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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】滅菌機能を備えたマスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20230418BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20230418BHJP
   A61L 2/04 20060101ALI20230418BHJP
   C01B 32/158 20170101ALI20230418BHJP
   C01B 32/168 20170101ALI20230418BHJP
【FI】
A41D13/11 M
A62B18/02 C
A61L2/04
C01B32/158
C01B32/168
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021063397
(22)【出願日】2021-04-02
(65)【公開番号】P2022019530
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】202010690231.5
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509312592
【氏名又は名称】北京富納特創新科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】潛 力
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲ユイ▼權
(72)【発明者】
【氏名】▲ハン▼ 立
【審査官】西尾 元宏
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3152585(JP,U)
【文献】中国実用新案第202190779(CN,U)
【文献】中国実用新案第204146394(CN,U)
【文献】特開2018-107116(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0209719(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101623134(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111227359(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に長いマスク本体及び前記マスク本体の左右両側に設けられた結び紐を含む滅菌機能を備えたマスクにおいて、更に機能層、二つの電極及び電源継ぎ目を含み、
前記マスク本体は、左右方向に直線状に延びる上辺と、前記マスク本体の左右方向中心から右上方向及び左上方向に延びる下辺とを有し、
前記機能層及び二つの前記電極は、前記マスク本体の内部に配置され、且つ前記機能層が前記マスク本体の大部分の領域を覆い、
二つの前記電極は、前記機能層の表面に互いに離隔して配置され、且つ前記電源継ぎ目に電気的に接続され、
二つの前記電極は、前記機能層に通電し、前記機能層の温度を上昇させるために使用され、
二つの前記電極の一方である第一電極は、一本の第一水平リード線及び複数の第一垂直リード線を含み、
前記第一水平リード線は、前記機能層の上端に位置して前記上辺に沿って左右両側に延び、且つその一端が前記電源継ぎ目に電気的に接続され、
前記複数の第一垂直リード線は、互いに左右方向に間隔をあけて上下方向に延び、且つ各々の上端が前記第一水平リード線に接続され、
二つの前記電極の他方である第二電極は、一本の第二水平リード線及び複数の第二垂直リード線を含み、
前記第二水平リード線は、前記機能層の下端に位置して前記下辺に沿って左右両側に延び、且つその一端が前記電源継ぎ目に電気的に接続され、
前記複数の第二垂直リード線は、互いに左右方向に間隔をあけて上下方向に延び、且つ各々の下端が前記第二水平リード線に接続され、
前記複数の第一垂直リード線と前記複数の第二垂直リード線とは、互いに左右方向に間隔をあけて、前記第一垂直リード線と前記第二垂直リード線とが交互に並ぶように設置され、
前記複数の第一垂直リード線は、各々の下端が前記第二水平リード線と所定の隙間を空けて対向する位置まで下方に延び、且つ、前記マスク本体の左右両側から左右方向中央に向かうほど、前記第一垂直リード線の上下方向の長さが大きくなり、
前記複数の第二垂直リード線は、各々の上端が前記第一水平リード線と所定の隙間を空けて対向する位置まで上方に延び、且つ、前記マスク本体の左右両側から左右方向中央に向かうほど、前記第二垂直リード線の上下方向の長さが大きくなり、
前記機能層は、複数の微孔を含む導電層状構造であることを特徴とする滅菌機能を備えたマスク。
【請求項2】
前記微孔は、孔径が1マイクロメートルより大きく、2.5マイクロメートル未満であることを特徴とする、請求項1に記載の滅菌機能を備えたマスク。
【請求項3】
前記機能層は、炭素繊維層であり、該炭素繊維層は、絡み合われた複数の炭素繊維を含むことを特徴とする、請求項1に記載の滅菌機能を備えたマスク。
