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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】プリント回路基板用材料
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/03 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
H05K1/03 610H
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023037347
(22)【出願日】2023-03-10
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】17/700,928
(32)【優先日】2022-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523088992
【氏名又は名称】シントロニクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Thintronics,Inc.
【住所又は居所原語表記】2332 4th Street Suite G Berkeley CA 94710 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】タルン・アムラ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・ジェイ・パステイン
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/241469(WO,A1)
【文献】特開2005-075901(JP,A)
【文献】特開2001-234020(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0037700(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0239992(US,A1)
【文献】国際公開第2022/239781(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/03
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント回路基板において基材層として構成される誘電体熱硬化性フィルムであって、前記誘電体熱硬化性フィルムが:
(i)135℃未満のガラス転移温度;
(ii)2.8未満の誘電率;および
(iii)前記誘電体熱硬化性フィルムの平均温度が前記誘電体熱硬化性フィルムのガラス転移温度(Tg)未満である場合に3GPaに等しいかそれ未満の引張モジュラスを有し;前記引張モジュラスが実質的に等方性である、誘電体熱硬化性フィルム
【請求項2】
前記誘電体熱硬化性フィルムが約0.01未満の散逸率を有する、請求項1の誘電体熱硬化性フィルム
【請求項3】
前記誘電体熱硬化性フィルムが約0.006未満の散逸率を有する、請求項1の誘電体熱硬化性フィルム
【請求項4】
前記誘電体熱硬化性フィルムの前記ガラス転移温度が約130℃未満である、請求項1の誘電体熱硬化性フィルム
【請求項5】
前記誘電体熱硬化性フィルムの平均温度が前記誘電体熱硬化性フィルムのガラス転移温度(Tg)未満である場合に引張モジュラスが2GPa未満である、請求項1の誘電体熱硬化性フィルム
【請求項6】
アルケン含有ポリマーを含む、請求項1の誘電体熱硬化性フィルム
【請求項7】
請求項1の誘電体熱硬化性フィルムを含むプリント回路基板。
【請求項8】
プリント回路基板であって:
(i)コア層;
(ii)前記コア層の第1の側上に配置された請求項1の誘電体熱硬化性フィルム;および
(iii)前記誘電体熱硬化性フィルムを貫通する1つまたはより多くのビアを含む、プリント回路基板。
【請求項9】
前記コア層がガラス繊維を基礎とするコア層である、請求項8のプリント回路基板。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
両面基板、多層基板、フレキシブル基板、および高密度相互接続プリント回路基板(HDI-PCB)などのプリント回路基板は一般に、プリント回路基板(PCB)の異なる層同士を相互接続するためのビアを含んでいる。多層PCBやHDI-PCBが使用される多くのシステムについて望ましいのは、PCBの面積を縮小しつつ、その機能性を増大させることである。このような進歩は一般に、部品の小型化によって引き起こされ、モバイル・コンピューティング、4Gおよび5Gのアプリケーション、アビオニクス、および軍事用アプリケーションによって引き起こされる。これらの目標を達成するために、多層PCBおよびHDI-PCBは何世代にもわたって薄く、より薄い誘電材料を使用してきており、そしてHDIまたはシーケンシャル積層構築物の場合にはレーザードリルによってマイクロビアを形成している。
【0002】
PCBにおけるビアには2つの主要な故障モードがある:(1)過大応力および(2)低サイクル疲労である。過大応力はリフロープロセスに際して発現しうるものであり、その場合のアセンブリの温度は典型的には約250℃である。リフローのためには一般に複数回のパスが必要とされ、過大応力および/またはサイクル疲労の組み合わせがマイクロビアの故障を生じさせうる。2つ目の故障モードは使用条件によって生ずる低サイクル疲労(1,000~10,000サイクル未満)であり、使用条件は極端な場合には、-55℃から135℃まで変動する場合がある。いずれの故障モードにおいても、低い信頼性の主たる因子は、銅と誘電材料との間の熱膨張係数(CTE)の差が大きいことである。PCBにおいて、誘電材料は一般にガラスクロスと樹脂の複合材料であり、Z軸方向のCTEがX軸およびY軸方向におけるよりもずっと大きいという著しい異方性を有するが、これは誘電材料がXおよびY方向(または軸)において拘束されているためである。誘電材料によって相互接続されている銅に与えられる応力は、CTE差、誘電材料のモジュラス、および相互接続が受ける温度行程の関数である。これまでに先端技術において、強化された誘電材料に用いられているポリマー/樹脂に、CTEを低減させおよび/または架橋密度を増大させるのに役立つ充填剤を添加することによって、CTE差を低減させるというアプローチが開発されている。したがってCTEは低下するのであるが、応力を完全に低減させるだけ十分に低いものではなく、その一方で高いガラス転移温度Tgおよび高いモジュラスといった、望ましくない結果がもたらされている。加えて、使用される誘電材料(プリプレグおよびラミネート)は織布または不織布で強化されていることから、誘電材料は本質的に異方性である。典型的には、Z軸方向のCTEは、X軸およびY軸方向よりもずっと高い。Z軸方向のモジュラスは樹脂によって定まり、ガラス織布のような強化材料によって定まるX軸およびY軸方向のモジュラスと比べてずっと低い。異方性はTgにおいて増大するが、このときX軸およびY軸におけるCTEは大きく低下し、そしてZ軸におけるCTEは等方性の材料において生ずるよりもずっと大きく、著しく増大する。強化材料の存在によって、誘電材料はZ軸方向において非常に剛直なままである。これに対して等方性フィルムは、これらの影響を受けない。現状の先端技術によるアプローチは高い架橋密度と高い充填剤添加量を用い、それによってモジュラスとTgを増大させている。正味の影響として、応力は余り低減されない。応力および結果としての相互接続に対するひずみを最小限とするためには、Tgと行程の下限との間の差を乗じた誘電材料のモジュラスとCTEの差との積によって与えられる量を最小限にする必要がある。現状の先端技術はCTEにおける差分を低減させることのみに取り組んでいるが、これは望ましくない高いモジュラスとTgをもたらすアプローチである。そこで、相互接続に対する応力を低減するのに役立つ、低モジュラスおよび低Tgのシステムに対するニーズがある。
【0003】
また、28Gbpsよりも大きなデータ転送速度(例えば、56、112、または224Gbps/チャネル)をサポート可能なデータチャネル(例えば、伝送路)をもたらすプリント回路基板に対するニーズも存在している。しかしながら、そうしたデータ転送速度を高い基本周波数(例えば、8~56GHzの基本周波数)において達成することに対する1つの障壁は、伝送路を形成し分離するために用いられる導体(例えば、銅)および誘電材料に起因する、従来の伝送路のチャネル損失である。現在、差動信号は異方性および不均一な誘電特性の問題を有する強化積層材料について使用されている。このアプローチは、ファイバーウィーブ(織目)効果によって各々の伝送路が遭遇する実効誘電率が異なることから、スキューをもたらす。細い導体幅(相対的に高い誘電率の結果である)によって与えられる帯域幅の制限および強化材料に基づくスキューは、先端技術でより高いデータ転送速度を得るにあたり、重大で克服できない可能性のある問題点を導く。
【0004】
データ伝送に使用されている現状の先端技術のストリップラインは3.5~5ミルの厚みの誘電材料の範囲にあり、銅の厚みは18~35マイクロメートルである。材料の誘電率(Dk)は織布材料について、よくても3.0を下回らない。これは低Dkのガラスを使用することによって促進される。しかしながら、より低いDkの樹脂を使用することを通じてDkを下げようと試みると、スキューが増大することになる。複合材料の誘電率は低下するが、しかし強化材料のそれは同じままで樹脂のそれが低下することによって、樹脂のDkと強化材料のDkの間のギャップが増大し、それによってスキューが増大する。
【0005】
したがって、これらの制約を克服することのできる、高信頼性の誘電材料およびそれを含むプリント回路基板に対するニーズがある。
【発明の概要】
【0006】
本願に記載されるのは、部分的には、誘電体層および誘電体フィルム、並びにアンテナ基板、リジッドフレキシブル基板、フレキシブル基板、在来のプリント回路基板、および高密度相互接続(HDI)プリント回路基板(PCB)といった、プリント回路基板におけるそれらの使用である。本開示の誘電体フィルムは例えば、ガラスクロスで強化されていてよく、または強化されていなくてよい。幾つかの実施形態において、誘電体層および誘電体フィルムのそれぞれは低いTg、低いモジュラス(例えば、ヤングモジュラス、引張モジュラス、または弾性モジュラス)、および/または低い誘電率を有する。幾つかの実施形態において、誘電体層および誘電体フィルムは低い散逸率を有していてよい。
【0007】
多層プリント回路基板およびHDI-PCBに用いるための構築層用の材料においては、誘電率が比較的高いことが、先端技術において知られている。本開示は部分的には、PCB層のための低誘電率材料、特に約2.8に等しいかそれ未満の誘電率を有する誘電体ポリマーフィルムが、同じ誘電体厚みのフィルムについて幅広の伝送路を得ることを可能にし、それによって回路基板における挿入損失が低減されることを明らかにする。
【0008】
さらにまた、本願に記載される誘電体ポリマーフィルムまたは層におけるガラス転移温度Tgは、機械的な降伏点に対するある類似物でありうる。例えば、誘電体フィルムのCTEおよびモジュラスは、Tgを超えると大きく変化しうる。低いTgはしばしば、誘電体フィルムの低い降伏強度に関連している。かくして、PCBの相互接続(例えば、主として銅)に対する応力は、フィルム材料がそのTgに達すると、降伏強度(例えば、銅の)未満へと大幅に低下しうる。さらにまた、低い誘電率および/または低い散逸率の熱硬化性フィルムを使用すると、250℃未満の温度において硬化およびCステージ化を実行することが可能になる。
【0009】
本開示の誘電体ポリマーフィルムはまた、比較的低いTgおよび実質的に等方性の比較的低いモジュラス(例えば、6GPaまたは5GPa未満の実質的に等方性のヤングモジュラス)によっても特徴付けられ、これらは合わせて、フィルムのCTEの異方性の低下および銅の相互接続に対するより小さな応力によって示されるような、過大応力の低減および低いサイクル疲労を含めて、本願に記載のプリント回路基板の信頼性を改善することが示されている。好ましい実施形態においては、本願に記載の誘電体フィルムのTgは120℃未満(例えば、100℃未満)である。好ましい実施形態においては、本願に記載の誘電体フィルムのモジュラスは5GPa未満である。さらにまた、本開示の誘電体ポリマーフィルムは幾つかの実施形態において、低い散逸率(例えば、0.005またはそれ未満)を有していてよく、これは誘電損失を低減させることが有利に見出されており、それによって挿入損失を低減させる。誘電損失は、誘電率および散逸率および動作周波数の平方根に正比例している。
