(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】格納容器内炉外検出器システム
(51)【国際特許分類】
G21C 17/108 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
G21C17/108 100
G21C17/108 300
(21)【出願番号】P 2021166660
(22)【出願日】2021-10-11
(62)【分割の表示】P 2018532363の分割
【原出願日】2017-01-06
【審査請求日】2021-10-11
(32)【優先日】2016-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス、マイケル、エー
(72)【発明者】
【氏名】カルバハル、ジョージ、ブイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイベル、マイケル、ディー
(72)【発明者】
【氏名】アーリア、ニコラ、ジー
(72)【発明者】
【氏名】フラマング、ロバート、ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】スミーゴ、デヴィッド、エム
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター、メリッサ、エム
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0010290(KR,A)
【文献】特開平08-128996(JP,A)
【文献】特開2014-238353(JP,A)
【文献】特開昭60-063433(JP,A)
【文献】国際公開第2015/086577(WO,A1)
【文献】特開2010-281703(JP,A)
【文献】特表2017-502273(JP,A)
【文献】特表2014-503070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核分裂反応が起こる炉心(16)を収容する原子炉容器(18)と核分裂反応を監視する核計装システム(28)とを有し、当該原子炉容器および当該核計装システムの少なくとも一部が放射線遮蔽された格納容器(34)内に設置されている原子炉システム(10)であって、当該核計装システム(28)は、
当該格納容器の内側に配置され、炉心(16)内の核分裂反応の回数に応答して当該回数を示す電気出力を発生させる核検出器(30)と、
一方の端部が当該核検出器(30)の当該電気出力に接続され、当該核検出器の当該電気出力と当該格納容器内の終端位置の間を延びる検出器ケーブル(40)と、
当該格納容器内の当該終端位置に設置され、入力部
が当該核検出器(30)の当該電気出力を受け取るために当該検出器ケーブル(40)に接続され、当該核検出器の当該電気出力を増
幅するように作動可能である真空マイクロエレクトロニクス装置低雑音増幅器(52)と、
を備え、当該真空マイクロエレクトロニクス装置低雑音増幅器(52)は、
電荷増幅器(54)と、
当該電荷増幅器(54)から信号を受け取り、第1の増幅器出力信号(60)を出力するように構成されている駆動増幅器(56)と、
当該駆動増幅器(56)から信号を受け取り、第2の増幅器出力信号(66)を出力するように構成されており、当該第2の増幅器出力信号は第1の二乗平均電圧出力信号から成る、緩衝増幅器(62)と、
当該緩衝増幅器(62)から信号を受け取り、第3の増幅器出力信号(68)を出力するように構成されており、当該第3の増幅器出力信号は第2の二乗平均電圧出力信号から成り、当該第2の二乗平均電圧出力信号は当該第1の二乗平均電圧出力信号を所定数倍大きくして得られる、増幅器(64)と、
を具備し、当該電荷増幅器(54)、当該駆動増幅器(56)、当該緩衝増幅器(62)、および増幅器(64)はそれぞれ、真空マイクロエレクトロニクス装置により構成され、
当該核計装システム(28)はさらに、
入力部が当該真空マイクロエレクトロニクス装置低雑音増幅器(52)の出力部に接続され、当該入力部から当該格納容器(34)の貫通部を介して当該格納容器の外側の処理部(46)にある出力部へ延びるフィールドケーブル(42)と、
