(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】殺菌装置および殺菌方法
(51)【国際特許分類】
A23L 3/26 20060101AFI20230419BHJP
A23B 5/015 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
A23L3/26
A23B5/015
(21)【出願番号】P 2019015305
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 憲昭
(72)【発明者】
【氏名】河原 大吾
(72)【発明者】
【氏名】関口 正之
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/002112(WO,A1)
【文献】特開2003-098300(JP,A)
【文献】特開2005-021763(JP,A)
【文献】特開2002-045159(JP,A)
【文献】特開2000-102370(JP,A)
【文献】特開平10-215765(JP,A)
【文献】特開2017-095108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B,A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線を照射することにより、可食部と前記可食部を覆う表面部とを有する食品を殺菌する殺菌装置であって、
電子線を前記食品に照射する電子線照射部と、
前記電子線照射部からの電子線の照射領域内を前記食品が通過するよう、前記食品を回転させつつ搬送する搬送部と、
を有
し、
前記電子線照射部は、チャンバーと、前記チャンバー内に配置されたフィラメントと、前記チャンバーに設けられたウィンドウと、を有し、前記フィラメントに電流を流すことにより放出された電子が加速電圧により加速されウィンドウに設けられた箔を通過することにより電子線が照射され、
前記搬送部は、軸支されたローラを複数有し、前記食品は、前記ローラの回転で回転しつつ、搬送され、
前記ウィンドウと前記ローラの軸との平面視におけるなす角θは、20°≦θ≦60°である、殺菌装置。
【請求項2】
請求項1記載の殺菌装置において、
前記食品の回転速度は、0.3回転/秒~2.5回転/秒である、殺菌装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の殺菌装置において、
前記食品の搬送速度は、0.1m/分~3m/分である、殺菌装置。
【請求項4】
請求項1記載の殺菌装置において、
前記食品の表面線量が、0.1kGy以上10kGy以下である、殺菌装置。
【請求項5】
請求項4記載の殺菌装置において、
前記食品の可食部のX線の線量が、0.1Gy以下である、殺菌装置。
【請求項6】
請求項1記載の殺菌装置において、
前記食品は、生卵である、殺菌装置。
【請求項7】
電子線を照射することにより、可食部と前記可食部を覆う表面部とを有する食品を殺菌する殺菌方法であって、
前記電子線は、チャンバーと、前記チャンバー内に配置されたフィラメントと、前記チャンバーに設けられたウィンドウと、を有する装置において、前記フィラメントに電流を流すことにより放出された電子が加速電圧により加速されウィンドウに設けられた箔を通過することにより照射され、
前記食品は、軸支されたローラを複数有する搬送部により、前記ローラの回転で回転しつつ、搬送され、
前記ウィンドウと前記ローラの軸との平面視におけるなす角θは、20°≦θ≦60°である、殺菌方法。
【請求項8】
請求項7記載の殺菌装置において、
前記食品の回転速度は、0.3回転/秒~2.5回転/秒である、殺菌方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の殺菌方法において、
前記食品の搬送速度は、0.1m/分~3m/分である、殺菌方法。
【請求項10】
請求項7記載の殺菌方法において、
前記食品の表面線量が、0.1kGy以上10kGy以下である、殺菌方法。
【請求項11】
請求項10記載の殺菌方法において、
前記食品の可食部のX線の線量が、0.1Gy以下である、殺菌方法。
【請求項12】
請求項7記載の殺菌方法において、
前記食品は、生卵である、殺菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌装置および殺菌方法に関し、特に、可食部を覆う殻や外皮を有する食品の表面殺菌処理に有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鶏卵は、洗浄により卵殻表面のクチクラ層が除去され、卵殻中の微小孔(気孔)が開放状態となる。このため微小孔中にサルモネラ菌などの微生物が侵入し易く、洗卵の表面が汚染される恐れがある。
【0003】
このような汚染に対し、薬剤殺菌(湿式殺菌)が行われている。しかしながら、薬剤殺菌では、残留薬剤の影響が懸念される。例えば、残留薬剤による匂いなど、風味の低下が生じ得る。また、廃液による環境汚染が懸念される。
