(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】オープンシールド機
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
E21D9/06 331
(21)【出願番号】P 2021121318
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000189903
【氏名又は名称】植村 誠
(73)【特許権者】
【識別番号】501200491
【氏名又は名称】植村 賢治郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【氏名又は名称】久保 司
(74)【代理人】
【識別番号】100186864
【氏名又は名称】尾関 眞里子
(72)【発明者】
【氏名】植村 誠
(72)【発明者】
【氏名】植村 賢治郎
(72)【発明者】
【氏名】日浦 正一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直雅
(72)【発明者】
【氏名】加藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】中村 仁久
(72)【発明者】
【氏名】村澤 進太郎
(72)【発明者】
【氏名】近田 龍太郎
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-105004(JP,A)
【文献】特開2013-014894(JP,A)
【文献】登録実用新案第3107458(JP,U)
【文献】特開2019-112800(JP,A)
【文献】特開2020-153066(JP,A)
【文献】特開2017-014759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面および上面を開口したU形機体に推進ジャッキを配設し、U形機体のフロント部を掘削部、テール部を上から吊り降ろすコンクリート函体の函体設置部としたオープンシールド機において、テール部後端にオープンシールド機幅と同程度の幅の板体による張出しステージを
オープンシールド機のテール部の梁にボルトで固定して、片持ち状態で設け、この張出しステージを構成する板体は金属製矩形板であり、周縁に手摺を立設し、該張出しステージは、テール部端に設置した後方土留板の上方にこの後方土留板とは非結合状態で設置することを特徴としたオープンシールド機。
【請求項2】
板体による張出しステージは一部または全部を網状として透視部を形成する請求項1記載のオープンシールド機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンシールド工法に使用するオープンシールド機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オープンシールド工法は開削工法(オープンカット工法)とシールド工法の長所を活かした合理性に富む工法である。
図10~
図13にその概略を示す。図中1はオープンシールド機で、これは左右の側壁板1aと、これら側壁板1aに連結する底板1bとからなる前面、後面および上面を開口したU形機体によるシールド機である。
【0003】
このオープンシールド機1は、前記側壁板1aと底板1bの先端を刃口11として形成し、また側壁板1aの中央または後端近くに推進ジャッキ2を後方に向け上下に並べて配設する。図中3は隔壁を示す。
【0004】
このようにしてオープンシールド機1は、U形機体を前後方向で複数に分割し、フロント部としての前方の機体の後端にテール部としての後方の機体の前端が嵌入して、相互の嵌合部で屈曲可能とした。フロント部は主として掘削を行うもので、テール部はコンクリート函体の設置を行うものである。
【0005】
係るオープンシールド機1を使用して施工するオープンシールド工法の概要を
図14、
図15に示す。
【0006】
図示は省略するが、発進坑内にこのオープンシールド機1を設置して、オープンシールド機1の推進ジャッキ2を伸長して発進坑内の反力壁に反力をとってオープンシールド機1を前進させ、函体設置部に地下構造物を形成する第1番目のコンクリート函体4を上方から吊り降ろし、オープンシールド機1のテール部1c内で縮めた推進ジャッキ2の後方にセットする。推進ジャッキ2と反力壁との間にはストラットを配設して適宜間隔調整をする。
【0007】
また、発進坑は土留壁で構成し、オープンシールド機1を発進させるにはこの土留壁を一部鏡切りするが、必要に応じて薬液注入などで発進坑の前方部分に地盤改良を施しておくこともある。
【0008】
フロント部である掘削部において、バックホウ等の掘削機9でオープンシールド機1の前面または上面から土砂を掘削しかつ排土する。
