(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】炭素繊維系材料の再利用
(51)【国際特許分類】
C08J 11/24 20060101AFI20230418BHJP
B29B 17/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
C08J11/24
B29B17/00 ZAB
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021143217
(22)【出願日】2021-09-02
(62)【分割の表示】P 2018523411の分割
【原出願日】2016-12-14
【審査請求日】2021-09-17
(32)【優先日】2015-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518153036
【氏名又は名称】テイジン オートモーティブ テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】グハ プロバー クマール
(72)【発明者】
【氏名】シワジェク マイケル
(72)【発明者】
【氏名】クリュッグ デイヴィッド ジェイ.
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-007630(JP,A)
【文献】特開2010-174249(JP,A)
【文献】特開2003-055475(JP,A)
【文献】特開2013-234240(JP,A)
【文献】特開2013-006948(JP,A)
【文献】国際公開第2009/081974(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/154097(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/24
B29B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル、ビニルエステル、またはポリウレタン熱硬化性マトリックスのうちの1つである、硬化されたSMC熱硬化性マトリックスから炭素繊維を再生利用する方法であって:
前記硬化されたSMC熱硬化性マトリックスをすり砕いて粒子を形成するステップ、
前記の
すり砕かれたSMC熱硬化性マトリックスを、125~250セ氏温度の一定温度を含む条件で、
5時間未満、ポリオール溶媒と水酸化ナトリウムを含む組成物に添加するステップ、ここで、前記ポリオール溶媒は、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、グリセロール、およびジプロピレングリコールからなる群から選択される;
前記炭素繊維を水で洗浄するステップ;および
前記炭素繊維を乾燥させて、前記炭素繊維を再生利用するステップ、を含み、
前記炭素繊維の97重量%よりも多くが前記硬化されたSMC熱硬化性マトリックスからフリーにされ、前記
フリーにされた炭素繊維の99重量%よりも多くが再生利用される、
方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、
前記炭素繊維の99重量%よりも多くが、前記硬化されたSMC熱硬化性マトリックスからフリーにされる、
方法。
【請求項3】
請求項1または2の方法であって、
前記ポリオール溶媒は、95%総重量パーセントよりも多くのジエチレングリコールモノメチルエーテルを含む、
方法。
【請求項4】
請求項1の方法であって、
前記条件は、不活性ガスブランケットをさらに含む、
方法。
【請求項5】
請求項1の方法であって、
前記硬化されたSMC熱硬化性マトリックスをすり砕いて粒子を形成するステップ、および、前記粒子をマイクロ波放射線に曝露するステップをさらに含む、
方法。
【請求項6】
請求項
5の方法であって、
前記の曝露するステップは、前記の添加するステップの前である、
方法。
【請求項7】
請求項
5の方法であって、
前記の曝露するステップは、前記の添加するステップの後であって前記の洗浄するステップの前である、
方法。
【請求項8】
請求項1または2の方法であって、
前記の添加するステップの前に前記硬化されたSMC熱硬化性マトリックスをすり砕いて粒子を形成するステップ、および、前記ポリオール溶媒中で、前記粒子を超音波処理するステップをさらに含む、
方法。
【請求項9】
請求項1または2の方法であって、
