IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ケアコムの特許一覧

特許7265254ナースコールシステムおよびナースコール装置
<>
  • 特許-ナースコールシステムおよびナースコール装置 図1
  • 特許-ナースコールシステムおよびナースコール装置 図2
  • 特許-ナースコールシステムおよびナースコール装置 図3
  • 特許-ナースコールシステムおよびナースコール装置 図4
  • 特許-ナースコールシステムおよびナースコール装置 図5
  • 特許-ナースコールシステムおよびナースコール装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】ナースコールシステムおよびナースコール装置
(51)【国際特許分類】
   H04M 9/00 20060101AFI20230419BHJP
   A61G 12/00 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
H04M9/00 F
A61G12/00 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019094975
(22)【出願日】2019-05-21
(65)【公開番号】P2020191512
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591253593
【氏名又は名称】株式会社ケアコム
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雄
(72)【発明者】
【氏名】植村 英史
(72)【発明者】
【氏名】武富 厚樹
【審査官】松原 徳久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0027289(US,A1)
【文献】特開2012-157436(JP,A)
【文献】特開2008-244791(JP,A)
【文献】特開2017-182310(JP,A)
【文献】特開2018-014065(JP,A)
【文献】特開2013-211727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G9/00-15/12
99/00
H04M3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナースコール子機と、上記ナースコール子機からの呼び出しを受けて報知動作を行うナースコール親機とを備えたナースコールシステムであって、
上記ナースコール子機は、
上記ナースコール親機の報知動作で使用される原語以外の外国語で用件の内容が表記された複数の用件ボタンと、
上記用件ボタンの押下に応じて呼出信号を送信する呼出信号送信部と、
上記用件ボタンの押下に応じて、押下された用件ボタンに対応する用件の内容を識別可能に表示させた表示状態にするとともに、上記ナースコール子機が設置される部屋内で行われる所定の復旧操作に応じて上記表示状態を解除するように制御する表示制御部と、
上記ナースコール子機が設置される部屋内で行われる所定の操作に応じて、上記表示制御部により識別可能に表示されている用件ボタンに対応する用件の内容を表す原語の合成音声を出力するための関連処理を実行する音声出力関連処理実行部とを備え、
上記ナースコール親機は、
上記呼出信号の受信に応じて所定の報知動作を行い、所定の応答操作に応じて上記報知動作を停止する報知処理部を備えた
ことを特徴とするナースコールシステム。
【請求項2】
上記音声出力関連処理実行部が上記関連処理を実行するトリガとなる上記所定の操作は、上記所定の復旧操作であることを特徴とする請求項1に記載のナースコールシステム。
【請求項3】
上記音声出力関連処理実行部が上記関連処理を実行するトリガとなる上記所定の操作は、上記所定の復旧操作とは別の操作であることを特徴とする請求項1に記載のナースコールシステム。
【請求項4】
上記ナースコール子機と上記ナースコール親機との間に設置される中継器を更に備え、
上記ナースコール子機の上記呼出信号送信部は、上記用件ボタンの押下に応じて、押下された用件ボタンを識別可能なボタン識別情報を含む呼出信号を上記中継器に送信し、
上記中継器は、
上記呼出信号送信部により送信された呼出信号を受信し、特定の一の呼出種別の呼出信号として上記ナースコール親機に中継する呼出信号中継部と、
上記ナースコール親機との間に通話路が形成された後、上記ナースコール子機から受信した呼出信号に含まれる上記ボタン識別情報に応じた上記原語の合成音声を、上記通話路を介して上記ナースコール親機に送信する合成音声送信部とを備え、
上記ナースコール親機は、
上記呼出信号中継部により中継された呼出信号の受信に応じて上記報知処理部により行われる上記報知動作に対する応答操作を検出したときに、通話路を形成する通話路形成部と、
上記通話路形成部により形成された通話路を介して上記中継器から送られてくる上記合成音声を受信する合成音声受信部と、
上記合成音声受信部により受信された合成音声を出力する合成音声出力部とを更に備えた
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のナースコールシステム。
【請求項5】
上記ナースコール子機の音声出力関連処理実行部は、上記所定の操作に応じて、上記表示制御部により識別可能に表示されている用件ボタンを識別可能なボタン識別情報を含む合成音声出力指示信号を上記中継器に送信し、
上記中継器は、
一または複数の呼出種別に対応する呼出ボタンおよびスピーカを備えた第2のナースコール子機を接続可能に構成され、
上記音声出力関連処理実行部により送信された上記合成音声出力指示信号を受信する指示信号受信部と、
複数種類の合成音声に対応した複数の音声データと上記ボタン識別情報とを関連付けて記憶する音声データ記憶部と、
上記ナースコール子機から受信した上記呼出信号または上記合成音声出力指示信号に含まれる上記ボタン識別情報に応じた音声データを上記音声データ記憶部から読み出して上記合成音声を生成する合成音声生成部とを備え、
上記合成音声送信部は、上記呼出信号中継部が上記ナースコール子機から上記呼出信号を受信した場合、上記合成音声生成部により生成された上記合成音声を、上記通話路を介して上記ナースコール親機に送信する一方、上記指示信号受信部が上記ナースコール子機から上記合成音声出力指示信号を受信した場合、上記合成音声生成部により生成された上記合成音声を上記第2のナースコール子機に送信する
ことを特徴とする請求項4に記載のナースコールシステム。
【請求項6】
上記呼出信号中継部が上記ナースコール子機から上記呼出信号を受信した場合、上記合成音声を上記ナースコール親機に送信することによって当該合成音声を上記ナースコール親機のスピーカから出力させる一方、上記第2のナースコール子機のスピーカからは上記合成音声を出力させないようにし、上記指示信号受信部が上記ナースコール子機から上記合成音声出力指示信号を受信した場合、上記合成音声を上記第2のナースコール子機に送信することによって当該合成音声を上記第2のナースコール子機のスピーカから出力させる一方、上記ナースコール親機のスピーカからは上記合成音声を出力させないようにすることを特徴とする請求項5に記載のナースコールシステム。
