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特許7265112画像形成装置、画像形成方法及び画像形成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成方法及び画像形成プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/21 20060101AFI20230419BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20230419BHJP
   B41J 5/30 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
H04N1/21
H04N1/00 C
B41J5/30 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019009454
(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公開番号】P2020120255
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115831
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】井川 浩至
【審査官】花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-279985(JP,A)
【文献】特開2006-001254(JP,A)
【文献】特開2002-178567(JP,A)
【文献】特開2014-138342(JP,A)
【文献】特開2009-182812(JP,A)
【文献】特開2007-199517(JP,A)
【文献】特開2007-049295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/21
H04N 1/00
B41J 5/00 - 5/52
21/00 -21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿上の画像を読み取って読取画像を表す画像データを生成する画像読取部と、
ハードディスクドライブを有し、前記ハードディスクドライブに前記生成された画像データと、画像形成装置のユーザーとして登録されている登録ユーザーの画像形成権限を含むデータベースと、前記画像形成装置の処理内容を表すデータである処理内容データに基づく更新の対象となる前記データベースのレコードを特定するためのID情報とを格納する記憶部と、
前記ハードディスクドライブから読み出された画像データを使用して画像形成媒体上に画像を形成する画像形成部と、
不揮発性メモリを有し、前記処理内容データを含む処理管理データを前記不揮発性メモリに格納する補助記憶部と、
前記画像読取部、前記記憶部及び前記補助記憶部を制御し、前記処理管理データを使用して前記画像形成部による処理内容を管理する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記登録ユーザーによる処理の終了後に、前記ID情報を使用して特定されたレコードを前記不揮発性メモリに格納されている処理管理データを使用して更新し、前記更新の完了に応じて前記不揮発性メモリから前記処理管理データを削除し、
前記画像読取部は、自動原稿送り装置を有し、前記自動原稿送り装置から供給される複数の原稿上の画像を読み取って読取画像を表す画像データを生成し、
前記制御部は、前記自動原稿送り装置を使用する複写処理を含む特定処理を実行する場合には、前記処理管理データを補助記憶部に格納するとともに、前記特定処理以外の処理方法で複写処理を実行する場合には、前記処理管理データを前記記憶部に格納し、
前記画像形成部は、カラー画像形成とモノクロ画像形成の選択と、複数の複写解像度からの選択とが可能であり、
前記特定処理は、前記自動原稿送り装置を使用し、前記複数の複写解像度のうちの最高解像度における前記カラー画像形成での複写処理を含み、
前記ハードディスクドライブには、前記画像データについてのみシーケンシャルアクセスでの書込みと読出しとが実行され、
前記ハードディスクドライブは、線記録密度が一定となるように構成され、
前記記憶部は、前記特定処理のために専用に確保された特定処理専用のトラックを前記ハードディスクドライブが外周側に確保し、
前記制御部は、前記特定処理を実行する場合には、前記特定処理専用のトラックを使用する画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置であって、さらに、
