(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】水性フレキソインキ、印刷物及び積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 11/102 20140101AFI20230418BHJP
B41M 1/04 20060101ALI20230418BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
C09D11/102
B41M1/04
B32B27/40
(21)【出願番号】P 2022081230
(22)【出願日】2022-05-18
【審査請求日】2022-06-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 里多朗
(72)【発明者】
【氏名】高位 博明
(72)【発明者】
【氏名】沼野 美砂
(72)【発明者】
【氏名】永田 裕香
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-031572(JP,A)
【文献】特開2021-169547(JP,A)
【文献】特開2018-199802(JP,A)
【文献】特開2013-234214(JP,A)
【文献】特開2013-249401(JP,A)
【文献】特開平06-179845(JP,A)
【文献】特開平07-292307(JP,A)
【文献】特開2017-149858(JP,A)
【文献】特開2020-066698(JP,A)
【文献】特開2001-040059(JP,A)
【文献】特開2016-155336(JP,A)
【文献】特開2021-161299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-13/00
B41B 1/00-3/18
B41B 7/00-9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ウレタン樹脂及び水を含む水性フレキソインキであって、
前記水性ウレタン樹脂が、
ポリヒドロキシ酸由来の酸基を有し、
かつ、
ポリエチレングリコール由来の構成単位、並びに、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコールを除く)及びポリカーボネートポリオールより選ばれる少なくとも一種のポリオール由来の構成単位を含み、
前記水性ウレタン樹脂全質量中の前記ポリエチレングリコール由来の構成単位の含有率が、37~60質量%であり、
前記水性ウレタン樹脂の酸価が、5~30mgKOH/gであり、
前記水性ウレタン樹脂の重量平均分子量が、8000~24000である、水性フレキソインキ。
【請求項2】
更に、沸点130~280℃であるグリコール溶剤及び/又はグリコールモノアルキルエーテル溶剤をインキ総質量中に0.2質量%以上、6質量%未満含有する、請求項1に記載の水性フレキソインキ。
【請求項3】
水性ウレタン樹脂の
ウレタン結合濃度が、 1.4~3.0mmol/gである、請求項1又は2に記載の水性フレキソインキ。
【請求項4】
基材上に請求項1又は2に記載の水性フレキソインキからなる印刷層を有する、印刷物。
【請求項5】
基材1、請求項1又は2に記載の水性フレキソインキからなる印刷層、及び基材2を順次有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性フレキソインキ、印刷物及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキソ印刷方式は、凸版印刷の一種であり、アニロックスロールを介して樹脂製の凸版にインキを転移し、更に凸版からプラスチック基材等にインキを再転移させる印刷方式であり、高速印刷性に優れ、インキ転移量が少量であっても細かい文字やシャープ模様の表現を再現することができる。フレキソ印刷方式は、従来は段ボールや紙袋といった紙基材への印刷で主に使用されてきたが、最近はプラスチックフィルムを用いた包装材においてもニーズが高まっている。
【0003】
フレキソ印刷法では、インキが供給されてから基材までの転移回数、時間あるいは距離が長いため、印刷環境によって版絡み・転移不良等の印刷トラブルが懸念される。「版絡み」とは、フレキソ版上の凸部・凹部にインキの堆積物が生成することにより、印刷基材において本来印刷されない部分にまでインキが転移してしまう印刷不良である。
【0004】
水性フレキソインキの印刷において、上記「版絡み」は、インキがフレキソ版上で乾燥しやすくなると発生する。そのためインキの乾燥抑制が必要であり、インキの乾燥を遅延させる添加剤や沸点の高い有機溶剤(遅口溶剤)等が用いられる。しかし、プラスチックフィルムに印刷する場合には、紙基材への印刷と異なり基材浸透による媒体(水や有機溶剤)の乾燥ができないため、印刷層に残留する媒体によりブロッキングを起こす可能性がある。したがって、フレキソインキの設計は印刷方法に応じた特有の設計が必要である。
【0005】