【0010】
低い誘電率と散逸率を有する材料は、したがって誘電体層および誘電体フィルムとしてプリント回路基板内に組み込まれた場合、挿入損失を低減させることが本開示により考慮されており、それによって信号品質(シグナルインテグリティ)を向上させる。低い誘電率の付加的な利点は、それが所定の設計インピーダンスに要求される線幅を増大させることである。これは挿入損失に対する付加的な利点をもたらす。さらにまた、導体損失は線幅に対して反比例している。線幅が広ければ挿入損失は低い。低いDkおよびDfはしたがって、誘電損失だけではなく、導体損失を低減させるのを助ける。本願においてはまた、広い線幅を使用することが低い誘電率に起因して、プロセス収率を改善するのを助けることも考慮されているが、これはより細い線幅でプリント回路基板を作成する場合にはプロセス収率に対して悪影響があるからである。結果的に、本開示のポリマーフィルムは、上述したように比較的低い誘電率、Tg、モジュラス、および/または散逸率を有していてよく、そして上述したように、各々の特性に関連した利点をもたらす。他の実施形態においては、本開示のポリマーフィルムは、上述したように比較的低い誘電率、Tg、モジュラス、および散逸率を有していてよく、そしてそれにより、低いモジュラスとTgの直接的な結果としてのビアおよびマイクロビアのような相互接続に対する低減された応力、フィルムの低いDkおよび低いDfに基づく低い誘電損失、低い誘電率に基づき広い線幅が可能とされることに基づく低減された導体損失、そしてフィルムの低い誘電率により可能となる高いプロセス収率によって、改善された信頼性という利点がもたらされてよい。これらの特性は、高密度相互接続回路基板、およびプリント回路基板における極超短波動作および超高速データ転送速度を可能にする。フィルムの等方的な性質は、プリント回路基板に強化誘電材料が使用されている現在の先端技術とは異なり、スキューの問題を回避するのを助ける。別の実施形態において、本開示のプリント回路基板はまた、低い挿入損失、増大した信頼性、および増大した相互接続密度に基づいて、より高速なデータ転送速度およびより高い動作周波数を可能にすることが考慮されている。かくして本開示は、ひとつの実施形態において、全体的に低減された厚みでもって、大きなファイバーウィーブ(織目)スキューなしに通信チャネルの帯域幅を広げる幅広のトレースを使用することを許容する、低誘電率の非強化フィルムの独特の構成を使用することで、本願に記載した問題点を克服する新規な伝送路を記載している。
【0011】
1つの実施態様においては、本願に記載されるのは少なくとも1つの誘電体ポリマーフィルムを含む誘電体層を含むプリント回路基板であり、少なくとも1つの誘電体ポリマーフィルムは:(i)約130℃に等しいかそれ未満のガラス転移温度;(ii)約2.8に等しいかそれ未満の誘電率;および(iii)少なくとも1つの誘電体ポリマーフィルムの平均温度がガラス転移温度未満である場合に約6GPaに等しいかそれ未満の実質的に等方性の弾性モジュラスを有している。
【0012】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの誘電体ポリマーフィルムの散逸率は約0.001から約0.005である。
【0013】
幾つかの実施形態において、誘電率は約1.1から約2.5である。
【0014】
幾つかの実施形態において、ガラス転移温度は約25℃から約110℃である。
【0015】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの誘電体ポリマーフィルムの平均温度がガラス転移温度未満である場合に、弾性モジュラスは約4GPaに等しいかそれ未満である。
【0016】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの誘電体ポリマーフィルムはプリント回路基板の伝送路構造の一部を形成する。
【0017】
幾つかの実施形態において、伝送路の散逸率は5GHzにおいて約0.0025に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、伝送路の散逸率は10GHzにおいて約0.0025に等しいかそれ未満である。
【0018】
幾つかの実施形態において、伝送路の幅はから約5ミルに等しいかより大きい。
【0019】
幾つかの実施形態において、伝送路第1の伝送路であり、少なくとも1つの誘電体ポリマーフィルムがプリント回路基板の第2の伝送路を形成し、そして第1の伝送路と第2の伝送路の間の誘電体層の厚みは0.1ミルと4ミルの間にある。
【0020】
幾つかの実施形態において、回路基板は、パルス振幅変調(PAM)を用いて伝送路を介して信号を伝達するよう構成された少なくとも1つの部品を含んでいる。
【0021】
幾つかの実施形態において、パルス振幅変調において用いられるパルス振幅レベルの数は2と16の間にある。
【0022】
幾つかの実施形態において、回路基板は、約10Gbpsに等しいかより大きなデータ転送速度において伝送路を介してデータを伝達するよう構成された少なくとも1つの部品を含んでいる。
【0023】
幾つかの実施形態において、伝送路は、誘電体ポリマーフィルムから形成された複数の伝送路の1つであり、プリント回路基板の1つまたはより多くの部品は、複数の伝送路の各々の伝送路を介して約10Gbpsに等しいかより大きなデータ転送速度においてデータを伝達するよう構成されている。
【0024】
幾つかの実施形態において、回路基板は計算デバイスまたはネットワークデバイスの部品である。
【0025】
幾つかの実施形態において、計算デバイスはデスクトップコンピュータ、ラップトップ(ノート型)コンピュータ、サーバー、タブレット、アクセラレータ、スーパーコンピュータ、または携帯電話である。
【0026】
幾つかの実施形態において、ネットワークデバイスはスイッチ、ルーター、アクセスポイント、またはモデムである。
【0027】
幾つかの実施形態において、誘電体層または少なくとも1つのポリマーフィルムの熱伝導率は4w/mkまでである。
【0028】
幾つかの実施形態において、誘電体ポリマーフィルムは両面、または多層アンテナを製造するために使用される。
【0029】
幾つかの実施形態において、誘電体ポリマーフィルムは連続溶媒流延法を用いてフィルムに製造される。
【0030】
幾つかの実施形態において、回路基板は多層プリント回路基板または高密度相互接続プリント回路基板である。
【0031】
幾つかの実施形態において、誘電体ポリマーフィルムの熱膨張係数はTgより上で200ppm/℃未満である。
【0032】
幾つかの実施形態において、誘電体ポリマーフィルムの熱膨張係数はTgより上で200ppm/℃超である。
【0033】
幾つかの実施形態において、誘電体ポリマーフィルムは架橋したポリマー組成物を含んでいる。
【0034】
別の実施態様においては、本願に記載されるのはプリント回路基板であり:コア層;コア層の第1の側に配置された誘電体層であって、少なくとも1つの誘電体ポリマーフィルムを含み、この少なくとも1つの誘電体ポリマーフィルムが:(i)約130℃に等しいかそれ未満のガラス転移温度;(ii)約2.8に等しいかそれ未満の誘電率;および(iii)少なくとも1つの誘電体ポリマーフィルムの平均温度がガラス転移温度未満である場合に約6GPaに等しいかそれ未満の実質的に等方性の弾性モジュラスを有する誘電体層;および誘電体層を貫通し、誘電体層の両側に配置された導電性トレースの1つまたはより多くの対のそれぞれを接続する1つまたはより多くのマイクロビアを含んでいる。
【0035】
幾つかの実施形態において、誘電体層は、高密度相互接続プリント回路基板が誘電体層を欠いている場合と比較して、低サイクル疲労または過大応力に起因する1つまたはより多くのマイクロビアの故障リスクを低減させる。
【0036】
幾つかの実施形態において、コア層はガラス繊維を基礎とする誘電体または積層物である。
【0037】
幾つかの実施形態において、誘電体層は第1の誘電体層であり、高密度相互接続プリント回路基板はさらに、少なくとも1つの誘電体ポリマーフィルムを含む第2の誘電体層を含む。
【0038】
幾つかの実施形態において、回路基板はさらに、第2の誘電体層を貫通し、第2の誘電体層の両側に配置された導電性トレースの1つまたはより多くの対のそれぞれを接続する1つまたはより多くのマイクロビアを含んでいる。
【0039】
幾つかの実施形態において、第2の誘電体層はコア層の第2の側に配置される。
【0040】
幾つかの実施形態において、本願の回路基板はさらに:第1の誘電体層上に配置され、少なくとも1つの誘電体ポリマーフィルムを含む第3の誘電体層;および第2の誘電体層上に配置され、少なくとも1つの誘電体ポリマーフィルムを含む第4の誘電体層を含む。
【0041】
幾つかの実施形態において、第2の誘電体層は第1の誘電体層上に配置される。
【0042】
幾つかの実施形態において、回路基板は多層プリント回路基板または高密度相互接続プリント回路基板である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本願はさまざまな発行された特許、公開された特許出願、学術論文、および他の刊行物を参照しているが、参照することによってそれらはすべて、本願に取り入れられる。取り入れられた何れかの参照物と本件明細書の間に矛盾がある場合には、明細書の記載が優先する。
【0044】
誘電材料およびフィルム
本開示の実施形態における誘電材料は一般に、ポリマー組成物を含んでいる。本開示の誘電材料は本願で記載するように誘電体フィルム、誘電体層、または誘電体シートを含んでいるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
本願に記載の誘電体層は幾つかの実施形態において、本願で記載のように1つまたはより多くの誘電体ポリマーフィルムを含んでいてよい。幾つかの実施形態において、本願に記載の誘電体層は本願に記載の誘電体ポリマーフィルムを1枚、2枚、3枚、4枚、または5枚含んでいてよい。幾つかの実施形態において、本願に記載の誘電体層は本願に記載の誘電体ポリマーフィルムを5枚またはより多く含んでいてよい。
【0046】
幾つかの実施形態において、本願に記載の誘電体層の平均厚みは約0.1ミルから約6.0ミル(例えば、約0.1ミルから約1.0ミル、約0.1ミルから約2.0ミル 、約0.1ミルから約3.0ミル、約0.1ミルから約4.0ミル、または約0.1ミルから約5.0ミル)である。幾つかの実施形態において、本願に記載の誘電体層の平均厚みは約0.25ミルから約2.5ミルである。幾つかの実施形態において、本願に記載の誘電体層の平均厚みは約0.5ミルから約2.0ミルである。幾つかの実施形態において、本願に記載の誘電体層の平均厚みは約0.5ミルである。幾つかの実施形態において、本願に記載の誘電体層の平均厚みは約1ミルである。幾つかの実施形態において、本願に記載の誘電体層の平均厚みは約5ミルから約125ミルである。幾つかの実施形態において、本願に記載の誘電体層の平均厚みは約0.1ミル、0.2ミル、0.3ミル、0.4ミル、0.5ミル、0.6ミル、0.7ミル、0.8ミル、0.9ミル、1.0ミル、1.1ミル、1.2ミル、1.3ミル、1.4ミル、1.5ミル、1.6ミル、1.7ミル、1.8ミル、1.9ミル、2.0ミル、3.0ミル、3.3ミル、3.5ミル、4.0ミル、5.0ミル、または6.0ミルである。幾つかの実施形態において、本願に記載の誘電体層の平均厚みは約5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、または125ミルである。
【0047】
本願に記載の誘電材料は、限定するものではないが、ガラス転移温度(Tg)、熱膨張係数(CTE)、誘電率、ヤングモジュラス、フィルム厚み、および熱伝導率といった特性が変化してよい。本開示によって考慮されている誘電材料の例示的な特性は以下の通りである:
【0048】
幾つかの実施形態において、本開示の誘電体フィルムは銅箔またはPETのような基材上に担持されることができる。こうした銅箔は約3から約35マイクロメートルの厚みを有することができる。幾つかの実施形態において、誘電体フィルムは0.5~5.0マイクロメートルの厚みの、例えば物理的蒸着プロセスによってスパッタリングされた銅で被覆することができる。幾つかの実施形態において本開示は、本願で記載のように誘電体フィルムで被覆された銅箔を積層し、次いでプラテンプレスを用いたバッチプロセスで熱ロール圧縮積層することを通じてそれらを一緒に圧縮することによって作成された積層物を含んでいる。
【0049】
本開示の例示的なポリマー
