(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造方法
(51)【国際特許分類】
C22B 1/243 20060101AFI20230419BHJP
C22B 1/248 20060101ALI20230419BHJP
C21B 5/00 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
C22B1/243
C22B1/248
C21B5/00 302
(21)【出願番号】P 2019106233
(22)【出願日】2019-06-06
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤 武司
(72)【発明者】
【氏名】岡島 亮太
(72)【発明者】
【氏名】岡田 務
(72)【発明者】
【氏名】石丸 真吾
(72)【発明者】
【氏名】坂上 広明
(72)【発明者】
【氏名】藤坂 岳之
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-044402(JP,A)
【文献】特開2000-238022(JP,A)
【文献】特開2016-077965(JP,A)
【文献】特開2007-191748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
C21B 3/00- 5/06
C21B 11/00-15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鉄における高炉の原料として使用される、炭素含有割合(T.C.)が15質量%以上の高炉用非焼成含炭塊成鉱を製造する方法であって、
水分ゼロ換算の質量比率で、水硬性バインダーを2.0~9.0質量%、微粒シリカ源を0.5~4.0質量%、含炭塊成鉱原料中に含まれる炭素の割合(T.C.)を15~40質量%となるように、鉄含有原料、炭素含有原料、その他原料の配合率を調整して合わせて87.0~97.5質量%を配合した含炭塊成鉱原料に、
当該原料と水の合計を100質量%としたときの水の質量比率を9.0~14.0質量%として加えて連続的に混合しながら移送し、その移送方向前方に設置された多孔板で形成された堰へ混合原料を押込むことで第一のマテリアルシールを形成する第一の押出部(混練部)と、
前記堰の出側から連続的に供給される混合原料を真空脱気し、第二の押出部へ移送する接続部(真空室)と、
当該接続部(真空室)から供給される真空脱気された混合原料を多数の孔を備えた成型部へ押し込むことで、第二のマテリアルシールを形成しながら連続的に押し出して成型体を製造する第二の押出部と、
で構成される製造装置を用いて含炭塊成鉱を製造する方法であって、
前記第二の押出部の混合原料による充填率が50~95体積%の範囲で連続成型することを特徴とする、高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造方法。
【請求項2】
高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造装置の接続部(真空室)の圧力が-50kPaG以下であることを特徴とする、請求項1に記載の高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造方法。
【請求項3】
前記微粒シリカ源の平均粒子径は、前記非焼成含炭塊鉱の混合原料から微粒シリカ源を除いたものの平均粒子径に対して15%以下のサイズの粒子であることを特徴とする、請求項1または2に記載の高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉や堅型溶解炉などの製鉄炉の原料に用いられる、非焼成含炭塊成鉱を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、高炉内では、炉上部から焼結鉱や塊状コークス等の原料を投入するとともに、炉下部から送風し、塊状コークスと送風エアから生成する還元ガスを、炉下部から炉上部へと通風させながら、原料中の酸化鉄を還元溶解させることにより、銑鉄を得る。高炉用原料は、高炉炉内で還元ガスの通風性を確保するため、炉内で粉化しない強度があることが要求される。また、高炉原料は炉下部で1500℃以上の高温にさらされるため、高温での強度も必要となる。このため高炉用原料は、焼結鉱や焼成ペレットのように、事前に1000℃以上の高温で焼成した原料が主流となっている。
【0003】
また、微粉状原料を水硬性バインダーとともに混合し水を加えて造粒した後、養生することにより造粒物の強度を高めた非焼成塊成鉱も古くから知られている。この非焼成塊成鉱は焼成することなくそのまま高炉へ装入することができるため、加熱・焼成に必要なエネルギー消費を抑えつつ、CO2排出量を抑制できる技術である。非焼成塊成鉱の原料には、焼結性が低く、塊状に焼成するのが難しいとされる低品位な鉄鉱石でも使用できる可能性があり、このように非焼成塊成鉱を高炉原料として利用することは、高炉で利用する鉄源の種類を拡大し、枯渇が懸念される良質鉄鉱石を温存し、地球資源全体の有効利用を図るという意義もある。
【0004】
これに対して近年、高炉のコークス使用量削減ニーズと、CO2削減ニーズを両立可能な技術として、「非焼成含炭塊成鉱」技術が提案されている(特許文献1,2、非特許文献1など)。上記非焼成塊成鉱の微粉原料に炭素含有原料を添加することで、すなわち塊成鉱に炭材を含有させると、還元ガス温度とガス組成との関係(ηCO=CO2/(CO+CO2))から、酸化鉄の還元反応の進行が制約される高炉シャフト部の熱保存帯と還元反応平衡帯においても、900~1100℃の温度領域で、非焼成塊成鉱中の内装カーボンにより還元反応を起こす結果、還元率が向上するため、高炉操業時の還元材比の低減効果が期待できる。
【0005】
