IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジキンの特許一覧

特許7265251流体制御機器の動作分析システム、流体制御機器の動作分析方法、及びコンピュータプログラム
<>
  • 特許-流体制御機器の動作分析システム、流体制御機器の動作分析方法、及びコンピュータプログラム 図1
  • 特許-流体制御機器の動作分析システム、流体制御機器の動作分析方法、及びコンピュータプログラム 図2
  • 特許-流体制御機器の動作分析システム、流体制御機器の動作分析方法、及びコンピュータプログラム 図3
  • 特許-流体制御機器の動作分析システム、流体制御機器の動作分析方法、及びコンピュータプログラム 図4
  • 特許-流体制御機器の動作分析システム、流体制御機器の動作分析方法、及びコンピュータプログラム 図5
  • 特許-流体制御機器の動作分析システム、流体制御機器の動作分析方法、及びコンピュータプログラム 図6
  • 特許-流体制御機器の動作分析システム、流体制御機器の動作分析方法、及びコンピュータプログラム 図7
  • 特許-流体制御機器の動作分析システム、流体制御機器の動作分析方法、及びコンピュータプログラム 図8
  • 特許-流体制御機器の動作分析システム、流体制御機器の動作分析方法、及びコンピュータプログラム 図9
  • 特許-流体制御機器の動作分析システム、流体制御機器の動作分析方法、及びコンピュータプログラム 図10
  • 特許-流体制御機器の動作分析システム、流体制御機器の動作分析方法、及びコンピュータプログラム 図11
  • 特許-流体制御機器の動作分析システム、流体制御機器の動作分析方法、及びコンピュータプログラム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】流体制御機器の動作分析システム、流体制御機器の動作分析方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   F16K 37/00 20060101AFI20230419BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20230419BHJP
   G01M 3/00 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
F16K37/00 F
G05B23/02 T
G01M3/00 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019088963
(22)【出願日】2019-05-09
(65)【公開番号】P2020183799
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】丹野 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀信
(72)【発明者】
【氏名】中田 知宏
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168873(WO,A1)
【文献】特開2014-228115(JP,A)
【文献】特開2002-181221(JP,A)
【文献】特開2015-25502(JP,A)
【文献】特表2015-530652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 37/00
G05B 23/00-23/02
G01M 3/00- 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体制御機器の動作を分析するシステムであって、
前記流体制御機器と、前記流体制御機器から取得した情報に基づいてデータマイニングを実行する情報処理装置と、が情報伝達可能に構成され、
前記流体制御機器は、
前記流体制御機器の動作情報として、前記流体制御機器の開閉に伴うリフト量を取得する動作情報取得機構、を有し、
前記情報処理装置は、
前記リフト量と所定の閾値を比較することにより、前記流体制御機器のシート上の異物による異常と異常のパターンを判定する判定処理手段と、
前記流体制御機器の動作情報と異常判定結果を記憶する情報記憶手段と、
前記情報記憶手段を参照して、分析対象として、所定の動作情報を同一とする他の前記動作情報と前記判定結果に係る情報であって、前記流体制御機器の開閉状態が切り替わる前、及び後の所定時間における情報を、前記流体制御機器ごとに選択的に抽出する情報抽出手段と、
前記抽出された情報を対比することにより、前記流体制御機器の所定の動作と異常発生の相関関係を分析する相関関係分析手段と、を有する、
流体制御機器の動作分析システム。
【請求項2】
前記判定処理手段は少なくとも、
前記リフト量の経時的変化により、前記異常のパターンとして、前記シートへの一時的な異物の介在、前記シートへの異物のめり込み、あるいは前記シートへの異物の累積的な堆積、のいずれかを判定する、
請求項1記載の流体制御機器の動作分析システム。
【請求項3】
前記情報処理装置は、
前記相関関係分析手段による分析結果に基づき、前記情報記憶手段に記憶されている前記流体制御機器の動作情報を参照して、前記流体制御機器の異常発生確率を算出することにより、前記流体制御機器の異常を予期する異常予期手段、をさらに有する、
請求項1又は2記載の流体制御機器の動作分析システム。
【請求項4】
前記異常予期手段は、
教師あり学習により、前記動作情報が故障直前期間に特有の特徴を有しているか判別する第一の異常予期手段と、
正常動作時の前記動作情報を学習させたオートエンコーダにより、前記動作情報が通常動作状態にあるかどうかを判別する第二の異常予期手段と、を有する、
請求項3記載の流体制御機器の動作分析システム。
【請求項5】
前記流体制御機器は、前記流体制御機器の異常判定結果に基づき、異物を排出するためのパージガスを流路内に供給するパージガス供給手段、をさらに有する、
請求項1乃至4いずれかの項に記載の流体制御機器の動作分析システム。
【請求項6】
前記流体制御機器は、
開閉動作に応じて摺動するステムと、
ダイヤフラムの周縁を押さえる押えアダプタと、を有し、
前記動作情報取得機構は、前記押えアダプタに取り付けられ、前記ステムの所定の箇所との距離変化を検出する位置センサ、によって構成されている、
請求項1乃至5いずれかの項に記載の流体制御機器の動作分析システム。
【請求項7】
前記押えアダプタ近傍の所定の箇所に取り付けられた磁石、をさらに有し、
前記位置センサは、前記押えアダプタの内側であって、前記ステムに対向する面に取り付けられ、前記磁石との距離変化を検出する磁気センサからなる、
請求項6記載の流体制御機器の動作分析システム。
【請求項8】
前記位置センサの位置検出精度は±0.01mmから±0.001mmである、
請求項6又は7記載の流体制御機器の動作分析システム。
【請求項9】
流体制御機器の動作を分析する方法であって、
前記流体制御機器の動作情報として、前記流体制御機器の開閉に伴うリフト量を取得する動作情報取得機構、を有する前記流体制御機器と、
前記流体制御機器から取得した情報に基づいてデータマイニングを実行する情報処理装置と、が情報伝達可能に構成されたシステムにより、
