(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】リニア振動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20230419BHJP
H02K 33/16 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
B06B1/04
B06B1/04 S
H02K33/16
(21)【出願番号】P 2019569118
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2019002943
(87)【国際公開番号】W WO2019151232
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2018016533
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】Orbray株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 一也
(72)【発明者】
【氏名】中村 元一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 千尋
(72)【発明者】
【氏名】古川 武志
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-029971(JP,A)
【文献】特開2017-136592(JP,A)
【文献】特開平10-146564(JP,A)
【文献】特開2002-254030(JP,A)
【文献】特開2017-175838(JP,A)
【文献】特開2016-131916(JP,A)
【文献】特開2010-029744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/04
H02K 33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の振動方向に延在する筐体と、
前記筐体に収容され、前記振動方向に延在するとともに当該振動方向に直線配列された複数の磁石を有する可動子と、
前記筐体に収容され、前記可動子を前記振動方向に直進移動可能に保持するガイド部と、
前記筐体に収容され、前記振動方向に沿うとともに前記可動子に対向する平面で平板状に巻かれ、駆動電流が流されることで前記可動子を前記振動方向に直進振動させる複数の平板状コイルと、
前記可動子における前記振動方向の両端部それぞれに配置された一対の第1付勢用磁石と、
前記筐体の内部において、前記一対の第1付勢用磁石それぞれと対向するように配置され、当該一対の第1付勢用磁石それぞれの極性と同じ極性を有することで、前記可動子を前記振動方向に付勢する一対の第2付勢用磁石と、を備え、
前記可動子における前記複数の磁石の配列は、隣り合う2つの磁石のうち一方の磁石の着磁方向が前記平面と直交して他方の磁石の着磁方向が前記振動方向と平行となるハルバッハ配列を含んだ配列であり、
前記第1付勢用磁石が、前記振動方向で構成する前記ハルバッハ配列の両端部として前記他方の磁石を兼ねていることを特徴とするリニア振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記可動子は、外枠部を備え、
前記外枠部と一体に、前記振動方向に直線配列された複数の磁石と、前記一対の第1付勢用磁石とが保持されていることを特徴とする請求項1に記載のリニア振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記振動方向に直線配列された複数の磁石は、少なくとも四方を囲まれて、前記外枠部の内側に固定配置されており、
前記一対の第1付勢用磁石は、前記振動方向であって前記外枠部の外側に固定配置されていることを特徴とする請求項2に記載のリニア振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記可動子における前記複数の磁石の配列は、隣り合う2つの磁石それぞれの着磁方向が前記平面と直交するとともに互いに逆向きとなるN-S配列を含んだ配列であることを特徴とする請求項1~3のうち何れか一項に記載のリニア振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記平板状コイルの前記振動方向における巻線の幅が前記ハルバッハ配列を構成する前記一方の磁石の前記振動方向における長さ以下であることを特徴とする請求項1~4のうち何れか一項に記載のリニア振動アクチュエータ。