当該格納容器の外側の処理部に設置され、当該フィールドケーブル出力部に接続され、当該
第1、第2、および第3の増幅
器出力信号を受け取り、当該
第1、第2、および第3の増幅
器出力信号をもとに当該炉心(16)内で放出される中性子放射線を測定して、当該原子炉システム(10)の出力レベルを求めるように作動可能である核計装システム信号処理アセンブリ(46)と、
を備え、
当該フィールドケーブルの当該入力部が当該真空マイクロエレクトロニクス装置低雑音増幅器に対して物理的に接続されている原子炉システム。
【請求項2】
前記検出器ケーブル(40)の少なくとも一部は一体型無機絶縁ケーブルである、請求項1の原子炉システム(10)。
【請求項3】
前記核検出器(30)は中間領域核検出器である、請求項1の原子炉システム(10)。
【請求項4】
前記真空マイクロエレクトロニクス装置
低雑音増幅器(52)が炉外核計装システム(28)の中間領域前置増幅器(36)の代わりに使用される、請求項3の原子炉システム(10)。
【請求項5】
炉外核計装システム(28)の前記中間領域前置増幅器(36)と前記核検出器(30)の間にある接続箱(32)が、前記真空マイクロエレクトロニクス装置
低雑音増幅器(52)で置き換えられている、請求項4の原子炉システム(10)。
【請求項6】
前記核検出器(30)は炉外検出器である、請求項1の原子炉システム(10)。
【請求項7】
前記原子炉容器(18)は原子炉キャビティ内に支持され、前記真空マイクロエレクトロニクス装置
低雑音増幅器(52)は当該原子炉キャビティの壁のいずれかの側に隣接して支持される、請求項
1の原子炉システム(10)。
【請求項8】
前記フィールドケーブル(42)は4芯銅ケーブルである、請求項1の原子炉システム(10)。
【請求項9】
前記核検出器(30)および前記真空マイクロエレクトロニクス装置
低雑音増幅器(52)はともに電力ケーブル(70)によって給電される、請求項1の原子炉システム(10)。
【請求項10】
前記フィールドケーブル(42)の少なくとも一部は4芯銅ケーブルである、請求項1の原子炉システム(10)。
【請求項11】
前記真空マイクロエレクトロニクス装置
低雑音増幅器へ所定の電力を
前記電力ケーブル(70)から供給す
ることによって、前記真空マイクロエレクトロニクス装置
低雑音増幅器(52)から所望の増幅出力が得られる、請求項
9の原子炉システム(10)。
【請求項12】
核分裂反応が起こる炉心(16)を収容する原子炉容器(18)と核分裂反応を監視する核計装システム(28)とを有し、当該原子炉容器および当該核計装システムの少なくとも一部が放射線遮蔽された格納容器(34)内に設置されている原子炉システム(10)であって、当該核計装システム(28)は、
炉心(16)内の核分裂反応の回数に応答して当該回数を示す電気出力を発生させる核検出器(30)と、
一方の端部が当該核検出器(30)の当該電気出力に接続され、当該核検出器の当該電気出力と当該格納容器内の終端位置の間を延びる検出器ケーブル(40)と、
当該格納容器内の当該終端位置に設置され、入力部(54)が当該核検出器(30)の当該電気出力を受け取るために当該検出器ケーブル(40)に接続され、当該核検出器の当該電気出力を増幅して核検出器増幅済出力信号(60、66、68)を発生するように作動可能である真空マイクロエレクトロニクス装置低雑音増幅器(52)と、
入力部が当該真空マイクロエレクトロニクス装置低雑音増幅器(52)の出力部に接続され、当該入力部から当該格納容器(34)の貫通部を介して当該格納容器の外側の処理部(46)にある出力部へ延びるフィールドケーブル(42)と、
当該格納容器の外側の処理部に設置され、当該フィールドケーブル出力部に接続され、当該核検出器増幅済出力信号を受け取り、当該核検出器増幅済出力信号をもとに当該炉心(16)内で放出される中性子放射線を測定して、当該原子炉システム(10)の出力レベルを求めるように作動可能である核計装システム信号処理アセンブリ(46)と、
から成り、
当該真空マイクロエレクトロニクス装置(52)の出力が
第1の二乗平均電圧出力(66)