【0004】
このため、ドライかつ非熱的処理(乾式殺菌)である紫外線を用いた処理が実用化されている。また、ドライかつ非熱的処理(乾式殺菌)である放射線を用いた処理が研究されている。
【0005】
例えば、非特許文献1には、真空チャンバー内に配置されたフィラメントを加熱して電子線を発生させ、照射部に設けた照射窓の窓箔を通して大気中に取り出して容器に照射する電子線照射装置が開示されている。そして、容器は容器搬送装置の容器保持部に保持されて搬送され、照射窓の前方を通過する。この電子線照射装置において、スパークが発生すると電子線の照射が一時中断されるが、その中断している時間内に容器が搬送される距離よりも、照射窓の容器搬送方向における長さを大きくしている。
【0006】
また、非特許文献2には、試料トレー、トレー載置台、その下方に直列状に配設した振動器および振盪器、該振動器および振盪器から発生する振動と振盪を前記トレー載置台に伝える伝動具、前記振動器と振盪器を作動させるための電源スイッチとこれらの作動用スイッチ並びに振動と振盪のスピードコントローラーを具備した穀物回動装置が開示されている。そして、この装置によれば、回動している穀物の表面に低エネルギーの電子線を照射し、穀物を殺菌することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-239181号公報
【文献】特開平10-215765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、食品を殺菌する方法には、大きく分けて湿式殺菌、乾式殺菌がある。例えば、鶏卵の表面のみを滅菌する場合には、次亜塩素酸を用いた湿式殺菌が行われる。しかしながら、このような殺菌方法では、前述したように残留薬剤や廃液の問題がある。
【0009】
また、紫外線を用いた処理(乾式殺菌)においては、殺菌効果が鶏卵の表面に限定され、その内部(例えば、卵殻中の微小孔の内部)の殺菌までは十分に行えない恐れがある。また、鶏卵の表面に汚れが付着している場合には、殺菌不良となる恐れがある。
【0010】
これに対し、電子線を用いた処理(乾式殺菌)においては、鶏卵の表面だけでなく、卵殻の一定深さまでの殺菌が可能である。また、鶏卵の表面の汚れを透過して殺菌を行うことができるため、有用である。
【0011】
しかしながら、電子線の照射の際、鶏卵の表面の全体に均一に電子線を照射することは困難であり、また、鶏卵の表面の全体に殺菌効果を及ぼすため電子線の照射強度を大きくすると、電子線の照射に伴い生じる制動X線の線量が大きくなり、鶏卵の内部線量が高くなってしまう。
【0012】
本発明の目的は、可食部を覆う殻や外皮を有する食品について、その表面の全体においてより均一に電子線を照射し、その表面の全体において電子線による殺菌効果を付与する殺菌装置および殺菌方法を提供することにある。また、可食部を覆う殻や外皮を有する食品について、その表面の全体において電子線を照射しつつ、電子線の照射に伴い生じる制動X線の可食部に対する影響を低減し、可食部に照射されるX線の線量を法令などに規定される基準を満たすように低く抑えることができる殺菌装置および殺菌方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明の殺菌装置は、電子線を照射することにより、可食部と前記可食部を覆う殻や外皮等の表面部を有する食品のうち、表面部のみを殺菌する殺菌装置であって、電子線を前記食品に照射する電子線照射部と、前記電子線照射部からの電子線の照射領域内を前記食品が通過するよう、前記食品を回転させつつ搬送する搬送部と、を有する。そして、前記電子線照射部は、チャンバーと前記チャンバー内に配置されたフィラメントと、前記チャンバーに設けられたウィンドウとを有し、前記フィラメントに電流を流すことにより放出された電子が加速電圧により加速されウィンドウに設けられた箔を通過することにより電子線が照射される。また、前記搬送部は、軸支されたローラを複数有し、前記食品は、前記ローラの回転方向に回転しつつ、搬送され、平面視における前記ウィンドウと前記ローラの軸とのなす角θは、0°<θ≦90°である。
【0014】
(2)本発明の殺菌方法は、電子線を照射することにより、可食部と前記可食部を覆う殻や外皮等の表面部を有する食品を殺菌する殺菌方法であって、前記食品を回転させつつ搬送することで、電子線を照射する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の殺菌装置または殺菌方法によれば、可食部を覆う殻や外皮を有する食品について、その表面の全体においてより均一に電子線を照射し、その表面の全体において電子線による殺菌効果を付与することができる。また、可食部を覆う殻や外皮を有する食品について、その表面の全体において電子線を照射しつつ、電子線の照射に伴い生じる制動X線の可食部に対する影響を低減し、可食部に照射されるX線の線量を法令などに規定される基準を満たすように低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態1の電子線照射装置を示す断面模式図である。