【請求項6】
前記平面は、相互間に前記可動子を挟む一対の平面で構成されることを特徴とする請求項1~5のうち何れか一項に記載のリニア振動アクチュエータ。
【請求項7】
前記ガイド部が、前記可動子における前記振動方向に沿った端縁が、当該振動方向に直進移動可能に嵌め込まれるガイド溝を有するレール部材を備えており、
前記可動子の前記端縁に配置された第1浮上用磁石と、
前記ガイド溝の内面に、前記第1浮上用磁石と対向するように配置され、当該第1浮上用磁石の極性と同じ極性を有することで、前記端縁を前記ガイド溝の内面から浮かせる第2浮上用磁石と、
を備えたことを特徴とする請求項1~6のうち何れか一項に記載のリニア振動アクチュエータ。
【請求項8】
前記ガイド部が、前記可動子における前記振動方向に沿った端縁が、当該振動方向に直進移動可能に嵌め込まれるガイド溝を有するレール部材を備えており、
複数の前記平板状コイルが配置される前記平面は1つであり、当該平面と対向する側とは反対側の前記可動子における面に配置された第1浮上用部材と、
前記筐体の内面に、前記第1浮上用
部材と対向するように配置される第2浮上用部材とを備え、
前記第1浮上用部材と前記第2浮上用部材とは、その組合せにより、前記可動子の前記端縁を前記ガイド溝の内面から浮かせるものであり、
前記第1浮上用部材と前記第2浮上用部材との前記組合せは、互いに逆極性を有する磁石同士又は、磁石と磁性体或いは磁性体と磁石であることを特徴とする請求項1~7に記載のリニア振動アクチュエータ。
【請求項9】
前記ガイド部は、棒状のガイドシャフトであって、前記ガイドシャフトは前記可動子を摺動可能に保持し、前記可動子の
枠体に、前記ガイドシャフトとの間で摺動可能な保持部が形成されていることを特徴とする請求項1~8のうち何れか一項に記載のリニア振動アクチュエータ。
【請求項10】
前記可動子が、前記振動方向に配列されて、隣り合うものどうしが弾性的に連結された複数の可動子部分を有していることを特徴とする請求項1~9のうち何れか一項に記載のリニア振動アクチュエータ。
【請求項11】
前記筐体が周壁部、底板部および天井板部から構成され、前記周壁部が軟磁性材料で形成されることを特徴とする請求項1~10のうち何れか一項に記載のリニア振動アクチュエータ。
【請求項12】
前記底板部および前記天井板部において、少なくとも前記振動方向に直線配列された複数の磁石と対向する部分が非磁性材料で形成されることを特徴とする請求項11に記載のリニア振動アクチュエータ。
【請求項13】
前記底板部および前記天井板部がそれぞれ3つに分割され、3つのうち両端部が軟磁性材料で形成されることを特徴とする請求項11又は12に記載のリニア振動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動子を直進振動させるリニア振動アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばスマートフォン等の携帯機器におけるバイブレーション機能を構成する装置として、リニア振動アクチュエータが広く用いられている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載のリニア振動アクチュエータでは、磁石を備える可動子を設け、この磁石の近傍に配置したコイルに交流の駆動電流を流すことで可動子を直進振動させるように構成されている。
【0003】
このようなリニア振動アクチュエータでは、多くの場合、可動子における振動方向の両端部と筐体の内壁との間にコイルバネや板バネ等の機械バネが配置されている。可動子は、このバネによる付勢を受けながら振動する。このとき、この可動子は、筐体の内部において、両端部のバネのバネ定数によって決まる共振周波数を有する。そして、このようなリニア振動アクチュエータの多くでは、駆動用のコイルには、可動子の共振周波数に応じた周波数の交流電流が駆動電流として流される。このような駆動電流が流されることで、可動子を共振させることができ、可動子を振動させるための大きな駆動力を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記のリニア振動アクチュエータでは、上記の機械バネによって決まる共振周波数が非常に狭い帯域での周波数となる。一方で、リニア振動アクチュエータの分野では、可動子を、振動周波数についてある程度の幅を持たせて振動させたいとの要望がある。また、機械バネは弾性限の範囲内でも何千万回と繰り返し応力を負荷すると最終的に疲労破壊に至る可能性があるので、そのリスクを低減することが望まれる。
【0006】