前記ポリオール溶媒への前記SMC熱硬化性マトリックスの添加の前に、少なくとも4.5キログラムの炭素繊維の含有物を含む前記の硬化されたSMC熱硬化性マトリックスをすり砕いて粒子を形成するステップをさらに含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、シート成形化合物に関し、具体的には、それを再利用してそこから炭素繊維を再生利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合物を含む複合材料の使用は、乗り物から浴室備品までにわたる用途において近年増加し続けている。複合材料の使用の増加に伴い、処分された複合物の再利用に関する必要性は、複合物に基づく材料が埋立地をいっぱいにするのを避けるために、および、これらの複合物を形成するのに用いられる資源を節約するために、より深刻になっている。一般に、ポリエチレンおよびポリプロピレンのような熱可塑性ポリマーは、ポリマーの再溶融/スピンを通して再利用され得る。しかしながら、繊維強化複合物(FRC)のような熱硬化性複合物に関しては、しかしながら、溶融再利用は、樹脂の架橋された性質のため困難である。
【0003】
FRCに基づく材料を再利用するために試みられている再利用方法は、リン酸三カリウム水和物触媒の存在下で、不活性雰囲気下および190℃の温度で、ベンジルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテルのような反応性溶媒を用いる加溶媒分解であり、強化用繊維の特性を効果的に保ちながらポリエステル熱硬化性樹脂内のエステル結合を分解する。Hitachi Chemical Co.,Ltd.によって開発されたこの方法は、樹脂をガラス繊維から分離するのに効果的であることが証明されたが、処理中に損傷した場合に生じるガラス繊維、また溶媒のコストも、および、反応時間が、その処理を非現実的にさせる(H.Fukuzawa et al.,2nd Intl.Symp.On Feedstock Recycling of Plastics and Other Innovative Plastics Recycling Techniques,Ostend,BE,Sept.8-11,2002。
【0004】
FRCを再利用するための他の技術は、炭素繊維またはガラス繊維を含むエポキシ樹脂マトリックスを、水酸化ナトリウム溶液中でポリ(エチレングリコール)を用いて、可溶化することが可能であった。マトリックス加溶媒分解後に回収された非アルカリ繊維および炭素繊維は、それらの元々の強度を94%よりも高く保持したが;当該方法は、エポキシマトリックスに向かう化学選択性および低い全体的な再利用効率のせいで、制限された受容性をもたらしている。P Yang et al.J.Reinforced Plastics and Composites;2014,33(22):2106-2114。
【0005】
FRCのアミノリシスは、97%の純度で炭素繊維を産出するのに魅力的である。Vallee,M.;Tersac,G.;Destais-Orvoen,N.;Durand,G.「Chemical Recycling of Class Surface Quality Sheet-Molding Composites」Ind.Eng.Chem.Res.,43,6317-6324(2004)。当該方法は、氷酢酸、酢酸ナトリウムまたは硫酸カリウムのような触媒の存在下で、過剰のエタノールアミン中での高い温度の溶媒消化を含み;その後に、回収された炭素繊維を、メチルエチルケトン(MEK)のような沸騰溶媒中で洗浄、超音波処理および乾燥を行なう。アミノリシス処理は、幾分効果的ではあるが、当該方法は、48時間までの長い処理時間、ならびに、溶媒のコストおよび毒性のせいで、制限された受容性をもたらしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、熱硬化性樹脂マトリックスを分解して、炭素繊維を再使用するのに適切な高いパーセンテージの炭素繊維を再生利用するための、より効率的な、より少ない時間の消費で、費用対効果的で、かつ、環境に優しい再利用プロセスに関する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