【0009】
この排土工程と同時またはその後に推進ジャッキ2を伸長してオープンシールド機1を前進させる。この前進工程の場合、コンクリート函体4の前にはボックス鋼材または型鋼を用いた枠体よりなる押角8を配設し、オープンシールド機1は後方にセットされたコンクリート函体4から反力をとる。
【0010】
そして第1番目のコンクリート函体4の前に第2番目のコンクリート函体4をオープンシールド機1のテール部1c内で函体設置部に吊り降ろす。
【0011】
以下、同様の排土工程、前進工程、コンクリート函体4のセット工程を適宜繰り返して、順次コンクリート函体4をオープンシールド機1の前進に伴い縦列に地中に残置し、さらにこのコンクリート函体4の上面に埋戻土5を入れる。
【0012】
なお、コンクリート函体4をオープンシールド機1のテール部1c内に吊り降ろす際には、図示はしないがコンクリートブロック等による高さ調整材7をコンクリート函体4下に配設し、このテール部1c内でコンクリート函体4の左右および下部の空隙に裏込注入材6を充填する。
【0013】
このようにして、オープンシールド機1が到達坑まで達したならばこれを撤去して工事を完了する。
【0014】
このようなオープンシールド工法では、前記のごとくコンクリート函体4をオープンシールド機1の前進に伴い縦列に地中に残置し、コンクリート函体4は、オープンシールド機1のテール部1c内に吊り降ろされ、オープンシールド機1の前進とともに該テール部1cから出て地中に残されていくものであり、オープンシールド機1はこのように地中に残置したコンクリート函体4に反力をとって前進する。
【0015】
コンクリート函体4は鉄筋コンクリート製で、
図16に示すように左側板4a、右側板4bと上床板4cと下床板4dとからなる一体のもので、前後面が開口10として開放されている。
【0016】
前記先行技術は当業者間で一般的に行なわれているものであり、文献公知発明にかかるものではない。
【0017】
図中17は後方土留板で、下記特許文献にもあるがテール部1cの後端に蝶番で可動に取り付くものであり、土砂の崩壊を防止する。
【0018】
この後方土留板17はオープンシールド機1の左右位置で対で平行に並び、その間に仕切り板16がヒンジ結合で直交して配設される。
【文献】特許第5989863号公報
【0019】
図中22は梯子で、コンクリート函体の上部に昇降するためのものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
このようなオープンシールド工法による施工においては
図14に示すように、オープンシールド機前方には掘削用バックホウ、後方には埋め戻し用重機や埋め戻し土を積載したダンプトラックが配置され、また図示はしていないが、コンクリート函体をオープンシールド機テール部に吊り下し・据付け時には後方に函体吊り下し用のラフターレーンクレーンやコンクリート函体を運搬してきた運搬トラックが配置された施工状況となる。
【0021】
地上の作業員は掘削時には、シールド機前方に配置した残土積込み・搬出用ダンプトラックの誘導や掘削用バックホウの手元、オープンシールド機掘進時の掘進制御のために行う測量補助などを行う。
【0022】
コンクリート函体据え付け作業時には、オープンシールド機後方に配置したラフターレーンクレーンで函体を吊り込むための吊り金具の設置やラフターレーンクレーンで吊り上げたコンクリート函体の旋回誘導合図等を行う。
【0023】
また、オープンシールド機後方の敷設済みの函体上部に埋め戻した土の締固め作業や、オープンシールド機テール部で地上からの裏込注入材の充填目視確認等の作業も行う。
【0024】
さらに、裏込注入材充填時には敷設コンクリート函体内に入り、函体からの裏込注入材の充填作業なども行う場合もある。
【0025】
前記の作業以外にも様々な作業があり、施工規模にもよるが、これらの作業を3~4名程度の少人数で行うため各作業を専属で行うことができず、作業ごとにオープンシールド機の前方からオープンシールド機側部を通って直接後方へ、または後方からオープンシールド機側部を通って直接前方へ頻繁に行き来することが多い。
【0026】
このため、移動による作業効率が低下するだけでなく、オープンシールド機前方や後方を行き来することにより、それぞれ配置した重機等の接触等の危険性も増加することも想定される。
【0027】
このように作業員がオープンシールド機左右を行き来しようとした場合、シールド機前方上部か、シールド機後方を大きく迂回して移動する事は作業効率の低下が懸念される。
【0028】
裏込二次注入の充填状況を確認する際に、シールド機側部からのぞき込む形での確認は開口部に身を乗り出す為、安全性の懸念がある。また、後方土留板は埋戻しを行う箇所でもある為、埋戻し重機との接触事故も懸念される。
