(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】食品焼き印装置
(51)【国際特許分類】
A21C 15/00 20060101AFI20230419BHJP
A23P 30/00 20160101ALI20230419BHJP
【FI】
A21C15/00 Z
A23P30/00
(21)【出願番号】P 2019056666
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】391029624
【氏名又は名称】滝川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹村 末雄
(72)【発明者】
【氏名】池島 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】川音 利宏
(72)【発明者】
【氏名】小西 康隆
(72)【発明者】
【氏名】高松 邦彦
【審査官】武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-031295(JP,U)
【文献】特開平08-058294(JP,A)
【文献】米国特許第04450765(US,A)
【文献】特開2010-154773(JP,A)
【文献】特開2013-091292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 15/00
A23P 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並んで搬送される複数の食品それぞれに対して焼き印を付する食品焼き印装置であって、
処理位置に搬送された前記食品に対して先端面を接触させて焼き印を付するための金属製のヘッドと、
前記ヘッドを、前記処理位置にある前記食品から前記先端面が離れた第一位置と当該食品に前記先端面が接触可能となる第二位置との間を、往復移動させるアクチュエータと、
固定状態にあり前記ヘッドを誘導加熱するためのコイルと、
前記コイルと電力供給用のリード線を通じて電気的に繋がり当該コイルに交流電流を与える電源装置と、
前記ヘッドの温度を検出するためのセンサと、
前記センサの検出結果に基づいて前記電源装置を制御する制御ユニットと、
を備
え、
前記制御ユニットは、前記食品に前記ヘッドを接触させて焼き印を付するための設定として、前記ヘッドの温度が第一温度であり当該ヘッドを前記食品に接触させる時間が第一時間である第一設定と、前記ヘッドの温度が前記第一温度よりも低い第二温度であり当該ヘッドを前記食品に接触させる時間が前記第一時間よりも短い第二時間である第二設定と、を有する、食品焼き印装置。
【請求項2】
並んで搬送される複数の食品それぞれに対して焼き印を付する食品焼き印装置であって、
処理位置に搬送された前記食品に対して先端面を接触させて焼き印を付するための金属製のヘッドと、
前記ヘッドを、前記処理位置にある前記食品から前記先端面が離れた第一位置と当該食品に前記先端面が接触可能となる第二位置との間を、往復移動させるアクチュエータと、
固定状態にあり前記ヘッドを誘導加熱するためのコイルと、
前記コイルと電力供給用のリード線を通じて電気的に繋がり当該コイルに交流電流を与える電源装置と、
前記ヘッドの温度を検出するためのセンサと、
前記センサの検出結果に基づいて前記電源装置を制御する制御ユニットと、
を備え、
前記制御ユニットは、次に焼き印処理する対象となる食品が前記処理位置に搬送されるまでの時間と、閾値との比較結果に基づき、当該食品に焼き印を付するための設定を変更する、食品焼き印装置。
【請求項3】
前記食品に焼き印を付するための設定は、前記食品ヘッドの温度の設定、及び前記ヘッドを前記食品に接触させる時間の設定から選択される少なくとも一つである、請求項2に記載の食品焼き印装置。
【請求項4】
前記温度の設定は、第一温度と、前記第一温度よりも低い第二温度とを含み、
前記時間の設定は、第一時間と、前記第一時間よりも短い第二時間とを含む、請求項3に記載の食品焼き印装置。
【請求項5】