前記リフト量と所定の閾値を比較することにより、前記流体制御機器のシート上の異物による異常と異常のパターンを判定する判定処理と、
前記流体制御機器の動作情報と異常判定結果を記憶する情報記憶手段を参照して、分析対象として、所定の動作情報を同一とする他の前記動作情報と前記判定結果に係る情報であって、前記流体制御機器の開閉状態が切り替わる前、及び後の所定時間における情報を、前記流体制御機器ごとに選択的に抽出する情報抽出処理と、
前記抽出された情報を対比することにより、前記流体制御機器の所定の動作と異常発生の相関関係を分析する相関関係分析処理と、を実行する、
流体制御機器の動作分析方法。
【請求項10】
流体制御機器の動作を分析するためのコンピュータプログラムであって、
前記流体制御機器の動作情報として、前記流体制御機器の開閉に伴うリフト量を取得する動作情報取得機構、を有する前記流体制御機器と、
前記流体制御機器から取得した情報に基づいてデータマイニングを実行する情報処理装置と、が情報伝達可能に構成されたシステムに対し、
前記リフト量と所定の閾値を比較することにより、前記流体制御機器のシート上の異物による異常と異常のパターンを判定する判定処理と、
前記流体制御機器の動作情報と異常判定結果を記憶する情報記憶手段を参照して、分析対象として、所定の動作情報を同一とする他の前記動作情報と前記判定結果に係る情報であって、前記流体制御機器の開閉状態が切り替わる前、及び後の所定時間における情報を、前記流体制御機器ごとに選択的に抽出する情報抽出処理と、
前記抽出された情報を対比することにより、前記流体制御機器の所定の動作と異常発生の相関関係を分析する相関関係分析処理と、を実行させる、
コンピュータプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御機器の動作を分析する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハの表面に薄膜を形成する成膜処理においては薄膜の微細化が求められ、近年では原子レベルや分子レベルの厚さで薄膜を形成するALD (Atomic Layer Deposition)という成膜方法が使われている。
しかし、そのような薄膜の微細化は流体制御機器に今まで以上の高頻度な開閉動作を要求しており、その負荷により流体の漏出等の異常を惹き起こしやすくなる場合がある。そのため、流体制御機器における異常を容易に検知できる技術への要求が高まっている。
【0003】
また、異常を容易に検知できるだけでなく、従来は考慮していなかった流体制御機器の使用頻度、温度、湿度、及び振動等、上記漏出を始めとして流体制御機器の異常に影響を及ぼす様々な環境要因情報を収集し、異常との相関を分析し、異常発生の予期に役立てることが可能な流体制御機器、及び情報収集方法の要求が高まっている。
【0004】
この点、特許文献1では、流体の流量を制御する制御器の外面に形成された孔とこの孔に取り付けられる漏れ検知部材とからなるシール部破損検知機構であって、前記孔は制御器内の空隙に連通し、前記漏れ検知部材は前記孔に取り付けられる筒状体とこの筒状体に設けられた可動部材とからなり、この可動部材は制御器内の前記空隙内に充満した漏出流体の圧力によって前記筒状体の外方へ可動とされてなるものが提案されている。
また、特許文献2では、流体の流量を制御する制御器の外面に形成された孔とこの孔に取付けられる漏洩検知部材とからなるシール部破損検知機構付制御器であって、前記孔は制御器内の空隙に連通し、前記漏洩検知部材は特定の流体の存在によって感応するものが提案されている。
さらに、特許文献3では、流体の漏れを検出する漏れ検出装置であって、センサ保持体と、漏れ検出対象部材に設けられて漏れ検出対象部材内の密封部分と外部とを連通するリークポートに対向するようにセンサ保持体に保持された超音波センサと、超音波センサのセンサ面とリークポートとの間に設けられた超音波通路と、超音波センサで得られた超音波を処理する処理回路とを備えているものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平04-093736号公報
【文献】特開平05-126669号公報
【文献】特開2014-21029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような半導体製造プロセスの高度化、複雑化の影響を受けて、流体供給ラインに搭載される流体制御機器にかかる負担は過酷になっており、メンテナンス頻度や製品寿命のサイクルも早くなっている。そのため、的確に流体制御機器の動作異常を判定し、さらには動作異常を予知できる方法が求められている。
【0007】
そこで本発明は、流体制御機器の動作異常を的確に判定すると共に、かかる動作異常を予知できるようにすることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る流体制御機器の動作分析システムは、流体制御機器の動作を分析するシステムであって、前記流体制御機器と、前記流体制御機器から取得した情報に基づいてデータマイニングを実行する情報処理装置と、が情報伝達可能に構成され、前記流体制御機器は、前記流体制御機器の動作情報として、前記流体制御機器の開閉に伴うリフト量を取得する動作情報取得機構、を有し、前記情報処理装置は、前記リフト量と所定の閾値を比較することにより、前記流体制御機器のシート上の異物による異常と異常のパターンを判定する判定処理手段と、前記流体制御機器の動作情報と異常判定結果を記憶する情報記憶手段と、前記情報記憶手段を参照して、分析対象として、所定の動作情報を同一とする他の前記動作情報と前記判定結果に係る情報であって、前記流体制御機器の開閉状態が切り替わる前、及び後の所定時間における情報を、前記流体制御機器ごとに選択的に抽出する情報抽出手段と、前記抽出された情報を対比することにより、前記流体制御機器の所定の動作と異常発生の相関関係を分析する相関関係分析手段と、を有する。
【0009】
また、前記情報処理装置は、前記相関関係分析手段による分析結果に基づき、前記情報記憶手段に記憶されている前記流体制御機器の動作情報を参照して、前記流体制御機器の異常発生確率を算出することにより、前記流体制御機器の異常を予期する異常予期手段、をさらに有するものとしてもよい。
【0010】
また、前記異常予期手段は、教師あり学習により、前記動作情報が故障直前期間に特有の特徴を有しているか判別する第一の異常予期手段と、正常動作時の前記動作情報を学習させたオートエンコーダにより、前記動作情報が通常動作状態にあるかどうかを判別する第二の異常予期手段と、を有するものとしてもよい。
【0011】
また、前記流体制御機器は、前記流体制御機器の異常判定結果に基づき、異物を排出するためのパージガスを流路内に供給するパージガス供給手段、をさらに有するものとしてもよい。
【0012】
また、前記流体制御機器は、開閉動作に応じて摺動するステムと、ダイヤフラムの周縁を押さえる押えアダプタと、を有し、前記動作情報取得機構は、前記押えアダプタに取り付けられ、前記ステムの所定の箇所との距離変化を検出する位置センサ、によって構成されているものとしてもよい。
【0013】