【請求項7】
ナースコール親機の報知動作で使用される原語以外の外国語で用件の内容が表記された複数の用件ボタンと、
上記用件ボタンの押下に応じて呼出信号を送信する呼出信号送信部と、
上記用件ボタンの押下に応じて、押下された用件ボタンに対応する用件の内容を識別可能に表示させた表示状態にするとともに、本装置が設置される部屋内で行われる所定の復旧操作に応じて上記表示状態を解除するように制御する表示制御部と、
上記本装置が設置される部屋内で行われる所定の操作に応じて、上記表示制御部により識別可能に表示されている用件ボタンに対応する用件の内容を表す原語の合成音声を出力するための関連処理を実行する音声出力関連処理実行部とを備えた
ことを特徴とするナースコール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナースコールシステムおよびナースコール装置に関し、特に、現場復旧方式のナースコールシステムおよびこれに用いるナースコール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、病院や介護施設などに設置されるナースコールシステムは、患者や被介護者(以下、単に「患者」と言う)のベッドサイドなどに設置するナースコール子機と、ナースステーションなどに設置するナースコール親機とを備えて構成されている。また、ナースコール親機として、医師や看護師、介護師(以下、単に「看護師」と言う)が携行する携帯型のナースコール親機を備えたナースコールシステムも提供されている。
【0003】
このように構成されたナースコールシステムでは、患者がナースコール子機の呼出ボタンを操作すると、ナースコール親機にて所定の報知動作が行われ、これによって看護師を呼び出すことができる。これに応じて看護師がナースコール親機にてオフフック等の応答操作を行うと、ナースコール親機による報知動作が停止し、ナースコール子機とナースコール親機との間に通話路が形成されて、患者と看護師とが通話を行うことができる状態となる。
【0004】
また、ナースコール子機に患者用情報端末を接続し、この患者用情報端末を利用して呼び出しを行うことができるようにしたシステムも知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のナースコールシステムにおいて、患者用子機に接続された患者用情報端末は、液晶タッチパネルディスプレイからなる表示部を備え、ナースコール使用時に、ナースコール親機を呼び出す目的に対応した選択肢を含む呼出メニューを表示部に表示し、選択肢の1つにタッチすることによって目的別呼び出しを実行する。ナースコール親機は、患者からの目的別呼び出しに対応して、呼び出しの種類、対応する医師、看護婦、准看護婦等の人員、患者情報等の情報画面を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-132929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のナースコールシステムによれば、目的別呼び出しが実行された場合に表示されるナースコール親機の情報画面を見れば、呼び出しの種類(患者が呼び出しを行った目的)を把握することが可能である。しかしながら、看護師がナースコール親機で応答操作を行ってからすぐに病室に向かうことができるとは限らないため、情報画面によって確認した呼び出しの目的を失念してしまうことがある。この場合は、病室において看護師が患者に呼び出しの目的を確認する必要があり、看護作業の効率が落ちるという問題があった。
【0007】
このような問題を解消するための1つの方法として、特許文献1に記載の患者用情報端末が備える表示部に表示された呼出メニューにおいて、呼び出しのためにタッチされた選択肢を他と識別可能な状態で表示したままにしておくことが考えられる。このようにすれば、患者のもとに訪れた看護師は、呼出メニューの表示状態を見ることにより、患者がどのような用件で呼び出しを行ったのかを把握することが可能である。
【0008】
ところで、患者が外国人である場合に対応して、呼出メニューの選択肢を外国語で表記する場合が考えられる。しかしながら、このように呼出メニューの選択肢が外国語で表記されている場合、タッチされた選択肢が識別可能に表示されていたとしても、外国語に堪能でない看護師にとって、その選択肢の表示を見て患者の用件を把握することが困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、呼び出しが行われた現場において、患者が外国人である場合においても患者の説明を要することなく看護師が患者の用件を容易に確認できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明のナースコールシステムでは、ナースコール子機が、ナースコール親機の報知動作で使用される原語以外の外国語で用件の内容が表記された複数の用件ボタンを有し、何れかの用件ボタンの押下に応じて呼出信号を送信する一方、押下された用件ボタンに対応する用件の内容を識別可能に表示させた表示状態にするとともに、ナースコール子機が設置される部屋内で行われる所定の復旧操作に応じて表示状態を解除するようにしている。さらに、本発明では、ナースコール子機が設置される部屋内で行われる所定の操作に応じて、用件ボタンの押下に応じて識別可能に表示されている用件ボタンに対応する用件の内容を表す原語の合成音声を出力するための関連処理を実行するようにしている。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成した本発明によれば、ナースコール子機において用件ボタンが押下されると、押下された用件ボタンに対応する用件の内容が識別可能に表示された表示状態となる。その後、呼出信号がナースコール親機に送信されて所定の報知動作が行われ、所定の応答操作に応じて報知動作が停止したとしても、ナースコール子機が設置される部屋内において所定の復旧操作が行われるまでは上記の表示状態が維持され、復旧操作が行われたときに表示状態が解除される。また、ナースコール子機が設置される部屋内において所定の操作が行われると、押下されたことが識別可能に表示されていた用件ボタンに対応する用件の内容を表す合成音声が原語で出力される。このため、用件ボタンの押下によって呼び出しが行われた現場において、看護師は、外国語で用件の内容が表記された用件ボタンを見て用件の内容を把握することができなくても、原語で出力される合成音声によって患者の用件を把握することができる。これにより、呼び出しが行われた現場において、看護師は、患者が外国人である場合においても、患者の説明を要することなく患者の用件を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態によるナースコールシステムの全体構成例を示す図である。
図2】本実施形態による用件伝達型子機の外観構成例を示す図である。
図3】本実施形態によるナースコールシステムの機能構成例を示すブロック図である。
図4】本実施形態による音声データ記憶部が記憶する複数の音声データに対応する合成音声の内容およびボタン識別情報との関連付けを模式的に示す図である。