特許文献1では、版絡み性を良化させる手段として、バインダー樹脂とは別に数平均分子量が200~7000のポリエーテルポリオールをインキ中に1~20質量%含有した水性フレキソインキが開示されている。しかし当該インキではプラスチックフィルムへ印刷した際に前記ポリオールが残留することから印刷層の脆弱化も考えられ、保管条件によっては耐ブロッキング性低下が懸念される。
【0006】
また、特許文献2では、版絡み性を良化させる手段として、沸点130~280℃であるグリコール溶剤及び/又はグリコールモノアルキルエーテル溶剤をインキ総質量中に6~30質量%含有する水性フレキソインキが提案されている。しかし、更なる印刷適性(版絡み性)、耐ブロッキング性の向上が望まれるとともに、上記物性と重ね網点ムラの抑制との両立に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2020-066698号公報
【文献】特開2019-203051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
印刷適性(版絡み性等)、耐ブロッキング性が良好であり、更に、印刷物における重ね網点ムラの少ない水性フレキソインキを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を鑑みて鋭意検討した結果、所定の水性フレキソインキを使用することで当該課題を解決することを見出し、本発明を成すに至った。
【0010】
すなわち本発明は、水性ウレタン樹脂及び水を含む水性フレキソインキであって、
前記水性ウレタン樹脂が、酸基を有し、かつ、ポリエチレングリコール由来の構成単位を含み、
前記水性ウレタン樹脂の重量平均分子量が、8000~24000である、水性フレキソインキに関する。
【0011】
また本発明は、水性ウレタン樹脂全質量中にポリエチレングリコール由来の構成単位を30~60質量%含有する、上記の水性フレキソインキに関する。
【0012】
また本発明は、水性ウレタン樹脂全質量中にポリエチレングリコール由来の構成単位を37~60質量%含有する、上記の水性フレキソインキに関する。
【0013】
また本発明は、水性ウレタン樹脂の酸価が、5~30mgKOH/gである、上記の水性フレキソインキに関する。
【0014】
また本発明は、更に、沸点130~280℃であるグリコール溶剤及び/又はグリコールモノアルキルエーテル溶剤をインキ総質量中に6質量%未満含有する、上記の水性フレキソインキに関する。
【0015】
また本発明は、基材上に上記の水性フレキソインキからなる印刷層を有する、印刷物に関する。
【0016】
また本発明は、基材1、上記の水性フレキソインキからなる印刷層、及び基材2を順次有する積層体に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、印刷適性(版絡み性等)、耐ブロッキング性が良好であり、更に、印刷物における重ね網点ムラの少ない水性フレキソインキを提供することが可能となった。
【0018】
「重ね網点ムラ」は、重ね刷りした際に、下地の網点ドットゲインが不均一に変化しムラ状に見える現象である。本現象はPETフィルムに代表される比較的表面処理度が高いフィルムで、かつフィルム面内に処理度のムラがある場合に発生しやすい。なお、「重ね網点ムラ」は重ね印刷である場合に観測され、単一の色相で判定される「ドットゲイン」とは異なる課題である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する事項の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0020】
以下の説明において、水性フレキソインキを単に「フレキソインキ」や「インキ」と記載する場合があるが同義である。また、水性フレキソインキからなる印刷層は、単に「印刷層」、「インキ被膜」、「インキ塗膜」又は「インキ層」と記載する場合があるが同義である。
【0021】
本発明の水性フレキソインキは、水性バインダー樹脂として所定の水性ウレタン樹脂を用いる。インキの再溶解性が向上し、版絡み性が良好となることが期待できる。また、重ね網点ムラを抑制しかつ良好な耐ブロッキング性を期待できる。バインダー樹脂とは、インキに含まれる結着樹脂をいう。なお「水性」とは水溶性の状態であってもよいし、エマルジョン状態であってもよい。
【0022】
<水性ウレタン樹脂>
本発明に使用される水性ウレタン樹脂は、酸基を有し、かつ、ポリオール由来の構成単位を含み、前記ポリオールが、ポリエチレングリコールを含有してなり、水性ウレタン樹脂の重量平均分子量が8000~24000であることが必要であり、好ましくは13000~21000、さらに好ましくは15000~19000である。耐ブロッキング性、印刷適性及び重ね網点ムラ抑制の両立の観点から、当該範囲が好ましい。
【0023】
上記水性ウレタン樹脂としてはポリオール、ポリヒドロキシ酸及びポリイソシアネートにより合成された水性ウレタン樹脂である形態や、ポリオール、ヒドロキシ酸及びポリイソシアネートにより合成された末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとポリアミンにより鎖延長されたポリウレタンウレア構造を含む水性ウレタン樹脂である形態が好ましい。ただし、これらに限定されない。
【0024】