【請求項4】
さらに専用電源を含み、
前記専用電源は、パワーの調整のつまみを含み、
前記パワーの調整のつまみは、ハイギア及びローギアを含み、
前記ハイギアにある時、前記第一電極及び前記第二電極に入力された電気信号のパワーは高く、前記マスクの内部及び外部のウイルス及び細菌を除去することができ、
前記ローギアにある時、前記第一電極及び前記第二電極に入力された電気信号のパワーは低く、前記マスクの内部のウイルス及び細菌を除去することができる
ことを特徴とする、請求項1に記載の滅菌機能を備えたマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護マスクに関し、特に滅菌機能を備えたマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、使用されているマスクは、一般的には使い捨てマスクであり、経済的で環境に優しいものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第101239712号明細書
【文献】中国特許出願公開第101284662号明細書
【文献】中国特許出願公開第101314464号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに、ユーザーは使い捨てマスクを掛けて公共の場所に出入りする時、マスクの表面がウイルスによって汚染される場合、再び掛けることができないことに加えて、マスクが廃棄された後、マスクのウイルスが存在し続けるので、環境を汚染し、交差感染を引き起こす可能性がある。
【0006】
これによって、上記技術問題を解決するために、滅菌機能を備えたマスクを提供することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
マスク本体及び結び紐を含む滅菌機能を備えたマスクは、更に機能層、二つの電極及び電源継ぎ目を含み、前記機能層及び二つの前記電極は、前記マスク本体の内部に配置され、二つの前記電極は、前記機能層の表面に配置され、前記電源継ぎ目に電気的に接続され、二つの前記電極は、前記機能層に通電し、前記機能層の温度を上昇させるために使用され、前記機能層は、複数の微孔を含む導電層状構造である。
【0008】
前記微孔は、孔径が1マイクロメートルより大きく、2.5マイクロメートル未満である。
【0009】
二つの前記電極は、それぞれ一本の水平リード線及び複数の垂直リード線を含み、各垂直リード線は平行に間隔をあけて配置され、且つ各垂直リード線の一端は、前記水平リード線に接続され、前記水平リード線の一端が前記電源継ぎ目に電気的に接続され、二つの前記電極の垂直リード線は、交替して間隔をあけて設置される。
【0010】
二つの前記電極は、二つの線状電極であり、それぞれ前記機能層の両端に位置し、前記機能層の対向して設置された二つの辺に設置する。
【0011】
前記機能層は、炭素繊維層であり、該炭素繊維層は、絡み合われた複数の炭素繊維を含む。
【発明の効果】
【0012】
従来技術と比べて、本発明から提供される滅菌機能を備えたマスクは、以下の利点を有する。機能層に通電することによって、機能層の温度を上昇させ、マスク本体を加熱して、滅菌の効果を実現して、滅菌機能を備えたマスクに再利用させることができる。機能層は、複数の微孔を含むので、良好な通気性を有し、空気中の汚染物質粒子を濾過することもできる。機能層は、導電層であるので、電流が機能層を流れる時、機能層がジュール熱を生成し、機能層全体の温度が上昇する。そして、機能層は、マスク全体の面積を覆うことができる大面積の層状構造であるので、マスクの局所的な過熱を引き起こすことなく、マスクの内部を迅速に加熱することができる。加熱して滅菌する場合でも、マスクの外部に局所的な過熱を引き起こすことない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による滅菌機能を備えたマスクの断面構造を示す図である。
図2】本発明の実施形態による滅菌機能を備えたマスクの内部構造を示す図である。
図3】本発明の実施形態による滅菌機能を備えたマスクの機能層におけるカーボンナノチューブ層のSEM写真である。
図4】本発明の実施形態による滅菌機能を備えたマスクの機能層におけるカーボンナノチューブ層のTEM写真である。
図5】本発明の実施形態による滅菌機能を備えたマスクのカーボンナノチューブ層におけるドローン構造カーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
図6図5のドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブフラグメントの構造を示す図である。
図7】本発明の実施形態による滅菌機能を備えたマスクのカーボンナノチューブ層における綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
図8】本発明の実施形態による滅菌機能を備えたマスクのカーボンナノチューブ層におけるプレシッド構造カーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
