(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】絶対距離測定に基づくマルチラテレーションシステム及びこれを用いたマルチラテレーション方法
(51)【国際特許分類】
G01S 5/16 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
G01S5/16
(21)【出願番号】P 2021183468
(22)【出願日】2021-11-10
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】10-2021-0069708
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516149457
【氏名又は名称】韓国機械研究院
【氏名又は名称原語表記】KOREA INSTITUTE OF MACHINERY & MATERIALS
【住所又は居所原語表記】156, Gajeongbuk-ro Yuseong-gu Daejeon 34103 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】オ ジョンソク
(72)【発明者】
【氏名】キム スンマン
(72)【発明者】
【氏名】ハン ソンフム
(72)【発明者】
【氏名】キム ギュンホ
(72)【発明者】
【氏名】ロ スングク
(72)【発明者】
【氏名】グエン クォク カーン
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/084523(WO,A1)
【文献】特許第3242108(JP,B2)
【文献】韓国登録特許第10-1991094(KR,B1)
【文献】米国特許第5812247(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0098383(US,A1)
【文献】特開2013-134164(JP,A)
【文献】国際公開第2018/131188(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間上で移動する対象体の空間座標を取得するマルチラテレーションシステムであって、
互いに異なる位置に位置し、前記対象体までの距離をそれぞれ測定する複数の追跡装置を含む追跡ユニットと、
前記追跡装置のそれぞれの測定基準面と前記追跡装置のそれぞれの中心点の間の距離であるオフセット値(dead path)を先行推定するオフセット値推定部、及び
、前記追跡装置のそれぞれの中心点位置を演算する追跡装置位置演算部を備える制御演算部とを含
み、
前記追跡装置のそれぞれは、自ら回転する場合、回転の中心である中心点を含み、
前記追跡装置のそれぞれが、前記対象体までの距離を測定する場合、前記追跡装置のそれぞれは、前記測定の基準となる基準面を含み、前記基準面は、前記中心点から一定の距離だけ離隔して形成される球形面と定義され、
前記追跡装置のそれぞれの回転中心である中心点は、前記対象体までの距離を測定する場合の測定の基準である基準面と異なるので、前記オフセット値を先行推定することを特徴とするマルチラテレーションシステム。
【請求項2】
前記オフセット値推定部は、
それぞれの追跡装置に対して、高度角オフセット及びオフセット値の初期値を設定し、
前記高度角オフセット及びオフセット値の初期値を基に、前記追跡装置のそれぞれのオフセット値を導出
し、
前記高度角オフセットとは、それぞれの追跡装置に対する座標システムにおいて、方位角回転面であるxy平面に垂直なz軸と高度角エンコーダの基準線の間に存在するオフセットであり、
前記オフセットの初期値は、前記オフセット値を推定するために設定する初期値であることを特徴とする請求項1に記載のマルチラテレーションシステム。
【請求項3】
前記追跡装置位置演算部は、
前記追跡装置のそれぞれの位置に対する初期値を基に
、前記追跡装置のそれぞれの中心点の位置を導出
し、
前記追跡装置のそれぞれの位置に対する初期値は、各追跡装置の中心点の位置を推定するために設定する初期値であり、
前記追跡装置のそれぞれの中心点の位置は、各追跡装置の中心点の座標を意味することを特徴とする請求項2に記載のマルチラテレーションシステム。
【請求項4】
前記追跡装置は、少なくとも4つ以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のマルチラテレーションシステム。
【請求項5】
互いに異なる位置から対象体までの距離を測定する複数の追跡装置を含む追跡ユニットを用いるマルチラテレーション方法であって、
前記追跡装置のそれぞれの測定基準面と、前記追跡装置のそれぞれの中心点の間の距離であるオフセット値(dead path)を先行推定するオフセット値推定ステップ(ステップS10)と、
前記オフセット値の先行推定を基に、前記追跡装置のそれぞれの中心点位置を演算する追跡装置位置演算ステップ(ステップS20)とを含
み、
前記追跡装置のそれぞれは、自ら回転する場合、回転の中心である中心点を含み、
前記追跡装置のそれぞれが、前記対象体までの距離を測定する場合、前記追跡装置のそれぞれは、前記測定の基準となる基準面を含み、前記基準面は、前記中心点から一定の距離だけ離隔して形成される球形面と定義され、
前記追跡装置のそれぞれの回転中心である中心点は、前記対象体までの距離を測定する場合の測定の基準である基準面と異なるので、前記オフセット値を先行推定することを特徴とするマルチラテレーション方法。
【請求項6】
前記オフセット値推定ステップでは、基準座標情報を提供する基準座標システムが使用されることを特徴とする請求項5に記載のマルチラテレーション方法。
【請求項7】
前記オフセット値推定ステップは、
第1の追跡装置に対して、高度角オフセット(elevation angle offset)及び第1のオフセット値の初期値を設定するステップ(ステップS11)と、
前記高度角オフセット及び第1のオフセット値の初期値を基に、前記第1の追跡装置の第1のオフセット値を導出するステップ(ステップS12)と、
前記第1の追跡装置を除く残りの追跡装置のオフセット値をそれぞれ導出するステップ(ステップS13)とを含
み、
前記高度角オフセットとは、第1の追跡装置に対する座標システムにおいて、方位角回転面であるxy平面に垂直なz軸と高度角エンコーダの基準線の間に存在するオフセットであり、
前記第1のオフセットの初期値は、前記第1のオフセット値を推定するために設定する初期値であることを特徴とする請求項6に記載のマルチラテレーション方法。
【請求項8】
前記ステップS11において、
下記式1の残差関数(R
ele1)が最小になるように、前記第1の追跡装置の高度角オフセット(E
1)、及び前記第1のオフセット値の初期値(d
1_ini)を設定し、
【数1】
ここで、nは、基準点の個数、l
ref_jは、基準座標システムで与えられる2つの基準点(P
j(xj、yj、zj)及びP
