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特許7265128設備管理支援装置、設備管理支援方法、プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】設備管理支援装置、設備管理支援方法、プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20230419BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20230419BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
G06Q50/04
G06Q10/04
G05B19/418 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019038323
(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公開番号】P2020144415
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】阿部 快洋
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 政典
(72)【発明者】
【氏名】枝野 寛弘
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-117438(JP,A)
【文献】特開2004-054420(JP,A)
【文献】特開2011-145846(JP,A)
【文献】特開2016-177682(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105104(WO,A1)
【文献】特開2013-246818(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0091443(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造業で用いられる設備を構成する複数のユニットのうち1つのユニット、複数の異なる期間に取得された観測値データ群を、時空間データ及び前記時空間データに関係して変化する観測値を変数とした多次元のヒストグラムに変換するヒストグラム変換処理部と、
前記ヒストグラム変換処理部で変換したヒストグラムのうち前の期間のヒストグラムと後の期間のヒストグラムとの差異を評価する、Earth Mover’s Distanceを用いた評価指標を算出する際に、輸送コストの代わりに使用する重みを設定する重み設定部と、
前記重み設定部で設定された前記重みを用いて前記評価指標を算出する評価指標算出部と、
前記評価指標算出部で算出された前記評価指標に基づいて、前記評価対象のユニットの状態の変化を表す状態情報を生成する情報生成部と、
を備え
前記重みは、前記観測値が良化傾向にあるのか悪化傾向にあるのかに応じて設定される、設備管理支援装置。
【請求項2】
前記重み設定部は、
過去の実績データに基づいて、後の期間のヒストグラムについて前記観測値が安定している状態にある安定領域を特定し、
前記後の期間のヒストグラムにおけるビンの位置が前記安定領域にある場合には、前記重みを0に設定し、
前記後の期間のヒストグラムにおけるビンの位置が前記安定領域外にある場合には、前記重みを0以外に設定する、請求項1に記載の設備管理支援装置。
【請求項3】
前記重み設定部は、
過去の実績データに基づいて、前の期間のヒストグラムと後の期間のヒストグラムについて前記観測値が安定している状態にある安定領域を特定し、
前記前の期間のヒストグラムにおけるビンの位置が前記安定領域にあり、前記後の期間のヒストグラムにおけるビンの位置が前記安定領域にある場合には、前記重みを0に設定し、
前記前の期間のヒストグラムにおけるビンの位置が前記安定領域にあり、前記後の期間のヒストグラムにおけるビンの位置が前記安定領域外にある場合には、前記重みを0以外に設定し、
前記前の期間のヒストグラムにおけるビンの位置が前記安定領域外にあり、前記後の期間のヒストグラムにおけるビンの位置が前記安定領域にある場合には、前記重みを0または負に設定し、
前記前の期間のヒストグラムにおけるビンの位置が前記安定領域外にあり、前記後の期間のヒストグラムにおけるビンの位置が前記安定領域外にある場合には、前記重みを0以外に設定する、請求項1に記載の設備管理支援装置。
【請求項4】
前記重み設定部は、
前記前の期間のヒストグラムにおけるビンの位置に対する前記後の期間のヒストグラムにおけるビンの位置が、前記時空間データに関係して変化する観測値が減少する方向にある場合には、前記重みを0に設定し、
前記前の期間のヒストグラムにおけるビンの位置に対する前記後の期間のヒストグラムにおけるビンの位置が、前記時空間データに関係して変化する観測値が増加する方向にある場合には、前記重みを0以外に設定する、請求項に記載の設備管理支援装置。
【請求項5】
前記重み設定部は、
前記前の期間のヒストグラムにおけるビンの位置に対する前記後の期間のヒストグラムにおけるビンの位置が、前記時空間データに関係して変化する観測値のピーク位置が減少する方向にある場合には、前記重みを0に設定し、
前記前の期間のヒストグラムにおけるビンの位置に対する前記後の期間のヒストグラムにおけるビンの位置が、前記時空間データに関係して変化する観測値のピーク位置が増加する方向にある場合には、前記重みを0以外に設定する、請求項に記載の設備管理支援装置。
【請求項6】
前記評価指標に基づいて、点検の必要な前記ユニットの優先度を決定する優先度決定部をさらに備え、
前記情報生成部は、前記状態情報の代わりに、あるいは前記状態情報とともに、前記優先度決定部により決定された優先度の高いユニットを作業者に通知するための通知情報を生成する、請求項に記載の設備管理支援装置。
【請求項7】
前記情報生成部は、前記ユニットのトラブル発生を検知するために予め設定された閾値に基づき、前記評価指標を時系列に並べた情報に対して閾値判定を行い、トラブル発生を予測した情報を生成する、請求項6に記載の設備管理支援装置。
【請求項8】
設備管理支援装置による設備管理支援方法であって、
ヒストグラム変換処理部を用い、製造業で用いられる設備を構成する複数のユニットのうち1つのユニット、複数の異なる期間に取得された観測値データ群を、時空間データ及び前記時空間データに関係して変化する観測値を変数とした多次元のヒストグラムに変換するヒストグラム変換処理ステップと、
重み設定部を用い、前記ヒストグラム変換処理ステップで変換したヒストグラムのうち前の期間のヒストグラムと後の期間のヒストグラムとの差異を評価する、Earth Mover’s Distanceを用いた評価指標を算出する際に、輸送コストの代わりに使用する重みを設定する重み設定ステップと、
評価指標算出部を用い、前記重み設定ステップで設定された前記重みを用いて前記評価指標を算出する評価指標算出ステップと、
情報生成部を用い、前記評価指標算出ステップで算出された前記評価指標に基づいて、前記評価対象のユニットの状態の変化を表す状態情報を生成する情報生成ステップと、
