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特許7265106欠陥又は劣化を検出するためのインピーダンス監視を備える超音波レンズクリーニングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】欠陥又は劣化を検出するためのインピーダンス監視を備える超音波レンズクリーニングシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/12 20060101AFI20230419BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20230419BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20230419BHJP
   H04N 23/52 20230101ALI20230419BHJP
【FI】
G01N29/12
G02B7/02 E
G03B17/02
H04N23/52
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019523730
(86)(22)【出願日】2017-11-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 US2017059536
(87)【国際公開番号】W WO2018085403
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】15/497,624
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/415,554
(32)【優先日】2016-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【弁護士】
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】デビッド パトリック マギー
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ジョン フェディガン
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0266379(US,A1)
【文献】特開2010-172847(JP,A)
【文献】特開2002-207019(JP,A)
【文献】特開平07-151946(JP,A)
【文献】特開2012-204958(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0198458(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2479595(EP,A1)
【文献】米国特許第9070856(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G01N 27/00-27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
レンズアセンブリ内のレンズに機械的に結合されるトランスデューサにドライバから発振駆動信号を供給することと、
前記トランスデューサが或る周波数範囲内の第1及び第2の周波数で前記レンズを振動させるように前記発振駆動信号の周波数を制御することと、
前記レンズを前記第1の周波数で振動させる間に、前記トランスデューサの第1の電流を測定し、前記トランスデューサの第1の電圧を測定し、前記第1の測定された電流と前記第1の測定された電圧とに応答して前記トランスデューサに関連する第1の周波数応答値を判定することと、
前記レンズを前記第2の周波数で振動させる間に、前記トランスデューサの第2の電流を測定し、前記トランスデューサの第2の電圧を測定し、前記第2の測定された電流と前記第2の測定された電圧とに応答して前記レンズアセンブリに関連する第2の周波数応答値を判定することと、
第1の比較において、第1の相違が前記第1の周波数応答値とベースラインレンズアセンブリの健全なトランスデューサに関連する第1のベースライン周波数応答値との間に存在するかを判定することと、
第2の比較において、第2の相違が前記第2の周波数応答値と前記ベースラインレンズアセンブリの健全なレンズアセンブリに関連する第2のベースライン周波数応答値との間に存在するかを判定することと、
前記第1及び第2の比較に応答して前記レンズアセンブリにおける劣化の存在を判定することであって、前記劣化が、前記レンズにおける亀裂又は破損、前記トランスデューサにおける減極又は亀裂、前記レンズアセンブリにおける密封の欠陥、又は前記レンズアセンブリにおける接着の欠陥である、前記判定することと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1及び第2の比較に応答して前記劣化のタイプを識別することを更に含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
コントローラを用いて、多数の周波数にわたる前記ベースラインレンズアセンブリに対する測定された周波数応答値を含むベースライン周波数応答プロファイルを測定することと、
前記コントローラを用いて、前記ベースライン周波数応答プロファイルを格納することと、
前記コントローラを用いて、前記ベースライン周波数応答プロファイルの極又はゼロに応答して前記周波数範囲を識別することと、
を更に含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
コントローラを用いて、前記劣化の存在を判定することに応答して信号を提供することを更に含む、方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、
前記発振駆動信号を提供することが、
周波数制御信号に応答して信号生成器回路から前記ドライバにゼロでない周波数で発振する出力信号を提供することと、
前記ドライバ内の増幅器を使用して、前記発振駆動信号を前記トランスデューサに提供するために前記出力信号を増幅することと、
コントローラから前記信号生成器回路に前記周波数制御信号を提供することを含む前記発振駆動信号の周波数を制御することと、
を含む、方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法であって、