前記画像読取部と、前記記憶部と、前記画像形成部と、前記補助記憶部と、前記制御部との間で専用帯域の使用を許可するQOS値の使用を含む複数のQOS値を使用する通信を可能とするAXIバスを備え、
前記AXIバスは、前記画像読取部から前記ハードディスクドライブまでの前記画像データの送信に前記専用帯域の使用を許可するQOS値を使用する画像形成装置。

【請求項3】
請求項1又は2記載の画像形成装置であって、
前記制御部は、前記画像形成権限と前記補助記憶部に格納されている処理管理データとに基づいて前記登録ユーザーによる利用を制限する画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、
前記制御部は、前記画像形成装置の電源復帰時に、前記補助記憶部に前記処理管理データが残存している場合には、前記補助記憶部に残存している処理管理データを使用して前記レコードを更新し、前記更新の完了に応じて前記不揮発性メモリから前記処理管理データを削除する画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、
前記補助記憶部は、前記画像形成装置の外部から取り外し可能に前記画像形成装置に装着されている画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、
前記画像読取部は、N枚(Nは2以上の整数)に1枚の割合で、画像データを補助記憶部に格納する高速処理モードを有し、
前記補助記憶部は、前記高速処理モードの完了に応じて、前記不揮発性メモリのデータを復元不可能に消去する画像形成装置。
【請求項7】
原稿上の画像を読み取って読取画像を表す画像データを生成する画像読取工程と、
ハードディスクドライブを用い、前記ハードディスクドライブに前記生成された画像データと、画像形成装置のユーザーとして登録されている登録ユーザーの画像形成権限を含むデータベースと、前記画像形成装置の処理内容を表すデータである処理内容データに基づく更新の対象となる前記データベースのレコードを特定するためのID情報とを格納する記憶工程と、
前記ハードディスクドライブから読み出された画像データを使用して画像形成媒体上に画像を形成する画像形成工程と、
不揮発性メモリを用い、前記処理内容データを含む処理管理データを前記不揮発性メモリに格納する補助記憶工程と、
前記画像読取工程、前記記憶工程及び前記補助記憶工程を制御し、前記処理管理データを使用して前記画像形成工程による処理内容を管理する制御工程と、
を備え、
前記制御工程は、前記登録ユーザーによる処理の終了後に、前記ID情報を使用して特定されたレコードを前記不揮発性メモリに格納されている処理管理データを使用して更新し、前記更新の完了に応じて前記不揮発性メモリから前記処理管理データを削除する工程を含み、
前記画像読取工程は、自動原稿送り装置を使用し、前記自動原稿送り装置から供給される複数の原稿上の画像を読み取って読取画像を表す画像データを生成し、
前記制御工程は、前記自動原稿送り装置を使用する複写処理を含む特定処理を実行する場合には、前記処理管理データを補助記憶工程で格納するとともに、前記特定処理以外の処理方法で複写処理を実行する場合には、前記処理管理データを前記記憶工程で格納し、
前記画像形成工程は、カラー画像形成とモノクロ画像形成の選択と、複数の複写解像度からの選択とが可能であり、
前記特定処理は、前記自動原稿送り装置を使用し、前記複数の複写解像度のうちの最高解像度における前記カラー画像形成での複写処理を含み、
前記ハードディスクドライブには、前記画像データについてのみシーケンシャルアクセスでの書込みと読出しとが実行され、
前記ハードディスクドライブは、線記録密度が一定となるように構成され、
前記記憶工程は、前記特定処理のために専用に確保された特定処理専用のトラックを前記ハードディスクドライブが外周側に確保し、
前記制御工程は、前記特定処理を実行する場合には、前記特定処理専用のトラックを使用する画像形成方法。
【請求項8】
ハードディスクドライブ及び不揮発性メモリを有する画像形成装置を制御するための画像形成プログラムであって、
原稿上の画像を読み取って読取画像を表す画像データを生成する画像読取部、
前記ハードディスクドライブに前記生成された画像データと、前記画像形成装置のユーザーとして登録されている登録ユーザーの画像形成権限を含むデータベースと、前記画像形成装置の処理内容を表すデータである処理内容データに基づく更新の対象となる前記データベースのレコードを特定するためのID情報とを格納する記憶部、
前記ハードディスクドライブから読み出された画像データを使用して画像形成媒体上に画像を形成する画像形成部、
前記処理内容データを含む処理管理データを前記不揮発性メモリに格納する補助記憶部、及び
