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特許7264992新規な重症熱性血小板減少症候群ウイルス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】新規な重症熱性血小板減少症候群ウイルス
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/00 20060101AFI20230418BHJP
   C07K 16/10 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230418BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20230418BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20230418BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230418BHJP
   C12N 15/33 20060101ALN20230418BHJP
【FI】
C12N7/00
C07K16/10
A61P7/04
A61K35/76
A61K39/12
G01N33/569 L
G01N33/53 N
C12N15/33 ZNA
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021509707
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 KR2019004857
(87)【国際公開番号】W WO2019208995
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-10-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0047865
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520416163
【氏名又は名称】アイ.ディー.バイオ.
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ヨ-ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パク ス-ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨン-イル
(72)【発明者】
【氏名】ユ ミン-アー
【審査官】佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0042419(KR,A)
【文献】国際公開第2017/164678(WO,A2)
【文献】PLOS Negl. Trop. Dis., 2017, Vol. 11, No. 9, e0005893
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
L遺伝子のORF(6255bp)で発現されたタンパク質の1447番のアミノ酸がイソロイシンおよび1913番のアミノ酸がアルギニンであり、M遺伝子のORF(3222bp)で発現されたタンパク質の83番目のアミノ酸がフェニルアラニン、404番目のアミノ酸がスレオニンおよび904番目のアミノ酸がイソロイシンであり、
L遺伝子が配列番号17のアミノ酸配列を発現し、M遺伝子が配列番号18のアミノ酸配列を発現し、NP遺伝子が配列番号19のアミノ酸配列を発現し、NS遺伝子が配列番号20のアミノ酸配列を発現し、
配列番号5の塩基配列を含むL遺伝子、配列番号6の塩基配列を含むM遺伝子、配列番号7の塩基配列を含むNP遺伝子および配列番号8の塩基配列を含むNS遺伝子を含む、重症熱性血小板減少症ウイルス。
【請求項2】
請求項1に記載の重症熱性血小板減少症ウイルスを有効成分として含む、重症熱性血小板減少症の予防または治療用免疫原性組成物。
【請求項3】
不活化した重症熱性血小板減少症ウイルスと薬剤学的に許容可能な担体(carrier)またはアジュバント(adjuvant)を含む、請求項2に記載の重症熱性血小板減少症の予防または治療用免疫原性組成物。
【請求項4】
前記免疫原性組成物の形態は、生クワクチン、不活化ワクチン、弱毒化された重症熱性血小板減少症ウイルスの遺伝子を用いて生産したサブユニットワクチン、ベクトルワクチン、キメラワクチン、DNAおよびRNAワクチンからなる群から選択される、請求項2に記載の重症熱性血小板減少症の予防または治療用免疫原性組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のウイルスを含む重症熱性血小板減少症ウイルスの診断キット。
【請求項6】
(a)抗原-抗体複合体が形成されることができる条件下で検体から分離された試料を請求項1に記載のウイルスと接触させる段階と、
(b)抗原-抗体複合体の形成を検出する段階とを含む、重症熱性血小板減少症ウイルス抗体を検出する方法。
【請求項7】
(a)請求項1に記載のウイルスを免疫反応を誘導するのに有効な量でヒトでない動物に投与する段階と、
(b)前記重症熱性血小板減少症ウイルスに対する抗体を含有する抗血清または血漿を収集する段階とを含む、ヒトでない動物から重症熱性血小板減少症ウイルスに対する抗血清を製造する方法。
【請求項8】
(a)検体から分離された試料を請求項1に記載のウイルスと接触させ、抗原-抗体複合体を形成させる段階と、
(b)前記複合体の形成を検出する段階とを含む、重症熱性血小板減少症の診断に関する情報を提供する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な遺伝子型の重症熱性血小板減少症候群ウイルス、およびその免疫原性組成物としての用途に関する。
【背景技術】
【0002】
重症熱性血小板減少症候群(Severe fever with thrombocytopenia syndrome、SFTS)は、高熱、嘔吐、下痢、血小板減少、白血球減少、および多臓器不全などの症状を伴い、致死率が6~30%に至る深刻な疾患である(Yu XJ et al.、N.Engl.J.Med.2011;364:1523-32;Ding F et al Clin Infect Dis 2013;56:1682-3)。