前記劣化のタイプを識別することが、前記第1の相違が存在するかどうかと前記第2の相違が存在するかどうかとに応答して前記劣化のタイプを識別することを含む、方法。
【請求項7】
請求項2に記載の方法であって、
コントローラを用いて、前記劣化の存在を判定することに応答して信号を提供することを更に含む、方法。
【請求項8】
請求項3に記載の方法であって、
前記ベースライン周波数応答プロファイルを測定することが、トランスデューサ電圧に対して前記多数の周波数にわたる前記ベースラインレンズアセンブリに対する前記周波数応答値を測定することを含む、方法。
【請求項9】
請求項5に記載の方法であって、
コントローラを用いて、多数の周波数にわたる前記ベースラインレンズアセンブリに対する測定された周波数応答値を含むベースライン周波数応答プロファイルを測定することと、
前記コントローラを用いて、前記ベースライン周波数応答プロファイルを格納することと、
前記コントローラを用いて、前記ベースライン周波数応答プロファイルの極又はゼロに応答して前記周波数範囲を識別することと、
を更に含む、方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法であって、
前記トランスデューサ電圧が第1のトランスデューサ電圧であり、
前記ベースライン周波数応答プロファイルを測定することが、第2のトランスデューサ電圧に対して前記多数の周波数にわたる前記ベースラインレンズアセンブリに対する前記周波数応答値を測定することを含む、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、
前記ベースライン周波数応答プロファイルを測定することが、トランスデューサ電圧に対して前記多数の周波数にわたる前記ベースラインレンズアセンブリに対する前記周波数応答値を測定することを含む、方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、
前記第1の相違が存在するかどうかと前記第2の相違が存在するかどうかとに応答して前記劣化のタイプを識別することを更に含む、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、
前記トランスデューサ電圧が第1のトランスデューサ電圧であり、
前記ベースライン周波数応答プロファイルを測定することが、第2のトランスデューサ電圧に対して前記多数の周波数にわたる前記ベースラインレンズアセンブリに対する前記周波数応答値を測定することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
カメラシステムは、車両カメラ、セキュリティカメラ、工業用オートメーションシステムなどのオートモーティブ及び他の応用例において、また、その他の応用例及びエンドユースシステムにおいて、益々一般的になってきている。カメラ及び照明系の動作は、クリーンな光路によって容易になり、クリーンな光路は、汚れ、水分、その他のごみによって防害され得る。これは、車載カメラシステム、屋外セキュリティカメラシステム、工業設備におけるカメラシステムなどの、屋外応用例において特にいえることである。例えば、カメラ又は光源レンズは、周囲の気象条件、汚れやごみ、並びに、レンズを介する光透過を悪化又は低下させ得るその他の汚染物に曝され得る。レンズ又はレンズカバーを自己クリーニングするために自動レンズクリーニングシステム(LCS)が、車両及びセキュリティカメラのために開発されてきている。このようなシステムは、レンズ表面を洗浄する空気又は水スプレー装置を含み得る。他のレンズクリーニングシステムが、レンズを電子的に振動させて、汚染物、水分、又は他の望まれない物質をレンズカバーから取り除いて画質又は光透過効率を向上させる。或る応用例において、光学系及びレンズクリーニング装置は、機械的応力、熱応力、及び、クリーニンシステム構成要素を劣化させ得るその他の悪環境条件に曝されることがある。例えば、レンズ又はレンズカバーにヒビが入ったり、振動トランスデユーサが故障したり、密封構造が損なわれたり、レンズとトランスデユーサの間の接着結合が損なわれたり、その他のタイプのいくつかの故障又は劣化が生じ得る。カメラ又は光源に好都合にアクセスできない車両ベースのシステム又はその他の応用例において、レンズクリーニンシステムの適切な動作を維持して、レンズ又はレンズカバーを介する継続的な光透過を保証することが望ましい。
【発明の概要】
【0002】
説明する例は、レンズクリーニングシステム、ドライバ、及びレンズクリーニングシステムにおける欠陥又は劣化を検出する方法を含む。レンズクリーニングシステムは、注目の周波数範囲でレンズを振動させるようにレンズトランスデューサ駆動信号周波数を制御してドライバフィードバック信号に従って周波数応答値を測定し、健全なシステムについて測定周波数応答値をベースライン周波数応答値と比較するためのコントローラを含む。コントローラは、複数の周波数における測定周波数応答値とベースライン周波数応答値の間の相違に従って、レンズクリーニングシステムにおける欠陥又は劣化の存在を判定する。周波数応答は、インピーダンス応答、アドミッタンス応答、又は他の周波数ドメインの等価物として測定され得る。インピーダンス応答は、本説明における技法を伝えるのに有用である。
【0003】
レンズクリーニングシステム及びレンズクリーニングシステムドライバの説明される例において、ドライバは、レンズを振動させるために発振駆動信号をトランスデューサに提供する出力、及びトランスデューサ電圧及び電流フィードバック信号を受け取るフィードバック回路を含む。ドライバは更に、注目の周波数範囲の周波数でレンズを振動させるように駆動信号の周波数を制御し、電流及び電圧フィードバック信号に従って測定周波数応答値を決定するコントローラを含む。コントローラは、測定周波数応答値を、注目の周波数範囲の健全なレンズクリーニングシステムについてのベースライン周波数応答値と比較し、測定周波数応答値とベースライン周波数応答値との間の相違に従ってレンズクリーニングシステムの欠陥又は劣化の存在を選択的に判定する。或る例におけるドライバは、複数の注目の範囲の解析に基づいて、欠陥又は劣化のタイプを提供する。或る実装形態において、コントローラは、第2のモードにおいて、注目の周波数範囲を含む広い周波数範囲にわたって健全なレンズクリーニングシステムについて測定される周波数応答値を含むベースラインインピーダンスプロファイルを測定及びストアするように動作し、コントローラは、ベースラインインピーダンスプロファイルの極又はゼロを含む1つ又は複数の注目の周波数範囲を識別する。
【0004】