を含み、
前記重みは、前記観測値が良化傾向にあるのか悪化傾向にあるのかに応じて設定される、設備管理支援方法。
【請求項9】
コンピュータを、
製造業で用いられる設備を構成する複数のユニットのうち1つのユニット、複数の異なる期間に取得された観測値データ群を、時空間データ及び前記時空間データに関係して変化する観測値を変数とした多次元のヒストグラムに変換するヒストグラム変換処理部と、
前記ヒストグラム変換処理部で変換したヒストグラムのうち前の期間のヒストグラムと後の期間のヒストグラムとの差異を評価する、Earth Mover’s Distanceを用いた評価指標を算出する際に、輸送コストの代わりに使用する重みを設定する重み設定部と、
前記重み設定部で設定された前記重みを用いて前記評価指標を算出する評価指標算出部と、
前記評価指標算出部で算出された前記評価指標に基づいて、前記評価対象のユニットの状態の変化を表す状態情報を生成する情報生成部と、
を備え
前記重みは、前記観測値が良化傾向にあるのか悪化傾向にあるのかに応じて設定される、設備管理支援装置として機能させるプログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
製造業で用いられる設備を構成する複数のユニットのうち1つのユニット、複数の異なる期間に取得された観測値データ群を、時空間データ及び前記時空間データに関係して変化する観測値を変数とした多次元のヒストグラムに変換するヒストグラム変換処理部と、
前記ヒストグラム変換処理部で変換したヒストグラムのうち前の期間のヒストグラムと後の期間のヒストグラムとの差異を評価する、Earth Mover’s Distanceを用いた評価指標を算出する際に、輸送コストの代わりに使用する重みを設定する重み設定部と、
前記重み設定部で設定された前記重みを用いて前記評価指標を算出する評価指標算出部と、
前記評価指標算出部で算出された前記評価指標に基づいて、前記評価対象のユニットの状態の変化を表す状態情報を生成する情報生成部と、
を備え
前記重みは、前記観測値が良化傾向にあるのか悪化傾向にあるのかに応じて設定される、設備管理支援装置として機能させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造業で用いられる設備を構成する複数のユニットの状態管理を支援する設備管理支援装置、設備管理支援方法、プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
製造業で用いられる設備では、安定した操業を行うことができるように定期的にメンテナンスが実施される。定期的なメンテナンス以外にも設備に異常な傾向がみられるときには、追加のメンテナンスが実施される。
【0003】
例えば、製造業で用いられる設備の一例であるコークス炉では、炉体保全のため、メンテナンス予定に従い、炭化室診断補修装置あるいは窯幅計測等を用いて、炉内点検が実施される。例外的に、コークスの押出し時に異常な押出負荷波形が発生した場合には、炉壁の凹凸や肌荒れ、窯口狭小化等といった窯が異常な状態となっている虞があるため、予定以外の炉内点検やメンテナンスが追加で実施される。予定外の炉内点検やメンテナンスを実施するかどうかの判断は、例えばたかだか3サイクル分程度の範囲での押出負荷波形の最大値(最大押出負荷)に着目して行われる。
【0004】
ここで、特許文献1には、炭化室の異常を判定する方法が開示されている。特許文献1に記載の方法では、まず、コークス炉の炭化室毎に、生成したコークスを押出機の押出ラムで押し出す際、押出ラムの炭化室内での押出位置に対する押出ラムを駆動するモータの負荷電流を計測した負荷電流トレンドから、コークス炉の操業状態を考慮して理想負荷電流トレンドを予め求めておく。そして、測定対象となる炭化室におけるコークス押出完了後の実績負荷電流トレンドと理想負荷電流トレンドとの押出位置毎の負荷電流の偏差を求め、求めた偏差から当該炭化室の異常を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-171791号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Elizaveta Levina; Peter Bickel (2001). "The EarthMover's istance is the Mallows Distance: Some Insights from Statistics". Proceedings of ICCV 2001. Vancouver, Canada: 251‐256.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
炭化室の補修直後は、カーボンを取り除いた状態で負荷が増大する場合もあれば、炉壁平滑化がされて負荷が減少する場合もあり、押出負荷が落ち着くまではある程度の期間が必要である。しかし、その期間は窯によって様々であり、上記特許文献1に記載の方法のように、理想負荷トレンドを設定するためのデータ選定は容易ではない。また、カーボン付着状態や炉壁狭小化等によって押出性も変化していくため、上記特許文献1に記載の方法のように、理想負荷トレンドを1回設定するだけでは、炭化室の異常を高精度に検知することができない。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、設備を構成するユニットの状態が不安定に変化する場合であっても、ユニットの異常の発生を容易に検知することの可能な情報を提供できる、新規かつ改良された設備管理支援装置、設備管理支援方法、プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、製造業で用いられる設備を構成する複数のユニットのうち1つのユニットを評価対象として、複数の異なる期間に取得された当該評価対象のユニットの観測値データ群を、少なくとも当該設備における時空間データ及び時空間データに関係して変化する観測値を変数とした多次元のヒストグラムにそれぞれ変換するヒストグラム変換処理部と、期間の異なる前記ヒストグラムについて、前後する期間での時空間データ及び観測値の少なくともいずれかの変化に基づき、複数のヒストグラムの差異を表す評価指標における重みを設定する重み設定部と、設定された重みを用いて評価指標を算出する評価指標算出部と、評価指標に基づいて、評価対象のユニットの状態の変化を表す状態情報を生成する情報生成部と、を備える、設備管理支援装置が提供される。
【0010】
重み設定部は、過去の実績データに基づいて、期間の異なるヒストグラムのうち、1つのヒストグラムについて観測値が安定している状態にある安定領域を特定し、観測値の各値が、前の期間から安定領域が特定された期間となったときに、安定領域に存在するか否かに基づいて、重みを設定してもよい。
【0011】
あるいは、重み設定部は、過去の実績データに基づいて、期間の異なるヒストグラムのうち、複数のヒストグラムについて観測値が安定している状態にある安定領域を特定し、観測値の各値が、安定領域が特定された前後の期間において、安定領域に存在するか否かに基づいて、重みを設定してもよい。
【0012】
また、重み設定部は、前後の期間における観測値の変化方向に基づいて、重みを設定してもよい。