以上のことにより、高炉用非焼成含炭塊成鉱は、炭素含有量が多く、かつ、高炉で粉化しないよう強度が高いものが望まれる。たとえば、従来の高炉用非焼成含炭塊成鉱技術の代表的な特許文献1では、非焼成含炭塊成鉱の炭素含有量は15質量%以上25質量%以下を適正値としている。ただし、非焼成含炭塊成鉱中の炭素含有量を増加し15質量%を超えると強度が低下するという課題に対し、最初に「微粉状鉄含有原料と微粉状コークスを混合し、更に水分の一部を添加して混練した後、該混練物に早強セメントを添加」することで、強度低下を防止する方法を提案している。これにより、従来、微粉状コークスの表面にある気孔に埋没して接着剤としての効果を発揮できなかった早強セメントに替えて、微粉状鉄含有原料でコークスの気孔を埋没させることで、早強セメントの強度発現効果を効率的に発揮させることができる。
【0006】
しかしながらこの方法で、高炉に装入しても粉化しない非焼成含炭塊成鉱(圧潰強度>980N/個;個は非焼成塊成鉱1個当たりの圧潰強度を表す。尚Nはニュートンである)を製造するためには、早強セメントを10質量%以上配合することとなる。この非焼成含炭塊成鉱を高炉にて使用する量を増加させた場合、早強セメントは400~500℃で脱水反応(吸熱反応)が進行するため、早強セメント10質量%を添加した含炭塊成鉱の過剰使用は高炉内の温度が低下してしまい、高炉内装入物の還元遅れを生じて還元材比低減効果を得ることができない。また、早強セメント成分は高炉内でスラグとなるため、スラグ量が増加するという問題がある。
【0007】
また、非特許文献1では、炭素含有率(T.C.)が20質量%程度の含炭塊成鉱を、高炉原料として3質量%配合することで、高炉操業時の還元材比低減効果が最も高くなるが、6質量%配合すると、還元材比の低減効果が表れなかったと述べている。
この理由として、炭素含有率(T.C.)が20質量%程度の含炭塊成鉱に高炉装入に耐える圧潰強度を確保させるには、セメントを10~11質量%配合する必要が生じ、含炭塊成鉱に含まれるセメント由来の結晶水が増加して高炉内で脱水吸熱反応を起こして、高炉シャフト部が低温化してしまい、還元が遅延されるためであるとしている。
【0008】
従い、高炉の還元材比低減効果を最大享受するためには、高炉への含炭塊成鉱の装入比率を増加させる必要がある。ここで含炭塊成鉱の高炉装入量を3質量%以上とするためには、炭素含有率(T.C.)を上げる一方で、高炉内の温度低下回避、含炭塊成鉱の圧壊強度を向上させるには、セメントをはじめとする水硬性バインダーの配合率を9質量%以下でも、高炉装入時に粉化しないよう、含炭塊成鉱強度を高めるための製造方法の開発が必要となる。
【0009】
そこで特許文献2では、高炉用非焼成含炭ペレットの常温圧潰強度を上げる方法として、「結合剤」として、「水硬性バインダーと、澱粉バインダー又は粘土系バインダーの少なくともいずれか」を添加することで、炭材含有原料を10~30質量%配合しても、水硬性バインダー配合率が3~10質量%でも高炉に装入しても粉化しない強度(>1000N/個)の非焼成含炭塊成鉱を製造できるとしている。
【0010】
しかしながら、澱粉バインダー又は粘土系バインダーは両者とも非常に粘性が高く、この特許文献2に示されるような水分添加率(7質量%)では、非常に大きな圧縮力を持つロールブリケット方式が最適である。一般にロールブリケット方式で成型すると、粉や欠片が多く発生するため、製品歩留りが低い(一般的には70%以下)という難点がある。ディスクペレタイザー方式でも成型は可能であるが、ディスクペレタイザー装置は小型装置しかなく、工業的な大量生産には不向きである。
【0011】
これに対して、原料へ水分を多く添加して原料の粘性を低下すれば他の成型方式(押出し成型方式、パンペレタイザー造粒方式など)でも成型可能となるが、非焼成含炭塊成鉱に内包された水分は乾燥すると空隙となって圧潰強度を低下させ、高炉装入時に多量の粉が発生したり、成型後の養生時に成型体同士が付着して大塊化してしまい、高炉装入前に破砕処理が必要となって成型体の歩留が低下するという点で、やはり生産性が悪いという課題がある。
【0012】
また、特許文献3に示されるように、セメントを増やすことなく非焼成塊成鉱の冷間強度を向上させる方法として、塊成鉱原料及び水の混合物に振動を与えて混合物中の空気を分離除去することにより、塊成鉱の強度を向上させる非焼成塊成鉱の製造方法が提案されている。この製造方法によれば、混合原料中の空気が分離除去されるので、セメントを増量させなくても、塊成鉱の強度を向上させることが可能となる。
【0013】
しかしながら、特許文献3に示される非焼成塊成鉱の製造方法は、バッチ式であるため、連続的に非焼成塊成鉱を製造することができず、生産性が悪いという問題がある。
【0014】
このように従来、非焼成塊成鉱中の水分を除いた原料中(含炭塊成鉱原料中)に含まれる炭素含有量の割合(T.C.)を15質量%以上とすべく、炭素含有原料等を配合することで、高い還元材比低減効果を有する含炭塊成鉱の製造方法が提案されてきた。しかしながら、炭素含有原料等の多量配合は成型体強度を低下させるため、これを回避すべく、従来の製造方法では水硬性バインダーを10質量%程度配合して、成型体の必要強度を確保していた。
【0015】
水硬性バインダー由来の水和物は、高炉内で脱水反応(大きな吸熱分解反応)を起こすことから、水硬性バインダーを多く含む非焼成含炭塊成鉱を高炉内で多用すると、前述のように吸熱分解反応により、炉内で温度停滞を起こしてしまう。このため、水硬性バインダー10質量%程度配合の非焼成含炭塊成鉱は、高炉で3質量%以上使用するのが困難であった。
【0016】
また、上記水硬性バインダーの配合率低減対策として、複数の製造方法も提案されてきたが、大量生産には不向きであった。
【0017】
以上から、含炭塊成鉱原料中のT.C.が15質量%以上であって、かつ水硬性バインダーの配合率が9質量%以下でも高強度を達成可能な高炉用非焼成含炭塊成鉱を、安定かつ大量生産する製造方法を確立することで、高炉への非焼成含炭塊成鉱の使用拡大が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】特開2012-82501号公報
【文献】特開2012-211363号公報
【文献】特開2014-136818号公報
【文献】特開昭60-187631号公報
【非特許文献】
【0019】