図9】本発明の他の実施形態による滅菌機能を備えたマスクの構造を示す図である。
図10】本発明の他の実施形態による滅菌機能を備えたマスクの内部構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面及び具体的な実施形態を参照して、本発明の滅菌機能を備えたマスクをさらに詳細に説明する。
【0015】
図1及び図2を参照すると、本発明の実施形態は、滅菌機能を備えたマスク100を提供する。滅菌機能を備えたマスク100は、マスク本体102、2つの結び紐104、機能層106、第一電極108a、第二電極108b及び電源継ぎ目110を含む。機能層106、第一電極108a及び第二電極108bは、マスク本体102の内部に配置され、第一電極108a及び第二電極108bは、機能層106の表面に配置され、電源継ぎ目110に電気的に接続される。第一電極108a及び第二電極108bは、機能層106に電流を流し、機能層106の温度を上昇させるために使用される。機能層106は、複数の微孔を含み、カーボンナノチューブ層又はカーボンファイバー層である。
【0016】
マスク本体102は、積層して設置された内層と外層の少なくとも2つの層からなる。機能層106は、内層と外層との間に配置される。2つの結び紐104は、それぞれ、マスク本体102の対向して設置された両端に配置される。マスクをユーザーの耳に吊るすために、2つの結び紐104がそれぞれマスク本体102の2つの側辺に配置される。理解できることは、結び紐104がプルオーバータイプなどの他の方法でも配置できることである。
【0017】
マスク本体102の材料は、好ましくは、綿、絹、ガーゼ、不織布、麻、繊維、ナイロン、スパンデックス、ポリエステル、ポリアクリロニトリルなどの、軽く、薄く、通気性が優れた材料である。好ましくは、マスク本体102の材料は、空気陰イオン改質材料である。空気陰イオン改質材料における空気陰イオンは、空気中の微生物及び病原菌の活性を低下させ、それによってマスク中の微生物又は病原菌の生存を抑える。同時に、空気中の陽イオンを運ぶほこり、エアロゾルなどの汚染粒子を中和して、空気を浄化する目的を達成することができる。
【0018】
マスク本体102は、本実施形態の2層構造に限定されず、多層構造であってもよい。マスク本体102は、一体構造であってもよく、縫製又は接着などの方式で、少なくとも2層の構造を結合することによって形成してもよい。理解できることは、少なくとも2層の構造が機能層106を配置するための収容空間を形成できる限り、少なくとも2層構造のサイズは同じであっても異なっていてもよい。マスク本体102の形状は、円弧形、半球形、カップ形、長方形又は他の必要形状である。
【0019】
好ましくは、結び紐104が弾性結び紐である。結び紐104の配置方式は、ユーザーの顔に滅菌機能を備えたマスクを固定することができる限り、本実施形態に限定されない。例えば、1つの結び紐104のみを有してもよい。結び紐104の両端が、それぞれ、マスク本体102の二つの側辺に設置され、結び紐104は、ユーザーの頭の後ろにマスクを固定することができる。滅菌機能を備えたマスクには結び紐が付かなくてもよい。例えば、マスク本体102の内表面に再接着可能の接着部品を直接的に設置し、接着部品が皮膚に直接的に貼り付けることができる。従って、ユーザーに圧迫感をかけず、毛細血管における血液の循環を妨害せず、ユーザーの快適性を大幅に向上させる。
【0020】
機能層106は、フィルター層及び加熱滅菌層からなる。機能層106の厚さ及び形状は、実際のニーズに応じて設計することができる。機能層は、複数の微孔を含む可撓性層である。微孔の直径は、1マイクロメートルより大きく、1マイクロメートルより大きく5マイクロメートル未満であることが好ましく、1マイクロメートルより大きく、2.5マイクロメートル未満であることがより好ましい。機能層106は導電層であり、機能層106に電圧を入力すると、機能層106に電流を生成し、それによってジュール熱を生成し、機能層106の温度が上昇する。
【0021】
図3及び図4を参照すると、機能層106はカーボンナノチューブ層である。カーボンナノチューブ層は複数のカーボンナノチューブからなり、不純物を含まない。カーボンナノチューブ層には、均一に分布した大量のカーボンナノチューブを含み、カーボンナノチューブは分子間力で緊密に結合する。カーボンナノチューブ層は、カーボンナノチューブのみを含む純粋なカーボンナノチューブ層であってもよい。カーボンナノチューブ層におけるカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブの中の一種又は多種である。カーボンナノチューブは、純粋なカーボンナノチューブチューブであってもよい。純粋なカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブの表面にアモルファスカーボン及び官能基などの不純物を含まなくなる。カーボンナノチューブ層は、配向して配置されている複数のカーボンナノチューブを含み、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列する。カーボンナノチューブ層は、配向せず、ランダムに配置されている複数のカーボンナノチューブを含んでもよい。