図5】本実施形態によるナースコールシステムの用件ボタンの押下時における動作例を示すフローチャートである。
図6】本実施形態によるナースコールシステムの復旧ボタンの押下時における動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態によるナースコールシステムの全体構成例を示す図である。なお、ここでは病院に設置されるナースコールシステムを例にとって説明するが、本実施形態のナースコールシステムは、病院に設置されるものに限定されない。例えば、介護施設等に設置される場合にも適用可能である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態のナースコールシステムは、ナースコール親機1、制御機2、廊下灯3、壁埋込形子機4、中継器5、ハンド形子機6(特許請求の範囲における第2のナースコール子機に相当)および用件伝達型子機7(特許請求の範囲におけるナースコール子機およびナースコール装置に相当)を備えて構成されている。ナースコール親機1は、ナースステーションに設置されるものであってもよいし、個々の看護師が携行する携帯型のナースコール親機であってもよい。壁埋込形子機4、中継器5、ハンド形子機6および用件伝達型子機7は、患者の病室内に設置される。
【0015】
ナースコール親機1は、患者(ハンド形子機6または用件伝達型子機7)からの呼び出しに対する応答の操作を行い、看護師が患者と通話を行うためのものである。ナースコール親機1は、患者からの呼び出しを受けたとき、所定の報知動作を行う。報知動作は、ナースコール親機1が備えるスピーカから呼出音を出力するとともに、ナースコール親機1が備えるディスプレイに対して呼び出しに係る患者および呼出種別などの情報を表示させることによって行われる。この報知動作(ディスプレイに対する情報の表示)は、ナースコールシステムが使用される国の原語によって行われる。本実施形態では、ナースコールシステムが日本で使用され、原語は日本語であるものとする。
【0016】
この報知動作の実行中に、看護師がオフフック等の応答操作を行うと、ナースコール親機1は上述の報知動作を停止するとともに通話路を形成する。詳細は後述するが、ハンド形子機6からの呼び出しに対して応答操作が行われた場合、ナースコール親機1はハンド形子機6との間に通話路を形成し、患者と通話を行うことができる状態とする。また、用件伝達型子機7からの呼び出しに対して応答操作が行われた場合、ナースコール親機1は中継器5との間に通話路を形成し、中継器5から送られてくる日本語の合成音声を受信してスピーカから出力する。
【0017】
制御機2は、ナースコール親機1と廊下灯3との間に配置され、通話やデータの送受信に関する制御を行う。送受信されるデータには、ハンド形子機6または用件伝達型子機7からナースコール親機1に送られる呼出信号、ナースコール親機1から用件伝達型子機7に送られる応答通知信号、中継器5からナースコール親機1に送られる合成音声の音声信号などが含まれる。
【0018】
廊下灯3は、病院の各病室の入口付近外部に設置される。この廊下灯3は、表示装置を備え、病室内の患者名が表示されるとともに、病室内の患者がハンド形子機6または用件伝達型子機7を用いて看護師の呼び出しを行うと、呼び出しが行われたことが表示されるようになっている。なお、呼び出しが行われたことの表示は、LEDの点灯または点滅により行うようにしてよい。LEDは、所定の復旧操作が行われたときに消灯する。
【0019】
廊下灯3は、ハンド形子機6または用件伝達型子機7から中継器5を介して送信された呼出信号を、制御機2を介してナースコール親機1に送信する。また、廊下灯3は、ナースコール親機1から制御機2を介して送信された応答通知信号を、壁埋込形子機4および中継器5を介して用件伝達型子機7に送信する。また、廊下灯3は、ナースコール親機1での応答操作により形成された通話路を介して中継器5から送信された音声信号(ハンド形子機6のマイクから入力された患者の通話音声、または中継器5にて生成された用件伝達のための合成音声に関するもの)を、制御機2を介してナースコール親機1に送信するとともに、ナースコール親機1から制御機2を介して送られてきた看護師の通話音声に係る音声信号を、壁埋込形子機4および中継器5を介してハンド形子機6に送信する。
【0020】
壁埋込形子機4は、病室の各ベッドサイドの壁に埋め込み設置される。この壁埋込形子機4は、廊下灯3に接続されている。壁埋込形子機4は、中継器5またはハンド形子機6を接続するための接続端子を備えている。ハンド形子機6を壁埋込形子機4に直接接続することも可能であるが、本実施形態では、壁埋込形子機4に中継器5を接続し、その中継器5にハンド形子機6を接続している。壁埋込形子機4は、廊下灯3と中継器5との間で上述した呼出信号、応答通知信号および音声信号を送受信する。なお、壁埋込形子機4は、患者が看護師を呼び出すための呼出ボタン、患者が看護師と会話を行う際に使用するマイクおよびスピーカを備えてもよい。
【0021】
ハンド形子機6は、壁埋込形子機4または中継器5に接続され、患者のベッドサイドに設置される。上述のように、ハンド形子機6は壁埋込形子機4に直接接続することも可能であるが、本実施形態では、壁埋込形子機4に接続した中継器5に対してハンド形子機6を接続するようにしている。ハンド形子機6は、患者が看護師を呼び出すための呼出ボタン6a、患者が看護師と会話を行う際に使用するマイク(図示せず)およびスピーカ6bを備えている。
【0022】
ハンド形子機6は、一または複数の呼出種別に対応する呼出ボタン6aを備えており、患者が何れかの呼出ボタン6aを操作すると、操作された呼出ボタン6aに対応する呼出種別の呼出信号が中継器5、壁埋込形子機4、廊下灯3および制御機2を介してナースコール親機1に送信されるようになっている。呼出種別は、例えば、一般呼出、緊急呼出、特定呼出(トイレまたは点滴)などである。
【0023】
用件伝達型子機7は、中継器5に無線で接続され、患者のベッドサイドに設置される。例えば、用件伝達型子機7は、Bluetooth(登録商標)の無線通信手段を用いて中継器5に接続される。用件伝達型子機7と中継器5とは1対1で無線通信を行う。無線通信をするに当たり、中継器5は用件伝達型子機7とのペアリング登録を行う。ペアリング登録に関する処理を行う機能は中継器5が備えている。例えば、中継器5が備える設定スイッチ5aを長押しすることによってペアリング待機状態とした後、ペアリングする用件伝達型子機7において所定の操作をすることによって用件伝達型子機7の識別情報を中継器5に無線送信し、この識別情報を中継器5に記憶することにより、ペアリング登録を行う。
【0024】
用件伝達型子機7は、患者が看護師を呼び出すための複数の用件ボタン7aを備えており、患者が何れかの用件ボタン7aを操作すると、操作された用件ボタン7aを識別可能なボタン識別情報を含む呼出信号が中継器5に送信されるようになっている。この用件ボタン7aには、ナースコール親機1の報知動作で使用される原語以外の外国語で用件の内容が表記されている。また、用件伝達型子機7は復旧ボタン7dを備えており、看護師がこれを押下することにより、復旧状態とすることができるようになっている。用件伝達型子機7は、バッテリを内蔵し、当該バッテリからの電源を得て動作する。本実施形態では、ペアリング登録の機能や、後述する音声合成の機能を中継器5が備えることにより、用件伝達型子機7のバッテリの消耗を抑制するようにしている。