【文献】横山、樋口ら:鉄と鋼 (100)2014,601)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、含炭塊成鉱原料中のT.C.が15質量%以上であって、かつ水硬性バインダーの配合率が少なくても、高強度な高炉用非焼成含炭塊成鉱を安定かつ大量に生産できる製造方法を提供する。
本発明の高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造方法は、含炭塊成鉱の原料に、
・還元材である炭素含有原料、
・鉄源である鉄含有原料、
・およびその他原料、
を用い、これら3つの原料に、
・セメントなどの水硬性バインダー(接着剤、以下、水硬性バインダーと称する)と、
・微粒シリカ源
を添加し、さらに
・水
を加えて混合した後、成型して含炭塊成鉱を製造することを前提とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前述のように、含炭塊成鉱原料中のT.C.が15質量%以上であって、かつ水硬性バインダーの配合率が少なくても高強度な高炉用非焼成含炭塊成鉱を、安定かつ大量生産するため、発明者らが鋭意検討した結果、真空押出し成型方式を採用することで空隙率を低減し、加えて原料の粒度制御と添加剤として微粒シリカ源を添加することにより原料粒子の充填率を上げ、水硬性バインダーを減らしても高強度の非焼成含炭塊成鉱を製造することに成功した。即ち、
(1)製鉄における高炉の原料として使用される高炉用非焼成含炭塊成鉱を製造する方法であって、水分ゼロ換算の質量比率で、水硬性バインダーを2.0~9.0質量%、微粒シリカ源を0.5~4.0質量%、含炭塊成鉱原料中に含まれる炭素の割合(T.C.)を15~40質量%となるように、鉄含有原料、炭素含有原料、その他原料の配合率を調整して合わせて87.0~97.5質量%を配合した含炭塊成鉱原料に、当該原料と水の合計を100質量%としたときの水の質量比率を9.0~14.0質量%として加えて連続的に混合しながら移送し、その移送方向前方に設置された多孔板で形成された堰へ混合原料を押込むことで第一のマテリアルシールを形成する第一の押出部(混練部)と、前記堰の出側から連続的に供給される混合原料を真空脱気し、第二の押出部へ移送する接続部(真空室)と、当該接続部(真空室)から供給される真空脱気された混合原料を多数の孔を備えた成型部へ押し込むことで、第二のマテリアルシールを形成しながら連続的に押し出して成型体を製造する第二の押出部と、で構成される製造装置を用いて含炭塊成鉱を製造する方法であって、前記第二の押出部の混合原料による充填率が50~95体積%の範囲で連続成型することを特徴とする、高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造方法である。
(2)また、高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造装置の接続部(真空室)の圧力が-50kPaG以下であることを特徴とする、(1)に記載の高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造方法である。
(3)また、前記微粒シリカ源の平均粒子径は、前記非焼成含炭塊鉱の混合原料から微粒シリカ源を除いたものの平均粒子径に対して15%以下のサイズの粒子であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明による真空脱気しつつ押出し成型する高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造方法を採用し、微粒シリカ源を混合原料に配合することにより、含炭塊成鉱原料のT.C.を15質量%以上になるように多量配合しても、セメント等水硬性バインダーの配合率を9.0質量%以下で、高い強度を持つ非焼成含炭塊成鉱を製造することが可能となった。これにより、従来、高炉には前記吸熱分解反応により3質量%までしか使用できなかった含炭塊成鉱を最大9質量%まで使用することが可能となり、低還元材比操業に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】含炭塊成鉱中のT.C.と還元材比低減量の関係を示す図である。
【
図3】接続~成型部の間の真空圧と圧壊強度の関係を示すグラフである。
【
図4】原料の充填率の判定および充填率の上下限イメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
前述のように、非焼成含炭塊成鉱の原料は、一般に、還元材である炭素含有原料と、鉄源である鉄含有原料、およびその他原料の3種で構成される。そしてこれら3種の原料に、水硬性バインダーと微粒シリカ源を配合し、含炭塊成鉱原料とし、さらに水を加えて混合した後、成型して含炭塊成鉱とする。
【0025】
前記炭素含有原料とは、コークスを所定粒度に砕いた粉コークスや、コークス炉の集塵ダストなど、石炭を乾留したものの微粉が好ましいが、無煙炭や石炭、高炉から発生する炭素分を多く含有するダストなどを使用しても良い。
【0026】
前記鉄含有原料とは、鉄鉱石を所定粒度に砕いたものや鉄鉱石微粉(ペレットフィード)、また、製鉄プロセスにおいて大量に発生する炭素分が比較的少なく鉄成分を多く含むダストやスラッジ、スケール等も使用することができる。また、圧延ロールの研削屑等や、特に製銑工程の搬送過程で落下した鉄鉱石や焼結鉱等の集積物を用いても良いし、含炭塊成鉱の成型の過程で発生する粉や欠片も鉄含有原料に含まれる。
【0027】
前記その他原料とは、特に製鉄工程において発生する鉄成分の少ない(鉄含有率として30質量%以下)、もしくは鉄成分が含まれないスラッジ、スラグなどを指す。鉄含有率が少ない分、炭素分が含まれる場合がある。
【0028】
尚、含炭塊成鉱には製鉄所のゼロエミッションに寄与するという一面もある。現在、製鉄所内で発生する副生産物は、その大半が製鉄所内でリサイクルされるか、副製品として製品化されて販売されているが、一部リサイクルも製品化も難しいものがある。これら自社内でリサイクルが難しいものの代表格として、スラッジや一部のスラグがある。前記その他原料とは、このような製鉄所内でリサイクルが難しい原料を指し、これを含炭塊成鉱の原料として積極的にリサイクルすることで、製鉄所のゼロエミッションに貢献することができる上に、その添加によって積極的に原料の粒度を調整し、水が添加された時の原料の流動性を制御することができるという利点(後述の押出し成型方式を利用するうえでの利点)がある。
