IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

特許7265164グラビアロール及びそれを用いた塗工物の製造方法
<>
  • 特許-グラビアロール及びそれを用いた塗工物の製造方法 図1
  • 特許-グラビアロール及びそれを用いた塗工物の製造方法 図2
  • 特許-グラビアロール及びそれを用いた塗工物の製造方法 図3
  • 特許-グラビアロール及びそれを用いた塗工物の製造方法 図4
  • 特許-グラビアロール及びそれを用いた塗工物の製造方法 図5
  • 特許-グラビアロール及びそれを用いた塗工物の製造方法 図6
  • 特許-グラビアロール及びそれを用いた塗工物の製造方法 図7
  • 特許-グラビアロール及びそれを用いた塗工物の製造方法 図8
  • 特許-グラビアロール及びそれを用いた塗工物の製造方法 図9
  • 特許-グラビアロール及びそれを用いた塗工物の製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】グラビアロール及びそれを用いた塗工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/06 20060101AFI20230419BHJP
   B05C 1/08 20060101ALI20230419BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20230419BHJP
   B41F 31/08 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
B41N1/06
B05C1/08
B05D1/28
B41F31/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019166663
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021041362
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩茂
(72)【発明者】
【氏名】田村 紀智
(72)【発明者】
【氏名】樋口 均
【審査官】井出 元晴
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-066912(JP,A)
【文献】特開2000-033304(JP,A)
【文献】特開平08-229498(JP,A)
【文献】特開2012-056143(JP,A)
【文献】特開平07-021558(JP,A)
【文献】特開2010-094613(JP,A)
【文献】特開2015-044135(JP,A)
【文献】特開2005-144355(JP,A)
【文献】特開2018-130698(JP,A)
【文献】特開平07-121870(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0269557(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/08
B05D 1/28
B41N 1/06
B41F 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料を含むプレコート塗料塗工用のグラビアロールであって、
ロール本体と、
前記ロール本体の周面に設けられ、前記ロール本体の周面に互いに仕切られた複数のハニカム状のセルを形成する区画壁と、
互いに離間して前記区画壁の頂部から前記ロール本体の径方向外方に突出された複数の点状の凸部と
を備えているグラビアロール。
【請求項2】
前記区画壁には、前記区画壁が互いに交わる箇所に位置する交点部が含まれており、
前記凸部の頂部の幅は、前記区画壁の厚み方向に関して前記区画壁の厚み以下であって、前記区画壁の延在方向に関して前記交点部間の距離以内である、
請求項1記載のグラビアロール。
【請求項3】
前記凸部は、前記ロール本体の軸方向に対して傾斜して延在する直線に沿って配置されている、
請求項1又は請求項2に記載のグラビアロール。
【請求項4】
前記軸方向に対する前記直線の傾斜角度が0.1°以上かつ5°以下である、
請求項3記載のグラビアロール。
【請求項5】
前記区画壁には、前記区画壁が互いに交わる箇所に位置する交点部と、前記交点部間に位置する壁部とが含まれており、
前記凸部は、前記交点部に設けられている、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のグラビアロール。
【請求項6】
前記区画壁には、前記区画壁が互いに交わる箇所に位置する交点部と、前記交点部間に位置する壁部とが含まれており、