前記画像読取部、前記記憶部及び前記補助記憶部を制御し、前記処理管理データを使用して前記画像形成部による処理内容を管理する制御部として前記画像形成装置を機能させ、
前記制御部は、前記登録ユーザーによる処理の終了後に、前記ID情報を使用して特定されたレコードを前記不揮発性メモリに格納されている処理管理データを使用して更新し、前記更新の完了に応じて前記不揮発性メモリから前記処理管理データを削除し、
前記画像読取部は、自動原稿送り装置を有し、前記自動原稿送り装置から供給される複数の原稿上の画像を読み取って読取画像を表す画像データを生成し、
前記制御部は、前記自動原稿送り装置を使用する複写処理を含む特定処理を実行する場合には、前記処理管理データを補助記憶部に格納するとともに、前記特定処理以外の処理方法で複写処理を実行する場合には、前記処理管理データを前記記憶部に格納し、
前記画像形成部は、カラー画像形成とモノクロ画像形成の選択と、複数の複写解像度からの選択とが可能であり、
前記特定処理は、前記自動原稿送り装置を使用し、前記複数の複写解像度のうちの最高解像度における前記カラー画像形成での複写処理を含み、
前記ハードディスクドライブには、前記画像データについてのみシーケンシャルアクセスでの書込みと読出しとが実行され、
前記ハードディスクドライブは、線記録密度が一定となるように構成され、
前記記憶部は、前記特定処理のために専用に確保された特定処理専用のトラックを前記ハードディスクドライブが外周側に確保し、
前記制御部は、前記特定処理を実行する場合には、前記特定処理専用のトラックを使用する画像形成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成方法及び画像形成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には、記憶装置としてハードディスクドライブを装備することが一般的となっている。ハードディスクドライブは、オペレーティングシステムやアプリケーションのインストール先として媒体及びBOX機能といった様々な用途に使用される。さらに、ハードディスクドライブは、スキャン画像データを格納するための格納領域として複写時にも使用される。これにより、たとえばジャムのリカバリーや停電といった複写動作の中断があってもページの欠落を回避して複写動作を継続することができる(特許文献1)。ハードディスクドライブに格納されたスキャン画像データを利用して自動的に再印刷することができるからである。一方、画像形成装置には、自動原稿送り装置の装備も一般化しており、高速での大量の複写が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-10211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、高速での大量の複写は、内部データバスの高速化にも伴って、特に高解像度でのカラー印刷においてハードディスクドライブのアクセス速度がボトルネックとなり得ることが本願発明者によって見出された。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ハードディスクドライブへの画像データの読み書きの効率化を実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像形成装置は、原稿上の画像を読み取って読取画像を表す画像データを生成する画像読取部と、ハードディスクドライブを有し、前記ハードディスクドライブに前記生成された画像データと、画像形成装置のユーザーとして登録されている登録ユーザーの画像形成権限を含むデータベースと、前記画像形成装置の処理内容を表すデータである処理内容データに基づく更新の対象となる前記データベースのレコードを特定するためのID情報とを格納する記憶部と、前記ハードディスクドライブから読み出された画像データを使用して画像形成媒体上に画像を形成する画像形成部と、不揮発性メモリを有し、前記処理内容データを含む処理管理データを前記不揮発性メモリに格納する補助記憶部と、前記画像読取部、前記記憶部及び前記補助記憶部を制御し、前記処理管理データを使用して前記画像形成部による処理内容を管理する制御部とを備え、前記制御部は、前記登録ユーザーによる処理の終了後に、前記ID情報を使用して特定されたレコードを前記不揮発性メモリに格納されている処理管理データを使用して更新し、前記更新の完了に応じて前記不揮発性メモリから前記処理管理データを削除する。
【0007】