なお、水性ウレタン樹脂において、酸基、上記の重量平均分子量範囲、及び後述のポリエチレングリコール由来の構成単位の含有量を同時に具備すれば、まとまりある構成として作用して版絡み性及び耐ブロッキング性をより良化させ、重ね網点ムラを抑制できると考えられる。なお、以下の酸価の要件を具備することが更に好ましく、重ね網点ムラを特に抑制できる。
上記作用は、水性ウレタン樹脂の分子内において、水溶性部位がある程度均一に存在してウレタン樹脂全体の溶解性に寄与していることによると考えられるが、当該作用・機能は本願発明を特段限定するものではない。
【0025】
水性ウレタン樹脂の酸価は、5~30mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは10~28mgKOH/gであり、さらに好ましくは15~25mgKOH/gである。水性フレキソインキの重ね網点ムラ抑制性と版絡み性が向上するからである。
【0026】
なお、酸基に関連し、上記範囲の酸価を有する水性ウレタン樹脂を先刷り(下地)インキのバインダー樹脂として用いた際に、更にインキを重ね印刷してもムラが発生しにくい傾向にある。本現象は樹脂の酸基と表面処理されたフィルムの活性官能基との相互作用に因るものと推察しているが、本発明は当該考察によって限定されない。
【0027】
印刷適性とラミネート強度の両立の観点で、水性ウレタン樹脂のウレタン結合数は1.4~3.0mmol/gであることが好ましく、1.8~2.6mmol/gであることがなお好ましい。
【0028】
(ポリオール)
水性ウレタン樹脂の合成に用いるポリオールは、当該ウレタン樹脂の構成単位となり、当該ポリオールはポリエチレングリコールを必須成分とする。
ポリエチレングリコール以外のポリオールは、以下に限定されないが、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコールを除く)、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ダイマージオール、水素添加ダイマージオール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4シクロヘキサンジメタノール、1,4シクロヘキサンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらのポリオールは、単独で用いても、2種以上併用してもよい。
水性ウレタン樹脂はポリエチレングリコール、並びに、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコールを除く)及びポリカーボネートポリオールより選ばれる少なくとも一種のポリオールからなる構成単位を含有することが好ましい。
上記ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコールを除く)及びポリカーボネートポリオールの数平均分子量は400~5000あるいは600~2000であることが好ましい。
【0029】
(ポリエーテルポリオール)
上記ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコールは後述する)は、水酸基を複数有し、エーテル構造を有する化合物である。ポリエーテルポリオールとしては、ポリエーテル構造を有するポリオールであれば特に限定されず、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びこれらの共重合のポリエーテルポリオール等が好適に挙げられる。ポリエーテルポリオールは分岐構造を有していてもよいし、水酸基を複数個有していてもよい。また、トリグリセリン等のポリグリセリン、ポリオキシエチレングリセリン、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリメチロールプロパン、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシプロピレンソルビット等も挙げられる。
上記のうち好ましくはポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコールであり、ポリテトラメチレングリコールであることが更に好ましい。
【0030】
(ポリエチレングリコール)
上記ポリエチレングリコールは、水酸基を複数有し、エチレンオキシド単位(-OCH2―CH2-)を2単位以上有する化合物である。後述するポリヒドロキシ酸のみによる水溶化と比較し、ポリエチレングリコールを併用することで、共に水溶化に寄与し、重ね網点ムラの発生を抑えつつ良好な印刷適性を保持できる。この化合物中のエチレンオキシド繰り返し単位は数平均分子量が400以上、5000以下であることが望ましい。水性ウレタン樹脂全質量中のポリエチレングリコール由来の構成単位の含有量は、好ましくは30~60質量%であり、より好ましくは33~60%であり、なお好ましくは37~55質量%であり、さらに好ましくは38~50質量%であり、特に好ましくは40質量%~50質量%である。
【0031】
(ポリヒドロキシ酸)