【0013】
評価指標算出部は、Earth Mover’s Distanceを用いて評価指標を算出してもよい。
【0014】
設備管理支援装置は、評価指標に基づいて、点検の必要なユニットの優先度を決定する優先度決定部をさらに備えてもよい。情報生成部は、状態情報の代わりに、あるいは状態情報とともに、優先度決定部により決定された優先度の高いユニットを作業者に通知するための通知情報を生成する。
【0015】
また、情報生成部は、ユニットのトラブル発生を検知するために予め設定された閾値に基づき、評価指標を時系列に並べた情報に対して閾値判定を行い、トラブル発生を予測した情報を生成してもよい。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、製造業で用いられる設備を構成する複数のユニットのうち1つのユニットを評価対象として、複数の異なる期間に取得された当該評価対象のユニットの観測値データ群を、少なくとも当該設備における時空間データ及び時空間データに関係して変化する観測値を変数とした多次元のヒストグラムにそれぞれ変換するヒストグラム変換処理ステップと、期間の異なる前記ヒストグラムについて、前後する期間での時空間データ及び観測値の少なくともいずれかの変化に基づき、複数のヒストグラムの差異を表す評価指標における重みを設定する重み設定ステップと、設定された重みを用いて評価指標を算出する評価指標算出ステップと、評価指標に基づいて、評価対象のユニットの状態の変化を表す状態情報を生成する情報生成ステップと、を含む、設備管理支援方法が提供される。
【0017】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、製造業で用いられる設備を構成する複数のユニットのうち1つのユニットを評価対象として、複数の異なる期間に取得された当該評価対象のユニットの観測値データ群を、少なくとも当該設備における時空間データ及び時空間データに関係して変化する観測値を変数とした多次元のヒストグラムにそれぞれ変換するヒストグラム変換処理部と、期間の異なる前記ヒストグラムについて、前後する期間での時空間データ及び観測値の少なくともいずれかの変化に基づき、複数のヒストグラムの差異を表す評価指標における重みを設定する重み設定部と、設定された重みを用いて評価指標を算出する評価指標算出部と、評価指標に基づいて、評価対象のユニットの状態の変化を表す状態情報を生成する情報生成部と、を備える、設備管理支援装置として機能させるプログラムが提供される。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータに、製造業で用いられる設備を構成する複数のユニットのうち1つのユニットを評価対象として、複数の異なる期間に取得された当該評価対象のユニットの観測値データ群を、少なくとも当該設備における時空間データ及び時空間データに関係して変化する観測値を変数とした多次元のヒストグラムにそれぞれ変換するヒストグラム変換処理部と、期間の異なる前記ヒストグラムについて、前後する期間での時空間データ及び観測値の少なくともいずれかの変化に基づき、複数のヒストグラムの差異を表す評価指標における重みを設定する重み設定部と、設定された重みを用いて評価指標を算出する評価指標算出部と、評価指標に基づいて、評価対象のユニットの状態の変化を表す状態情報を生成する情報生成部と、を備える、設備管理支援装置として機能させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、設備を構成するユニットの状態が不安定に変化する場合であっても、ユニットの異常の発生を容易に検知することの可能な情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る設備管理支援装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
図2】Earth Mover’s Distance(EMD)を説明する説明図である。
図3】同実施形態に係る設備管理支援方法を示すフローチャートである。
図4】1ヶ月前から2ヶ月前までの押出負荷の傾向を示すデータとそのヒストグラムとを示す説明図である。
図5】直近から1ヶ月前までの押出負荷の傾向を示すデータとそのヒストグラムとを示す説明図である。
図6】コークス押出し時の押出負荷が低負荷である場合と高負荷である場合との、押出位置における押出負荷の変化の一例を示す模式図である。
図7】評価指標の重み設定の一例を示す模式図である。
図8】評価指標の重み設定の他の一例を示す模式図である。
図9】評価指標の重み設定の他の一例を示す模式図である。
図10】評価指標の重み設定の他の一例を示す模式図である。
図11】同実施形態に係る設備管理支援装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図12】実施例として、押出負荷データ群及びこのときの実施例及び比較例の評価指標(EMD値)の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
また、以下では、一例として、コークス炉の炉体保全のため、コークス炉を構成する複数の窯の状態を管理するために本発明の設備管理支援装置を適用する場合について説明する。なお、本発明の設備管理支援装置は、例えば、以下の操業、品質、設備状態等を管理する設備に対しても適用可能である。
【0023】
(操業管理)
・コークス炉
:コークスケーキの表面温度、燃焼室フリュー温度や炭化室炉壁温度チャートを用いた燃焼状態悪化の検出
・連続鋳造設備
:連続鋳造のモールドにおける熱電対温度チャートを用いた凝固不良状態悪化の検出
(品質管理)
・熱間圧延設備、冷間圧延設備
:コイル片の疵発生数データ情報を用いた品質悪化傾向の検出
・棒線設備
:連続鋳造後の鋳片における位置毎の表面疵発生数データ情報を用いた品質悪化傾向の検出
・めっき設備
:連続溶融亜鉛めっきラインにおけるコイル位置毎の合金化度のデータチャートを用いた品質悪化傾向の検出
(設備状態管理)
・原料:鉄鋼石石炭ヤードにおけるコンベヤのモータ電流を用いた設備異常検知
【0024】
<1.設備管理支援装置>
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る設備管理支援装置100の機能構成について説明する。図1は、本実施形態に係る設備管理支援装置100の機能構成を示す機能ブロック図である。
【0025】
本実施形態に係る設備管理支援装置100は、図1に示すように、ヒストグラム変換処理部110と、重み設定部120と、評価指標算出部130と、優先度決定部140と、情報生成部150と、出力部160とを備える。
【0026】
ヒストグラム変換処理部110は、設備を構成する複数のユニットのうち1つのユニットを評価対象として、複数の異なる期間に取得された当該評価対象のユニットの観測値データ群を、少なくとも当該設備における時空間データ及び時空間データに関係して変化する観測値を変数とした多次元のヒストグラムにそれぞれ変換する。時空間データは、位置及び時間のうち少なくともいずれかを示すデータであり、1次元情報(直線位置情報)、2次元情報(平面位置情報)であってもよい。また、時空間データに関係して変化する観測値は、1つの観測値に限らず、複数の観測値であってもよい。