【0022】
好ましくは、カーボンナノチューブ層は自立構造である。ここで、「自立構造」とは、支持体材を利用せず、自体の所定の形状を保持でき、カーボンナノチューブ層を独立して利用することができるという形態のことである。自立構造のカーボンナノチューブ層は、複数のカーボンナノチューブを含み、複数のカーボンナノチューブが分子間力によって互いに引き付けられ、ネット構造体を形成し、カーボンナノチューブ層を所定の形状を有させ、一体構造を有する自立構造であるカーボンナノチューブ層を形成するようになる。例えば、カーボンナノチューブスラリー層の自立構造ではないカーボンナノチューブ層と比べて、自立構造のカーボンナノチューブ層は、より優れた可撓性を有する。カーボンナノチューブ層は、積層して設置された複数のカーボンナノチューブフィルムを含む。カーボンナノチューブ層における微孔の孔径の大きさがカーボンナノチューブ膜の層数と関係があり、カーボンナノチューブ膜の層数が多ければ、カーボンナノチューブ層における微孔の孔径が小さい。カーボンナノチューブ膜は、ドローン構造カーボンナノチューブフィルム、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム又は綿毛構造カーボンナノチューブフィルムである。
【0023】
ドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)から引き出して得られ、自立構造を有したものである。カーボンナノチューブ層は、一層のドローン構造カーボンナノチューブフィルム又は二層以上のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む。単一のドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブの大部分は、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの表面に平行に、且つ、同じ方向に沿って配列されている。複数のカーボンナノチューブは、分子間力で端と端が接続されている。
【0024】
図5及び図6を参照すると、各々のドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、接続して、配向して配列されている複数のカーボンナノチューブセグメント143を含む。複数のカーボンナノチューブセグメント143は、長さ方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143は、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。カーボンナノチューブセグメント143は、任意の幅、厚さ、均一性及び形状を有する。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、厚さが0.5ナノメートル~100マイクロメートルであり、その幅がドローン構造カーボンナノチューブフィルムを引き出して得た超配列カーボンナノチューブアレイのサイズと関係があり、長さが制限されない。ドローン構造カーボンナノチューブフィルム及びその製造方法は、特許文献1を参照されたい。
【0025】
カーボンナノチューブ層が二層以上のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む場合、複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムが積層して設置され、又は並列して設置される。隣接するドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、交差角度αを成し、交差角度αが0°~90°である(0°≦α≦90°)。複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムの間又は一枚のドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおける隣接するカーボンナノチューブの間に間隔を有するので、カーボンナノチューブ層に複数の微孔が形成される。
【0026】
綿毛構造カーボンナノチューブフィルム(flocculated carbon nanotube film)は、凝集法によって形成されたカーボンナノチューブフィルムである。綿毛構造カーボンナノチューブフィルムは、相互に絡み合い、均一に配列される複数のカーボンナノチューブを含む。カーボンナノチューブの長さは、10マイクロメートル以上であり、200マイクロメートル~900マイクロメートルであると好ましい。複数のカーボンナノチューブは、分子間力によって、相互に引き付け、絡み合い、カーボンナノチューブネット状に形成されている。綿毛構造カーボンナノチューブフィルムは、等方性を有する。綿毛構造カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブが均一に分布され、ランダムに配列され、複数の微孔が形成されている。綿毛構造カーボンナノチューブフィルムの長さ及び幅が制限されない。図7を参照すると、綿毛構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、相互に絡み合って配置されるので、綿毛構造カーボンナノチューブフィルムは柔軟性に優れ、且つ自立構造を有するものであり、任意の形状に湾曲して形成させることができる。綿毛構造カーボンナノチューブフィルム及びその製造方法は、特許文献2を参照されたい。