【0025】
中継器5は、用件伝達型子機7とナースコール親機1との間(具体的には、用件伝達型子機7と壁埋込形子機4との間)に設置される。中継器5は、一般電源のコンセントに接続され、当該コンセントから電源を得て動作する。中継器5は、壁埋込形子機4とハンド形子機6および用件伝達型子機7と間で上述した呼出信号、応答通知信号および音声信号を送受信する。
【0026】
音声信号に関して、中継器5は、用件ボタン7aの押下に応じて用件伝達型子機7から受信した呼出信号に含まれるボタン識別情報に対応する日本語の合成音声を生成し、生成した合成音声の音声信号を、壁埋込形子機4、廊下灯3および制御機2を介してナースコール親機1に送信する。また、中継器5は、復旧ボタン7dの押下に応じて用件伝達型子機7から受信した復旧信号(特許請求の範囲の合成音声出力指示信号の一例)に含まれるボタン識別情報に対応する日本語の合成音声を生成し、生成した合成音声の音声信号をハンド形子機6に送信する。これらの動作の詳細については後述する。なお、本明細書において「合成音声を送信する」ということがあるが、これは「合成音声の音声信号を送信する」と同義である。
【0027】
図2は、用件伝達型子機7の外観構成例を示す図である。図2に示すように、用件伝達型子機7は、複数の用件ボタン7aを備えている。本実施形態では、8個の用件ボタン7aが筐体の正面の両サイドに4個ずつ並べて配置されている。1つ1つの用件ボタン7aには、患者が看護師に伝達する用件の内容を端的に表した文言が日本語以外の外国語で記されている。これは、日本人以外の外国人が患者であり、外国人が用件伝達型子機7を使用することを想定したものである。図2の例では、「toilet(トイレ)」、「agonizing(苦しい)」、「medicine(くすり)」、「tube feeding(経管栄養)」、「painful(痛い)」、「phlegm(痰)」、「infusion(点滴)」、「affair(用事)」の各文言が8個の用件ボタン7aにそれぞれ英語で記されている。
【0028】
これらの用件ボタン7aは、透光性を有する樹脂材料またはガラス材料などにより構成されており、その裏側(筐体の内側)にはLEDが設置されている。用件ボタン7aは、押下によって操作することができるようになされており、患者が何れかの用件ボタン7aを押下すると、押下された用件ボタン7aに対応するLEDが点灯するとともに、押下された用件ボタン7aを識別可能なボタン識別情報を含む呼出信号が中継器5に送信される。
【0029】
上述した通り、用件ボタン7aは透光性を有する材料により構成されているため、裏側のLEDが点灯すると、押下された用件ボタン7aが光って見え、どの用件ボタン7aを押下したのかが一目で分かるようになっている。すなわち、押下された用件ボタン7aに対応するLEDが点灯することにより、当該押下された用件ボタン7aに対応する用件の内容(用件ボタン7aに記された文言の内容)が識別可能に表示された状態となる。以下の説明において、用件ボタン7aの裏側に配置されたLEDが点灯または消灯することを、便宜的に「用件ボタン7aが点灯または消灯する」という。
【0030】
用件伝達型子機7は、照明スイッチ7bを備えている。照明スイッチ7bも押下によって操作することができるようになされており、患者が照明スイッチ7bを押下すると、全ての用件ボタン7aが点灯する。例えば、夜間において病室の照明が消灯された後、用件ボタン7aに記された用件の文言が見えないときに照明スイッチ7bを押下することにより、全ての用件ボタン7aを光らせて、文言の内容を確認することができるようにしている。なお、用件伝達型子機7が備える表示制御部(後述する)は、LEDを2段階の輝度で点灯させる調整機能を有しており、照明スイッチ7bが押下された場合は、全ての用件ボタン7aを低輝度で点灯させる。また、何れかの用件ボタン7aが押下された場合は、表示制御部はその押下された用件ボタン7aを高輝度で点灯させる。
【0031】
用件伝達型子機7は、応答表示ランプ7cを備えている。この応答表示ランプ7cは、用件ボタン7aの押下により行われた呼び出しに対して看護師が応答したことを知らせるためのランプである。この応答表示ランプ7cも、透光性を有する材料の裏側にLEDを配置した構成となっている。看護師がナースコール親機1にて応答操作を行うと、応答通知信号がナースコール親機1から用件伝達型子機7に送信される。そして、用件伝達型子機7がこの応答通知信号を受信すると、応答表示ランプ7cが点灯する。これにより、患者は、何れかの用件ボタン7aを押下することによって行った呼び出しに対して看護師が応答したか否かを確認することができる。
【0032】
用件伝達型子機7は、看護師が操作するための復旧ボタン7dを備えている。復旧ボタン7dは、これを患者が誤って操作してしまうことを抑制するために、患者が操作する用件ボタン7aおよび照明スイッチ7bが配置された筐体の正面とは異なる上面に配置されている。この復旧ボタン7dは、患者により押下された用件ボタン7aを消灯させて復旧状態とするためのボタンである。すなわち、看護師が病室に到着したときにこの復旧ボタン7dを押下することにより(ナースコール子機が設置される部屋内で行われる所定の復旧操作に相当)、患者により押下された用件ボタン7aが点灯した状態を解除して、用件伝達型子機7を復旧状態に戻すことが可能である。
【0033】
また、看護師が復旧ボタン7dを押下すると、用件の内容が識別可能に表示されている用件ボタン7a(患者による押下に応じて点灯中の用件ボタン7a)を識別可能なボタン識別情報を含む復旧信号(合成音声出力指示信号)が中継器5に送信される。そして、当該用件ボタン7aに対応する用件の内容を表す日本語の合成音声が中継器5にて生成され、合成音声の音声信号がハンド形子機6に送信されてスピーカ6bから出力される。
【0034】
図3は、本実施形態によるナースコールシステムの機能構成例を示すブロック図である。ここでは、ナースコール親機1、中継器5、ハンド形子機6および用件伝達型子機7の機能構成例を示している。
【0035】
図3に示すように、本実施形態によるナースコール親機1は、機能構成として、呼出信号受信部101、報知処理部102、応答操作検出部103、通話路形成部104、合成音声受信部105および合成音声出力部106を備えている。また、ナースコール親機1は、ハードウェア構成として、スピーカ111およびディスプレイ112を備えている。
【0036】
本実施形態による中継器5は、機能構成として、呼出信号中継部501、応答通知中継部502、通話路関連処理部503、合成音声生成部504、合成音声送信部505および復旧信号受信部506(特許請求の範囲の指示信号受信部に相当)を備えている。また、中継器5は、記憶媒体として、音声データ記憶部511を備えている。
【0037】
本実施形態によるハンド形子機6は、機能構成として、合成音声受信部601および合成音声出力部602を備えている。本実施形態による用件伝達型子機7は、機能構成として、押下検出部701、呼出信号送信部702、表示制御部703、応答通知受信部704および復旧信号送信部705(特許請求の範囲の音声出力関連処理実行部に相当)を備えている。