また、前記押えアダプタ近傍の所定の箇所に取り付けられた磁石、をさらに有し、前記位置センサは、前記押えアダプタの内側であって、前記ステムに対向する面に取り付けられ、前記磁石との距離変化を検出する磁気センサからなるものとしてもよい。
【0014】
また、前記位置センサの位置検出精度は±0.01mmから±0.001mmであるものとしてもよい。
【0015】
また、本発明の別の観点に係る流体制御機器の動作分析方法は、流体制御機器の動作を分析する方法であって、前記流体制御機器の動作情報として、前記流体制御機器の開閉に伴うリフト量を取得する動作情報取得機構、を有する前記流体制御機器と、前記流体制御機器から取得した情報に基づいてデータマイニングを実行する情報処理装置と、が情報伝達可能に構成されたシステムにより、前記リフト量と所定の閾値を比較することにより、前記流体制御機器のシート上の異物による異常と異常のパターンを判定する判定処理と、前記流体制御機器の動作情報と異常判定結果を記憶する情報記憶手段を参照して、分析対象として、所定の動作情報を同一とする他の前記動作情報と前記判定結果に係る情報であって、前記流体制御機器の開閉状態が切り替わる前、及び後の所定時間における情報を、前記流体制御機器ごとに選択的に抽出する情報抽出処理と、前記抽出された情報を対比することにより、前記流体制御機器の所定の動作と異常発生の相関関係を分析する相関関係分析処理と、を実行する。
【0016】
また、本発明のさらに別の観点に係るコンピュータプログラムは、流体制御機器の動作を分析するためのコンピュータプログラムであって、前記流体制御機器の動作情報として、前記流体制御機器の開閉に伴うリフト量を取得する動作情報取得機構、を有する前記流体制御機器と、前記流体制御機器から取得した情報に基づいてデータマイニングを実行する情報処理装置と、が情報伝達可能に構成されたシステムに対し、前記リフト量と所定の閾値を比較することにより、前記流体制御機器のシート上の異物による異常と異常のパターンを判定する判定処理と、前記流体制御機器の動作情報と異常判定結果を記憶する情報記憶手段を参照して、分析対象として、所定の動作情報を同一とする他の前記動作情報と前記判定結果に係る情報であって、前記流体制御機器の開閉状態が切り替わる前、及び後の所定時間における情報を、前記流体制御機器ごとに選択的に抽出する情報抽出処理と、前記抽出された情報を対比することにより、前記流体制御機器の所定の動作と異常発生の相関関係を分析する相関関係分析処理と、を実行させる。
なお、コンピュータプログラムは、コンピュータプログラム読取可能な各種の記録媒体に記録して提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、流体制御機器の動作異常を的確に判定すると共に、かかる動作異常を予知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る流体制御機器の動作分析システムにおいて、動作分析の対象となる流体制御機器を示した(a)外観斜視図、(b)平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る流体制御機器の動作分析システムにおいて、動作分析の対象となる流体制御機器の内部構造を示したA-A断面図であって、(a)弁閉状態、(b)弁開状態を示す。
図3】本発明の実施形態に係る流体制御機器の動作分析システムにおいて、動作分析の対象となる流体制御機器の内部構造を示したB-B断面図であって、(a)弁閉状態、(b)弁開状態を示す。
図4】本発明の実施形態に係る流体制御機器の動作分析システムにおいて、動作分析の対象となる流体制御装置を示した分解斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る流体制御機器の動作分析システムにおいて、動作分析の対象となる流体制御装置を示した分解斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る流体制御機器の動作分析システムにおいて、動作分析の対象となる流体制御装置を示した分解斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る流体制御機器の動作分析システムが備える機能を示した機能ブロック図である。
図8】本発明の実施形態に係る流体制御機器の動作分析システムにおいて、判定される異常のパターンの一例を示した模式図であり、(a)、(b)、(c)の順に時間経過を示している。
図9】本発明の実施形態に係る流体制御機器の動作分析システムにおいて、判定される異常のパターンの一例を示した模式図であり、(a)、(b)、(c)の順に時間経過を示している。
図10】本発明の実施形態に係る流体制御機器の動作分析システムにおいて、判定される異常のパターンの一例を示した模式図であり、(a)、(b)、(c)の順に時間経過を示している。
図11】本発明の実施形態に係る流体制御機器の動作分析システムにおいて、計測されるシートの高さと時間経過の関係を異常のパターンごとに示したグラフであり、(a)図8により示したパターン、(b)図9により示したパターン、(c)図10により示したパターン、に対応する。
図12】本発明の別の実施形態に係る流体制御機器の動作分析システムが備える機能を示した機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
●流体制御機器V
以下、本発明の実施形態に係る流体制御機器の動作分析システムについて、図を参照して説明する。
まず、本実施形態に係る流体制御機器の動作分析システムにおいて、動作分析の対象となる流体制御機器の一例について説明する。
図1に示される流体制御機器Vは、エア作動式のダイレクトダイヤフラムバルブであり、他の流体制御機器や流量制御装置等とガスユニットを構成して、プロセス流体を制御し、被処理体を処理する。この流体制御機器Vは、図1図3に示されるように、バルブボディ1、ボンネット部2、カバー部3、アクチュエータ部4を備える。
【0020】
バルブボディ1は図2及び図3に示されるように、流路が形成された基台部11と、基台部11上に設けられた略円筒形状の円筒部12とからなる。
基台部11は平面視矩形状からなり、複数の流体制御機器Vによってガスユニットを構成する場合には、基板あるいはマニホールドブロック上に設置される部分となる。
【0021】
円筒部12は図4に示されるように、ボンネット部2が配設される側の端面が開口した中空形状からなり、中空の内部はボンネット部2が収容される凹部12aを構成する。
この円筒部12には、軸心方向に長さを有し、ボンネット部2が配設される側であって基台部11とは反対側の一端が開口すると共に、外側から凹部12a側へ貫通したスリット12bが設けられている。このスリット12bを介して、ボンネットウォール25から延び出したフレキシブルケーブル26が内側から外側へ導出される。
【0022】
凹部12aの下方及び基台部11内には、流体が流入する流入路111と流体が流出する流出路113、及び当該流入路111と流出路113に連通する弁室212が形成されている。流入路111、流出路113、及び弁室212は、流体が流通する流路を一体的に構成している。
【0023】
環状のシート21は、弁室212における流入路111の開口部周縁に設けられている。シート21にダイヤフラム22を当接離反させることによって流入路111から流出路113へ流体を流通させたり、流通を遮断させたりすることができる。