前記凸部は、前記壁部に設けられている、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のグラビアロール。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のグラビアロールを用いて被塗工物に塗工液を塗工する工程を含む、
塗工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば塗料等の塗工液を周面の凹部に保持するグラビアロール及びそれを用いた塗工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、インクを貯留するドクターチャンバーと、ドクターチャンバーから供給されたインクを保持するグラビアロールと、グラビアロールからインクが転写される印刷ロールとを備えた印刷装置が記載されている。グラビアロールの周面にはインクを保持するための凹部が加工されている。凹部の形状としては、格子型及びハニカム型等のセル形状、並びにグラビアロールの軸方向に沿って螺旋状に延びるように形成された斜線形状等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-141609号公報
【文献】特開2018-130698号公報
【文献】特開2018-130696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、ドクターチャンバーを利用した塗装は、インクを対象にした多色刷り等に適用されている。一方、特許文献2及び特許文献3に開示されているようにプレコート用の塗装鋼板の塗装方法としても適用が検討され始めている。プレコート用の塗料は、インクに比べ粘度が高いため適用するグラビアロールのセル形状に工夫がされている。
【0005】
粘度の高い塗工液を塗工するための塗工液装置に上述のようなグラビアロールを用いることを試みたところ、セル形状の凹部で以下のような問題がそれぞれ生じた。すなわち、セル形状の凹部の場合、線状ムラのような塗膜外観不良が発生した。プレコート用の高粘度塗料には、有機溶剤に溶解した樹脂以外に、サブミクロンから数十ミクロンの顔料が入っており、塗装時の塗膜の形状は、焼付け後においても残存しやすい。セル形状の凹部位の場合、グラビアロールからアプリケータロール(オフセットゴムロール)に塗料が転写される際に、グラビアロール表面の形状がアプリケータロールの液膜に残存し、最終的に鋼板に液膜が転写された際にもセル状のスジ模様が鋼板に残ってしまうためと考えられる。グラビアロールから鋼板に液膜が転写される場合も同様である。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、塗工外観不良が発生する虞を低減できるとともに、塗工液の液ダレが発生する虞を低減できるグラビアロール及びそれを用いた塗工物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るグラビアロールは、顔料を含むプレコート塗料塗工用のグラビアロールであって、ロール本体と、ロール本体の周面に設けられ、ロール本体の周面に互いに仕切られた複数のハニカム状のセルを形成する区画壁と、互いに離間して区画壁の頂部からロール本体の径方向外方に突出された複数の点状の凸部とを備える。
【0008】
本発明に係る塗工物の製造方法は、上述のグラビアロールを用いて被塗工物に塗工液を塗工する工程を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明のグラビアロール及びそれを用いた塗工物の製造方法によれば、区画壁が複数のハニカム状のセルを形成するとともに、区画壁の頂部から複数の凸部が互いに離間して径方向外方に突出されているので、塗工外観不良が発生する虞を低減できるとともに、塗工液の液ダレが発生する虞を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係るグラビアロールを含む塗工装置の構成を示す説明図である。
図2図1のグラビアロールを示す正面図である。
図3図2の区画壁を拡大して示す拡大斜視図である。
図4】レーザー彫刻により形成したセルを示す3D形状測定画像(第1例)である。
図5】レーザー彫刻により形成したセルを示す3D形状測定画像(第2例)である。
図6】レーザー彫刻により形成したセルを示す3D形状測定画像(第3例)である。
図7図2のグラビアロールの第1変形例を示す説明図である。
図8図2のグラビアロールの第2変形例を示す説明図である。
図9図2のグラビアロールの第3変形例を示す説明図である。
