(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】門形親綱支柱
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20230419BHJP
E04G 5/00 20060101ALI20230419BHJP
A62B 35/00 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
E04G21/32 D
E04G5/00 301B
A62B35/00 H
(21)【出願番号】P 2019142048
(22)【出願日】2019-08-01
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】507060516
【氏名又は名称】ジャパン スチールス グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】與那原 一郎
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-012855(JP,U)
【文献】特開2006-328652(JP,A)
【文献】特開2019-076308(JP,A)
【文献】特開2017-082516(JP,A)
【文献】登録実用新案第3019635(JP,U)
【文献】特開2007-275345(JP,A)
【文献】実開昭64-23542(JP,U)
【文献】特開2007-100495(JP,A)
【文献】特開2010-185185(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0159883(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00- 7/34
21/24-21/32
27/00
E06C 1/00- 9/14
A62B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が走行する通路部材における上下方向を向いた取付対象片に装着される門形親綱支柱であって、
相互に平行に上下方向に延びる2本の支柱部材と、
2本の前記支柱部材の内側面に連結され、前記支柱部材とともに門形フレームを形成する連結棒材と、
2本の前記支柱部材の下端部にそれぞれ設けられ、前記取付対象片に締結されるクランプ部材と、を有し、
前記支柱部材の上端部に、親綱ロープが取り付けられるフック部材と親綱ロープが引っ掛けられる親綱ガイドとの少なくともいずれか一方を設けた、門形親綱支柱。
【請求項2】
請求項1記載の門形親綱支柱において、
前記クランプ部材は、前記支柱部材の外側面に突出して固定される取付部と、前記取付部と一体に設けられて前記支柱部材の背面側または正面側に迫り出す締結部と、前記締結部に設けられ前記取付部との間で前記取付対象片を締結するねじ部材と、を有する、門形親綱支柱。
【請求項3】
請求項1または2記載の門形親綱支柱において、
前記フック部材は、2本の前記支柱部材の横方向に突出して前記支柱部材の外側面に取り付けられている、門形親綱支柱。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の門形親綱支柱において、
前記親綱ガイドは、前記門形フレームの正面側または背面側に水平方向の開口部が設けられた内側ガイド部材と、前記内側ガイド部材に対して反対側に水平方向の開口部が設けられた外側ガイド部材とを有し、前記内側ガイド部材と前記外側ガイド部材とにより親綱ロープが貫通する貫通穴を形成する、門形親綱支柱。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の門形親綱支柱において、
前記連結棒材は、2本の前記支柱部材の間に作業者が通過できる間隔を形成する、門形親綱支柱。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の門形親綱支柱において、
2本の前記支柱部材はそれぞれ横断面が四角形の中空パイプであり、前記連結棒材は横断面が円形の中空パイプである、門形親綱支柱。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の門形親綱支柱において、