前記ヘッドが前記第一位置と前記第二位置との間を往復移動する方向を変更させるための角度変更機構を、更に備える請求項1~4のいずれか一項に記載の食品焼き印装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品に焼き印を付する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品は、その製造工程において、焼き印が付されて出荷されることがある。例えば、焼き印として、食品にその品種等が付される。食品の例として、蒸し中華まんじゅう、卵焼き、和菓子等が挙げられる。なお、特許文献1には、焼き印が付された食品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図5は、食品に焼き印を付する従来の装置を示す説明図である。この食品焼き印装置90は、コンベア96によって並んで搬送される食品99に対して焼き印を付する。食品焼き印装置90は、ヘッド91と、ヘッド91を往復移動させるためのアクチュエータ92と、ヘッド91を加熱するヒータ93とを備える。ヘッド91は、柱状の金属製部材である。ヘッド91は、処理位置Qに搬送された食品99に対して、その先端面91aを接触させて焼き印を付する。ヘッド91は、装置フレーム97が有するガイド98に、上下移動可能に取付けられている。アクチュエータ92は、ヘッド91を、処理位置Qにある食品99から離れた第一位置と、その食品99に先端面91aが接触可能となる第二位置との間を、往復移動させる。
図5は、ヘッド91が第一位置にある状態を示す。
【0005】
食品99にヘッド91の先端面91aを接触させて焼き印を付するためには、ヘッド91を予め加熱する必要がある。このために、ヒータ93がヘッド91に埋め込まれている。ヒータ93は、電力供給用のリード線94を通じて電源装置95と電気的に繋がっている。アクチュエータ92によってヘッド91が往復動作すると、ヒータ93もヘッド91と共に往復移動する。すると、リード線94には、折り曲げ荷重が生じる。食品99に焼き印を付する処理を連続的に行う場合、ヒータ93を内蔵するヘッド91が繰り返し往復動作するため、リード線94の断線が発生しやすい。
【0006】
そこで、本開示は、食品に焼き印を付する処理を連続的に行うことが可能となり、しかも、リード線の断線を防止することができる食品焼き印装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、並んで搬送される複数の食品それぞれに対して焼き印を付する食品焼き印装置であって、処理位置に搬送された前記食品に対して先端面を接触させて焼き印を付するための金属製のヘッドと、前記ヘッドを、前記処理位置にある前記食品から前記先端面が離れた第一位置と当該食品に前記先端面が接触可能となる第二位置との間を、往復移動させるアクチュエータと、固定状態にあり前記ヘッドを誘導加熱するためのコイルと、前記コイルと電力供給用のリード線を通じて電気的に繋がり当該コイルに交流電流を与える電源装置と、前記ヘッドの温度を検出するためのセンサと、前記センサの検出結果に基づいて前記電源装置を制御する制御ユニットと、を備える。
【0008】
前記食品焼き印装置によれば、コイルによってヘッドが誘導加熱され、ヘッドが第二位置から第一位置に移動することでヘッドの先端面が、処理位置にある食品に接触し、この食品に焼き印を付することができる。センサによりヘッドの温度が検出され、検出結果に基づいて電源装置が制御されるので、食品に所望の焼き色の焼き印を付することができる。ヘッドの先端面が食品に接触すると、ヘッドの熱が食品に奪われ、ヘッドの温度が低下する。しかし、ヘッドの加熱が誘導加熱によるため、ヘッドを迅速に昇温させることができる。この結果、食品に焼き印を付する処理を連続的にかつ高速で行うことが可能となり、生産性が高い。そして、固定状態にあるコイルに対してヘッドが移動するので、電源装置からコイルに延びる電力供給用のリード線は移動せず、リード線の断線を防止することができる。
【0009】
また、好ましくは、前記制御ユニットは、前記食品に前記ヘッドを接触させて焼き印を付するための設定として、前記ヘッドの温度が第一温度であり当該ヘッドを前記食品に接触させる時間が第一時間である第一設定と、前記ヘッドの温度が前記第一温度よりも低い第二温度であり当該ヘッドを前記食品に接触させる時間が前記第一時間よりも短い第二時間である第二設定と、を有する。