【
図2】実施の形態1の電子線照射装置に用いられる搬送部の構成を示す斜視図である。
【
図5】実施の形態1の殺菌方法を模式的に示す図である。
【
図6】照射窓部の下方を通過する生卵の様子を示す上面図である。
【
図9】照射窓部と照射試料との間隔と線量の関係を示す図である。
【
図10】照射試料を回転させていない比較例の場合のRCDフィルム線量の測定結果を示す図である。
【
図11】照射試料を回転しながら搬送しつつ、照射窓部の下を通過させた場合のRCDフィルム線量の測定結果を示す図である。
【
図12】照射窓部の下方を通過する生卵の様子を示す上面図である。
【
図13】照射試料を回転しながら搬送しつつ、照射窓部から電子線を照射した場合のRCDフィルム線量およびTLD線量を示す図である。
【
図14】照射試料を回転しながら搬送しつつ、斜めに配置した照射窓部から電子線を照射した場合のRCDフィルム線量およびTLD線量を示す図である。
【
図15】照射試料を回転しながら搬送しつつ、斜めに配置した照射窓部から電子線を照射した場合のRCDフィルム線量およびTLD線量を示す図である。
【
図16】応用例1の照射窓部の下方を通過する生卵の様子を示す上面図である。
【
図17】応用例2の照射窓部の下方を通過する生卵の様子を示す上面図である。
【
図18】SSサイズの卵に対する電子線と制動X線のモデルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明においてA~Bは、A以上B以下を示す(実施の形態2等についても同様)。
【0018】
図1は、本実施の形態の電子線照射装置を示す断面模式図である。
【0019】
図1に示す電子線照射装置(殺菌装置)は、電子線発生部10と、照射室20とを備える。電子線は、電子線発生部10に設けられた照射窓部(照射ウィンドウ)30を介して照射室20に配置された被処理物(被照射物、例えば、生卵)40に照射される。被処理物40は、コンベアのような搬送部21上に配置され、搬送される。ここで、本実施の形態において、被処理物40は搬送部21上で回転しながら搬送される。このように、回転しながら搬送される被処理物40に、電子線を照射することにより、その表面の全体においてより均一に電子線を照射し、その表面の全体において電子線による殺菌効果を付与することができ、結果として、電子線の照射に伴い生じる制動X線の可食部に対する影響を小さくすることができる。
【0020】
電子線発生部10は、チャンバー内に電子線を発生するターミナル12と、ターミナル12で発生した電子線を加速する空間(加速空間)とを有する。また、電子線発生部10の空間(加速空間)は、電子が気体分子と衝突してエネルギーを失うことを防ぐため、およびフィラメント12aの酸化を防止するため、真空排気システム28により10-3~10-5Pa程度の真空に保たれている。ターミナル12は、熱電子を放出する線状のフィラメント12aと、フィラメント12aで発生した熱電子をコントロールするグリッド12cとを有する。
【0021】
また、電子線発生部10は、フィラメント12aを加熱して熱電子を発生させるための加熱用電源(図示せず)と、フィラメント12aとグリッド12cとの間に電圧を印加する制御用直流電源(図示せず)と、グリッド12cと照射窓部30に設けられた窓箔32との間に電圧(加速電圧)を印加する加速用直流電源16cとを備えている。
【0022】
照射室20は、電子線を被処理物(被照射物)40に照射する照射空間を含むものである。被処理物40は照射室20内をコンベアのような搬送部21により、例えば、
図1において、紙面奥行きから手前方向に搬送される。また、照射室20内には、ビームコレクタ24を設けている。このビームコレクタ24は、被処理物40を突き抜けた電子線を吸収するものである。なお、電子線発生部10および照射室20の周囲は電子線照射時に二次的に発生するX線が外部へ漏出しないように、鉛遮蔽板により囲まれている。
【0023】
また、照射室20内は、処理内容に応じて不活性ガスや大気等の雰囲気とされる。殺菌処理(滅菌処理)を行う場合には、照射室20内の照射雰囲気を大気(酸素のある雰囲気)にしておき、電子線によって被処理物を殺菌する。この場合、電子線照射で酸素からオゾンが生成され、その後、大気中の窒素と反応し、ノックスが生成する。ノックスは金属箔(窓箔32)を腐食するため、照射室20内に送風機29から乾燥空気を送ることでノックスの生成を制御することができる。
【0024】
照射窓部(照射ウィンドウ)30は、金属箔からなる窓箔32と、銅よりなる窓枠部34とを備えている。窓枠部34は窓箔32を支持するためのものである。窓枠部34は、長方形状(矩形状)の開口部が形成されている。開口部の幅は、例えば、1cm程度であり、その長辺方向は、搬送方向と直交する方向に配置されている。