および当該第1の二乗平均電圧出力を所定数倍大きくして得られる第2の二乗平均電圧出力(68)である原子炉システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して炉外検出器を使用する原子炉システムに関し、具体的には、格納容器内炉外検出器低雑音増幅器システムを使用する原子炉システムに関する。
【背景技術】
【0002】
加圧水型原子炉発電システムでは、圧力容器の炉心内に支持された複数の燃料棒で起きる核分裂連鎖反応が炉心内に熱を発生させる。燃料棒は、燃料集合体内に間隔を空けて保持されており、燃料棒間のスペースがホウ酸水が流れる冷却材チャンネルを形成する。冷却水に含まれる水素は、燃料中の濃縮ウランから放出される中性子を減速して核反応の回数を増大させることにより、このプロセスの効率を向上させる。制御棒案内シンブル管は、燃料集合体の燃料棒の位置に散在し、炉心に挿入するか炉心から引き抜かれる制御棒を案内する役割がある。制御棒は、挿入されると中性子を吸収するため、核反応の回数と炉心内で発生する熱の量とが減少する。冷却材は、集合体を通り抜け、原子炉から蒸気発生器の管側へ送られて、蒸気発生器の胴側の低圧の水に熱を伝達し、タービンを駆動する蒸気を発生させる。蒸気発生器の管側を出る冷却材は、主冷却材ポンプにより原子炉に戻されて閉ループサイクルを終えたあと、新しいプロセスが始まる。
【0003】
原子炉の出力レベルは、一般的に、中性子源領域(起動領域)、中間領域および出力領域の3つの領域に区分される。原子炉の出力レベルは、安全な運転を保証するために継続的に監視される。この監視は通常、原子炉の炉心の外側と内側に配置された原子炉の中性子束を測定する中性子検出器によって行われる。原子炉内の任意の点の中性子束は、核分裂率に比例するため、出力レベルにも比例する。
【0004】
原子炉の中性子源領域、中間領域および出力領域における中性子束の測定には、核分裂電離箱が使用されてきた。典型的な核分裂電離箱は、すべての標準出力レベルで作動可能であるが、一般的に、中性子源領域で放出される低レベル中性子束を正確に検出しようとすると感度不足は否めない。このため、原子炉出力レベルが中性子源領域にあるときは通常、低レベル中性子源領域検出器を別途使用して中性子束を監視する。
【0005】
炉心内の核分裂反応は、適当なエネルギーレベルの自由中性子が燃料棒の核分裂性物質の原子に衝突すると起こる。この反応により、大量の熱エネルギーが放出されて原子炉冷却材により炉心から抽出されるとともに、新たな自由中性子が放出されて、より多くの核分裂反応を引き起こす。これらの放出された中性子の一部は炉心から漏出するか制御棒などの中性子吸収材により吸収されるため、さらなる核分裂反応を発生させない。炉心に存在する中性子吸収材の量を制御すると、核分裂の速度を制御することができる。核分裂性物質では常に、ランダムな核分裂反応が発生しているが、炉心が停止すると、放出される中性子が高率で吸収されるため、一連の持続的な反応は起こらない。ある世代の中性子の数が増大して前の世代の中性子の数と等しくなるまで中性子吸収材を減らすと、プロセスは自立的連鎖反応へ移行し、この状態を原子炉の「臨界」と言う。原子炉が臨界のときの中性子束は原子炉が停止しているときよりも6桁ほど大きい。
【0006】
図1は、原子力蒸気供給系12がタービン発電機(図示せず)に蒸気を供給して駆動することにより発電を行う、原子力発電プラント10の一次側を示す。原子力蒸気供給系12の加圧水型原子炉14は、炉心16が圧力容器18内に収容されている。炉心16内の核分裂反応が発生する熱は、炉心内を通過する水などの原子炉冷却材によって吸収される。加熱された冷却材は、ホットレグ配管20を通って蒸気発生器22へ循環する。原子炉冷却材は、原子炉冷却材ポンプ24により、蒸気発生器22からコールドレグ冷却材配管26を通って原子炉14へ戻される。加圧水型原子炉は通常、それぞれが別個のホットレグ20により加熱される冷却材の供給を受ける少なくとも2つ(しばしば3つまたは4つ)の蒸気発生器22を有し、コールドレグ26および原子炉冷却材ポンプ24とともに一次ループを形成する。
図1は、各々がタービン発電機に蒸気を供給するそのような2つの一次ループを示す。