図10図2のグラビアロールの第4変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係るグラビアロール3を含む塗工装置1の構成を示す説明図である。図1に示す塗工装置1は、塗工液1aを被塗工物の表面に塗工するための装置である。塗工液1aとしては、例えばインク、塗料及び化成処理液等を挙げることができる。塗工液1aは、有機溶剤に溶解した樹脂に加えて、サブミクロンから数十ミクロンの顔料を含むことができる。被塗工物としては、例えば紙、プラスチック又は金属等の素材からなる帯状部材を挙げることができる。特に、塗工装置1は、被塗工物としての例えば鋼鈑等の金属板の表面に塗工液1aとしての塗料を塗布する用途に適用できる。塗工液1aを塗工した金属板は、塗装金属板と呼ばれることもある。塗工液1aの粘度(#4フォードカップ粘度)は、10s以上かつ300s以下、より詳細には60s以上かつ180s以下であり得る。
【0013】
塗工装置1は、ドクターチャンバー2及びグラビアロール3を有している。
【0014】
ドクターチャンバー2は、内部に塗工液1aが溜められる容器体である。ドクターチャンバー2には、チャンバー本体20、上流側ドクターブレード21及び下流側ドクターブレード22が含まれている。チャンバー本体20は、前部に開口を有する断面略C字状の部材である。上流側ドクターブレード21は、グラビアロール3の回転方向に係るチャンバー本体20の開口の上流側に配置された長手状部材である。同様に下流側ドクターブレード22は、グラビアロール3の回転方向に係るチャンバー本体20の開口の下流側に配置された長手状部材である。各ドクターブレード21、22は、グラビアロール3の回転方向に係る上流側及び下流側においてチャンバー本体20の開口を部分的に覆っている。
【0015】
グラビアロール3は、全体として金属製のロール体であり、上流側ドクターブレード21及び下流側ドクターブレード22の先端間に形成された開口部23を通してドクターチャンバー2の内部に臨むように配置されている。ドクターチャンバー2の周面にはドクターブレード21、22の先端が突き当てられている。グラビアロールが回転駆動されることで、ドクターチャンバー2内の塗工液1aがグラビアロール3の周面に順次付着する。下流側ドクターブレード22は、ドクターチャンバー2の周面の塗工液1aを掻きとり、ドクターチャンバー2の周面に付着する塗工液1aの付着量を調整する。グラビアロール3の周面に付着した塗工液1aが被塗工物に塗工される。グラビアロール3と被塗工物との間に他のロール(アプリケータロール)が介在されてもよいし、グラビアロール3から被塗工物に直接的に塗工液1aの塗工が行われてもよい。
【0016】
グラビアロール3の製造方法としては、以下の二つを挙げることができる。一つ目の方法は、金属ロール表面を平滑に研磨した後、所定の凹凸形状が形成された母型金型を押し付けて凹凸形状を転写する転造による方法である。凹凸表面にはハードクロムめっきを施す場合が一般的である。二つ目の方法は、まず金属部材の表面を平滑に研磨した後、その表面にセラミックスを溶射法で吹き付けて表面にセラミックス層を形成し、表面を研磨して平滑にする。続いて、レーザーアブレーションにより所定の凹凸パターンを彫刻する方法である。レーザー彫刻は転造に比べ、複雑な形状を彫刻できることが特徴である。レーザー種としては、CO2レーザーやYAGレーザー等がある。セラミックス種としては、酸化クロム、アルミナ、ジルコニア等がある。
【0017】
次に、図2図1のグラビアロール3を示す正面図であり、図3図2の区画壁31を拡大して示す拡大斜視図である。また、図4図6は、レーザー彫刻により形成したセル33を示す3D形状測定画像(第1~第3例)である。図2および図3に示すように、グラビアロール3は、ロール本体30、区画壁31及び複数の凸部32を有している。ロール本体30は、グラビアロール3の径方向中央部分を構成する円柱状部分である。
【0018】
区画壁31は、ロール本体30の周面に立設された壁体であり、互いに仕切られた複数のセル33をロール本体30の周面に形成している。各セル33は、区画壁31によって囲まれた凹部である。
【0019】
本実施の形態の区画壁31は、ハニカム状のセル33を形成するように配設されている。ハニカム状のセル33は、六角形又は亀甲形のセル33と呼ぶこともできる。本実施の形態のセル33は、正六角形の外形を有している。各セル33の形状は、辺の長さが異なる六角形であってもよい。
【0020】
上述のように、各セル33は転造又はレーザー彫刻により形成され得る。これらの方法、特にレーザー彫刻にて各セル33を形成した場合、各セル33の実際の形状は、図2及び図3のように整った六角形とならず、図4図6に示すような崩れた形状(角が丸まり円形に近い形状)となる場合もある。本発明におけるハニカム状のセル33には、このような崩れた形状のセル33が並べられた構造も含まれる。
【0021】