この構成によれば、条件に応じて第一設定と第二設定とを使い分けて、所望の濃さの焼き印を食品に付することが可能となる。
【0010】
焼き印を付けるためにヘッドの先端面が食品に接触すると、ヘッドの熱が食品に奪われ、ヘッドの温度が低下する。前記のとおりヘッドは誘導加熱によって加熱されることから、ヘッドを迅速に設定温度に昇温させることができる。次に焼き印を付する処理(焼き印処理)を行う対象となる食品が処理位置に搬送されるまでの時間が、長くなると、ヘッド全体の蓄熱の影響によって、当該食品には、焦げ付いたような濃い焼き印が付される場合がある。
【0011】
そこで、更に好ましくは、前記制御ユニットは、次に焼き印処理する対象となる食品が前記処理位置に搬送されるまでの時間が、閾値よりも長い場合、当該食品に焼き印を付するための設定として、前記第二設定を選択する。
この場合、第二設定では、第一設定と比較して、ヘッドの温度が低く、更に、ヘッドを食品に接触させる時間が短い。このため、次に焼き印処理する対象となる食品が処理位置に搬送されるまでの時間が長い場合であっても、その食品に対して、焦げ付いたような濃い焼き印が付されるのを防ぐことが可能となる。
【0012】
また、更に好ましくは、前記制御ユニットは、焼き印を付するための設定として、前記第二設定が選択された後、その次に焼き印処理する対象となる食品が前記処理位置に搬送されるまでの時間が、閾値以下である場合、焼き印を付するための設定を、当該第二設定から前記第一設定に変更する。
これにより、第二設定が選択された後、その次に焼き印処理する対象となる食品が処理位置に搬送されるまでの時間が、閾値以下である場合、第一設定に変更することで、次の食品の焼き印が薄くなってしまうのを防ぐことが可能となる。
【0013】
前記アクチュエータによってヘッドが往復移動する方向が例えば上下方向である場合、食品の上面に焼き印を付することができる。しかし、例えば、焼き印を食品の上面ではなく側面に付することが要求される場合がある。そのために、好ましくは、前記食品焼き印装置は、前記ヘッドが前記第一位置と前記第二位置との間を往復移動する方向を変更させるための角度変更機構を、更に備える。
この構成によれば、食品焼き印装置を改造しなくても、食品の別の面に焼き印を付することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の食品焼き印装置によれば、食品に焼き印を付する処理を連続的に行うことが可能となり、しかも、リード線の断線を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】コイル、電源装置、センサ、及び、制御ユニットを説明するためのブロック図である。
【
図3】ヘッドの位置の時間変化の一例を示すタイムチャートである。
【
図4】
図1に示す食品焼き印装置を、その右側から見た図である。
【
図5】食品に焼き印を付する従来の装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、食品焼き印装置の一例を示す説明図である。食品焼き印装置10は、コンベア28によって並んで搬送される複数の食品7それぞれに対して焼き印を付する装置である。本開示では、焼き印を付する対象となる食品7は、蒸し中華まんじゅうである。蒸し中華まんじゅうの製造工程において、その一部の表面に焼き印が付される。なお、食品7の他の例としては、卵焼き、和菓子等が挙げられる。食品焼き印装置10は、ヘッド12、アクチュエータ14、コイル16、電源装置18、センサ22、及び、制御ユニット24を備える。
【0017】
ヘッド12は、磁性体であり、柱状の金属製部材(炭素鋼)により構成されている。ヘッド12は、処理位置Qに搬送された食品7に対して、その先端面(本開示では下端面)13を接触させて焼き印を付する。ヘッド12は、アーム部材30に取付けられている。アーム部材30は、装置フレーム32が有するガイド34に、直線移動可能に取付けられている。ヘッド12はアーム部材30と共に、直線移動可能となる。
図1に示す形態では、ヘッド12及びアーム部材30は、上下方向に移動可能となる。
【0018】