【0038】
上記ナースコール親機1、中継器5、ハンド形子機6および用件伝達型子機7が備える各機能ブロックは、それぞれハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロックは、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROMに記憶されたプログラムが動作することによって実現される。なお、当該プログラムは、ハードディスクや半導体メモリ等の他の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0039】
用件伝達型子機7の押下検出部701は、患者による用件ボタン7a、照明スイッチ7bの押下を検出する。また、押下検出部701は、看護師による復旧ボタン7dの押下を検出する。押下検出部701は、患者による用件ボタン7aの押下を検出した場合、その旨を呼出信号送信部702および表示制御部703に通知する。押下検出部701は、患者による照明スイッチ7bの押下を検出した場合、その旨を表示制御部703に通知する。また、押下検出部701は、看護師による復旧ボタン7dの押下を検出した場合、その旨を表示制御部703および復旧信号送信部705に通知する。
【0040】
呼出信号送信部702は、用件ボタン7aの押下に応じて、押下された用件ボタン7aを識別可能なボタン識別情報を含む呼出信号を中継器5に送信する。なお、各用件ボタン7aに対応するボタン識別情報は、用件伝達型子機7の図示しない記憶媒体にあらかじめ記憶されている。
【0041】
表示制御部703は、用件ボタン7aおよび応答表示ランプ7cの表示を制御する。すなわち、表示制御部703は、照明スイッチ7bの押下が押下検出部701により検出された場合は、全ての用件ボタン7aを低輝度で点灯させる。例えば、表示制御部703は、照明スイッチ7bが押下されたときから一定時間だけ全ての用件ボタン7aを低輝度で点灯させた後、全ての用件ボタン7aを消灯させる。あるいは、表示制御部703は、照明スイッチ7bの押下に応じて全ての用件ボタン7aを点灯させた後、照明スイッチ7bが再び押下された時点で全ての用件ボタン7aを消灯させるようにしてもよいし、何れかの用件ボタン7aが押下された時点で、当該押下された用件ボタン7a以外の用件ボタン7aを消灯させるようにしてもよい。
【0042】
また、表示制御部703は、何れかの用件ボタン7aの押下が押下検出部701によりされた場合は、その押下された用件ボタン7aを高輝度で点灯させることにより、押下された用件ボタン7aに対応する用件の内容(用件ボタン7aに記された文言の内容)を識別可能に表示させた表示状態にする。また、表示制御部703は、復旧ボタン7dの押下が押下検出部701により検出された場合は、点灯中の用件ボタン7aを消灯させる(上記表示状態を解除する)。また、表示制御部703は、ナースコール親機1から送られてくる応答通知信号を応答通知受信部704が受信した場合に、応答表示ランプ7cを点灯させる。
【0043】
応答通知受信部704は、上述の通り、ナースコール親機1から中継器5を介して送られてくる応答通知信号を受信し、その旨を表示制御部703に通知する。応答通知受信部704が受信する応答通知信号は、用件ボタン7aの押下によって看護師の呼び出しが行われた後、看護師がナースコール親機1にて応答操作をすることによって発生する信号である。表示制御部703は、この応答通知受信部704による応答通知信号の受信に応じて、上述のように応答表示ランプ7cの点灯を制御する。
【0044】
復旧信号送信部705は、復旧ボタン7dの押下(特許請求の範囲の所定の操作および所定の復旧操作に相当)に応じて、表示制御部703により識別可能に表示されている用件ボタン7aを識別可能なボタン識別情報を含む復旧信号(合成音声出力指示信号)を中継器5に送信する。この処理は、特許請求の範囲の「表示制御部により識別可能に表示されている用件ボタンに対応する用件の内容を表す原語の合成音声を出力するための関連処理」に相当する。
【0045】
中継器5の呼出信号中継部501は、ハンド形子機6の呼出ボタン6aの押下に応じてハンド形子機6から送信された呼出信号を受信し、押下された呼出ボタン6aに対応する呼出種別の呼出信号としてナースコール親機1に中継する。上述したように、ハンド形子機6が送信し得る呼出信号の呼出種別には、一般呼出、緊急呼出、特定呼出(トイレまたは点滴)がある。
【0046】
また、呼出信号中継部501は、用件伝達型子機7の呼出信号送信部702により送信された呼出信号を受信した場合、その呼出信号に含まれるボタン識別情報を合成音声生成部504に通知するとともに、その呼出信号を特定の一の呼出種別の呼出信号(ボタン識別情報は含まない)としてナースコール親機1に中継する。呼出信号中継部501は、用件伝達型子機7から呼出信号を受信した場合、その呼出信号に含まれるボタン識別情報の内容によらず(すなわち、どの用件ボタン7aが押下されたかによらず)、複数の呼出種別の中の特定の一の呼出種別(例えば、一般呼出)の呼出信号としてナースコール親機1に中継する。
【0047】
すなわち、図2に示した「toilet(トイレ)」、「infusion(点滴)」の用件ボタン7aは、一般的には特殊呼出という呼出種別が割り当てられるものであり、「agonizing(苦しい)」、「painful(痛い)」などの用件ボタン7aは、一般的には緊急呼出という呼出種別が割り当てられる可能性のあるものであるが、これらの用件ボタン7aが押下された場合も、呼出信号中継部501は一般呼出の呼出信号をナースコール親機1に送信する。
【0048】
以上のように、呼出信号中継部501は、ハンド形子機6から呼出信号を受信した場合は、当該呼出信号を、押下された呼出ボタン6aに応じた呼出種別の呼出信号としてナースコール親機1に中継する。一方、呼出信号中継部501は、用件伝達型子機7から呼出信号を受信した場合は、当該呼出信号を、特定の一の呼出種別の呼出信号としてナースコール親機に中継する。このように本実施形態では、ナースコールシステムに用意された呼出種別の1つを利用して、合成音声によって患者の用件を看護師に伝達する際の呼出信号をナースコール親機1に送信することができるようにしている。
【0049】
復旧信号受信部506は、用件伝達型子機7の復旧ボタン7dの押下に応じて用件伝達型子機7の復旧信号送信部705により送信された復旧信号(合成音声出力指示信号)を受信する。復旧信号受信部506は、復旧信号送信部705により送信された復旧信号を受信した場合、その復旧信号に含まれるボタン識別情報を合成音声生成部504に通知する。
【0050】
応答通知中継部502は、ナースコール親機1から送られてくる応答通知信号を受信し、用件伝達型子機7に中継する。通話路関連処理部503は、ナースコール親機1との間で通話路の形成に関する処理を行う。通話路の形成に関する処理とは、ナースコール親機1の通話路形成部104と協働して通話路を形成するための処理であり、例えば通話路形成部104からの要求に応じて、当該要求に応じた処理を実行する。
【0051】