j+1(xj+1、yj+1、z j+1)の間の距離であり、x
j、y
j及びz
jは、前記第1の追跡装置の局所座標システムにおいて、下記式2乃至4を通じて定義され、
【数2】
【数3】
【数4】
l
1jは、第1の追跡装置において、前記基準座標システム上の基準点(P
j)を測定した絶対距離、θ
1jは、測定された高度角(elevation angle)、φ
1jは、測定された方位角(azimuth angle)であることを特徴とする請求項7に記載のマルチラテレーション方法。
【請求項9】
前記ステップS12において、
下記式5の残差関数(R
1)が最小になるように、前記第1の追跡装置の第1のオフセット値(d
1)を導出し、
【数5】
ここで
は、二乗誤差の総合であり、x
j、y
j及びz
jは、前記基準座標システムで与えられる基準点(Pj)の座標であり、X
1、Y
1、Z
1は、前記基準座標システムを基準に定義される前記第1の追跡装置の中心の座標であり、(d
1+l1j)は、前記第1の追跡装置を用いて、前記基準座標システムの基準点(P
j)までの距離に対する実際に測定された距離であることを特徴とする請求項8に記載のマルチラテレーション方法。
【請求項10】
前記追跡装置位置演算ステップは、
前記第1~第4の追跡装置の位置の間の回転行列及び変換行列を演算するステップ(ステップS21)と、
前記第1~第4の追跡装置の位置の初期値を設定するステップ(ステップS22)と、
前記第1~第4の追跡装置の位置を導出するステップ(ステップS23)とを含むことを特徴とする請求項7に記載のマルチラテレーション方法。
【請求項11】
前記ステップS21において、
下記式6の残差関数(R
trans)が最小になるように、回転行列(R)及び変換行列(T)を演算し、
【数6】
ここで、q
jは、第1の追跡装置の局所座標であり、p
jは、残りの追跡装置の局所座標であることを特徴とする請求項10に記載のマルチラテレーション方法。
」
【請求項12】
前記ステップS22において、
前記第1の追跡装置の座標を原点(0、0、0)に変換し、前記第2の追跡装置の座標をX軸上(X
2、0、0)に変換し、前記第3の追跡装置の座標を、X-Y平面上(X
3、Y
3、0)に変換し、前記第4の追跡装置の座標を、X-Y平面からずれるように、(X
4、Y
4、Z
4)に変換することを特徴とする請求項11に記載のマルチラテレーション方法。
【請求項13】
前記ステップS23において、
下記式7の残差関数(R
on_site)が最小になるように、前記第1~第4の追跡装置の位置(X
2、X
3、Y
3、X
4、Y
4、Z
4)を導出し、
【数7】
ここで、
は、二乗誤差の総合であり、x
j、y
j及びz
jは、自己補正面上に位置した自己補正点(P
j)の空間座標系(X
MLTS、Y
MLTS、Z
MLTS)の基準座標であって、下記式8~10の三辺測量式により定義され、
【数8】
【数9】
【数10】
ここで、l
1j、l
2j、l
3j、l
4jは、前記第1~第4の追跡装置のそれぞれにより測定された絶対距離であり、d
1、d
2、d
3、d
4は、前記第1~第4の追跡装置のそれぞれのオフセット値であることを特徴とする請求項12に記載のマルチラテレーション方法。
【請求項14】
前記追跡装置のそれぞれの位置を演算した後、前記追跡装置のそれぞれから前記対象体までの距離を測定し、
前記追跡装置のそれぞれの位置と、前記対象体までの距離を基に、空間上で移動する前記対象体の空間座標を取得することを特徴とする請求項5に記載のマルチラテレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶対距離測定に基づくマルチラテレーションシステム及びこれを用いたマルチラテレーション方法に関し、より詳しくは、固定位置から対象体までの距離情報だけを用いて、対象体の3次元座標を導出するマルチラテレーションシステムにおいて、絶対距離測定システムを用いて測定される絶対距離を基に、自己補正を行って、前記対象体の座標を導出することができる絶対距離測定に基づくマルチラテレーションシステム及びこれを用いたマルチラテレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空間上に位置する対象体の座標を取得することは、産業用ロボットを含む様々な技術分野での必要性であり、様々な技術が開発されている。
【0003】
このような対象体の空間座標を取得する技術では、一般に、レーザートラッカー(laser tracker)を用いて、前記対象体までの距離に対する情報と、前記対象体に対する2つの角度情報を用いる技術が多数適用されてきた。
【0004】
しかし、このような距離情報と角度情報とを利用する技術の場合、角度情報の分解能限界により、測定範囲が増えることにつれ、誤差が増加する限界があり、測定精度が低下するという不都合があった。
【0005】
これに最近には、角度情報を取得する代わりに、最小4つの固定位置から対象体までの距離情報だけを用いて、前記対象体の空間座標を取得する技術が開発されている。
【0006】
しかし、このような対象体までの距離情報だけを利用する場合、前記距離情報を取得する追跡装置の中心座標や初期長さなどのような因子を、相対距離測定方式では、自己補正アルゴリズムで同時に推定しなければならないが、このようなアルゴリズムを用いた因子推定に際して、推定結果の正確性が低下する問題がある。また、最適解を求める過程で因子の初期値が必要であるが、これを設定するための体系的な方法が提示されておらず、最適化過程で収束失敗(convergence failure)や局所最小(local minimum)の問題などが生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の技術的課題は、このようなことから着眼されたものであり、本発明の目的は、絶対距離測定システムを用いて測定される絶対距離を基に、自己補正を行って、対象体の座標をより正しく推定することができ、最適解の導出において体系的な方法が適用されて、より正確な最適化が行われる、絶対距離測定に基づくマルチラテレーションシステムを提供することである。
【0009】
また、本発明の他の目的は、前記マルチラテレーションシステムを用いたマルチラテレーション方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した本発明の目的を実現するための一実施例によるマルチラテレーションシステムは、空間上で移動する対象体の空間座標を取得し、追跡ユニットと、制御演算部とを含む。前記追跡ユニットは、絶対距離測定システムを用いて、互いに異なる位置に位置し、前記対象体までの距離をそれぞれ測定する複数の追跡装置を含む。前記制御演算部は、前記追跡装置のそれぞれの測定基準面と前記追跡装置のそれぞれの中心点の間の距離であるオフセット値(dead path)を先行推定するオフセット値推定部と、非線形最適化を通じて前記追跡装置のそれぞれの中心点位置を演算する追跡装置位置演算部とを含む。