上記ポリヒドロキシ酸は、以下に限定されないが、カルボキシル基を含有するポリオールを用いることができる。ポリヒドロキシ酸は、例えば2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール吉草酸等のジメチロールアルカン酸等が好適に挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。ポリヒドロキシ酸は水性ウレタン樹脂の製造工程の中で用いられ、カルボキシル基はイソシアネート基とは反応し難く、イソシアネート基はおよそ水酸基のみと反応するので、得られた水性ウレタン樹脂側鎖にカルボキシル基が導入され、酸基を有する水性ウレタン樹脂が得られる。特に、反応性、溶解性の点からはジメチロールプロピオン酸、2、2ージメチロールブタン酸が好ましい。水性ウレタン樹脂の酸基は中和されて水性化されることが好ましい。ウレタン樹脂の親水性向上にはポリエチレングリコール由来の構成単位も寄与する。
【0032】
(ポリイソシアネート)
水性ウレタン樹脂の合成に用いられるポリイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等が好適に挙げられる。なおこれらは3量体となってイソシアヌレート環構造となっていてもよい。
芳香族ジイソシアネートとしては、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加された4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。
中でも好ましくはトリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体から選ばれる少なくとも一種である。これらのポリイソシアネートは単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
(ポリアミン)
上記ポリアミンとして利用可能な化合物としては、各種公知のアミン類であり、例えば、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、さらにダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等が好適に挙げられ、これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
(反応停止剤)
水性ウレタン樹脂の合成においては、上記ポリアミンと併用して反応停止剤を使用することもできる。かかる反応停止剤としては、例えば、ジ-n-ジブチルアミン等のジアルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、N-ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N-ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、N-ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するアミン類、さらにグリシン、アラニン、グルタミン酸、タウリン、アスパラギン酸、アミノ酪酸、バリン、アミノカプロン酸、アミノ安息香酸、アミノイソフタル酸、スルファミン酸等のモノアミン型アミノ酸類が挙げられる。
【0035】
(中和剤)
水性ウレタン樹脂の水性化のために、側鎖の酸基は塩基性化合物で中和されていることが好ましい。当該塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、モルホリン等が挙げられ、これらは1種、又は2種以上の組み合わせで用いられる。印刷物の耐水性、残留臭気等の点からアンモニアが好ましい。
【0036】
(水性ウレタン樹脂の製造)
本発明に用いられる水性ウレタン樹脂は、公知の方法により適宜製造される。例えば、イソシアネートに対して不活性でかつ親水性の有機溶剤においてウレタン樹脂を合成した後当該有機溶剤を水に置換する方法、有機溶剤を使用しないで合成反応を行う、無溶剤合成法等が挙げられる。例えば特開2013-234214号公報に記載の手法を適宜使用可能である。
【0037】
<その他樹脂>
本発明の水性フレキソインキは、水性ウレタン樹脂以外に補助的に「その他樹脂」を含んでもよい。その他樹脂の例としては、上記水性ウレタン樹脂の要件を満たさない水性ウレタン樹脂、水性アクリル変性ウレタン樹脂、水性アクリル樹脂、水性スチレン-アクリル酸共重合樹脂、水性スチレン-マレイン酸共重合樹脂、水性エチレン-アクリル酸共重合樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性シェラック、水性ロジン変性マレイン酸樹脂、水性塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、水性塩化ビニル-アクリル酸共重合樹脂、水性塩素化ポリプロピレン樹脂、水性ヒドロキシエチルセルロース樹脂、水性ヒドロキシプロピルセルロース樹脂、水性ブチラール樹脂等を好適に挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0038】
(有機溶剤)