両端部を逆向きにして2つの門形親綱支柱を前記門形フレームで突き合わせたときに、それぞれのフック部材は2つの門形親綱支柱の前記クランプ部材の間に配置される、門形親綱支柱。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の門形親綱支柱において、
両端部を逆向きにして2つの門形親綱支柱を前記門形フレームで突き合わせたときに、それぞれの親綱ガイドは前記クランプ部材の内側面に配置される、門形親綱支柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親綱を取り付けるための門形親綱支柱に関し、特に腹起こしに装着して好適な門形親綱支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
土木工事や建築工事の工事現場においては、作業者用の走行通路が構築物に設けられ、走行通路には作業者の安全走行のために親綱が装着される。例えば、地面を掘削するときには、周囲の土が崩れないように腹起こしにより土留めが行われる。腹起こしは、矢板、親杭、土留め板などからなり、腹起こしの内面には腹起こし点検用の走行通路が取り付けられる。また、建物躯体工事においては、構築物である躯体の周囲に作業者用の通路が取り付けられる。
【0003】
このような作業者用の走行通路には、作業者が安全に通路を走行できるように、手摺部材として親綱が取り付けられる。
【0004】
特許文献1には型枠取付け金具が記載されており、この型枠取付け金具は、鉄筋コンクリートの躯体工事のコンクリート型枠に着脱自在に取り付けられる支柱と、支柱の上端部に取り付けられて親綱が係止されるフック用金物とを備えている。
【0005】
特許文献2は高所足場に設置される親綱支柱として使用するための防護用支柱を開示している。この親綱支柱の下端部には取付対象物に挟持されるクランプ部材が設けられ、親綱が係合される通し輪が親綱支柱の上端部に取り付けられている。
【0006】
それぞれの親綱支柱は所定間隔をおいて複数本取り付けられ、隣り合った2本の親綱支柱の間には親綱が装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-43678号公報
【文献】特開2016-199965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の親綱支柱は、親綱を通すためのフック用金物や通し輪が上端部に設けられ、下端部に設けられたクランプ部材により型枠や取付対象物に取り付けられている。このように、1本の支柱からなる従来の親綱支柱は、作業者が強く親綱を引っ張っても、倒れないように、転倒防止用のロープ等を用いる必要がある。特に、腹起こし等の構築物の両端部に配置される親綱支柱は、隣り合う他の親綱支柱に向けて倒される方向に外力が加わるので、両端部の親綱支柱には、強い取付強度で取付対象物にクランプするとともに、転倒防止用のロープ等で強固に固定する必要がある。
【0009】
さらに、工事現場の構築物に親綱を張り巡らす場合には、保管場所から多数本の親綱支柱を工事現場までトラック輸送する必要がある。このときには、親綱支柱を1本ずつトラックに積み卸ししたのでは、作業能率が悪いので、親綱支柱は複数本が束ねられた状態でトラックに積み卸しされる。しかし、一端にクランプ部材が設けられ、他端にフックが設けられた親綱支柱を複数本束ねても、トラックの荷台の限られたスペースには多量の親綱支柱を搭載することができず、効率的に輸送することができなかった。
【0010】
本発明の目的は、親綱支柱を取付対象物に対して強固に締結することができるようにすることにある。
【0011】
本発明の他の目的は、限られたスペースに多数の親綱支柱を積層することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の門形親綱支柱は、作業者が走行する通路部材における上下方向を向いた取付対象片に装着される門形親綱支柱であって、相互に平行に上下方向に延びる2本の支柱部材と、2本の前記支柱部材の内側面に連結され、前記支柱部材とともに門形フレームを形成する連結棒材と、2本の前記支柱部材の下端部にそれぞれ設けられ、前記取付対象片に締結されるクランプ部材と、を有し、前記支柱部材の上端部に、親綱ロープが取り付けられるフック部材と親綱ロープが引っ掛けられる親綱ガイドとの少なくともいずれか一方を設けた。
【発明の効果】
【0013】