アクチュエータ14は、例えば、ボールねじ機構を有する直線アクチュエータ、又は、エアシリンダ等により構成される。アクチュエータ14が有する本体部36は装置フレーム32に取付けられている。アクチュエータ14は、本体部36に対して前進及び後退するロッド38を有する。アクチュエータ14は、ロッド38の移動量(移動ストローク)を変更することができ、その移動量を所定の値に設定することができる。
【0019】
アクチュエータ14がボールねじ機構を有する場合、ボールねじ機構の正逆回転によってロッド38が前進後退する。ボールねじ機構の回転量に応じて、ロッド38の移動量を変更することができ、移動量を所定の値に設定することができる。ロッド38の移動量の変更及び設定は、制御ユニット24によって行われる。制御ユニット24において、移動量が設定入力されることで、ロッド38の移動量の変更及び設定が行われる。アクチュエータ14がエアシリンダにより構成されている場合、作動エアの供給排出によってロッド38が前進後退する。図示しないが、本体部36に設けられたストッパの位置変更により、ロッド38の移動量を変更することができ、移動量を所定の値に設定することができる。
【0020】
ロッド38の先端にアーム部材30が取付けられている。アクチュエータ14の動作によって、ヘッド12及びアーム部材30は、上下方向に移動する。アクチュエータ14は、ヘッド12を、第一位置P1と第二位置P2との間を往復移動させることができる。第一位置P1は、処理位置Qにある食品7から先端面13が離れた位置である。第二位置P2は、処理位置Qにある食品7に先端面13が接触可能となる位置である。
図1は、ヘッド12が第一位置P1にある状態を示す。アクチュエータ14の動作(伸縮動作)は、前記のとおり、制御ユニット24によって制御される。第一位置P1及び第二位置P2は、食品7の大きさに応じて変更される。
【0021】
コイル16は、コイルカバー40に収容されている。コイルカバー40は装置フレーム32に取付けられている。装置フレーム32に対して、ヘッド12は直線移動可能であるのに対して、コイル16は固定状態にある。コイル16は、円筒形状であり、その中央にヘッド12が設けられている。コイル16とヘッド12とは、両者の中心線が一致した状態となって配置される。電源装置18からリード線20を通じて供給される電力によって、コイル16はヘッド12を誘導加熱する。ヘッド12は、第二位置P2にある状態で、コイル16(コイルカバー40)の端面(下面)から処理位置Q側へ突出する。
【0022】
図2は、コイル16、電源装置18、センサ22、及び、制御ユニット24を説明するためのブロック図である。センサ22は、例えば赤外線温度センサであり、ヘッド12の温度(表面温度)を非接触で検出する。センサ22の検出結果は、制御ユニット24に出力される。制御ユニット24は、センサ22の検出結果に基づいて、ヘッド12の温度を管理する。制御ユニット24は、コンピュータ装置により構成されている。ヘッド12において、センサ22による温度の測定対象位置は、処理位置Q側の端部である。
【0023】
電源装置18は、インバータ(IHインバータ)42を有する。インバータ42は、電源41の電力を、所定周波数の高周波電力に変換し、コイル16に与える。制御ユニット24には、インターフェース(IHインターフェース)44を介して、インバータ42が接続されている。制御ユニット24は、センサ22の検出結果に基づいて電源装置18(インバータ42)を制御し、コイル16の出力を調整する。制御ユニット24は、ヘッド12の温度が目標温度となるように制御(フィードバック制御)する。以上のように、電源装置18は、コイル16と電力供給用のリード線20を通じて電気的に繋がっていて、コイル16に交流電流を与える。
【0024】
食品焼き印装置10は、更に、処理位置Qにおける食品7の存在(有無)を判定するための第二のセンサ46を備える。第二のセンサ46は、非接触のセンサであり、例えば、発光素子及び受光素子を含む光センサである。コンベア28の搬送によって処理位置Qに食品7が到達すると、第二のセンサ46はこの食品7を検出し、その情報を制御ユニット24に与える。制御ユニット24は、処理位置Qにおける食品7の有無に応じて、アクチュエータ14を動作させる。制御ユニット24は、第二のセンサ46からの情報に基づいて、処理位置Qに食品7が有ると判定すると、アクチュエータ14を動作させて、第一位置P1(