【0024】
ダイヤフラム22は、ステンレス、Ni-Co系合金等の金属からなると共に、中心部が凸状に膨出した球殻状の部材であり、流路とアクチュエータ部4が動作する空間とを隔離している。このダイヤフラム22は、ダイヤフラム押え23により押圧されていない状態では、図2(b)及び図3(b)に示されるように、シート21から離反しており、流入路111と流出路113とが連通した状態となる。一方、ダイヤフラム押え23により押圧された状態では、図2(a)及び図3(a)に示されるように、ダイヤフラム22の中央部が変形してシート21に当接しており、流入路111と流出路113が遮断された状態となる。
【0025】
ダイヤフラム押え23は、ダイヤフラム22の上側に設けられ、ピストン43の上下動に連動してダイヤフラム22の中央部を押圧する。
このダイヤフラム押え23は、図5に示されるように、略円柱状の基体部231と、ダイヤフラム22に当接する側の一端側において拡径した拡径部232からなる。
【0026】
基体部231には、軸心方向に長さを有し、拡径部232とは反対側の一端が開口した有底の条溝231aが形成されている。この条溝231aには、ボンネットウォール25のネジ孔25cにねじ込まれたネジ25dの軸棒部分が摺動可能に嵌合する。条溝231aとネジ25dは、ダイヤフラム押え23の周方向の回動を規制する回動規制手段を構成し、これによりダイヤフラム押え23は、ピストン43に連動して上下動しつつも、周方向の回動を規制される。
【0027】
また、基体部231には、磁石M1が取り付けられている。この磁石M1は、本実施例では、基体部231の条溝231aの反対側に取り付けられているが、位置センサM2が磁石M1の磁力を検出するのに支障がなく、また、流体制御機器Vの動作に支障がない限り、基体部231上の他の位置に取り付けることもできる。
【0028】
ボンネット24は、略円筒状からなり、バルブボディ1の凹部12a内に収容される。
ダイヤフラム22の周縁はボンネット24の下端部とバルブボディ1との間に挟持されており、この部分でダイヤフラム22とバルブボディ1との間のシールが形成される。
ボンネット24の内部には、ダイヤフラム押え23が貫挿される貫挿孔241aが中心部に形成された略円盤状の仕切部241が設けられている。
仕切部241の上方ないしは、アクチュエータ部4が配設される側に形成される凹部24aには、ボンネットウォール25が収容される。仕切部241とボンネットウォール25には夫々、互いに対応する位置にネジ穴241bと貫通孔25eが設けられており、ボンネット24にボンネットウォール25がボルト75fによって螺設される。
【0029】
ボンネット24の仕切部241は、一定の厚みを有しており、仕切部241に形成されている貫挿孔241aの内周面とダイヤフラム押え23の間にはOリングO1が介装されている。これにより、仕切部241、ダイヤフラム22、及びダイヤフラム押え23によって画定される閉空間S2の気密性が確保されている。
また、ボンネット24の仕切部241には、ボンネットウォール25に取り付けられている圧力センサPに連通する連通孔241dが設けられている。連通孔241dを介して圧力センサPが設けられていることにより、仕切部241、ダイヤフラム22、及びダイヤフラム押え23によって画定された閉空間S2内の圧力を測定することができる。
【0030】
また、ボンネット24の側面には、内側に収容したボンネットウォール25から導出されたフレキシブルケーブル26を外側へ導出させるための貫通孔241cが設けられている。
【0031】
ボンネットウォール25は、ボンネット24内に配設される部材である。このボンネットウォール25は肉厚の略円盤状の部材を平面視略C字状に刳り貫いた形状からなる。このボンネットウォール25の中心には、ダイヤフラム押え23の基体部231を貫挿させる貫挿孔25aが設けられている。また、貫挿孔25aをボンネットウォール25の半径方向外側に向かって開口させる開口部25bが設けられている。
【0032】
ボンネットウォール25の厚み部分の所定の箇所には、貫挿孔25aから半径方向外側に向かってねじ切られたネジ孔25cが形成されている。このネジ孔25cには外側からネジ25dが螺合し、螺合したネジ25dの軸心部分は、貫挿孔25a側へ抜け出して、貫挿孔25aに貫挿されたダイヤフラム押え23の条溝231aに摺動可能に嵌合する。
【0033】
ボンネットウォール25には、ボンネット24のネジ穴241bに対応する位置に貫通孔25eが設けられている。ネジ穴241bと貫通孔25eには、ボンネット24の仕切部241上にボンネットウォール25が配設された状態でボルト75fが螺合し、これによりボンネット24にボンネットウォール25が固定される。
【0034】
ボンネットウォール25の外周面のうち、開口部25b近傍には、開口部25bを塞ぐように掛け渡して固定された平板状の位置センサM2が取り付けられている。この位置センサM2は、ダイヤフラム押え23に取り付けられた磁石M1との間の距離変化をセンシングする磁気センサであり、センシングにより、流体制御機器Vの開閉状態のみならず、開度を計測することができる。なお、ボンネットウォール25に取り付けられた位置センサM2は、流体制御機器Vの開閉操作に伴うピストン43やダイヤフラム押え23の上下動にかからず、所定の位置に固定されている。
【0035】
カバー部3は図6に示されるように、アクチュエータボディ41とバルブボディ1を挟圧して一体的に保持すると共に、回路基板27及び回路基板27に設けられたコネクタ28を流体制御機器Vに固定する固定手段を構成する。
このカバー部3は、カバー31と平板状のプレート32、33を備える。
【0036】
カバー31は、略U字状からなり、その内側にはアクチュエータボディ41とバルブボディ1の端部が嵌め込まれる。
カバー31の両側面には、アクチュエータボディ41が嵌め込まれる位置に対応してネジ孔31aが設けられている。これにより、バルブボディ1が内側にはめ込まれた状態でネジ孔31aにネジ31bを螺入させ、ネジ31bの先端をバルブボディ1に圧接させると、バルブボディ1をカバー31の内側に挟持することができる。
【0037】
また、カバー31の厚み部分には、ネジ穴31cが設けられている。このネジ穴31cに、ネジ31dがプレート32、33の貫通孔32b、33bを介して螺合することで、カバー31にプレート32、33が取り付けられる。
【0038】
プレート32、33は、カバー31の内側にアクチュエータボディ41とバルブボディ1の端部を嵌めた状態でカバー31とネジ止め固定され、固定された状態においては、カバー31との間にアクチュエータボディ41とバルブボディ1を挟圧保持する。
このプレート32の下方には、舌片状に切り欠いた切欠部32aが形成されており、フレキシブルケーブル26はこの切欠部32aを介して、コネクタ28が設けられた回路基板27へ導出される。
【0039】
プレート33は、プレート32との間に回路基板27を介装させた状態でプレート32及びカバー31にネジ止め固定され、プレート32との間に回路基板27を挟圧保持する。
このプレート33には、中央部に略矩形状の貫通孔33aが設けられており、回路基板27に設けられたコネクタ28はこの貫通孔33aから外側へ抜け出る。
【0040】