【0011】
前記オフセット値推定部は、それぞれの追跡装置に対して、高度角オフセット及びオフセット値の初期値を設定し、非線形最適化を通じて、前記追跡装置のそれぞれのオフセット値を導出する。
【0012】
前記追跡装置位置演算部は、前記追跡装置それぞれの位置に対する初期値を基に、非線形最適化を通じて、前記追跡装置それぞれの中心点の位置を導出する。
【0013】
前記追跡装置は、少なくとも4つ以上である。
【0014】
前記した本発明の目的を実現するための一実施例によるマルチラテレーション方法は、絶対距離測定システムを用いて、互いに異なる位置から対象体までの距離を測定する複数の追跡装置を含む追跡ユニットを利用し、オフセット値推定ステップと、追跡装置位置演算ステップとを含む。前記オフセット値推定ステップでは、前記追跡装置のそれぞれの測定基準面と、前記追跡装置のそれぞれの中心点の間の距離であるオフセット値を先行推定する。前記追跡装置位置演算ステップでは、非線形最適化を通じて、前記追跡装置のそれぞれの中心点位置を演算することを特徴とする。
【0015】
前記オフセット値推定ステップでは、基準座標情報を提供する基準座標システムが使用される。
【0016】
前記オフセット値推定ステップは、第1の追跡装置に対して、高度角オフセット(elevation angle offset)及び第1のオフセット値の初期値を設定するステップ(ステップS11)と、非線形最適化を通じて、前記第1の追跡装置の第1のオフセット値を導出するステップ(ステップS12)と、前記第1の追跡装置を除く残りの追跡装置のオフセット値をそれぞれ導出するステップ(ステップS13)とを含む。
【0017】
前記ステップS11において、下記式1の残差関数(R
ele1)が最小になるように、前記第1の追跡装置の高度角オフセット(E
1)、及び前記第1のオフセット値の初期値(d
1_ini)を設定し、
[数1]
ここで、nは、基準点の個数、l
ref_jは、基準座標システムで与えられる2つの基準点(P
j(x
j、y
j、z
j)及びP
j+1(x
j+1、y
j+1、z
j+1)の間の距離であり、x
j、y
j及びz
jは、前記第1の追跡装置の局所座標システムにおいて、下記式2乃至4を通じて定義され、
[数2]
[数3]
[数4]
l
1jは、第1の追跡装置において、前記基準座標システム上の基準点(P
j)を測定した絶対距離、θ
1jは、測定された高度角(elevation angle)、φ
1jは、測定された方位角(azimuth angle)である。
【0018】
前記ステップS12において、下記式5の残差関数(R
1)が最小になるように、前記第1の追跡装置の第1のオフセット値(d
1)を導出し、
[数5]
ここで、
は、二乗誤差の総合であり、x
j、y
j及びz
jは、前記基準座標システムで与えられる基準点(P
j)の座標であり、X
1、Y
1、Z
1は、前記基準座標システムを基準に定義される前記第1の追跡装置の中心の座標であり、(d
1+l
1j)は、前記第1の追跡装置を用いて、前記基準座標システムの基準点(P
j)までの距離に対する実際に測定された距離である。
【0019】
前記追跡装置位置演算ステップは、前記第1~第4の追跡装置の位置の間の回転行列及び変換行列を演算するステップ(ステップS21)と、前記第1~第4の追跡装置の位置の初期値を設定するステップ(ステップS22)と、非線形最適化を通じて、前記第1~第4の追跡装置の位置を導出するステップ(ステップS23)とを含む。
【0020】
前記ステップS21において、下記式6の残差関数(R
trans)が最小になるように、回転行列(R)及び変換行列(T)を演算し、
[数6]
ここで、q
jは、第1の追跡装置の局所座標であり、p
jは、残りの追跡装置の局所座標である。
【0021】
前記ステップS22において、前記第1の追跡装置の座標を原点(0、0、0)に変換し、前記第2の追跡装置の座標をX軸上(X2、0、0)に変換し、前記第3の追跡装置の座標を、X-Y平面上(X3、Y3、0)に変換し、前記第4の追跡装置の座標を、X-Y平面からずれるように、(X4、Y4、Z4)に変換する。
【0022】
前記ステップS23において、下記式7の残差関数(R
on_site)が最小になるように、前記第1~第4の追跡装置の位置(X
2、X
3、Y
3、X
4、Y
4、Z
4)を導出し、
【数7】
ここで、
は、二乗誤差の総合であり、x
j、y
j及びz
jは、自己補正面上に位置した自己補正点(P
j)の空間座標系(X
MLTS、Y
MLTS、Z
MLTS)の基準座標であって、下記式8~10の三辺測量式(trilateration formula)により定義され、
[数8]
[数9]
[数10]
ここで、l
1j、l
2j、l
3j、l
4jは、前記第1~第4の追跡装置のそれぞれにより測定された絶対距離であり、d
1、d
2、d
3、d
4は、前記第1~第4の追跡装置のそれぞれのオフセット値である。
【0023】
前記追跡装置のそれぞれの位置を演算した後、前記追跡装置のそれぞれから前記対象体までの距離を測定し、前記追跡装置のそれぞれの位置と、前記対象体までの距離を基に、空間上で移動する前記対象体の空間座標を取得する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、絶対距離測定システムを用いて測定される絶対距離を基に、自己補正を行って、追跡装置のそれぞれの位置情報、すなわち座標情報を導出し、これを基に、空間上で移動する対象体の座標をより正確に導出することができる。
【0025】
すなわち、相対距離測定システムを利用する場合、相対距離測定の特性上、初期距離と追跡装置の位置を同時に導出しなければならないので、結果として導出すべき因子の数が増加して、導出結果の正確性や信頼度が高くないという問題があった。
【0026】
しかし、本実施例でのように、前記絶対距離測定システムを利用する場合、オフセット値を先に導出した後、追跡装置の位置を導出することができるので、非線形最適化を行って、導出する因子の数が減少するので、導出結果の正確性や信頼度が向上する。
【0027】
すなわち、オフセット値の先行導出に際して、追跡装置のそれぞれのオフセット値に対してのみ、非線形最適化を通じて導出すれば十分であり、この後、追跡装置のそれぞれのオフセット値に関する情報を取得した状態で、追跡装置の位置、すなわち、座標値を同様に、非線形最適化を通じて導出することができるので、それぞれの非線形最適化の実行で導出される因子の数が大幅に減少して、結果の信頼性が向上する。
【0028】