【0003】
SFTS原因病原体は、SFTSV(severe fever thrombocytopenia syndrome virus、重症熱性血小板減少症ウイルス、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)に属する。ブニヤウイルスとは3つの分節を含むマイナス鎖(negative-strand)RNAウイルスであるが、オルソブニヤウイルス(Orthobunyavirus)、ハンタウイルス(Hantavirus)、ナイロウィルス(Nairovirus)、フレボウイルス(Phlebovirus)、トスポウイルス(Tospovirus)を含む5つの属(genus)からなる。SFTSVは、フレボウイルス属(Phlebovirus genus)に属し、ここにリフトバレー熱ウイルス(Rift valley fever virus)などが属している。SFTSVは、2011年に中国で初めて報告され(Yu XJ et al.ibid)、中国だけでなく韓国、そして日本でも持続的に発症している新変異型ウイルスである。SFTSVは、直径が80~100nmである球状のウイルスである。このウイルスは、single-stranded negative sense RNA segmentであるL分節(large(L)segment)、M分節(medium(M)segment)、S分節(small(S)segment;NP、NS)などの3つの遺伝子を有する。
【0004】
SFTSウイルスは、フタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)を媒介とするものであって、該ダニは、韓国でも広く分布していると知られている(Chae JS et al.J Vet Sci 2008;9:285-93;Kim CM et al.Appl Environ Microbiol 2006;72:5766-76)。SFTSウイルスの血清転換およびウイルス血症が、ヤギ、羊、牛、豚、および犬のような飼育動物から発見され、これらの動物もSFTSウイルスが広がった地域において中間媒介体として作用したと考えられている(Zhao L et al.Emerg Infect Dis 2013;18:963-5;Niu G et al.Emerg Infect Dis 2013;19:756-63)。患者の血液からはSFTSVが検出され、特に重症患者の血液にはSFTSV濃度が非常に高いので、血液を介してヒト-ヒト間の伝播が可能である(Tang X、Wu W、Wang H、et al.J Infect Dis 2013;207:736-739.)。
【0005】
SFTSVに対する抗ウイルス剤は、まだ開発されていないので、SFTS治療は輸血、新代替療法など、臓器不全に対する保存療法が根幹をなす。中国では、2012年からリバビリン併用を治療ガイドラインに導入しているが、最近発表された治療の結果では、リバビリン投与群と非投与群間の死亡率に差がなかった。したがって、SFTSVに対するワクチンが必要であるが、まだワクチンが開発されていないのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新規な遺伝子型の重症熱性血小板減少症ウイルス、及びこれを用いた免疫原性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、新規な重症熱性血小板減少症ウイルスを提供する。
【0008】
また、本発明は、重症熱性血小板減少症の予防または治療用免疫原性組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、重症熱性血小板減少症ウイルスまたはその抗原に対する抗体を提供する。
【0010】
また、本発明は、重症熱性血小板減少症ウイルスの診断キットを提供する。
【0011】
また、本発明は、重症熱性血小板減少症ウイルス抗体を検出する方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、重症熱性血小板減少症ウイルスに対する抗血清を生産する方法を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、重症熱性血小板減少症の診断に関する情報を提供する方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の重症熱性血小板減少症ウイルスは、従来の血小板減少症ウイルスと遺伝的に異なり、系統学的にB遺伝子型でも細分化される新規なウイルスであるので、ある特定の遺伝子型のウイルスだけに制限された防御能を示すワクチンの特性上、本発明の新規なウイルスをSFTSVに対する交差免疫原性に優れたワクチンとして有用に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の新規なウイルス3種と中国、日本、韓国で分離されたSFTSV L遺伝子の系統図を示した図である。
図2】本発明の新規なウイルス3種と中国、日本、韓国で分離されたSFTSV M遺伝子の系統図を示した図である。
図3】本発明の新規なウイルス3種と中国、日本、韓国で分離されたSFTSV S(NP)遺伝子の系統図を示した図である。
図4】本発明の新規なウイルス3種と中国、日本、韓国で分離されたSFTSV S(NS)遺伝子の系統図を示した図である。
図5】本発明のB-1(CB3/2016)、B-2(CB7/2017)およびB-3(CB6/2016)遺伝子型の新規なウイルス3種のL遺伝子およびM遺伝子におけるアミノ酸変異部位を示した図である。
