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  • 特許-極低窒素鋼の溶製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】極低窒素鋼の溶製方法
(51)【国際特許分類】
   C21C 7/00 20060101AFI20230419BHJP
   C21C 7/04 20060101ALI20230419BHJP
   C21C 7/10 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
C21C7/00 N
C21C7/04 C
C21C7/10 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019084225
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020180341
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】久志本 惇史
(72)【発明者】
【氏名】古河 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小山 達也
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-120899(JP,A)
【文献】特開2018-127680(JP,A)
【文献】特開2008-144224(JP,A)
【文献】特開2010-209372(JP,A)
【文献】特開2015-178646(JP,A)
【文献】特開昭51-146315(JP,A)
【文献】特開2018-141194(JP,A)
【文献】特開2016-222970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 7/00
C21C 7/04
C21C 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取鍋に出鋼した転炉吹錬後の溶鋼に対して、取鍋精錬装置にてガス攪拌を伴うスラグ精錬を施し、質量%でAl濃度:0.02%以上、S濃度:0.0020%以下の成分を含む溶鋼とした後、真空脱ガス装置において脱窒処理を実施する極低窒素鋼の溶製方法であって、以下の(1)式に示す時期にCa純分で0.20~0.40kg/tonのCa合金を添加し、次いで前記真空脱ガス装置において、減圧精錬装置内の圧力を8.0kPa未満とした後に脱窒処理を実施することを特徴とする、極低窒素鋼の溶製方法。
L.Ca/tL.Total>0.85 ・・・(1)
ここで、tL.Ca:前記取鍋精錬装置にてガス吹込みを開始した時点から、Ca合金の添加を開始するまでの時間(min)、tL.Total:前記スラグ精錬の全時間(min)である。
【請求項2】
前記真空脱ガス装置として環流型真空脱ガス装置を用い、以下の(2)~(5)式に示す条件で脱窒処理を実施することを特徴とする、請求項1に記載の極低窒素鋼の溶製方法。
5.00<ε<10.00 ・・・(2)
ε=371GT{ln(1+ρg(H+h)/P)+0.06(1-Tg/T)}/W ・・・(3)
W=ρ・A・h ・・・(4)
h=(P0-P)/ρg+Hd-H ・・・(5)
ここで、ε:真空槽内での攪拌動力密度(W/kg)、G:環流ガス流量(Nm3/s)、ρ:溶鋼密度(=7000kg/m3)、g:重力加速度(m/s2)、H:浸漬管下端~真空槽槽底間距離(m)、h:真空槽内の溶鋼の浴深(m)、P:真空槽内圧力(Pa)、Tg:吹込みガス温度(K)、T:溶鋼温度(K)、W:真空槽内の溶鋼質量(kg)、A:真空槽断面積(m2)、P0:大気圧(Pa)、Hd:浸漬管の浸漬深さ(m)である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空脱ガス装置を用いて脱窒処理を行う極低窒素鋼の溶製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、S濃度の低い厚板材などでは、低硫黄化のみならず低窒素化のニーズも多くなっている。そこで、溶鋼の脱窒処理について様々な処理方法が提案されている。
【0003】