【0027】
例えば、ヒストグラム変換処理部110は、コークス炉を構成する各窯について、コークスの押出時に取得された押出位置毎の押出負荷を含む押出負荷データを、少なくとも押出位置と押出負荷とを含む複数軸の座標系で表される多次元のヒストグラムにそれぞれ変換する。押出位置は時空間データであり、押出負荷は時空間データに関係して変化する観測値の1つである。押出負荷データは、操業実績データとして操業実績データ記憶部200に蓄積されている。ヒストグラム変換処理部110は、所定期間に取得された複数の押出負荷データを用いて、押出位置毎の押出負荷の波形データをヒストグラムに変換して特徴量化する。このようなヒストグラムは、複数の異なる期間毎にそれぞれ作成される。ヒストグラム変換処理部110は、作成したヒストグラムを評価指標算出部130へ出力する。
【0028】
重み設定部120は、ヒストグラム変換処理部110により作成された期間の異なるヒストグラムについて、それらの差異(類似度)を評価するための評価指標(後述するEMD)を算出する際に使用する重み(後述するdij)を設定する。ここで、設定される重みは、例えば、期間の異なるヒストグラムのうち、前の期間のヒストグラムから後の期間のヒストグラムへと、観測値がどのように変化したかに応じて決められる。例えば、観測値が、良好状態から悪化状態となった、あるいは、悪化状態から良好状態となった、というような、状態の変化に応じて重みが決められる。この重みの大きさにより、観測値の変化が悪化傾向にあることを評価指標に反映させることができる。重みの設定処理の詳細な説明は後述する。重み設定部120は、設定した重みを評価指標算出部130へ出力する。
【0029】
評価指標算出部130は、ヒストグラム変換処理部110により作成された複数のヒストグラムから、2つの異なる期間のヒストグラムの差異(類似度)を評価するための評価指標を算出する。この評価指標により、評価対象とする窯における各押出位置での押出負荷の分布の変化を捉えることが可能となる。また、算出された評価指標には、重み設定部120により設定された重みが反映されている。すなわち、観測値の変化が悪化傾向にあるか否かが反映されている。
【0030】
2つの異なる期間のヒストグラムの差異(類似度)を評価する評価指標としては、本実施形態では、Earth Mover’s Distance(EMD)を用いる。EMDの詳細については後述する。評価指標算出部130は、算出した評価指標を、優先度決定部140及び情報生成部150に出力する。なお、評価指標算出部130は、算出した評価指標を、優先度決定部140または情報生成部150のいずれかにのみ出力してもよい。
【0031】
優先度決定部140は、評価指標算出部130により算出された評価指標に基づいて、点検の必要なユニットの優先度を決定する。例えば、優先度決定部140は、コークス炉の複数の窯それぞれに対して算出された評価指標に基づいて、点検の必要な窯の優先度を決定する。優先度は、例えば1つの炉団を構成する複数の窯に対して設定してもよい。優先度決定部140は、評価指標の値が高いほどトラブル発生の可能性が高いとして、評価指標の値の高い順に窯の点検の優先度を決定する。優先度決定部140は、決定した優先度を情報生成部150に出力する。
【0032】
情報生成部150は、評価対象のユニットの状態の変化を表す状態情報を生成する。状態情報は、例えば、設備の状態、設備における操業の状態、または、設備を用いて製造される製品の品質の状態のうち少なくともいずれか1つの変化を表す。
【0033】
例えば、情報生成部150は、状態情報として、評価指標に基づいて窯の状態を表す窯状態情報を生成する。窯状態情報としては、例えば、評価指標を時系列に並べた情報等がある。これらの情報は、時間の経過とともに窯の状態がどのように変化しているかを表している。また、情報生成部150は、破孔あるいは押詰りといったトラブルが発生する可能性が高くなったことを検知するために予め設定された閾値に基づき、評価指標を時系列に並べた情報に対して閾値判定を行い、トラブル発生を予測した情報を生成してもよい。
【0034】
さらに情報生成部150は、優先度決定部140により決定されたユニット(例えば窯)の点検の優先度に基づいて、優先度の高いユニットを作業者に通知するための通知情報を生成してもよい。情報生成部150は、例えば、優先度が高い順から所定数の窯(例えば上位5つの窯)を通知する通知情報を生成してもよい。通知情報は、少なくとも窯を特定可能な情報(例えば窯番号)を含み、さらに通知する窯の窯状態情報も含んでもよい。情報生成部150により生成された情報は、出力部160に出力される。
【0035】
出力部160は、情報生成部150により生成された情報を作業者に通知するための機能部である。出力部160は、例えば情報を視覚的に提示するディスプレイであり、音声を出力するスピーカを備えていてもよい。作業者は、出力部160を介して提示された情報に基づいて、ユニットの状態を把握したり、点検あるいはメンテナンスの必要なユニットを認識したりすることができる。
【0036】
<2.設備管理支援方法>
[2-1.Earth Mover’s Distance(EMD)]
本実施形態に係る設備管理支援方法では、2つの異なる期間について得られた観測値データ群のヒストグラムの差異を評価することにより、設備状態の変化の傾向を取得する。本実施形態では、2つの異なる期間のヒストグラムの差異を評価する評価指標としてEarth Mover’s Distance(以下、「EMD」ともいう。)を用いる(非特許文献1参照)。EMDは、「特徴量」と「重み」の集合で与えられる複数の分布間の距離を表し、この距離が遠いほど分布間の差異が大きいことを意味する。本実施形態では、ステップS110で生成されたヒストグラムを評価対象の分布とし、各ヒストグラムの変数である押出位置及び押出負荷を「特徴量」として用い、それぞれの発生頻度(度数)を示すビンを「重み」として用いる。EMDは、高次元情報の比較に適した指標であり、外れ値に強く適切にヒストグラムの差異を評価することができる。
【0037】
図2は、EMDを詳細に説明する説明図である。EMDは、最適化問題の1つである「輸送問題」の考え方に基づいている。例えば、図2に示すヒストグラムPとヒストグラムQとの差異を評価する場合には、ヒストグラムPの場所iには、重み(すなわちビンの度数)の量だけ荷物が積まれているものとし、ヒストグラムQとなるように、荷物を積み替えていくことを考える。つまり、図2で、ヒストグラムQの各場所jにおいて、決められた重み(すなわち、比較するときのヒストグラムQのビンの度数;点線のヒストグラム)の量の荷物をヒストグラムPから倉庫へ格納していくと考える。このとき、ヒストグラムPにある全ての荷物をヒストグラムQに輸送するのに、どの荷物をどこへ輸送すれば最も効率良いのかを求め、その最適解(後述の仕事量を最小にする解)がヒストグラムPとヒストグラムQの差異を評価するための指標となる。
【0038】