図6】本発明のB-1(CB3/2016)、B-2(CB7/2017)およびB-3(CB6/2016)遺伝子型の新規なウイルス3種のワクチンの効果を確認した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付された図面を参照して、本発明の実施例において本発明を詳細に説明する。ただし、次の実施例は、本発明の例示として提示されるものであって、当業者に周知著名な技術、または構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にしうると判断される場合には、その詳細な説明を省略することができ、これにより本発明が限定されるものではない。本発明は、後述する特許請求の範囲の記載及びそれから解釈される均等範疇内で多様な変形及び応用が可能である。
【0017】
また、本明細書で使用される用語ら(terminology)は、本発明の好適な実施例を適切に表現するために使用された用語であって、これは、使用者、運用者の意図または本発明が属する分野の慣例などによって変わりうる。したがって、本用語に対する定義は、本明細書全般にわたった内容に基づいて定められるべきである。明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」としたとき、これは特に相反する記載がない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0018】
一側面においては、本発明は、L遺伝子のORF(6255bp)で発現されたタンパク質の1447番のアミノ酸がバリンまたは1913番のアミノ酸がリジンであり、M遺伝子のORF(3222bp)で発現されたタンパク質の83番目のアミノ酸がチロシン、404番目のアミノ酸がスレオニンまたは904番目のアミノ酸がバリンである、重症熱性血小板減少症ウイルス(severe fever thrombocytopenia syndrome virus、SFTSV)に関するものである。本発明の一実施例において、前記ウイルスは、B-1(CB3)と命名した。
【0019】
一実施例において、前記重症熱性血小板減少症ウイルスは、遺伝子型B-1に属し、従来の遺伝子型Bに分類されたウイルスであるL遺伝子のORF(6255bp)で発現されたタンパク質の1447番目のアミノ酸であるイソロイシンがバリンに置換され、1913番目のアミノ酸であるアルギニンがリジンに置換され(配列番号13)、M遺伝子の904番目のアミノ酸であるイソロイシンがバリンに置換された(配列番号14)ウイルスであることができる。
【0020】
一実施例において、前記重症熱性血小板減少症ウイルスは、配列番号1の塩基配列を含むL遺伝子、配列番号2の塩基配列を含むM遺伝子、及び配列番号3の塩基配列を含むNP及び配列番号4の塩基配列を含むNSを含むS遺伝子を含むことができる。
【0021】
一実施例において、前記重症熱性血小板減少症ウイルスは、L遺伝子のORF(6255bp)で発現された配列番号13のアミノ酸配列、M遺伝子のORF(3222bp)で発現された配列番号14のアミノ酸配列、NP遺伝子のORFで発現された配列番号15のアミノ酸配列とNS遺伝子のORFで発現された配列番号16のアミノ酸配列を含むことができる。
【0022】
一側面においては、本発明は、L遺伝子のORF(6255bp)で発現されたタンパク質の1447番のアミノ酸がイソロイシンまたは1913番のアミノ酸がアルギニンであり、M遺伝子のORF(3222bp)で発現されたタンパク質の83番目のアミノ酸がフェニルアラニン、404番目のアミノ酸がスレオニンまたは904番目のアミノ酸がイソロイシンである、重症熱性血小板減少症ウイルスに関するものである。本発明の一実施例において、前記ウイルスは、B-2(CB4)と命名した。
【0023】
一実施例において、前記重症熱性血小板減少症ウイルスは、遺伝子型B-2に属し、従来の遺伝子型Bに分類されたウイルスのM遺伝子の83番目のアミノ酸であるチロシンがフェニルアラニンに置換されたウイルスであることができる。
【0024】
一実施例において、前記重症熱性血小板減少症ウイルスは、配列番号5の塩基配列を含むL遺伝子、配列番号6の塩基配列を含むM遺伝子、配列番号7の塩基配列を含むNP、及び配列番号8の塩基配列を含むNSを含むS遺伝子を含むことができる。
【0025】
一実施例において、前記重症熱性血小板減少症ウイルスは、L遺伝子のORFで発現された配列番号17のアミノ酸配列、M遺伝子のORFで発現された配列番号18のアミノ酸配列、NP遺伝子のORFで発現された配列番号19のアミノ酸配列およびNS遺伝子のORFで発現された配列番号20のアミノ酸配列を含むことができる。
【0026】
一側面では、本発明は、L遺伝子のORF(6255bp)で発現されたタンパク質の1447番のアミノ酸がイソロイシンまたは1913番のアミノ酸がアルギニンであり、M遺伝子のORF(3222bp)で発現されたタンパク質の83番目のアミノ酸がチロシン、404番目のアミノ酸がアラニンまたは904番目のアミノ酸がイソロイシンである、重症熱性血小板減少症ウイルスに関するものである。本発明の一実施例において、前記ウイルスは、B-3(CB1)と命名した。
【0027】
一実施例において、前記重症熱性血小板減少症ウイルスは、遺伝子型B-3に属し、従来の遺伝子型Bに分類されたウイルスのM遺伝子の404番目のアミノ酸であるスレオニンがアラニンに置換されたウイルスであることができる。
【0028】
一実施例において、前記重症熱性血小板減少症ウイルスは、配列番号9の塩基配列を含むL遺伝子、配列番号10の塩基配列を含むM遺伝子、及び配列番号11の塩基配列を含むNP及び配列番号12の塩基配列を含むNSを含むS遺伝子を含むことができる。
【0029】
一実施例において、前記重症熱性血小板減少症ウイルスは、L遺伝子のORFで発現された配列番号21のアミノ酸配列、M遺伝子のORFで発現された配列番号22のアミノ酸配列、NP遺伝子のORFで発現された配列番号23のアミノ酸配列およびNS遺伝子のORFで発現された配列番号24のアミノ酸配列を含むことができる。
【0030】
本発明の一実施例において、分離した重症熱性血小板減少症ウイルスの遺伝子解析の結果、これらの遺伝子配列が既知の重症熱性血小板減少症ウイルスの遺伝子と異なり、これを系統学的に分類した結果、それぞれの遺伝子が既知のうちの一B遺伝子型グループではない少なくとも3つに細分化され、分離される遺伝子型であることを明らかにした。
【0031】
本発明で使用される用語「置換」は、それぞれ他のアミノ酸またはヌクレオチドによって一つ以上のアミノ酸またはヌクレオチドの交替を意味する。