レンズクリーニングシステムの欠陥又は劣化を検出するための方法が説明される。この方法は、注目の周波数範囲の複数の周波数でレンズを振動させるように駆動信号の周波数を制御すること、及び注目の周波数範囲の周波数の1つに個々に対応する測定周波数応答値を決定することを含む。この方法は更に、測定周波数応答値を、健全なレンズクリーニングシステムについての注目の周波数範囲のベースライン周波数応答値と比較すること、及び測定周波数応答値とベースライン周波数応答値との間の相違に従って、レンズクリーニングシステムの欠陥又は劣化の存在を選択的に判定することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】レンズクリーニングシステムの概略図である。
【0006】
図2】レンズクリーニングシステムを含むカメラレンズアセンブリの部分断面側面図である。
【0007】
図3】レンズクリーニングシステムの劣化又は欠陥を検出及び識別する例示のプロセス又は方法のフローチャートである。
【0008】
図4】励起周波数の関数としての例示のインピーダンスの大きさの応答曲線のグラフである。
【0009】
図5】励起周波数の関数としての例示のインピーダンス位相角応答曲線のグラフである。
【0010】
図6】健全なレンズクリーニングシステムについての第1の周波数範囲の異なる電圧振幅での例示のインピーダンスの大きさの応答曲線のグラフである。
【0011】
図7】劣化又は欠陥トランスデューサを備えたレンズクリーニングシステムについての第1の周波数範囲の異なる電圧振幅での例示のインピーダンスの大きさの応答曲線のグラフである。
【0012】
図8】健全なレンズクリーニングシステム、及びレンズ又はレンズカバーとトランスデューサとの間に劣化した又は欠陥結合を有するレンズクリーニングシステムについての、第2の周波数範囲の所与の動作電圧での例示のインピーダンスの大きさの応答曲線のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面において、同様の参照数字は一貫して同様の要素を指し、種々の特徴は一定の縮尺で描かれているとは限らない。この説明において、「結合する」という用語は、間接的又は直接的な電気的又は機械的接続或いはその組合せを含む。例えば、第1のデバイスが第2のデバイスと結合する又は結合される場合、この接続は、直接的な電気的接続によるもの、又は、1つ又は複数の介在デバイス及び接続部を介した間接電気的接続によるものとし得る。
【0014】
図1は、ドライバ集積回路(IC)100を備える超音波レンズクリーニングシステムを示し、図2は、超音波レンズクリーニングシステムを含むカメラレンズアセンブリ200を示す。図2に示すように、レンズアセンブリ200は、レンズ202を振動させるために機械的に結合される、円筒状の又は「リング」トランスデユーサ102を含む。一例において、トランスデユーサ102はレンズ202に接着される。カメラレンズシステムの文脈において例示するが、本説明の種々の技法は、カメラの有無に関わらず照明系又は他の光学系において更に有用である。説明される装置及び技法は、自動レンズクリーニング動作にも用いられ得る、コントローラ及びトランスデユーサを用いるレンズクリーニングシステムにおける欠陥又は劣化の自動検出を促進する。レンズは、本明細書において用いられる場合、焦点合わせ要素、或いは光造形、又はカメライメージングを助ける他の光学効果を実装するその他のレンズ、及び如何なるイメージング機能も実施することなく更なる光学要素を保護を単に提供するレンズカバー又は光学窓とし得る。説明される例は、1つ又は複数の電気的フィードバック信号に基づいて、レンズ及び関連する機械的構造の機械的周波数応答を評価する装置及び技法を提供し、周波数応答値を決定又は推測するために複数の周波数にわたってインピーダンス値又はアドミッタンス値を決定すること、及びベースライン周波数応答値と測定周波数応答値の比較を含む。
【0015】
一例におけるレンズ202は、図2に示すように、湾曲した外側面を有する「魚眼」レンズである。他の例において、フラットレンズ又は異なるプロファイルを有するレンズを用い得る。この例におけるレンズアセンブリは、円筒状のキャップファスナー201を用いる概して円筒形のハウジング204に搭載され、ハウジング204の内部に水又はごみが入らないようにレンズ202の端とファスナー201の間に延在するОリング208を用いて密封される。一例において、ハウジング204は、後方支援カメラ、前方を向くカメラ、又は側方を向くカメラのためのレンズカバーとして動作するように自動車に搭載され得る。他の例において、アセンブリ200は、セキュリティカメラ又は照明応用例などのため、建物又は電柱に搭載され得る。他の例において、アセンブリ200は、商業又は住居用の建物内など、内部セキュリティ監視システムのために用いられ得る。この例において、一連の概して平坦な2次レンズ210が、スペーサ206の内側表面に配置される。2次レンズ210及び魚眼レンズ202は、カメラ212によるイメージングのための光路を提供する。トランスデューサ102は、ドライバIC100との接続のため、ハウジング204のベース214における開口216を介して延在するリード線又は端子131a及び131bを含む。図2の例において、レンズ202は、円筒形の内部スペーサ構造206を備える円筒状のハウジング204内に搭載される。この例におけるトランスデューサ102は、内側スペーサ206とハウジング204の外壁との間に配置される円筒状のリング形状の圧電トランスデューサである。
【0016】
図1に最もよく示されるように、ドライバIC100は、基準電圧(例えば、GND)を有する基準ノード108に対する電池電圧信号VBを提供する電池などの電力供給又は電源104から入力電力を受け取る電力入力ピン又はパッド106を含む。ドライバIC100は、電池電圧信号VBを受け取り、ドライバ100の内部回路要素に電力を供給するために1つ又は複数の供給電圧(図示せず)を提供する電力管理回路110を含む。また、IC100は、トランスデューサ102の、それぞれ、リード線131a及び131bへの接続のための端子112及び114を備える出力を含む。動作において、ドライバ100の出力は、非ゼロ周波数Ftの発振駆動信号VDRVをトランスデューサ102に提供して、レンズ202を振動させる。下記で説明するように、トランスデューサ102の励起によりレンズ202が制御振動されることにより、レンズ202の外側表面からの汚染物又はごみのクリーニング又は除去が容易になる。また、トランスデューサ102は、レンズクリーニングシステムの健全性を評価するために第1又は第2のモードにおいてドライバ100によって制御される。特定の例において、ドライバ100は、第1のモードにおいてレンズクリーニングシステムにおける1つ又は複数の欠陥又は劣化の存在を検出し得る。第2のモードにおいて、ドライバ100は、下記で説明するように、1つ又は複数のベースラインプロファイルを決定するため、健全なシステムの特徴付け又は較正を行い得る。