硬化された熱硬化性マトリックスから炭素繊維を再生利用するための方法が提供される。炭素繊維の含有物を含む硬化された熱硬化性マトリックスは、任意選択ですり砕かれて粒子を形成する。熱硬化性(thermosetis)は、炭素繊維の95重量%よりも多くを粒子からフリーにする条件下でポリオール溶媒組成物に添加される。フリーにされた炭素繊維は、洗浄および乾燥されて、再使用可能な炭素繊維を再生利用して、ポリマーを強化して、新たなFRCアーティクルを形成する。低コストおよび低毒性である溶媒が選択される。処理は、粒子の溶媒事前膨張、サイズの縮小、マイクロ波加熱、および、熱硬化性マトリックス消化を促進して強化用炭素繊維をフリーにする超音波処理のような技術によって、さらに促進される。
【0008】
本発明は、以下の図面に関してさらに詳述される。これらの図面は、本発明の様々な態様を説明することが意図されて、それらの実施に対する制限ではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の特定の実施態様への、投入および産出材料および量を説明する概要である。
【
図2】本発明の方法が実施されるバッチ反応器の概要である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、再使用可能な炭素繊維を、熱硬化性マトリックス、具体的には、ポリエステル、ビニルエステル、ポリウレタンまたはエポキシマトリックスから、再生利用するのに有用性がある。従来技術は、熱硬化性を反応させて反応性モノマーおよびオリゴマーを熱硬化性マトリックスから作ろうと試みているが、本発明は、そのようなマトリックスからの炭素繊維の再生利用を最適化する。熱硬化性マトリックス中の不活性の含有物としての炭素繊維は、マトリックス前駆体と比較して、再使用可能に、かなり再生利用しやすい。加えて、炭素繊維は、キログラムあたりおよそ22USドルのコストを有するので、そのような繊維が捨てられないようにする経済的および環境的モチベーションが存在する。
【0011】
本発明の特定の実施態様では、炭素繊維を再生利用するための処理および材料コストは、炭素繊維を含む使用済みの熱硬化性アーティクルの処分コストを考慮すると、新たな炭素繊維のコスト未満である。特定の溶媒および触媒の使用は、熱硬化性マトリックス内の共有結合を切断するのに効果的であるが、本来備わっているコスト、危険の取扱い、または処分コストが存在し、生じる処理を単なる学究的好奇心にさせることが理解されよう。例示的なそのような処理は、従来技術に詳述されるものである。処理時間およびエネルギー投入は、本発明の方法の効率における因子であるが、熱硬化性マトリックスをその中で消化する低コストで低毒性の溶媒の発見が、産業規模の炭素繊維再生利用にプロセスが実行可能であるかどうかを大いに決定することが見いだされている。
【0012】
値の範囲が与えられる場合、その範囲は、明示的にその範囲内に含まれてその範囲の最後の有効数字が変化するように、その範囲のエンドポイント値だけでなく、その範囲の中間値も含むことを意図することが理解されるべきである。例として、1~4と挙げられた範囲は、1~2、1~3、2~4、3~4、および1~4を含むことが意図される
【0013】
本発明のプロセスのための投入および産出材料を、ポンド単位で
図1に模式的に示す。
図1では、シート成形組成物(SMC)は、55%総重量の切り刻まれた炭素繊維を含むビニルエステル硬化マトリックスを有し、合計4.5キログラムの炭素繊維は、溶媒および水の消費によって消化されて、SMC内の炭素繊維の95重量%よりも良好な収率で、乾燥炭素繊維を産出する。他の本発明の実施態様では、乾燥炭素繊維の収率は、SMC内の炭素繊維の97重量%の収率よりも良好である。さらに他の本発明の実施態様では、乾燥炭素繊維の収率は、SMC内の炭素繊維の99重量%の収率よりも良好である。本発明に従って炭素繊維が再生利用され得る硬化マトリックスは、ビニルエステル、ポリエステル、およびエポキシを、そのようなマトリックスがガラス繊維も含むかどうかにかかわらず、含むことが理解されよう。
【0014】
本発明は、再使用可能な炭素繊維を放すのに必要な程度にSMCマトリックスを分解するための、経済的および環境的に優しい再利用プロセスを提供する。驚くべきことに、炭素繊維を回収するためのマトリックス消化は、再重合に適切なマトリックスモノマーおよびオリゴマーに対する消化と比較して、より少ない投入の解糖試薬によって達成され得ることが見いだされた。本発明の炭素繊維の再利用プロセスの実施態様は、メチルエチルケトン(MEK)、酸、またはアミンよりもコストが低くて毒性の低い環境的な溶媒を利用する。本発明に適切なポリオール溶媒は、SMCマトリックス内のエステル結合を切断する反応条件下で適切なヒドロキシル基の一般的な属性を有する。