【0027】
プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム(pressed carbon nanotube film)は、押し器具を利用することにより、所定の圧力をかけてカーボンナノチューブアレイを押し、カーボンナノチューブアレイを圧力で倒すことにより形成された、シート状の自立構造を有するものである。プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムは、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、または、異なる複数の方向に沿って配列されている複数のカーボンナノチューブを含む。プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向は、押し器具の形状及びカーボンナノチューブアレイを押す方向により決められている。プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの一部が互いに積層して、且つ分子間力で引き付け、緊密に結合するので、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムは柔軟性に優れ、且つ自立構造を有するものであり、任意の形状に湾曲して形成させることができる。プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、分子間力によって互いに引き付け、緊密に結合して、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムを自立構造にならせる。
【0028】
プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの傾斜の程度は、カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブとカーボンナノチューブアレイが成長された基板の表面とは、角度βを成し、該角度βは0°以上15°以下である。角度βは、カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係し、圧力が大きくなるほど、角度βが小さくなる。好ましくは、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが、カーボンナノチューブアレイが成長された基板の表面に平行して配列する。カーボンナノチューブアレイを押す方式によって、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが異なる配列方式を有する。同じ方向に沿って、カーボンナノチューブアレイを押す時に、カーボンナノチューブが一つの所定の方向に沿って、選択的な方向に配列されている。図8を参照すると、異なる方向に沿って、カーボンナノチューブアレイを押す時に、カーボンナノチューブが異なる方向に沿って、選択的な方向に配列されている。カーボンナノチューブアレイの上方から、カーボンナノチューブアレイが成長された基板に垂直な方向に沿って、カーボンナノチューブアレイを押す場合、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムは、等方性を有する。
【0029】
プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの長さは、50マイクロメートル以上である。プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおける隣接するカーボンナノチューブの間に間隔を有するので、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムに複数の微孔が形成される。プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム及びその製造方法は、特許文献3を参照されたい。
【0030】
本実施形態では、カーボンナノチューブ層は、4層のドローン構造カーボンナノチューブフィルムが積層し、交差して形成され、カーボンナノチューブ層における隣接するドローン構造カーボンナノチューブフィルムの交差角は90度であり、カーボンナノチューブ層における微孔の平均孔径がおよそ1.5マイクロメートルである。
【0031】