【0017】
図1に示すように、ドライバIC100は、信号生成器116を備えるコントローラ又は制御回路130を含む。一例において、コントローラ130は、関連する電子メモリを備えるプロセッサである。コントローラ130は、トランスデューサ102の発振周波数Ftを制御することによって、様々なクリーニング、欠陥又は劣化の検出、及び任意選択の較正又はベースライン処理機能を実装する。一例において、コントローラ130は、信号生成器回路116に所望の周波数Ftを提供する出力124を備える、掃引及び共振トラッキング欠陥検出回路122を含む。別の可能な実装形態において、コントローラ130は、周波数Ftを駆動信号VDRVの所望の周波数Ftを表すデジタル値として生成するため、関連するメモリにストアされた命令の実行により、掃引及び共振トラッキング、欠陥検出、及び較正機能を実装する、DSP又は他のプログラマブルデジタル回路などのプロセッサに実装される。一例において、信号生成器116は、コントローラ130を実装するプロセッサのパルス幅変調(PWM)出力である。信号生成器回路116は、非ゼロ周波数Ftで発振する出力信号VSを提供する。或る実装形態において、コントローラ130は、統合電子メモリを含むか、又は、プロセッサによって実装されるプログラム命令をストアし、下記で説明するようなベースラインインピーダンス値などのベースライン周波数応答値152をストアする外部電子メモリ150に動作可能に接続される。図示される例は、システムの周波数応答を表すインピーダンス値152を用いる。アドミッタンス値、又はシステムの周波数応答を表す他の値などの他の値を用いることもできる。
【0018】
ドライバIC100は更に、出力信号VSを増幅して発振駆動信号VDRVを生成する増幅器118を含む。このようにして、コントローラ130は、駆動信号VDRVの所望の周波数Ftを提供し、それによって、本明細書で説明するように、レンズ202のクリーニングのため、及び/又は、較正及び欠陥/劣化検出機能を実装するために、トランスデューサ102の発振周波数を制御する。一例において、増幅器118は、トランスデューサ102に発振駆動信号VDRVを提供するためにトランスデューサ端子131a及び131bと個々に結合される第1及び第2の出力を備えるフルHブリッジ増幅器回路である。図1の例において、更に、増幅器出力とトランスデューサ端子131a及び131bとの間にL-Cフィルタ回路119が接続される。1つの可能な実装形態では、フィルタ119は、増幅器118の第1の出力と第1のトランスデューサ端子131aとの間に接続される第1のフィルタ回路119a、及び増幅器118の第2の出力と第2のトランスデューサ端子131bとの間に接続される第2のフィルタ回路119bを含む。矩形波信号VSを生成するPWMプロセッサ出力、或いは非ゼロ信号周波数Ftを有する正弦波、三角波、鋸波又は他の波形を提供するための他の信号生成器回路要素を含め、様々な異なる信号生成器回路116が用いられ得る。一例において、増幅器118の第1の出力は、発振駆動信号をトランスデューサ102に届け、第2の増幅器出力は、第1の出力に対して180度位相がずれた発振駆動信号をトランスデューサ102に届ける。
【0019】
或る例において、増幅器118は、第1のフィルタ回路119aを介して第1の出力端子112にシングルエンド出力を提供し得、トランスデューサ10からの戻り電流が第2のフィルタ回路119bを介して流れ、増幅器118の第2の出力に戻る。図示の例において、増幅器118は、フィルタ119a、119bに差動出力を提供する。この場合、個々のフィルタ回路119a及び119bは各々、増幅された信号をトランスデューサ102に届けるため、第2のインダクタ端子と共通基準電圧(例えばGND)との間に接続される一連のインダクタ及びコンデンサを含む。このようにして、増幅器118は、信号生成器出力信号VSを増幅し、トランスデューサ102に発振駆動信号VDRVを届ける。フィルタ回路119は、有利にも、PWM信号生成器116からの矩形波出力を用いて、概して正弦波の発振信号VDRVを提供して、トランスデューサ102及び機械的に結合されたレンズ202を振動させ得る。
【0020】
ドライバIC100はまた、トランスデューサ102内を流れる電流IDRVを表す電流フィードバック信号IFBを生成する電流センサ又は電流トランスデューサ120を備えるフィードバック回路を含む。フィードバック回路要素はまた、トランスデューサ出力端子112及び114に接続される入力と、トランスデューサ電圧を表す電圧フィードバック信号VFBを生成する増幅器出力とを備える差動増幅器132を含む。フィードバック信号IFB及びVFBはコントローラ130に提供される。一例において、コントローラ130は、電流及び電圧フィードバック信号IFB及びVFBをデジタル値に変換するアナログ-デジタル(A/D)コンバータ134及び135を含む。1つの可能な実装形態において、コントローラ130、増幅器118、及びフィードバック回路要素は、単一の集積回路100内に製作される。ドライバ100は、概して照明システムのための様々な車両ベースシステム及び/又はセキュリティカメラシステムのためのコンパクトな解決策を提供するように、カメラ212(又は光源)と共に単一の印刷回路基板(PCB)上に提供され得る。
【0021】
ドライバIC100は、超音波レンズクリーニング機能を、関連するトランスデューサ102と連携して選択的に提供するためにノーマルモードで動作する。図2のレンズ202の外側表面は、特に屋外設置において、本明細書において汚染物と称する、汚れ、ごみ、水分、及び他の光学的な障害物に晒され得る。ドライバ100は、発振信号を提供してトランスデューサ102にレンズ102を振動させて、レンズ202のクリーニングを促進又は助長する。一例において、ドライバ100は、超音波駆動信号又は電圧波形VDRVを提供して、トランスデューサ102を作動させ、レンズ202の表面から汚れ及び/又は水分を除去するためにトランスデューサ102に超音波を用いてレンズ202を機械的に振動させる。システム共振周波数に等しい又はそれに近い周波数の超音波でのレンズ202の機械的な振動又は動きは、レンズ202からの、水、汚れ、及び/又はごみのエネルギー効率のよい除去を促進し得る。一例におけるドライバIC100は、レンズクリーニング動作の間、フィードバック信号IFB及び/又はVFBを用いる閉ループシステムを提供する。一例において、ドライバIC100は、電流フィードバック信号IFBから確かめられる電流又はインピーダンス信号値の極小値又は極大値における又はその近傍における動作を調整する。一例において、ドライバIC100は、極小値又はその近傍或いは極小値と極大値の間における動作を調整する。一例におけるコントローラは、A/Dコンバータ134及び/又は135からの変換値を用いて、レンズクリーニング動作のためのトランスデューサ102の駆動において閉ループ制御を実装する。