本発明の水性フレキソインキは、揮発性成分として水を含み、揮発成分のうち水の含有量が最も多いことが好ましいが、その目的及び効果に支障のない範囲で有機溶剤を含んでもよい。有機溶剤を含む場合は、アルコール系有機溶剤、グリコール系有機溶剤、グリコールエーテル系有機溶剤であることが好ましい。
アルコール系有機溶剤としては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-ブタノール、t-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール等が挙げられ、グリコール系有機溶剤としてはエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられ、またグリコールエーテル系有機溶剤としてはエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
本発明の水性フレキソインキにおいては、乾燥不良を抑制することができるため、有機溶剤の含有量は合計で、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下で使用することが更に好ましい。なお、上記の有機溶剤の好ましい含有量は、0質量%である場合を含むが、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上である。
【0039】
(沸点130~280℃であるグリコール溶剤及び/又はグリコールモノアルキルエーテル溶剤)
本発明の水性フレキソインキが有機溶剤を含む場合、上記有機溶剤の中でも、沸点130~280℃であるグリコール溶剤及び/又はグリコールモノアルキルエーテル溶剤が好ましい。
当該グリコール溶剤および/またはグリコールモノアルキルエーテル溶剤の含有量は、水性フレキソインキ総質量中、合計で6質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下で使用することが更に好ましい。なお、上記の有機溶剤の好ましい含有量は、0質量%である場合を含むが、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上である。
沸点130~280℃であるグリコール溶剤及び/又はグリコールモノアルキルエーテル溶剤の含有量が当該範囲であると、フレキソ版上におけるインキの乾燥に起因する版絡み性が抑制され、更に印刷乾燥後の残留溶剤が少なくなるので版絡み性及び耐ブロッキング性が良好となり、重ね網点ムラが抑制される。
【0040】
<グリコール溶剤>
沸点130~280℃であるグリコール溶剤としては、例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコールその他のアルキレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールその他のジアルキレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコールその他のトリアルキレングリコールが好適に挙げられる。中でもプロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールから選ばれる少なくとも一種を使用することが好ましい。
【0041】
<グリコールモノアルキルエーテル溶剤>
沸点130~280℃であるグリコールモノアルキルエーテル溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルその他のプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルその他のジプロピレンモノアルキルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルその他のトリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルその他のジエチレングリコールモノアルキルエーテルが好適に挙げられ、以上より選ばれる少なくとも一種を使用することが好ましい。
【0042】
(添加剤)
本発明のインキには、必要に応じて顔料や消泡剤、増粘剤、レベリング剤、ワックス、紫外線吸収剤等の添加剤や、アルコール系、ケトン系、エステル系等の有機溶剤等を用いることができる。
【0043】
<硬化剤>
本発明の水性フレキソインキには、硬化剤を用いて水性ウレタン樹脂を架橋させることで、基材への密着性向上、インキ塗膜のラミネート強度、耐水性向上の効果を得ることができる。当該水性ウレタン樹脂はカルボキシル基等の酸性基を有するため、硬化剤としてはヒドラジン系化合物、カルボジイミド化合物又はエポキシ化合物を使用することが好ましい。
ヒドラジン系化合物としてはアジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドその他のジヒドラジド化合物が好ましい。
カルボジイミド化合物とは、カルボジイミド基を有する化合物であり、例えば日清紡社製カルボジライトE-02、E-03A、SV-02、V-02、V02-L2、V-04等が挙げられる。