従って、本発明は、上記のような事情に着目し、振動周波数についてある程度の幅を持たせて可動子を振動させることができるとともに、バネ部等の劣化のおそれが少なく高寿命のリニア振動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のリニア振動アクチュエータは、所定の振動方向に延在する筐体と、前記筐体に収容され、前記振動方向に延在するとともに当該振動方向に直線配列された複数の磁石を有する可動子と、前記筐体に収容され、前記可動子を前記振動方向に直進移動可能に保持するガイド部と、前記筐体に収容され、前記振動方向に沿うとともに前記可動子に対向する平面で平板状に巻かれ、駆動電流が流されることで前記可動子を前記振動方向に直進振動させる複数の平板状コイルと、前記可動子における前記振動方向の両端部それぞれに配置された一対の第1付勢用磁石と、前記筐体の内部において、前記一対の第1付勢用磁石それぞれと対向するように配置され、当該一対の第1付勢用磁石それぞれの極性と同じ極性を有することで、前記可動子を前記振動方向に付勢する一対の第2付勢用磁石と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のリニア振動アクチュエータでは、可動子は、その両端に配置された第1付勢用磁石と、これと対面配置された第2付勢用磁石と、の反発力によって振動方向に付勢される。このように磁石の反発力を利用した付勢構造をバネに見立てた場合、バネ力が変形量に比例する一般的な線形バネと異なり、磁石によるバネ(磁気バネと呼ぶ)は非線形バネとなる。このとき、一般的な線形バネで可動子を付勢するリニア振動アクチュエータでは、可動子の共振周波数が上述したように非常に狭い帯域の周波数となる。これに対し、磁気バネで可動子を付勢する本発明のリニア振動アクチュエータでは、磁気バネが非線形バネとなることにより可動子の共振周波数が広い帯域の周波数となる。このため、本発明のリニア振動アクチュエータによれば、その広い帯域において振動周波数についてある程度の幅を持たせて可動子を振動させることができる。
【0009】
また、本発明とは異なりコイルバネや板バネ等の機械バネを用いる場合には、それら機械バネと可動子や筐体との接続部に、可動子の振動に伴う応力が掛かり、接続部の劣化を招く恐れがある。これに対し、本発明のリニア振動アクチュエータによれば可動子の付勢に上記の磁気バネが用いられ、可動子の振動による応力が掛かるような機械的な接続部が存在しない。また、機械バネのように、バネ自体が疲労破壊に至るおそれも無い。従って、本発明のリニア振動アクチュエータによれば、可動子の付勢による上記のような劣化の懸念が払拭されるため装置寿命を延ばすこともできる。
【0010】
本発明によれば小型で高性能且つ高寿命なリニア振動アクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態にかかるリニア振動アクチュエータを示す図である。
【
図2】
図1に示されているリニア振動アクチュエータの分解斜視図である。
【
図3】
図1及び
図2に示されているリニア振動アクチュエータにおいて可動子が一対の磁気バネで付勢される構成を模式的に表した図である。
【
図4】
図1に示されているリニア振動アクチュエータに用いる平板状コイルの電気的な接続方法の一例を示す模式図である。
【
図5】
図1~
図3に示されている可動子における複数の磁石の配列としてN-S配列が採用された場合について説明する模式図である。
【
図6】
図1に示されているリニア振動アクチュエータの、図中のV11-V11線に沿った断面を示す断面図である。
【
図7】
図1~
図3に示されている可動子における複数の磁石の配列としてハルバッハ配列が採用された場合について説明する模式図である。
【
図8】ハルバッハ配列を採用した可動子に対する平板状コイルの配置の変形例を示す図である。
【
図9】可動子の端縁とガイド溝との接触を抑えるための第1の構造を示す模式図である。
【
図10】可動子の端縁とガイド溝との接触を抑えるための第2の構造を示す模式図である。
【
図11】可動子の端縁とガイド溝との接触を抑えるための第3の構造を示す模式図である。
【
図12】
図1~
図3に示されている可動子に対する変形例を、
図3と同様の模式図で示す図である。
【
図13】
図12に示されている可動子が有することとなる振動特性を表すグラフである。
【
図14】本発明の実施形態にかかるリニア振動アクチュエータを示す図である。
【
図15】
図14に示されているリニア振動アクチュエータの分解斜視図である。
【
図16】ハルバッハ配列を採用した可動子の磁石の磁極の向きを示す図である。
【
図17】第1付勢用磁石がハルバッハ配列の一部を担っている可動子の磁石の磁極の向きを示す図である。