【0022】
コントローラ130は、レンズクリーニングシステムにおける劣化又は欠陥を検出するための第1のモード(例えば、下記で説明する図3のDETECTモード)でも動作する。図1に示すように、アナログフィードバック信号VFB及びIFBは、A/Dコンバータ134及び135によってデジタル値に変換される。一例におけるコントローラ130は、離散フーリエ変換(DFT)成分136及び137をそれぞれ計算して、コンバータ134及び135からの時間ドメインデジタル電圧及び電流フィードバック値に基づいて電圧及び電流フェーザ値138及び139を提供する。コントローラ130はまた、複素除算(DIVIDE)機能140を実装して、所与のサンプルについて、電流フェーザ値139に対する電圧フェーザ値138の比としての掃引インピーダンス値142などの掃引周波数応答値を演算する。この点で、A/Dコンバータは、駆動されたトランスデューサ102に関連するフィードバック電圧及び電流を表す一連のデジタル値を得るため、十分に高いサンプリング周波数で動作する。コントローラ130のプロセッサによるプログラム命令の実行によって実装される処理は、一連の周波数応答値(例えば、インピーダンス値)142を提供する。
【0023】
第1のモードにおける劣化/欠陥検出動作において、コントローラ130は、注目の周波数範囲の複数の周波数でレンズ202を振動させるように、駆動信号VDRVの周波数Ftを制御する。一実装において、コントローラ130は、1つ又は複数の所定の注目の周波数範囲について周波数掃引を実施する。コントローラ130は、周波数掃引の間フィードバック信号をデジタル的に変換し、周波数スペクトルフェーザ情報138及び139を得、これらの値を除算(140)して、注目の範囲の周波数に対応する掃引周波数応答値142を得る。コントローラ130はまた、測定周波数応答値142を、健全なレンズクリーニングシステムについての所与の注目の周波数範囲内の周波数のうち対応する周波数に関連するベースライン周波数応答値152と比較する比較機能144を実装する。コントローラ130は、この比較を用いて、測定周波数応答値142とベースライン周波数応答値152との間の相違に従って、システムにおける欠陥又はレンズクリーニングシステムにおける劣化の存在を選択的に判定する。コントローラ130は、継続的な掃引を実装する必要はなく、その代わりに、所定の注目の周波数範囲に含まれる1つ又は複数の周波数でレンズ202を振動させるようにレンズトランスデューサ駆動信号周波数Ftを制御し、ドライバフィードバック信号VFB、IFBに従って、対応する周波数応答値142を演算する。
【0024】
コントローラ130は、測定周波数応答値142を、健全なシステムについての対応するベースライン周波数応答値152と比較する。コントローラ130は、測定周波数応答値142とベースライン周波数応答値152との間の相違に従って、レンズクリーニングシステムにおける欠陥又は劣化の存在を選択的に判定する。或る実装において、コントローラ130は、測定値142とベースライン値152との間の差と閾値とを比較して、システムが健全かどうかの初期判定を行う。欠陥又は劣化が判定される場合(例えば、差が第1の閾値より大きい場合)、この差の量は、第2の閾値比較を用いて疑われる欠陥と疑われる劣化とを区別するために用いられ得る。一例におけるコントローラ130は、欠陥又は劣化の存在の判定に応答して信号FAULT/DEGRADATIONをホストシステム148に選択的に提供する出力146を含む。このアーキテクチャにより、ホストシステムによる適切な矯正措置が促進される。例えば、車載運転補助応用例において、ドライバIC100は、車両運行、ブレーキ制御、操舵制御、運転者警告などのためのカメラ出力を用いる自動車両制御システムにレンズクリーニングシステムが劣化又は欠陥を有することを自動的に報知し得る。
【0025】
一例において、コントローラ130は更に、第2のモード(例えば、下記で説明する図3のBASELINEモード)で動作可能である。第2のモードは、既知の健全なシステムの周波数応答を1つ又は複数のベースラインプロファイルとして特徴付けることによって健全なシステムを較正するために用いられ得る。一例において、コントローラ130は、インピーダンスプロファイル(例えば、図1のメモリ150内のプロファイル)など、1つ又は複数のベースライン周波数応答プロファイルを測定する。個々のベースラインプロファイルは、1つ又は複数の注目の周波数範囲を含む広い周波数範囲にわたって健全なレンズクリーニングシステムについて測定される周波数応答値152を含む。コントローラ130は、1つ又は複数のベースラインインピーダンスプロファイルをレンズクリーニングシステムのメモリ150にストアし、図4及び図5に関連して下記で説明するように、ベースラインインピーダンスプロファイルの極FP又はゼロFZを含む、1つ又は複数の注目の周波数範囲を識別する。
【0026】
或る例において、コントローラ130は、複数の異なるトランスデューサ電圧の各々に対し1つ又は複数のベースラインプロファイルを決定し、これらの複数のベースライン周波数応答プロファイルをレンズクリーニングシステムのメモリにストアする。これらの例において、コントローラ130は、複数の異なるトランスデューサ電圧の各々に対し第1の(DETECT)モードで動作して、対応するトランスデューサ電圧について注目の所定範囲の周波数でレンズ202を振動させるためにトランスデューサ102を駆動する。この場合、コントローラ130は、電流フィードバック信号IFB及び電圧フィードバック信号VFBに従って注目の所定周波数範囲の周波数の1つに個々に対応する測定周波数応答値142を決定する。コントローラ130は、測定周波数応答値を、対応するトランスデューサ電圧について、注目の所定周波数範囲の対応するベースライン周波数応答値152と比較する。コントローラ130は、この比較において識別される相違に従って、欠陥又は劣化の存在を選択的に判定する。この点で、システムの正常なクリーニング動作は、レンズ202から汚染物を除去するように適応される或るトランスデューサ電圧において動作し得る一方で、システムの欠陥又は劣化検出動作が、電力消費を潜在的に低減しながら、これらの電圧及び/又は1つ又は複数の故障又は欠陥の存在を検出するように適応される異なる(例えば低い)電圧で実施され得る。このアーキテクチャは、レンズクリーニングシステムが電池電源104により動作する場合に特に有利であり、トランスデューサに対する熱応力を低減する点においても有利である。