門形親綱支柱は、2本の支柱部材と、これらの支柱部材を間隔を隔てて連結する連結棒材とからなる門形フレームとを有し、2本の支柱部材の下端部には通路部材の取付対象片に締結されるクランプ部材が設けられている。門形フレームの上端部にはフック部材と親綱ガイドの少なくとも一方が設けられており、門形親綱支柱に親綱ロープを取り付けることができる。2本の支柱部材の下端部にはクランプ部材が取り付けられているので、門形親綱支柱は2箇所で通路部材の取付対象片に締結される。これにより、門形親綱支柱の取付強度を高めることができる。したがって、構築物に設けられた通路部材を走行する作業者の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】通路部材としてのH型鋼が取り付けられた腹起こしを示す斜視図である。
【
図2】通路部材としてのH型鋼に取り付けられた2つの門形親綱支柱を示す斜視図であり、(A)はフック部材に親綱ロープを取り付けた場合を示し、(B)は親綱ガイドに親綱ロープを取り付けた場合を示す。
【
図3】
図2に示された門形親綱支柱を拡大して示す斜視図である。
【
図5】両端部を逆向きにして2つの門形親綱支柱を背面側で突き合わせた状態を示す斜視図である。
【
図6】(A)は両端部を逆向きにして2つの門形親綱支柱を背面側で対向させた状態を示す側面図であり、(B)は(A)の状態から2つの門形親綱支柱を積み重ねた状態を示す側面図であり、(C)は(B)の右側面図である。
【
図7】(A)は
図5を右後方から見た斜視図であり、(B)は(A)における矢印7B方向から見た側面図であり、(C)は(B)の右側面図である。
【
図8】4つの門形親綱支柱を積み重ねた状態を示す斜視図である。
【
図9】(A)は
図8における矢印9A方向から見た側面図であり、(B)は(A)の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は地面を掘削して周囲の土が崩れないように腹起こし1からなる壁体により土留が行われた状態を示す。
図1に示す腹起こし1は、H型鋼からなる親杭2を有しており、親杭2は所定の間隔を離して垂直に地中に打ち込まれる。親杭2の間には水平の留め板3が配置され、腹起こし1の背面側の周囲の土砂4は腹起こし1により土留される。腹起こし1には、H型鋼からなる通路部材5が水平に延びて取り付けられる。
図1においては、上下に間隔を隔てて2つの通路部材5が腹起こし1の内側に取り付けられており、それぞれの通路部材5を作業者が走行して腹起こし1の点検作業等を行うことができる。
【0016】
通路部材5を形成するH型鋼は、
図2に示されるように、帯状のウェブ6とウェブ6の両側に一体となった2枚のフランジ7、8とを有し、腹起こし1に沿って水平方向に延びており、作業者はウェブ6の上を走行することができる。それぞれのフランジ7、8は上下方向を向いており、背面側のフランジ7は腹起こし1に取り付けられ、正面側つまり内面側のフランジ8は取付対象片を形成している。
【0017】
通路部材5の取付対象片としてのフランジ8には、
図2に示されるように、門形親綱支柱10が装着される。門形親綱支柱10は、
図3および
図4に示されるように、相互に平行となって上下方向に延びる2本の支柱部材11を有している。それぞれの支柱部材11は横断面形状が四角形の中空パイプである。2本の支柱部材11は、2本の連結棒材12、13により間隔を隔てて連結されている。連結棒材12は支柱部材11の一端部つまり
図3における上端部の内側面に連結され、連結棒材13は支柱部材11の長手方向の中央部における内側面に連結されている。連結棒材12、13は横断面形状が円形の中空パイプである。なお、連結棒材としては、任意の本数で支柱部材11、12を連結することができる。
【0018】
このように、2本の支柱部材11と2本の連結棒材12、13とにより、門形フレーム14が形成される。連結棒材12,13は、2本の支柱部材11の間に作業者が通過できる間隔を形成する。これにより、作業者は2本の支柱部材11の間に沿って門形親綱支柱10に沿って登り下りできる。
【0019】
それぞれの支柱部材11の他端部つまり下端部には、クランプ部材15が設けられており、クランプ部材15により2本の支柱部材11はそれぞれフランジ8つまり取付対象片に締結される。
【0020】
門形親綱支柱10が通路部材5に装着されると、支柱部材11は上下方向に延び、支柱部材11の下端部がクランプ部材15によりフランジ8に締結される。門形親綱支柱10が通路部材5に装着された状態のもとで、