エポキシ化合物とはエポキシ基を有する化合物をいい、例えばADEKA社製アデカレジンEP-4000、EP-4005、7001等の脂環式エポキシが挙げられる。
当該硬化剤は水性フレキソインキ総質量に対して0.1~5質量%で使用することが好ましく、0.1~3質量%で使用することがより好ましい。
【0044】
(水性フレキソインキの製造)
水性フレキソインキの製造方法の一例としては、例えば、顔料、水性ウレタン樹脂及び水を混合した後、ボ-ルミル、サンドミルその他のビーズミル、アトライタ-等で分散処理(混練)した後、添加剤等を混合する方法がある。例えば特開2013-234214号公報に記載の手法を適宜使用可能である。混練においては、必要に応じて顔料分散剤を使用することもできる。
【0045】
(基材1)
本発明の印刷物に使用できる基材としてはプラスチック基材でも紙基材でもよく、特に限定は無いが、好ましくはプラスチック基材であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸等のポリエステル、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のポリスチレン系樹脂、ナイロン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セロハン、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状の基材が挙げられる。また、シリカ、アルミナ、アルミニウム等の無機化合物をポリエチレンテレフタレート、ナイロンフィルムに蒸着した蒸着基材も用いることができ、更に蒸着処理面がポリビニルアルコール等によるコート処理を施されていても良い。基材は、印刷される面(印刷層と接する面)が易接着処理されていることが好ましく、易接着処理とは、例えば、コロナ放電処理、紫外線/オゾン処理、プラズマ処理、酸素プラズマ処理、プライマー処理等が挙げられる。例えばコロナ放電処理では基材上に水酸基、カルボキシル基、カルボニル基等が発現する。水素結合を利用できるためインキ中には水酸基やアミノ基、カルボジイミド基といった官能基を有する化合物を含むことが好ましい。
【0046】
(基材2)
本発明で用いられる基材2は基材1と同一でもよいし、異なっていてもよい。好ましくは未延伸のプラスチックフィルムであることが好ましい。ヒートシール機能を持たせるためである。
【0047】
前記方法で製造された水性フレキソインキの粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
【0048】
<フレキソ印刷方法>(アニロックスロール)
本発明のフレキソ印刷物の製造方法に使用されるフレキソ印刷に使用されるアニロックスとしては、セル彫刻が施されたセラミックアニロックスロール、クロムメッキアニロックスロール等を使用することができる。優れたドット再現性を有する印刷物を得るために印刷する際に使用する版線数の5倍以上好ましくは6倍以上の線数を有するアニロックスロールが使用される。例えば、使用する版線数が75lpiの場合は375lpi以上のアニロックスが必要であり、版線数が150lpiの場合は750lpi以上のアニロックスロールが必要である。アニロックス容量については本発明の水性フレキソインキの乾燥性とブロッキング性の観点から1-8cc/m2の容量、好ましくは2~6cc/m2のアニロックスロールである。
【0049】
<フレキソ印刷方法>(フレキソ版)
本発明のフレキソ印刷物の製造方法に使用されるフレキソ印刷に使用される版としてはUV光源による紫外線硬化を利用する感光性樹脂版又はダイレクトレーザー彫刻方式を使用するエラストマー素材版が挙げられる。フレキソ版の画像部の形成方法に関わらず版のスクリーニング線数において75lpi以上のものが使用される。版を貼るスリーブやクッションテープについては任意のものを使用することができる。
【0050】
<フレキソ印刷方法>(印刷機)
フレキソ印刷機としてはCI型多色フレキソ印刷機、ユニット型多色フレキソ印刷機等があり、インキ供給方式についてはチャンバー方式、2ロール方式を挙げることができ、公知の印刷機を使用することができる。
【0051】
(積層体、積層体の製造方法)
本発明の積層体は、上記印刷物の印刷層に、更にフィルム層が順に貼り合わされたものである。なお、積層体は接着剤層を含む積層体が好ましく、基材1、印刷層、接着剤層、基材2を順に有する積層体が好ましい。接着剤層は、アンカーコート剤、ウレタン系ラミネート接着剤、溶融樹脂等からなる層が挙げられる。アンカーコート剤(AC剤)としてはイミン系AC剤、イソシアネート系AC剤、ポリブタジエン系AC剤、チタン系AC剤が挙げられ、ウレタン系ラミネート接着剤としてはポリエーテルウレタン系ラミネート接着剤、ポリエステル系ラミネート接着剤等が挙げられ、有機溶剤を含むものと、無溶剤のものとがある。また、溶融樹脂としては、溶融ポリエチレン等が挙げられる。