【0027】
或る実装形態において、更に、コントローラ130は、相違が欠陥又は劣化の存在を示す特定の注目の周波数範囲に従って、特定の判定された欠陥又は劣化タイプを選択的に識別する。このようにして、ドライバ100は、レンズクリーニングシステムが劣化又は欠陥を有することを初期的に示し、任意選択で特定の相違に従って欠陥タイプも示すため、ホストシステム148にFAULT/DEGRADATION信号を選択的に発し得る。このような実装は、ホストシステム148に高度な情報を提供し、インピーダンス応答又はより一般的には周波数応答に基づいて特定の欠陥又は劣化のタイプを示すことを促進する。このような認識可能なタイプには、レンズのヒビ又は破損、トランスデューサのヒビ又は脱分極、密閉不良、接着不良などが含まれ得る。したがって、説明される例は、レンズカバーシステムにおいて不良が生じた時点の識別、不良のタイプの識別を促進し、コントローラ130及び/又はホストシステム148は、適切な補正又は矯正動作を提供し得る。この設計は、不良を積極的に識別し、欠陥又は劣化を有するシステム構成要素の交換を可能にして、システムを高利用可能性で動作可能にすることによって、レンズクリーニングシステムの準備性及び利用可能性の改善を促進する。
【0028】
図3図8を参照すると、図3は、レンズクリーニングシステムの劣化又は欠陥を検出及び識別するプロセス又は方法300を示す。方法300は、或る例において、上述したレンズクリーニングシステムのドライバコントローラ130などのコントローラ又はプロセッサによって実装され得る。プロセス300は、302及び304において、関連するレンズクリーニングシステムが動作可能又は「健全」であることが既知であるとき、図1のコントローラ130のメモリにストアされるベースラインプロファイル150及び対応するベースライン周波数応答値152を確立するための初期較正又はベースライン確立モード(図3の「BASELINE」モード)を含む。例えば、健全なシステムは、トランスデューサ102、対応するレンズ202とのトランスデューサ102の機械的結合を含む機械的構造(図2)、ハウジング204へのレンズ202及び/又はトランスデューサ102の搭載、密閉構造208の構造的完全性及び位置決めなどを含め、システム構成要素のいかなる既知の欠陥又は劣化も有さない。306~316において、このシステムは、レンズクリーニングシステムの劣化及び/又は欠陥を選択的に検出し任意選択で識別するため検出モード(図3の「DETECT」モード)で動作する。
【0029】
BASELINEモードにおける動作は図3の302で開始する。302において、コントローラ130は、健全なシステムについて、異なる電圧及び周波数におけるベースライン周波数応答プロファイルを測定し、好ましくは、フラッシュメモリ、EPROMなどの不揮発ストレージにこれらのプロファイルをストアする。一例において、この設計は、広い周波数範囲にわたって複数の周波数でレンズ202を振動させるようにトランスデューサ駆動信号周波数Ftを制御する一方で、周波数応答値152を決定(例えば、演算)するため、サンプリングされた電流値及び電圧値を測定することを含む。上述したように、この手法は、周波数Ftの(例えば、広い周波数範囲を通して上向き又は下向きの)制御によって、又は任意の適切なシーケンスにおける広い周波数範囲を通した離散周波数にわたる選択的な動作によって、連続周波数掃引として実装され得る。一例において、ベースライン周波数応答プロファイルは、302において複数のトランスデューサ電圧について測定又はその他の方法で確立される。次いで、コントローラ130は、304において、得られた周波数応答プロファイルを解析して、各トランスデューサ電圧に対し所与の欠陥のタイプに対応する極又はゼロを含む1つ又は複数の注目の周波数範囲を識別する。所与の劣化/欠陥のタイプと、対応するトランスデューサ電圧についての1つ又は複数の特定の注目の周波数範囲との対応が、例えば、経験的な試験、工場での製造試験、或いは任意の他の適切な解析又はデータ源に基づいて、事前に確立され得る。
【0030】
図4は、一実装において10~1000kHzなどの、広範囲403にわたるトランスデューサ励起周波数の関数としての例示のインピーダンスの大きさの応答曲線402を図示するグラフ400である。光学系一般及び特にレンズクリーニングシステムに用いられる構造構成要素の様々な質量に応じた、好ましくは使用可能な範囲をカバーする他の範囲が用いられ得る。図5は、同じ広い周波数範囲403にわたるトランスデューサ励起周波数の関数としての例示の位相角応答曲線502を示す対応するグラフ500を提供する。この例において、インピーダンス曲線402は、機械系の極に対応する多数の極大値及びシステムゼロに対応する多数の極小値を含む。位相曲線502の極大値は、インピーダンス曲線402の極周波数及びゼロ周波数の幾何学的平均値に位置する。グラフ400及び500は、対応する極FP及びゼロFZを有するいくつかの別個の周波数範囲を示し、これらの周波数範囲は、極FP1及びゼロFZ1を有する第1の識別される注目の周波数範囲404-1、並びに極FP2及びゼロFZ2を有する第2の識別される注目の周波数範囲404-2を含む。
【0031】