各セル33の容積は、例えば60ml/m2以上かつ80ml/m2以下とすることができる。グラビアロール3の線数は、セル容積に応じて任意に選択可能であり、低い値であれば塗工液の転写量が増し、高い値であれば塗工液の転写量が減少する。グラビアロール3の線数は、40L/inch以上かつ80L/inchとすることができる。本実施の形態のグラビアロール3における線数は、直線34に沿うか又は直線34と平行な1インチの線分と交差する区画壁31の数をnとした場合、n-1と理解することができる。
【0022】
ここで、互いに隣接する2つのセル33を第1及び第2セル331,332(図2参照)と呼ぶ。第1セル331を形成する区画壁31と、第2セル332を形成する区画壁31とは互いに異なる直線上に位置する。すなわち、互いに隣接する一対のセル33(第1及び第2セル331,332)を形成する区画壁31は同一直線上に配置されていない。グラビアロール3の表面に付着した塗工液1aが被塗工物又はアプリケータロール等の転写対象に転写される際、その転写対象に直線的な長い液膜の凹部が形成される虞を低減できる。
【0023】
図3に示しているように、区画壁31の高さは等しくされていることが好ましい。また、区画壁31はそれぞれの延在方向に一様の高さを有していることが好ましい。区画壁31のうち、区画壁31が互いに交わる箇所に位置しセル33の角部に隣接する部分を交点部31aと呼び、交点部31a間に位置する部分を壁部31bと呼ぶことがある。
【0024】
凸部32は、互いに離間して区画壁31の頂部からロール本体30の径方向外方に突出された突状体である。本実施の形態の凸部32は、区画壁31の交点部31aから突出されている。より具体的には、本実施の形態の凸部32はすべての交点部31aから突出されている。凸部32の頂部は、グラビアロール3の径方向に係る最外面を構成している。
【0025】
凸部32の形状は任意である。図3に示すように、凸部32は先細り状の形状を有していることがある。図3では凸部32を円錐台によって表しているが、図4図6に示すように、凸部32は複雑形状となることもある。凸部32の頂部は曲面によって構成されていてもよい。凸部32は、直方体等の区画壁31の延在方向に長く延びる形状であってもよい。2以上の数の凸部32が互いに接触していてもよい。
【0026】
各凸部32の頂部の幅32wは、区画壁31の厚み方向に関して区画壁31の厚み31w以下であって、区画壁31の延在方向に関して交点部31a間の距離以内であることが好ましい。各凸部32の頂部の幅32wは、下流側ドクターブレード22の先端とグラビアロール3の外面との間の接触が点接触とみなすことができる程度に小さくすることが好ましい。各凸部32の頂部の幅32wは、区画壁31の厚み方向及び延在方向のいずれにおいても例えば0.02mm以上かつ1.0mm以下とすることができる。
【0027】
図2に特に表されているように、凸部32は、ロール本体30の軸方向30aに対して傾斜して延在する直線34に沿って配置されることが好ましい。本実施の形態では、区画壁31が形成するハニカム状の模様を軸方向30aに対して傾斜させることにより、軸方向30aに対して傾斜する直線34に沿って凸部32(交点部31a)を位置させている。しかしながら、ハニカム状の模様を軸方向30aに対して傾斜させず、凸部32を交点部31aの位置からずらして配置することによって、軸方向30aに対して傾斜する直線34に沿って凸部32を位置させてもよい。
【0028】
ロール本体30の軸方向30aに対して傾斜して延在する直線34に沿って凸部32が配置されることで、グラビアロール3が回転されるとき軸方向30aに関してドクターブレード22の先端をいずれかの凸部32に当接させることができる。これによりドクターブレード22がバタついて塗料の掻きとりが不均一となることを防止できる。
【0029】
軸方向30aに対する直線34の傾斜角度は、0.1°以上かつ5°以下であることが好ましい。傾斜角度が0.1°未満だと、ドクターブレード22のバタつきを抑えにくくなる。傾斜角度が5°を越えるとローピング模様が生じる虞が大きくなる。傾斜角度は、0.15°以上かつ2°以下であることがさらに好ましい。
【0030】
次に、図7は、図2のグラビアロール3の第1変形例を示す説明図である。図2では凸部32がすべての交点部31aから突出されている態様を示したが、図7に示すように凸部32が一部の交点部31aから突出されていてもよい。図2の態様に対して半分の数の凸部32が設けられている態様を図7に示している。すなわち、図7では、1つのセル33の周囲に位置する6つの交点部31aのうち、3つの交点部31aから凸部32が突出されている。
【0031】