本明細書において働く溶媒および溶媒系は、例示的に:単糖類、二糖類、例えば、グリコール中に溶解されたスクロースまたはグルコース-融解;糖アルコール類、例えば、エリトリトール、トレイトール(theitol)、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリトール、マルトテトライトール(maltotetraitol)、またはそれらの組み合わせ;グリコール類、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量200~400)、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、グリセロール、またはジプロピレングリコールを含む。溶媒系は、利用可能なヒドロキシル基の量、ならびに、反応温度および経済学を調節するために、グリコール中で標準的な温度および圧力で固体である溶解された糖類および糖アルコール類によって容易に生産されることが理解されよう。プロピレングリコール中のスクロースの溶解度は、そのような溶媒系の例示である。M.W.Fey et al.Ind.Eng.Chem.,1951,43(6),pp 1435-1436。いくつかのグリコールが、溶媒利用を低減するよりも水と共沸混合物を形成して、溶媒系に様々な温度にわたって安定した組成物を提供することが知られていることが理解されよう。
【0015】
ジエチレングリコールモノメチルエーテルの95%総重量パーセントよりも多い溶媒系は、許容できる溶媒コスト、反応時間および炭素繊維の再生利用を提供するのに特に良く適している。また、溶融したグルコース浴は、公共の廃水処理施設へ排出する前に最小限の処理を必要とする水性廃水流および特質の魅力的なバランスを提供する溶媒を表わす。
【0016】
本発明のプロセスの実施態様は、以下のようなプロセスで行なわれ得る。SMC硬化された熱硬化性マトリックスは、任意選択で、表面積を増大させながら炭素繊維のせん断を制限する粒子サイズにすり砕かれる。SMCマトリックス内の炭素繊維の典型的な長さは、6~40ミリメートル(mm)の長さである。本発明のプロセスに関する粉砕粒子サイズは、球状の微粒子に関して典型的に1~25mmの範囲の直径であり、異方性粒子に関するX-Y-Z座標系で、最も長い直線範囲が平均5~80mmである。SMC粉砕は、重量で1:2~20のSMC:溶媒比で、溶媒または溶媒系における反応性ヒドロキシル基の数が、SMCマトリックス内のエステル結合と比較して、化学量論的に過剰であるという条件で、解糖溶媒と組み合わせられる。本発明によれば、少なくとも0.75キログラムの炭素繊維を含むバッチ処理が行われて、熱管理に関する規模および反応器規模の経済学を達成する。溶媒は、炭素繊維の95重量%よりも多くを複合物からフリーにするのに十分な割当量で存在する。
【0017】
調節され得る変数は、溶媒、温度および時間、圧力、不活性ガスブランケットを提供する大気-酸素を除外、および、触媒または共反応物質のタイプを含む。任意の温度が、粒子のポリマーマトリックスの消化に用いられ得るが、溶媒の融点と沸点の間の範囲の温度が好ましい。本明細書において働く不活性ガスは、例示的に、窒素、アルゴン、二酸化炭素、一酸化炭素、ヘリウムおよびそれらの組み合わせを含む。典型的な反応温度は、125~250セ氏温度の範囲である。溶媒の沸点は、反応混合物に対する大気よりも高い圧力によって増大し得ることが理解されよう。さらに、反応混合物は、空気雰囲気下または不活性ガス内、および、大気圧下(正常の圧力)、低減された圧力下、または、圧力下のいずれかで存在する。他の構成要素、例えば、界面活性剤、消泡剤、粘度低下剤、または沸騰石が、容易に添加される。
【0018】
本発明において働く共反応物質は、例示的に、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩およびアルカリ金属のリン酸塩、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸三カリウム、またはそれらの組み合わせを含む。触媒の典型的なローディングは、0~5総重量パーセントの範囲である。
【0019】
反応後に、分離された炭素繊維は洗浄されて、任意選択で超音波処理される。洗浄は、水で行なわれる。
図1に示されるように、1000パウンドの水が洗浄に用いられて、綺麗な炭素繊維が生産される。生じる分離された繊維は乾燥される。特定の実施態様では、分離された繊維は、帯電防止、連結、フィルム形成、または、乾燥されて再生利用される炭素繊維の外側上のコーティングとして適用される他のサイズ化を受け得る。