ここで、基台部11が平面視矩形状からなるところ、カバー部3は図1(b)に示されるように、コネクタ28を矩形状の基台部11の対角線方向に向けて流体制御機器Vに固定している。このような向きにコネクタ28を固定するのは以下の理由による。即ち、複数の流体制御機器Vによってガスユニットを構成する場合には、集積化の要請から、隣り合う矩形状の基台部11の向きを揃えてできる限り隙間をなくし、基盤あるいはマニホールドブロック上に流体制御機器Vを配設するのが好適である。他方、このように配設して集積させた場合には、コネクタ28に端子等を接続しにくくなる。そのため、コネクタ28を基台部11の対角線方向に向けることで、真横に配設されている流体制御機器Vの方に向ける場合と比べ、接続するスペースを広く取ることができる。その結果、コネクタ28に端子等を接続するのが容易であるし、端子等の折れや撚れによる断線等の不具合を防いだり、端子等が流体制御機器Vに当たって流体制御機器Vの動作に異常をもたらすといった不具合を防ぐこともできる。
【0041】
アクチュエータ部4は、ボンネット部2上に配設される。
このアクチュエータ部4は図4に示されるように、アクチュエータボディ41、アクチュエータキャップ42、ピストン43、バネ44を備える。なお、図4においては、アクチュエータ部4の内部構造を省略しているが、内部構造は図2及び図3に示されるとおりである。
【0042】
アクチュエータボディ41は、ピストン43とボンネット24の間に介装される。
このアクチュエータボディ41は図4に示されるように略円柱形状からなり、中心部には、ピストン43とダイヤフラム押え23が貫挿される貫挿孔41aが長さ方向に沿って設けられている。図2及び図3に示されるように、貫挿孔41a内ではピストン43とダイヤフラム押え23が当接しており、ダイヤフラム押え23はピストン43の上下動に連動して上下動する。
【0043】
ピストン43が配設される側の上端面には、環状の突条からなる周壁411が形成されており、周壁411の内側の平坦な水平面とピストン43の拡径部431の下端面との間には、駆動圧が導入される駆動圧導入室S1が形成される。
【0044】
また、アクチュエータボディ41のピストン43が配設される側の外周面上には、雄ネジが切られており、アクチュエータキャップ42の内周面に切られた雌ネジと螺合することにより、アクチュエータボディ41はアクチュエータキャップ42の一端に取り付けられる。
【0045】
アクチュエータボディ41の長さ方向の中心部は、断面視略六角形状に形成されており、当該断面視六角形状の部分とバルブボディ1の上端部分は、カバー31によって一体的に挟圧される。
【0046】
アクチュエータキャップ42は、下端部が開口したキャップ状の部材であり、内部にピストン43とバネ44を収容している。
アクチュエータキャップ42の上端面には、ピストン43の駆動圧導入路432に連通する開口部42aが設けられている。
アクチュエータキャップ42の下端部は、アクチュエータボディ41の上部が螺合して閉止されている。
【0047】
ピストン43は、駆動圧の供給と停止に応じて上下動し、ダイヤフラム押え23を介してダイヤフラム22をシート21に当接離反させる。
このピストン43の軸心方向略中央は円盤状に拡径しており、当該箇所は拡径部431を構成している。ピストン43は、拡径部431の上面側においてバネ44の付勢力を受ける。また、拡径部431の下端側には、駆動圧が供給される駆動圧導入室S1が形成される。
【0048】
また、ピストン43の内部には、上端面に形成された開口部93aと、拡径部431の下端側に形成される駆動圧導入室S1とを連通させるための駆動圧導入路432が設けられている。ピストン43の開口部93aはアクチュエータキャップ42の開口部42aまで連通しており、外部から駆動圧を導入するための導入管が開口部42aに接続され、これにより駆動圧導入室S1に駆動圧が供給される。
【0049】
ピストン43の拡径部431の外周面上には、OリングO21が取り付けられており、このOリングO21はピストン43の拡径部431の外周面とアクチュエータボディ41の周壁411の間をシールしている。また、ピストン43の下端側にもOリングO22が取り付けられており、このOリングO22はピストン43の外周面とアクチュエータボディ41の貫挿孔41aの内周面の間をシールしている。これらのOリングO21、O22により、ピストン43内の駆動圧導入路432に連通する駆動圧導入室S1が形成されると共に、この駆動圧導入室S1の気密性が確保されている。
【0050】
バネ44は、ピストン43の外周面上に巻回されており、ピストン43の拡径部431の上面に当接してピストン43を下方、即ちダイヤフラム22を押下する方向に付勢している。
【0051】
ここで、駆動圧の供給と停止に伴う弁の開閉動作について言及する。開口部42aに接続された導入管(図示省略)からエアが供給されると、エアはピストン43内の駆動圧導入路432を介して駆動圧導入室S1に導入される。これに応じて、ピストン43はバネ44の付勢力に抗して上方に押し上げられる。これにより、ダイヤフラム22がシート21から離反して開弁した状態となり、流体が流通する。
一方、駆動圧導入室S1にエアが導入されなくなると、ピストン43がバネ44の付勢力に従って下方に押し下げられる。これにより、ダイヤフラム22がシート21に当接して閉弁した状態となって、流体の流通が遮断される。
【0052】
流体制御機器Vは、機器内の動作情報を取得する動作情報取得機構として、圧力センサPと、位置センサM2を備えている。
圧力センサPは図3に示されるように、ボンネットウォール25の下面、ないしは流路側に取り付けられており、連通孔241dを介して、ダイヤフラム22、ボンネット24の仕切部241、及びダイヤフラム押え23によって画定された閉空間S2に連通している。この圧力センサPは、圧力変化を検出する感圧素子や、感圧素子によって検出された圧力の検出値を電気信号に変換する変換素子等によって構成される。これにより圧力センサPは、ダイヤフラム22、ボンネット24の仕切部241、及びダイヤフラム押え23によって画定された閉空間S2内の圧力を検出することができる。
なお、圧力センサPが連通孔241dに通じる箇所にはパッキン29が介装されており、気密状態が担保されている。
なお、圧力センサPは、ゲージ圧あるいは大気圧のいずれを検出するものでもよい。
【0053】
位置センサM2は、ダイヤフラム押え23に取り付けられた磁石M1との間の距離変化をセンシングすることにより、流体制御機器Vの開閉状態を把握するのみならず、リフト量を計測することができる。
この位置センサM2によって以下の通り、弁の開閉動作検知することができる。即ち、磁石M1がダイヤフラム押え23の上下動に応じて上下動するのに対し、位置センサM2はボンネットウォール25及びボンネット24と共にバルブボディ1内に固定されている。この結果、ダイヤフラム押え23の上下動に従って上下動する磁石M1と、位置が固定されている位置センサM2との間に発生する磁界の変化に基づき、ダイヤフラム押え23の動作、ひいては弁の開閉動作を検知したり、リフト量を計測することができる。
【0054】