【0025】
また、照射窓部30においては、電子線の照射により温度が上昇する窓箔32を冷却するために、内部に冷却用の流路(図示せず)が形成されている。窓枠部34は、電子線発生部10の照射用開口部に着脱自在に取着される。窓箔32は、窓枠部34の下面に、着脱自在に密着される。窓箔32としては、アルミ箔、チタン(Ti)箔などの金属箔が使用される。
【0026】
本実施の形態の電子線照射装置では、加熱用電源によりフィラメント12aに電流を通じて加熱すると、フィラメント12aが熱電子を放出し、放出された熱電子はフィラメント12aとグリッド12cとの間に印加された制御用直流電源の制御電圧により四方八方に引き寄せられる。このうち、グリッド12cを通過したものだけが電子線として有効に取り出される。そして、このグリッド12cから取り出された電子線は、グリッド12cと窓箔32との間に印加された加速用直流電源16cの加速電圧により加速空間で加速された後、窓箔32を突き抜け、照射窓部30下方の照射室20内を回転しながら搬送される被処理物に照射される。なお、グリッド12cから取り出された電子線の流れによる電流値はビーム電流と称される。このビーム電流が大きいほど、電子線の量が多くなる。
【0027】
電子線照射装置では、加速電圧、ビーム電流、被処理物の搬送速度(照射時間)、電子線照射部と被処理物との距離等を所定の値に設定して、被処理物に電子線を照射する処理が行われる。電子線に与えられるエネルギーは加速電圧によって決まる。すなわち、加速電圧を高く設定する程、電子線の得る運動エネルギーが大きくなり、その結果、電子線は被処理物の表面から深い位置まで到達することができるようになる。このため、加速電圧の設定値を変えることにより、被処理物に対する電子線の浸透深さを調整することができる。
【0028】
なお、被処理物に電子線が照射されるときに被処理物が受けるエネルギーの量は吸収線量(単に、線量と言う場合もある)という値で表される。この被処理物が受ける吸収線量は、例えば、ビーム電流に比例し、被処理物の搬送速度に反比例する。このため、例えば、ビーム電流や被処理物の搬送速度などの照射条件を変えることにより、電子線の吸収線量を調整することができる。前述したように、ビーム電流とは、グリッド12cから取り出された電子線の流れによる電流値である。
【0029】
図2は、本実施の形態の電子線照射装置(殺菌装置)に用いられる搬送部の構成を示す斜視図であり、
図3および
図4は、それぞれ搬送部のY方向、X方向の断面模式図である。
【0030】
図2~
図4に示すように、搬送部21は、搬送方向(ここでは、X方向)と直交するY方向に延在する複数のローラ21aを有している。ローラ21aは、複数のレーンLを有する。ローラ21aは、軸21dと、レーンLにおいて、軸21dの両端に配置された円錐台部材21cとを有し、円錐台部材21c間はスペース(隙間)21bとなっている。円錐台部材21cは、スペース(隙間)21bに向かって先細となるように配置されている。
【0031】
被処理物(ここでは、生卵)40は、各レーンLにおいて、スペース(隙間)21bの両側の円錐台部材21cに跨るように搭載される。円錐台部材21cが軸21dを中心に、回転することで、被処理物(ここでは、生卵)40が回転する。また、ローラの軸21dは、チェーンまたはベルト(図示せず)に回転可能に連結されており、このチェーンが搬送方向(ここでは、X方向、破線の矢印参照)に移動することにより、被処理物(ここでは、生卵)40が回転しつつ、X方向に搬送される。
【0032】
よって、
図1に示すような電子線照射装置を用いて、被処理物40である、可食部を覆う殻や外皮を有する食品に電子線を照射することにより、食品の表面の殺菌処理を行うことができる。
【0033】
ここで、被処理物に電子線が照射される際、被処理物40、窓箔32、窓枠部34、搬送部21、鉛遮蔽板などから二次的にX線が発生する。これは、制動X線とも呼ばれる。
図5は、本実施の形態の殺菌方法を模式的に示す図である。
図6は、照射窓部(照射ウィンドウ)の下方を通過する生卵の様子を示す上面図である。
【0034】
図5および
図6に示すように、卵黄1と卵白2とを有する生卵(被処理物40)を回転させながらその卵殻に、照射窓部(照射ウィンドウ)30から電子線EBを照射することにより、卵殻の表面から一定の深さの殺菌(例えば、サルモネラ菌の殺菌)を行うことができる。なお、本実施の形態においては、照射窓部(照射ウィンドウ)30の長方形状(矩形状)の開口部はY方向に延在しており、ローラの軸21dもY方向に延在している(
図6)。
【0035】
また、卵黄1と卵白2とを有する生卵(被処理物40)を回転させながらその卵殻に、照射窓部(照射ウィンドウ)30から電子線EBを照射することにより、卵殻の内部の可食部(卵黄1と卵白2)におけるX線(制動X線)XLの吸収線量を局所的に増加させることなく、例えば、法令などに規定される基準(例えば、0.1Gy=100mGy)を満たすように低くすることができる。