図1参照)にある予め加熱されたヘッド12を第二位置P2へ移動させる。これにより、処理位置Qにある食品7に焼き印を付することができる。
【0025】
コンベア28上に、間隔をあけて複数の食品7が並べて載せられている。このため、コンベア28により、食品7は、処理位置Qに間欠的に搬入される。処理位置Qに食品7が搬入されると、コンベア28は所定時間について搬送を停止する。この間に、処理位置Qの食品7に焼き印が付される。そして、コンベア28は、搬送を再開し、焼き印が付された食品7を処理位置Qから搬出し、次の食品7を処理位置Qへ搬入する。
【0026】
ヘッド12が第二位置P2にあって先端面13が食品7に接触している間、コイル16によってヘッド12の温度が、後述するように「第一設定」として設定されている温度又は「第二設定」として設定されている温度に維持されるように電源装置18は制御される。また、この接触の時間が、後述するように「第一設定」として設定されている時間又は「第二設定」として設定されている時間となるようにアクチュエータ14の動作は制御される。
【0027】
すなわち、第二位置P2にあるヘッド12の先端面13が食品7に接触する時間、及びこの際のヘッド12の温度の設定には「第一設定」と「第二設定」とが含まれ、制御ユニット24によって、択一的に選択される。このために、制御ユニット24(制御ユニット24に記憶されているプログラム)には、食品7にヘッド12を接触させて焼き印を付するための設定として、第一設定と第二設定とが設けられていて、制御ユニット24は、第一設定と第二設定とを択一的に選択して実行する。
【0028】
制御ユニット24は、更にタイマー機能を有する。制御ユニット24は、第二のセンサ46からの情報を取得することで、処理位置Qの食品7を検出可能である。そこで、制御ユニット24は、処理位置Qにある焼き印が付された食品7の搬出開始から、焼き印が未だである次の食品7が処理位置Qに搬入されるまでの時間を計測する。このように、制御ユニット24は、次に焼き印処理する対象となる食品7が処理位置Qに搬送されるまでの時間を計測することができる。以下において、処理位置Qにある焼き印が付された食品7の搬出開始から、次に焼き印処理する対象となる食品7が処理位置Qに搬送されるまでの時間を「計測時間」と称する。
【0029】
制御ユニット24は、計測時間に応じて、下記に説明する第一設定と第二設定とのいずれか一方を選択して、処理位置Qにある食品7に焼き印を付する処理を行う。
「第一設定」:ヘッド12の温度が第一温度であり、ヘッド12を食品7に接触させる時間が第一時間である設定。
「第二設定」:ヘッド12の温度が第一温度よりも低い第二温度であり、ヘッド12を食品7に接触させる時間が第一時間よりも短い第二時間である設定。
【0030】
つまり、処理位置Qにある食品7に接触させるヘッド12の温度に関して、第一設定よりも第二設定が低く、かつ、この接触させる時間に関して、第一設定よりも第二設定が短い。第一温度の例は400℃であり、第二温度の例は380℃である。第一時間の例は0.5秒であり、第二時間の例は0.35秒である。本開示では、通常時、第一設定が採用され、例外時に第二設定が採用される。そこで、第一設定が「通常設定」と称され、第二設定が「先頭設定」と称される。
【0031】
制御ユニット24には、計測時間に関する閾値が設定されている。制御ユニット24は、計測時間と閾値との比較を行う。制御ユニット24は、前記比較の結果に応じて、食品7にヘッド12を接触させて焼き印を付するための設定として、第一設定及び第二設定を択一的に選択する。
【0032】
前記閾値の例として1.5秒である。閾値は、例えば、食品7が処理位置Qに搬送されるサイクルタイム(設計値)よりも大きく、かつ、このサイクルタイムの2倍以下に設定される。なお、前記サイクルタイム(設計値)は、コンベア28によって均等の間隔で食品7が並んで搬送されるという理想状の条件での値である。例えば、サイクルタイム(設計値)は0.8秒である。なお、実際は、コンベア28上に不等間隔で食品7が並んで搬送される。
【0033】
食品焼き印装置10が食品7に焼き印を付する処理の具体例を説明する。