図2に示すように、掘削された空間部の内部側を向く面つまり一方面側を門形親綱支柱10の正面側とし、反対側つまり腹起こし1に向き合う他方面側を背面側とする。この明細書においては、門形親綱支柱10が通路部材5に装着されたときを基準として、門形親綱支柱10および門形フレーム14について、
図4において右側の一方面側を正面側14a、左側の他方面側を背面側14bとし、支柱部材11のうちクランプ部材15が取り付けられた端部を下端部、反対側の端部を上端部とする。
【0021】
それぞれのクランプ部材15は、支柱部材11の外側面に突出して固定される取付部16と、取付部16と一体となって支柱部材11の背面側に迫り出した締結部17とを有しており、締結部17にはねじ部材18が設けられている。取付部16と締結部17の間には、
図4に示すように、フランジ8が入り込む隙間19が形成されている。ねじ部材18は、取付部16との間で、隙間19に入り込んだ取付対象片としてのフランジ8を締結する。締結部17の背面は支柱部材11の背面側14bとほぼ同一面となっており、クランプ部材15がフランジ8に締結されると、取付部16がフランジ8に接触されるとともに、支柱部材11の下端部の背面側14bがフランジ8に接触する。ねじ部材18は、クランプ部材15がフランジ8に締結されると、
図2および
図4に示されるように、フランジ8の内側に配置される。
【0022】
図2に示すように、締結部17は門形フレーム14の背面側に迫り出しているが、正面側に迫り出させると、ねじ部材18はフランジ8の外側に配置されることになる。つまり、
図4において、左右逆転させて、門形親綱支柱10を通路部材5に装着すると、門形フレーム14はフランジ8の内側に配置される。したがって、門形フレーム14の
図4における右側の一方面側14aが背面側となり、左側の他方面側14bが正面側となる。ただし、
図4に示すように、門形フレーム14をフランジ8の外側に配置する方が、作業者の通路スペースを拡げることができる。
【0023】
それぞれの支柱部材11の上端部には、
図3に示されるように、親綱ロープ20を取り付けるためのフック部材21が設けられている。フック部材21はループ状の金具により形成され、支柱部材11の横方向外方に突出して支柱部材11の外側面に取り付けられており、閉じられたロープ取付穴を有している。
図2(A)に示されるように、間隔を隔てて隣り合う2つの門形親綱支柱10の間には、両端部がそれぞれフック部材21に取り付けられた親綱ロープ20が張り渡される。作業者の腰ベルトに装着された安全金具を親綱ロープ20に引っ掛けることにより、作業者は通路部材5の上を安全に走行することができる。
【0024】
図1に示されるように、腹起こし1に設けられた通路部材5に、
図2に示されように所定の間隔を隔てて多数の門形親綱支柱10が取り付けられる。そして、隣り合う門形親綱支柱10の間に親綱ロープ20を張り渡すと、作業者は通路部材5の上を安全に走行することができる。しかも、門形親綱支柱10は2本の支柱部材11を有し、それぞれの支柱部材11がクランプ部材15により取付対象片としてのH型鋼のフランジ8に締結されているので、門形親綱支柱10は強固にフランジ8に締結され、強い力で親綱ロープ20が引かれても、門形親綱支柱10の上端部が通路部材5に沿う方向または腹起こし1から離れる方向に傾くことがない。
【0025】
門形親綱支柱10は2本の支柱部材11がそれぞれクランプ部材15によりフランジ8に締結されるとともに、連結棒材12、13は2本の支柱部材11の間で作業者が通過することができる長さを有しており、その長さに対応した間隔で2つのクランプ部材15が離れているので、クランプ部材15を過度に強く締結することなく、支柱部材11が傾斜することを防止できる。クランプ部材15を過度に強く締結する必要がなく、門形親綱支柱10の取付作業を容易に行うことができる。
【0026】
支柱部材11の上端面には親綱ガイド22が突出して設けられており、
図2(B)に示されるように、親綱ガイド22には親綱ロープ20aが引っ掛けられる。親綱ガイド22は、
図3に示されるように、それぞれの支柱部材11の上端面に設けられており、内側ガイド部材23と、外側ガイド部材24とを備えている。
図3において左側の親綱ガイド22の内側ガイド部材23は、門形フレーム14の背面側14bに水平方向の開口部25が設けられ、外側ガイド部材24は、門形フレーム14の正面側14aに水平方向の開口部26が設けられている。
【0027】
これに対し、