【0029】
なお、ダストやスラッジには、表1に記載あるように、多かれ少なかれ炭素分が含まれる場合がある。本発明では後述のように含炭塊成鉱原料中のT.C.で物性を決めることに特徴があるため、一般に用いられる炭素含有原料、鉄含有原料、その他原料としての配合比を区分せず、これらを含め含炭塊成鉱原料中のT.C.の範囲を規定する。尚、表1の質量%は一例であり、この範囲に限定されない。
【0030】
【0031】
前記水硬性バインダーとは、単にセメントとも呼ばれることがあり、原料中に含有する水分や添加水分との水和反応により硬化することにより造粒物の冷間圧潰強度を高める機能を有するバインダーを意味する。水硬性バインダーには、ケイ酸カルシウムを含有する、ポルトランドセメント(JIS R 5210で規定)、混合セメント(高炉セメント(JIS R 5211で規定))、シリカセメント(JIS R 5212で規定)、フライアッシュセメント(JIS R 5213で規定))、超速硬セメント、高炉スラグ等が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0032】
また前記微粒シリカ源とは、シリカフューム、マイクロシリカのみならず、フライアッシュも含まれる。
【0033】
尚、表1の様に、水硬性バインダーや微粒シリカ源にも、若干のT.C.が含まれるが、水硬性バインダーや微粒シリカ源の分率自体が小さく、影響が小さいと考えられることから、含炭塊成鉱原料のT.C.にはカウントしない。
【0034】
含炭塊成鉱に求められる条件と、それを達成するための製造条件は次のとおりである。
【0035】
含炭塊成鉱原料およびT.C.;
従来から、非焼成含炭塊成鉱中の酸化鉄を還元するのに必要な理論上の炭素量に対する、非焼成含炭塊成鉱中のT.C.を「炭素当量」と定義し、炭素による酸化鉄の還元度の目安にしている。
本発明で前提とするT.C.の下限値:15質量%は、炭素当量:1.2以上に相当する。高炉で使用する際に非焼成含炭塊成鉱中で酸化鉄粒子と炭素粒子が隣接すれば、高炉内部で徐々に昇温される途上で、含炭塊成鉱の内部での固体還元反応が進行する。さらに、酸化鉄粒子と隣接しない余剰炭素はソリューションロス反応によりガス化して、ガス還元によって非焼成含炭塊成鉱の周辺にある焼結鉱や鉄鉱石などの高炉用鉄含有原料の還元を促進することも期待できる。
【0036】
図1に含炭塊成鉱中のT.C.と還元材比低減量の関係を示す。これは、高炉内の還元反応を荷重下で模擬できる還元試験装置(BIS炉)を用い、非焼成含炭塊成鉱を、通常の焼結鉱の10質量%分と置き換えて高炉で使用した時の還元材比低減効果を評価した結果である。含炭塊成鉱中のT.C.が15質量未満では、還元材比の低減効果が0.2kg/kg-C以下であるが、T.C.が15質量%以上では還元材比低減効果が約0.4kg/kg-Cとなる。このことから、高炉に装入することで還元材比低減効果を最大限享受すべく、含炭塊成鉱原料のT.C.=15質量%以上含有することを本発明の前提条件とした。なお、前述の単位:kg/kg-Cについては、分子のkgは還元材の低減重量の総量を、分子のkg-Cは高炉に装入される含炭塊成鉱中に含まれる炭素量の総量を示すものであり、含炭塊成鉱中に含まれる炭素分がどれだけの還元材比低減効果を与えるかを示す指標である。
【0037】
一方で、含炭塊成鉱原料の炭素含有原料をさらに増加していくと、非焼成含炭塊成鉱の高炉必要強度を維持できなくなるとされていた。本発明においてその上限値を検証した結果、T.C.=40質量%を超えると、成型が困難となった。
【0038】
以上の理由により、含炭塊成鉱原料のT.C.を15~40質量%となるように配合する。尚、炭素含有原料、鉄含有原料、その他原料の個々の上下限は特に規定しないが、含炭塊成鉱原料としては、T.C.以外に鉄成分の含有率も多い方が好ましい。なぜならば、T.C.と鉄成分以外はスラグになってしまうので、無用な投入熱量を増やしてしまうからである。
【0039】
従って、含炭塊成鉱原料の配合率は、後述するように水硬性バインダーが2.0~9.0質量%、微粒シリカ源が0.5~4.0質量%とすることから、含炭塊成鉱原料のT.C.=15~40%となるように炭素含有原料、鉄含有原料、その他原料の3つの原料を合わせて87.0~97.5質量%とする。
【0040】
ここで、例えば、炭素含有原料として粉コークスを使用する場合には、粉コークスの炭素含有率が75~85質量%程度であるため、含炭塊成鉱原料のT.C.を15~40%にしようとすれば、最低=15÷0.85×0.87≒15.3質量%、最大=40÷0.75×0.975≒52.0質量%となり、炭素含有原料を15.3~52.0質量%なるように含炭塊成鉱に配合し、前述の3つの原料を合わせて87.0~97.5質量%との差分に炭素分を含まない鉄含有原料、その他原料を加える。
【0041】
また例えば、炭素含有原料として炭素成分の高い高炉集塵ダスト(炭素成分=30~40%程度)を使用する場合、含炭塊成鉱中の炭素成分の最低含有率=15質量を満たすには15÷0.40×0.87≒32.6質量%、最大含有率=40質量%を満たすには40÷0.30×0.975>100%となるため、含炭塊成鉱における炭素含有原料の配合率は32.6~97.5質量%となる。
【0042】
水硬性バインダー;
含炭塊成鉱原料には、高炉へ装入しても粉化しない強度(>1100N/個)を発現するために、水硬性バインダーを添加する。含炭塊成鉱中の水硬性バインダーは、養生期間中にケイ酸カルシウム水和物等の結合組織に変化し、塊成鉱の強度を向上させる。しかしながら、この結合組織の一部は高炉内部で400~500℃以上になると吸熱反応により分解する。この吸熱反応により炉内が低温化し、400~500℃の温度帯が炉下部の方向に下降するとともに、それより上部でのガス還元反応を遅延させる。このため、高炉に一定量以上のセメントを装入すると、炉内還元不良が発生し、含炭塊成鉱の内部に十分な炭素分を配合させても、高炉で使用する塊状コークス量を削減できなくなる。このため、水硬性バインダーの量は少ない方が好ましい。