本発明の画像形成方法は、原稿上の画像を読み取って読取画像を表す画像データを生成する画像読取工程と、ハードディスクドライブを用い、前記ハードディスクドライブに前記生成された画像データと、画像形成装置のユーザーとして登録されている登録ユーザーの画像形成権限を含むデータベースと、前記画像形成装置の処理内容を表すデータである処理内容データに基づく更新の対象となる前記データベースのレコードを特定するためのID情報とを格納する記憶工程と、前記ハードディスクドライブから読み出された画像データを使用して画像形成媒体上に画像を形成する画像形成工程と、不揮発性メモリを用い、前記処理内容データを含む処理管理データを前記不揮発性メモリに格納する補助記憶工程と、前記画像読取工程、前記記憶工程及び前記補助記憶工程を制御し、前記処理管理データを使用して前記画像形成工程による処理内容を管理する制御工程とを備え、前記制御工程は、前記登録ユーザーによる処理の終了後に、前記ID情報を使用して特定されたレコードを前記不揮発性メモリに格納されている処理管理データを使用して更新し、前記更新の完了に応じて前記不揮発性メモリから前記処理管理データを削除する工程を含む。
【0008】
本発明は、ハードディスクドライブ及び不揮発性メモリを有する画像形成装置を制御するための画像形成プログラムを提供する。前記画像形成プログラムは、原稿上の画像を読み取って読取画像を表す画像データを生成する画像読取部、前記ハードディスクドライブに前記生成された画像データと、前記画像形成装置のユーザーとして登録されている登録ユーザーの画像形成権限を含むデータベースと、前記画像形成装置の処理内容を表すデータである処理内容データに基づく更新の対象となる前記データベースのレコードを特定するためのID情報とを格納する記憶部、前記ハードディスクドライブから読み出された画像データを使用して画像形成媒体上に画像を形成する画像形成部、前記処理内容データを含む処理管理データを前記不揮発性メモリに格納する補助記憶部、及び前記画像読取部、前記記憶部及び前記補助記憶部を制御し、前記処理管理データを使用して前記画像形成部による処理内容を管理する制御部として前記画像形成装置を機能させ、前記制御部は、前記登録ユーザーによる処理の終了後に、前記ID情報を使用して特定されたレコードを前記不揮発性メモリに格納されている処理管理データを使用して更新し、前記更新の完了に応じて前記不揮発性メモリから前記処理管理データを削除する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ハードディスクドライブへの画像データの読み書きの効率化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の機能構成を示すブロックダイアグラムである。
図2】一実施形態に係る画像形成装置1における複写処理手順の内容を示すフローチャートである。
図3】一実施形態に係る画像形成装置1の記憶部が格納する社員管理データベースの内容を示す説明図である。
図4】一実施形態に係る画像形成装置1の記憶部及び補助記憶部が格納する印刷管理データの内容を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の機能構成を示すブロックダイアグラムである。画像形成装置1は、制御部10と、画像処理部20と、画像形成部30と、記憶部40と、画像読取部50と、補助記憶部60と、メインメモリ70と、これらを相互に接続するAXIバス90とを備えている。メインメモリ70は、DDR SDRAM(Double-Data-Rate Synchronous Dynamic Random Access Memory)である。
【0013】
画像処理部20は、RIP処理部21を有している。画像形成部30は、露光部31を有している。画像読取部50は、自動原稿送り装置(ADFとも呼ばれる。)51を有し、ADF51から供給される複数の原稿上の画像を読み取って読取画像を表す画像データを生成する。本実施形態では、一例として、データバスとして、高性能なシステムのメイン・バスに使用されるAXI(Advanced eXtensible Interface)仕様に基づくAXIバス90が採用されている。
【0014】
記憶部40は、不揮発性記憶領域としてハードディスクドライブ(HDD)を採用している。補助記憶部60は、不揮発性メモリとしてフラッシュメモリを採用するSolid State Drive(SSD)として構成されている。不揮発性メモリは、書き込み回数に制限があるので、交換可能に画像形成装置1に装備されている。不揮発性メモリは、Secure Erase機能で復元不可能にデータが消去された状態で廃棄される。
【0015】
画像形成装置1は、さらに、制御部10に接続されている第1AXIマスタ10Mと、画像処理部20に接続されている第2AXIマスタ20Mと、画像形成部30に接続されている第3AXIマスタ30Mと、記憶部40に接続されている第4AXIマスタ40Mと、画像読取部50に接続されている第5AXIマスタ50Mと、補助記憶部60に接続されている第6AXIマスタ60Mと、メインメモリ70に接続されているNetwork Interconnect部(NIC部とも呼ばれる。)部70Mとを備えている。