また、従来の相対距離測定システムを利用する場合、最適解の導出過程で初期値を設定する方法が体系的でないため、最適化過程での収束失敗や局所最小の問題が発生し得るが、本実施例の場合、このような初期値設定方法をより体系的に提示して、前記最適化過程での収束失敗や局所最小の問題を防止し、導出結果の信頼性をより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、従来技術による相対距離測定方法に基づくマルチラテレーションシステムを説明するための座標システムである。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例による絶対距離測定に基づくマルチラテレーションシステムを示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図2のマルチラテレーションシステムを用いた自己補正方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図3のオフセット値(dead path)推定ステップを具体的に示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図3の追跡装置位置演算ステップを具体的に示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図2のマルチラテレーション方法で、オフセット値を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、
図2のマルチラテレーション方法を説明するための座標システムである。
【
図8】
図8は、
図4のオフセット値推定ステップに適用される基準座標システム、及び追跡装置の局所座標システムを示す模式図である。
【
図9】
図9は、
図4のオフセット値推定ステップにおいて、高度角オフセット及び第1のオフセット値の初期値を演算するステップを説明するための模式図である。
【
図10】
図10は、
図4のオフセット値推定ステップにおいて、基準座標システムに対する第1の追跡装置の位置と第1のオフセット値を導出するステップを説明するための模式図である。
【
図11】
図11は、
図5の追跡装置位置演算ステップにおいて、回転行列及び変換行列を演算し、第2~第4の追跡装置の位置の初期値を演算するステップを説明するための模式図である。
【
図12】
図12は、
図5の追跡装置位置演算ステップにおいて、非線形最適化を通じて、第2~第4の追跡装置の位置を導出するステップを説明するための模式図である。
【
図13】
図13は、オフセット値及び追跡装置の位置に対して、従来技術と
図2のマルチラテレーションシステムにより導出された結果の再現性を比較したグラフである。
【
図14】
図14は、従来技術と
図2のマルチラテレーションシステムにより測定した対象体の座標の誤差程度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、様々な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるところ、実施例を本文で詳細に説明しようとする。しかし、これは、本発明を特定の開示形態について限定しようとすることではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むことと理解されるべきである。各図面を説明することに当たり、類似した参照符号を、類似した構成要素について使っている。第1、 第2などの用語は、様々な構成要素の説明に使用され得るが、前記構成要素は、前記用語に限定されてはいけない。
【0031】
前記用語は、ある構成要素を他の構成要素から区別する目的としてのみ使われる。本出願で使用した用語は、単に、特定の実施例を説明するために使われており、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上、明白に異なることを意図しない限り、複数の表現を含む。
【0032】
本出願において、「含む」又は「からなる」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、パーツ、又はこれらを組み合わせたことが存在することを指定しようとすることであり、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、パーツ、又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加可能性を予め排除しないことと理解されるべきである。
【0033】
異なって定義しない限り、技術的や科学的な用語を含めて、ここで使われる全ての用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者により一般に理解されることと同一の意味を有している。一般に使われる辞典に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有することと解析され、本出願で明白に定義しない限り、理想的や過度に形式的な意味として解析されない。
【0034】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好適な実施例をより詳細に説明する。
【0035】
図1は、従来技術による相対距離測定方法に基づくマルチラテレーションシステムを説明するための座標システムである。
【0036】
図1に示しているように、従来技術では、相対距離測定システムを用いて、マルチラテレーションを行っており、このようなマルチラテレーション方法では、4つの互いに異なる追跡装置の位置(TS
1、TS
2、TS
3、TS
4)を
図1のように設定し、前記追跡装置の座標を自己補正により導出した後、前記追跡装置の座標から対象体(P
j)までの距離を基に、前記対象体の空間上の座標を取得した(Zhuang、H.; Li、B.; Roth、Z.S.; Xie、X.Self-calibration and mirror center offset elimination of a multi-beam laser tracking system.Robot.Auton.Syst.1992、9、255-269)。
【0037】
このような従来のマルチラテレーション方法では、前記相対距離測定システムが初期化(すなわち、各相対距離測定システムの測定値が0に設定)される初期位置(P0)からそれぞれの追跡装置までの初期距離(d1、d2、d3、d4)と、それぞれの追跡装置の位置を定義する座標の因子(X2、X3、Y3、X4、Y4、Z4)を、いわゆる自己補正(self-calibration)方法により、同時に推定して導出した。
【0038】
すなわち、前記相対距離測定システムの場合、相対距離測定システムが任意の位置で初期化されると、該当位置(P0(x0、y0、z0))からそれぞれの追跡装置までの距離は、常に0に設定されるので、前記のように、距離と座標の因子を同時に自己補正方法により導出しなければならなかった。
【0039】