本開示のひとつの実施形態において、本願に記載の誘電体ポリマーフィルムは架橋されたポリマー組成物を含んでいる。幾つかの実施形態において、架橋されたポリマー組成物は誘電体ポリマーフィルム中に、フィルムの合計重量に基づいて約50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、または99重量%の量で存在する。本願に記載の前記架橋されたポリマー組成物は、幾つかの実施形態において、熱硬化性樹脂の架橋生成物を含んでいてよい。前記の熱硬化性ポリマーは、他の反応性基と架橋して架橋したポリマー組成物を生成することのできる、1つまたはより多くの官能基を含んでいる。
【0050】
幾つかの実施形態において、この官能基は硬化剤と反応性のある基である。幾つかの実施形態において、この官能基はビニル基である。幾つかの実施形態において、この官能基は熱硬化性樹脂の主鎖内にある(例えば、ポリブタジエンの主鎖内のアルケニル基)。幾つかの実施形態において、この官能基は熱硬化性ポリマーからのグラフト鎖である。幾つかの実施形態において、硬化剤は過酸化剤である。幾つかの実施形態において、熱硬化性ポリマーと硬化剤は触媒の存在下に反応して架橋されたポリマー組成物を形成する。幾つかの実施形態において、熱硬化性ポリマーと硬化剤は触媒の必要性なしに反応して、架橋されたポリマー組成物を形成する。幾つかの実施形態において、熱硬化性ポリマーと硬化剤の反応は温熱条件下において生ずる。
【0051】
本開示の硬化剤は、関連するポリマーの硬化を開始するのに有用なものを含むが、それらに限定されるものではない。例にはアジド、ペルオキシド、ジアゾ化合物、硫黄、および硫黄誘導体が含まれるが、これらの限定されるものではない。フリーラジカル剤は特に、硬化開始剤として望ましい。フリーラジカル剤の例にはペルオキシド、ヒドロペルオキシド、および非過酸化物の開始剤が含まれ、これは限定するものではないが、例えば2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンである。過酸化物硬化剤の例には、ジクミルペルオキシド、アルファアルファ-ジ(t-ブチルペルオキシ)-m,p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン-3、および2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、および前述の硬化開始剤の1つまたはより多くを含む混合物が含まれる。硬化開始剤は使用される場合、典型的には硬化される熱硬化性ポリマーの合計重量に基づいて約0.25重量%から約15重量%の量で存在する。
【0052】
幾つかの実施形態において、熱硬化性ポリマーは高ビニル含量の樹脂(例えば、70%、80%、または90%を超えるその構成単位がビニル基を有するポリマー樹脂)である。幾つかの実施形態において、熱硬化性ポリマーは低ビニル含量の樹脂(例えば、70%、60%、50%、40%、または30%未満のその構成単位がビニル基を有するポリマー樹脂)である。
【0053】
架橋することのできる官能基を含む熱硬化性ポリマーの例は、限定するものではないが、ポリアルキレン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリノルボルネン、ポリアルキレンテレフタレート(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど))、ポリブタジエンのようなポリアルケニレン、およびスチレン(例えば、耐衝撃性改良ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、スチレン-アクリロニトリル)、またはそれらのグラフト誘導体(例えば、無水マレイン酸がグラフトしたポリエチレン)を含んでいる。
【0054】
幾つかの実施形態において、熱硬化性ポリマーは架橋剤なしに別の熱硬化性ポリマーと架橋可能であり、架橋されたポリマー組成物が生成される。他のポリマーと架橋する熱硬化性ポリマーの例には、ポリアルケニレン(例えば、ポリブタジエン)およびポリアルキニレン、およびこれらの誘導体(例えば、ケイ素変性物)が含まれる。
【0055】
架橋剤と架橋可能な官能基を含む熱硬化性ポリマーの例には、限定するものではないが、ポリアルキレン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアルキレンテレフタレート(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど))、ポリブタジエンのようなポリアルケニレン、およびスチレン(例えば、耐衝撃性改良ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、スチレン-アクリロニトリル)が含まれる。
【0056】
誘電体ポリマーフィルムはまた、幾つかの実施形態において、架橋ユニット、ポリマーとの架橋に由来するラジカル受容体材料を含んでいてよい。受容体材料は、硬化状態または未硬化状態の誘電材料の機械的、物理的、または電気的特性、例えば、脆性、流動特性、CTE、接着性、または誘電体フィルム(例えば、アクリレート、マレイミド、ビニルモノマー)の他の所望とする性質を変性するために、配合中に取り入れることができる。幾つかの実施形態において、受容体材料はビニル含有エポキシ化合物である。幾つかの実施形態において、受容体材料はアクリレートまたはメタクリレートモノマーである。幾つかの実施形態において、受容体材料はビスアクリレートまたはビスメタクリレートである。幾つかの実施形態において、受容体材料はポリアクリレートまたはポリメタクリレートである。幾つかの実施形態において、受容体材料はビスマレイミドまたはポリマレイミドである。幾つかの実施形態において、受容体材料はSA9000(アクリレートで末端封止されたポリフェニレンエーテル)である。
【0057】
幾つかの実施形態において、本願に記載の熱硬化性ポリマー組成物はさらに、ポリ(アリーレンエーテル)を含んでいる。本開示の例示的なポリ(アリーレンエーテル)には、限定するものではないが、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジプロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-アリル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(ジ-tert-ブチル-ジメトキシ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロメチル-1,4-フェニレンエーテル、ポリ(2,6-ジブロモメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジ(2-クロロエチル)-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジトリル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジフェニル-1,4-フェニレンエーテル)、およびポリ(2,5-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)が含まれる。
【0058】
ポリマーフィルムはさらに、ポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマーを含む。本願で使用するところでは「ポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマー」はブタジエンから誘導されたホモポリマー、イソプレンから誘導されたホモポリマー、およびブタジエンおよび/またはイソプレンから誘導されたコポリマー、および/またはモノマーの50重量パーセント(wt%)未満がブタジエンおよび/またはイソプレンと共架橋可能なコポリマーを含んでいる。ブタジエンおよび/またはイソプレンと共架橋可能な適切なモノマーには、モノエチレン性不飽和化合物、例えばアクリロニトリル、エタクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルファ-クロロアクリロニトリル、ベータ-クロロアクリロニトリル、アルファ-ブロモアクリロニトリル、C1-6アルキル(メタ)アクリレート(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、およびイソプロピル(メタ)アクリレート)、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、以下に記載するアルケニル芳香族化合物、およびこれらのモノエチレン性不飽和モノマーの少なくとも1つを含む組み合わせが含まれる。
【0059】
本願に記載のポリマーはホモポリマー(例えば、ポリアルキレンまたはポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマー)またはコポリマーであってよく、グラフトコポリマーまたはブロックコポリマーも含まれる。幾つかの実施形態において、コポリマーは交互コポリマーである。幾つかの実施形態において、コポリマーはブロックコポリマーである。
【0060】
幾つかの実施形態において、ブロックコポリマーはアルケニル芳香族化合物から誘導されたブロック(A)と、共役ジエンから誘導されたブロック(B)を含んでいる。ブロック(A)と(B)の配置は線状構造およびグラフト構造を含んでおり、分岐鎖を有するラジアルテレブロック構造を含む。線状構造の例にはジブロック(A-B)構造、トリブロック(A-B-AまたはB-A-B)構造、テトラブロック(A-B-A-B)構造、およびペンタブロック(A-B-A-B-AまたはB-A-B-A-B)構造、並びにAおよびBの合計で6またはより多くのブロックを含む線状構造が含まれる。具体的なブロックコポリマーには、ジブロック構造、トリブロック構造、およびテトラブロック構造が含まれ、特定的にはA-Bジブロック構造およびA-B-Aトリブロック構造が含まれる。
【0061】
幾つかの実施形態において、ブロック(A)をもたらすために使用される化合物は例えば、参照することによって本願に取り入れる米国特許第9,265,160号に開示されたようなアルケニル芳香族化合物である。幾つかの実施形態において、アルケニル芳香族化合物はスチレンである。
【0062】
幾つかの実施形態において、ブロック(B)をもたらすために使用される共役ジエンには、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、および1,3-ペンタジエン、特に1,3-ブタジエンとイソプレンが含まれる。共役ジエンの組み合わせも使用可能である。共役ジエンから誘導されたブロック(B)は任意選択的に、部分的または完全に水素化される。
【0063】
アルケニル芳香族化合物から誘導されたブロック(A)と共役ジエンから誘導されたブロック(B)を含む例示的なブロックコポリマーには、スチレン-ブタジエンジブロックコポリマー(SB)、スチレン-ブタジエン-スチレントリブロックコポリマーコポリマー(SBS)、スチレン-イソプレンジブロックコポリマー(SI)、スチレン-イソプレン-スチレントリブロックコポリマー(SIS)、スチレン-(エチレン-ブチレン)-スチレントリブロックコポリマー(SEBS)、スチレン-(エチレン-プロピレン)-スチレントリブロックコポリマー(SEPS)、およびスチレン-(エチレン-ブチレン)ジブロックコポリマー(SEB)が含まれる。こうしたポリマーは商業的に、例えばシェルケミカル社からKRATON D-1101、KRATON D-1102、KRATON D-1107、KRATON D-1111、KRATON D-1116、KRATON D-1117、KRATON D-1118、KRATON D-1119、KRATON D-1122、KRATON D-1135X、KRATON D-1184、KRATON D-1144X、KRATON D-1300X、KRATON D-4141、KRATON D-4158、KRATON G1726、およびKRATON G-1652という商品名の下に入手可能である。
【0064】
本願に記載の誘電体フィルムに使用されてよい他の例示的なポリマーは米国特許第6,890,635号および米国特許第9,265,160号に開示されており、これらはそれぞれ参照することによって本願に取り入れられる。
【0065】
フィルムのガラス転移温度(Tg)