【0043】
含炭塊成鉱原料中の炭素含有原料の割合が増加すると、反比例的に塊成鉱の強度が低下するため、含炭塊成鉱原料のT.C.=15~40質量%の非焼成含炭塊成鉱を製造する場合には、従来の製造法では水硬性バインダーの配合量を増加させる必要が生じる。これは、含炭塊成鉱の強度と、水硬性バインダーの配合量とは比例関係にあるからである。ここで水硬性バインダーが2.0質量%未満である場合は、バインダーとしての強度向上作用・効果が充分に発揮できない。また、9.0質量%を超えても強度向上効果は充分に発揮されるものの、9.0質量%以下ですでに、高炉への搬送過程および装入過程で粉化しない非焼成含炭塊成鉱の成型体圧壊強度1100N/個以上を大きくクリアできることと、それ以上の添加は高炉内で低温化して還元を阻害する可能性があること、コスト増大、高炉スラグの増量、および前述したケイ酸カルシウム水和物の分解に伴う高炉の冷え込み助長につながることから無益である。以上の理由により、水硬性バインダーの添加量は、2.0~9.0質量%とする。
【0044】
微粒シリカ源;
含炭塊成鉱の製造方式として、後述の真空脱気しつつ押出成型する方式を採用したので、成型後に空隙となるエアを成型機内で予め排出し、塊成化後の成型体の粒子間接点数を増やすことができ、成型体の強度を向上できる。一方で、押出成型方式に適した原料は、原料に力が加わらないときは静止しているが、小さな力が加わると流動(変形)するという性質を持つ、比較的流動性が高い可塑性原料(練土、ペースト等)と呼ばれる原料である。一般的に、原料の流動性を向上させる方法として水分を増添加する方法が用いられるが、含炭塊成鉱においては、混合原料中に含まれる水分は乾燥すると空隙になってしまうことから、粒子間接点を増やすことができず、製造された含炭塊成鉱の強度が低下してしまう。
【0045】
そこで本発明では、水分を増やさずに流動性を上げる方法として、混合原料の平均粒子径より充分小さい微粒物質を添加することにした。微粒物質が混合原料に添加されると、原料粒子間に入り込み粒子を被覆することで粒子同士を潤滑させるベアリングのような効果を発揮し、混合原料の流動性が向上する。また、原料粒子表面を被覆する微粒物質は、一部は粒子と粒子との接点となって接点数を増加し、また一部は原料粒子間隙に入って(水と置換されることで)充填率を向上することで、含炭塊成鉱の強度を向上できる。微粒物質の主成分を微粒シリカとしたのは、常温で安定であること、シリカヒュームやフライアッシュなどに代表されるように、副産物として市販されており、比較的豊富な量を容易に獲得できること、また、成型後の養生時にセメントの硬化反応を促進し、成型体の強度向上に期待できること、という3つの利点があるからである。
【0046】
また、(幾何学的な計算から)粒子が最密充填構造を取るとき、その粒子間隙の最小径は粒子径の15%であることから、微粒シリカ源の平均粒径は、混合原料の平均粒径の15%以下であることが好ましい。この粒子径であれば、原料粒子間に抵抗なく入り込むことができ、非焼成含炭塊成鉱の高強度化に寄与する。現状、混合原料の平均粒子径は60~100μm程度であるが、微粒シリカ源の代表格であるシリカヒュームの平均粒子径は0.1-0.2μm、フライアッシュの平均粒子径は10~20μm程度であり、上記条件をほぼ満足することができる。このように混合原料の平均粒子径に合わせて、微粒シリカ源の種類を選択、または、粉砕によって粒度調整することで、強度向上効果を発揮させることができ、好ましい。
【0047】
なお、本実施例において、適当な微粒シリカ源の添加率は0.5~4.0質量%程度であり、さらに最適な添加率は0.5~2.0質量%である。その理由として、0.5質量%以下では、原料粒子の表面を被覆する微粒シリカ源の量が少なすぎてベアリングの効果を充分発揮できないため、余剰水分の添加が必要となり、製造された含炭塊成鉱の強度が低下してしまう。逆に、4.0質量%を超えると流動性は増して水分増の必要はないが、微粒シリカ源のコストがかかりすぎて費用対効果がマイナスになってしまう。このことから、微粒シリカ源の添加率は少ない方がよく、0.5~4.0質量%が適当であり、さらには0.5~2.0質量%が最適である。適当な添加率が0.5~4.0質量%と範囲を持つのは、微粒シリカ源の種類により効果量に相違があること、及び市場の価格変動によって投資対効果が変動するためであり、将来的に大幅な価格変動があった場合の適当な添加率はこの限りではない。
【0048】
水分;
前記含炭塊成鉱原料の配合割合は水分ゼロ換算の質量比率(=原料が完全に乾燥=水分0%の原料固体だけの状態)であり、含炭塊成鉱とするには、これに水分が加わるが、水分は左記水分ゼロ換算の質量比率との合計100質量%に対する割合として9.0~14.0質量%に調整される。
【0049】
製造方法;
<真空押出し成型方式の採用>
製造方法として、本発明では、真空押出し成型方式を採用することにより、原料粒子同士の接触点数を増やし、即ち空隙を減らし、成型体強度を増加させることができる。真空室内の圧力を変更して得られた成型体の品質を評価した結果、真空室の真空度(真空室内圧力)によって得られる成型体品質が変化することが分かった。
【0050】
<本発明
で用いられる真空押出し成型機の例および押出し成型方法、並びにマテリアルシールの形成>
本発明
で用いられる真空押出し成型機の例は
図2にその構造を示す。当該真空押出し成型機を用いて、連続的かつ安定的に原料を供給・排出しつつ、真空室内を高負圧に安定維持する必要がある。このため真空室前後の装置構造物の隙間を原料(マテリアル)で埋めること、すなわちマテリアルシールを連続的に形成することで真空室内を高負圧(高い真空度)に安定維持することが重要となる。
【0051】
含炭塊成鉱の製造装置10は、ミキサー1、投入口2、第一の押出部3、接続管4、第二の押出部5、成型部6、真空ポンプ7を有している。