しかし、これらの多数の因子(d1、d2、d3、d4、X2、X3、Y3、X4、Y4、Z4)を同時に1つの数式から非線形最適化により導出する場合、前記因子の数が相対的に多いので、最適解を求めるための残差関数(residual function)が複雑となり、推定結果の正確性が低下するという問題があった。また、最適解を求める過程で因子の初期値が必要であるが、これを設定するための体系的な方法が提示されておらず、最適化過程での収束失敗や局所最小の問題が生じる可能性があった。
【0040】
図2は、本発明の一実施例による絶対距離測定に基づくマルチラテレーションシステムを示すブロック図である。
【0041】
まず、
図2に示しているように、本実施例による絶対距離測定に基づくマルチラテレーションシステム(以下、マルチラテレーションシステムという)10は、空間上で移動する対象体100の空間座標を取得するシステムであり、追跡ユニット300と、絶対距離測定システム200と、制御演算部400とを含む。
【0042】
この場合、前記追跡ユニット300は、少なくとも4つ以上の追跡装置310、320、330、340を含み、本実施例では、4つの第1~第4の追跡装置310、320、330、340を含むことについて説明する。
【0043】
一方、前記制御演算部400は、オフセット値推定部410と、追跡装置位置演算部420とを含む。
【0044】
一方、前記マルチラテレーションシステム10の詳細な構成については、説明の便宜上、前記マルチラテレーションシステム10を用いたマルチラテレーション方法の説明と共に説明する。
【0045】
図3は、
図2のマルチラテレーションシステムを用いた自己補正方法を示すフローチャートである。
図4は、
図3のオフセット値(dead path)推定ステップを具体的に示すフローチャートである。
図5は、
図3の追跡装置位置演算ステップを具体的に示すフローチャートである。
図6は、
図2のマルチラテレーション方法でオフセット値を説明するための模式図である。
図7は、
図2のマルチラテレーション方法を説明するための座標システムである。
図8は、
図4のオフセット値推定ステップに適用される基準座標システム、及び追跡装置の局所座標システムを示す模式図である。
図9は、
図4のオフセット値推定ステップにおいて、高度角オフセット及び第1のオフセット値の初期値を演算するステップを説明するための模式図である。
図10は、
図4のオフセット値推定ステップにおいて、基準座標システムに対する第1の追跡装置の位置と第1のオフセット値を導出するステップを説明するための模式図である。
図11は、
図5の追跡装置位置演算ステップにおいて、回転行列及び変換行列を演算し、第2~第4の追跡装置の位置の初期値を演算するステップを説明するための模式図である。
図12は、
図5の追跡装置位置演算ステップにおいて、非線形最適化を通じて、第2~第4の追跡装置の位置を導出するステップを説明するための模式図である。
【0046】
まず、
図2、
図3及び
図7に示しているように、前記マルチラテレーション方法では、前記オフセット値推定部410において、前記絶対距離測定システム200の測定基準面と、前記追跡装置310、320、330、340のそれぞれの中心点(回転中心)の間の距離であるオフセット値(dead path)(d
1、d
2、d
3、d
4)を先行推定する(オフセット値推定ステップ)(ステップS10)。
【0047】
この場合、前記絶対距離測定システム200は、
図2においては、前記追跡装置310、320、330、340の外部に1つが位置することと示しているが、これは、説明の便宜のためのことであり、前記絶対距離測定システム200は、実質的に前記追跡装置310、320、330、340のそれぞれに個別に内在して測定を行うシステムであると言える。
【0048】
すなわち、前記絶対距離測定システム200は、結果としてそれぞれの追跡装置310、320、330、340と一体に形成されるものであるが、実際にそれぞれの追跡装置310、320、330、340が対象体を追跡する過程での回転中心である中心点の座標は、実際に前記絶対距離測定システム200での測定の基準となる測定基準面とは異なることになるので、このような距離の差であるオフセット値(dead path)(d1、d2、d3、d4)を先行推定しなければならない。
【0049】
このようなオフセット値(dead path)、及びオフセット値(dead path)の推定について、
図6及び
図7を参照して、まず説明する。
【0050】
図6に示しているように、一般に前記絶対距離測定システム200を用いて、対象体100に対する距離を測定することになると、前述したように、前記絶対距離測定システム200での測定の基準となる測定基準面301を基準に、測定を行うことになる。
【0051】
しかし、追跡ユニット300の追跡装置310、320、330、340を用いて、前記対象体100を追跡する場合、実際に前記対象体100と前記それぞれの追跡装置310、320、330、340の間の隔離距離は、前記追跡装置310、320、330、340のそれぞれの原点(すなわち、中心点c)と前記対象体100の間の距離でなければならない。
【0052】
そこで、このようなそれぞれの追跡装置310、320、330、340の回転の中心となる中心点(c)と前記絶対距離測定システム200での測定の基準となる測定基準面301の間の差、すなわち、隔離距離をオフセット値(d、dead path)と定義することができる。
【0053】
さらには、前記オフセット値は、それぞれの追跡装置310、320、330、340毎に互いに異に定義することができるので、前記オフセット値を先行推定するステップでは、結果として、第1~第4の追跡装置310、320、330、340のそれぞれのオフセット値(d1、d2、d3、d4)を推定することと言える。
【0054】
一方、前記相対距離測定システムでは、距離測定が初期化される初期位置(P
0)の変化によって、それぞれの追跡装置までの初期距離(d
1、d
2、d
3、d
4)が異なることになるが、絶対距離測定システム200の場合、オフセット値(d
1、d
2、d
3、d
4)は一定であり、そこで、一回だけ正しく推定されると、
図7に示しているように、前記第1~第4の追跡装置310、320、330、340のそれぞれから、実際に対象体100までの距離を効果的に測定することができる。
【0055】
このような絶対距離測定の特性により、絶対距離に基づくマルチラテレーションシステムでは、
図3でのように、因子の推定ステップを2つのステップに分け、それぞれのステップにおいて、推定因子の数が減少するので、残差関数を単純化して、推定結果の正確性を向上することができる。
【0056】
一方、前記オフセット値推定ステップ(ステップS10)について詳細に説明すると、以下の通りである。
【0057】
前記オフセット値推定ステップ(ステップS10)では、