【0016】
第1AXIマスタ10M、第2AXIマスタ20M、第3AXIマスタ30M、第4AXIマスタ40M、第5AXIマスタ50M、第6AXIマスタ60M及びNIC部70Mは、Direct Memory Access(DMA)制御機能を有している。
【0017】
AXIバス90は、AXIプロトコルに従って各機器間の通信を可能とする。AXIバス90は、AXIプロトコルに基づいてキューオーエス(Quality of Service:QOS)値をサポートしている。この例では、QOS値は、値0乃至3の2ビットのデータとして通信の優先度を表している。具体的には、たとえばQOS値0は、専用帯域の使用の許可を示している。QOS値1は、高優先度を示し、QOS値2は、中優先度を示し、QOS値3は、低優先度を示している。
【0018】
制御部10は、MPU(Micro Processing Unit)やCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを備えている。また、制御部10は、各種I/O、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)、バス、その他ハードウェア等のインターフェースに関連するコントローラ機能を備えている。制御部10は、画像形成装置1の全体を制御する。
【0019】
記憶部40は、非一時的な記憶媒体であるハードディスクドライブを有する記憶装置で、それぞれ制御部10が実行する処理の制御プログラムやデータを記憶する。
【0020】
図2は、一実施形態に係る画像形成装置1における複写処理手順の内容を示すフローチャートである。図3は、一実施形態に係る画像形成装置1の記憶部が格納する社員管理データベースHDB1の内容を示す説明図である。社員管理データベースHDB1は、各社員の所属、社員番号、氏名、電子メールアドレス、FAX番号及びパスワードを格納している。社員番号及びパスワードは、画像形成装置1へのログイン処理に使用される。各レコードは、ID番号(ID情報とも呼ばれる。)によって特定することができる。
【0021】
ステップS10では、画像形成装置1は、ログイン処理を実行する。登録ユーザーは、たとえばRFID社員証(図示略)を画像形成装置1の操作表示部(図示略)に近づけることによってログインすることができる。画像形成装置1は、RFID社員証から社員番号及びパスワードを取得して、社員管理データベースHDB1と照合することによって登録ユーザーの自動ログインを可能としている。登録ユーザーは、社員管理データベースHDB1に登録されているユーザーである。
【0022】
ステップS20では、画像形成装置1は、複写設定処理を実行する。複写設定処理では、ユーザーは、カラー又はモノクロの設定及び複数の複写解像度の中からの複写解像度の設定を行うことができる。この例では、ユーザーは、カラーの最高解像度の複写を選択したものとする。カラーの最高解像度の複写は、記憶部40のハードディスクドライブ(HDD)への画像データの書込みと読み出しで最も高いアクセス速度が要求される処理であり、特定処理とも呼ばれる。
【0023】
ステップS30では、画像形成装置1は、画像読取部50のADF51を起動する。具体的には、ユーザーは、複数の印刷原稿をADF51にセットし、図示しないスタートスイッチを押して自動画像読み取りを開始する。
【0024】
ステップS40では、画像読取部50は、画像読取処理を実行する。画像読取処理では、画像読取部50は、原稿から画像を読み取ってデジタルデータである画像データを生成する。画像読取部50は、第5AXIマスタ50MとAXIバス90と第4AXIマスタ40Mとを順に介して、記憶部40のハードディスクドライブ(HDD)に画像データを書き込むことができる。第5AXIマスタ50Mは、第4AXIマスタ40Mのマスタモジュールとして機能する。
【0025】
第5AXIマスタ50Mは、制御部10からの指令に応じて、DMA制御機能によって、QOS値0を付して画像データを含む書込み要求パケットをAXIバス90に送信する。AXIバス90は、第5AXIマスタ50Mからの指令に応じて、専用帯域を確保し、QOS値0が付され、書込み対象である画像データを含む書込み要求データを、専用帯域を使用して第4AXIマスタ40Mに送信する。
【0026】
これにより、画像形成装置1は、専用帯域を使用して画像データを送信することができるので、画像読取処理において順次生成される画像データの過度の送信遅延に起因するデータ廃棄(データ欠落)を排除することができる。
【0027】