【0029】
シールド機テール部内に据え付けた函体上に移動する際に、テール部後方に梯子を取り付けるが、梯子までの移動経路が無い。
【0030】
前記裏込注入材充填時の充填状況の目視確認作業はオープンシールド機後方の後方土留板位置で地上より行うが、狭い道路での工事など施工条件によっては後方土留板での目視確認が困難な場合も生じてくる。
【0031】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、作業員がオープンシールド機左右に移動する場合、安全に移動できるオープンシールド機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明は前記目的を達成するため請求項1記載の発明は、前面および上面を開口したU形機体に推進ジャッキを配設し、U形機体のフロント部を掘削部、テール部を上から吊り降ろすコンクリート函体の函体設置部としたオープンシールド機において、テール部後端にオープンシールド機幅と同程度の幅の板体による張出しステージをオープンシールド機のテール部の梁にボルトで固定して、片持ち状態で設け、この張出しステージを構成する板体は金属製矩形板であり、周縁に手摺を立設し、該張出しステージは、テール部端に設置した後方土留板の上方にこの後方土留板とは非結合状態で設置することを要旨とするものである。
【0033】
請求項1記載の本発明によれば張出しステージを設けたことにより、作業員はオープンシールド機の回りを大きく迂回することなく、この張出しステージを使用してオープンシールド機の左右に容易に移動することができる。
【0034】
オープンシールド機の前方後方での作業のために、オープンシールド機の前方後方を廻って作業位置に向かわないで済むために、移動による作業効率の低下や重機等との接触の危険性減少などが期待でき、さらに後方土留板位置での地上からの裏込注入材目視・確認をすることなく、作業員が安全に裏込注入材の目視・確認作業ができる。
【0035】
また、形板であるのでオープンシールド機テール部後端に張出して設けるのに矩形なU形機体に違和感なく設けることができ、また、安全のために手摺を立設するにも直線上に簡単に並べることができる。そして手摺を設けることでステージ上の通路方向を明確に示すことができる。
【0036】
さらに、長方形板としたのでその長辺部を固定すれば、必要以上に張り出さない短尺のものとすることができ、また、オープンシールド機テール部の梁に固定するのを長辺部とすることで片持ちで安定して設けることができる。
【0037】
また、張出しステージは後方土留板とは非結合状態で設置されているので、後方土留板がテール部の後端に蝶番で可動に取り付き、オープンシールド機の曲線掘進に応じて後方土留板の向きが変わっても後方土留板に支障を与えず、張出しステージに変形が生ずることもない。
【0038】
請求項2記載の本発明は、板体による張出しステージは一部または全部を網状として透視部を形成することを要旨とするものである。
【0039】
請求項2記載の本発明によれば、張出しステージの網状の部分より直下の状況を目視・確認することができる。このため、例えば道路での施工では後方土留板位置で下方の裏込注入材の充填状況を目視・確認しなくてもよいので、オープンシールド機横を通行する一般車輛に接触する危険などもなく、安全に目視・確認作業が行える。
【発明の効果】
【0040】
以上述べたように本発明のオープンシールド機は、作業員が張出しステージを使用してオープンシールド機左右に移動する場合、安全に移動できるもので、オープンシールド機の前方や後方を廻ってオープンシールド機の左右に行き来することが無いので、行き来する無駄な時間が省け作業の効率化が図れるものである。
【0041】
また、オープンシールド機の前後に配置した重機に近寄る状況を減らすことができるので、重機との接触の危険性も減少することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明のオープンシールド機の第1実施形態を示す縦断側面図である。
【
図2】本発明のオープンシールド機の第1実施形態を示す横断平面図である。
【
図6】本発明のオープンシールド機の第2実施形態を示す平面図である。
【
図8】本発明のオープンシールド機を用いたオープンシールド工法の概要を示す平面図である。
【
図9】本発明のオープンシールド機を用いたオープンシールド工法の概要を示す縦断側面図である。
【
図10】従来のオープンシールド機の縦断側面図である。
【
図11】従来のオープンシールド機の横断平面図である。
【
図14】従来のオープンシールド機を用いたオープンシールド工法の概要を示す横断平面図である。
【