図8に示しているように、高精密基準座標システムである3次元測定器(coordinate measuring machine、CMM)を使用する。この場合、前記3次元測定器(CMM)は、基準座標を提供する基準座標提供システムの一例であり、本実施例では、基準座標を提供するシステムであればよく、3次元測定器に限定されるものではない。但し、以下では、説明の便宜上、基準座標提供システムとして、3次元測定器(CMM)を例示して説明する。この場合、前記3次元測定器は、複数の基準点(reference target point)を含む補正平面(calibration plane)を提供する。
【0058】
この場合、前記3次元測定器では、補正平面(calibration plane)を提供することを示しているが、平面の他にも、3次元構造体など様々な基準点が含まれる基準座標系情報を提供することができるが、説明の便宜上、以下では、補正平面を提供することと例示している。
【0059】
前記補正平面上には、複数の基準点(Pj)が各基準点の座標と共に提供されるが、前記基準点の座標は、相対的に非常に正確な座標値を提供し、これにより、前記オフセット値の推定の正確性をより向上することができる。
【0060】
具体的に、前記オフセット値推定ステップ(ステップS10)では、まず、
図4、
図8及び
図9に示しているように、第1の追跡装置310に対して、高度角オフセット(elevation angle offset、E
1)、及び第1のオフセット値(dead path、d
1)の初期値(d
1_ini)を設定する(ステップS11)。
【0061】
一般に、追跡装置のそれぞれは、対象体100を追跡する過程で、方位角(azimuth angle、φ)と高度角(elevation angle、θ)が変わりながら回転する。本実施例でも、
図3のオフセット値推定ステップ(S10)と、追跡装置位置演算ステップ(S20)において、非線形最適化のための因子の初期値を体系的に計算するため、各追跡装置の局所座標システムを活用する。
【0062】
この場合、前記オフセット値推定ステップ(S10)の場合、後述するが、前記各追跡装置の局所座標システムと、前記3次元測定器(CMM)の座標システムが適用される。
【0063】
すなわち、各追跡装置の局所座標システムは、追跡装置に内蔵されたエンコーダの方位角、高度角測定値と絶対距離測定値を用いて、計算することができるが、
図9から分かるように、方位角回転面(xy平面)に垂直な局所座標システムのz軸と高度角エンコーダの基準線(reference line)の間には、組立て状態により、一般にオフセットが存在し、これを高度角オフセット(E)と定義する。一方、方位角の場合は、前記問題が発生しない。
【0064】
そこで、このような高度角オフセットは、前記オフセット値と共に、追跡装置の中心の座標を正確に推定するために、先行的に導出されなければならない値である。これに対して、本実施例における前記オフセット値推定ステップ(ステップS10)では、高度角オフセット及びオフセット値とを導出する。
【0065】
一方、前記第1の追跡装置310に対して、高度角オフセット(elevation angle offset、E
1)、及び第1のオフセット値(dead path、d
1)の初期値(d
1_ini)を設定するステップ(ステップS11)では、まず、
図9に示しているように、前記第1の追跡装置310を前記補正平面(calibration plane)に向かうように位置する。
【0066】
この場合、前記補正平面を提供する3次元測定器は、相対的に非常に精密な座標システムを提供するので、前記補正平面上の基準点(Pj)は、最小自乗法(least-square adjustment)を適用することに当たり、固定値を提供することと見なされる。
【0067】
そして、前記第1の追跡装置310に対して、下記式1の残差関数(residual function、Rele1)が最小になるように、前記第1の追跡装置310の高度角オフセット(E1)及び前記第1のオフセット値(d1)の初期値(d1_ini)を設定することができる(ステップS11)。
【0068】
【数1】
ここで、nは、基準点の個数、l
ref_jは、3次元測定器(CMM)で与えられる2つの基準点(P
j(x
j、y
j、z
j)及びP
j+1(x
j+1、y
j+1、z
j+1))の間の距離であり、x
j、y
j及びz
jは、前記第1の追跡装置310の局所座標システムにおいて、下記式2乃至4により定義される。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
この場合、l1jは、第1の追跡装置310において、前記3次元測定器(CMM)の補正平面上の基準点Pjを測定した絶対距離、θ1jは、追跡装置内のエンコーダで測定された高度角(elevation angle)、φ1jは、測定された方位角(azimuth angle)である。
【0073】
すなわち、前記式1により、前記第1の追跡装置310の局所座標システムを基準に、前記補正平面上の互いに異なる2つの点(P
j、P
j+1)の間の距離を測定した値(前記式1の左項、)
と、前記3次元測定器(CMM)で与えられる互いに異なる2つの点(Pj、P
j+1)の間の距離情報(前記式1の右項、l
ref_j)の間の差が最小になるように、前記第1の追跡装置310の高度角オフセット(E
1)、及び前記第1のオフセット値(d
1)の初期値(d1_ini)を設定することになる。
【0074】
以上のように、前記第1の追跡装置310の高度角オフセット(E1)、及び前記第1のオフセット値(d1)の初期値(d1_ini)が導出されると、非線形最適化を通じて、前記第1の追跡装置310の第1のオフセット値を導出する(ステップS12)。すなわち、前記ステップS12では、下記式5の残差関数(R1)が最小になるように、前記第1の追跡装置310の第1のオフセット値(d1)を導出する。
【0075】
【0076】
【0077】
また、前記式5の右項(d1+l1j)は、前記第1の追跡装置310を用いて、前記3次元測定器(CMM)の基準点(Pj)までの距離に対する実際測定された距離に該当する。
【0078】
そこで、式5の残差関数(R1)が最小になるように、前記第1の追跡装置310の第1のオフセット値(d1)を導出することができる。
【0079】
一方、前記式5による非線形最適化を通じて、前記第1のオフセット値(d1)を導出する場合、前記第1のオフセット値(d1)と共に、前記X1、Y1、Z1値も同時に導出される。そこで、前述したように、前記第1のオフセット値(d1)の導出のために、前記第1のオフセット値(d1)の初期値(d1_ini)が必要であることと同様に、前記X1、Y1、Z1値の導出のためにも、X1、Y1、Z1値の初期値が必要である。
【0080】
この場合、X
1、Y
1、Z
1は、前記3次元測定器(CMM)座標システムを基準に定義される前記第1の追跡装置310の中心の座標であり、前記第1の追跡装置310の中心座標は、前記第1の追跡装置310の局所座標系によっては、
図10に示しているように、(0、0、0)と定義される。そこで、前記第1の追跡装置310に対する3次元測定器座標システムを基準に定義される座標である(X