図3において右側の親綱ガイド22の内側ガイド部材23は、門形フレーム14の正面側14aに水平方向の開口部26が設けられ、外側ガイド部材24は、門形フレーム14の背面側14bに水平方向の開口部25が設けられている。
図4に示されように、2本の支柱部材11が重なるように、門形親綱支柱10を左右の側面から観察すると、内側ガイド部材23の開口部25と外側ガイド部材24の開口部26とが重なる。これにより、両方の開口部により親綱ロープ20aを通過させる貫通穴27が形成され、貫通穴から親綱ロープ20aが外れることが防止される。しかも、親綱ロープ20aを蛇行させることにより、開口部からそれぞれの親綱ガイド22に容易に親綱ロープ20aを引っ掛けることができる。
【0028】
親綱ガイド22を構成する内側ガイド部材23と外側ガイド部材24には、それぞれ水平方向の開口部が設けられているが、親綱ガイド22を構成する内側ガイド部材23の開口部25が門形フレーム14の背面側に開口している場合には、外側ガイド部材24の開口部26を正面側に開口させる。つまり、一対の親綱ガイド22を構成する内側ガイド部材23と外側ガイド部材24とでは、開口部の開口側を相互に逆向きとする。これにより、両方の開口部により親綱ロープ20aを通過させる貫通穴27が形成される。なお、2本の支柱部材11の上端部には、それぞれ親綱ガイド22が設けられているが、一方の支柱部材11のみに親綱ガイド22を設けるようにしても良い。つまり、門形フレーム14に1つの親綱ガイド22が設けられていれば良い。
【0029】
上述のように、フック部材21と親綱ガイド22とを門形親綱支柱10に設けると、門形親綱支柱10が取り付けられる場所に応じて、
図2(A)に示すように、フック部材21に親綱ロープ20を取り付けるタイプと、
図2(B)に示されるように、親綱ガイド22に親綱ロープ20aを引っ掛けるタイプのいずれの使用形態でも門形親綱支柱10を使用することができる。さらに、両方の親綱ロープ20、20aを装着することができる。
【0030】
ただし、フック部材21が設けられ、親綱ガイド22が設けられていない門形親綱支柱10としても良く、親綱ガイド22が設けられ、フック部材21が設けられていない門形親綱支柱10としても良い。つまり、フック部材21と親綱ガイド22の少なくともいずれか一方が門形フレーム14に設けられていれば良い。
【0031】
図2に示すように、通路部材5に所定の間隔を隔てて複数の門形親綱支柱10を装着すると、門形親綱支柱10の間に親綱ロープを装着することができ、作業者は安全に通路部材5の上を走行することができる。
図1に示すように、上下に間隔を隔てて複数の通路部材5が腹起こし1に取り付けられた場合には、作業者は上側の通路部材5と下側の通路部材5との間を登り降りすることがある。そのときには、2本の支柱部材11の間に位置させて梯子が通路部材5に装着される。作業者は梯子を伝って連結棒材12を跨ぐことにより、容易に門形親綱支柱10を乗り越えることができる。この門形親綱支柱10を用いることにより、通路部材を走行する作業者の作業性を向上させることができる。さらに、門形親綱支柱10を使用して、作業者が上下の通路部材5の間を上下に移動する際にもその安全性を高めることができる。
【0032】
図5に示すように、両端部を逆向きにすることによって、2つの門形親綱支柱10を背中合わせ、つまり背面側14bで突き合わせた状態で積み重ねることができる。図示する門形親綱支柱10は、クランプ部材15の締結部17が背面側14bに迫り出しており、背面側が迫り出し面となっている。
図5のように、2つの門形親綱支柱10を積み重ねるには、
図6(A)に示すように、両方の門形フレーム14の背面側14bつまり迫り出し面を向き合わせるとともに、両方の門形親綱支柱10の両端部を逆向きとする。つまり、
図6(A)において支持台30に載置された下側の門形親綱支柱10のクランプ部材15と、上側の門形親綱支柱10のフック部材21とが
図6において左側となり、下側の門形親綱支柱10のフック部材21と、上側の門形親綱支柱10のクランプ部材15とが
図6において右側となるように、両方の門形親綱支柱10の両端部を逆向きとする。
【0033】
この状態のもとで、
図6(B)に示されるように、2つの門形親綱支柱10を支持台30の上に積み重ねると、それぞれのフック部材21は、他の門形親綱支柱10のクランプ部材15に対して長手方向の内側で対向するように配置される。つまり、クランプ部材15の締結部17は、門形フレーム14の迫り出し面つまり背面側14b側に迫り出しているので、2つのフック部材21は、2つのクランプ部材15の間に配置される。したがって、2つの門形親綱支柱10は、長手方向つまり