そこで、まず、その輸送にかかる仕事量Work(P,Q)を下記式(1)のように定義し、この仕事量Work(P,Q)を最小化するときの荷物の輸送量(場所iから場所jへ輸送されるそれぞれの荷物の量)を求める。なお、ヒストグラムPの場所iの荷物(ビン)について、ヒストグラムQの場所jに移動させるときの輸送コストをdijで表し、その輸送量(ビンの度数)をfijで表す。
【0039】
【数1】
【0040】
なお、輸送コストdijについては、多くの場合ではユークリッド距離が使用されており、本実施形態でもユークリッド距離を使用する。ここで、輸送コストdijは事前に与えられているものとする。そして、下記式(2)を目的関数とする線形計画問題を解き、仕事量Work(P,Q)が最小のときの輸送量f*ijを求める。
【0041】
【数2】
【0042】
そして、求めたf*ijを用いて、下記式(3)よりEarth Mover’s Distanceの値EMD(P,Q)を求めることができる。
【0043】
【数3】
【0044】
ここで求められるEMD(P,Q)は、上述したように、ヒストグラムPの荷物(ビン)をヒストグラムQに輸送するときの輸送問題の最適値と考えられる。このEMD(P,Q)を2つのヒストグラムP、Qの類似度とみなし、EMD(P,Q)の値から2つのヒストグラムP、Qの差異を評価することができる。EMD(P,Q)の値が小さいほど、ヒストグラムPとヒストグラムQとは類似した分布を有しており、分布の変化が少ないといえる。
【0045】
本実施形態に係る設備管理支援方法では、上記式(3)の値を評価指標として用いる。また、本実施形態では、輸送コストdij(すなわち、重み設定部120により決められた重み)を、前後する期間でのビンの移動状況に基づき調整することで、評価対象のユニットの状態の変化の傾向をより適切に評価指標に反映させることができる。
【0046】
[2-2.処理フロー]
図3図10に基づいて、本実施形態に係る設備管理支援装置100による設備管理支援方法を説明する。図3は、本実施形態に係る設備管理支援方法を示すフローチャートである。図4及び図5は、異なる時期における押出負荷の傾向を示すデータとそのヒストグラムとを示す説明図である。図6は、コークス押出し時の押出負荷が低負荷である場合と高負荷である場合との、押出位置における押出負荷の変化の一例を示す模式図である。図7図10は、評価指標に対する重み設定の一例を示す模式図である。
【0047】
(データ取得:S100)
まず、図3に示すように、設備管理支援装置100は、操業実績データ記憶部200から観測値データ群として所定期間の操業実績データを取得する(S100)。取得された操業実績データは、ヒストグラム変換処理部110及び重み設定部120へ入力される。
【0048】
(ヒストグラム変換処理:S110)
次いで、ヒストグラム変換処理部110により、操業実績データに含まれる押出負荷データがヒストグラムに変換される(S110)。
【0049】
ヒストグラムに変換される押出負荷データは、設備を構成するユニットである窯毎に、時系列順に配列された状態で、所定の期間毎に区分される。押出負荷データを区分する期間の長さは同一とし、データ数もほぼ同一であるのが望ましい。なお、各押出負荷データ群の期間は重複しないように設定されるが、多少の重複はあってもよい。例えば、直近2か月分の操業実績データの押出負荷データを取り扱う場合、直近から1か月前までの期間の押出負荷データと、1か月前から2か月前までの期間の押出負荷データとの2つの押出負荷データ群を作成する。ヒストグラム変換処理部110は、各期間の押出負荷データ群から、押出位置と押出負荷とを変数とした2次元のヒストグラムを生成する。
【0050】
押出負荷データ群と、その押出負荷データ群から変換して生成されたヒストグラムとを、図4及び図5に例示する。図4は1か月前から2か月前までの期間の押出負荷データに関する情報であり、図5は直近から1か月前までの期間の押出負荷データに関する情報である。図4及び図5の上側には、横軸に窯長手方向位置(押出位置)、縦軸に時間をとり、各窯長手方向位置での押出負荷の値を色合いで表現した図を示している。色が淡い部分ほど押出負荷が高いことを表している。また、図4及び図5の下側には、押出負荷データ群を変換して生成されたヒストグラムを示している。ヒストグラムは、押出位置と押出負荷とに応じた発生頻度(データ分布)を表している。
【0051】
図4及び図5より、所定の期間の押出負荷データ群をヒストグラムにより表すことで、各期間における押出位置と押出負荷とがとる値の傾向を捉えやすくなる。例えば、図4下側に示すように、1か月前から2か月前までの期間では、各押出位置における押出負荷の値におおきなばらつきは見られない。しかし、図5下側に示すように、直近から1か月前までの期間では、押出開始後、押出負荷が高まる傾向がみられる。
【0052】
(重み設定処理:S120)
次いで、重み設定部120は、ヒストグラム変換処理部110により生成された期間の異なるヒストグラムについて、それらの差異(類似度)を評価するための評価指標(EMD)を算出する際に使用する重みを設定する(S120)。評価指標に、時空間データ(押出位置)及び観測値(押出負荷)の少なくともいずれかの変化状況の良し悪しが考慮されていなければ、その変化が悪化傾向にあるのか良化傾向にあるのか把握できず、良化傾向にあるにも関わらず評価対象のユニットの状態を悪く評価してしまう場合がある。このような誤った評価をしないために、ステップS120にて重み設定を行うことにより、評価指標に、時空間データ(押出位置)及び観測値(押出負荷)の少なくともいずれかの変化状況の良し悪しが考慮されるようにする。
【0053】
重み設定部130は、例えば、コークス炉の窯の状態を管理する場合、操業実績データに含まれる観測値の1つである押出負荷の変化状況を考慮して、重みを設定する。考慮される押出負荷の変化状況としては、例えば、押出負荷が管理基準以内に収まっているか、押出負荷がピークとなる押出位置の変化があるか(押出し開始からコークスケーキが窯長手方向に圧縮されて移動し始めるときの挙動の変化)、また、各押出位置について押出負荷が直近の過去実績データと逸脱した値を取っているか、等がある。
【0054】
図6に、コークス押出し時の押出負荷が低負荷である場合と高負荷である場合とに分けて、押出位置における押出負荷の変化の一例を示す。図6では、ある期間における複数の操業実績データから、押出位置と押出負荷とについての発生頻度(ここでは発生有無)を表している。つまり、図6は、各押出位置において押出負荷がどのくらいの範囲にばらついているかを示している。また、図6の押出位置について、「PS」はコークス炉の窯において押出機が配置されている側(Pusher Side)をいい、「押出機側」ともいう。また、「CS」はコークス炉の窯においてコークスが排出される側(Coke Side)をいい、「ガイド車側」ともいう。
【0055】
コークス押出し時の押出負荷が低負荷である場合、図6上側に示すように、押出負荷は、押出位置の位置が変化しても管理上限値を超えることはなく、常に安定領域内の値となる。一方、コークス押出し時の押出負荷が高負荷である場合、図6下側に示すように、押出負荷は、押出位置の位置がガイド車側に近づくにつれて上昇し、管理上限値を超えてしまう。このように押出負荷が高負荷となると、破孔あるいは押詰りといったトラブルが発生する可能性が高い。
【0056】