図3は、ヘッド12の位置(第一位置P1及び第二位置P2)の時間変化の一例を示すタイムチャートである。処理位置Qに食品が存在しない初期状態(時刻t0)では、ヘッド12は第一位置P1(
図1参照)にある。制御ユニット24は、計測時間のカウントを行っている。処理位置Qに、最初の食品7が搬入される。計測時間は、前記閾値を超えているため、最初の食品7に焼き印を付するための設定として、第二設定(先頭設定)が選択される。
【0034】
制御ユニット24は、ヘッド12の温度を目標温度で一定となるように制御する。第二設定が選択されると、制御ユニット24は、ヘッド12の目標温度が第二温度となる制御を行い、ヘッド12を第二位置P2とし、先端面13を最初の食品7に接触させる(時刻t1)。そして、接触時間を第二時間ΔT2とし、経過後、ヘッド12を第一位置P1に戻す(時刻t2)。最初の食品7の場合のように、計測時間が長くなると、ヘッド12全体の蓄熱の影響によって、最初の食品7には、焦げ付いたような濃い焼き印が付される可能性がある。しかし、前記のように、第二設定とすることで、これを防ぐことができ、所望の濃さの焼き印が付される。
【0035】
2番目の食品7が処理位置Qに搬入されるまでの計測時間を、制御ユニット24が取得する。
図3の場合、この計測時間は、時刻t2から時刻t3の直前までの時間である。制御ユニット24は、この計測時間と閾値とを比較する。本開示では、計測時間が閾値以下である。このため、2番目の食品7に焼き印を付するための設定として、第一設定(通常設定)が選択される。第一設定が選択されると、制御ユニット24は、ヘッド12の目標温度が第一温度となる制御を行い、ヘッド12を第二位置P2とし、先端面13を2番目の食品7に接触させる(時刻t3)。そして、接触時間を第一時間ΔT1とし、経過後、ヘッド12を第一位置P1に戻す(時刻t4)。
【0036】
3番目の食品7が処理位置Qに搬入されるまでの計測時間を、制御ユニット24が取得する。
図3の場合、この計測時間は、時刻t4から時刻t5の直前までの時間である。制御ユニット24は、この計測時間と閾値とを比較する。本開示では、計測時間が閾値以下である。このため、3番目の食品7に焼き印を付するための設定として、そのまま第一設定(通常設定)が維持される。第一設定の場合、制御ユニット24は、ヘッド12の目標温度が第一温度となる制御を行い、ヘッド12を第二位置P2とし、先端面13を2番目の食品7に接触させる(時刻t5)。そして、接触時間を第一時間ΔT1とし、経過後、ヘッド12を第一位置P1に戻す(時刻t6)。
【0037】
4番目の食品7は、2番目及び3番目と比較して、少し遅れて処理位置Qに搬入されている(時刻t7)。このため、時刻t6から時刻t7の直前までの時間が、長くなる。制御ユニット24は、、時刻t6から時刻t7までの時間、つまり、計測時間を取得している。制御ユニット24は、この計測時間と閾値とを比較する。4番目の食品7は遅れていて、計測時間が閾値を超える。このため、4番目の食品7に焼き印を付するための設定として、第二設定が選択される。第二設定が選択されると、制御ユニット24は、ヘッド12の目標温度が第二温度となる制御を行い、ヘッド12を第二位置P2とし、先端面13を4番目の食品7に接触させる(時刻t7)。そして、接触時間を第二時間ΔT2とし、経過後、ヘッド12を第一位置P1に戻す(時刻t8)。
【0038】
5番目の食品7が処理位置Qに搬入されるまでの計測時間を、制御ユニット24が取得する。
図3の場合、この計測時間は、時刻t8から時刻t9の直前までの時間である。制御ユニット24は、この計測時間と閾値とを比較する。本開示では、計測時間が閾値以下である。このため、5番目の食品7に焼き印を付するための設定として、第一設定(通常設定)が選択される。第一設定が選択されると、制御ユニット24は、ヘッド12の目標温度が第一温度となる制御を行い、ヘッド12を第二位置P2とし、先端面13を2番目の食品7に接触させる(時刻t9)。そして、接触時間を第一時間ΔT1とし、経過後、ヘッド12を第一位置P1に戻す(時刻t10)。
【0039】