幾つかの実施形態において、誘電材料のガラス転移温度Tgは、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、または130℃までである。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約130℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約120℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約110℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約100℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約90℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約80℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約70℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約60℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約50℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約40℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約30℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約25℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約20℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約10℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約5℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約90℃から130℃である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約90℃から120℃である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約80℃から110℃である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約70℃から100℃である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約60℃から90℃である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約50℃から80℃である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約40℃から70℃である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約30℃から60℃である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約25℃から50℃である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約20℃から50℃である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約10℃から40℃である。幾つかの実施形態において、誘電材料のTgは約5℃から40℃である。
【0066】
フィルムの熱膨張係数(CTE)
幾つかの実施形態において、誘電材料の50から250℃の熱膨張係数(CTE)は、約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290または300ppm/℃までである。幾つかの実施形態において、CTEは誘電材料のTg未満で約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290または300ppm/℃までである。幾つかの実施形態において、CTEは誘電材料のTg超で約80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、240、250、260、270、280、290または300ppm/℃までである。幾つかの実施形態において、CTEは約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290または300ppm/℃までである。幾つかの実施形態において、CTEは硬化した熱硬化性組成物のTg未満で約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290または300ppm/℃までである。幾つかの実施形態において、熱膨張係数は硬化した熱硬化性組成物のTg超で約80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290または300ppm/℃までである。幾つかの実施形態において、誘電材料のCTEは誘電材料のTg未満で220ppm/℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のCTEは誘電材料のTg未満で200ppm/℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のCTEは誘電材料のTg未満で180ppm/℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のCTEは誘電材料のTg未満で160ppm/℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のCTEは誘電材料のTg未満で140ppm/℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のCTEは誘電材料のTg未満で120ppm/℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のCTEは誘電材料のTg未満で100ppm/℃に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料のCTEは誘電材料のTg未満で約90から約120ppm/℃である。幾つかの実施形態において、誘電材料のCTEは誘電材料のTg未満で約120から約150ppm/℃である。幾つかの実施形態において、誘電材料のCTEは誘電材料のTg未満で約70から約100ppm/℃である。幾つかの実施形態において、誘電材料のCTEは誘電材料のTg未満で約60から約90ppm/℃である。幾つかの実施形態において、誘電材料のCTEは誘電材料のTg未満で約20から約60ppm/℃である。幾つかの実施形態において、誘電材料のCTEは誘電材料のTg未満で約10から約50ppm/℃である。幾つかの実施形態において、誘電材料のCTEは実質的に等方性である。
【0067】
フィルムの誘電率(Dk)
幾つかの実施形態において、誘電体層または誘電体フィルムのような本願に記載の誘電材料の誘電率は、約1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、または2.8である。幾つかの実施形態において、本願で開示する実施形態の硬化した熱硬化性組成物の誘電率は約1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、または2.8である。幾つかの実施形態において、誘電率は2.8に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電率は2.7に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電率は2.6に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電率は2.5に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電率は2.4に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電率は2.3に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電率は2.2に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電率は2.1に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電率は2に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電率は1.9に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電率は1.8に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電率は1.7に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電率は1.6に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電率は1.5に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電率は1.4に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電率は1.3に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電率は1.2に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電率は1.1に等しいかそれ未満である。
【0068】
幾つかの実施形態において、誘電率は約1.1から約2.8である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2から約2.8である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2.1から約2.8である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2.2から約2.8である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2.3から約2.8である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2.4から約2.8である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2.5から約2.8である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2.6から約2.8である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2.7から約2.8である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2.1から約2.7である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2.1から約2.6である。
【0069】
幾つかの実施形態において、誘電率は約2から約2.5である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2.1から約2.5である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2.2から約2.5である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2.3から約2.5である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2.4から約2.5である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2から約2.4である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2.1から約2.4である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2.2から約2.4である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2.3から約2.4である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2から約2.3である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2.1から約2.3である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2.2から約2.3である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2から約2.2である。幾つかの実施形態において、誘電率は約2.1から約2.2である。