【0007】
原子炉14に戻った冷却材は、ダウンカマ環状部を通って流下したあと、炉心16内を上昇する。炉心の反応度、したがって原子炉14の出力の制御は、短期的には、炉心に選択的に挿入される制御棒により行われる。反応度の長期的な調整は、冷却材に溶解されるホウ素等の中性子減速材の濃度を制御して行われる。ホウ素濃度の調整は、冷却材が炉心を循環するため炉心全体の反応度に一様な影響を及ぼす。一方、制御棒は局所反応度に影響を与えるため、炉心16内の出力分布に軸方向および半径方向の非対称性が発生する。
【0008】
炉心16内の状態は、いくつかの異なるセンサシステムによって監視される。これらのセンサシステムは、原子炉容器18から漏出する中性子束を測定する炉外検出器システム28を含む。炉外核計装システム28は、原子炉の状態を継続的に監視し、システムの状態を制御室に知らせる。前述のように、中性子源領域、中間領域および出力領域向けの3つのタイプの炉外検出器がある。
【0009】
中間領域前置増幅器アセンブリは、中間領域検出器と核計装システム信号処理アセンブリ(NISPA)と仲立ちする重要なアセンブリである。このシステムの目的は、炉心から漏出する中性子線を測定して出力レベルを求め、原子炉の過出力保護および事故後の監視に役立てることである。中間領域検出器は、停止状態付近から200%出力までの範囲の出力レベルを測定する。この検出器は、一体型無機絶縁ケーブルにより接続箱に接続され、当該無機絶縁ケーブルは当該接続箱内で4芯銅ケーブルに移行する。
図2に示すのは、炉外中間領域核計装システムの高レベル回路図である。中間領域検出器30は、原子炉容器18のすぐ外側に炉心16に沿って配置される。検出器30の出力は、無機絶縁ケーブル40を介して接続箱32に供給される。無機絶縁ケーブル40は、接続箱32内で4芯銅ケーブル42に移行する。4芯銅ケーブルは、原子炉格納容器34の貫通部を介して、中間領域前置増幅器44を含む核計装システム中間領域前置増幅器補助パネル36に接続される。格納容器の外側に設置される中間領域前置増幅器44は検出器の出力を増幅するが、この出力は核計装信号処理部46内の核計装信号インタフェース38および光ファイバモデム48に供給される。
【0010】
中間領域および出力領域向けの炉外検出器は、コネクタおよびケーブルが摂氏200度の高温および最大36メガラドのガンマ線量にさらされる冷却材喪失事故(LOCA)の状況に耐える必要がある。現行設計の検出器ケーブル、フィールドケーブルおよびコネクタは、そのような環境条件に非常に影響されやすいことがわかっている。考えられる1つの解決策は、2つ以上の接続箱を冠水領域の外側に再配置することである。この再配置により、ケーブル損失の増加、追加の接続箱と追加の機器検定プログラムの必要性、有意な追加費用など、いくつかの問題が発生する。したがって、現行システムの機能性を維持または上回り、かつ厳しい環境に耐えることのできる解決策が必要である。本発明の目的は、そのような解決策を提供することである。
【発明の概要】
【0011】
上記およびその他の目的は、核分裂反応が起こる炉心を収容する原子炉容器を備えた原子炉システムにおいて、少なくとも一部が放射線遮蔽された格納容器内に設置された、原子炉容器内の核分裂反応を監視する核計装システムによって達成される。当該核計装システムは、炉心内の核分裂反応の回数に応答して当該回数を示す電気出力を提供する核検出器を具備する。検出器ケーブルは、一方の端部が当該核検出器の当該電気信号出力に接続され、当該核検出器の当該電気信号出力と当該格納容器内の終端位置との間を延びる。当該格納容器内の当該終端位置に設置される真空マイクロエレクトロニクス装置低雑音増幅器は、当該核検出器の当該電気出力を受け取るために入力部が当該検出器ケーブルに接続される。当該真空マイクロエレクトロニクス装置は、当該核検出器の当該電気出力を増幅して核検出器の増幅済出力信号を提供するように作動可能である。フィールドケーブルは入力部が当該真空マイクロエレクトロニクス装置低雑音増幅器の出力部に接続され、当該入力部から当該格納容器の貫通部を介して当該格納容器の外側の処理部にあるフィールドケーブル出力部へ延びる。当該格納容器の外側の処理部に設置される核計装システム信号処理アセンブリは、当該フィールドケーブル出力部に接続され、核検出器増幅出力信号を受け取り、当該核検出器増幅出力信号をもとに当該炉心内で放出される中性子放射線レベルを測定し、当該原子炉システムの出力レベルを求めるように作動可能である。