【0032】
本発明の重症熱性血小板減少症ウイルスは、マイナス一本鎖RNAウイルスであって、Bunyaviridaeとphlebovirus属に属する。直径80~100nmの球状のウイルスであって、フタトゲチマダニを媒介とし、誘電体は、large(L)。Medium(M)。small(S)セグメントからなり、RNA dependent RNA polymerase(RdRp)、glycoprotein precursor(M)、glycoprotein N(Gn)、glycoprotein C(Gc)、nucleocapsid protein(NP)およびnon-structural protein(NSs)の6つのタンパク質をコードする。マイナスまたはアンチセンス鎖(ウイルスタンパク質をコードするセンス鎖またはプラス鎖のアンチセンス)は、タンパク質または遺伝子がアンチセンスとしてコードされ、遺伝子のタンパク質への発現のためにセンス鎖またはプラス鎖RNAの生成後、これから翻訳を実行し、タンパク質が生成される。
【0033】
一側面では、本発明は、重症熱性血小板減少症ウイルスまたはその抗原を有効成分として含む、重症熱性血小板減少症の予防または治療用免疫原性組成物に関するものである。
【0034】
一実施例において、本発明の免疫原性組成物は、不活化した重症熱性血小板減少症ウイルスと薬剤学的に許容可能な担体(carrier)またはアジュバント(adjuvant)を含むことができる。
【0035】
一実施例において、前記免疫原性組成物は、ワクチン組成物であることができ、この形態は生クワクチン、不活化ワクチン、弱毒化された重症熱性血小板減少症ウイルスの遺伝子を用いて生産したサブユニットワクチン、ベクトルワクチン、キメラワクチン、DNAおよびRNAワクチンからなる群から選択されることができる。
【0036】
一実施例において、前記免疫原性組成物は、配列番号1の塩基配列を含むL遺伝子、配列番号2の塩基配列を含むM遺伝子および配列番号3の塩基配列を含むS遺伝子を含む重症熱性血小板減少症ウイルスと、配列番号4の塩基配列を含むL遺伝子、配列番号5の塩基配列を含むM遺伝子および配列番号6の塩基配列を含むS遺伝子を含む重症熱性血小板減少症ウイルスと、配列番号7の塩基配列を含むL遺伝子、配列番号8の塩基配列を含むM遺伝子および配列番号9の塩基配列を含むS遺伝子を含む重症熱性血小板減少症ウイルス又はこれらの抗原を有効成分として含むことができる。
【0037】
本発明の免疫原性組成物(すなわち、ワクチン)を製造するために、本発明によるウイルスまたはこれの抗原は、生理学的に許容可能な形に変換される。これはインフルエンザのワクチン接種に使用されたワクチン製造の経験を基にして実施することができる(Stickl、H.等により開示された。[1974]Dtsch.med.Wschr.99、2386-2392)。ワクチン接種の製造のために、例えば、ウイルス粒子はアンプル内、好ましくはガラスアンプルで1%のヒトアルブミンおよび2%ペプトン存在下100mlのリン酸-緩衝生理食塩水(PBS)で凍結乾燥される。別の方法では、ワクチン接種は、製剤においてウイルスの順次凍結-乾燥によって生成されることができる。この製剤は、マンニトール、デキストラン、糖、グリシン、ラクトースまたはポリビニルピロリドンのような追加の添加剤または酸化防止剤または不活性ガス、安定剤または生体内投与に適した組換えタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)などの他の補助剤を含有することができる。それから、ガラスアンプルを密封し、4℃および室温間で数ヶ月間保存することができる。しかし、他の要求事項がない限り、前記アンプルは、好ましくは-20℃未満で保存することができる。
【0038】
予防接種または治療のために、凍結乾燥物は、0.1~0.5mlの水溶液、好ましくは生理食塩水またはトリス緩衝液に溶解され、全身または局所的に、すなわち非経口、皮下、筋肉内または当業者に公知された任意の他の投与経路によって投与することができる。投与形態、服用量および投与回数は、公知の方法で当業者によって最適化されることができる。しかし、最も一般的には、患者は、最初のワクチン接種から約1ヶ月~6週間後に二回目のワクチン接種を受ける。
【0039】
本発明において、用語「予防」とは、本発明による免疫原性組成物の投与により重症熱性血小板減少症の発生、拡散、および再発を抑制または遅延させる全ての行為を意味する。
【0040】
本発明で使用される用語「治療」とは、本発明による免疫原性組成物の投与により、重症熱性血小板減少症およびそれによる合併症の症状を好転させたり、有利に変更するすべての行為を意味する。本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、大韓医学協会などで提示された資料を参照して、本願の組成物が効果がある疾患の正確な基準を知り、改善、向上、および治療の程度を判断することができるであろう。
【0041】
本発明において有効成分と結合して使用された「治療学的に有効な量」という用語は、移植拒絶反応によって発生した疾患を予防または治療に有効な量を意味し、本発明の組成物の治療的に有効な量は、いろんな要素、例えば、投与方法、目的部位、患者の状態などにより変わりうる。したがって、人体に使用する際の投与量は、安全性と効率性を共に考慮し、適正量に決定されるべきである。動物実験を通じて決定された有効量からヒトに使用される量を推定することも可能である。有効な量を決定する際に考慮すべきこれらの事項は、例えば、Hardman and Limbird、eds.、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、10th ed.(2001)、Pergamon Pressと、EW Martin ed.、Remington’s Pharmaceutical Sciences、18th ed.(1990)、Mack PublishingCoに記述されている。