第4AXIマスタ40Mは、書込み要求データに応じて記憶部40のハードディスクドライブ(HDD)にシーケンシャルアクセスで画像データを書き込む。これにより、画像読取部50は、記憶部40のハードディスクドライブ(HDD)に画像データを書き込むことができる。
【0028】
記憶部40のハードディスクドライブは、線記録密度が一定となるように構成され、外周側のトラックが内周側のトラックよりも多くのセクタを有している。本実施形態では、記憶部40は、特定処理のために専用に確保された外周側のトラックである特定処理専用のトラックを使用してシーケンシャルアクセスで画像データを書き込むことができる。これにより、ハードディスクドライブ(HDD)の性能上の最高速度での書込みを実現することができる。
【0029】
このように、画像形成装置1は、記憶部40のハードディスクドライブ(HDD)に画像データを書き込むことができる。これにより、画像形成装置1は、たとえば紙詰まりや停電によって印刷処理が中断しても同一画像の再印刷を可能とし、ページの欠落を防止することができる。
【0030】
図4は、一実施形態に係る画像形成装置1の記憶部40及び補助記憶部60が格納する印刷管理データの内容を示す説明図である。印刷管理データは、記憶部40のハードディスクドライブ(HDD)に格納されている印刷権限データベースHDB2と、補助記憶部60の不揮発性メモリに格納されている印刷実行テーブルSTとを含んでいる。この例では、社員管理データベースHDB1のID3(社員番号207884)として登録されているユーザーが画像形成装置1にログインしているものとする。
【0031】
ユーザーは、印刷権限データベースHDB2に規定されている権限の範囲で画像形成装置1を利用することができる。たとえばID3のユーザーは、開発部に所属しているので(社員管理データベースHDB1参照)、開発部に割り当てられている権限の範囲で画像形成装置1を利用することができる。すなわち、ID3のユーザーは、カラー読取(カラースキャン)の残量(5,453回)と、カラー印刷(カラーの画像形成)の残量(755枚)の範囲で画像形成装置1を利用することができる。
【0032】
ステップS50では、制御部10は、画像読取数計上処理を実行する。画像読取数計上処理では、制御部10は、印刷実行テーブルSTのカラー読取のカウントを「1」だけインクリメントする。画像読取数計上処理は、記憶部40のハードディスクドライブ(HDD)への画像データの格納完了に応じて実行される。
【0033】
制御部10は、QOS値3が付されたインクリメントの書込み要求データを補助記憶部60(SSD)に送信する。これにより、画像形成装置1は、記憶部40のハードディスクドライブ(HDD)へのランダムアクセス処理を抑制することができる。この結果、ランダムアクセス処理の前後で発生するシークタイムの増加を抑制することができる。
【0034】
具体的には、第1AXIマスタ10Mは、制御部10からの指令に応じて、DMA制御機能によってQOS値3が付された書込み要求データをAXIバス90に送信する。AXIバス90は、専用帯域を使用することなく、QOS値3が付された読出し要求データを第6AXIマスタ60Mに送信する。第6AXIマスタ60Mは、インクリメントの書込み要求データを補助記憶部60(SSD)に送信し、印刷実行テーブルSTのカラー読取をインクリメントする。
【0035】
なお、特定処理以外の処理方法で複写処理を実行する場合には、画像読取数計上処理は、記憶部40に対して実行される。これにより、補助記憶部60の不揮発性メモリへの書き込み回数を削減して不揮発性メモリを長く使用することができる。
【0036】
ステップS60では、画像形成装置1は、画像形成処理を実行する。画像形成処理では、画像処理部20は、記憶部40から画像データを読出して画像データを受信することができる。具体的には、第2AXIマスタ20Mは、画像処理部20からの指令に応じて、DMA制御機能によってQOS値2が付された読出し要求データをAXIバス90に送信する。AXIバス90は、専用帯域を使用することなく、QOS値2が付された読出し要求データを第4AXIマスタ40Mに送信する。
【0037】
第4AXIマスタ40Mは、読出し要求データに応じて記憶部40のハードディスクドライブ(HDD)からシーケンシャルアクセスで画像データを読出してAXIバス90に送信する。AXIバス90は、画像データを含む読出しデータパケットを第2AXIマスタ20Mに送信する。本実施形態では、記憶部40は、特定処理専用のトラックからシーケンシャルアクセスで画像データを読み出すことができる。これにより、ハードディスクドライブ(HDD)の性能上の最高速度での読み出しを実現することができる。
【0038】
