち、(0.67×2)/100)標準偏差を追加する。このようにして、複数の円の間の複数の交点a~fを得ることができ、すなわち、既知点にある機器51、52の円の間に交点a、bがあり、既知点にある機器51、53の円の間に交点c、dがあり、既知点にある機器52、53の円の間に交点e、fがある。各電力グループ内の既知点にある機器51、52、53の固定点の円の間で最大6つの交点を得ることができるが、本発明は6つの交点に限定されない。
図7Bは、既知点にある機器51、52、53の別の電力下で計算して得られた交点の模式図である。したがって、
図7Bでは既知点にある機器51、52、53の別の電力における6つの交点g~lを得ることができる。
【0052】
次に、複数の三角形を得るため、前記複数の交点について三角形分割フローを行うステップ606を実行する。
【0053】
図7Cを参照すると、
図7Cは、
図6に基づき、本発明の第2の実施形態に係る双方向信号測位方法の交点で行った三角形分割の相関図である。
【0054】
この時、コンピューティングモジュール13は、交点a~lから外れ値を削除した後、複数の三角形を得るため、ドロネー三角形分割フローを実施する。本実施形態では、得られた12個の交点a~lが計算されると仮定するが、本発明はこれに限定されず、より多くの座標が見つけられれば、交点が多いほどより正確な結果を得ることができる。
【0055】
最後に前記複数の三角形から最小外接円の半径を有する三角形を抽出することで、前記外接円の円心を前記測位対象物の前記機器位置と設定するステップ607を実行する。
【0056】
図7Dを参照すると、
図7Dは
図6に基づき、本発明の第2の実施形態に係る双方向信号測位方法の最小の同心円を
抽出する相関図である。
【0057】
最後に、コンピューティングモジュール13は、外接円の半径が最小となる三角形の中で最小外接円の円心を
抽出する。最小外接円の円心を前記測位対象物40の前記機器位置41と設定すると、測位対象物40の座標を知ることができる。
図7Dを例にすると、交点i、h、kによって形成される三角形は、最小外接円の半径を有する三角形であることが得られる。したがって、外接円の円心の座標は、機器位置41である。
【0058】
ここで、本発明の双方向信号測位方法は、上記のステップ順序に限定されず、本発明の目的が達成される限り、上記のステップ順序を変更することもできることに留意されたい。
【0059】
本発明に係る双方向信号測位方法及び双方向信号測位システム1を通じると、多くの追加の検知モジュールを設置することなく、測位対象物40の機器位置を測位することができる。
【0060】
上記をまとめて、本発明は、目的、手段および効果を問わず、従来の技術とは全く異なるその特徴を示す。審査官は、何卒ご審理の上、速やかに特許査定賜りますようお願いする次第である。上記の実施形態は説明の便宜上の例に過ぎず、本発明の権利の範囲は、上記実施例に限定されるのではなく、特許請求の範囲に基づくべきであることに留意されたい。
【符号の説明】
【0061】
1 双方向信号測位システム
11 処理モジュール
12 データベース
13 コンピューティングモジュール
20 試験用送信機
30 受信機
40 測位対象物
41 機器位置
50、51、52、53 既知点にある機器
A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9 確率分布平面
a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、k、l 交点