1、Y
1、Z
1)は、前記第1の追跡装置310の局所座標系により定義される座標である(0、0、0)の変換行列と定義される。
【0081】
一方、前記高度角オフセット及び第1のオフセット値の初期値設定ステップ(ステップS11)で導出された高度角オフセット(E1)、及び第1のオフセット値の初期値(d1_ini)を用いると、前記3次元測定器座標システムで表示される前記補正平面上の各点は、前記第1の追跡装置の局所座標系としても表示することができる。
【0082】
結果として、前記第1の追跡装置310の中心座標に対して、局所座標系から3次元測定器(CMM)座標システムへの変換行列を、後述する回転行列及び変換行列演算ステップ(ステップS21)と同一の方法で導出することができ、これを基に、前記第1の追跡装置310の中心座標である(X1、Y1、Z1)に対する初期値を提供することができる。
【0083】
そして、前記第1のオフセット値(d1)の初期値(d1_ini)と、前記第1の追跡装置310の中心座標(X1、Y1、Z1)の初期値を基に、前記式5による非線形最適化を通じて、前記第1のオフセット値(d1)を導出することができる。
【0084】
一方、前記ステップS11で説明した前記第1の追跡装置310について、高度角オフセット(elevation angle offset、E1)、及び第1のオフセット値(dead path、d1)の初期値を設定することと同様に、その他の第2~第4の追跡装置320、330、340のそれぞれに対しても、高度角オフセット(E2、E3、E4)、及びオフセット値(d2、d3、d4)の初期値(d2_ini、d3_ini、d4_ini)を設定する。
【0085】
そして、前記ステップS12で説明した前記非線形最適化により、前記第1のオフセット値(d1)を導出したことと同様に、その他の第2~第4の追跡装置320、330、340のそれぞれに対して、第2~第4のオフセット値(d2、d3、d4)を導出する(ステップS13)。
【0086】
この場合、前記第2~第4の追跡装置320、330、340のそれぞれにおいても、それぞれの追跡装置の局所座標系から3次元測定器(CMM)座標システムへの変換行列は、前記第1の追跡装置310で変換行列を導出した方式をそのまま適用することができ、このような変換行列を用いて、前記で説明した非線形最適化を通じて、前記第2~第4のオフセット値(d2、d3、d4)を導出することができる。
【0087】
かくして、前記オフセット値推定ステップ(ステップS10)は、終了する。
【0088】
この後、前記オフセット値推定ステップ(ステップS10)を経てオフセット値が補正された各推定装置は、前記対象体100の3次元座標を測定するために、
図7のように配置される。
【0089】
かくして、
図3及び
図5に示しているように、前記マルチラテレーション方法では、前記追跡装置位置演算部420で非線形最適化を通じて、前記追跡装置310、320、330、340のそれぞれの位置を演算する(追跡装置位置演算ステップ)(ステップS20)。
【0090】
より具体的に、前記追跡装置位置演算ステップでは、まず、第1~第4の追跡装置310、320、330、340の位置間の回転行列及び変換行列を演算する(ステップS21)。
【0091】
すなわち、
図11に示しているように、前記第1~第4の追跡装置310、320、330、340が示しているように、1つの空間座標系(X
MLTS、Y
MLTS、Z
MLTS)に位置し、前記第1~第4の追跡装置310、320、330、340間の位置変換を行うための回転行列(R)及び変換行列(T)を演算する。この場合、前記自己補正面(self-calibration plane)に位置した多数点の位置は、前記オフセット値推定ステップ(S10)で導出された各追跡装置のオフセット値(d
1、d
2、d
3、d
4)と高度角オフセット(E
1、E
2、E
3、E
4)、及びエンコーダで提供される方位角、高度角測定値を用いて、各追跡装置の局所座標系と表現することができ、これを用いて、各追跡装置の位置関係を大略把握することができる。一方、前記大略把握することができるとは、本実施例による前記マルチラテレーションシステムは、距離情報のみを用いて、3次元座標を測定する方式で、正確な角度測定が必要なレーザートラッカーとは異なり、制御に必要な程度の角度測定を行うため、相対的に角度測定の精度が低下するからである。すなわち、相対的に不正確な角度情報を利用するため、これから把握された位置関係は、最適化過程での初期値としてのみ使われる。
【0092】
すなわち、前記追跡装置310、320、330、340間の関係は、前記第2~第4の追跡装置320、330、340の局所座標(local coordinates、p2j、p3j、p4j)から、前記第1の追跡装置310の局所座標(local coordinates、q1j)への最適剛性変換(best-fitting rigid transformation)を適用して導出することができる。
【0093】
すなわち、下記式6において、残差関数(Rtrans)が最小になるように、回転行列(R)及び変換行列(T)を演算して、前記全ての追跡装置310、320、330、340間の関係を導出することができる。
【0094】
【数6】
ここで、q
jは、第1の追跡装置の局所座標であり、p
jは、残りの第2~第4の追跡装置の局所座標である。
【0095】
この後、前記追跡装置位置演算ステップでは、前記第1~第4の追跡装置310、320、330、340の初期値を設定する(ステップS22)。
【0096】
すなわち、
図12に示しているように、前記第1の追跡装置310の座標を原点(0、0、0)に変換し、前記式6から導出された回転行列(R)及び変換行列(T)を用いて、前記第2~第4の追跡装置320、330、340の座標を変換して、初期値を設定する。
【0097】
例えば、前記第2の追跡装置の座標を、前記空間座標系(XMLTS、YMLTS、ZMLTS)からX軸上(X2、0、0)に変換し、前記第3の追跡装置の座標を、X-Y平面上(X3、Y3、0)に変換し、前記第4の追跡装置の座標を、X-Y平面からずれるように、(X4、Y4、Z4)変換する。
【0098】
かくして、前記第2~第4の追跡装置320、330、340の位置の初期値、すなわち、X2、X3、Y3、X4、Y4、Z4の初期値を設定する。
【0099】
この後、非線形最適化を通じて、前記第1~第4の追跡装置310、320、330、340の位置を最終的に導出する(ステップS23)。
【0100】
この場合、前記非線形最適化を通じて、前記第1~第4の追跡装置310、320、330、340の位置を導出する方法は、下記の通りである。
【0101】
すなわち、下記式7の残差関数(Ron_site)が最小になるように、前記第1~第4の追跡装置の位置(X2、X3、Y3、X4、Y4、Z4)を導出する。
【0102】
【数7】
ここで、