【0070】
幾つかの実施形態において、本開示における誘電材料はガラス微小球で充填されて、誘電率を1.8~2.5へとさらに低減させることができる。
【0071】
幾つかの実施形態において、誘電材料の誘電率は実質的に等方性である。幾つかの実施形態において、誘電材料の誘電率は約1、5、または10GHzにおいて測定される。好ましい実施形態においては、誘電材料の誘電率は約5GHzにおいて測定される。
【0072】
フィルムの散逸率(またはDF)
幾つかの実施形態において、誘電材料の散逸率は約0.01、0.009、0.008、0.007、0.006、0.005、0.004、0.005、0.004、0.003、0.002、または0.001までである。幾つかの実施形態において、誘電材料の散逸率は0.005に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料の散逸率は0.004に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料の散逸率は0.003に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料の散逸率は0.002に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料の散逸率は0.001に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、誘電材料の散逸率は約0.001から約0.005である。幾つかの実施形態において、誘電材料の散逸率は約0.0015から約0.0025である。幾つかの実施形態において、誘電材料の散逸率は約0.002から約0.005である。幾つかの実施形態において、誘電材料の散逸率は約0.003から約0.005である。幾つかの実施形態において、誘電材料の散逸率は約0.004から約0.005である。
【0073】
幾つかの実施形態において、誘電材料の散逸率は実質的に等方性である。幾つかの実施形態において、誘電材料の散逸率は約1、5、または10GHzにおいて測定される。好ましい実施形態においては、誘電材料の散逸率は約5GHzにおいて測定される。
【0074】
フィルムのヤングモジュラス(または弾性モジュラス)
幾つかの実施形態において、誘電材料および/またはポリマー組成物のヤングモジュラス(引張モジュラスまたは弾性モジュラスともいう)は約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、3、4、5、または6GPaである。幾つかの実施形態において、本願で開示される実施形態における硬化した熱硬化性組成物のヤングモジュラスは約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、3、4、5、または6GPaである。幾つかの実施形態において、ヤングモジュラスは約6GPaに等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、ヤングモジュラスは約5GPaに等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、ヤングモジュラスは約4GPaに等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、ヤングモジュラスは約3GPaに等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、ヤングモジュラスは約2GPaに等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、ヤングモジュラスは約1GPaに等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、ヤングモジュラスは約0.1GPaから約6GPaである。幾つかの実施形態において、ヤングモジュラスは約0.1GPaから約5GPaである。幾つかの実施形態において、ヤングモジュラスは約0.1GPaから約3GPaである。幾つかの実施形態において、ヤングモジュラスは約0.1GPaから約2GPaである。幾つかの実施形態において、誘電材料のヤングモジュラスは実質的に等方性である。
【0075】
幾つかの実施形態において、誘電材料は誘電体フィルムであり、誘電体フィルムの厚みは約千分の0.25インチ(Mil)から約125ミルである。幾つかの実施形態において、この厚みは1マイクロメートル(μm)に等しいかより大きい。幾つかの実施形態において、誘電材料および/またはポリマー組成物の個々のフィルムまたはシートは積み重ねられ(スタックされ)圧縮されて、約10ミルから約125ミルの厚みが達成される。
【0076】
幾つかの実施形態において、誘電材料は約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%までの厚みの変動を含む。幾つかの実施形態において、厚みの変動は約10%に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、厚みの変動は約9%に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、厚みの変動は約8%に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、厚みの変動は約7%に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、厚みの変動は約6%に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、厚みの変動は約5%に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、厚みの変動は約4%に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、厚みの変動は約3%に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、厚みの変動は約2%に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、厚みの変動は約1%に等しいかそれ未満である。幾つかの実施形態において、厚みの変動は約1%から約10%である。幾つかの実施形態において、厚みの変動は約2%から約9%である。幾つかの実施形態において、厚みの変動は約3%から約8%である。幾つかの実施形態において、厚みの変動は約4%から約7%である。
【0077】
充填剤
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの誘電体層はさらに充填剤を含んでいる。幾つかの実施形態において、充填剤は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、カオリン、タルク、ハイドロタルサイト、ケイ酸カルシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、ガラスパウダー、シリカパウダー、ホウ酸亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、カーボランダム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、ムライト、酸化チタン、チタン酸カリウム、中空ガラスマイクロビーズ、チタン酸カリウム繊維、カーボランダム単結晶フィラメント、窒化ケイ素繊維、アルミナ単結晶繊維、ガラス短繊維、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ポリフェニレンサルファイドパウダー、ポリスチレンパウダー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。幾つかの実施形態において、誘電体層はさらに難燃性添加剤を含む。幾つかの実施形態において、難燃性添加剤は非ハロゲン化難燃性添加剤である。幾つかの実施形態において、非ハロゲン化難燃剤は、リン系難燃性添加剤、無機系難燃性添加剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。幾つかの実施形態において、少なくとも1つの誘電体層はさらに、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル安定剤、帯電防止剤、防腐剤、接着促進剤、強化剤、ゴム粒子、顔料、染料、潤滑剤、離型剤、発泡剤、殺菌剤、可塑剤、加工助剤、酸捕捉剤、染料、顔料、安定剤、発泡剤、核剤、ナノチューブ、湿潤剤、分散剤、共力剤、鉱物充填剤、補強剤、ウィスカー、無機充填剤、発煙抑制剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される助剤を含む。幾つかの実施形態において、少なくとも1つの誘電体層はさらに、誘電体層を貫通する1つまたはより多くの金属充填マイクロビアを含む。
【0078】
本開示における誘電体フィルムは、幾つかの実施形態において、サビック社から入手可能なSA9000のような官能化されたPPE、エボニック社から入手可能なトリアリルイソシアヌレート、エボニック社および他の製造者から入手可能なトリアリルシアヌレート、シアネートエステルおよび大和化成工業株式会社から入手可能なBMI5100、シンエーティーアンドシー社(韓国)から入手可能なGMI2300のようなビスマレイミド樹脂、シンエーティーアンドシー社(韓国)から入手可能なXAD-620のような材料の組み合わせを使用して作成することができる。幾つかの実施形態において、高耐衝撃性ポリスチレン、PTFEパウダーのような有機充填剤、または溶融シリカ、二酸化チタン、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素のような無機充填剤が誘電体フィルムに添加されて、CTE、熱伝導率、および/または他の性質が改善される。中空球形充填剤を含む、球形または非球形の充填剤(例えば、球状シリカ)もまた、使用してよい。クラリアント社から入手可能なアルミニウムポリホスフィネートExolit(登録商標)OP935またはExolit(登録商標)OP945、大塚化学株式会社から入手可能なSPB100またはホスファゼンのような難燃化剤もまた、非ハロゲン用途について難燃剤として使用することができる。アルベマール社のAltexiaまたはチンイーケミカル社のPQ60のような他のリン含有化合物もまた、単独でまたは他の難燃剤と組み合わせて使用してよい。アルベマール社のSaytex8010、エチレン-1,2-ビス(ペンタブロモフェニル)またはBT93のようなハロゲン化難燃剤を使用することができる。トータルグループから入手可能なRicon100、Ricon184、Ricon257のようなブタジエンとスチレンのコポリマー、およびRicon300、Ricon130、Ricon131、Ricon134、Ricon154、Ricon156、およびRicon157のようなブタジエンポリマーを使用して誘電体フィルムを架橋し、または誘電体フィルムの主鎖として使用することができる。幾つかの実施形態において、過酸化物硬化剤を効果プロセスにおいて使用することができる。
【0079】
幾つかの実施形態において、本開示の充填剤は誘電体フィルム中に:誘電体フィルムの重量に基づいて0から0.1重量%、誘電体フィルムの重量に基づいて0から0.5重量%、誘電体フィルムの重量に基づいて0から1重量%、誘電体フィルムの重量に基づいて0から5重量%、誘電体フィルムの重量に基づいて1から5重量%、誘電体フィルムの重量に基づいて1から6重量%、誘電体フィルムの重量に基づいて1から7重量%、誘電体フィルムの重量に基づいて1から8重量%、誘電体フィルムの重量に基づいて1から9重量%、誘電体フィルムの重量に基づいて1から10重量%、誘電体フィルムの重量に基づいて10から20重量%、誘電体フィルムの重量に基づいて20から30重量%、誘電体フィルムの重量に基づいて30から40重量%、誘電体フィルムの重量に基づいて40から50重量%、誘電体フィルムの重量に基づいて50%から60重量%、誘電体フィルムの重量に基づいて60%から70重量%、または誘電体フィルムの重量に基づいて70重量%まで存在してよい。幾つかの実施形態において、本開示の充填剤は本開示の誘電体フィルム中に、誘電体フィルムの重量に基づいて0、0.0001、0.001、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、または60重量%の量で存在してよい。