【0042】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明で使用される用語、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な恩恵/リスク比で疾患を治療するのに十分であり、副作用を起こさない程度の量を意味し、有効容量水準は、患者の健康状態、移植の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する感度、投与方法、投与時間、投与経路、および排出比率、治療期間、配合または同時使用される薬剤を含む要素、並びにその他の医学分野でよく知られている要素に基づいて決定することができる。本発明の組成物は、個別治療剤として投与したり、他の治療薬と併用して投与されることができ、従来の治療剤と順次または同時に投与することができ、単一または複数投与が可能である。前記した要素を全部考慮し、副作用なく最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが大事であり、これは当業者によって容易に決定されることができる。
【0043】
本発明の薬学的組成物は、生物学的製剤に通常使用される担体、希釈剤、賦形剤、または二つ以上のこれらの組み合わせを含むことができる。本発明で使用される用語「薬学的に許容可能な」とは、前記組成物に曝される細胞やヒトに毒性がない特性を示すことを意味する。前記担体は、組成物を生体内送達に適したものであれば特に制限されず、例えば、Merck Index、13th ed.、Merck&Co.Inc.に記載された化合物、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、およびこれらの成分のうち1成分以上を混合して用いることができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤、および潤滑油を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注入用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。さらに、当分野の適正な方法で、またはRemington’s Pharmaceutical
Science(Mack PublishingCompany、Easton PA、18th、1990)に開示されている方法を用いて、各疾患または成分に応じて好ましく製剤化することができる。
【0044】
一実施例において、前記薬学的組成物は、経口型剤形、外用剤、坐剤、滅菌注射溶液および噴霧剤を含む群から選択される1つ以上の剤形であることができ、経口型または注射剤形がより好ましい。
【0045】
本発明で使用される用語「投与」とは、任意の適切な方法で、個体または患者に所定の物質を提供することを意味し、目的とする方法に応じて非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に注射剤形に適用)したり、経口投与することができ、投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度などによってその範囲が多様である。本発明の組成物の経口投与用の液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、一般に使用される単純希釈剤である水、流動パラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが一緒に含まれることができる。非経口投与用製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが含まれる。本発明の薬学的組成物は、活性物質が標的細胞に移動できる任意の装置によって投与することもできる。好ましい投与方式および製剤は、静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤などである。注射剤は、生理食塩液、リンゲル液などの水性溶剤、植物油、高級脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、アルコール類(例えば、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、グリセリンなど)などの非水性溶剤などを用いて製造することができ、変質防止のための安定化剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、BHA、トコフェロール、EDTAなど)、乳化剤、pH調整のための緩衝剤、微生物発育を阻止するための保存剤(例えば、硝酸フェニル水銀、チメロサル、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレソール、ベンジルアルコールなど)などの薬学的担体を含むことができる。
【0046】
本発明で使用される用語、「個体」とは、前記の癌が発症したり、又は発症する可能性のあるヒトを含むサル、牛、馬、羊、豚、鶏、七面鳥、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、またはモルモットを含むすべての動物を意味し、「検体」とは、これらより分離した全血、血漿、血清、尿、または唾液であることができる。
【0047】
本発明の薬学的組成物は、薬剤学的に許容可能な添加剤をさらに含むことができ、この時、薬剤学的に許容可能な添加剤としては、デンプン、ゼラチン化デンプン、微結晶セルロース、乳糖、ポビドン、コロイダルシリコンジオキサイド、リン酸水素カルシウム、ラクトース、マンニトール、飴、アラビアゴム、アルファデンプン、トウモロコシ澱粉、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、オパドライ、でん粉グリコール酸ナトリウム、カルナウバロウ、合成ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、白糖、デキストロース、ソルビトール、およびタルクなどが使用されることができる。本発明による薬剤学的に許容可能な添加剤は、前記組成物に対して0.1~90重量部含まれることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0048】