本発明の実施形態により提供される滅菌機能を備えたマスク100は、機能層としてカーボンナノチューブ層を使用する。カーボンナノチューブは、軽量であり、柔軟性に優れるので、滅菌機能を備えたマスクは、軽量かつ厚さが薄く、耐屈曲性などの特性を有する。カーボンナノチューブは、170m/gの大きな比表面積を有するので、空気中の有毒ガスに対して良好な吸着効果を有する。従って、本発明の滅菌機能を備えたマスクは、吸着層を追加して設置する必要はないで、空気をさらに浄化するという目的を達成することができる。さらに、本実施形態のカーボンナノチューブは比較的に純粋であるので、複数のカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルム又はカーボンナノチューブワイヤがより高い接着性を有し、接着剤を使用せずにマスク本体に十分に接着することができる。そして、接着性が強いので、濾過が難しいほこりなどの不純物を接着することができ、さらに空気を浄化することができる。
【0032】
機能層106は、炭素繊維層であってもよい。炭素繊維層は、絡み合って均一的に分布された炭素繊維を含む。炭素繊維の長さは、100マイクロメートルより長い。炭素繊維は互いに絡み合って、ネット構造を形成する。炭素繊維層における炭素繊維は、均一的に分布し、ランダムに配置され、多数の微孔を形成する。炭素繊維層の長さ及び幅は制限されない。
【0033】
第一電極108a及び第二電極108bは、それぞれ、機能層106の両端に配置され、機能層106の表面に配置される。本実施形態では、第一電極108a及び第二電極108bは、インターデジタル電極である。具体的には、第一電極108a又は第二電極108bは、一本の水平リード線及び複数の垂直リード線含み、各垂直リード線は平行に間隔をあけて配置され、且つ各垂直リード線の一端は、水平リード線に接続され、他端は、外側に延伸する。水平リード線と垂直リード線は、互いに垂直に接続する。第一電極108a及び第二電極108bの水平リード線は、互いに平行にしてもよく、所定の角度で配置されてもよい。第一電極108a及び第二電極108bの垂直リード線は、交替して間隔をあけて、互いに平行にして設置される。第一電極108a及び第二電極108bの水平リード線の一端は、電源継ぎ目110に電気的に接続され、外部電源は、電源継ぎ目110を介して第一電極108a及び第二電極108bに通電する。隣接する垂直リード線の距離は、必要に応じて調整できる。好ましくは、隣接する垂直リード線の距離は、1ミリメートル~10ミリメートルである。本実施形態では、隣接する垂直リード線の距離が2ミリメートルである。マスクの内部の温度を56℃に達させるために、外部電源の入力電圧が5ボルトであり、電流が1アンペアであり、パワーが5ワットである。電源の入力パワー、入力電圧及び電流の大きさは、垂直リード線の間の距離だけでなく、マスクの厚さ、マスクを加熱し、マスクを達させる温度などのマスクの他のパラメーターと関係があることが理解できる。従って、電源の入力パワー、入力電圧及び電流は、実際の状況に応じて調整することができる。好ましくは、電源の入力パワーが3ワット~10ワットであり、電圧が3ボルト~10ボルトであり、電流が0.5アンペア~2アンペアである。
【0034】
第一電極108a及び第二電極108bの材料は、金属、合金、インジウムスズ酸化物(ITO)、アンチモンスズ酸化物(ATO)、導電性銀ペースト、導電性ポリマー、導電性カーボンナノチューブなどである。金属又は合金の材料は、アルミニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、チタン、ネオジメチル、パラジウム、セシウム又は任意の組み合わせからなる合金である。本実施形態では、第一電極108a及び第二電極108bは両方とも、厚さが1マイクロメートルである線状銅導電フィルムである。第一電極108a及び第二電極108bは、より優れる柔軟性及び薄い厚さを有する材料から作製されるべきである。
【0035】
滅菌機能を備えたマスク100は、マスク本体に配置された支持体をさらに含み、マスクにより大きなキャビティを形成させ、有効な流れ領域を拡大し、それによりユーザーの呼吸抵抗を低減することができる。支持体の材料は、プラスチック、金属などである。
【0036】
滅菌機能を備えたマスク100の電源継ぎ目110は、任意の外部電源に電気的に接続することができる。もちろん、滅菌機能を備えたマスク100は、さらに専用電源(図には示せず)を含んでもよい。専用電源は、パワーの調整のつまみを含む。パワーの調整のつまみは、ハイギア及びローギアを含む。ハイギアにある時、第一電極108a及び第二電極108bに入力された電気信号のパワーは高く、機能層106の温度は高いので、マスクの内部及び外部の温度は高くなり、マスクの内部及び外部のウイルス及び細菌を除去することができる。ローギアにある時、第一電極108a及び第二電極108bに入力された電気信号のパワーは低く、機能層106の温度は、ハイギアにある時の機能層106温度よりも低いので、マスクの外部の温度を低く保つことができるが、同時にマスクの内部のウイルス及び細菌を殺すことができる。マスクの外部の温度が低いので、着用者はマスクを着用したまま、電源を入れてマスクを浄化することができる。
【0037】