【0020】
本発明のプロセスの実施態様は、繊維の回収中に得られる副産物が、新たなFRC材料の形成において用いられる場合、閉ループのプロセスであり得る。溶媒は、一部の実施態様では、本発明のプロセスでの再使用または別個の利用のために、中和、濾過、蒸留、または他の従来の精製形態、例えば、溶媒抽出または膜分離の再利用プロセスに供される。
【0021】
一部の本発明の実施態様では、反応混合物は、反応混合物を所望の温度に加熱する前または加熱中に、超音波処理に曝される。超音波処理は、炭素繊維を硬化SMCマトリックスから緩めると考えられて、浄化して、繊維を同様にほぐす。
【0022】
さらに他の実施態様では、反応混合物は、マイクロ波放射線に曝されて、マトリックス消化を速める。マイクロ波は、100MHz~1000GHzの波長を有する。915MHzおよび2450MHzは、従来のクライストロン出力波長である。マイクロ波放射線との使用に特に良く適合した反応容器は、これらの波長の吸収が制限されて、例示的に、ガラス、セラミックまたはフルオロポリマーを含む。大きな反応容器は、マイクロ波透過門として働く石英ガラスまたは耐熱ガラスの窓を容易に備えることが理解されよう。あるいは、金属導波路は、マイクロ波を吸収する容器へマイクロ波を届けるのを可能にする役割を果たす。
【0023】
本発明のプロセスのための例示的な反応器具を、概して10に示す。ホッパー12は、炭素繊維を含むSMCのピースを含む。スクリュー14は、粒子をホッパー12から反応容器16へ運ぶ。容器16は、スクリュー14を用いて容器16中に粒子が計量されるときに、溶媒および任意の触媒および他の材料を含むように適合される。モーター18は、機械的攪拌機20を駆動して反応条件を均質にする。蒸気導管22は、揮発性のマトリックス分解産物および溶媒の回収を可能にする。マイクロ波発生器または超音波処理器24は、容器16内の反応体積にエネルギーを与えるために提供される。ドレイン26は、容器16からの液体除去を促進するために提供される。フィルター28は、サイドサイフォンバルブ30を介した反応混合物からのフィラー微粒子のような、サイズ排除された物質の移動および回収を可能にする。反応容器16のための熱源は示されず、従来の抵抗加熱素子を含む。
【0024】
炭素繊維を解放するためのマトリックス消化の際に、繊維は、フィルター18を通した移動後に集められるか、または、反応混合物および安定した沈殿物から静かに移されるかのいずれかである。集められた炭素繊維は、一部の実施態様では、さらに濾過されて、典型的にSMCは、例示的にガラス繊維、炭酸カルシウム、増粘剤、ガラスビーズ、ガラスマイクロスフェア、ペイント用顔料、および天然繊維を含む、様々な不溶性フィラーを除去する。生じる炭素繊維を洗浄するために加えられる水の重量は、典型的に、SMCマトリックスから放される炭素繊維の重量の10~100倍である。
【0025】
生じる再生利用される炭素繊維は、従来のオーブンまたは真空オーブン内ですぐに乾燥されて、残りの水が炭素繊維から除去される。生じる炭素繊維は、あたかも未使用の炭素繊維かのように使用されて、または、それにサイズ化コーティングを加えるために化学処理される。サイズ化は、繊維表面の特質を改変するために用いられて、結果として、再生利用される炭素繊維が埋め込まれる新たなマトリックスと相互作用する。
【0026】
集められた濾液または回収された有機物は、オリゴマー、共反応物質からなり、溶媒は、過剰の溶媒を回収するために蒸留され得る。回収された溶媒は、回収される炭素繊維純度を>95%に維持しながら、その後の炭素繊維回収反応に用いられ得る。従来の蒸留が用いられ得て、または、沸点を下げるために圧力が低減され得る。
【0027】
共反応物質は、集められた回収された有機物から、塩酸、硫酸、または酢酸のような適切な酸を用いた中和によって除去され得る。中和は、上述の溶媒回収ステップの前または後に行なわれ得る。
【0028】
回収されて濃縮された有機物は、一部の発明の実施態様では、中和後に、存在する官能基の性質に起因および応じて、新たなポリマー系へ取り込まれ得る。5~50wt%の回収された有機物および95~50wt%の未使用ポリマーのローディングの際、特質は、100%未使用のシステムと同様である。代わりに、回収された有機物は、燃料として使用され得る。
【実施例】
【0029】
本発明は、以下の実施例に関してさらに詳述される。これらの実施例は、本発明の具体的な態様を説明することが意図されて、添付の特許請求の範囲に対する制限と解釈されるべきでない。
【0030】
比較例