なお、位置センサM2には各種のものを用いることができるが、その一例に係る位置センサM2は平面コイル、発振回路、及び積算回路を有しており、対向する位置にある磁石M1との距離変化に応じて発振周波数が変化する。そして、この周波数を積算回路で変換して積算値を求めることにより、流体制御機器Vの開閉状態と共に、リフト量を計測することができる。
【0055】
なお、本実施形態では磁気センサからなる位置センサM2を用いたが、これに限らず、上述した位置センサM2と同様、ダイヤフラム押え23とボンネット24の位置関係、あるいはこれらの部材の所定の箇所同士の距離を測定することができる位置センサであれば、光学式の位置センサ等、他の種類のセンサを用いることもできる。
また、本実施形態に係る流体制御機器Vにおいても、位置センサM2を含む位置センサには、位置検出精度が±0.01mmから±0.001mmに収まるものを選定することが望ましい。当該半導体製造プロセス向けのバルブとしては微細な流体制御を実現するために±0.01mm程度の微細な開度制御が必要になる半面、±0.001mmを超える検出精度を用いるとバルブ近傍の真空ポンプ等が発生させる振動を検出しノイズを生じてしまうためである。
【0056】
圧力センサPと位置センサM2には夫々、可撓性を有する通信用のフレキシブルケーブル26の一端が接続しており、フレキシブルケーブル26の他端は、流体制御機器Vの外側に設けられた回路基板27に接続している。本例において、回路基板27には、情報の送受信を実行する処理モジュールが構成されており、これにより、コネクタ28に接続された外部端末に対し、圧力センサPや位置センサM2から取得した動作情報を送信することができる。
【0057】
なお、流体制御機器Vにおいて、フレキシブルケーブル26と回路基板27にはフレキシブル基板(FPC)が用いられ、フレキシブルケーブル26、回路基板27、及びコネクタ28は一体的に構成されている。フレキシブルケーブル26と回路基板27にフレキシブル基板を用いることにより、配線経路として部材間の隙間を利用することが可能になり、その結果、被覆線を用いる場合に比べて流体制御機器V自体を小型化することができる。
また、処理モジュールは回路基板27とは別に、流体制御機器V内に格納されていてもよいし、圧力センサP又は位置センサM2の一部として構成されていてもよい。
また、コネクタ28の種類や形状は、各種の規格に応じて適宜に設計し得る。
【0058】
また、上述した圧力センサPや位置センサM2によって実現される動作情報取得機構としては他に、駆動圧を検出する駆動圧センサ、流路内の温度を測定する温度センサ、ピストン43あるいはダイヤフラム押え23の挙動を検知するリミットスイッチなどを設けることもできる。
【0059】
以上の流体制御機器Vでは、ピストン43とダイヤフラム押え23が別体で構成されているが、磁石M1はダイヤフラム押え23に取り付けられている。これにより、ダイヤフラム押え23の動作不良を判別することができる。即ち、通常であれば、弁開操作によってダイヤフラム押え23はピストン43に追随して上昇するが、弁閉時に弁室212が真空付近まで減圧されることでダイヤフラム22がシート21に吸着されることで、ピストン43が上昇したにもかかわらず、ダイヤフラム押え23がピストン43に追随せずにダイヤフラム22に当接したままとなる場合がある。この結果、ダイヤフラム22が流路を遮断したままになってしまう場合がある。しかし、このような場合でも、流体制御機器Vでは磁石M1がダイヤフラム押え23と連動しているため、位置センサM2による検出値から、ダイヤフラム押え23の動作を判別し、動作不良を判別することができる。
【0060】
なお、このようなダイヤフラム押え23の動作不良の判別は、位置センサM2が、流体制御機器Vの開閉動作に応じてピストン43やダイヤフラム押え23のように上下動しないダイヤフラム押え23に取り付けられていることで、ダイヤフラム押え23の相対的な動作を識別できるために可能となっている。したがって、ダイヤフラム押え23の動作を識別し、動作不良を判別可能とする点において、位置センサM2が取り付けられるべき部材は、流体制御機器Vの開閉動作にかかわらず所定の位置に固定されているものであればよい。
【0061】
以上のような流体制御機器Vは、図7に示されるように、所定のネットワークを介して、他の端末あるいは装置と情報の伝達を可能とするための通信処理部51を備えており、これによりネットワークNW1、NW2を介して情報処理装置7と情報伝達可能に構成されている。
通信処理部51は、情報処理装置7に対し、圧力センサPや位置センサM2によって取得されたデータを送信する。この例では、流体制御機器Vと情報処理装置7との間に中継装置6が設けられており、当該中継装置6を介して、流体制御機器Vからの情報が情報処理装置7に提供される。
【0062】
具体的に、通信処理部51によって送信されるデータは例えば、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信、あるいはZigbee(登録商標)といった無線通信によって実現されるネットワークNW1を経由して一旦、中継装置6に送信され、中継装置6から無線あるいは有線のLAN等によって実現されるネットワークNW2を介して情報処理装置7に送信される。
【0063】
また、この通信処理部51は、各センサによって計測されたデータを1時間や1日等の任意に設定された所定の周期で送信することができる。このように所定の周期で情報の送信を行う場合には、消費電力を抑えることができる。
【0064】
●情報処理装置
情報処理装置7は、流体制御機器Vから取得した動作情報に基づいて異常の有無を判定すると共に、収集した動作情報や異常の判定結果に基づく動作分析、所謂データマイニングを行う装置である。
この情報処理装置7は、CPU(Central Processing Unit)、CPUが実行するコンピュータプログラム、コンピュータプログラムや所定のデータを記憶するRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、及びハードディスクドライブなどの外部記憶装置等のハードウェア資源によって構成され、これにより、判定処理部71、情報記憶部72、情報抽出部73、相関関係分析部74、異常予期部75、及び通信処理部76を備える。
【0065】
なお、流体制御機器Vの動作の分析のためには、圧力センサPや位置センサM2から得られる動作情報のみならず、流体制御機器Vの使用期間、流体制御機器Vの外部環境の温度や湿度、ピストン43の推力、ピストン43の平均移動速度、振動、流体制御機器Vを構成する部材の内部応力や硬度などの情報を取得できるように構成されているとよい。
【0066】
また、この情報処理装置7は、他の端末や装置等と所定のネットワークを介したデータの送受信を可能とする通信処理部76により、中継装置6を介して、流体制御機器Vから各種のデータを受信することができる。なお、情報処理装置7が流体制御機器Vから受信した情報や、情報処理装置7において処理された情報は適宜、流体制御機器Vの監視者等が利用する端末からの求めに応じて、当該監視者等が利用する端末に提供することができる。
【0067】
中継装置6は、ネットワークNW1を介して流体制御機器Vからデータを受信すると共に、ネットワークNW2を介して当該受信したデータを情報処理装置7に対して送信する。