は、二乗誤差の総合であり、x
j、y
j及びz
jは、自己補正面(self-calibration)上に位置した自己補正点(P
j)の空間座標系(X
MLTS、Y
MLTS、Z
MLTS)の基準座標を意味する。
【0103】
【0104】
一方、前記第1~第3の追跡装置の座標情報を導出するための座標情報(X2、X3、Y3)、及び前記第1~第3の追跡装置から前記基準点(Pj)までの距離に対する実施あ測定された距離情報(d1+l1j、d2+l2j、d3+l3j)(この場合、d1、d2、d3は、第1~第3の追跡装置のそれぞれのオフセット値であることは、前述する)も、前記xj、yj及びzjと、下記式8~10の三辺測量式(trilateration formula)の関係を有する。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
前記式8乃至式10において、l1j、l2j、l3j、l4jは、前記第1~第4の追跡装置310、320、330、340のそれぞれにより測定された絶対距離であり、d1、d2、d3、d4は、前記第1~第4の追跡装置310、320、330、340のそれぞれのオフセット値であることは、前述した通りである。
【0109】
結果として、前記式8乃至式10と前記式7を同時に考えると、下記式7の残差関数(Ron_site)が最小になるように、前記第1~第4の追跡装置の中心点の座標に関する情報(X2、X3、Y3、X4、Y4、Z4)を同時に導出することができる。
【0110】
一方、前記では、自己補正面(self-calibration plane)が平面を提供することを例示しているが、平面の他にも、3次元構造体など、様々な基準点が含まれる自己補正情報を提供することができる。
【0111】
以上のように、前記追跡装置に対する位置演算が終了すると(ステップS20)、最終的に、原点に位置した第1の追跡装置310の位置は勿論のこと、X軸に位置した前記第2の追跡装置320の位置、すなわち、座標、X-Y平面上に位置した前記第3の追跡装置330の座標、及びX-Y平面からずれるように位置した前記第4の追跡装置340の座標を取得することができる。
【0112】
かくして、互いに異なる位置に位置する4つの追跡装置から、空間上で移動する対象体100までの距離情報を取得することができ、4つの追跡装置の位置情報と前記距離情報を基に、最終的に、前記対象体100の空間上での座標を導出することができる。
【0113】
図13は、オフセット値及び追跡装置の位置に対して、従来技術と
図2のマルチラテレーションシステムにより導出された結果の再現性を比較したグラフである。
【0114】
すなわち、
図13は、従来の相対距離測定に基づくマルチラテレーション方法での自己補正方法、すなわち、いわゆるシステム因子と言える、d
1、d
2、d
3、d
4、X
2、X
3、Y
3、X
4、Y
4、Z
4を、非線形最適化を通じて同時に導出する方法を用いて導出したシステム因子の再現性をシミュレーションした結果と、本実施例による絶対距離測定に基づくマルチラテレーション方法での自己補正方法、すなわち、前記システム因子のうち、d
1、d
2、d
3、d
4を先に導出した後、X
2、X
3、Y
3、X
4、Y
4、Z
4を導出する方法を用いたシステム因子の再現性をシミュレーションした結果での再現性(repeatability)、すなわち、標準偏差(standard deviation、SD)を示すグラフである。
【0115】
図13から、本実施例による自己補正方法により導出されたシステム因子の標準偏差が、非常に少ないことが確認できる。
【0116】
図14は、従来技術と、
図2のマルチラテレーションシステムにより測定した対象体の座標の誤差程度を示すグラフである。
【0117】
同様に、
図14は、様々な測定位置に対して、前記従来技術による対象体に対する座標(X、Y、Z)測定結果(
図14の右側)と、本実施例による対象体に対する座標(X、Y、Z)測定結果(
図14の左側)において、各軸(X、Y、Z)による誤差量を比較した結果である。
【0118】
この場合、基準測定結果との比較のため、商用化したたレーザートラッカー(AT960-MR、Leica Geosystems)により測定された結果を同時に示している。
【0119】
図14から、本実施例によるマルチラテレーション方法により測定された結果の誤差量が相対的に非常に少なく、前記レーザートラッカーにより測定された結果と非常に一致することが確認できる。
【0120】
そこで、本実施例によるマルチラテレーション方法により、空間上に位置する対象体に対する位置を高い精度及び高い正確度をもって測定することが確認できる。
【0121】
前記のような本発明の実施例によると、絶対距離測定システムを用いて測定される絶対距離を基に、自己補正を行って、追跡装置のそれぞれの位置情報、すなわち、座標情報を導出し、これを基に、空間上で移動する対象体の座標をより正確に導出することができる。
【0122】
すなわち、相対距離測定システムを用いる場合、相対距離測定の特性上、初期距離と追跡装置の位置を同時に導出しなければならないので、結果として導出すべき因子の数が増加して、導出結果の正確性や信頼度が高くないという問題があった。
【0123】
しかし、本実施例でのように、前記絶対距離測定システムを用いる場合、オフセット値を先に導出した後、追跡装置の位置を導出することができるので、非線形最適化を行って導出すべき因子の数が減少するので、導出結果の正確性や信頼度が向上する。
【0124】
すなわち、オフセット値の先行導出時に、追跡装置のそれぞれのオフセット値に対してのみ、非線形最適化を通じて導出すれば十分であり、この後、追跡装置のそれぞれのオフセット値に対する情報を取得した状態で、追跡装置の位置、すなわち、座標値を、同様に非線形最適化を通じて導出することができるので、それぞれの非線形最適化の実行で導出される因子の数が大幅に減少して、結果の信頼性が向上する。
【0125】
また、従来の相対距離測定システムを利用する場合、最適解の導出過程において、初期値を設定する方法が体系的でないため、最適化過程での収束失敗や局所最小の問題が発生し得るが、本実施例の場合、このような初期値設定方法をより体系的に提示しているので、前記最適化過程での収束失敗や局所最小問題を防止し、導出結果の信頼性をより向上することができる。
【0126】
前記では、本発明の好適な実施例を参照して説明したが、当該技術分野における熟練した当業者は、下記の特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で、本発明を様々に修正及び変更できることを理解するだろう。
【符号の説明】
【0127】
10: 絶対距離測定に基づくマルチラテレーションシステム
100: 対象体
200: 絶対距離測定システム
300: 追跡ユニット(tracking station)
400: 制御演算部
410: オフセット値推定部
420: 追跡装置位置演算部