滅菌機能を備えたマスク100は、一定期間着用した後、又は密閉空間に出入りしてウイルスに汚染された後、自体加熱することによって、滅菌することができる。即ち、電源継ぎ目110を介して、第一電極108aと第二電極108との間に電気信号を印加すると、第一電極108aと第二電極108bの垂直リード線の間に位置する機能層106は、導電状態にあり、電流が2つの隣接する垂直リード線及び2つの垂直リード線の間に位置する機能層106を流して、機能層106がジュール熱を生成し、温度が上昇する。機能層106は、マスク本体102を加熱して、滅菌及び浄化の効果を実現して、滅菌機能を備えたマスクに再利用させることができる。機能層106は、複数の微孔を含むので、良好な通気性を有し、空気中の汚染物質粒子を濾過することもできる。機能層106は、マスク全体の横向きの面積を覆うことができる大面積の層状構造であるので、マスクの局所的な過熱を引き起こすことなく、マスクの内部を迅速に加熱することができる。加熱して滅菌する場合でも、マスクの外部に局所的な過熱を引き起こすことない。
【0038】
金属製の電熱線をマスクに追加して、マスクを加熱することによって、滅菌するのと比較して、本発明によって提供される滅菌機能を備えたマスクは、重要な利点を有する。電熱線で加熱して滅菌するマスクは、金属の柔軟性を高めるために、金属製の電熱線を細くし、マスクの通気性を確保するために、金属製の電熱線がマスク全体を広い範囲で覆うことができなくて、電熱線の間に大きな隙間を設ける必要がある。加熱工程では、電熱線の熱がマスク本体に伝わることによって、マスク全体の温度を滅菌温度に到達させるために、電熱線の局所的な温度を滅菌温度より5~15℃高くならせるからこそ、マスク全体の内部の温度を滅菌温度に到達することができる。電熱線の局所的な温度を滅菌温度より15~25℃高くならせるからこそ、マスクの外部の温度を滅菌温度に到達することができる。電熱線の温度が高いほど、必要な加熱パワーも高くなる。これにより、電熱線と直接的に接触しているマスクの一部が熱くなりすぎて、加熱して滅菌する工程において、マスクが自然発火したり、着用者が火傷したりする可能性がある。従って、電熱線で加熱するマスクは、将来より大きな災いになる。例えば、ウイルスを殺す温度が56℃である場合、マスクの内部の最低温度を56℃に保つために、電熱線の温度が66℃以上に達する必要があり、マスクの外部の最低温度を56℃に保つために、電熱線の温度が80℃以上に達する必要があるが、マスクの局所温度が高くなりすぎることを引き起こす。
【0039】
しかしながら、本発明が提供する滅菌機能を備えたマスクは、マスクの内部の温度を56度の滅菌温度に達させる必要がある場合、機能層の領域がマスクの大部分の領域を覆うので、機能層の温度は56℃以上に達する限りは、マスクの内部全体の温度が滅菌温度に達することができる。マスクの内部の温度が56℃である場合、マスクの外部の温度が40℃以下であるので、着用者は、マスクを着用したまま、加熱して滅菌して、いつもマスクの清潔を保持することができる。マスクの外部の細菌及びウイルスを除去するには、機能層の領域がマスクの大部分の領域を覆うので、機能層の温度が70℃に達すればよい。この時、マスクの局所温度が高くなりすぎることなく、マスクの外部の最低温度が56℃以上に到達するため、将来より大きな災いになることが防がれる。
【0040】
図9及び図10を参照すると、本発明の他の実施形態は、滅菌機能を備えたマスク200を提供する。滅菌機能を備えたマスク200は、マスク本体202、2つの結び紐204、機能層206、第一電極208a、第二電極208b及び電源継ぎ目210を含む。機能層206、第一電極208a及び第二電極208bは、マスク本体202の内部に配置され、第一電極208a及び第二電極208bは、機能層206の表面に配置され、電源継ぎ目210に電気的に接続される。第一電極208a及び第二電極208bは、機能層206に電流を流し、機能層206の温度を上昇させるために使用される。機能層206は、複数の微孔を含み、カーボンナノチューブ層又はカーボンファイバー層である。
【0041】
2つの結び紐204は、ヘッドセットである。
【0042】
第一電極208a及び第二電極208bは、2つの線状電極であり、それぞれ機能層206の2つの端部に配置され、機能層206の対向して設置された二つの辺に設置する。第一電極208a及び第二電極208bは、それぞれ、電極リード線を介して、電源継ぎ目210に接続される。
【0043】
結び紐204及び電極208a、208bの構造を除いて、滅菌機能を備えたマスク200の他の構造及び性能は、前の実施形態が提供された滅菌機能を備えたマスク100と同じである。
【0044】
本実施形態が提供される滅菌機能を備えたマスク200は、機能層206の2つの対向して設置された辺だけに、線状電極を設置するので、電極は機能層全体の柔軟性に影響を及ぼさず、且つ構造が簡単であり、製造が容易である。
【0045】
また、当業者であれば、本発明の精神の範囲内で他の変更を行うことができる。もちろん、本発明の精神に従ってなされたこれらの変更は、いずれも本発明の保護請求する範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0046】
100、200 滅菌機能を備えたマスク
102、202 マスク本体
104、204 結び紐
106、206 機能層
108a、208a 第一電極
108b、208b 第二電極
110、210 電源継ぎ目
143 カーボンナノチューブセグメント
145 カーボンナノチューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10