【0080】
フィルム厚み
幾つかの実施形態において、本願に記載の誘電体ポリマーフィルムの平均厚みは約0.1ミルから約6.0ミル(例えば、約0.1ミルから約1.0ミル、約0.1ミルから約2.0ミル、約0.1ミルから約3.0ミル、約0.1ミルから約4.0ミル、または約0.1ミルから約5.0ミル)である。幾つかの実施形態において、本願に記載の誘電体ポリマーフィルムの平均厚みは約0.25ミルから約2.5ミルである。幾つかの実施形態において、本願に記載の誘電体ポリマーフィルムの平均厚みは約0.5ミルから約2.0ミルである。幾つかの実施形態において、本願に記載の誘電体ポリマーフィルムの平均厚みは約3.0ミルから約5.0ミルである。幾つかの実施形態において、本願に記載の誘電体ポリマーフィルムの平均厚みは約0.5ミルである。幾つかの実施形態において、本願に記載の誘電体ポリマーフィルムの平均厚みは約1ミルである。幾つかの実施形態において、本願に記載の誘電体ポリマーフィルムの平均厚みは約1.5ミルである。幾つかの実施形態において、本願に記載の誘電体ポリマーフィルムの平均厚みは約5ミルから約125ミルである。幾つかの実施形態において、本願に記載の誘電体ポリマーフィルムの平均厚みは約0.1ミル、0.2ミル、0.3ミル、0.4ミル、0.5ミル、0.6ミル、0.7ミル、0.8ミル、0.9ミル、1.0ミル、1.1ミル、1.2ミル、1.3ミル、1.4ミル、1.5ミル、1.6ミル、1.7ミル、1.8ミル、1.9ミル、2.0ミル、3.0ミル、3.3ミル、3.5ミル、4.0ミル、5.0ミル、または6.0ミルである。
【0081】
剥離強度
幾つかの実施形態において、接着表面上(例えば、金属積層物上)のフィルムの平均剥離強度は約1~10lb/in(ポンド/インチ)、2~10lb/in、3~10、4~10、5~10、6~10、7~10、8~10、または9~10lb/inである。幾つかの実施形態において、接着表面上(例えば、金属積層物上)のフィルムの平均剥離強度は約3~6lb/in、4~6lb/in、または5~6lb/inである。
【0082】
誘電材料の製造方法
ここに提示されるのは、上述した誘電材料の製造方法である。ここに提示される幾つかの実施形態は、誘電材料のシートまたはフィルムを製造するための方法である。幾つかの実施形態において、本願に記載のシートおよびフィルムを作成するための方法は、溶媒(溶液)流延法、溶融押し出し法、積層法、およびコーティング法を含んでいる。溶媒流延法、溶融押し出し法、積層法、およびコーティング法の非限定的な例は、例えば米国特許出願公開第US2009/0050842号、第US2009/0054638号、および第US2009/0096962号に見出すことができ、それらの内容はこの参照によって本願に取り入れられる。フイルムを形成するための溶媒流延法、溶融押し出し法、積層法、およびコーティング法のさらなる例、例えば米国特許第4,592,885号および第7,172,713号、並びに米国特許出願公開第US2005/0133953号および第US2010/0055356号に見出すことができ、それらの内容はこの参照によって本願に取り入れられる。
【0083】
連続溶媒流延法は、本願に記載の誘電材料の薄いフィルムを提供するための好ましい方法である。溶媒流延法は、極めて高品質で均一な厚みの組成物を提供することができる。典型的な溶媒流延法は、1)成分(例えば、ポリマー、架橋剤、充填剤、難燃剤、その他)を溶媒中に溶解および/または分散してワニスを生成し;2)ワニスを基材(例えば、銅箔)または流延フィルム(例えば、PET)上に被覆し;そして3)乾燥(例えば、乾燥オーブンでの乾燥)を通じて溶媒を蒸発/除去して基材または担持フィルム上にポリマー組成物のフィルムを生成することを包含している。フイルムの最終的な厚みは、例えばワニスをスロットダイに通過させることによって制御することができる。この流延プロセスで高品質のフィルムを生成するためには、ポリマーがワニス溶媒に溶解していることが重要である。乾燥オーブンの滞留時間と温度プロファイルが、フイルム内に保持される残留溶媒の量、およびフィルムが架橋ポリマー組成物であるかまたは混合状態に留まるか(例えば、熱可塑的性質を有するか)といった因子を決定づける。幾つかの実施形態において、フィルムの流延および乾燥プロセスの後に、ポリマー組成物は熱可塑性ポリマー(または熱硬化性)組成物である。幾つかの実施形態において、フィルムの流延および乾燥プロセスの後に、ポリマー組成物は架橋した熱可塑性組成物である。
【0084】
幾つかの実施形態において、シートまたはフィルムは、限定するものではないが、PET、剥離処理したPET、二軸延伸ポリプロピレン、および他の一般的な担持用または剥離利用ライナーのような担持フィルム、すなわち剥離フィルム上に設けられる。幾つかの実施形態において、シートまたはフィルムは銅箔上に設けられる。幾つかの実施形態において、ポリマー組成物のフィルムは指触非粘着性である。幾つかの実施形態において、ポリマーフィルム組成物は十分な可塑性を有し、担持フィルムから剥離してオブジェクト上に置くことができる。幾つかの実施形態において、担持フィルム上の組成物は基材上に置いてロールラミネータを通過させ、次いで担持フィルムを剥離して、ポリマー組成物を新たな基材上に残すことができる。幾つかの実施形態において、積層される基材は銅箔または銅シートである。幾つかの実施形態において、積層される基材は銅被覆(エッチング、部分エッチング、またはエッチングなし)の、または銅被覆なしのガラス繊維コアである。幾つかの実施形態において、シートまたはフィルムは金属(例えば、銅)で被覆されまたは被覆されない。幾つかの実施形態において、シートまたはフィルムは非強化(例えば、強化されず、織布または不織布のガラスクロス、有機織布または不織布を含まない)である。
【0085】
幾つかの実施形態において、ポリマー組成物は溶媒中に分散されてワニス組成物として提供される。幾つかの実施形態において、ワニス組成物は(例えば、ポリマーと架橋剤の架橋に基づいてワニスがゲル化するまで)何日間か安定である。幾つかの実施形態において、ワニス組成物はゲル化が生ずるまで何週間か安定である。幾つかの実施形態において、ワニス組成物はゲル化が生ずるまで何ヶ月間か安定である。幾つかの実施形態においてワニス組成物は、担持フィルム上に流延される。幾つかの実施形態において、担持フィルムはポリエチレンテレフタレート(PET)、またはPETポリマー組成物の剥離をさらに促進するように処理されたPETである。幾つかの実施形態において、ワニス組成物は銅箔上に流延される。
【0086】
好ましい実施形態においては、本開示における誘電体フィルムは、銅箔またはPETのような基材上に担持することができる。こうした銅箔は、約3から約35マイクロメートルの厚みを有することができる。幾つかの実施形態において、誘電体フィルムは、例えば物理蒸着プロセスを通じて0.5~5.0マイクロメートルの厚さのスパッタリングされた銅で被覆することができる。幾つかの実施形態において、本開示は、本願に記載のように誘電体フィルムで被覆された銅箔を積層し、次いでプラテンプレスを用いたバッチプロセスで熱ロール圧縮積層することを通じてそれらを一緒に圧縮することによって作成された積層物を含む。
【0087】
誘電体ポリマーフィルムから形成された伝送路を含むプリント回路基板
本願に提示されるひとつの実施形態は、本願に記載の組成物(例えば、誘電体ポリマーフィルム)で形成された1つまたはより多くの伝送路を含むプリント回路基板である。
【0088】
伝送路は任意の種類の導電性(例えば、高速導電線)として使用してよい。幾つかの例では、伝送路の少なくとも1つはPCBの外側層内またはその上に形成される(例えば、マイクロストリップ伝送路のマイクロストリップとして)。幾つかの例では、伝送路の少なくとも1つはPCBの内側層内またはその上に形成される(例えば、ストリップラインとして)。伝送路はシングルエンドまたは差動であってよい。
【0089】
10GHzの信号周波数(例えば、信号伝送速度)において、伝送路の少なくとも1つの散逸率は0.0010、0.0015、0.0020、0.0021、0.0022、0.0023、0.0024、0.0025、0.0026、0.0027、0.0028、0.0029、0.0030、0.0035、または0.0040であってよい。
【0090】
伝送路の少なくとも1つの幅は、1ミルと4ミルの間、4ミルと6ミルの間(例えば、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9または6.0ミル)、または6ミル超(例えば、6ミルと20ミルの間)であってよい。単位「Mil」または「ミル」は1インチの1/1000を示している。
【0091】
幾つかの例では、伝送路(例えば、第1の伝送路および第2の伝送路)はPCBの垂直方向に隣接する層に形成されてよい。そうした例においては、第1の伝送路と第2の伝送路の間の誘電体層の厚みは3ミル未満(例えば、0.1ミルと3ミルの間)、3ミルと5ミルの間(例えば、3.0、3.1、3.2、3.3.、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、または5.0ミル)、または5ミル超(例えば、5ミルと20ミルの間)であってよい。
【0092】
幾つかの例では、伝送路は、限定するものではないが、パルス振幅変調(PAM)を含む任意の変調方式を使用して変調された信号を伝達することができる。パルス振幅変調方式において使用されるパルス振幅レベルの数は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16であってよい。
【0093】
幾つかの例では、伝送路は、28Gbpsと224Gbpsの間のデータ転送速度(例えば、28、56、112、または224Gbps)でデータを伝送することができる。
【0094】
幾つかの実施形態において、本願に記載の組成物で形成された1つまたはより多くの伝送路を含むPCBは可撓性(フレキシブル)であってよい。フレキシブルPCBは幾つかの実施形態において、0.01GPaと6GPaの間(例えば、1GPa、2GPa、3GPa、4GPa、または5GPa)の弾性モジュラスを有していてよい。フレキシブルPCBは幾つかの実施形態において、6GPaに等しいかそれ未満(例えば、1GPaに等しいかそれ未満、2GPaに等しいかそれ未満、3GPaに等しいかそれ未満、4GPaに等しいかそれ未満、または5GPaに等しいかそれ未満)の弾性モジュラスを有していてよい。幾つかの例において、フレキシブルPCBの部品は1つまたはより多くのセンサーデバイス(例えば、ウェアラブルセンサー)を含んでいてよい。幾つかの実施形態において、本願に記載の組成物で形成された1つまたはより多くの伝送路を含むPCBは、アンテナを生成するために使用されてよい。例えば、少なくとも1つの誘電体ポリマーフィルムは両面、または多層アンテナを製造するために使用されてよい。
【0095】
幾つかの例では、PCBは計算デバイス(例えば、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、サーバー、タブレット、アクセラレータ、スーパーコンピュータ、携帯電話、その他)またはネットワークデバイス(例えば、スイッチ、ルーター、アクセスポイント、モデム、その他)の部品である。こうした計算デバイスまたはネットワークデバイスは、任意の適切なワイヤレス通信技術または標準(例えば、4G、5G、6G、その他)を使用して遠隔のデバイスと通信するためにPCBを使用するよう構成されてよい。
【0096】
誘電体ポリマーフィルムで形成された1つまたはより多くの伝送路を含むPCBの製造プロセスにおいて使用するために、フィルムはボンディングシートまたは硬化形態(例えば、Cステージのコア積層体の形態)で提供されてよい。
【0097】
誘電材料を含むプリント回路基板
本願に提示されるひとつの実施形態は、1つまたはより多くの絶縁層(本願ではまた「誘電体層」、「誘電材料」、または「誘電体フィルム」ともいう)を含むプリント回路基板であり、そこにおいて絶縁層は本願に記載の組成物を含む。
【0098】