第一の押出部3(混練部とも称する)は、円筒状のケーシング3aとこのケーシング3aの内部に回転自在に配設され縦長に連続形成されたスクリュー3bを有した、1軸式のスクリューフィーダである。スクリュー3bは、図示しない駆動手段により回転されるようになっている。ケーシング3aの基部の上部には、接続管8によって、投入口2と接続している。ケーシング3aの先端には多孔板で形成された堰3cが配設されている。本実施形態では、多孔板で形成された堰3cは厚板状の円板に多数の孔が開けられた構造となっている。
【0052】
第一の押出部3の下方には、第二の押出部5が配設されている。第一の押出部3の先端部と、第二の押出部5の基部は、接続管4(真空室とも称する)により接続されている。接続管4は、真空ポンプ接続管9により真空ポンプ7と接続している。
第二の押出部5(押出成型部とも称する)は、円筒状のケーシング5aと、このケーシング5aの内部に回転自在に配設され縦長に連続形成されたスクリュー5bを有した、1軸式のスクリューフィーダである。スクリュー5bは、図示しない駆動手段により回転されるようになっている。ケーシング5aの先端には、成型部6が取り付けられている。本実施形態では、成型部6は、厚板状の円板に多数の孔が開けられた構造となっている。
【0053】
含炭塊成鉱の原料は各々、所定の配合率になるようミキサー1に供給され、水を添加されて混合されて混合原料が生成される。混合原料は、投入口2に連続的又は断続的に投入される。投入口2に投入された混合原料は、接続管8を通って第一の押出部3内に供給され、スクリュー3bによって徐々に圧縮され、多孔板で形成された堰3cに到達する。この時、多孔板で形成された堰3cのすべての孔を混合原料で満たすように、スクリュー3bの回転速度および混合原料の供給速度を調整することで、多孔板で形成された堰3cにはマテリアルシールが形成される。スクリュー3bにより、混合原料は連続的に供給されるので、多孔板で形成された堰3cの裏面には常時マテリアルシールを形成しつつ、混合原料が連続的に排出され、接続管4内へ供給されることになる。なお、前記多孔板(堰c)の孔形状には特に決まりはないが、マテリアルシールが容易に形成できるよう、混合原料の物性に応じて、孔径や開口率を調整して決定することが重要である。
【0054】
接続管4内は、真空ポンプ接続管9で接続された真空ポンプ7の作動によって真空引きされるので、接続管4に供給された混合原料は脱気され、原料中の原料粒子同士が確実に接触して緻密化することで、製造された非焼成含炭塊成鉱の強度を増加させることができる。
【0055】
接続管4内で緻密化した混合原料は、第二の押出部5に供給される。第二の押出部5に供給された混合原料は、スクリュー5bによって、成型部6に押し出される。
このように、本発明に係る含炭塊成鉱の製造装置の例では、マテリアルシールを利用して連続的に、真空脱気しつつ押出成型することにしたので、生産性を向上させることが可能となっている。なお本実施形態で、各原料の粒径を8mm以下(最大粒子径が8mm、平均粒子径は60~100μm程度)とすれば、スクリュー3b、5bで押し出す際に、混合原料がスクリュー3b、5b、ケーシング3a、5a、多孔板で形成された堰3c、成型部6それぞれの間隙を通過できるので、互いに噛み合うことが無く、好ましい。混合原料は、成型部6を通過する際に、成型部6の断面形状に成型される。成型部6から押し出された混合原料は、その自重により折れ、所定の長さの成型物に成型される。
【0056】
成型物の形状は、成型部6の断面形状によって決定され、その孔は円柱の他、四角柱、六角柱等の角柱状にも形成可能であるが、円柱形状に形成することが最も望ましい。その理由を以下に記載する。
【0057】
様々な傾向の含炭塊成鉱で、高炉の充填層通風圧損失を比較すると、円柱状が最も低い圧力損失を呈する。また、角柱と比較すると、円柱形状の含炭塊成鉱は、充填層内での壁や含炭塊成鉱同士の摺れや落下衝撃の際に、粉化し難いという特徴がある。直径が30mm~40mmの塊成鉱が最も圧壊強度が高くなる一方で、高炉への原料装入機構が、既存の焼結鉱に合わせて直径20mm以下の原料の輸送に適した構造となっているため、直径10~20mm程度の円柱状に成型するのが望ましい。
【0058】
成型された成型物は、屋根付きの養生ヤードに積み上げられて、当該養生ヤードで所定期間養生される。養生期間中に成型物は、固化するとともに、自然乾燥によって徐々に水分が除去され含炭塊成鉱の製造が完了する。
【0059】
<連続安定製造のための条件>
本発明形態において、緻密で強固な成型体を安定的に製造し続けるには、接続管4内(真空室と呼ばれる減圧チャンバー)に原料を連続供給しながら、真空室内を高負圧に保持しつつ、真空室内に供給された混合原料を押出し成型部6へ押し出す必要がある。すなわち、空気が多孔板3cまたは成型部6の孔から侵入することが無いように、多孔板で形成された堰3cの全孔内および成型部6の全孔内を常時混合原料で充填し、マテリアルシールを維持し、接続管4~成型部6の間を高負圧に保持することが重要となる。このため、連続式真空押出成型装置を用いてマテリアルシールを維持できる条件を調査した。
【0060】
試験条件として原料は、所定の配合になるように鉄含有原料、炭素含有原料、水硬性バインダー、微粒シリカ源を秤量し、1軸式のパドル型連続式混合機に投入し、所定量の水を加えて2分~2分30秒間、混合した。混合原料は、1軸のスクリュー式混練機と1軸のスクリュー式の押出し成型部で構成される押出成型装置に投入し、押出し速度(原料が成型部6の孔を通過する速度)を40~100mm/sとなるように調整して成型試験を実施した。
【0061】
ここで、混練部への混合原料の供給量とスクリュー(3b、5b)の回転速度、各ケーシング内(3a、5a)への原料の充填率を変化させて、これら因子がマテリアルシールに与える影響を調査した。
【0062】
真空室入側に多孔板で形成された堰3cを設置し、多孔板で形成された堰3cに向けてスクリュー3bで混合原料を連続的に押し込むことで第一のマテリアルシールが形成される。この第一のマテリアルシールを連続的に形成するには、混合原料が多孔板で形成された堰3cに押し込まれて各孔内を通過する際の機械抵抗を調整すること、すなわち原料物性に合わせて多孔板の孔径・総開口率・厚みを調整することが有効であることを見出した。
【0063】