次に、図8は、図2のグラビアロール3の第2変形例を示す説明図である。図2では凸部32が交点部31aのみから突出されるように説明したが、図8に示すように凸部32が壁部31bから突出されていてもよい。図8では、すべての交点部31a及びすべての壁部31bから凸部32が突出されている態様を示している。また、図8では、交点部31a間の中央に位置するように壁部31bから凸部32が突出されている態様を示している。しかしながら、一部の交点部31a及び一部の壁部31bから凸部32が突出されていなくてもよい。また、壁部31bから突出される凸部32は、交点部31a間の中央に位置されていなくてもよい。
【0032】
次に、図9は、図2のグラビアロール3の第3変形例を示す説明図である。図2では凸部32が交点部31aのみから突出されるように説明したが、図9に示すように凸部32が壁部31bのみから突出されていてもよい。図9では、すべての壁部31bから凸部32が突出されている態様を示している。また、図9では、交点部31a間の中央に位置するように壁部31bから凸部32が突出されている態様を示している。しかしながら、一部の壁部31bから凸部32が突出されていなくてもよい。また、凸部32は、交点部31a間の中央に位置されていなくてもよい。
【0033】
次に、図10は、図2のグラビアロール3の第4変形例を示す説明図である。図9ではすべての壁部31bから凸部32が突出されている態様を示したが、図10に示すように凸部32が一部の壁部31bから突出されていてもよい。図9の態様に対しておおよそ半分の数の凸部32が設けられている態様を図10に示している。すなわち、図10では、2つのセル33に関して6つの凸部32が設けられている。
【0034】
凸部32の配置はランダムであってもよい。
【0035】
本発明の実施の形態に係る塗工物の製造方法は、上述のグラビアロール3を用いて被塗工物に塗工液1aを塗工する工程を含む。より具体的には、ドクターチャンバー2に貯められた塗工液1aをグラビアロール3の周面に付着させるとともに、グラビアロール3の周面に付着した塗工液1aを、他のロール(アプリケータロール)を介して被塗工物に転写するか、又は被塗工物に直接転写する工程を含む。
【0036】
このようなグラビアロール3及びそれを用いた塗工物の製造方法では、区画壁31の頂部から複数の凸部32が突出されているので、下流側ドクターブレード22によって塗工液1aが掻きとられるときに、凸部32の間を通して塗工液1aがグラビアロール3の外周面を移動することができる。特に塗工液1aは、例えば区画壁31の延在方向等の特定の方向に限定されず、任意の方向に移動し得る。このため、粘度が高い塗工液1aを用いる場合でも、十分な量の塗工液1aをより均一に各セル33に入れることができ、塗工外観不良が発生する虞を低減できる。一方で、区画壁31が複数のセル33を形成しているので、塗工液1aの移動を一定の範囲に抑えることができる。また、グラビアロール3の表面からアプリケータロール等に塗工液1aが転写される際、アプリケータロール等の上の液膜最表層には、凸部32のみが接触している。アプリケータロール等の上の液膜から凸部32が離れる際、液膜には点状の凹部が存在することも考えられる。しかしながら、本実施の形態のグラビアロール3では、凸部32ではなく区画壁31の上面全体がアプリケータロール等と接触する場合と比較して、液膜の凹部は小さい。このため即座に液膜が平滑化されて、塗工外観不良が発生する虞を低減できる。
【0037】
また、凸部32の頂部の幅が区画壁31の厚み31w以下であって、交点部31a間の距離以内であるので、塗工液1aが凸部32の間を通してより円滑に移動でき、より確実に塗工外観不良が発生する虞を低減できる。また、アプリケータロール等の上の液膜から凸部32が離れる際の液膜の凹部を小さくでき、塗工外観不良が発生する虞を低減できる。
【0038】
さらに、凸部32は、ロール本体30の軸方向30aに対して傾斜して延在する直線34に沿って配置されているので、グラビアロール3が回転されるときロール本体30の軸方向30aに関してドクターブレード22の先端をいずれかの凸部32に当接させることができる。これにより、ドクターブレード22がバタついて塗料の掻きとりが不均一となることを防止できる。
【0039】
さらにまた、軸方向30aに対する直線34の傾斜角度が0.1°以上かつ5°以下であるので、ドクターブレード21、22のバタつきをより確実に抑えつつ、ローピング模様が生じる虞を低減できる。傾斜角度は、0.15°以上かつ2°以下であることがさらに好ましい。
【符号の説明】
【0040】
1 塗工装置
1a 塗工液
2 ドクターチャンバー
20 チャンバー本体
21 上流側ドクターブレード
22 下流側ドクターブレード
3 グラビアロール
31 区画壁
31a 交点部
31b 壁部
32 凸部
33 セル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10