積層体の製造方法としては、例えば、印刷層上に、イミン系、イソシアネート系、ポリブタジエン系、チタン系等の各種アンカーコート剤を介して、溶融ポリエチレン樹脂を積層する通常のエクストルジョンラミネート(押し出しラミネート)法、印刷面にウレタン系等の接着剤を塗工し、その上にプラスチックフィルムを積層するドライラミネート法やノンソルベントラミネート法、また印刷面に直接溶融ポリプロピレンを圧着して積層するダイレクトラミネート法等、公知のラミネート工程により得られる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施例、比較例等を挙げて具体的に説明する。以下の記載において「部」は質量部を示す。「%」とは特段の断りのない限り質量%を表す。
【0053】
重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(Shodex株式会社製GPC-104)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:ShodexLF-404を2つ直列に連結して使用した。
検出器:ShodexRI―74S(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.3mL/分
【0054】
酸価は樹脂固形分1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数であり、乾燥させた樹脂について、JISK2501に記載の方法に従い、水酸化カリウム・エタノール溶液で電位差滴定により算出した。
【0055】
[合成例1]
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、温度計を備えた4ツ口の2000mlフラスコに数平均分子量1000(水酸基価112.2mgKOH/g)のポリテトラメチレングリコール(「PTMG1000」)25.6部、数平均分子量1000(水酸基価112.2mgKOH/g)のポリエチレングリコール(「PEG1000」)16.9、数平均分子量600(水酸基価187.0mgKOH/g)のポリエチレングリコール(「PEG600」)27.7部、ジメチロールブタン酸(「DMBA」)5.4部を仕込み、乾燥窒素でフラスコ内を置換し、撹拌しながらイソホロンジイソシアネート(「IPDI」)24.4部を加え100℃まで徐々に昇温した。更に180分間反応させ水性ウレタン樹脂を得た。次に冷却しながらイソプロピルアルコールを50部加えた後に、10%アンモニア水6.7部を含むイオン交換水350部を加え、固形分20質量%である水性ウレタン樹脂WU1溶液(重量平均分子量16700)を500部得た。
【0056】
[合成例2~14]
表1に記載された部数及び仕込み比率にて、合成例1と同様の操作で水性ウレタン樹脂WU2~WU14溶液を得た。
【0057】
[比較合成例1、2]
表1に記載された部数及び仕込み比率にて、合成例1と同様の操作で水性ウレタン樹脂WU15、WU16溶液を得た。
【0058】
【0059】
表1において、PTMG1000は平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、PEG1000は平均分子量1000のポリエチレングリコール、PEG600は平均分子量600のポリエチレングリコール、PEG400は平均分子量400のポリエチレングリコール、DMBAはジメチロール酪酸、DMPAはジメチロールプロピオン酸、IPDIはイソホロンジイソシアネートを表す。
【0060】
なお、各ウレタン樹脂のウレタン結合密度は2.2mmol/gとした。
【0061】
<印刷インキ(墨インキ)の調製>
(墨インキ実施例1a)(S-1)
カーボンブラック20部、水性ウレタン樹脂WU1溶液50部、蒸留水19.3部、ノルマルプロパノール5部、プロピレングリコール3部、10%アンモニア水0.3部をアイガーミル(アイガー社製)にて10分間分散し、表面調整剤0.2部、消泡剤0.05部、ポリエチレンワックス2部、アジピンサンジヒドラジド0.2部を加え水性フレキソインキ組成物を得た。当該水性フレキソインキ組成物を水/イソプロピルアルコール=1/1の混合溶剤を用いてザーンカップ#4(離合社製)で15秒になるように調整し、評価用の水性フレキソインキ組成物を得た。
【0062】
[実施例2a~20a](S-2~S-20)
実施例1の方法に従って、合成例2~14で得た水性ウレタン樹脂溶液を用いて同様にS-2~S-20を作製した。配合組成を表2に示す。
【0063】
[比較例1aa、2aa](C-1、C-2)
実施例1の方法に従って、比較合成例15、16で得た水性ウレタン樹脂溶液を用いて同様にC-1、C-2を作製した。配合組成を表2に示す。
【0064】
【0065】
<印刷インキ(白インキ)の調製>
(白インキ実施例1b)(WS-1)
酸化チタン37部、水性ウレタン樹脂WU1溶液42部、蒸留水10.3部、ノルマルプロパノール5部、プロピレングリコール3部、10%アンモニア水0.3部をアイガーミル(アイガー社製)にて10分間分散し、表面調整剤0.2部、消泡剤0.05部、ポリエチレンワックス2部、アジピンサンジヒドラジド0.2部を加え水性フレキソインキ組成物を得た。当該水性フレキソインキ組成物を水/イソプロピルアルコール=1/1の混合溶剤を用いてザーンカップ#4(離合社製)で15秒になるように調整し、評価用の水性フレキソインキ組成物WS-1を得た。
【0066】
[実施例2b~20b](WS-2~WS-20)