一側面においては、本発明は、本発明のウイルスまたはその抗原を有し、免疫化に反応して生成された抗体に関するものである。
【0049】
前記抗体は、全(whole)抗体の形態であるばかりでなく、抗体分子の機能的な断片を含む。全抗体は、2つの全体の長さの軽鎖(light chain)および2つの全体の長さの重鎖(heavy chain)を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖とジスルフィド結合(disulfide bond)で連結されている。抗体分子の機能的な断片とは、抗原結合機能を保有する断片を意味し、抗体断片の例は、(i)軽鎖の可変領域(VL)および重鎖の可変領域(VH)と軽鎖の定常領域(CL)および重鎖の一番目の定常領域(CH1)からなるFab断片;(ii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iii)単一抗体のVLおよびVHドメインからなるFv断片;(iv)VHドメインからなるdAb断片(Ward ES et al.、Nature 341:544-546(1989)];(v)分離されたCDR領域;(vi)2つの連結されたFab断片を含む2価の断片であるF(ab’)2断片;(vii)VHドメインおよびVLドメインが抗原結合部位を形成するように結合させるペプチドリンカーによって結合された単一鎖Fv分子(scFv);(viii)二重特異性単一鎖Fv二量体(PCT/US92/09965)および(ix)遺伝子融合によって製作された多価または多重特異性断片であるダイアボディ(diabody)WO94/13804)などを含む。
【0050】
一側面においては、本発明は、重症熱性血小板減少症ウイルスまたはその抗原、またはこれに対する抗体を含む重症熱性血小板減少症ウイルスの診断キットに関するものである。
【0051】
一実施例において、前記キットは、本発明によるウイルスを含むウイルス試料および前記抗原-抗体複合体の検出用試薬を含むことができる。前記抗原-抗体複合体検出用試薬は、放射状免疫解析、ELISA(Enzyme linked immunosorbent assay)または免疫蛍光解析用試薬を含む。
【0052】
一実施例において、抗原-抗体複合体の検出は、抗原抗体結合により抗体および/または抗原を容易に検出することができるOuchterlonyプレート、ウェスタンブロット、Crossed IE、Rocket IE、Fus ed Rocket IE、Affinity IEのような免疫電気泳動(Immuno Electrop horesis)で達成することができる。このような方法で用いられる試薬または物質は、公知されたものであり、例えば、抗原-抗体反応、抗原に特異的に結合する基質、核酸またはペプチドアプタマー、複合体と相互作用する受容体またはリガンドまたは補助因子との反応を通じて検出できたり、または質量解析計を利用することができる。前記本願の抗原-抗体複合体と特異的に相互作用し、または結合する試薬または物質は、チップ方式またはナノ粒子(nanoparticle)と一緒に使用することができる。前記免疫解析または免疫染色の方法は、Enzyme Immunoassay、ET Maggio、ed.、CRC Press、Boca Raton、Florida、1980; Gaastra、W.、Enzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)、in Methods in Molecular Biology、Vol.1、Walker、JM ed.、Humana Press、NJ、1984等に記載されている。上述した免疫解析プロセスによる最終的なシグナルの強さを解析し、すなわち、正常試料とのシグナル対照を行うことにより、感染の有無を診断することができる。
【0053】
一側面においては、本発明は、重症熱性血小板減少症ウイルスまたはその抗原、またはこれに対する抗体を含む診断組成物に関するものである。
【0054】
診断組成物に使用される本発明の化合物は、検出可能に標識されるのが好ましい。生体分子を標識させるのに使用可能な様々な方法が当業者に公知されており、本発明の範疇内で考慮される。前記方法は、Tijssen、「Practice and theory of enzyme immuno assays」、Burden、RHand von Knippenburg(Eds)、Volume 15(1985)、「Basic methods in molecular biology’; Davis LG、Dibmer MD;Battey Elsevier(1990)、Mayer et al.、(Eds)」Immunochemical methods in cell and molecular biology」Academic Press、London(1987)、or in the series」Methods in Enzymology」、Academic Press、Inc.に記述されている。
【0055】
通常の技術者に公知の標識方法と多くの他の標識がある。本発明で使用されうる標識種類としては、例えば、酵素、放射性同位元素、コロイド金属、蛍光化合物、化学発光化合物、および生物発光化合物がある。
【0056】
通常使用される標識は、蛍光物質(例えば、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッドなど)、酵素(例えば、わさびペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ)、放射性同位元素(例えば、32Pまたは125I)、ビオチン、ジゴキシゲニン、コロイド金属、化学発光または生物発光化合物(例えば、ジオキシセタン、ルミノールまたはアクリジニウム)を含む。酵素またはビオチニル基の共有結合法、ヨウ化法、リン酸化法、ビオチン化法などのような標識方法が当分野でよく知られている。
【0057】