押出し成型部5の先端に設置される成型部6は多孔の厚板であり、真空室入側の多孔板で形成された堰3cとよく似た構造であるが、成型部6で第二のマテリアルシールを形成するには、真空室入側と同様に、孔数と板厚みを調整することが有効と判明した。
【0064】
<最適真空条件>
以下に、前述の押出成型方式にて、接続管4~成型部6の間の負圧を変えて塊成化した含炭塊成鉱の試験結果を示す。原料は所定の配合になるように鉄含有原料、炭素含有原料、水硬性バインダー、微粒シリカ源を秤量し、混合機に全量を投入して1分間混合した後、所定量の水を加えて3分間混合し混合原料とした。混合原料は、押出成型装置に投入し、押出し速度(原料が成型部6の孔を通過する速度)を10mm/sに設定して成型試験を実施した。
【0065】
塊成化した含炭塊成鉱は、室温で1日間大気養生し、続いて80℃で2日間恒温恒湿槽内に入れて養生したのち30℃まで空冷し、圧潰強度試験を実施した。圧潰強度の測定は、JIS M8718「鉄鉱石ペレット圧潰強度試験方法」に準じて、試料1個に対して、規定の加圧速度で荷重を掛け、試料が破壊した時の荷重を圧潰強度とした。
【0066】
表2に原料の配合条件を示す。
【0067】
【0068】
成型時の接続管4~成型部6の間の圧力値が-50kPaGを境に、圧潰強度のバラつきが大きく変化する。特に
図3に示すように、接続管4~成型部6の間の圧力が真空圧に近づくほど、品質が向上(高強度化)することがわかり、真空室圧力が-60kPaG以上-50kPaGの範囲では、成型体の常温圧潰強度が目標値である1100N/個以上であるものの、成型体の圧潰強度のバラつきが大きく、また低強度側にバラついている。この低強度側にバラついた圧潰強度は目標に到達していない。接続管4~成型部6の間の圧力が低位、即ち真空側にシフトしていくことで、嵩密度および圧潰強度のバラつきは軽減され、成型体の常温圧潰強度が目標値である1100N/個を超えることが確認できた。
【0069】
尚、高炉原料は、高炉炉内で還元ガスの通風性を確保するため、高炉までの搬送および炉内への装入時において粉化しない強度が必要である。非焼成含炭塊成鉱の高炉操業試験の結果、成型体1個当たりの常温圧潰強度が1100N/個以上あれば、高炉炉内での粉化を抑えることができ、還元ガスの通風性を確保できると判明、これを含炭塊成鉱の目標強度としている。
【0070】
この理由は以下の様に推定した。接続管4~成型部6の間の圧力が高位であると成型原料中のエアが充分に排出されないため、混合原料中にエアを多く巻き込んだまま成型されてしまう。この成型体は嵩密度が小さくなって低強度となる。一方で、エアをあまり巻き込まない部分も成型体となり、この成型体は嵩密度が大きくなり高強度となる。このように成型体に巻き込まれるエア量の差が強度のバラつきを生じることとなり、接続管4~成型部6の間の圧力が高いほど、このバラつきが大きくなると考えられる。逆に接続管4~成型部6の間の圧力が低位になると混合材料中に残存するエアの量が少なくなることで、強度バラつきが小さくなると考えられる。
【0071】
このように、本発明で用いられる真空押出し成型機の特徴は、真空室と呼ばれる減圧チャンバーに原料を連続供給しながら、接続管4~成型部6の間を上記の―50kPaG以下という高負圧(高い真空度)に保持しつつ、接続管4~成型部6の間に供給された原料を押出し成型部へ押し出して成型する。
【0072】
次に、安定的な押出し成型に必要な他の条件を調査した。この調査内容と結果を表3に示す。
【0073】
【0074】
上記のとおり押出し成型部5に調整された多孔板の成型部6を設置することで第二のマテリアルシールは形成できる。しかしながら、実際の生産においては原料の流動抵抗が変化(操業変動)したり、スクリュー回転数を変化させる(操業アクション)ことで、成型部6への原料供給速度が変化する。
【0075】
たとえば、原料水分が過剰になると原料の流動抵抗が低下し、第二のマテリアルシールが形成される前に原料が排出されることになり真空室の圧力が安定保持できなくなる。スクリュー5bの回転数UPについても同様の変化が起きる。これらの現象を調査した結果、第二の押出部5の混合原料充填率が50体積%未満になると、成型部6への供給速度が増加した時に第二のマテリアルシールが崩壊しやすくなることが分かった。
【0076】
一方、原料の流動抵抗が増加したり、スクリュー5bの回転数を低下させたりすると、成型部6への原料供給速度が低下して、第二の押出部5から接続管4(真空室)にかけて原料が過剰に堆積してしまい、第二の押出部5内のスクリュー5bが過負荷となって停止し易くなることが分かった。調査の結果、第二の押出部5の充填率が95体積%を超えると、成型部への供給速度が低下した際に成型体排出不良が発生し易くなることが分かった。
【0077】
従い、第二の押出部5のスクリュー5bの回転速度と接続管4(真空室)上流の第一の押出部3のスクリュー3bの回転速度および原料物性を随時調整し、第二の押出部5の原料充填率を50体積%以上95体積%以下(必須条件)に制御し続けることで、操業変動があっても安定的かつ連続的な成型体の製造が可能となることを見出した。
【0078】
なお、第二の押出部5の原料充填率とは、第二の押出部5のスクリュー5bが回転している円筒状空間の体積(スクリューの体積を除く)に対して、原料が占める割合をいう。第二の押出部5のスクリュー5bの回転数増減と原料供給量の増減により、原料充填率を50体積%以上95体積%以下に制御することで安定的かつ連続的な成型が可能となる。
【0079】
原料充填率の判定は、例えば
図4の様に、真空室上部に取り付けられた観察窓から押出し成型部を目視する目視判定が一般的である。今回は観察窓から見えるスクリューの範囲から原料充填率が判定できるように、例えば予め、原料でスクリュー羽根が隠れる範囲と原料充填率の関係を調査しておき、観察窓からスクリューを見るだけで充填率が判定できるようにしたが、例えば、押出し成型部の各部にレベル計(マイクロ波式レベル計、近接センサー、各種レベルスイッチなど)を設置して、レベル計測値から充填率を算出しても良い。
【0080】
この様に原料充填率の制御範囲については、50体積%以上95体積%以下であれば連続安定成型が可能となるが、50体積%以上70体積%以下であればなお良く、さらに50体積%以上60体積%以下であれば最適である。その理由は、充填率を一定に制御することで、押出し成型部のスクリューが多孔板へ押し付ける力が安定するため、排出される成型体のバラつきが小さくなるためである。