図6(B)において左右方向に大きくずれ移動することが防止される。例えば、
図6(B)において上側の門形親綱支柱10が下側の門形親綱支柱10に対して左側にずれ移動すると、クランプ部材15がフック部材21に当接してずれ移動が防止される。
【0034】
さらに、
図6(B)に示されるように、2つの門形親綱支柱10を積み重ねると、それぞれの親綱ガイド22はクランプ部材15の内側面に対向する。したがって、2つの門形親綱支柱10は、横方向つまり
図6(C)において左右方向に大きくずれ移動することが防止される。
【0035】
図7(A)は
図5を右後方から見た斜視図であり、
図7(B)は
図7(A)における矢印7B方向から見た側面図であり、
図7(C)は
図7(B)の右側面図である。これらの図においても、2つ積み重ねられた門形親綱支柱10は、2つのフック部材21が2つのクランプ部材15の間に配置されるので、長手方向つまり
図7(B)において左右方向に大きくずれ移動することが防止される。さらに、それぞれの親綱ガイド22はクランプ部材15の内側面に対向するので、2つの門形親綱支柱10が、横方向つまり
図7(C)において左右方向に大きくずれ移動することが防止される。
【0036】
このように、クランプ部材15、フック部材21および親綱ガイド22が邪魔となることなく、2つの門形親綱支柱10は、門形フレーム14を接触させて積み重ねることができる。
【0037】
上述のように、2つで1対とした背中合わせの門形親綱支柱10を2対積み重ねると、
図8に示されるように、4つの門形親綱支柱10を積み重ねた状態となる。
図8は、
図7(A)に示した方向から見た2つの門形親綱支柱10を2対積み重ねた状態である。
【0038】
図7に示されるように、背中合わせされた2つの門形親綱支柱10からなる親綱支柱対31とすると、
図8および
図9においては、2対の親綱支柱対31を積み重ねた状態を示しており、支持台30に載置された下側の親綱支柱対を31aとし、上側の親綱支柱対を31bとして示されている。
【0039】
それぞれのクランプ部材15は支柱部材11の外側面に取り付けられ、親綱ガイド22は支柱部材11の外側面および内側面には突出していないので、下側の親綱支柱対31aに対して、上側の親綱支柱対31bを幅方向にずらして積み重ねることができる。そのときには、
図9(A)に示されるように、下側の親綱支柱対31aの正面側14aに上側の親綱支柱対31bの正面側14aを向ける。さらに、
図9(C)に示されるように、下側の親綱支柱対31aに対して、上側の親綱支柱対31bを幅方向にずらして積み重ねる。
【0040】
連結棒材12、13の外径は支柱部材11の前後方向の幅寸法よりも小さく、連結棒材12、13と支柱部材11との間には、
図8に示されるように、段差29が形成されているので、下側の親綱支柱対31aと、上側の親綱支柱対31bとが、幅方向にずれ移動することが防止される。
図8に示されるように、2つの門形親綱支柱10で対となった親綱支柱対31を任意の段数積み重ねることができる。
【0041】
したがって、多数の門形親綱支柱10を、無駄なスペースを発生させることなく、ぴったりと水平方向として多段に積み重ねることができるので、多数の門形親綱支柱10を積み重ねた状態で限られたスペースに保管することができる。さらに、保管場所から工事現場まで多数の門形親綱支柱10を積み重ねて効率的にトラック輸送することができる。
【0042】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述の門形親綱支柱10は、腹起こし1に取り付けられた通路部材5に装着された場合を示しているが、これに限られることはない。土木工事や建築工事の工事現場に設けられた通路部材であって、上下方向を向いた取付対象片が設けられている場合であって、親綱ロープを設ける場合でれば、門形親綱支柱10を適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 門形親綱支柱
11 支柱部材
12、13 連結棒材
14 門形フレーム
15 クランプ部材
16 取付部
17 締結部
18 ねじ部材
19 隙間
20、20a 親綱ロープ
21 フック部材
22 親綱ガイド
23 内側ガイド部材
24 外側ガイド部材
27 貫通穴
29 段差
31 親綱支柱対