検出方法としては、オートラジオグラフィー、蛍光顕微鏡、直接および間接酵素反応などがあり、これらに限定されない。通常使用される検出解析法では、放射性同位元素または非-放射性同位元素の方法がある。これらは、その中でもウエスタンブロッティング、オーバーレイ-解析法、RIA(Radioimmuno Assay)およびIRMA(Immune Radioimmunometric Assay)、EIA(Enzyme Immuno Assay)、ELISA(Enzyme Linked Immuno Sorbent Assay)、FIA(Fluorescent Immuno Assay)およびCLIA(Chemioluminescent Immune Assay)がある。
【0058】
一側面においては、本発明は、抗原/抗体複合体が形成されうる条件下で検体から分離された試料を、本発明のウイルスまたはその抗原と接触させる段階と、抗原/抗体複合体の形成を検出する段階とを含む、重症熱性血小板減少症ウイルス抗体を検出する方法に関するものである。
【0059】
一側面においては、本発明は、本発明のウイルスまたはその抗原を免疫反応を誘導するのに有効な量でヒトでない動物に投与する段階と、前記重症熱性血小板減少症ウイルスに対する抗体を含有する抗血清または血漿を収集する段階を含む、ヒトでない動物から重症熱性血小板減少症ウイルスに対する抗血清を生産する方法に関するものである。
【0060】
一側面においては、本発明は、検体から分離された試料を、本発明のウイルスまたはその抗原と接触させて抗原-抗体複合体を形成させる段階と、前記複合体の形成を検出する段階とを含む、重症熱性血小板減少症の診断に関する情報を提供する方法に関するものである。
【発明の実施をするための最良の形態】
【0061】
下記の実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明の内容を具体化するためのものに過ぎず、これにより本発明が限定されるものではない。
【0062】
実施例1.ウイルスの分離
【0063】
大学病院の来院患者のうち、重症熱性血小板減少症の症状が疑われる患者の血液、動物(ヤギおよび捨て犬)の血液および野生ダニ均質物を用いて、real time PCR、PCRおよびELISA解析で、SFTSV(severe fever thrombocytopenia syndrome virus、重症熱性血小板減少症ウイルス)の陽/陰性を確認した。具体的には、ウイルス感染の前日に、VeroE6細胞を12ウェルプレートに分注した後、細胞密度が60%超になるように培養した後、細胞をPBSで洗浄し、感染が疑われる患者の血清300μl(血液全体を3000rpmで20分間遠心分離して得られた血清)を1時間処理して、感染させた。感染後に血清を除去し、PBSで細胞を洗浄した後、1%FBS DMEM培地に交換し、2週間培養した。2週間後、RT-PCR(reverse transcription後、real time PCRで確認)および免疫蛍光解析法(immuno fluoresence assay)(実験室で生産したmouse SFTSV NP抗体を1次抗体およびFITCがcounjugationされた抗体を2次抗体として使用)でウイルス分離の有無を確認し、ウイルスが分離されない場合には、最初に感染させた上澄み液を別のVeroE6細胞に感染させる方法でウイルスを分離した。分離したウイルスは、CB3/2016、CB7/2017およびCB6/2016と命名した。
【0064】
実施例2.分離されたウイルスの遺伝子解析
【0065】
Vero E6細胞を用いて分離されたウイルスCB3/2016、CB7/2017およびCB6/2016をそれぞれ逆転写(Reverse-transcription)、PCRおよびNGS(Next generation sequencing)して、それぞれのL、M、S(NP、NS)遺伝子の全長配列を確認した。具体的には、それぞれのウイルスからRNAを抽出し、逆転写(Reverse-transcription)PCRを使ってcDNAを作製した。以後、それぞれのSFTSウイルスのL、M、S遺伝子に対してPCRを行い、それぞれの全長遺伝子を獲得した。遺伝子配列解析のためNGS方法を使って、各ウイルスのL、M、S遺伝子をillumina nextera XT kitを使用してtagmentationおよびindex PCRをilluminaで提供するプロトコルに従って行った。それから、最終サンプルをillimina miniseq機器を用いて、Fasta Qファイルを生成し、生成されたファイルの遺伝子配列をCLC main workbench programを用いて、それぞれの全長遺伝子配列を解析した。確認された遺伝子配列を韓国、中国、日本で分離された従来のウイルスの遺伝子と統合して、遺伝子解析した結果、本発明において分離したSFTSV等CB1、CB3およびCB4は、現在、中国や韓国で分離されたウイルス(YuXJ et al.、N.Engl.J.Med.2011)および韓国で初めて分離された(Gangwon/2012)ウイルスの遺伝子とは、遺伝的に異なる新しい遺伝子型(genotype)のSFTSVであることを確認した。併せて、MEGA 7.0プログラムを使って本発明のウイルスと韓国、中国、日本で分離されるウイルスをL、M、S(NP、NS)遺伝子に対して系統学的遺伝子解析を進めた結果、本発明のウイルスは、韓国国内の分離株が最も多く属するグループBに近かったが、遺伝子L、MおよびS(NPとNS)遺伝子から従来のウイルスと差異を示し、少なくとも3つ以上のグループに細分化して区分されていることが確認できた(図1~4)。そこで、本発明で分離した三つの遺伝子型SFTSVをB-1(CB3/2016)、B-2(CB7/2017)およびB-3(CB6/2016)で遺伝子型を細分化して命名した。
【0066】
実施例3.ウイルス別L、MおよびS遺伝子アミノ酸配列の差異を確認
【0067】
3-1.L遺伝子アミノ酸配列の差異
【0068】
本発明において分離した新たな細部遺伝子型B-1、B-2およびB-3のウイルスのL、MおよびS遺伝子のORF(open reading frame)を基準にアミノ酸配列を解析した結果、LおよびM遺伝子から差異を示した。具体的には、B遺伝子型のうち、L遺伝子のORF(6255bp)は、RdRpを暗号化しており、本発明の遺伝子型B-1ウイルスは、RdRpの1447番のアミノ酸がバリンまたは1913番のアミノ酸がリジンとして示され、遺伝子型B-2ウイルスおよびB-3ウイルスは、RdRpの1447番のアミノ酸がイソロイシンまたは1913番のアミノ酸がアルギニンとして示された(図5Aおよび表1)。