55%炭素繊維および45%ポリマーである25グラムの炭素繊維SMC材料は、10:1比のジエチレントリアミン(DETA)の溶媒を用いてSMCに再利用される。煮沸DETA中での24時間の反応時間後、炭素繊維を溶液から濾過して、メチルエチルケトンで洗浄して、乾燥させた。TGAを介した800℃での質量保持によって測定される繊維の純度は、97wt%であった。集められた有機相は、例えばエポキシとともに(with)、硬化剤として用いられ得て、二世代材料を生産する。
【0031】
実施例1:溶媒としてDGMMおよび高い共反応物質ローディングを用いたSMC
52wt%炭素繊維および48wt%ポリマーを含む、25グラムのビニルエステル炭素繊維SMCを、225グラムのジエチレングリコールモノメチルエーテルおよび25グラムの水酸化ナトリウムに、200℃の温度で3時間添加する。それから、炭素繊維を濾過して、1kgの沸騰水で洗浄して、水中でリンスして、水中で1.5時間超音波処理して、そして乾燥させる。炭素繊維の純度は97wt%である。
【0032】
実施例2:5:1の比で溶媒としてDGMMを用いたSMC
52wt%炭素繊維および48wt%ポリマーを含む、50グラムのビニルエステル炭素繊維SMCを、250グラムのジエチレングリコールモノメチルエーテルおよび25グラムの水酸化ナトリウムに、200℃の温度で3時間添加する。それから、炭素繊維を濾過して、1kgの沸騰水で洗浄して、水中でリンスして、そして乾燥させる。炭素繊維の純度は98wt%である。
【0033】
実施例3:7:1の比で溶媒としてDGMMを用いたSMC
52wt%炭素繊維および48wt%ポリマーを含む、35.7グラムのビニルエステル炭素繊維SMCを、250グラムのジエチレングリコールモノメチルエーテルおよび17.8グラムの水酸化ナトリウムに、200℃の温度で2時間添加する。それから、炭素繊維を濾過して、1kgの沸騰水で洗浄して、水中でリンスして、そして乾燥させる。炭素繊維の純度は99wt%である。
【0034】
実施例4:より大きな規模で溶媒としてDGMMを用いたSMC
52wt%炭素繊維および48wt%ポリマーを含む、1.429キログラムのビニルエステル炭素繊維SMCを、10キログラムのジエチレングリコールモノメチルエーテルおよび0.714キログラムの水酸化ナトリウムに、200℃の温度で3時間添加する。それから、炭素繊維を濾過して、20kgの沸騰水で洗浄して、水中でリンスして、そして乾燥させる。炭素繊維の純度は99wt%である。
【0035】
実施例5:溶媒としてDGMM、より少ない量の共反応物質を用いたSMC
52wt%炭素繊維および48wt%ポリマーを含む、25グラムのビニルエステル炭素繊維SMCを、250グラムのジエチレングリコールモノメチルエーテルおよび3.125グラムの水酸化ナトリウムに、200℃の温度で3時間添加する。それから、炭素繊維を濾過して、1kgの沸騰水で洗浄して、水中でリンスして、水中で1.5時間超音波処理して、そして乾燥させる。炭素繊維の純度は99wt%である。
【0036】
実施例6:溶媒としてDEGを用いたSMC
52wt%炭素繊維および48wt%ポリマーを含む、25グラムのビニルエステル炭素繊維SMCを、237.5グラムのジエチレングリコールおよび12.5グラムの水酸化ナトリウムに、245℃の温度で23時間添加する。それから、炭素繊維を濾過して、1kgの沸騰水で洗浄して、水中でリンスして、水中で1.5時間超音波処理して、そして乾燥させる。炭素繊維の純度は96wt%である。
【0037】
実施例7:溶媒としてDGEEを用いたSMC
52wt%炭素繊維および48wt%ポリマーを含む、25グラムのビニルエステル炭素繊維SMCを、250グラムのジエチレングリコールモノエチルエーテルおよび12.5グラムの水酸化ナトリウムに、202℃の温度で3時間添加する。それから、炭素繊維を濾過して、1kgの沸騰水で洗浄して、水中でリンスして、水中で1.5時間超音波処理して、そして乾燥させる。炭素繊維の純度は98wt%である。
【0038】
実施例8:溶媒としてDEGを用いたCF強化エポキシ-アミン
65wt%炭素繊維および35wt%ポリマーを含む、20グラムの炭素繊維強化エポキシ-アミンを、200グラムのジエチレングリコールおよび10グラムの水酸化ナトリウムに、245℃の温度で24時間添加する。それから、炭素繊維を濾過して、1kgの沸騰水で洗浄して、水中でリンスして、水中で1.5時間超音波処理して、そして乾燥させる。炭素繊維の純度は97wt%である。
【0039】
実施例9:溶媒としてDGEEを用いたCF強化エポキシ-アミン