【0012】
一実施態様において、当該核検出器は中間領域核検出器であり、当該検出器ケーブルは一体型無機絶縁ケーブルであるのが望ましい。従来の炉外核計装システムの中間領域前置増幅器に替えて、当該真空マイクロエレクトロニクス装置を使用するのが望ましい。当該従来の炉外核計装システムの当該中間領域前置増幅器と当該核検出器の間にある接続箱も当該真空マイクロエレクトロニクス装置で置き換えるのが好ましい。当該真空マイクロエレクトロニクス装置は、当該格納容器内の当該核検出器に比較的近接したところにあるのが望ましい。一実施態様において、当該原子炉容器は原子炉キャビティ内に支持され、当該真空マイクロエレクトロニクス装置は当該原子炉キャビティの壁のいずれかの側に隣接して支持される。そのような一実施態様において、当該フィールドケーブルは4芯銅ケーブルである。
【0013】
さらに別の実施態様において、核検出器および真空マイクロエレクトロニクス装置はともに電力ケーブルによって給電される。好ましい一実施態様において、当該真空マイクロエレクトロニクス装置は当該核検出器の電気出力を駆動増幅器に供給する第1段を有し、当該駆動増幅器の信号出力は、当該駆動増幅器の信号が接続される光ケーブルを介して当該信号出力を伝送するのに適した形式に変換するように作動可能な変換器に結合される。当該真空マイクロエレクトロニクス装置の出力は、当該中間領域核検出器の領域の上端部の中性子束の監視に適した二乗平均電圧出力であるのが好ましい。当該真空マイクロエレクトロニクス装置へ所定の電力を供給することによって、当該真空マイクロエレクトロニクス装置から所望の増幅出力を得るのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0015】
【
図1】原子力発電システムの一次側の概略図である。
【0016】
【
図2】従来の炉外中間領域核計装システムの一実施態様の高レベル回路図である。
【0017】
【
図3】本発明の検出器システムのブロック図である。
【0018】
【
図4】本発明の真空マイクロエレクトロニクス装置の一実施態様の高レベル回路概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
前述のように、中間領域および出力領域向けの炉外検出器は、コネクタおよびケーブルが摂氏200度の高温および最大36メガラドのガンマ線量にさらされる冷却材喪失事故の状況に耐える必要がある。現行設計の検出器ケーブル、フィールドケーブルおよびコネクタは、そのような環境条件に非常に影響されやすいことがわかっている。考えられる1つの解決策は、2つ以上の接続箱を冠水領域の外側に再配置することである。この再配置により、ケーブル損失の増加、追加の接続箱と追加の機器検定プログラムの必要性、有意な追加費用など、いくつかの問題が発生する。そこで、現行システムの機能性を維持するかそれを上回るとともに、厳しい環境に耐えることのできる解決策が必要である。
【0020】
本発明は、そのような解決策を提供する。好ましい実施態様は、従来の炉外核計装システムの中間領域前置増幅器の代わりに真空マイクロエレクトロニクス装置低雑音増幅器を使用する。現行の中間領域前置増幅器がマイクロコントローラやフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイではなく個別部品(ゲート、増幅器など)で構成されていることを勘案すると、真空マイクロエレクトロニクス装置は、そのような構成デバイスの代替機器として最適であり、放射線および高温による損傷を比較的受けにくいため、原子炉容器キャビティ内またはキャビティ近傍の原子炉容器に非常に近い場所に設置することができる。当該真空マイクロエレクトロニクス装置低雑音増幅器は、物理的に原子炉の近くにあり、この場所は炉外検出器の出力部(核計装システム信号伝送チェーン全体への入力部)にはるかに近いことから、信号対雑音比および雑音指数が有意に改善される。従来の信号理論によると、伝送チェーンのフロントエンドにおける損失は後段における損失に比べて、信号雑音比および雑音指数に有意に大きい影響を与える。雑音指数は、信号雑音比が装置/システムによりいかに劣化するかを示す指標である。カスケードの各段の雑音寄与分を合算した総合雑音係数は、次のフリースの式に従う。