【0036】
[実施例1]
以下に、本実施の形態の電子線照射装置(殺菌装置)および殺菌方法を用いた生卵の殺菌処理について実施例を用いてさらに具体的に説明する。
【0037】
表面及び内部の吸収線量を評価するため、RCDフィルム線量計またはTLD素子を組み込んだ卵の模擬試料(生卵模擬サンプル、照射試料)を作製し、回転させながら電子線を照射した。
【0038】
1.生卵の形状
図7は、生卵の構成を示す図である。
図7に示すように、生卵は、卵殻4と、その内部の卵黄1と卵白2とを有する。卵黄1と卵白2とはカラザ3により繋がっている。卵殻4の外側にはクチクラ層5があり、卵殻4の内壁には卵殻膜7がある。卵殻4には、気孔6が複数設けられている。クチクラ層5は、洗浄により除去され得る。また、生卵の鈍端部には、気室がある。
【0039】
2.照射試料の作製
照射試料(生卵模擬サンプル、模擬試料)は、次のようにして作成した。
図8は、照射試料の形成工程を示す図である。
【0040】
まず、表面を洗浄した生卵(洗卵、Mサイズ)を準備した。生卵を割り、中身および卵殻膜を取り除き、乾燥することで、鈍端側の卵殻および鋭端側の卵殻を得た。鋭端側の卵殻の内側に、ポリエチレンフィルムで密封をしたTLD素子(TLD100:Thermo Fisher Scientic社製)を配置した後、2%の寒天CDを流し固化した(
図8(a)、(b))。また、同様に、鈍端側の卵殻の内側に、ポリエチレンフィルムで密封をしたTLD素子(TLD100:Thermo Fisher Scientic社製)を配置した後、2%の寒天CDを流し固化した。鋭端側の試料と、鈍端側の試料とを組み合わせ、照射試料(生卵模擬サンプル、模擬試料)とした。TLD素子は、
図8(c)に示すとおり、照射試料(生卵模擬サンプル、模擬試料)の鋭端部(P1)、鈍端部(P2)、中央部(P4)、胴部一端(P3)、胴部他端(P5)である。胴部とは、生卵(照射試料)の短径方向の外周である。
【0041】
また、鋭端側の卵殻の内側に、2%の寒天CDを流し固化した。さらに、鈍端側の卵殻の内側に、2%の寒天CDを流し固化した。鋭端側の試料と、鈍端側の試料とを組み合わせ、照射試料(生卵模擬サンプル、模擬試料)とした。照射試料の胴部(Round)にRCDフィルム線量計を巻き、さらに、鈍端部(Bottom)および鋭端部(Top)にRCDフィルム線量計を配置した(
図8(d))。
【0042】
3.電子線照射装置
低エネルギー電子加速器(岩崎電機製:アイ・コンパクトEB)を用いて加速電圧80kV、電流0.1mAの電子線を照射した。低エネルギー電子加速器の照射窓部(照射ウィンドウ)の下方にはローラ(
図3、
図4参照)を配置し、照射試料を回転させながら電子線を照射した。
【0043】
4.照射窓部(照射ウィンドウ)と照射試料との間隔(距離)
照射窓部(照射ウィンドウ)と照射領域(ステージ)に配置されたRCDフィルム線量計との間隔を変えた場合に線量の変化を調べた。
図9は、照射窓部と照射試料との間隔と線量の関係を示す図である。
図9(a)は、照射窓部(照射ウィンドウ)とRCDフィルム線量計との配置を示す上面図であり、
図9(b)は、RCDフィルム線量計により測定した照射領域の線量を示すグラフである。
図9(b)の縦軸は線量(kGy)であり、横軸は矩形状のRCDフィルム線量計の位置(cm)である。
【0044】
図9(a)に示すように、矩形状の照射窓部(照射ウィンドウ)の延在方向と直交する方向に、矩形状のRCDフィルム線量計を配置した。
図9(b)に示すように、照射窓部(照射ウィンドウ)と矩形状のRCDフィルム線量計との間隔が大きくなるにしたがって、グラフのピークが小さくなり、かつ、グラフが緩やかとなる。線量のばらつきが比較的小さく、被処理物の全体に電子線が照射されるよう、本実施例においては、照射窓部(照射ウィンドウ)と照射試料との間隔を3cmとした。この照射窓部(照射ウィンドウ)と照射試料との間隔は、2cm~4cm程度とすることが好ましい。
【0045】
なお、比較例として、照射試料を回転させずに電子線を照射したものについても同様に評価した。
【0046】
図10は、照射試料を回転させていない比較例の場合のRCDフィルム線量(表面線量)の測定結果を示す図(グラフ)である。横軸は、角度[°]であり、縦軸は線量[kGy]である。比較例においては、照射試料の胴部の上側の半周にRCDフィルム線量計を配置して測定した(
図10参照)。
【0047】
図10に示すように、照射試料を回転させていない場合においては、表面線量のばらつきが大きく、照射試料の上部にしか十分な線量が確保できていないことが分かる。
【0048】
照射試料を回転しながら搬送しつつ、照射窓部(照射ウィンドウ)の下を通過させた場合のRCDフィルム線量の測定結果を
図11に示す。
図11において、四角で囲んだ数値は、RCDフィルム線量計の位置を示し、それ以外の数値0~4は線量の強度[kGy]を示す。この実施例においては、照射窓部と照射試料との間隔を3cm、搬送速度2m/分、回転速度1.7回転/秒とした。