前記のとおり、4番目の食品7のために、焼き印を付するための設定が、第一設定から第二設定に変更されていても、次の5番目の食品7が処理位置Qに搬送されるまでの時間(計測時間:時刻t8から時刻t9)が、閾値以下である場合、5番目の食品7のための焼き印を付するための設定が、第二設定から第一設定に復帰する。
【0040】
以上のように、本開示の食品焼き印装置10では、制御ユニット24は、食品7にヘッド12を接触させて焼き印を付するための設定として、第一設定と第二設定とを有する。このため、条件に応じて第一設定と第二設定とを使い分けて、所望の濃さの焼き印を食品7に付することが可能となる。より具体的に説明すると、次のとおりである。
【0041】
焼き印を付けるためにヘッド12の先端面13が食品7に接触すると、ヘッド12の熱が食品7に奪われ、ヘッド12の温度が低下する。前記のとおりヘッド12は誘導加熱によって加熱されることから、ヘッド12を迅速(瞬時)に設定温度(目標温度)に昇温させることができる。次に焼き印を付する処理を行う対象となる食品7が処理位置Qに搬送されるまでの時間が、長くなると、ヘッド12全体の蓄熱の影響によって、当該食品7には、焦げ付いたような濃い焼き印が付される場合がある。
【0042】
そこで、本開示の制御ユニット24は、前記計測時間が閾値よりも長い場合、食品7に焼き印を付するための設定として、第二設定を選択する。第二設定では、第一設定と比較して、ヘッド12の温度が低く、更に、ヘッド12を食品7に接触させる時間が短い。このため、次に焼き印処理する対象となる食品7が処理位置Qに搬送されるまでの時間が長い場合であっても、その食品7に対して、焦げ付いたような濃い焼き印が付されるのを防ぐことが可能となる。
【0043】
なお、仮にヘッド12を食品7に接触させる時間については変更しないで、焦げ付いたような濃い焼き印とならないように、ヘッド12の温度のみを(第二温度よりも)更に低下させてもよい。しかし、この場合、その次の食品7に対してヘッド12を接触させるまでの時間に、ヘッド12の温度を回復させることができなくなる可能性がある。この場合、次の食品7の焼き印が薄くなってしまう。このため、ヘッド12を食品7に接触させる時間については変更しないで、ヘッド12の温度のみを(第二温度よりも)更に低下させるよりも、前記のとおり、温度と時間との両者を変更するのが好ましい。
【0044】
また、仮にヘッド12の温度については変更しないで、焦げ付いたような濃い焼き印とならないように、ヘッド12を食品7に接触させる時間のみを(第二時間よりも)更に短くしてもよい。しかし、この場合、食品7が処理位置に搬送されるまでの時間が、閾値よりも長い場合、ヘッド12全体の蓄熱の影響によって、接触時間の合計が短くても、食品7との接触直後に、当該食品7に、焦げ付いたような濃い焼き印が付される場合がある。このため、ヘッド12の温度については変更しないで、ヘッド12を食品7に接触させる時間のみを(第二時間よりも)更に短くさせるよりも、前記のとおり、温度と時間との両者を変更するのが好ましい。
【0045】
また、本開示では、制御ユニット24は、焼き印を付するための設定として、(前記のとおり、4番目の食品7のために)第二設定が選択された後、その次に焼き印処理する対象となる食品7(5番目の食品7)が処理位置Qに搬送されるまでの時間(計測時間)が、閾値以下である場合、焼き印を付するための設定を、第二設定から第一設定に変更する。このように、第一設定が選択されることで、次の食品7(5番目の食品7)の焼き印が薄くなってしまうのを防ぐことが可能となる。
【0046】
以上より、本開示の食品焼き印装置10は、金属製のヘッド12、アクチュエータ14、コイル16、電源装置18、センサ22、及び、制御ユニット24を備える。ヘッド12は、処理位置Qに搬送された食品7に対して先端面13を接触させて焼き印を付するためのものである。アクチュエータ14は、ヘッド12を、処理位置Qにある食品7から先端面13が離れた第一位置P1と、この食品7に先端面13が接触可能となる第二位置P2との間を、往復移動させる。コイル16は、固定状態にありヘッド12を誘導加熱するために用いられる。電源装置18は、コイル16と電力供給用のリード線20を通じて電気的に繋がり、コイル16に交流電流を与える。センサ22は、ヘッド12の温度を検出するための検出器であり、制御ユニット24は、センサ22の検出結果に基づいて前記電源装置18を制御する。