レンズクリーニングシステムの1つ又は複数の構成要素或いは態様の欠陥及び/又は劣化は、インピーダンス曲線402及び/又は位相スペクトル曲線502の周波数スペクトルの変化を生じさせ得る。説明されるシステム及び方法は、システムの1つ又は複数の欠陥又は劣化の存在を確認するため、特定の注目の周波数範囲404を自動的に解析することを備える。また、説明された例では、クリーニングのために既に存在するシステム構成要素が用いられる。或る例におけるコントローラ130はまた、302及び304において、既知の健全な又は健全と考えられるシステムに対してシステムの特徴付け又は較正を行うために較正又は「BASELINE」動作を実装する。一例において304で、コントローラは、ベースラインインピーダンスプロファイルの極又はゼロを含む1つ又は複数の注目の周波数範囲を識別する。ここで、ベースラインインピーダンスプロファイルは、関連する欠陥のタイプ又は劣化のタイプに対応する。また、上述したように、この特徴付けは、複数の動作電圧において行われて、各動作電圧に対しベースラインプロファイルを確立し、各ベースラインプロファイル150に対し1つ又は複数の注目の周波数範囲を識別する。図4及び図5の例において、システムコントローラ130は、別個の欠陥又は劣化タイプに対応して第1及び第2の注目の範囲404-1及び404-2を識別する。この例において、第1の注目の周波数範囲404-1はトランスデューサ102の脱分極を示し、第2の注目の周波数範囲404-2は図2のシステムにおけるレンズ又はレンズカバー202とトランスデューサ102との間の欠陥結合に関連する。304において、更なる欠陥特有の注目の周波数範囲404がコントローラ130によって決定され得る。この柔軟性により、複数の欠陥タイプの間の別々の解析及び欠陥識別が可能になり、したがって、コントローラ130によりホストシステム148(図1)に提供され得る高度な診断情報が容易に得られる。この例におけるコントローラ130は、欠陥又は劣化と、対応する、レンズクリーニングシステムの構成要素によって構成される機械系における共振の挙動との関係を識別する。
【0032】
引き続き図3において、コントローラ130は、306~310において「DETECT」モードで動作する。306において、コントローラ130は、注目の周波数範囲404の複数の周波数でレンズ202を振動させるために駆動信号VDRVの周波数Ftを制御する。一例において、コントローラ130は、注目の周波数範囲404を通して周波数Ftを掃引する。他の例において、コントローラ130は、注目の範囲404内の複数の別個の周波数Ftでトランスデューサ102を動作させる。ここで、連続掃引はあらゆる可能な実装形態の厳密な要件ではない。306において、コントローラ130は、電流及び電圧フィードバック信号IFB及びVFBに従って注目の周波数範囲404内の周波数の1つに個々に対応する測定周波数応答値142も決定する。上述したように、コントローラ130は、306において、1つ又は複数の適切な技法(例えば、DFT演算、除算演算など)を用いて、2つ以上の動作電圧の各々に対し、対応するインピーダンス掃引プロファイルを決定する。図示した方法300は複数の動作トランスデューサ電圧におけるベースライン相関及び欠陥/劣化検出を含むが、単一の電圧のみについてこれらの工程が成される他の実装が可能である。
【0033】
図3の308において、コントローラ130は、1つ又は複数の注目の周波数範囲404に対応する1つ又は複数のインピーダンス掃引プロファイルを、メモリ150内の1つ又は複数の対応するベースラインプロファイルの対応するベースライン周波数応答値152と比較する。310において、コントローラ130は、すべての掃引プロファイルが対応するベースラインプロファイルに類似しているかどうかを判定する。308及び310において、任意の適切な比較技法によって類似又は相違が確立され得る。数学的な技法が、コントローラ130によって実装され得る。例えば、或る量の相違が存在するかどうかを判定するため相関機能が評価され得る。この場合、コントローラ130は、出力146においてFAULT/DEGRADATION信号を提供して、ホストシステム148に欠陥又は劣化が検出されたことを警告する。
【0034】
別の例において、コントローラ130は、比較に基いて、差の値の二乗和を演算し、差の値が所定の閾値を超える場合、レンズクリーニングシステムにおける欠陥又は劣化の存在を選択的に判定する。或る例において、異なるプロファイル及び比較には異なる閾値が用いられ得、各注目の周波数範囲に対し及び各動作トランスデューサ電圧に対し、特定の閾値が用いられる。一例において、コントローラ130は、測定点におけるベースライン周波数応答値と掃引周波数応答値との間の二乗平均平方根(RMS)差を演算し、この値を、対応する閾値と比較する。掃引プロファイルがいずれも対応するベースラインプロファイルに類似するとコントローラ130が判定する(310においてYES)場合、上述したようにプロセス300は306に戻る。
【0035】
検出モード処理は、システムの正常な動作実装における任意の適切な時間に実装され得る。例えば、レンズクリーニングシステムが、ホストシステム148によって確立されるスケジュール、例えば、周期的クリーニングなどに従ってインスタンス化又は開始され得る。一例におけるコントローラ130は、実際のクリーニングの前処理である306~310において欠陥/劣化検出動作を実装する。システムが動作可能であると判定される場合(例えば、識別又は判定される欠陥又は劣化がない場合)、コントローラ130は、肯定判定がなされた(310においてYES)後、任意の適切なトランスデューサ駆動パラメータ(例えば、電圧、周波数、継続時間など)に従ってレンズクリーニングを実施するようにトランスデューサ102を駆動する。このプロセスは、次回、ホストシステム148によってレンズクリーニングシステムが作動されるとき、繰り返される。
【0036】
相違の閾値量が注目の周波数範囲404の1つ又は複数においてコントローラ130によって決定される(310においてNO)場合、プロセス300は312に移行し、312において、コントローラ130は、システムの欠陥又は劣化が存在すると判定する。或る例において、コントローラ130は、図3の313において、システム欠陥又は劣化警告を発する(例えば、ホストシステム148にFAULT/DEGRADATION信号を提供する)。或る例において、更に、コントローラ130は、複数の注目の周波数範囲404(例えば、図4及び図5の範囲404-1及び404-2)を評価する。この場合、コントローラ130は、314において、相違が欠陥又は劣化の存在を示す注目の周波数範囲404の特定の1つに従って欠陥又は劣化のタイプを選択的に識別することによって欠陥/劣化源を区別する。次いで、コントローラ130は、316において、特殊な相違に従って欠陥タイプを選択的に識別し得る。また、コントローラ130は、システムの欠陥又は劣化の検出に応答して、1つ又は複数の矯正又は安全措置を実装し得る。例えば、コントローラ130は、欠陥又は劣化した構成要素の修理又は交換中のシステムの更なる動作(例えば、クリーニング)を防ぎ得る。或いは、コントローラ130は、特に、僅かな劣化しか検出されない場合には、動作を継続し得る。例えば、レンズクリーニングシステムは、1つ又は複数の車両制御アクチュエータと連携して用いられる車両ベースのカメラシステムの一部とし得、車両が停止するか又は自動制御機能が利用可能でないと運転者が警告を受けるまで、カメラシステムの完全な停止は不必要又は不適切であり得る。この場合、コントローラ130は、クリーニング動作が継続されても、ホストシステム148に警告を発し得る。1つの可能な実装において、コントローラ130は、システム劣化が存在すると判定されるとホストシステム148に警告を発し得、次いで、システムが欠陥を含むと判定されるまでレンズクリーニングシステムの動作を継続し得、その後、コントローラ130は、システムの更なるクリーニング動作を防止し得る。