65wt%炭素繊維および35wt%ポリマーを含む、35グラムの炭素繊維強化エポキシ-アミンを、250グラムのジエチレングリコールモノエチルエーテルおよび18グラムの水酸化ナトリウムに、202℃の温度で20時間添加する。それから、炭素繊維を濾過して、水中でリンスして、そして乾燥させる。炭素繊維の純度は97wt%である。
【0040】
実施例10:少ない量の共反応物質とともに溶媒としてDGEEを用いたCF強化エポキシ-アミン
65wt%炭素繊維および35wt%ポリマーを含む、35グラムの炭素繊維強化エポキシ-アミンを、250グラムのジエチレングリコールモノエチルエーテルおよび9グラムの水酸化ナトリウムに、202℃で20時間添加する。それから、炭素繊維を濾過して、水中でリンスして、そして乾燥させる。炭素繊維純度は96wt%である。
【0041】
実施例11:より短い反応時間での、溶媒としてDGEEを用いたCF強化エポキシ-アミン
65wt%炭素繊維および35wt%ポリマーを含む、35グラムの炭素繊維強化エポキシ-アミンを、250グラムのジエチレングリコールモノエチルエーテルおよび18グラムの水酸化ナトリウムに、202℃の温度で16時間添加する。それから、炭素繊維を濾過して、沸騰水中で洗浄して、水中でリンスして、そして乾燥させる。炭素繊維の純度は99wt%である。
【0042】
実施例12:溶媒としてDGEEおよび再利用されたDGEEを用いたCF強化エポキシ-アミン
65wt%炭素繊維および35wt%ポリマーを含む、35グラムの炭素繊維強化エポキシ-アミンを、62.5グラムのジエチレングリコールモノエチルエーテル、以前の反応の蒸留から再利用された187.5グラムのジエチレングリコールモノエチルエーテル、および18グラムの水酸化ナトリウムに、202℃の温度で21時間添加する。それから炭素繊維を濾過して、水中でリンスして、そして乾燥させる。炭素繊維の純度は98wt%である。
【0043】
実施例13:より短い反応時間での、溶媒ブレンドとしてDGEEおよびDEGを用いたCF強化エポキシ-アミン
65wt%炭素繊維および35wt%ポリマーを含む、35グラムの炭素繊維強化エポキシ-アミンを、62.5グラムのジエチレングリコールモノエチルエーテル、187.5グラムのジエチレングリコール、および18グラムの水酸化ナトリウムに、還流にて16時間添加する。それから、炭素繊維を濾過して、沸騰水で洗浄して、水中でリンスして、そして乾燥させる。炭素繊維の純度は99wt%である。
【0044】
実施例14:HClによる中和および溶媒回収
実施例9に記載のように、消化された炭素繊維エポキシ複合物の2バッチから集められた350グラムの回収された有機物を、回収された有機物中のNaOHと同一のモル濃度まで希釈された滴下HClを添加することによって中和した。生じるpHは7であった。それから、蒸留を介して水を除去して、その後に、ジエチレングリコールモノエチルエーテル溶媒の開始の量の50~90%を除去する。
【0045】
実施例15:H2SO4による中和および溶媒回収
実施例9に記載のように、消化された炭素繊維エポキシ複合物のバッチから集められた250グラムの回収された有機物を、滴下H2SO4(水中20vol%)を添加することによって中和して、pH7に到達させた。硫酸ナトリウム沈殿物を溶液から濾過して、アセトンで洗浄した。それから、蒸留を介して、中和された回収された有機物から水を除去して、その後に、ジエチレングリコールモノエチルエーテル溶媒の開始の量の50~90%を除去する。
【0046】
実施例16:中和されていない、回収された有機物の再使用
実施例9に記載のようにポリマー溶解によって集められて蒸留を介して濃縮されて開始の溶媒の75%が除去された、12.5gの回収された有機物を、1:1の化学量論で混合された37.5gのEpon 828およびJeffamine T-403と混合した。25wt%の回収された有機物の含有量を含む樹脂を流し込んで、100℃で4時間硬化させた。動的機械分析は、貯蔵弾性率の98%保持およびガラス遷移温度の19℃上昇を示す。
【0047】
本明細書において言及される特許文献および刊行物は、本発明が関連する当業者のレベルを示す。これらの文献および刊行物は、あたかもそれぞれの個々の文献または刊行物が参照により本明細書中に明確および個々に援用されるかのように同程度まで、参照により本明細書中に援用される。
【0048】
前述の説明は、本発明の特定の実施態様の説明であるが、その実施の際の制限を意味しない。以下の特許請求の範囲は、その全ての等価物を含んで、本発明の範囲を定義することが意図される。