画像処理部20のRIP処理部21は、第2AXIマスタ20Mから受信した画像データに対してRIP処理を実行する。これにより、RIP処理部21は、各色のビットマップデータであるドットデータを生成することができる。RIP処理には、色変換処理と、ハーフトーン処理とが含まれている。ドットデータは、色材を使用して印刷媒体上に形成されるドット形成状態を表すためのデータである。印刷媒体は、画像形成媒体とも呼ばれる。
【0039】
次に画像処理部20は、第2AXIマスタ20MとAXIバス90とNIC部70Mとを順に介して、メインメモリ70にドットデータを書き込むことができる。これにより、画像形成装置1は、メインメモリ70にドットデータを一時的に保存することができる。
【0040】
画像形成部30は、NIC部70MとAXIバス90と第3AXIマスタ30Mとを順に介して、メインメモリ70からドットデータを読出してドットデータを受信することができる。ただし、第3AXIマスタ30Mは、QOS値0を使用してメインメモリ70からの読出し処理を実行する。
【0041】
これにより、画像形成装置1は、専用帯域を使用してドットデータを送信することができるので、画像形成処理において露光部31に順次必要とされるドットデータの過度の送信遅延に起因するドット抜け(画像欠落)を排除することができる。
【0042】
画像形成部30の露光部31は、各色のビットマップデータであるドットデータに基づいて各色の現像ドラム(図示略)に対して露光処理を実行することができる。画像形成部30は、露光処理に引き続き、現像処理や定着処理を実行して画像形成処理を実行することができる。
【0043】
ステップS70では、制御部10は、画像形成計上処理を実行する。画像形成計上処理では、制御部10は、印刷実行テーブルSTのカラー印刷のカウントを「1」だけインクリメントする。画像形成計上処理は、画像形成装置1からの印刷媒体の排出に応じて実行される。
【0044】
具体的には、第1AXIマスタ10Mは、制御部10からの指令に応じて、DMA制御機能によってQOS値3が付された書込み要求データをAXIバス90に送信する。AXIバス90は、専用帯域を使用することなく、QOS値3が付された読出し要求データを第6AXIマスタ60Mに送信する。第6AXIマスタ60Mは、インクリメントの書込み要求データを補助記憶部60(SSD)に送信し、印刷実行テーブルSTのカラー印刷をインクリメントする。
【0045】
これにより、画像形成装置1は、記憶部40のハードディスクドライブ(HDD)へのランダムアクセス処理を抑制することができる。この結果、ランダムアクセス処理の前後で発生するシークタイムの増加を抑制することができる。
【0046】
なお、特定処理以外の処理方法で複写処理を実行する場合には、画像形成計上処理は、記憶部40に対して実行される。これにより、補助記憶部60の不揮発性メモリへの書き込み回数を削減して不揮発性メモリを長く使用することができる。
【0047】
画像形成装置1は、このような処理(ステップS40乃至ステップS70)をADF51上にセットされた複数の原稿の最終ページまで実行する(ステップS80)。
【0048】
なお、画像形成装置1は、その利用権限を超える可能性が発生した場合、すなわち補助記憶部60(SSD)に格納されている印刷実行テーブルSTの使用量に基づいて、残量と使用量の差が閾値以下となった場合に、操作表示部(図示略)に警告を表示し、システム管理者に通知する。また、残量と使用量の差が閾値以下となった場合には、画像形成装置1の使用を一時的に停止するようにしてもよい。
【0049】
ステップS90では、制御部10は、補助記憶部60(SSD)に格納されている印刷実行テーブルSTの使用量を読み出して、読み出された使用量を使用して印刷権限データベースHDB2の残量を更新する。印刷権限データベースHDB2の更新は、印刷実行テーブルSTと印刷権限データベースHDB2とを紐付けるID情報を使用して実行される。制御部10は、印刷権限データベースHDB2の更新完了に応じて補助記憶部60内のデータを削除する。印刷権限は、画像形成権限とも呼ばれる。
【0050】
なお、印刷実行中に、停電等によって画像形成装置1への電力供給が停止された場合には、制御部10は、画像形成装置1の再起動その他の電源復帰時に不揮発性の補助記憶部60(SSD)に格納されている印刷実行テーブルSTの使用量を読み出して、その使用量を使用して印刷権限データベースHDB2の残量を更新することができる。制御部10は、補助記憶部60に印刷実行テーブルSTの使用量を表すデータが削除されずに残存しているデータ状態に基づいて印刷権限データベースHDB2の残量の更新が完了していないことを検知することができる。
【0051】
本願発明者は、たとえばAXI仕様に基づくメイン・バスの採用に起因して画像形成装置1のシステム全体としての処理能力が向上する一方、画像データの保存処理と読出し処理とが実行される複写処理において、記憶部40のハードディスクドライブの書き込み処理と読み出し処理がボトルネックになることを見いだした。