実施例1の方法に従って、合成例2~14で得た水性ウレタン樹脂溶液を用いて同様にWS-2~WS-20を作製した。配合組成を表3に示す。
【0067】
[比較例1bb、2bb](WC-1、WC-2)
実施例1の方法に従って、比較合成例15、16で得た水性ウレタン樹脂溶液を用いて同様にWC-1、WC-2を作製した。配合組成を表3に示す。
【0068】
【0069】
上記で得られたインキを用いて版絡み、耐ブロッキング性、重ね網点ムラの試験を行った。
【0070】
<印刷適性(版絡み性)評価>
フレキソ印刷機にて市販の片面コロナ処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PET、厚さ12μm)の処理面上に粘度調整したインキを速度65m/分で印刷した。
フレキソ印刷機(墨インキアニロックス条件:900LPI,3cc/m2、白インキアニロックス条件:300LPI,9cc/m2)にて市販の片面コロナ処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PET、厚さ12μm)の処理面上に速度65m/分で1000m印刷し印刷物を得て、当該印刷物の5%網点部の観察にて印刷適性(版絡み性)の評価を行った。なお印刷層の乾燥条件は色間ドライヤー80℃、トンネルドライヤー80℃とした。
(評価基準)
A:5%網点部の太りが見られず鮮明な画像が形成されている。(優秀)
B:5%網点部にやや太りが認められ、網点同士は繋がっていない。(良好)
C:5%網点部の形状が崩れ、網点の繋がり(ドットブリッジ)が若干認められる。(使用可)
D:5%網点部の形状が崩れ、網点の繋がり(ドットブリッジ)がはっきり認められる(不良)
なお、実用レベルの評価はA~Cである。
【0071】
<耐ブロッキング性>
上記で得られた印刷物について、印刷物の印刷層を有する面とPET基材の非コロナ処理面を重ね、荷重5kg/cm2を負荷し、温度40℃-湿度80%RHの環境で24時間経過後、印刷物と重ね合わせたPET基材を剥がして剥離抵抗又はインキの転移面積を以て耐ブロッキング性を評価した。
(評価基準)
A:印刷物からインキの転移が全く認められず、剥離時の抵抗感もなかった。
B:印刷物からインキの転移が全く認められなかったが、剥離時の抵抗感があった。
C:印刷物からインキの転移が認められ、面積にして10%未満であった。
D:印刷物からインキの転移が、10%以上50%未満の面積で認められた。
E:印刷物からインキの転移が、50%以上の面積で認められた。
なお、実用レベルの評価はA~Cである。
【0072】
<PETフィルム印刷物の重ね網点ムラ評価>
・墨インキの評価
粘度調整した墨インキについて、市販の片面処理PETフィルムにフレキソ印刷(アニロックス条件900LPI,3cc/m2)し、白インキ(アニロックス条件300LPI,9cc/m2)を重ね刷りし印刷物を得た。実施例の墨インキには1bの白インキを重ね刷りし、比較例の墨インキには1bbの白インキを重ね刷りした。印刷速度は65m/分とし、印刷層の乾燥条件は色間ドライヤー80℃、トンネルドライヤー80℃とした。
得られた印刷物の色50%網点/白ベタ重ね部を10cm×10cm四方に切り出し、面内で9点箇所の網点サイズを測定した。測定した網点サイズの最大値と最小値と、下記の式であらわされる面内網点サイズ変化率を用いて評価した。
面内網点サイズ変化率[%]=([網点大きさ最大値(μm)]-[網点大きさ最小値(μm)])/[網点大きさ最小値(μm)]
(評価基準)
A:面内網点サイズ変化率[%]が2%未満。
B:面内網点サイズ変化率[%]が2%以上3%未満。
C:面内網点サイズ変化率[%]が3%以上4%未満。
D:面内網点サイズ変化率[%]が4%以上。
なお、実用レベルの評価はA~Cである。
[白インキの評価]
粘度調整した白インキについて、市販の片面処理PETフィルムにフレキソ印刷(アニロックス条件900LPI,3cc/m2)し、墨インキ(アニロックス条件300LPI,9cc/m2)を重ね刷りし印刷物を得た。実施例の白インキには1aの墨インキを重ね刷りし、比較例のインキには1aaの墨インキを重ね刷りした。印刷速度は65m/分とし、印刷層の乾燥条件は色間ドライヤー80℃、トンネルドライヤー80℃とした。
得られた印刷物の白50%網点/墨ベタ重ね部を用いて、墨インキの評価と同様の手法で白インキについても評価した。
(評価基準)
A:面内網点サイズ変化率[%]が2%未満。
B:面内網点サイズ変化率[%]が2%以上3%未満。
C:面内網点サイズ変化率[%]が3%以上4%未満。
D:面内網点サイズ変化率[%]が4%以上。
なお、実用レベルの評価はA~Cである。
【要約】
【課題】印刷適性(版絡み性等)、耐ブロッキング性が良好であり、更に、印刷物における重ね網点ムラの少ない水性フレキソインキを提供することを課題とする。
【解決手段】水性ウレタン樹脂及び水を含む水性フレキソインキであって、前記水性ウレタン樹脂が、酸基を有し、かつ、ポリエチレングリコール由来の構成単位を含み、前記水性ウレタン樹脂の重量平均分子量が、8000~24000である、水性フレキソインキ。水性ウレタン樹脂全質量中にポリエチレングリコール由来の構成単位を30~60質量%含有する、前記水性フレキソインキ。
【選択図】なし