なお、上述した通り、ネットワークNW1は例えば、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信、あるいはZigbee(登録商標)といった無線通信であり、ネットワークNW2は例えば、有線あるいは無線のLAN等である。
また、本実施形態では、流体制御機器Vと情報処理装置7の間に中継装置6を介在させたが、流体制御機器Vと情報処理装置7とが直接、データ通信可能となるように構成することもできる。
【0068】
判定処理部71は、位置センサM2によって取得されたデータに基づき、流体制御機器Vの異常の有無を判定する処理を実行する機能部である。具体的には、位置センサM2と磁石M1の距離変化によって計測されたリフト量に基づき、参照用テーブル等に予め保持された所定の閾値と、計測されたリフト量とを比較することにより、一致あるいは所定の誤差の範囲内にあれば異常なしと判定でき、所定の誤差の範囲を超えて一致しない場合には、異常ありと判定できる。さらに、異常がある場合には、リフト量の経時的変化に基づき、当該異常のパターンを判定することができる。
【0069】
ここで判定される異常は、シート21が異物を噛み込むことによる開閉異常であるが、本実施形態で判定される具体的な開閉異常の態様には、図8図10に示されるように3パターンある。
図8は一のパターンを示しており、図8(a)及び図8(b)に示すように、閉弁操作によってダイヤフラム22がシート21に当接する際、異物Sがダイヤフラム22とシート21の間に挟み込まれ、さらには異物Sがダイヤラム22によってシート21にめり込む。一方で、図8(c)に示すように、この後の開弁動作に伴って異物Sはシート21から外れ、異物Sがダイヤフラム22とのシート21の間に一時的に介在した状態から正常な状態に戻る。
【0070】
このパターンでは、位置センサM2によって計測されるリフト量に基づき、閉弁時のシート21の高さが図11(a)に示されるように計測される。即ち、所定の時点tでは、異物Sがシート21にめり込んだ状態にあり、ダイヤフラム押え23のストロークの下端が、正常時における閉弁時の位置よりも一時的に高い位置にある。一方、所定の時点tの前後では、シート21に異物Sはめり込んでおらず、ダイヤフラム押え23のストロークの下端は、正常時における閉弁時の位置にある。
【0071】
図9は別のパターンを示しており、図9(a)及び図9(b)に示すように、閉弁操作によってダイヤフラム22がシート21に当接する際、異物Sがダイヤフラム22とシート21の間に挟み込まれ、さらには異物Sがダイヤラム22によってシート21にめり込む。そして、図9(c)に示すように、この後の開弁動作によっても異物Sはシート21から外れず、繰り返される開閉動作に伴って、異物Sはシート21に深くめり込んでいく。
【0072】
このパターンでは、位置センサM2によって計測されるリフト量に基づき、閉弁時のシートの高さが図11(b)に示されるように計測される。所定の時点tでは、異物Sがシート21にめり込んだ状態にあり、ダイヤフラム押え23のストロークの下端、即ちシート21の高さとみなされる位置は、正常時における閉弁時の位置よりも高い位置にある。所定の時点t以後、時間経過に伴って異物Sはさらに深くシート21へめり込み、ダイヤフラム押え23のストロークの下端は、徐々に正常時における閉弁時の位置に近づき、所定の時点tに至っては、異物Sが完全にシート21にめり込み、正常時における閉弁時の位置と同視し得る位置をとる。
【0073】
図10はさらに別のパターンを示しており、図10(a)及び図10(b)に示すように、閉弁操作によってダイヤフラム22がシート21に当接する際、異物Sがダイヤフラム22とシート21の間に挟み込まれる。そして、図10(c)に示すように、シート21にめり込んだ異物Sに他の異物Sがくっつくなどして、多くの異物Sが累積的に堆積していく。
【0074】
このパターンでは、位置センサM2によって計測されるリフト量に基づき、閉弁時のシート21の高さが図11(c)に示されるように計測される。所定の時点tでは、異物Sがシート21にめり込んだ状態にあり、ダイヤフラム押え23のストロークの下端、即ちシート21の高さとみなされる位置は、正常時における閉弁時の位置よりも高い位置にある。所定の時点t以後、時間経過に伴って異物は累積的に堆積し、ダイヤフラム押え23のストロークの下端は、さらに高い位置をとる。そして、所定の時点tに至っては、堆積した異物Sによってダイヤフラム押えが23上下動できず、ストロークの上端の位置をとるようになる。
【0075】
以上のような三つのパターンが考えられる異常について、図11(a)に示されるパターンでは、tの後は、流体制御機器Vは正常な状態にあるものとみなすことができるが、図11(b)に示されるパターンでは、t以後、シート21の高さだけに着目した場合には正常な高さに戻っているが、異物Sがシート21に深くめり込んでいると考えられ、異常な状態が継続しているとみなされる。異物Sがシート21に深くめり込んでいると、シート21の高さには異常は出ないが、ダイヤフラム22とシート21間に異物Sが介在することでシール性能への悪影響が懸念される。なお、図11(c)については、シート21の高さが正常な高さにないので、異常な状態が継続しているとみなされる。
異常の判定がなされた場合には適宜、流体制御機器Vの動作を停止し、機器の状態を確認することが求められる。
【0076】
なお、異常の判定処理では適宜、流体制御機器V内の温度や湿度などの情報に基づき、所定の閾値を補正する手段を設けてもよい。
【0077】
情報記憶部72は、流体制御機器Vから収集された動作情報と、流体制御機器Vの異常の判定結果を記憶する記憶部である。なお、この情報記憶部72には、動作情報と異常の判定結果のみならず、上述した異常のパターンや、時系列に沿った流体制御機器Vの動作や異常の有無に係る情報、とりわけ流体制御機器Vの開閉状態が切り替わる前、及び後の所定時間における動作や異常の有無に係る情報を記憶しておき、より的確な動作分析に資するようにするのがよい。
【0078】
情報抽出部73は、情報記憶部72を参照して、分析対象として、所定の動作情報を同一とする他の動作情報と異常判定結果に係る情報を、流体制御機器Vごとに選択的に抽出する。
例えば、複数の流体制御機器Vの動作情報について、同一の弁開閉回数(例:1000万回)における動作時間と当該動作時間における異常判定結果に係る情報を抽出する。
特に、流体制御機器Vの動作情報データのうち、圧力センサPや位置センサM2の変化から検出される、流体制御機器Vの開閉状態の切り替わる前、及び後の所定時間におけるデータを切り出して入力データとする。これは、流体制御機器Vの動作時の動的なセンサ測定値の変化を測定することが異常予期において有効であることを反映したものであり、入力データの次元数を削減して後述の学習の計算コストを減らすことができる。所定時間は、流体制御機器Vの開閉にかかる時間(駆動圧を導入し始めてから、流体制御機器Vが完全開になるまでの時間、と定義する。図15の2本の点線の間の時間がこの時間に相当する)の1倍~5倍の時間とすることで、必要な範囲のデータを無駄なく抽出することができる。また、流体制御機器Vから送信するデータを予めこの時間の範囲内に限定して送信することで、通信のデータ量を削減することができ、流体制御機器Vでの消費電力を抑制できる。
【0079】