特許文献1には、Ca合金とCaO系フラックスとを真空精錬中にランスから上吹きし、脱酸と脱硫とを促進させて脱窒反応を促進させる技術が開示されている。また、特許文献2には、上吹きするフラックスとして、脱酸力の強い金属とアルカリ(土類)金属酸化物との適切な配合比を規定した脱硫脱窒剤に関する技術が開示されている。さらに特許文献3には、上吹きフラックスのREMおよびCaOの配合比を規定した脱硫剤に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-92819号公報
【文献】特開昭61-281807号公報
【文献】特許第5267513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~3に記載の方法は、いずれもフラックスを真空下で上吹き供給することを前提としており、粉体の歩留まりが低く、かつ脱窒効果が安定しないという課題がある。
【0006】
本発明は前述の問題点を鑑み、効率良くかつ安定して脱窒を促進できる極低窒素鋼の溶製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
極低窒素鋼を溶製するためには、RH等の真空脱ガス装置による脱窒処理を実施する必要がある。一般的に真空脱ガス装置での脱窒反応は気液界面の化学反応律速であり、例えば反応速度式は以下の(6)式及び(7)式で表される。
d[N]/dt=-Ak/V・([N]2-[N]e 2) ・・・(6)
k=15/(1+161aO+63.4aS2 ・・・(7)
ここで、k:脱窒反応速度定数、A:真空槽断面積(m2)、V:溶鋼体積(m3)、[N]:溶鋼中N濃度(質量%)、[N]e:平衡溶鋼中N濃度(質量%)、aO:溶鋼の酸素活量、aS:溶鋼の硫黄活量である。
【0008】
(7)式からわかるとおり、脱窒反応速度定数kは、溶鋼の酸素活量aOが低いほど大きくなり、溶鋼の強脱酸が脱窒促進に有効であることが分かる。一方で、真空下でのフラックスの上吹きという供給手法では、真空引きによって蒸発しやすく、さらに溶鋼への粉体の着地効率が低く効率が悪いという課題がある。
【0009】
本発明者らは、Ca添加による脱窒促進を狙い、常圧下で取鍋でのスラグ精錬下での事前添加を行うことを検討した。ところが、スラグ精錬の初期にCaを添加すると、スラグ精錬中の溶鋼が強脱酸され、攪拌ガスが溶鋼/スラグ間界面に形成する裸湯部分において吸窒が顕著に生じてしまう。そこで、本発明者らはスラグ精錬末期にCaを添加する方が吸窒量を抑えることができることに着目した。また、真空脱ガス装置での脱窒処理において真空槽内の溶鋼の攪拌が強すぎると、Caの蒸発を促進してしまうため、攪拌動力密度は精錬反応を悪化させない範囲で小さい値にすることが望ましく、適正な範囲があることも見出した。
【0010】
本発明は、以下の通りである。
(1)
取鍋に出鋼した転炉吹錬後の溶鋼に対して、取鍋精錬装置にてガス攪拌を伴うスラグ精錬を施し、質量%でAl濃度:0.02%以上、S濃度:0.0020%以下の成分を含む溶鋼とした後、真空脱ガス装置において脱窒処理を実施する極低窒素鋼の溶製方法であって、以下の(1)式に示す時期にCa純分で0.20~0.40kg/tonのCa合金を添加し、次いで前記真空脱ガス装置において、減圧精錬装置内の圧力を8.0kPa未満とした後に脱窒処理を実施することを特徴とする、極低窒素鋼の溶製方法。
L.Ca/tL.Total>0.85 ・・・(1)
ここで、tL.Ca:前記取鍋精錬装置にてガス吹込みを開始した時点から、Ca合金の添加を開始するまでの時間(min)、tL.Total:前記スラグ精錬の全時間(min)である。
(2)
前記真空脱ガス装置として環流型真空脱ガス装置を用い、以下の(2)~(5)式に示す条件で脱窒処理を実施することを特徴とする、上記(1)に記載の極低窒素鋼の溶製方法。
5.00<ε<10.00 ・・・(2)
ε=371GT{ln(1+ρg(H+h)/P)+0.06(1-Tg/T)}/W ・・・(3)
W=ρ・A・h ・・・(4)
h=(P0-P)/ρg+Hd-H ・・・(5)
ここで、ε:真空槽内での攪拌動力密度(W/kg)、G:環流ガス流量(Nm3/s)、ρ:溶鋼密度(=7000kg/m3)、g:重力加速度(m/s2)、H:浸漬管下端~真空槽槽底間距離(m)、h:真空槽内の溶鋼の浴深(m)、P:真空槽内圧力(Pa)、Tg:吹込みガス温度(K)、T:溶鋼温度(K)、W:真空槽内の溶鋼質量(kg)、A:真空槽断面積(m2)、P0:大気圧(Pa)、Hd:浸漬管の浸漬深さ(m)である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、効率良くかつ安定して脱窒を促進できる極低窒素鋼の溶製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】真空脱ガス前のCa濃度と、RH型真空脱ガス装置での脱窒増加量および取鍋での吸窒増加量との関係を示す図である。