図15】従来のオープンシールド機を用いたオープンシールド工法の概要を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面について本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明のオープンシールド機の第1実施形態を示す縦断側面図、
図2は同上横断平面図で、図中1はオープンシールド機で、先に
図10~
図13で説明したように、U形機体の前側、フロント部を掘削部、後側、テール部を上から吊り降ろすコンクリート函体の函体設置部としているもので、側壁板1aと底板1bの先端を刃口11として形成し、また側壁板1aの中央または後端近くに推進ジャッキ2を後方に向け上下に並べて配設する。図中3は隔壁を示す。
【0044】
このようにしてオープンシールド機1は、U形機体を前後方向で複数に分割し、フロント部としての前方の機体の後端にテール部としての後方の機体の前端が嵌入して、相互の嵌合部で屈曲可能とした。フロント部は主として掘削を行うもので、テール部はコンクリート函体の設置を行うものである。
【0045】
テール部1cの後端には後方土留板17を蝶番で可動に取り付けている。
【0046】
図中17は後方土留板で、下記特許文献にもあるがテール部1cの後端に蝶番で可動に取り付くものであり、土砂の崩壊を防止する。
【0047】
この後方土留板17はオープンシールド機1の左右位置で対で平行に並び、その間に仕切り板16がヒンジ結合で直交して配設される。
【0048】
図中22はコンクリート函体の上部に昇降するための梯子で、オープンシールド機1のテール部のH型鋼による梁23の脇に配設する。
【0049】
本発明は、オープンシールド機1のテール部1cの後端にオープンシールド機幅と同程度の幅の板体による張出しステージ13を前記オープンシールド機1のテール部の梁23にボルト24で固定して、片持ち状態で設けた。
【0050】
張出しステージ13を構成する板体は金属製矩形板であり、周縁に手摺25を立設する。本実施形態では、矩形板は長方形板であり、長辺部を固定する。
【0051】
前記手摺25はこの長辺部に沿って並べて設けるものであり、これにより張出しステージ13は並行する手摺25間で通路となることを明示できる。
【0052】
なお、張出しステージ13は、テール部端に設置した後方土留板17の上方にこの後方土留板17とは非結合状態で設置する。
【0053】
このように非結合とすることで、オープンシールド機1が曲線推進時には、
図5に示すように後方土留板17が曲線に沿って向きを変えるが、張出しステージ13の両短辺部は後方土留板17の上端に載っているだけであるから、該後方土留板に支障せず、オープンシールド機1はスムーズに曲線推進が出来る。
【0054】
図6は本発明の第2実施形態を示すもので、前記張出しステージ13は一部または全部を網状14として透視部を形成する。
【0055】
この網状14の形成はエキスパンドメタルやその他のスノコ状鋼板使用のグレーチングとしてなるが、
図6の例では張出しステージ13の両短辺側より内側に向かって中央付近まで網状部材とし中央部は板材とした。
【0056】
前記網状14を形成することにより、裏込め注入材6の充填時に充填状況を目視・確認する場合、
図7に示すように作業員C21はステージ13の左右の網状部分から直下にあるコンクリート函体4の両側部天端の裏込注入材の充填状況を目視・確認することができる。
【0057】
また、
図8に示すように作業員はオープンシールド機1に設置したステージ13から該オープンシールド機の左右に行き来することが可能となる。
【0058】
従来は、作業員は作業員A19の位置からダンプトラック15や掘削機9の脇を通り、オープンシールド機1の脇を通って、さらに埋戻し用重機18及びダンプトラック15の脇をとおり作業員B20の位置までいくことになるため危険が伴っていた。また特に道路下への函体4の敷設作業の場合では、オープンシールド機1等の脇を一般通行車両が走行するため、作業員の移動に危険性がさらに伴っていた。
【0059】
本発明により、オープンシールド機1にステージ13でオープンシールド機の左右を行き来することができ、作業人の移動に伴う安全性が向上できることになる。
【符号の説明】
【0060】
1…オープンシールド機 1a…側壁板
1b…底板 1c…テール部
2…推進ジャッキ 3…隔壁
4…コンクリート函体
4a…左側板 4b…右側板
4c…上床板 4d…下床板
5…埋戻土 6…裏込注入材
8…押角 9…掘削機
10…開口 11…刃口
13…ステージ 14…網状
15…ダンプトラック 16…仕切り板
17…後方土留板 18…埋戻し用重機
19…作業員A 20…作業員B
21…作業員C 22…梯子
23…梁 24…ボルト
25…手摺