そこで、本実施形態では、押出負荷が高負荷となる傾向に照らし合わせて評価指標における重みを設定することで、前後する期間における押出位置(時空間データ)及び押出負荷(観測値)の少なくともいずれかの変化の方向を評価指標に反映させる。これにより、より適切に、直近の期間における押出負荷の悪化状態を評価することができる。
【0057】
具体的には、評価指標における重みの設定は、図7図10に示すパターンA~Dの方法により行うことが考えられる。図7図10は、前後する期間におけるヒストグラム内の1つのデータの変化を示している。図7図10では、前後する期間におけるヒストグラムとして、1か月前から2か月前までの期間(前の期間)のヒストグラムと、直近から1か月前までの期間(後の期間)のヒストグラムとを示している。この1つのデータは、ある押出位置でその押出負荷になった実績があることを表す1つのビン(図7図10に示されている四角)に対応する。なお、各期間のヒストグラムは、上述のステップS110でのヒストグラム化処理と同様に、それぞれの期間において取得された観測値データ群から作成される。あるいは、ステップS110で生成されたヒストグラムを用いてもよい。
【0058】
(パターンA)
パターンAでは、まず、重み設定部120は、期間の異なるヒストグラムのうち、後の期間のヒストグラムについて、観測値が安定している状態にある安定領域を特定する。
【0059】
例えば、重み設定部120は、図7に示すように、前後する期間のヒストグラムのうち、後の期間(直近から1か月前までの期間)に対し、押出負荷の安定領域を過去の操業実績データに基づき特定する。安定領域は、具体的には、炉壁診断にて健全と判断されうる炉壁面のメンテナンス後や操業が安定しているときの操業実績データを用いて特定される。このときの操業実績データは、現時点の窯の状態を反映させるため、直近のデータを用いるのがよい。
【0060】
次いで、重み設定部120は、上述した式(2)により、仕事量Work(P,Q)が最小となるときに、各ビンが、前の期間のヒストグラム(図2のヒストグラムP)から後の期間のヒストグラム(図2のヒストグラムQ)へどのように輸送されたか特定する。そして、重み設定部120は、ビン(データ)それぞれについて、輸送後の後の期間における位置が安定領域にあるか否かを判定する。ビン(データ)が後の期間において安定領域にある場合には、重み設定部120は、重み、すなわち輸送コストdijを0に設定する。一方、ビン(データ)が後の期間において安定領域外にある場合には、重み設定部120は、重み、すなわち輸送コストdijを、移動距離(例えばユークリッド距離)に応じて与えたり、一定値で与えたりすることにより設定する。
【0061】
このように、押出負荷が安定領域から外れた場合にのみ評価指標にて考慮することで、押出負荷が高負荷となり窯の状態が悪化する傾向にあることを適正に評価することができる。
【0062】
(パターンB)
パターンBでは、まず、重み設定部120は、期間の異なるヒストグラムのうち、複数のヒストグラムについて観測値が安定している状態にある安定領域を特定する。
【0063】
例えば、重み設定部120は、図8に示すように、前後する期間のヒストグラムそれぞれに対し、押出負荷の安定領域を過去の操業実績データに基づき特定する。安定領域は、パターンAの場合(図7)と同様に、炉壁診断にて健全と判断されうる炉壁面のメンテナンス後や操業が安定しているときの操業実績データを用いて特定すればよい。
【0064】
次いで、重み設定部120は、上述した式(2)により、仕事量Work(P,Q)が最小となるときに、各ビンが、前の期間のヒストグラム(図2のヒストグラムP)から後の期間のヒストグラム(図2のヒストグラムQ)へどのように輸送されたか特定する。そして、重み設定部120は、ビン(データ)それぞれについて、輸送前と輸送後との両方でビンの位置が安定領域にあるか否かを判定する。
【0065】
例えば、前の期間において安定領域内にあったビン(データ)が後の期間において安定領域にある場合には、重み設定部120は、重み、すなわち輸送コストdijを0に設定する。一方、前の期間において安定領域内にあったビン(データ)が後の期間において安定領域外にある場合には、重み設定部120は、重み、すなわち輸送コストdijを設定する。このとき、輸送コストdijは、移動距離に応じたコスト(例えばユークリッド距離)+ペナルティ(一定量)としてもよい。
【0066】
これに対して、前の期間において安定領域外にあったビン(データ)が後の期間において安定領域にある場合には、重み設定部120は、重み、すなわち輸送コストdijを0または負の値に設定する。輸送コストdijを負の値に設定する場合、輸送コストdijとして、例えば、一定値を与えてもよく、移動距離に応じたコスト(例えばユークリッド距離)に-1をかけた値を与えてもよい。一方、前の期間において安定領域外にあったビン(データ)が後の期間においても安定領域外にある場合には、重み設定部120は、重み、すなわち輸送コストdijを設定する。このとき、輸送コストdijは、移動距離に応じたコスト(例えばユークリッド距離)+ペナルティ(一定量)としてもよい。
【0067】
このように、押出負荷が前後の期間において安定領域内にあるか安定領域外にあるかに応じて、その変化を評価指標に反映させることで、押出負荷が高負荷となり窯の状態が悪化する傾向にあることを適正に評価することができる。
【0068】
(パターンC、D)
パターンC、Dでは、まず、重み設定部120は、前後する期間における観測値の変化方向(すなわち、ビンが輸送された位置)に基づいて、重みを設定してもよい。この場合、パターンA(図7)及びパターンB(図8)のように安定領域を特定する必要はなく、観測値が変化する方向により重みが設定される。
【0069】
例えば、重み設定部120は、上述した式(2)により、仕事量Work(P,Q)が最小となるときに、各ビンが、前の期間のヒストグラム(図2のヒストグラムP)から後の期間のヒストグラム(図2のヒストグラムQ)へどのように輸送されたか特定する。そして、重み設定部120は、輸送により生じた押出負荷の変化量や押出位置の変化量に応じて重みを設定する。
【0070】
例えば、図9は、押出負荷の変化に着目したケース(パターンC)を示している。かかるケースでは、押出負荷が前の期間に比べて後の期間の方が減少する方向へ変化したビン(データ)に対しては、重み設定部120は、重み、すなわち輸送コストdijを0に設定する。一方、押出負荷が前の期間に比べて後の期間の方が増加する方向へ変化したビン(データ)に対しては、重み設定部120は、重み、すなわち輸送コストdijをその移動量(ユークリッド距離等)に応じて与える。この際、押出負荷がある値以上増大した場合には、一定値のコストを与えるようにしてもよい。
【0071】
また、図10は、押出位置の変化に着目したケース(パターンD)を示している。押出波形において、ピーク位置がガイド車側へ移動する場合や、押出位置の後方(ガイド車側)において押出負荷が増大する傾向がある場合には、押出性が悪化することが知られている。かかる知見から、押出位置が前の期間に比べて後の期間の方がガイド車側に移動したビン(データ)に対しては、重み設定部120は、重み、すなわち輸送コストdijをその移動量(ユークリッド距離等)に応じて与える。この際、押出位置がある値以上移動した場合には、一定値のコストを与えるようにしてもよい。一方、押出位置が前の期間に比べて後の期間の方が押出機側へ移動したビン(データ)に対しては、重み設定部120は、重み、すなわち輸送コストdijを0に設定する。