図2】取鍋での吸窒を差し引いた総括の脱窒増加量を示す図である。
図3】Ca原単位と添加後のCa濃度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
本発明では、取鍋に出鋼した転炉吹錬後の溶鋼を、取鍋精錬装置にてガス攪拌を伴うスラグ精錬を施し、質量%でAl濃度:0.02%以上、S濃度:0.0020%以下の成分を含む溶鋼とした後、真空脱ガス装置において脱窒処理を実施する極低窒素鋼の溶製方法であって、以下の(1)式に示す時期にCa純分で0.20~0.40kg/tonのCa合金を添加し、次いで前記真空脱ガス装置において、減圧精錬装置内の圧力を8.0kPa未満とした後に脱窒処理を実施することを特徴とする。
L.Ca/tL.Total>0.85 ・・・(1)
ここで、tL.Ca:前記取鍋精錬装置にてガス吹込みを開始した時点から、Ca合金の添加を開始するまでの時間(min)、tL.Total:前記スラグ精錬の全時間(min)である。
【0015】
また、本発明において、好ましくは、前記真空脱ガス装置として環流型真空脱ガス装置を用い、以下の(2)~(5)式に示す条件で脱窒処理を実施する。
5.00<ε<10.00 ・・・(2)
ε=371GT{ln(1+ρg(H+h)/P)+0.06(1-Tg/T)}/W ・・・(3)
W=ρ・A・h ・・・(4)
h=(P0-P)/ρg+Hd-H ・・・(5)
ここで、ε:真空槽内での攪拌動力密度(W/kg)、G:環流ガス流量(Nm3/s)、ρ:溶鋼密度(=7000kg/m3)、g:重力加速度(m/s2)、H:浸漬管下端~真空槽槽底間距離(m)、h:真空槽内の溶鋼の浴深(m)、P:真空槽内圧力(Pa)、Tg:吹込みガス温度(K)、T:溶鋼温度(K)、W:真空槽内の溶鋼質量(kg)、A:真空槽断面積(m2)、P0:大気圧(Pa)、Hd:浸漬管の浸漬深さ(m)である。
【0016】
ここで、脱窒処理を実施する真空脱ガス装置の種類については特に限定しないが、例えば環流型(RH型)真空脱ガス装置を用いることができる。また、減圧精錬装置は、真空脱ガス装置に具備された真空槽であっても、真空脱ガス装置に具備されていない別の減圧精錬装置であってもよい。RH型真空脱ガス装置を用いる場合には、減圧精錬装置は真空槽とする。以下、RH真空脱ガス装置において脱窒処理を実施する例として説明する。
【0017】
また、Ca合金は、例えばCaSiなどが挙げられるが、その他のCa合金であってもよい。また、Ca合金を溶鋼に添加する方法として、キャリアガスとともに吹込む方法、塊状のCa合金を上方から添加する方法、ワイヤーとして添加する方法などがあるが、溶鋼の内部まで浸透できるワイヤー添加が最も好ましい。
【0018】
[溶鋼成分を質量%でAl濃度:0.02%以上、S濃度:0.0020%以下]
低窒素化のニーズはS濃度の低い厚板材で多く、該当鋼種の一般的な成分範囲を対象とする。Al濃度が0.02%未満であったり、S濃度が0.002%を超えていたりする鋼種は、溶鋼のO濃度及び/又はS濃度が高いことから、転炉から取鍋に出鋼する際の出鋼流における吸窒が生じにくいため、N濃度が高くなりにくい鋼種である。このような鋼種はN濃度がもともと低位であるため脱窒する必要がなく、発明対象から外した。溶鋼成分をこの範囲とするために、スラグ精錬で脱酸、脱硫を行う。なお、S濃度に関しては、それよりも前工程で脱硫を行い、これらの成分範囲に調整してもよい。また、Al濃度の上限値は、各鋼材の必要Al含有量に基づき決定される。
【0019】
[tL.Ca/tL.Total>0.85・・・(1)]
Ca合金を添加するのが早すぎると、その分だけ溶鋼中に添加されたCaが脱窒処理前までに多く蒸発してしまう。さらにスラグ精錬中の溶鋼の酸素活量aOが下がり、溶鋼の吸窒量が増加してしまうため、スラグ精錬時間の85%超が経過してからCa合金の添加を開始する。なお、スラグ精錬後にCa合金を添加してもよい。スラグ精錬を終えた後にCaを添加した場合はtL.Ca/tL.Totalが1.0を超えることになる。但し、後工程において真空脱ガス装置で真空引きする前にCaの添加を終了する必要がある。また、スラグ精錬は、取鍋に出鋼した溶鋼に対してガスの吹込み及びスラグの攪拌を開始してから、ガスの吹込みを停止し攪拌を終了するまでの間とする。
【0020】
[Ca合金をCa純分で0.20~0.40kg/tonを添加]