先進的なPCBは、基板に埋め込まれた部品(例えば、コンデンサ、抵抗、または能動素子)を含んでいてよい。PCBは片面(1つの銅層)、両面(2つの銅層)または高い部品密度を許容する多層(例えば、誘電材料によって分離された複数の銅層)であることができる。多層PCBは、一般には強化樹脂と銅箔の一連の層を含む複合的な混合構造である。異なる層上にある導体は、「ビア」すなわちメッキされた貫通孔で接続されてよい。PCB用途の積層体は、プリプレグ(事前含浸)化として知られているプロセスを通じて製造される。
【0099】
幾つかの実施形態において、プリント回路基板はハイブリッド設計を含んでおり、そこにおいて中央のコアはガラス繊維系の誘電体(または積層体)であり、そして外側絶縁層の少なくとも1つ、または複数が、誘電体フィルムを含んでいる。幾つかの実施形態において、このハイブリッド設計は1つよりも多いガラス繊維系誘電体と、そして他の絶縁層の少なくとも1つ、または複数が、ポリマー誘電体フィルムを含んでいる。幾つかの実施形態において、プリント回路基板は多層、両面、または片面基板である。幾つかの実施形態において、シートまたはフィルムは連続的構築プロセスにおいて使用される。幾つかの実施形態において、シートまたはフィルムは連続的構築プロセスにおいて使用され、中央のコアはガラス繊維積層体である。
【0100】
本願に記載のプリント回路基板(例えば、HDI-PCB)は、本願に記載の1つまたはより多くの誘電材料(例えば、1つまたはより多くの誘電体フィルム)および1つまたはより多くの銅層を含んでいてよい。
【0101】
幾つかの実施形態において、1つまたはより多くの誘電体フィルムの少なくとも1つのTg未満での応力は15から30MPa、または15から20MPaである。
【0102】
幾つかの実施形態において、1つまたはより多くの誘電体フィルムの少なくとも1つのTg超での応力は1から3MPa(例えば、約1.5MPa)である。
【0103】
PCBの組み立ての間に銅に対して負荷される(過大応力故障モードにおけるような)引張応力は:
【数1】

によって与えられ、式中σCuはz軸方向における銅に対する引張応力、αEqおよびαCuは等価な材料(誘電体と銅を合わせた)および純銅のそれぞれについてのz軸方向の熱膨張係数、TassemおよびTambはそれぞれ組立温度および雰囲気温度、そしてECuはz軸方向における銅についてのヤングモジュラスである。
【0104】
誘電材料および銅に等価な係数は混合則により:
【数2】

【数3】

として与えられ、式中EDi、ECuおよびEEqは誘電材料、銅、および等価材料のそれぞれについてのz軸方向におけるモジュラスであり、αDi、αCuおよびαEqは誘電材料、銅、および等価材料のそれぞれについてのz軸方向における熱膨張係数であり、そしてVDiおよびVCuは回路基板において影響を受ける領域における誘電材料および銅のそれぞれについての体積分率である。
【0105】
上記の数式はまた、量を適宜置き換えることにより、誘電材料のガラス転移温度Tg超においても計算に使用することができる。
【0106】
Tg未満およびTg超での熱膨張係数、並びにz軸方向におけるモジュラスは定数として近似することができるから、数式(1)は:
【数4】

と書き換えることができ、式中下付き文字bはTg未満を表し、下付き文字aはTg超を表し、下付き文字eは弾性を示し、下付き文字pは可塑性を示し、そしてTyieldは銅の応力が銅の降伏応力を超える温度である。
【0107】
熱サイクルの間の応力/ひずみおよび動作条件
動作条件の間に銅に負荷される引張応力は:
【数5】

によって与えられ、式中TLBおよびTUBは動作範囲の下限温度および上限温度のそれぞれである。
【0108】
Tg未満およびTg超での熱膨張係数、並びにz軸方向におけるモジュラスは定数として近似することができるから、数式(5)は次のように書き換えることができる:
a)上限がTyield超であるがTg未満であるとき:
【数6】

b)動作条件の上限がTyeild未満であるとき:
【数7】
【0109】
銅に対するひずみの合計は、弾性ひずみおよび塑性ひずみの合計である。
a)ひずみが塑性ひずみであるとき:
【数8】

式中εCuは銅のひずみでありσY,Cuは銅についての降伏応力である。
b)ひずみが弾性ひずみであるとき:
【数9】
【0110】
数式(9)が適用可能である場合、銅のひずみは降伏応力未満であることを意味し、故障モードは高サイクル疲労へと変化するが、これはデバイスの使用の文脈において寿命がほぼ無限であるようなものである。
【0111】
本願に記載の誘電材料は、例えばプリント回路基板産業において使用可能である。例えば、構築層における低Tg、低モジュラス、および/または低CTEの誘電体フィルム(ガラスクロスで強化されていない)は、例えば高密度相互接続(HDI)プリント回路基板に使用して、高い信頼性と増大した相互接続密度を得ることができる。他の実施形態においては、誘電体フィルムは、組み立てで損傷されず所望とする動作条件の下で高い疲労寿命を有するスタックビアを使用することを可能にする。
【0112】
利点には、より等方的な性質、均質性、および25マイクロメートル未満で絶縁厚みに達する性能、改善された絶縁間隔、銅のような金属を含む材料に対する向上した接着性、増大されたマイクロビア信頼性、マトリクスの強化、および織成ファブリックで強化された複合体にとっての懸案でありプリント回路基板上での高速デジタル伝送にスキューやタイミングの問題を生じさせる織目効果の除去が含まれる。チップパッケージング、標準的な両面基板および片面基板、マザーボード、連続積層基板、高多層化基板および標準層数基板、フレキシブル基板に加えて、IOTデバイス、カメラモジュール、インフォテイメントシステム、携帯電話、タブレットおよび他のコンシューマーデバイスに使用される高密度相互接続基板は、この新たな技術を使用することによって多大な利点を受ける。さらに、ガラスを欠いていることによるレーザー加工性の改善およびスループットの向上、誘電材料の厚みの制限を取り除く性能、基板の厚みの20~30%を低減する可能性、プリント回路基板の重量の低減、銅メッキされたビアに対する応力を減少させる性能、Z軸方向の拡張を低減するマイクロビアの信頼性の向上、厚みの制御および改善されたクラック抵抗は、この技術から予想される利点の幾つかである。こうした金属被覆されたまたは被覆なしのフィルムまたはシートはまた、フィルムにおける均質な等方的性質または非強化(織成強化物がない)に基づいて、差動スキューの問題をも解決するのを助ける。
【0113】
幾つかの実施形態において、誘電材料のシートまたはフィルムは、限定するものではないが、PET、処理または表面変性したPET、二軸延伸ポリプロピレン、および他の一般的な担持用または剥離利用ライナーのような担持フィルム、すなわち剥離フィルム上に設けられる。幾つかの実施形態において、ポリマー組成物は十分な可塑性を有しており、フィルムとして担体から剥離してオブジェクト上に置くことができる。幾つかの実施形態において、担持フィルム上の組成物は基材上に置いてラミネータを通過させ、次いで担持フィルムを剥離して、ポリマー組成物を新たな基材上に残すことができる。幾つかの実施形態において、積層される基材は銅箔または銅シートである。幾つかの実施形態において、積層される基材は銅箔または銅シートである。幾つかの実施形態において、積層される基材は銅被覆(エッチング、部分エッチング、またはエッチングなし)の、または銅被覆なしのガラス繊維コアである。幾つかの実施形態において、シートまたはフィルムは金属(例えば、銅)で被覆されまたは被覆されない。幾つかの実施形態において、シートまたはフィルムは非強化(例えば、強化されず、織布または不織布のガラスクロス、有機織布または不織布(例えば、マイクロサイズまたはナノサイズの無機または有機充填剤)を含まない)である。
【0114】
誘電材料を含むPCBの製造方法
ひとつの実施形態において、プリント回路基板のための積層物を形成するための手順は次のような操作を包含する:
【0115】
A.電気的な積層物が望ましい場合、1つまたはより多くのプリプレグシートを銅箔のような1つまたはより多くの導電性材料のシートと交互の層にスタックまたは積み重ねる。
【0116】
B.積み重ねたシートを高められた温度および圧力において、プリプレグ組成物を完全に接着し積層物を形成するのに十分な時間にわたって圧縮する。この積層工程における温度は通常、100℃と230℃の間である。この積層工程は通常、1分間から200分間、最も多くは10分間から90分間の時間にわたって行われる。この積層工程は任意選択的に、より高い温度においてより短い時間にわたって(連続積層プロセスにおけるように)、またはより長時間にわたりより低い温度で(低エネルギー圧縮プロセスにおけるように)行ってよい。
【0117】
C.任意選択的に、得られた積層物、例えば銅被覆積層物は、より高い温度および雰囲気圧力において所定時間にわたり後処理されてよい。この後処理の温度は通常、120℃と250℃の間である。この後処理は通常、30分間から12時間の間である。
【0118】
本願に提示されるひとつの実施形態は、プリント回路基板の作成または組み立てのための方法であり、本願に記載のシートまたはフィルムの取り込みを含んでいる。幾つかの実施形態において、この基板は高密度相互接続基板(HDI基板)である。幾つかの実施形態において、この基板は半導体チップのパッケージング用途に使用される。幾つかの実施形態において、シートまたはフィルムは差動ライン相互の間におけるスキューを除去する目的に役立つ。幾つかの実施形態において、シートまたはフィルムは上部の銅シートの下側に配置されて、鉛フリー半田での組み立てに際してのパッドのクレーター状破壊を排除する。幾つかの実施形態において、シートまたはフィルムは重い(>3オンス/平方フィート)銅層を充填するために使用される。幾つかの実施形態において、フィルムはLEDまたは他の高出力デバイスをパッケージングする用途について熱伝導率を向上させるために使用され、また一般にはプリント回路基板における熱伝導率を改善するために使用される。幾つかの実施形態において、両面を被覆されたシートまたはフィルムは埋設コンデンサ層のために使用される。幾つかの実施形態において、シートまたはフィルムは2.5Dチップパッケージングの用途または他の埋設部品のパッケージングにおいて、シリコンまたは他のインターポーザ材料を埋め込むために使用される。
【0119】
幾つかの実施形態において、プリント回路基板は高密度相互接続(HDI)プリント回路基板である。HDIプリント回路基板は他のPCBとは、HDI-PCBが構築技術を使用しており、プロセス工程数がずっと少ない従来の多層プロセスとは違い基板が層ごとに連続的に積み上げられるという意味において異なっている。HDIは、サイズの小さな回路基板が好ましい用途について幅広く使用されてる。HDI-PCBが使用される多くのシステムについて望ましいのは、PCBの機能性を増大させながら面積を低減させることである。こうした進歩は一般に、部品の小型化によって引き起こされ、モバイル・コンピューティング、4Gおよび5Gのアプリケーション、アビオニクス、および軍事用アプリケーションによって引き起こされる。これらの目標を達成するために、HDI-PCBは何世代にもわたって薄く、より薄い誘電材料を一般に使用してきており、そしてレーザードリルによってマイクロビアを形成している。
【0120】
幾つかの実施形態において、プリント回路基板は1+n+1のタイプであり、ここでn個の層は複数層のサブアセンブリであることができ、殆どの場合にnの最小値は2であって両面のコア積層物であることを意味している。こうした実施形態について各々の側にある1つの構築層は、ポリマーを含むフィルムで作成される。幾つかの実施形態において、プリント回路基板は多数層の両面基板または片面基板である。幾つかの実施形態において、シートまたはフィルムは連続的な構築プロセスにおいて使用される。幾つかの実施形態において、プリント回路基板は高密度相互接続(HDI)プリント回路基板である。幾つかの実施形態において、ポリマー誘電体フィルムを含む構築層を使用した高密度相互接続プリント回路基板はi+n+i構造であり、ここでiは2に等しいかより大きい。幾つかの実施形態において、1+n+1構造またはi+n+i構造であってiが2に等しいかより大きいHDIの構築層は、0.25ミルと4ミルの間の厚さのポリマー誘電体フィルムを使用する。幾つかの実施形態において、ポリマーを含む構築層は任意の数層のHDI基板について使用され、0.25~4ミルの間の厚みを有する。幾つかの実施形態において、1+n+1構造またはi+n+i構造であってiが2に等しいかより大きいHDIの構築層、または任意の層数のHDIの構築層は、サブトラクティブエッチング技術で製造される。幾つかの実施形態において、1+n+1構造またはi+n+i構造であってiが2に等しいかより大きいHDIの構築層、または任意の層数のHDIの構築層は、修正セミアディティブ技術(mSAP)またはフルアディティブ技術によって製造される。幾つかの実施形態において、ポリマー誘電体フィルムを含む構築層は、銅の薄層がスパッタリングされている。幾つかの実施形態において、構築層はその表面の片側上に銅のナノ層を有している。