【0081】
以上のように、高炉用の非焼成含炭塊成鉱の製造方法として、酸化鉄を含む鉄含有原料と炭素含有原料および水硬性バインダーと少量の微粒シリカ源を混合し、水を添加して混合した後、真空室圧力を-50kPaG以下にして真空脱気しつつ押出成型することで、原料中の水硬性バインダーの配合量が2~9質量%であっても、高炉に装入する際に必要な1100N/個以上の圧壊強度を有する含炭塊成鉱を製造することが可能となる。
【0082】
なお、本実施形態では、スクリュー3bは1軸式であり、スクリュー5bは1軸式であるが、スクリュー3bを2軸式とし、或いは、スクリュー5bを2軸式としても差し支えない。
【0083】
以上、現時点において、もっとも実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う含炭塊成鉱の製造方法及び含炭塊成鉱もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【実施例】
【0084】
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限られるものではない。含炭塊成鉱原料は、炭素含有原料、鉄含有原料、その他原料を用いて、T.C.=15~40%となるように調整した。炭素含有原料として、粉コークス(T.C.=84%)と、炭素含有率の高い製銑系ダスト(T.C.=23%)を5mmの篩で篩い、その篩下を用いた。鉄含有原料として鉱石M(豪州系粉鉱石)と鉱石C(カナダ系粉鉱石)を混合し、ボールミルで粉砕したもの5mmの篩で篩って、その篩下を用いた。また、水硬性バインダーとしては、早強セメントおよび超速硬セメントを用いた。
微粒シリカ源としては、シリカヒュームとフライアッシュを用いた。
【0085】
含炭塊成鉱の配合条件は、表4に示す配合となるように、炭素含有原料、鉄含有原料、水硬性バインダー、微粒シリカ源を秤量し、その全量を1軸式のパドル型連続式混合機に投入し1分間混合した後、所定量の水を加えて3分間混合し、混合原料とした。混合原料は、1軸のスクリュー式混練機と1軸のスクリュー式の押出し成型部で構成される押出成型装置に投入し、押出し速度(原料が成型部6の孔を通過する速度)を10mm/sとなるように調整して成型試験を実施した。なお、押出成型部の孔(多孔)の径はφ16mmとした。
塊成化した含炭塊成鉱は、室温で1日間大気養生し、続いて80℃で2日間恒温恒湿槽内に入れて養生したのち30℃まで空冷し、圧潰強度試験を実施した。圧潰強度の測定は、JIS M8718「鉄鉱石ペレット圧潰強度試験方法」に準じて、試料1個に対して、規定の加圧速度で荷重を掛け、試料が破壊した時の荷重を圧潰強度とした。尚、合格は目標圧壊強度である1100N/個以上であり、かつ成型時に真空抜けや押出不可、成型物中に粉の発生がないこと、成型物が大塊化しないこと、高炉使用時の還元材低減効果が悪くない場合とした。なお、表4は実施例、表5は比較例である。
【0086】
【0087】
表4で、実施例1~実施例17は、T.C.=20~40質量%の条件で、水硬性バインダー=2.0~9.0質量%、微粒シリカ源=0.5~4.0質量%、成型物水分=9.0~14.0質量%とし、真空押出し成型機の第二の押出し部の充填率を50~95体積%として成型した場合であり、すべて目標強度である1100N/個を超えている。
【0088】
比較例1は、T.C.が上限外れの例である。T.C.を高めていき40質量%を超えると、混合原料の流動性が低下して真空抜けも発生し始め、最終的には真空押出成型自体が不可能になった。比較例2は、水硬性バインダーの配合率が下限外れの例であり、比較例3は、微粒シリカ源の配合率が下限外れの例である。水硬性バインダーは水との化学反応による硬化、微粒シリカ源は原料粒子との接点数増加により強度を向上させる役割をもち、どちらも配合条件を満たさないと目標強度を確保できない。比較例4は、真空を掛けずに押出成型した例である。成型体の強度が目標値に達しなかった。
【0089】
比較例5および比較例6はそれぞれ、成型物の水分の下限外れの例および上限外れの例である。水分が過小になると、原料の流動性が著しく低下し、スクリューの押出し抵抗が上がって押出し(成型)が出来なくなる。逆に水分が過剰になると押出しは問題なくできるが、目標強度に到達しないのと、表5に示すように成型後に成型物を山積みして養生する際、成型体同士が付着して大塊化し、高炉で使用する際には事前に破砕する問題が発生してしまう。
【0090】
比較例7および比較例8はそれぞれ、真空押出し成型時に第二の押出し部の充填率が下限外れの例および上限外れの例である。充填率が下限を外れると、押出し成型部の先端にマテリアルシールを連続的に形成するのが困難となって、断続的に真空抜けが発生してしまい、成型物の原料が粉状のまま排出される現象が発生して成型物の歩留りが低下する。また、充填率が過剰になると押出し負荷が増大して原料が押出し成型部に滞留してしまうため、継続的な成型が困難となる。
【0091】
実施例16は、微粒シリカ源の平均粒子径が非焼成含炭塊鉱の混合原料から微粒シリカ源を除いたものの平均粒子径に対して15%を超えた例である。実施例17は、押出し成型機の真空度が-50kPaGを超えた例である。どちらも強度の目標値に達しているが下限に近く、好ましい例とは言えない。
【0092】
表5で成形物水分の上下限外れの比較例を示したが、さらに詳細に説明する。表6に示すように、真空押出成型方式にて上記条件で含炭塊成鉱を製造する場合、成型体水分が9質量%未満になると成型が困難となり、14%を超えると成型体同士が付着して大塊化する問題が明らかとなった。従い、適正水分値を9~14質量%とする。
【0093】
【符号の説明】
【0094】
1 ミキサー
2 投入口
3 第一の押出部(混練部)
3a ケーシング
3b スクリュー
3c 多孔板で形成された堰
4 接続管(真空室)
5 第二の押出部(押出成型部)
5a ケーシング
5b スクリュー
6 成型部
7 真空ポンプ
8 接続管
9 真空ポンプ接続管
10 含炭塊成鉱の製造装置