【0052】
一実施形態に係る画像形成装置1は、画像形成計上処理や画像読取数計上処理といった印刷処理の管理上のデータの格納先として補助記憶部60を設けることによって、記憶部40のハードディスクドライブの処理を画像データの書込みと読み出しに専念させることができる。これにより、画像形成装置1は、特に、データ転送量が多くなるADF51を利用する際の高解像度でのカラー複写において、記憶部40のハードディスクドライブの処理能力の限界に起因する複写処理の性能低下を抑制することができる。
【0053】
さらに、本願発明者は、データ量が多くなる高解像度でのカラー複写において、画像データの一部を補助記憶部60に格納する構成も創作した。具体的には、画像形成装置1は、ADF51を利用する際の高解像度でのカラー複写において、高速処理モードを実装することができる。具体的には、画像形成装置1は、N枚(Nは2以上の整数)に1枚の割合で、画像データを補助記憶部60に格納することによって高速化することができる。割合は、システム全体の性能とハードディスクドライブの性能とに基づいて設定することができる。これにより、高解像度でのカラー画像データの書込みに時間を要しても画像データの読み出しの時間を確保することができるからである。
【0054】
なお、補助記憶部60は、高速処理モードの完了に応じて、Secure Erase機能で復元不可能にデータを消去するように初期設定することができる。これにより、画像データの流出を抑制することができる。
【0055】
一方、不揮発性メモリは、書き込み回数に制限があり、交換可能に画像形成装置1に装備されているので、本願発明者は、印刷実行テーブルSTの内容を画像形成装置1の外部では意味をなさないものとして構成した。すなわち、印刷実行テーブルSTの内容は、社員管理データベースHDB1及び印刷権限データベースHDB2と紐付けられ、組み合わせた場合においてのみ意味を生じさせるデータとした。
【0056】
すなわち、印刷実行テーブルSTは、画像形成装置1における処理の内容及び数量と、印刷権限データベースHDB2内の関連レコードを特定するID情報とを含み、印刷権限データベースHDB2の内容を更新するためのデータから構成され、印刷権限データベースHDB2無しで単独でデータを取得しても意味が無いからである。これにより、セキュリティ上の問題を生じさせることなく、画像形成装置1の外部から取り外し可能に装着される不揮発性メモリを使用して上述のシステムを実現することができる。
【0057】
なお、処理内容(処理の内容及び数量)を表すデータは、処理内容データとも呼ばれる。処理内容データ及びID情報は、処理管理データとも呼ばれる。また、本実施形態では、画像形成計上処理及び画像読取数計上処理が管理対象となっているが、画像形成計上処理のみを管理対象としてもよい。
【0058】
このように、一実施形態に係る画像形成装置1は、ADF51を利用する際の高解像度でのカラー複写といったハードディスクドライブの書込み処理と読出し処理の負荷が大きな際のハードディスクドライブに起因するボトルネックを緩和又は解消し、システム全体としての複写処理能力を向上させることができる。さらに、一実施形態に係る画像形成装置1は、セキュリティ上の問題を生じさせることなく、取り外し可能に装着される補助記憶部60(不揮発性メモリ)を使用して簡易に実現することができる。
【0059】
D.変形例:
本発明は、上記実施形態だけでなく、以下のような変形例でも実施することができる。
【0060】
変形例1:上記実施形態では、補助記憶部60は、画像形成計上処理や画像読取数計上処理といった印刷処理の管理上のデータの格納先として採用されているが、補助記憶部60に格納可能なデータは、管理上のデータに限定されない。具体的には、たとえばADF51を利用する際の高解像度でのカラー複写の実行時に印刷ジョブをパーソナルコンピュータから受信した場合には、印刷ジョブを補助記憶部60に格納することもできる。
【0061】
変形例2:上記実施形態では、画像形成装置1は、カラー印刷(カラー画像形成)が可能な画像形成装置として構成されているが、本願発明は、モノクロ印刷のみが可能な画像形成装置にも適用することができる。モノクロ印刷(モノクロ画像形成)のみが可能な画像形成装置では、たとえばADF51を利用する際の高解像度でのモノクロ複写の高速化を実現することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 画像形成装置
10 制御部
20 画像処理部
21 RIP処理部
30 画像形成部
31 露光部
40 記憶部
50 画像読取部
51 自動原稿送り装置
60 補助記憶部
70 メインメモリ
90 AXIバス

図1
図2
図3
図4