【0072】
このように、安定領域を設定せずとも、観測値の変化(例えば押出負荷の変化や押出位置の変化)を評価指標に反映させることで、押出負荷が高負荷となり窯の状態が悪化する傾向にあることを適正に評価することができる。なお、図9及び図10の前後の期間における観測値の変化方向に基づく重み設定(パターンC、D)は、図7の前後の期間のヒストグラムのうち、一方(後の期間)のヒストグラムにおける観測値の安定状態を考慮した重み設定(パターンA)、または、図8の前後の期間のヒストグラムにおける観測値の安定状態を考慮した重み設定(パターンB)と組み合わせて使用することもできる。
【0073】
重み設定部120は、設定した重みを評価指標算出部130へ出力する。
【0074】
(評価指標算出処理:S130)
ヒストグラム変換処理部110により各期間のヒストグラムが生成されると、評価指標算出部130は、2つのヒストグラムの差異を評価する(S130)。窯異常が発生し始めている場合には、押出負荷波形の特定位置において押出負荷にばらつきが現れ出すことがある。2つの異なる期間のヒストグラムの差異を見ることで、このような押出負荷のばらつき現象を捉えることができる。
【0075】
本実施形態では、2つの異なる期間のヒストグラムの差異を評価する評価指標としてEarth Mover’s Distance(EMD)を用いる。評価指標算出部130は、上記式(3)より、2つのヒストグラムの差異を表す評価指標(すなわちEMD(P,Q))を算出する。この際、評価指標算出部130は、重み設定部120により設定された重み(輸送コストdij)を用いて(すなわち、上記式(3)に代入して)評価指標を算出する。そして、評価指標算出部130は、算出した評価指標を、優先度決定部140及び情報生成部150に出力する。
【0076】
(確認処理:S140)
ステップS130の処理を終えると、設備管理支援装置100は、評価対象となるすべてのユニットについて、ステップS110~ステップS130の処理が行われたか否か判定する(S140)。例えば、コークス炉の例では、評価対象とする窯は、例えば1つの炉団を構成している窯すべてとしてもよい。ステップS140にて未処理のユニットがあると判定された場合には、評価対象となるすべてのユニットについて処理を終えるまでステップS110~ステップS130の処理が繰り返し実行される(ステップS140;No)。一方、ステップS140にてすべてのユニットについて処理が行われたと判定された場合には(ステップS140;Yes)、ステップS150以降の処理が実行される。
【0077】
(優先度決定処理:S150)
評価対象とするすべてのユニットについてステップS110~S130の処理を終えると、優先度決定部140は、ステップS130にて複数のユニットそれぞれに対して算出された評価指標に基づいて、点検の必要なユニットの優先度を決定する(S150)。例えば、コークス炉の例では、優先度は、例えば1つの炉団を構成する複数の窯に対して設定してもよい。優先度決定部140は、評価指標の値が高いほどトラブル発生の可能性が高いとして、評価指標の値の高い順にユニットの点検の優先度を決定する。
【0078】
(出力処理:S160)
ステップS150にてユニットの点検の優先度が決定されると、情報生成部150は、評価指標の値の高いユニットを作業者に通知するための通知情報を生成する。出力部160は、情報生成部150により生成された通知情報を作業者に通知する。通知情報により、例えば、コークス炉の例では、窯の点検の優先度の高い窯の窯番号が作業者に通知される。作業者は、通知情報に基づき、優先的に炉内点検あるいはメンテナンスすべき窯を把握することができ、早期に必要なアクションをとることが可能となる。
【0079】
以上、本実施形態に係る設備管理支援方法について説明した。本実施形態に係る設備管理支援方法を用いることで、複数の異なる期間の観測値データを評価範囲として、それらの期間を逐次的に変更しながら解析を行うことが可能となる。すなわち、予め設定されたトレンドに対して評価を行うのではなく、評価対象とする所定期間の観測値データを変更して評価することで、設備を構成するユニットが不安定に変化する場合であっても、ユニットの異常を捉えることが可能となる。これにより、コークス炉の例では、例えば押詰りあるいは破孔といった窯異常を高精度に予見することができるようになる。その結果、窯異常に対して適切な対策を早期に実施することが可能となり、非稼働となる窯の発生を防止して操業安定化を図ることが可能となる。
【0080】
また、本実施形態に係る設備管理支援方法では、観測値の変化の傾向に照らし合わせて評価指標における重みを設定することで、評価指標に前後の期間における時空間データ(押出位置)及び観測値(押出負荷)の少なくともいずれかの変化状態を反映させる。これにより、直近の期間における観測値の悪化状態をより適切に評価することができる。
【0081】
<3.ハードウェア構成例>
以下、図11を参照しながら、本実施形態に係る設備管理支援装置100のハードウェア構成について、詳細に説明する。図11は、本発明の実施形態に係る設備管理支援装置100のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0082】
設備管理支援装置100は、主に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、設備管理支援装置100は、更に、バス907と、入力装置909と、出力装置911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを備える。
【0083】
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、またはリムーバブル記録媒体921に記録された各種プログラムに従って、設備管理支援装置100内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。
【0084】
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バスに接続されている。
【0085】
入力装置909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチおよびレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置909は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、設備管理支援装置100の操作に対応したPDA等の外部接続機器923であってもよい。さらに、入力装置909は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。設備管理支援装置100のユーザは、この入力装置909を操作することにより、設備管理支援装置100に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0086】