相関関係分析部74は、情報抽出部73によって抽出された情報を対比することにより、流体制御機器Vの所定の動作と異常発生の相関関係を分析する
第一の学習では、異常が発生した流体制御機器Vの過去の動作情報を元に、異常が発生する前の所定の期間(以下、故障直前期間とする)の入力データと、異常発生後の入力データと、それ以前の正常動作時の入力データとを分類する教師あり学習を行う。この学習は、例えばニューラルネットワークのモデルに対して誤差逆伝搬法(Backpropagation)を用いた確率的勾配降下法(SGD:Stochastic Gradient Descent)によって行われる。
【0080】
故障直前期間の長さの設定によって、学習済みモデルの判別性能が異なり、ニューラルネットワークの層数やノード数などのハイパーパラメータと同様に、所定の期間の長さも調整すべきハイパーパラメータとなる。これらのハイパーパラメータの調整は例えば最適化アルゴリズムによって選定され、判別能力の高くなる値を選定することができる。一方、バルブユーザーの用途によっては別の故障直前期間の値を知りたい場合に対応し、故障直前期間として2種類以上の期間を用意してクラスタリングを行っても良い。また、故障の種類ごとに異なる分類を作成してもよく、所定期間内にどの故障が発生するか予期することができる。
【0081】
分析により、例えば、複数の流体制御機器Vの動作情報について、弁を1000万回、開閉するのに要した動作時間と、当該動作時間における異常の判定結果により、同じ1000万回の弁開閉回数であっても、それが3カ月でカウントされた回数であるか、3年でカウントされた回数であるかによって、異常の発生確率が異なるのかどうかを分析することができる。
【0082】
第二の学習では、データ数が少ない特殊な異常を事前検知するために、オートエンコーダを用いた教師なし学習を行う。オートエンコーダは、ニューラルネットワークで構成したモデルに対し、バルブが正常動作していた時の入力データを入力し、同じデータが出力されるように学習を行う。このニューラルネットワークの隠れ層の次元数を入力データや出力データの次元数よりも小さく設定することで、通常動作時の入力データのパターンに対してのみ適切に元のデータを再現できるオートエンコーダを学習させることができる。
【0083】
異常予期部75は、相関関係分析部74による分析結果に基づき、情報記憶部72に記憶されている流体制御機器Vの動作情報を参照して、流体制御機器Vの異常発生確率を算出することにより、流体制御機器Vの異常を予期する。
現在のセンサデータの測定値を入力として第一の学習により得られた学習済みモデルに分類を行わせることで、流体制御機器Vが故障直前期間に入っている確率を算出できる(第一の異常予期手段751)。この確率は読み方を変えると、所定の期間内に壊れるという異常発生確率である。
【0084】
また、第二の学習により得られたオートエンコーダに、現在のセンサから得られた入力データを通し、出力を元の入力と比較してL2ノルム等で入出力間距離を算出し所定の閾値と比較する(第二の異常予期手段752)。オートエンコーダは正常動作時のデータであれば元のデータを復元できるように構成されているが、異常動作時には正しく元のデータを復元できないため入力と出力の間に差が大きくなるため、閾値を超えていた場合には流体制御機器Vの異常を検知できる。この手法を前記の教師あり学習と併用することで、教師データとして用意されない明らかな外れ値の異常状態(例えば、センサの故障、作動温度の極端な変化など)を予め検出することができ、前述の故障直前期間の判定の信頼性を高めることができる。つまり、第一の学習における教師あり学習が、教師データのない領域に対してどのような挙動を示すか保証されないという問題に対してある程度の対処を行うことができる。流体制御機器Vはしばしばそれが搭載される装置の改造により、以前と全く異なる動作環境に置かれることがしばしばあり、再学習を行うべきかどうかの指標データとして用いることもできる。
【0085】
異常を予期することができれば、その情報を流体制御機器Vの管理者が利用する管理者端末等に対して通知したり、流体制御機器Vに対してその情報を通知すると共に、流体制御機器Vに設けた警告表示手段等により警告表示を行わせたりしてもよい。
【0086】
また、以上のデータマイニングによって異常発生を予期すると共に、さらにその予期情報と現実に発生した異常有無を比較較分析し、相関分析の精度を高めてもよい。
【0087】
なお、上述した実施形態では、情報処理装置7が判定処理部71を備える例について説明したが、流体制御機器Vが判定処理部71と同様の機能部を備えるように構成することもでき、その場合には例えば、図12に示すように、情報処理装置7は流体制御機器Vから動作情報や異常判定結果を収集する情報収集部77を設ける。即ち、情報収集部77は、通信処理部76により、流体制御機器Vに対して動作情報や異常判定結果の送信を要求し、かかる情報を収集し、情報処理装置7は当該収集した情報に基づいてデータマイニングを行う。
【0088】
なお、以上の実施形態において、流体制御機器Vにおける動作情報は、流体制御機器Vからのみならず、他の機器から収集されることがあってもよい。例えば、流体制御機器Vが設置されている場所の温度や湿度を計測する端末から収集したり、流体制御機器Vの管理者の管理者端末によって入力された情報を収集したりすることがあってもよい。
【0089】
また、流体制御機器Vには、判定処理部71による異常判定結果に基づき、シート21上の異物Sを排出するためのパージガスを流路内に供給するパージガス供給手段を設けてもよい。パージガスを流路内に供給した結果、リフト量から計測されるシート21の高さが正常時のものとなれば、異物Sが排除されたものとみなし、正常に処理を続行できる。
【0090】
また、流体制御機器Vには、上述した機能部に加えて、動作情報や異常判定結果を出力等するための他の機能部を設けてもよい。例えば、リフト量や異常判定結果を表示する液晶パネル等の情報表示部を設けてもよい。また、異常判定の結果を受けて、異常が発生した場合に発光するLED等の体警告表示部を設けてもよい。
【0091】
また、本発明の実施形態は上述した実施形態に限定されることはなく、当業者であれば、本発明の範囲を逸脱しない範囲において、構成、手段、あるいは機能の変更や追加等が種々、可能である。
【符号の説明】
【0092】
V 流体制御機器
1 バルブボディ
11 基台部
12 円筒部
2 ボンネット部
21 シート
22 ダイヤフラム
23 ダイヤフラム押え
24 ボンネット
25 ボンネットウォール
26 フレキシブルケーブル
27 回路基板
28 コネクタ
29 パッキン
3 カバー部
31 カバー
32 プレート
33 プレート
4 アクチュエータ部
41 アクチュエータボディ
42 アクチュエータキャップ
43 ピストン
44 バネ
51 通信処理部
6 中継装置
7 情報処理装置
71 判定処理部
72 情報記憶部
73 情報抽出部
74 相関関係分析部
75 異常予期部
751 第一の異常予期手段
752 第二の異常予期手段
76 通信処理部
77 情報収集部
M1 磁石
M2 位置センサ
P 圧力センサ
S1 駆動圧導入室
S2 閉空間

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12