【0049】
図11に示すように、胴部(Round)において、比較例の場合より均一に電子線が照射されていることが分かる。
図11において、RCDフィルム線量(表面線量)は、3.4kGy~2.2kGyであった。例えば、比較例(
図10)の場合は、最高値が最低値の47倍であるのに対し、本実施例(
図11)においては、最高値が最低値の1.5倍であった。
【0050】
なお、1kGyの電子線の照射で、サルモネラ菌は、1/10000に減少し、3kGyの電子線の照射で、サルモネラ菌は、検出限界以下まで減少する。
【0051】
このように、生卵を回転させながら電子線を照射することで、生卵の表面に均一に電子線を照射することができた。また、照射試料を回転させた場合のTLD線量(内部線量)の測定結果は、P1:7.4mGy、P2:9.0mGy、P3:11.3mGy、P4:9.0mGy、P5:10.6mGyであった。
【0052】
このように、生卵を回転させることで、表面線量および内部線量のばらつきを抑制することができる。これにより、殺菌に要する十分な表面線量を維持しつつ、内部線量を十分低く抑えることができる。例えば、上記内部線量は、食品に対する検査等で許容されている内部線量の基準値である0.1Gy(=100mGy)を十分下回るものであり、生卵の表面において殺菌を行いつつ、内部線量を基準値以下に抑えることができる。
【0053】
(応用例)
上記実施例においては、被処理物40として生卵を例に説明したが、被処理物(被照射物)としては、可食部とこの可食部を覆う表面部(例えば、殻や外皮)とを有する食品であればよく、本実施の形態の殺菌装置や殺菌方法は、このような食品の殺菌処理に好適に用いることができる。
【0054】
このような食品としては、卵の他、果物、甲殻類などがある。例えば、果物としては、みかん、レモン、グレープフルーツ、りんご、なし、ぶどう、もも、などが挙げられる。また、甲殻類としては、エビやカニなどが挙げられる。レモンやグレープフルーツは、表面に凹凸(穴)があり、本実施の形態の殺菌方法を用いて好適である。
【0055】
また、特に、みかんやレモンなど、略球状、楕円球状の形状物、また、円筒状の形状物は、回転させやすく、本実施の形態の殺菌方法を用いて好適である。また、ぶどう、エビ、カニなど、回転させ難いものについては、例えば、
図19に示すように被処理物40を、例えば、棒や紐などの吊り下げ部材50の下方に吊り下げた状態で、吊り下げ部材50を軸回転させることで、被処理物40を回転させながら搬送し、側部から電子線EBを照射することで殺菌処理を行うことができる。
図19は、他の殺菌方法を模式的に示す図である。
【0056】
(処理条件についてのまとめ)
上記実施例においては、加速電圧を80kVとしたが、加速電圧は、例えば、80kV以上、150kV以下の範囲で調整することが可能である。
【0057】
また、上記実施例においては、表面線量を3kGy程度としたが、表面線量は、0.1kGy以上10kGy以下の範囲で調整することが可能である。
【0058】
内部線量としては、食品に対する検査等で許容されている内部線量の基準値である0.1Gy(=100mGy)以下とすることが好ましい。
【0059】
食品への衝撃を考慮し、被処理物である食品の回転速度は、0.3回転/秒~2.5回転/秒とすることが好ましい。
【0060】
殺菌速度を考慮し、被処理物である食品の搬送速度は、0.1m/分~3m/分とすることが好ましい。
【0061】
(実施の形態2)
実施の形態1(例えば、
図6)においては、照射窓部(照射ウィンドウ)30の長方形状(矩形状)の開口部はY方向に延在しており、ローラの軸21dもY方向に延在している。別の言い方をすれば、照射窓部(照射ウィンドウ)30の長方形状(矩形状)の開口部の延在方向(Y方向)を、生卵の鈍端部(Bottom)および鋭端部(Top)を結んだ方向(Y方向)と一致させている。
【0062】
本実施の形態においては、食品の回転方向と平面視において直交する方向に対し斜めに電子線を照射する。即ち、照射窓部(照射ウィンドウ)30の長方形状(矩形状)の開口部を、ローラの軸21dの延在方向(Y方向)に対して斜めに配置している。別の言い方をすれば、照射窓部(照射ウィンドウ)30の長方形状(矩形状)の開口部の延在方向と、ローラの軸21dの延在方向(Y方向)とが0°を超えて、90°以下の範囲の角度で交差している。
【0063】
なお、照射窓部(照射ウィンドウ)30を斜めに配置する以外は、実施の形態1(
図1等)の場合と同様である。また、殺菌方法についても、電子線EBが斜めに配置された照射窓部(照射ウィンドウ)30から被処理物(被照射物、例えば、生卵)40に照射されること以外は実施の形態1の場合と同様である。
【0064】
図12は、照射窓部(照射ウィンドウ)の下方を通過する生卵の様子を示す上面図である。
図12に示すように、照射窓部(照射ウィンドウ)30の長方形状(矩形状)の開口部の延在方向と、ローラの軸21dの延在方向(Y方向)とのなす角θが、0°<θ≦90°である。“d”は、搬送方向を示す。