【0069】
【表1】
【0070】
3-2.M遺伝子アミノ酸配列の差異
【0071】
本発明において分離した新たな細部遺伝子型B-1、B-2およびB-3のウイルスのL、MおよびS遺伝子のアミノ酸配列を分析した結果、LおよびM遺伝子の差異を示した。具体的には、B遺伝子型のM遺伝子のORF(3222bp)は、GnおよびGcタンパク質を暗号化しており、本発明の遺伝子型B-1ウイルスは、M遺伝子のORFの83番のアミノ酸がチロシン、404番のアミノ酸がスレオニンまたは904番のアミノ酸がバリンとして示され、遺伝子型B-2ウイルスは、M遺伝子のORFの83番のアミノ酸がフェニルアラニン、404番のアミノ酸がスレオニンまたは904番のアミノ酸がイソロイシンとして示され、遺伝子型B-3ウイルスは、M遺伝子のORFの83番のアミノ酸がチロシン、404番のアミノ酸がアラニンまたは904番のアミノ酸がイソロイシンとして示された(図5Bおよび表1)。
【0072】
実施例4.遺伝子型別の遺伝子の相同性の比較
【0073】
現在、韓国で分離されるSFTSVを本発明の細部遺伝子型B-1、B-2およびB-3を含む遺伝子解析を行い、各遺伝子型別L、MおよびS遺伝子の相同性を比較解析した。その結果、同じ遺伝子型に属するウイルス間には約96~100%の遺伝子の相同性(nucleotide level)を示すのに対し、互いに異なる遺伝子型のウイルス間には91~97%と比較的低い遺伝子の相同性が示された(表2~5)。また、本発明の遺伝子型B-3グループの場合には、同じグループ内での相同性が約95~100%程度と比較的低い相同性を示し、B-3グループ内でも、他の遺伝子型グループを細分化することができる可能性が確認された。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
実施例5.遺伝子型別交差免疫原性の解析及びワクチン効果の確認
【0079】
5-1.遺伝子型別交差免疫原性の解析
各genotype別交差免疫原性を比較解析するために、FRNT50(fifty percent of Focu s reduction neutralization test)を行った。具体的には、本発明において分離した新たな細部遺伝子型B-1、B-2およびB-3のウイルスを大量に増殖させた後、それぞれホルマリン(0.05%)を添加して不活化した後、不活化の有無を3回のウイルス分離(isolation)により確認した。不活化した前記ワクチン(inactivated whole vaccine)を20%のスクロース(sucrose)を活用し、超遠心分離によりタンパク質を生産した後、これをフェレットに免疫化した。2週間後、フェレットに追加免疫を実施した後、(2番の免疫2週間隔)、血を採血して血清を分離した。分離した血清を30分間56℃で不活性化させた後、10分の1に希釈した後、2倍ずつ階段希釈した。200FFU/mlで希釈したウイルスを、階段希釈したウイルスと1:1で37℃で反応させた。6ウェルプレートに分注したVeroE6細胞を洗浄した後、前記反応させたウイルスで感染させ、1時間後に洗浄した後、1%FBSが含有された0.8%DMEMアガロースゲルを細胞に注いだ。感染5日後、ホルマリンを活用して固定し、3時間後、3回洗浄を行った後、10%triton x-100を5分ずつ室温で処理した。その後、3回洗浄し、5%BSAでブロッキングを行った。生産したpolyclonal NP antibodyを1次抗体として用い、インキュベーションした後、3回洗浄し、2次抗体としてHRP conjugated抗体を1時間反応させ洗浄した後、DABで発色して、結果を確認した。ウイルスのみ感染させたウェルのfoucus formingより50%減少した値までを有効と解釈した。
【0080】
【表6】
【0081】
B-1、B-2およびB-3の交差免疫原性を確認した結果、前記表6の通り、各ウイルスに対して最も高い力価が示された。したがって、同一genotypeに属するウイルス間には高い交差中和反応を見せたが、各々異なるgenotype間のウイルスには、比較的低い中和反応を示すことが分かった。
【0082】
5-2.ワクチン効果の確認
【0083】
本発明において分離された新たな細部遺伝子型B-1、B-2およびB-3のウイルスを大量に増殖させた後、それぞれホルマリン(0.05%)を添加して不活化した後、不活化するか否かを3回ウイルス分離(isolation)を通じて確認した。不活化した前記ワクチン(inactivated who le vaccine)を2週間隔で2回、各ウイルスに対してフェレット5匹ずつに免疫化した後、各ウイルスに対して1×107.6/mlの攻撃接種をした。
【0084】
攻撃接種の結果、対照群の動物は、10日以内にすべての攻撃ウイルスに感染した時には斃死したが、ワクチンを投与したグループの全フェレットは生存し、体温の増加、体重減少を感染2-8日後、確認することができたが、それ以降は回復することを確認することができた(図6)。
【0085】
以上の結果を要約すると、SFTSVにはさまざまな遺伝子を持つ数々の遺伝子型ウイルスが存在し、同じ遺伝子型に属するウイルス間には比較的高い遺伝子の相同性が高い交差免疫反応を示すが、他の遺伝子型のウイルスとは比較的低い遺伝子の相同性および低い交差免疫原性を示したので、様々な遺伝子型に対する交差免疫原性を示すためには、ある特定遺伝子型のウイルスだけに制限された防御能を示すことを類推することができる。
【0086】
したがって、本発明の細部遺伝子型B-1、B-2およびB-3に属する新規なウイルスCB3/2016、CB7/2017およびCB6/2016は、遺伝子型BのSFTSVに対する交差免疫原性に優れたワクチンとして有用に利用することができるものと考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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