ハンド形子機6からの呼び出しに対してナースコール親機1にて応答操作が行われた場合、通話路関連処理部503は、ナースコール親機1の通話路形成部104と協働して、ナースコール親機1とハンド形子機6との間に通話路を形成するために必要な処理を行う。この場合の処理のために、ハンド形子機6も通話路関連処理部を備えているが、図示を省略している。また、用件伝達型子機7からの呼び出しに対してナースコール親機1にて応答操作が行われた場合、通話路関連処理部503は、ナースコール親機1の通話路形成部104と協働して、ナースコール親機1と中継器5との間に通話路を形成するために必要な処理を行う。ナースコール親機1と中継器5との間に通話路が形成された場合、通話路関連処理部503はその旨を合成音声生成部504に通知する。
【0052】
合成音声生成部504は、用件伝達型子機7から受信した呼出信号または復旧信号に含まれるボタン識別情報に応じた音声データを音声データ記憶部511から読み出して原語の合成音声を生成する。すなわち、合成音声生成部504は、呼出信号中継部501が用件伝達型子機7から呼出信号を受信した場合(合成音声生成部504が呼出信号中継部501からボタン識別情報の通知を受けた場合)、ナースコール親機1と中継器5との間に通話路が形成された後、当該呼出信号に含まれるボタン識別情報に応じた音声データを音声データ記憶部511から読み出して合成音声を生成する。音声データ記憶部511は、複数種類の合成音声に対応した複数の音声データとボタン識別情報とを関連付けて記憶している。複数種類の合成音声は、患者が看護師に伝える用件の内容を日本語で示したものである。また、合成音声生成部504は、復旧信号受信部506が用件伝達型子機7から復旧信号を受信した場合(合成音声生成部504が復旧信号受信部506からボタン識別情報の通知を受けた場合)、当該復旧信号に含まれるボタン識別情報に応じた音声データを音声データ記憶部511から読み出して合成音声を生成する。
【0053】
図4は、本実施形態による音声データ記憶部511が記憶する複数の音声データに対応する合成音声の内容およびボタン識別情報との関連付けを模式的に示す図である。図4に示す8個の合成音声は、図2に示した8個の用件ボタン7aに対応したものである。すなわち、「toilet(トイレ)」、「agonizing(苦しい)」、「medicine(くすり)」、「tube feeding(経管栄養)」、「painful(痛い)」、「phlegm(痰)」、「infusion(点滴)」、「affair(用事)」の各文言が記された8個の用件ボタン7aのボタン識別情報「001」~「008」と関連付けて、図4に示す8個の合成音声を生成するための音声データが音声データ記憶部511に記憶されている。例えば、用件伝達型子機7の筐体において最も左上に配置された1番目の用件ボタン7aに対応するボタン識別情報「001」と関連付けて、「トイレに行きたいです。」という日本語の合成音声の音声データが記憶されている。また、用件伝達型子機7の筐体において最も右下に配置された8番目の用件ボタン7aに対応するボタン識別情報「008」と関連付けて、「用事があります。」という日本語の合成音声の音声データが記憶されている。
【0054】
合成音声送信部505は、呼出信号中継部501が用件伝達型子機7から呼出信号を受信した場合(合成音声生成部504が呼出信号中継部501からボタン識別情報の通知を受けた場合)、当該呼出信号に含まれるボタン識別情報に応じた日本語の合成音声(合成音声生成部504により生成された合成音声)を、通話路を介してナースコール親機1に送信する。
【0055】
本実施形態では、ナースコールシステムに用意された限られた数の呼出種別を用いて、呼出種別の数よりも多い種類の用件を看護師に伝達するための合成音声をナースコール親機1に送信することができるようにしている。本実施形態では、例えば一般呼出という1つの呼出種別を用いて、8種類の用件の合成音声をナースコール親機1に送信することが可能である。
【0056】
また、合成音声生成部504は、復旧信号受信部506が用件伝達型子機7から復旧信号を受信した場合(合成音声生成部504が復旧信号受信部506からボタン識別情報の通知を受けた場合)、当該復旧信号に含まれるボタン識別情報に応じた日本語の合成音声(合成音声生成部504により生成された合成音声)をハンド形子機6に送信する。
【0057】
ナースコール親機1の呼出信号受信部101は、中継器5の呼出信号中継部501により中継されたハンド形子機6からの呼出信号および用件伝達型子機7からの呼出信号を受信する。報知処理部102は、呼出信号受信部101による呼出信号の受信に応じて所定の報知動作を行い、応答操作検出部103により検出される所定の応答操作に応じて報知動作を停止する。すなわち、報知処理部102は、呼出信号受信部101が呼出信号を受信した場合、スピーカ111から呼出音を出力するとともに、ディスプレイ112に対して呼び出しに係る患者および呼出種別などの情報を表示させるといった報知動作を実行する。その後、応答操作検出部103がオフフック等の応答操作を検出すると、報知処理部102は上述の報知動作を停止するとともに、応答通知信号を中継器5に送信する。
【0058】
通話路形成部104は、呼出信号の受信に応じて行われる報知動作に対する応答操作を応答操作検出部103が検出したときに、中継器5またはハンド形子機6との間に通話路を形成する。すなわち、ハンド形子機6からの呼出信号に応じて行われる報知動作に対する応答操作を応答操作検出部103が検出した場合、通話路形成部104は、ハンド形子機6との間に通話路を形成する処理を行う。また、用件伝達型子機7からの呼出信号に応じて行われる報知動作に対する応答操作を応答操作検出部103が検出した場合、通話路形成部104は、中継器5との間に通話路を形成する処理を行う。
【0059】
合成音声受信部105は、通話路形成部104により形成された通話路を介して中継器5の合成音声送信部505から送られてくる合成音声の音声信号を受信する。合成音声出力部106は、合成音声受信部105により受信された合成音声の音声信号に基づいて、用件の合成音声をスピーカ111から出力する。看護師は、スピーカ111から出力される日本語の合成音声を聞くことにより、患者との間で通話を行うことなく、患者が伝えてきている用件を把握することができる。
【0060】
ハンド形子機6の合成音声受信部601は、中継器5の合成音声送信部505から送信された合成音声の音声信号を受信する。合成音声出力部602は、合成音声受信部601により受信された合成音声の音声信号に基づいて、合成音声をスピーカ6bから出力する。看護師は、スピーカ6bから出力される日本語の合成音声を聞くことにより、復旧ボタン7dの操作時に用件伝達型子機7において識別可能に表示されていた用件ボタン7aに対応する用件の内容(患者が用件ボタン7aの押下によって伝えた用件)を日本語で把握することができる。
【0061】
以上のように、本実施形態では、呼出信号中継部501が用件伝達型子機7から呼出信号を受信した場合は、合成音声生成部504により生成された合成音声をナースコール親機1に送信することによって当該合成音声をナースコール親機1のスピーカ111から出力させる一方、ハンド形子機6のスピーカ6dからは合成音声を出力させないようにしている。また、復旧信号受信部506が用件伝達型子機7から復旧信号を受信した場合は、合成音声生成部504により生成された合成音声をハンド形子機6に送信することによって当該合成音声をハンド形子機6のスピーカ6dから出力させる一方、ナースコール親機1のスピーカ111からは合成音声を出力させないようにしている。