【0121】
また、Bステージのエポキシが溶融され強化基材に圧入されるホットメルト法のような、PCB用途のためのプリプレグおよび積層物を作成するために使用される他の方法が存在する。
【0122】
PCBの誘電体層はビア孔を含んでいてよい。幾つかの実施形態において、孔部、トレース間のギャップを含めて、またはトレースを封入するために、充填を必要とする領域上にシートまたはフィルムを配置することによって、ビア孔はシートまたはフィルムで充填されてよい。これは他の手段による樹脂充填が困難である、銅に関連する使用(例えば厚銅)を含んでいる。この樹脂充填は、基板の全体にわたって実行可能であり、またはごく小さな領域に集中して実行可能である。
【0123】
幾つかの実施形態においては、ポリマー組成物の薄層(例えば、非常に薄い層)が、金属(例えば、銅)と、金属が接合される熱硬化性または熱可塑性材料との間に使用される。幾つかの実施形態においては、ポリマー組成物の薄層(例えば、非常に薄い層)が、プリント回路基板の上部の金属層と、金属が接合される熱硬化性または熱可塑性材料との間にある。
【0124】
定義
別途定義しない限り、本願で使用されるすべての技術的および科学的な用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有している。
【0125】
冠詞「ひとつの」および「ある」は本願において、その冠詞の文法的な対象物が1つまたは1つより多い(すなわち少なくとも1つ)ことを示すために用いられてよい。例示すると「ある類似物」は1つの類似物または1つよりも多い類似物を意味する。
【0126】
本願で参照するすべての範囲は、2つの値の「間」の範囲を示す端点などの端点を含む。
【0127】
本願で用いるところでは、「約」は当業者によって理解される通りであり、それが使用される文脈に応じて幾分か変化する。仮にこの用語の使用が、それが使用される文脈を見ても当業者にとって明確でない場合には、「約」はその項のプラスマイナス10%までを意味する。
【0128】
本願で用いるところでは、「熱可塑性」または「熱可塑性ポリマー組成物」は、特定の温度を超えると柔軟または成形可能となり、冷却すると固化するプラスチック材料またはポリマーを意味することが理解される。
【0129】
本願で用いるところでは、「熱硬化」、「熱硬化性」、「熱硬化性材料」または「熱硬化性ポリマー組成物」は、硬化によって不溶性ポリマーネットワークへと不可逆的に変化し、いったん硬化すると液状に戻るように再加熱して溶融することができない、軟質固体または粘稠状態のポリマーまたは樹脂を意味する。
【0130】
本願で用いるところでは、「プリント回路基板」は、電子的、光学的および/または光電的部品の機械的支持および電気的接続システムを示している。例えば、プリント回路は、基板の片側上または両側上に薄層銅箔ラミネーションを備えた一次絶縁基板(例えば、FR-4ガラスエポキシ)であることができる。本願で用いるところでは、「プリント回路基板部品またはパーツ」は、PCBの電子的、光学的および/または光電的部品を指している(例えば、導電性トラック、パッド、または非導電性基板上に積層された銅シートからエッチングされてよい他の特徴を介して接続された電子的、光学的および/または光電的部品)。
【0131】
本願で用いるところでは、用語「マイクロビア」はPCBの単層を貫通するビアを指していてよい。
【0132】
本願で用いるところでは、「積層物」は、任意選択的に1つまたはより多くの側が金属(例えば銅)箔で被覆されていてよいプリプレグの1つまたはより多くの層を含む複合体を指しており、熱および圧力を適用することによって最終生成物へと形成される。本願に記載の積層物は、硬化または未硬化であってよい。
【0133】
本願で用いるところでは、「プリプレグ」は強化されまたは強化されていない誘電材料の接合層を指している。本願に記載のポリマー組成物は、積層物を製造するためにプリプレグとして使用されてよい。熱可塑性ポリマーは、繊維による強化なしに使用される。プリプレグはまた一般に、接合シートとも呼ばれている。
【0134】
本願で用いるところでは、用語「実質的に」は、高度の近似(例えば、定量可能な性質の+/-10%)を意味しているが、絶対的な精度や完全な一致を要求するものではない。
【0135】
本願で用いるところでは、「Tg」および「ガラス転移温度」という用語は本願において互換的に使用されている。
【実施例
【0136】
以下の実施例は本願に記載の実施形態を例によって示すために提供されたものであり、いかなる意味においても実施形態の範囲を限定するように解釈されるものではない。
【0137】
略語:DK:誘電率;DF:散逸率;CTE:熱膨張係数
【0138】
実施例1-誘電体フィルムの製造および性質
低Tg、低モジュラス、低誘電率、および低散逸率が組み合わさった誘電体フィルムの具体例およびそれらの幾つかの性質が表1に示されている。組成物は、1)成分を溶融ミキサー装置で混ぜ合わせること(すなわち、無溶媒法);または2)高速回転ミキサーで溶媒中で混ぜ合わせ均一に分散させてワニスとすることの何れかによって得られ;次いでバーを用いてワニスを2ミルのPETフィルム上にゆっくりと流下させ、そして保持溶媒が<1%のレベルまでオーブン中で乾燥して、組成物を約1~3ミル厚みのフィルムとして生成する。物理的および電気的なデータは、誘電体フィルムの層をスタックし、6×6インチの水圧プレスを250Psiの圧力で使用して強固化し、続いて華氏330度(166℃)で30分間硬化して0.6mmの厚みを有するフィルムを形成することによって得た。Ricon257は、トータルグループ(米国)によって製造されている低分子量、高ビニル含量のブタジエン-スチレンコポリマーである。Ricon154はトータルグループ(米国)によって製造されている低分子量、高ビニル含量のポリブタジエン樹脂である。KR05はイネオス社(ドイツ国)によって製造されている高分子量の、主として1,4-付加のスチレンブタジエンコポリマーである。SR8983はライオンエラストマー社(米国)によって製造されている高分子量の、主として1,4-付加のスチレンブタジエンコポリマーである。SA9000はサビック社(米国)によって製造されているメタクリレート末端ポリフェニレンエーテルである。GMI5100はシンエーティーアンドシー社(韓国)によって製造されているビスマレイミドである。充填剤およびリン系難燃剤OP935はクラリアント社(欧州)によって製造されているExolit(登録商標)である。GBはスリーエム社(米国)によって製造されているガラス微小球である。溶融シリカはイメリスリフラクトリーミネラルズ(米国)によって製造されているteco-sil-10である。PTFEパウダーはシャムロックテクノロジーズ(米国)によって製造されているSST-4MGである。AGEはシグマアルドリッチ社(米国)からのアリルグリシジルエーテルである。Dicup-R(登録商標)はアルケマ社(米国)によって製造されている過酸化物触媒である。報告されているDk(誘電率)およびDf(散逸率)の値は、5GHzにおいてスプリットポスト誘電体共振器により得られている。報告されているCTE値は、熱機械分析器(TMA)を使用して得られている。報告されているヤングモジュラスおよびTgの値は、動的機械分析器(DMA)を使用して得られている。剥離強度の測定値は、1オンスの銅の重量値に相当する。
【0139】
【表1】
【0140】
実施例2-本開示の誘電体フィルムの性質
表2は本技術分野で公知のフィルムと比較して、改善されたPCB挙動をもたらす、本願に開示の実施形態における誘電体フィルムの改良された性質を示している。改良された性質には、以下でさらに詳細に説明するように、挿入損失(表2における「16GHzでの挿入損失dB/インチ」)の低減および誘電率(表2における「Dk」)の低減が含まれる。改良された性質にはまた、ビアに対する応力(表2における「塑性応力」)の低減、したがってPCBの信頼性の向上が含まれる。
【0141】
誘電率、散逸率、およびスキューに基づく計算
表2における速度データは、アビシュテック社のGauss2DおよびGaussStackのような市販の電子設計自動化ソフトウェアを使用して生成した(例えば、計算により)。
【0142】
挿入損失αは以下の数式によって計算した:
【数10】

式中R=√(ωμ/2σ)であり、ωは角周波数、μは透磁率(例えば、銅については4π×10-7H/mに等しい)、σは導電率(銅については5.88×10S/mに等しい)、wは線幅、Zは特性インピーダンス、そしてεは材料の誘電率である。
【0143】
比較するための現在の先端技術は、3.5ミルの厚さの誘電材料と0.5オンスの銅を含んでいた。この先端技術で使用される誘電材料についての誘電率は、表2に示すように少なくとも3.2(例えば、3.2または3.4)であってよい。この先端技術で使用される誘電材料についての挿入損失は、表2に示すように少なくとも1.24であってよい。伝送路はインピーダンスが85~100オーム前後の差動対として設けられた。先端技術は低誘電率(表2における「Dk」)のガラスで強化した織成ガラスクロスを用いていてよく、ここで表2において「Dk」は少なくとも3.2の値であり、Tgは少なくとも170℃である。ガラスと樹脂の誘電率は全く非類似であるから、これはスキューの問題を導き得るが、ローテーションまたはリタイマのようなハードウェアによってある程度は緩和することができる。
【0144】
対照的に、やはり表2に示されているように、本開示の実施形態における誘電体フィルム(例えば、実施例1、実施例2、および実施例4~実施例11)は、誘電率が2.8に等しいかそれ未満(例えば、2.8、2.6、2.4、または2.1)の非ファイバーウィーブ(織目)強化フィルムを含んでおり、スキューなしに低減された挿入損失でもって幅広のラインを得ることが可能となり、また長距離にわたって高速で伝送を行うことが可能になる。
【0145】
Tg/モジュラスに基づく計算
銅充填ビアを備えたHDIプリント回路基板について想定した銅の性質および寸法を表3に提示する。
【0146】
【表3】
【0147】
表3に提示したパラメータおよび表1において実験的に導出した誘電材料の物理的性質に基づいて、サンプル計算を行った。表4は、典型的な既存の材料をTgが170℃のプリプレグと共に使用して製造したPCBと、表1の実施例9の低Dk、低DF、低モジュラス、および低Tgの誘電材料で作成したPCBの比較を示している。
【0148】
【表4】
【0149】
本開示の実質的に等方性で低Tgおよび低モジュラス、低Dkで低Dfのフィルムの使用は、銅の応力が降伏強度未満に維持されることを示すデータを実証したが、これに対して先端技術における既存の高Tg材料については応力が降伏強度を超過し、早期の-場合によっては組み立て自体に際しての-故障をもたらす永久的な変形が導かれる。例えば、実施例9の誘電体フィルムを使用して計算される応力は銅の降伏強度よりも小さいから、銅は弾性的に振る舞って低サイクル疲労を受けず、非常に高い信頼性が示される。対照的に、先端技術において現在使用されている典型的な既存の材料(この場合には170℃のTgの材料のプリプレグ)は、より大きな応力を生ずる結果になる。こうした結果は、現状の材料の組み合わせが使用された場合には、過大応力に起因する故障および塑性ひずみに起因する疲労の可能性があることを示している。
【0150】
【表2】
【0151】
表1に記載した他の誘電体フィルムについて応力を計算した。表2に示すように、それらの実質的に等方性で、低Tg、低モジュラス、低Dkおよび低Dfの材料は、先端技術の高Tg材料と比較したとき、ゼロの塑性ひずみ、または実質的に低い塑性ひずみのいずれかを有している。加えて、表2に示すように、この開示は低い挿入損失をもたらす。よって、本開示を用いることにより、高い信頼性があり且つ高速なPCBを製造可能であることが実証されている。
【0152】
均等
当業者は、単に型通りの実験を用いることによって、本願に具体的に記載された特定の実施形態に対する多くの均等物を認識し、または確認可能である。そうした均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。


【要約】
本願に記載されるのは、誘電体ポリマーフィルムと、少なくとも1つの誘電体ポリマーフィルムを含む、多層プリント回路基板および高密度相互接続プリント回路基板のようなプリント回路基板である。
【選択図】なし