【0065】
このように、照射窓部(照射ウィンドウ)30の長方形状(矩形状)の開口部を、生卵(被処理物40)の鈍端部(Bottom)および鋭端部(Top)を結んだ方向(Y方向)に対し、斜めに配置することで、生卵の端部(鈍端部(Bottom)、鋭端部(Top))に照射される電子線の線量を増加させることができる。
【0066】
[実施例2]
実施例1の場合と同様に、TLD素子を組み込んだ照射試料およびRCDフィルム線量計を組み込んだ照射試料を作製した(
図8(c)、
図8(d)参照)。
【0067】
低エネルギー電子加速器(岩崎電機製:アイ・コンパクトEB)を用いて加速電圧80kV、電流0.1mAの電子線を照射した。低エネルギー電子加速器の照射窓部(照射ウィンドウ)の下方にはローラ(
図3、
図4参照)を配置し、照射試料を回転させながら電子線を照射した。
【0068】
ここで、本実施例においては、照射窓部(照射ウィンドウ)30の長方形状(矩形状)の開口部の延在方向と、ローラの軸21dの延在方向(Y方向)とのなす角θを、0°、30°、60°として、卵の殺菌処理を行った。0°の場合は、上記実施の形態1および実施例1の場合と対応する。以下の
図13において、鈍端部(Bottom)および鋭端部(Top)の線量は、それぞれ2か所の平均であり、鈍端部(Bottom)は、0.86kGyと1.27kGyの平均であり、鋭端部(Top)は、0.55kGyと0.75kGyの平均である。
【0069】
照射試料を回転しながら搬送しつつ、斜めに配置した照射窓部(照射ウィンドウ)から電子線を照射した場合のRCDフィルム線量(表面線量)およびTLD線量(内部線量)を
図13~
図15に示す。
図13はθ=0°の場合、
図14はθ=30°の場合、
図15はθ=60°の場合である。これらの図において、(a)は傾斜の様子を示す図(写真)であり、(b)はRCDフィルム線量(表面線量)を示すグラフであり、(c)はTLD線量(内部線量)を示す表である。
【0070】
図13と
図14の対比、
図13と
図15の対比から、照射窓部(照射ウィンドウ)と、生卵の軸(鈍端部(Bottom)および鋭端部(Top)を結んだ方向)との間に角度(θ)を付けることにより生卵の端部の表面線量が向上していることが分かる。
【0071】
また、内部線量については、すべて100mGy以下であり、例えば、100mGyの基準をクリアしている。
【0072】
このように、照射窓部(照射ウィンドウ)と、生卵の軸(鈍端部(Bottom)および鋭端部(Top)を結んだ方向)との間に角度(θ)を付けることにより、生卵の胴部と端部との表面線量の差を小さくすることができ、より均一に電子線を照射することができる。
【0073】
照射窓部(照射ウィンドウ)と、生卵の軸(鈍端部(Bottom)および鋭端部(Top)を結んだ方向)との間に角度(θ)は、0°<θ≦90°であり、0°<θ≦60°が好ましく、30°近傍、例えば、20°以上40°以下がより好ましい。
【0074】
(応用例1)
図12においては、照射窓部(照射ウィンドウ)30を水平に配置しているが、照射窓部(照射ウィンドウ)30に上下方向(Z方向)の傾斜を設けてもよい。例えば、
図16に示すように、図中左側の照射窓部(照射ウィンドウ)の端部が図中右側の照射窓部(照射ウィンドウ)の端部より高く配置されていてもよい。
図16は、本応用例の照射窓部(照射ウィンドウ)の下方を通過する生卵の様子を示す上面図である。
【0075】
(応用例2)
上記
図16においては、照射窓部(照射ウィンドウ)30を1つとしたが、2つの照射窓部(照射ウィンドウ)から電子線を照射してもよい。例えば、
図17に示すように、照射窓部(照射ウィンドウ)30a、30bを配置し、照射窓部(照射ウィンドウ)30aにおいては、図中左側の照射窓部の端部が図中右側の照射窓部の端部より低く配置され、照射窓部(照射ウィンドウ)30bにおいては、図中左側の照射窓部の端部が図中右側の照射窓部の端部より高く配置されている。
図17は、本応用例の照射窓部(照射ウィンドウ)の下方を通過する生卵の様子を示す上面図である。32aは、照射窓部30aに設けられた窓箔であり、32bは、照射窓部30bに設けられた窓箔である。
【0076】
(実施の形態3)
本実施の形態においては、粒子・重イオン輸送計算コードPHITS(Version3.02)を用いた電子線のモデルおよび制動X線のモデルについて説明する。
【0077】
粒子・重イオン輸送計算コードPHITS(Version3.02)を用いて、重量を基準としてSS~LLサイズの卵モデルを作成した。卵殻(主成分:CaCO
3)は気孔を持つので密度を2.0、可食部の密度は水と同等、雰囲気は標準空気と設定し、加速電圧80kVの電子線で卵に照射した際の電子線及び制動X線の線量分布をシミュレーションにより評価した。なお、
図18は、SSサイズの卵に対する電子線と制動X線のモデルを示す図である。
図18(a)は電子線のモデルであり、