【0062】
図5および図6は、以上のように構成した本実施形態によるナースコールシステムの動作例を示すフローチャートである。図5のフローチャートは、患者が何れかの用件ボタン7aを押下したときに実行される合成音声の出力処理と、用件ボタン7aおよび応答表示ランプ7cの表示制御に関する動作例を示しており、その他の処理に関する動作は省略している。図6のフローチャートは、看護師が復旧ボタン7dを押下したときに実行される合成音声の出力処理と、用件ボタン7aの表示制御に関する動作例を示しており、その他の処理に関する動作は省略している。なお、図5および図6に示すフローチャートにおいて、制御機2、廊下灯3および壁埋込形子機4の動作については説明を省略している。
【0063】
図5において、まず、患者により何れかの用件ボタン7aが押下されたことを押下検出部701が検出すると(ステップS1)、表示制御部703は、押下された用件ボタン7aを点灯させる(ステップS2)。また、呼出信号送信部702は、押下された用件ボタン7aを識別可能なボタン識別情報を含む呼出信号を中継器5に送信する(ステップS3)。中継器5の呼出信号中継部501は、呼出信号送信部702により送信された呼出信号を受信し、特定の一の呼出種別の呼出信号としてナースコール親機1に中継する(ステップS4)。
【0064】
ナースコール親機1の呼出信号受信部101は、用件伝達型子機7から中継器5、壁埋込形子機4、廊下灯3および制御機2を介して送られてきた呼出信号を受信する(ステップS5)。報知処理部102は、呼出信号受信部101による呼出信号の受信に応じて所定の報知動作を行う(ステップS6)。この報知動作の最中、応答操作検出部103は、看護師による応答操作が行われたか否かを監視する(ステップS7)。
【0065】
看護師による応答操作が応答操作検出部103により検出された場合、報知処理部102は、報知動作を停止する(ステップS8)。これに応じて報知処理部102は、応答通知信号を中継器5に送信する(ステップS9)。また、通話路形成部104は、中継器5との間に通話路を形成する(ステップS10)。中継器5の応答通知中継部502は、ナースコール親機1から送られてくる応答通知信号を受信し、用件伝達型子機7に中継する(ステップS11)。
【0066】
用件伝達型子機7の応答通知受信部704は、応答通知中継部502により中継された応答通知信号を受信し、その旨を表示制御部703に通知する(ステップS12)。この通知を受けて表示制御部703は、例えば応答表示ランプ7cを一定時間点灯させた後、消灯させる(ステップS13)。
【0067】
上記ステップS10における通話路形成部104の処理によってナースコール親機1と中継器5との間の通話路が形成されると、中継器5の合成音声生成部504は、ステップS4で呼出信号中継部501が用件伝達型子機7から受信した呼出信号に含まれるボタン識別情報に応じた音声データを音声データ記憶部511から読み出して合成音声を生成する(ステップS14)。
【0068】
次いで、合成音声送信部505は、合成音声生成部504により生成された合成音声の音声信号をナースコール親機1に送信する(ステップS15)。ナースコール親機1では、中継器5から送信された合成音声の音声信号を合成音声受信部105により受信し(ステップS16)、合成音声出力部106がその合成音声の音声信号に基づいて合成音声をスピーカ111から出力する(ステップS17)。看護師は、スピーカ111から出力される合成音声を聞くことにより、患者が伝えてきている用件を把握することができる。以上により、図5に示すフローチャートの処理が終了する。この後看護師は、把握した用件に対応した看護業務を行うべく、呼び出しが行われた病室に向かう。
【0069】
図6において、用件伝達型子機7では、図5のステップS13で応答表示ランプ7cの点灯を行った後、復旧ボタン7dが押下されたか否かを監視する(ステップS21)。そして、病室に到着した看護師によって復旧ボタン7dが押下され、そのことを押下検出部701が検出すると、表示制御部703は、図5のステップS2で点灯した用件ボタン7aを消灯させる(ステップS22)。
【0070】
また、看護師により復旧ボタン7dが押下されたことを押下検出部701が検出すると、復旧信号送信部705は、それまで点灯中であった用件ボタン7aを識別可能なボタン識別情報を含む復旧信号を中継器5に送信する(ステップS23)。中継器5の復旧信号受信部506は、復旧信号送信部705により送信された復旧信号を受信し、その中に含まれるボタン識別情報を合成音声生成部504に通知する(ステップS24)。
【0071】
この通知を受けて、合成音声生成部504は、通知されたボタン識別情報に応じた音声データを音声データ記憶部511から読み出して合成音声を生成する(ステップS25)。次いで、合成音声送信部505は、合成音声生成部504により生成された合成音声の音声信号をハンド形子機6に送信する(ステップS26)。
【0072】
ハンド形子機6では、中継器5から送信された合成音声の音声信号を合成音声受信部601により受信し(ステップS27)、合成音声出力部602がその合成音声の音声信号に基づいて合成音声をスピーカ6dから出力する(ステップS28)。看護師は、スピーカ6dから出力される合成音声を聞くことにより、患者が用件ボタン7aの押下によって伝えた用件を日本語で把握することができる。以上により、図6に示すフローチャートの処理が終了する。
【0073】
以上詳しく説明したように、本実施形態によるナースコールシステムでは、用件伝達型子機7が、外国語で用件の内容が表記された複数の用件ボタン7aを有し、何れかの用件ボタン7aの押下に応じて呼出信号を送信する一方、押下された用件ボタン7aに対応する用件の内容を識別可能に表示させた表示状態にするとともに、復旧ボタン7dの押下に応じて表示状態を解除するようにしている。また、本実施形態では、復旧ボタン7dの押下に応じて、識別可能に表示されていた用件ボタン7aに対応する用件の内容を表す原語の合成音声をハンド形子機6のスピーカ6bから出力するようにしている。
【0074】
このように構成した本実施形態によれば、呼び出しを受けて患者のもとに訪れた看護師が復旧ボタン7dを押下すると、それまで点灯中で用件の内容が識別可能(ただし、外国語による)に表示されていた用件ボタン7aに対応する用件の内容を表す合成音声が原語で出力される。このため、用件ボタン7aの押下によって呼び出しが行われた現場において、看護師は、外国語で用件の内容が表記された用件ボタン7aを見て用件の内容を把握することができなくても、患者の説明を要することなく、原語で出力される合成音声によって患者の用件を容易に把握することができる。
【0075】