【0047】
このような構成を備える食品焼き印装置10によれば、コイル16によってヘッド12が誘導加熱(非接触誘電加熱)され、ヘッド12が第二位置P2から第一位置P1に移動することでヘッド12の先端面13が、処理位置Qにある食品7に接触し、この食品7に焼き印を付することができる。センサ22によりヘッド12の温度が検出され、検出結果に基づいて電源装置18が制御されるので、食品7に所望の焼き色の焼き印を付することができる。ヘッド12の先端面13が食品7に接触すると、ヘッド12の熱が食品7に奪われ、ヘッド12の温度が低下する。しかし、ヘッド12の加熱が誘導加熱によるため、ヘッド12を迅速に昇温させることができる。この結果、食品7に焼き印を付する処理を連続的にかつ高速で行うことが可能となり、生産性が高い(例えば、8000個/時間)。そして、固定状態にあるコイル16に対してヘッド12が移動するので、電源装置18からコイル16に延びる電力供給用のリード線20は移動せず、リード線20の断線を防止することができる。
【0048】
図4は、
図1に示す食品焼き印装置10を、その右側から見た図(正面図)である。以上のとおり、コンベア28上の食品7の上面に焼き印を付する場合について説明した。しかし、例えば、食品7(蒸し中華まんじゅう)が、その上部に皮が絞られた部分を有する場合、側面に焼き印を付する必要がある。このために、食品7に対して、ヘッド12を斜めから接触させる。
【0049】
本開示の食品焼き印装置10は、コンベア28上の食品7の側面に焼き印を付することが可能である。このために、食品焼き印装置10は、装置フレーム32の角度を変更するための角度変更機構26を有する。その構成について具体的に説明する。なお、食品7の上面に焼き印を付する場合、ヘッド12の中心線Cは上下方向(鉛直方向)に沿う。
【0050】
食品焼き印装置10は、壁状のベース体50を更に備える。装置フレーム32は、その下部側を中心として揺動可能であり角度変更可能となってベース体50に取付けられている。装置フレーム32の角度が変更されることで、ヘッドの12の中心線Cを鉛直線に対して傾斜させることができる。このために、ベース体50には、円弧の長孔52が形成されている。
図4に示す正面視において、前記円弧の中心Aは、食品7の搬送面上の点、つまり、コンベア28上の点となる。
【0051】
装置フレーム32には、長孔52を貫通するボルト軸53と、このボルト軸53に螺合するナット54とを有する。ナット54が緩められた状態で、ボルト軸53は長孔52に沿って移動可能であり、装置フレーム32の角度を変更することができる。ナット54をボルト軸53に締め付けることで、装置フレーム32はベース体50に固定される。以上のように、角度変更機構26は、長孔52が形成され装置フレーム32を取付けているベース体50、並びに、装置フレーム32をベース体50に取り付けるため、長孔52を貫通するボルト軸53、及び、ボルト軸53に螺合するナット54を含む構成となる。
【0052】
以上のように、本開示の食品焼き印装置10は、角度変更機構26を更に備える。角度変更機構26は、ヘッド12の中心線Cの方向(鉛直面に対する角度)を変更することができる。角度変更機構26によれば、ヘッド12が第一位置P1と第二位置P2との間を往復移動する方向を変更することができる。角度変更機構26によれば、食品焼き印装置10を改造しなくても、食品7の別の面に焼き印を付することが可能となる。なお、角度変更機構26は、図示した構成以外であってもよい。
【0053】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
前記第一設定及び前記第二設定における温度及び時間は例示であり、食品7の種類によって変更可能である。
なお、焼き印は、文字及び/又は図形のみならず、焼き色を付するための焼き印であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
7:食品 10:食品焼き印装置 12:ヘッド
13:先端面 14:アクチュエータ 16:コイル
18:電源装置 20:リード線 22:センサ
24:制御ユニット 26:角度変更機構 P1:第一位置
P2:第二位置 Q:処理位置