【0037】
図6図8は、システム構成要素の欠陥及び/又は劣化を選択的に識別するためのコントローラ130の動作を更に図示する例示のグラフを示す。図6のグラフ600は、健全なレンズクリーニングシステムについての図4及び図5の第1の注目の周波数範囲404-1の異なる動作電圧における例示のインピーダンス値応答曲線602、604、606、及び608を示す。この例において、注目の範囲404-1は、異なるトランスデューサ動作電圧について、285kHz~298kHz近辺のゼロ及び305kHz~315kHz近辺の極を含めて、約280kHzから320kHzまで延在する。例えば、曲線602は入力電圧が20Vの健全なクリーニングシステムのインピーダンス値応答を示し、曲線604は入力電圧が40Vの健全なクリーニングシステムのインピーダンス値応答を示し、曲線606は入力電圧が60Vの健全なクリーニングシステムのインピーダンス値応答を示し、曲線608は入力電圧が80Vの健全なレンズクリーニングシステムのインピーダンス値応答を示す。
【0038】
図7は、トランスデューサ102がトランスデューサ脱分極劣化又は欠陥を受けた後の図6に対応するシステムにおけるトランスデューサ動作電圧20V、40V、及び80Vに対応する例示のインピーダンス値応答曲線702、704、及び708を示すグラフ700を提供する。図6と同様に、図7のグラフ700における曲線702、704、及び708は、第1の注目の周波数範囲404-1(例えば、280~320kHz)にわたる、対応するトランスデューサ電圧におけるシステムのインピーダンス値応答を示す。図示された20Vトランスデューサ電圧曲線702に関して、欠陥又は劣化のある(例えば、脱分極した)トランスデューサ102に起因して極及びゼロの位置がいずれも変化している。この例における曲線702は、図6の健全なシステムの極位置FP1に対して変化量ΔFP1(例えば、約2~3kHz)シフトされた極大値又は極FP1’を示す。また、図7の20V曲線702は、健全なシステムのゼロ位置FZ1に対して変化量ΔFZ1(例えば、約5kHz)シフトされた比較的弱い極小値又はゼロFZ1’を示す。また、図6及び図7の対応する20V曲線602及び702は、注目の周波数範囲404-1にわたって大きく異なる形状を有する。同じことが、図6及び図7の40V曲線604及び704、並びに比較される80V曲線608及び708について言える。上述したように、ベースラインプロファイル602、604、608に対する掃引周波数応答プロファイル702、704、708の類似又は相違を示す値を提供するために、RMS又は二乗和のタイプの解析が、コントローラ130によって、対応する曲線対に対して実施され得る。図6及び図7は、用いられ得る周波数シフトベースの類似性比較技法を図示する。この技法において、掃引プロファイルにおいて極小値又は極大値が識別され、周波数変化値AFを決定するため、その対応する周波数が、対応する極小値又は極大値と比較される。値AFの大きさに基づいて、欠陥又は劣化が検出され得る。この欠陥又は劣化は、クリーニングプロセスの間、デバイスを介して過大な電流が駆動されるときキュリー温度を超えるトランスデューサの過熱に起因するものであり得、トランスデューサ圧電材料の劣化につながり得る。この状態は、固定電圧レベルで異なる共振周波数で励起されるトランスデューサに起因するものであり得、この場合、トランスデューサの電気的インピーダンスが注目の共振にわたる一桁分変化し得る。この例において、トランスデューサを励起するために必要とされるレベル(例えば、40V及び80V曲線704及び708)まで電圧レベルが上昇するとき、290kHz近辺のゼロはもはや共振効果を有さない。説明されるシステムは、トランスデューサ102の寿命の間、周期的に又は任意の適切な時点でトランスデューサ102のインピーダンス応答を監視することを容易にする。この応答が共振周波数がもはや存在しないことを示す場合、コントローラ130は、トランスデューサに劣化又は欠陥が生じたと判定し、適切な警告信号又はメッセージがホストシステム148に発せられ得る。
【0039】
図8は、上述の第2の識別される注目の周波数範囲404-2に対して実装される更なる例を示すグラフ800を提供する。この場合、コントローラ130は、この注目の周波数範囲404-2がレンズクリーニングシステムのレンズ202とトランスデューサ102との間の結合(例えば、接着)における欠陥又は劣化の検出に関連すると事前に判定している。グラフ800は、第2の例示の注目の周波数範囲404-2(例えば、20~30kHz)にわたる所与の動作電圧における健全なシステムのインピーダンス値応答動作を表す第1の曲線802を含む。この場合、健全なシステムは、(例えば、29kHzよりも僅かに高い)極FP2、及び約28kHzにおける健全なシステムのゼロFZ2を示す。図8の第2の曲線804は、レンズ202とトランスデューサ102との間の劣化した又は欠陥のある結合についての、注目の範囲404-2にわたる後続のインピーダンス値応答を示す。この場合、極位置は、量ΔFP2だけ変化して新しい位置FP2’になり、ゼロ位置は、量ΔFZ2だけシフトして新しい位置Fz2’になっている。一例におけるコントローラ130は、曲線802、804の形状に関連し、及び/又は、1つ又は複数の周波数シフトΔFP2及び/又はΔFZ2に従って、相違の値又は量を確認するため、1つ又は複数の数値演算及び数学的な技法を実装する。相違の量は、レンズクリーニングシステムにおける欠陥又は劣化の存在(又はそれらがないこと)を選択的に判定するために初期ベースライン特徴付け及び検出掃引において用いられる所与のトランスデューサ電圧についての対応する閾値と比較される。
【0040】
特許請求の範囲内で、説明した実施形態における改変が可能であり、他の実施形態が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8