なお、上記実施形態では、ナースコール子機(用件伝達型子機7)が設置される部屋内で行われる所定の復旧操作の一例として、用件伝達型子機7に設けられた復旧ボタン7dの押下操作を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、壁埋込形子機4に設けた復旧ボタンの押下操作に応じて、復旧信号を中継器5を介して用件伝達型子機7に送信することにより、点灯中の用件ボタン7aを消灯して復旧状態にするとともに、合成音声をハンド形子機6に出力するようにしてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、復旧ボタン7dの押下に応じて、合成音声出力指示信号の一例である復旧信号を中継器5に送信する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、復旧ボタン7dとは異なる専用のボタンを用件伝達型子機7に設け、この専用ボタンの押下に応じて、合成音声出力指示信号を中継器5に送信するようにしてもよい。この場合、専用ボタンの押下操作が、特許請求の範囲の「上記音声出力関連処理実行部が上記関連処理を実行するトリガとなる上記所定の操作(所定の復旧操作とは別の操作)」に相当する。このようにすれば、点灯中の用件ボタン7aに記されている外国語の文言を見て用件の内容を理解することができないときだけ、専用ボタンを押下して原語の合成音声を出力させるようにすることが可能となる。
【0077】
また、上記実施形態では、用件伝達型子機7の用件ボタン7aに記される文言の言語が固定である例(図2の例では英語)について説明したが、これを任意に変更できるようにしてもよい。例えば、用件ボタン7aの透光性を有する樹脂部材を着脱可能に構成し、この樹脂部材を交換することによって文言の言語を変更できるようにする。別の例として、文言の部分以外が透明なシールを設け、用件ボタン7aに貼り付けるシールを交換するようにしてもよい。このようにすれば、用件伝達型子機7を使用する患者に合わせて、患者が読める言語で用件の文言を記した状態にすることができる。
【0078】
このように構成する場合、専用ボタンの押下に応じて合成音声出力指示信号を中継器5に送信する構成とするのが好ましい。用件ボタン7aに記す文言を原語(日本語)とする場合、看護師は用件ボタン7aの文言を見るだけで用件の内容を理解できるので、合成音声の出力は不要である。よって、復旧ボタン7dとは異なる専用ボタンを設けることにより、1つの用件伝達型子機7を患者に合わせて様々な言語表記で使用することができるようにするとともに、用件ボタン7aの文言を原語で記すときは、復旧ボタン7dの押下に対応して用件ボタン7aの表示状態を解除するのみとし、合成音声は出力しないようにすることができる。
【0079】
また、上記実施形態では、復旧信号受信部506が用件伝達型子機7から復旧信号を受信した場合、中継器5にて生成した合成音声をハンド形子機6のスピーカ6bから出力させるようにしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、中継器5にスピーカを設け、中継器5のスピーカから合成音声を出力するようにしてもよい。ただし、ハンド形子機6が元々備えているスピーカ6bを利用して合成音声を出力するようにすることで、中継器5の構成を簡略化することができるというメリットを有する。
【0080】
また、上記実施形態では、復旧ボタン7dが押下された場合に、中継器5にて合成音声を生成してハンド形子機6のスピーカ6bから出力する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、用件伝達型子機7に合成音声の生成機能とスピーカとを設け、用件伝達型子機7のスピーカから合成音声を出力するようにしてもよい。この場合、用件伝達型子機7の内部で行われる合成音声の生成および出力に関する処理が、特許請求の範囲の「上記表示制御部により識別可能に表示されている用件ボタンに対応する用件の内容を表す原語の合成音声を出力するための関連処理」に相当する。
【0081】
また、上記実施形態では、用件伝達型子機7と中継器5との間を無線で接続する例を示したが、有線で接続するようにしてもよい。また、上記実施形態では、用件伝達型子機7が内蔵バッテリから電源を得て動作する例について説明したが、用件伝達型子機7を一般電源のコンセントに接続し、用件伝達型子機7がコンセントから電源を得て動作するようにしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、用件伝達型子機7の筐体にハードウェアとしての用件ボタン7aを設ける構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、タッチパネル付きのディスプレイに表示させたソフトウェアのGUI(グラフィカルユーザインタフェース)により用件ボタン7aを構成するようにしてもよい。
【0083】
このようにGUIにより用件ボタン7aを構成する場合、表示制御部703は、例えば、押下された用件ボタン7aのGUIをハイライト表示または強調表示したり、押下されていない用件ボタン7aのGUIをグレーアウト表示したりすることにより、押下された用件ボタン7aに対応する用件の内容を識別可能に表示させた表示状態とすることが可能である。
【0084】
また、上記実施形態では、壁埋込形子機4とハンド形子機6および用件伝達型子機7との間に中継器5を接続する構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、中継器5が備える機能構成を用件伝達型子機7が備えることによって中継器5を省略し、壁埋込形子機4に対してハンド形子機6および用件伝達型子機7を接続するようにしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、用件伝達型子機7の用件ボタン7aに記される文言の言語を外国語とし、ハンド形子機6のスピーカ6bから出力される合成音声の言語を日本語としているが、これに限定されない。例えば、ナースコールシステムが日本で使用される場合であっても、患者が日本人であり、看護師が外国人である場合には、用件伝達型子機7の用件ボタン7aに記される文言を日本語とし、ハンド形子機6のスピーカ6bから出力される合成音声を上述した外国人が使用する外国語とするようにしても良い。このように、ハンド形子機6のスピーカ6bから出力される合成音声の言語は看護師の原語であることが好ましく、用件伝達型子機7の用件ボタン7aに記される文言は上述した原語と異なる言語であり患者の使用言語であることが好ましい。
【0086】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 ナースコール親機
2 制御機
3 廊下灯
4 壁埋込形子機
5 中継器
6 ハンド形子機(第2のナースコール子機)
7 用件伝達型子機(ナースコール子機、ナースコール装置)
7a 用件ボタン
7c 応答表示ランプ
7d 復旧ボタン
102 報知処理部
104 通話路形成部
105 合成音声受信部
106 合成音声出力部
501 呼出信号中継部
504 合成音声生成部
505 合成音声送信部
506 復旧信号受信部
511 音声データ記憶部
601 合成音声受信部
602 合成音声出力部
701 押下検出部
702 呼出信号送信部
703 表示制御部
705 復旧信号送信部(音声出力関連処理実行部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6