図18(b)は制動X線のモデルである。
【0078】
表1に、各卵のサイズにおける可食部の平均吸収線量の比較データを示す。卵のサイズが大きい程、可食部の吸収線量が大きくなり、最大の増加線量は16%であった。そのため、SS~LLサイズの卵をランダムに殺菌する時には内部線量を20%ほど安全側(過大)に見積もることが好ましい。
【表1】
【0079】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、実施の形態2において、実施の形態1で説明した他の食品(みかんなど)を適用することができ、また、実施の形態1で説明した“処理条件”を適用することができる。
(付記)
[付記1]
電子線を照射することにより、可食部と前記可食部を覆う表面部とを有する食品を殺菌する殺菌装置であって、
電子線を前記食品に照射する電子線照射部と、
前記電子線照射部からの電子線の照射領域内を前記食品が通過するよう、前記食品を回転させつつ搬送する搬送部と、
を有する、殺菌装置。
[付記2]
付記1記載の殺菌装置において、
前記電子線照射部は、チャンバーと、前記チャンバー内に配置されたフィラメントと、前記チャンバーに設けられたウィンドウと、を有し、前記フィラメントに電流を流すことにより放出された電子が加速電圧により加速されウィンドウに設けられた箔を通過することにより電子線が照射される、殺菌装置。
[付記3]
付記2記載の殺菌装置において、
前記加速電圧は、80kV以上、150kV以下である、殺菌装置。
[付記4]
付記1記載の殺菌装置において、
前記食品は、洗卵である、殺菌装置。
[付記5]
付記4記載の殺菌装置において、
卵殻のサルモネラ菌を殺菌する、殺菌装置。
[付記6]
電子線を照射することにより、可食部と前記可食部を覆う表面部とを有する食品を殺菌する殺菌装置であって、
電子線を前記食品に照射する電子線照射部と、
前記電子線照射部からの電子線の照射領域内を前記食品が通過するよう、前記食品を回転させつつ搬送する搬送部と、
を有し、
前記電子線照射部は、チャンバーと、前記チャンバー内に配置されたフィラメントと、前記チャンバーに設けられたウィンドウと、を有し、前記フィラメントに電流を流すことにより放出された電子が加速電圧により加速されウィンドウに設けられた箔を通過することにより電子線が照射され、
前記搬送部は、軸支されたローラを複数有し、前記食品は、前記ローラの回転方向に回転しつつ、搬送され、
前記ウィンドウと前記ローラの軸との平面視におけるなす角θは、0°<θ≦90°である、殺菌装置。
[付記7]
付記6記載の殺菌装置において、
前記ウィンドウと前記ローラの軸との平面視におけるなす角θは、20°≦θ≦40°である、殺菌装置。
[付記8]
電子線を照射することにより、可食部と前記可食部を覆う表面部とを有する食品を殺菌する殺菌方法であって、
前記食品を回転させつつ、電子線を照射する、殺菌方法。
[付記9]
付記8記載の殺菌方法において、
前記食品を回転させつつ搬送しながら、前記電子線を照射する、殺菌方法。
[付記9]
付記8記載の殺菌方法において、
前記食品の回転方向と平面視において直交する方向に対し斜めに電子線を照射する、殺菌方法。
[付記10]
付記9記載の殺菌方法において、
前記電子線は、チャンバーと、前記チャンバー内に配置されたフィラメントと、前記チャンバーに設けられたウィンドウと、を有する装置において、前記フィラメントに電流を流すことにより放出された電子が加速電圧により加速されウィンドウに設けられた箔を通過することにより照射され、
前記食品は、軸支されたローラを複数有する搬送部により、前記ローラの回転方向に回転しつつ、搬送され、
前記ウィンドウと前記ローラの軸との平面視におけるなす角θは、0°<θ≦90°である、殺菌方法。
[付記11]
付記8記載の殺菌方法において、
前記食品の回転速度は、0.3回転/秒~2.5回転/秒である、殺菌方法。
[付記12]
付記8記載の殺菌方法において、
前記食品の搬送速度は、0.1m/分~3m/分である、殺菌方法。
[付記13]
付記10記載の殺菌方法において、
前記加速電圧は、80kV以上、150kV以下である、殺菌方法。
[付記14]
付記8記載の殺菌方法において、
食品の表面線量が、0.1kGy以上10kGy以下である、殺菌方法。
[付記15]
付記8記載の殺菌方法において、
食品の可食部のX線の線量が、0.1Gy以下である、殺菌方法。
【符号の説明】
【0080】
1 卵黄
2 卵白
3 カラザ
4 卵殻
5 クチクラ層
6 気孔
7 卵殻膜
10 電子線発生部
12 ターミナル
12a フィラメント
12c グリッド
16c 加速用直流電源
20 照射室
21 搬送部
21a ローラ
21b スペース(隙間)
21c 円錐台部材
21d 軸
24 ビームコレクタ
28 真空排気システム
29 送風機
30 照射窓部
30a 照射窓部
30b 照射窓部
32 窓箔
34 窓枠部
40 被処理物
50 吊り下げ部材
CD 寒天
EB 電子線
L レーン
XL 制動X線