【数1】
ここに、nf
Nおよびg
Nはそれぞれ、第N段の線形雑音指数および線形利得である。雑音指数は、雑音係数をデシベル(dB)で表したものである。雑音係数の式は、システムの総合雑音係数/雑音指数において第1段の影響が最も大きいことを示す。したがって、総合雑音指数を小さくするには、第1段のデバイスの雑音を小さくし、利得を大きくする必要がある。通信システムや、炉外核計装システムのように非常に低レベルの信号を処理しかつ高精度が要求されるシステムにおいて、最初の能動デバイスが低雑音増幅器であるのはそのためである。
【0021】
真空マイクロエレクトロニクス装置低雑音増幅器は、好ましくは原子炉容器キャビティ内または当該キャビティの近傍においいて、炉外検出器出力と貫通部の間のできるだけ原子炉容器に近い場所に設置される。この配置により、比較的高価な検出器ケーブルの長さを短縮でき、さらに重要なことに、約200フィートのケーブル配線に伴う信号の損失を減らせる。この解決策によって、フィールドケーブル(4芯銅ケーブル)は長くなるが、接続箱、嵌合コネクタおよびフィールドケーブルの複雑さと費用が低減する。炉外検出器に高電圧を提供し、真空マイクロエレクトロニクス装置低雑音増幅器のパルス増幅器に給電するために、同じ電力ケーブルを使用するのが好ましい。真空マイクロエレクトロニクス装置は、現行システムとは異なり高温や高線量の影響を受けにくいので、システムの総合的な信頼性が向上する。
図3のブロック図は、
図2に示す現行システムの中間領域前置増幅器44を真空マイクロエレクトロニクス装置で置き換えたものである。
【0022】
本実施態様は、真空マイクロエレクトロニクス装置を用いて炉外検出器信号を増幅する設計である。従来設計で使用する演算増幅器は、高線量および高温の環境では信頼性が低い。中間領域検出器のセンサは信号レベルが低いため、複数の増幅段が必要である。新しい設計は、さまざまな出力用として必要に応じて複数の増幅段を設ける。第1段の電荷増幅器54は、第2段の駆動増幅器56に信号を出力する。駆動増幅器56の出力信号は、帯域フィルター58を介して増幅器62に送られるとともに、光ケーブル60にも送られる。ほかに、2つの二乗平均電圧出力66、68が、それぞれ緩衝増幅器62、64の出力として提供される。二乗平均電圧出力は、中間領域検出器の領域の上端部の中性子束を測定する手段である。
図4は、真空マイクロエレクトロニクス装置による炉外検出器の信号処理を略示する回路図である。増幅器54、56、62、64はそれぞれ、例えばカリフォルニア州エメリービルに所在のInnosys社が提供するSSVDなどの真空マイクロエレクトロニクス装置である。真空マイクロエレクトロニクス装置については、米国特許第7,005,783号に説明がある。それぞれの真空マイクロエレクトロニクス装置へ電源70から供給される電力を調整して、特定の増幅段に必要な利得を得ることにより、増幅段を省略できる。
【0023】
したがって、本発明は、炉外核計装システムの正確さ、雑音指数および信号雑音比を劇的に改善すると同時に、既存の計装ケーブル配線に伴う複雑さを低減するものである。真空マイクロエレクトロニクス装置技術は、放射線と高温に対する耐性があるため、炉外増幅器を格納容器内の原子炉容器および中間領域検出器の近傍に配置することができる。
【0024】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明したが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替を想到できるであろう。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何ら制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物である。