出力装置911は、取得した情報をユーザに対して視覚的または聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置およびランプなどの表示装置や、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなどがある。出力装置911は、例えば、設備管理支援装置100が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、設備管理支援装置100が行った各種処理により得られた結果を、テキストまたはイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。
【0087】
ストレージ装置913は、設備管理支援装置100の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、または光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、および外部から取得した各種のデータなどを格納する。
【0088】
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、設備管理支援装置100に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体921は、例えば、CDメディア、DVDメディア、Blu-ray(登録商標)メディア等である。また、リムーバブル記録媒体921は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、または、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体921は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器等であってもよい。
【0089】
接続ポート917は、機器を設備管理支援装置100に直接接続するためのポートである。接続ポート917の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート、RS-232Cポート等がある。この接続ポート917に外部接続機器923を接続することで、設備管理支援装置100は、外部接続機器923から直接各種のデータを取得したり、外部接続機器923に各種のデータを提供したりする。
【0090】
通信装置919は、例えば、通信網925に接続するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。通信装置919は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、またはWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置919に接続される通信網925は、有線または無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信等であってもよい。
【0091】
以上、本発明の実施形態に係る設備管理支援装置100の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
【実施例
【0092】
本発明に係る設備管理支援方法の効果を検証すべく、設備管理に用いる評価指標とコークス炉の窯状態との関係について調べた。実施例では、評価指標として、上記実施形態に係る設備管理支援方法により算出されるEMDの値を用いた。すなわち、実施例の評価指標は、調整された重みを用いて上記式(3)により算出した。一方、比較例では、評価指標としてEMDの値を用いたが、このときの重みはユークリッド距離により設定した。図12に、ある期間における押出負荷データ群と、このときの実施例及び比較例の評価指標(EMD値)の変化を示す。なお、図12のEMD値は、押詰りが発生したときの値を基準として正規化したものである。
【0093】
図12より、実施例及び比較例ともに、押詰りの発生に近づくにつれてEMD値は上昇し、押詰り発生の可能性が高くなっていることを検知できている。しかし、比較例では、破線枠で示す箇所で、押詰りの発生の可能性が低い操業安定状態においてEMD値が高くなっており、押詰りの発生があると過検知していた。これに対して実施例では、操業安定状態ではEMD値は低い値を維持しており、実際に押詰りが発生する前のみEMD値は上昇した。このように、本発明に係る設備管理支援方法によれば、過検知を低減しつつ、設備のトラブル発生を適正に検知することができる。
【0094】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0095】
例えば、上記実施形態では、2つの異なる期間のヒストグラムの差異を評価する評価指標として、Earth Mover’s Distance(EMD)を用いたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、χ2距離、KL情報量、JS情報量等を評価指標として用いてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、出力処理(S160)においてユニットの評価指標に基づき決定された点検の優先度の高いユニットを通知する例を取り上げたが、本発明はかかる例に限定されず、例えば、上記の通知情報に代えて、あるいは通知情報とともに、評価対象のユニットの状態の変化を表す状態情報を作業者に通知してもよい。コークス炉の例では、状態情報として、例えば、評価指標を時系列に並べた情報等の窯状態情報が通知される。これらの情報は、時間の経過とともに窯の状態がどのように変化しているかを表しているため、設備管理支援において有益な情報といえる。
【0097】
さらに、上記実施形態では、本実施形態に係る情報生成部150は、破孔あるいは押詰りといったトラブルが発生する可能性が高くなったことを検知するために予め設定された閾値に基づき、評価指標を時系列に並べた情報に対して閾値判定を行い、トラブル発生を予測した情報を生成することも可能である。したがって、出力処理では、閾値判定の結果からトラブル発生が予測されるユニットを通知するようにしてもよい。閾値判定を行うことで、コークス炉の例であれば破孔あるいは押詰りといったトラブル発生によるユニットの非稼働化を防ぐことが可能となる。
【0098】
また、上記実施形態では、2つのヒストグラムの差異を、評価対象のユニットの状態の変化を表す評価指標としたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、3つ以上のヒストグラムを比較することにより算出されたこれらのヒストグラムの差異を評価指標としてもよい。
【符号の説明】
【0099】
100 設備管理支援装置
110 ヒストグラム変換処理部
120 重み設定部
130 評価指標算出部
140 優先度決定部
150 情報生成部
160 出力部
200 操業実績データ記憶部
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