本発明者らは、Caをどの程度添加すれば脱窒効果が最も得られるかを検証するための実験を行った。図1は、真空脱ガス前のCa濃度と、RH型真空脱ガス装置での脱窒増加量(白い丸印)および取鍋での吸窒増加量(黒い丸印)との関係を示す図である。ここでの増加量とは、Caを添加しない条件に対する吸窒量あるいは脱窒量の増加量を示す。図1に示すように、Ca濃度の増加により脱窒量は単調に増加するもののCa濃度が70ppm前後で脱窒効果が飽和し、一方で取鍋での吸窒量はCa濃度が70ppmを超えても大きく増加してしまうことがわかる。
【0021】
図2は、取鍋での吸窒を差し引いた総括の脱窒増加量を示す図である。図2に示すように、Ca濃度が70~90ppmで脱窒増加量は極大となることがわかる。また、図3に示すように、溶鋼中Ca濃度を70~90ppmとするためには、Ca合金をCa純分で0.20~0.40kg/ton添加する必要があることもわかる。
【0022】
[減圧精錬装置内の圧力を8.0kPa(=60Torr)未満]
真空脱ガス装置での脱窒反応は界面化学反応律速であり、圧力の影響は小さい。しかしながら、圧力が高すぎると雰囲気での窒素分圧が高くなり、脱窒速度が低下してしまう。さらに、RH型真空脱ガス装置を用いる場合には、溶鋼の環流速度が著しく低下してしまい、真空槽内への窒素の供給が停滞してしまう。このため、減圧精錬装置内の圧力は8.0kPa未満とする。
【0023】
[5.00<ε<10.00・・・(2)]
RH型真空脱ガス装置を用いて脱窒処理を行う場合に、真空槽内での溶鋼の撹拌が強すぎると真空槽内でのCaの蒸発が顕著に生じてしまい、Caの強脱酸による脱窒促進効果が大きく低下してしまう。よって、真空槽内の攪拌動力密度εを10.0未満とすることが好ましい。ただし、攪拌動力密度εが小さくなりすぎると、溶鋼の環流速度が著しく低くなり、上述した理由により脱窒反応が悪化してしまうため、真空槽内の攪拌動力密度εを5.0超とすることが好ましい。なお、攪拌動力密度εの値は、環流ガス流量を変更させる以外にも浴深を変更することで制御できる。
【実施例
【0024】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0025】
転炉から取鍋に出鋼した溶鋼に対し、LFやKIP等の取鍋精錬装置にてガス攪拌を伴うスラグ精錬を実施した。次いで、スラグ精錬を終えた溶鋼に対し、RH型真空脱ガス装置にて脱窒処理を施した。実施例、比較例ともにスラグ精錬に用いる攪拌ガスおよび脱窒処理に用いる環流ガスはArとし、溶鋼量は300ton規模、溶鋼温度は1580~1650℃とした。また、表1及び表2に示すように、脱窒処理前の溶鋼のAl濃度、S濃度、tL.Total、tL.Ca、Ca原単位、Ca添加方法、真空槽内圧力(P/1000)、環流ガス流量G、浸漬管の浸漬深さHd、真空槽内溶鋼の浴深h、真空槽内溶鋼質量Wおよび真空槽内での攪拌動力密度εを変更した。その他の操業条件は以下の通りとした。なお、(3)式は、吹込みガス温度Tgは300K、溶鋼温度Tは1873Kで計算した。
【0026】
[脱窒処理前の溶鋼組成]
C濃度:0.05~0.20質量%
Si濃度:0.05~0.30質量%
Mn濃度:0.50~1.50質量%
[スラグ組成]
CaO/Al23:1.5~3.0
CaO+Al23:70~90質量%
SiO2:10質量%未満
MgO:10質量%未満
[その他]
Ca合金:CaSi
浸漬管底部~真空槽槽底間距離H:1.4m
真空槽断面積A:4.0m2
【0027】
RH型真空脱ガス装置での脱窒処理後に溶鋼サンプルを採取し、溶鋼中N濃度を分析した。このときの溶鋼中N濃度が30ppm未満であった場合に発明の効果が得られたと判断し、25ppm未満であった場合に発明の効果が特に顕著に得られたと判断した。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
Ch.1~8は、いずれも発明の効果が得られた例である。特に、Ch.1~6の例のように、攪拌動力密度εを5.0超10.0未満の範囲にして脱窒処理を行った場合には、溶鋼中N濃度が25ppm未満となり、効果が顕著であった。
【0031】
一方、Ch.9は溶鋼中Al濃度が低すぎたため、溶鋼の酸素活量aOが高く、脱窒量が低かった。また、Ch.10は溶鋼中S濃度が高すぎたため、溶鋼の硫黄活量aSが高く、脱窒量が低かった。
Ch.11はCa合金を添加するのが早すぎたため、その分Caが攪拌によって蒸発してしまい、脱窒量が低かった。Ch.12は添加したCa原単位が不足していたため、脱窒量が低かった。また、Ch.13は真空槽内の圧力が高かったため、窒素分圧が高くなって脱窒速度が低下し、脱窒量が低かった。
図1
図2
図3