【
図18】
図14に示されているリニア振動アクチュエータにおいて、コイルの幅と磁石の幅の関係と、磁石とコイルとのエアギャップ、とを示す断面図である。
【
図19】底壁部と天井壁部がそれぞれ3分割された、
図14および
図15に示されているリニア振動アクチュエータを示す図である。
【
図20】3分割された底壁部と天井壁部の両端が磁性材料/非磁性材料で構成された
図19に示されるリニア振動アクチュエータにおける、可動子の変位に対する付勢力を示したグラフである。
【
図21】3分割された底壁部と天井壁部の両端が磁性材料/非磁性材料で構成された
図19に示されるリニア振動アクチュエータにおける、振動方向の両端面における漏洩磁束密度の分布を示したグラフである。
【
図22】本発明の実施形態にかかるリニア振動アクチュエータを示す図である。
【
図23】
図22に示されているリニア振動アクチュエータにおける、複数の磁石とコイルとのエアギャップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施の形態のリニア振動アクチュエータは、所定の振動方向に延在する筐体と、前記筐体に収容され、前記振動方向に延在するとともに当該振動方向に直線配列された複数の磁石を有する可動子と、前記筐体に収容され、前記可動子を前記振動方向に直進移動可能に保持するガイド部と、前記筐体に収容され、前記振動方向に沿うとともに前記可動子に対向する平面で平板状に巻かれ、駆動電流が流されることで前記可動子を前記振動方向に直進振動させる複数の平板状コイルと、前記可動子における前記振動方向の両端部それぞれに配置された一対の第1付勢用磁石と、前記筐体の内部において、前記一対の第1付勢用磁石それぞれと対向するように配置され、当該一対の第1付勢用磁石それぞれの極性と同じ極性を有することで、前記可動子を前記振動方向に付勢する一対の第2付勢用磁石とを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、リニア振動アクチュエータの可動子は、その両端に配置された第1付勢用磁石と、これと対面配置された第2付勢用磁石と、の反発力によって振動方向に付勢される。このように磁石の反発力を利用した付勢構造をバネに見立てた場合、バネ力が変形量に比例する一般的な線形バネと異なり、磁石によるバネ(磁気バネと呼ぶ)は非線形バネとなる。このとき、一般的な線形バネで可動子を付勢するリニア振動アクチュエータでは、可動子の共振周波数が上述したように非常に狭い帯域の周波数となる。これに対し、磁気バネで可動子を付勢する本発明のリニア振動アクチュエータでは、磁気バネが非線形バネとなることにより可動子の共振周波数が広い帯域の周波数となる。このため、本発明のリニア振動アクチュエータによれば、その広い帯域において振動周波数についてある程度の幅を持たせて可動子を振動させることができる。
【0013】
他の特徴としては、上記の特徴に加え、可動子が外枠部を備え、この外枠部と一体に、前記振動方向に直線配列された複数の磁石と、前記一対の第1付勢用磁石とが保持されていることにある。
この構成によれば、外枠部によって、直線配列された複数の磁石と、一対の第1付勢用磁石を、精度よく確実に位置決めして保持することができる。
【0014】
他の特徴としては、上記の特徴に加え、前記振動方向に直線配列された複数の磁石は、少なくとも四方を囲まれて、前記外枠部の内側に固定配置されており、前記一対の第1付勢用磁石は、前記振動方向であって前記枠体の外側に固定配置されていることにある。
この構成によれば、直線配列された複数の磁石と、一対の第1付勢用磁石を、容易に配置できるとともに、高精度且つ確実に位置決めして保持することができる。
【0015】
他の特徴としては、前記可動子における前記複数の磁石の配列を、隣り合う2つの磁石それぞれの着磁方向が前記平面と直交するとともに互いに逆向きとなるN-S配列を含んだ配列としたことにある。
この構成によれば、可動子が、平板状コイルが配置される平面それぞれに向かう略均等な大きさの磁力を得ることができるので、可動子の位置を安定させ易く、安定的に振動させることができる。
【0016】
他の特徴としては、前記可動子における前記複数の磁石の配列を、隣り合う2つの磁石のうち一方の磁石の着磁方向が前記平面と直交して他方の磁石の着磁方向が前記振動方向と平行となるハルバッハ配列を含んだ配列としたことにある。
この構成によれば、可動子が、ハルバッハ配列によって所望の方向に向かう磁力が強まるように設定されるので、磁力が強められた一方の平面に配置された平板状コイルから大きな駆動力を得ることができる。
【0017】
他の特徴としては、前記複数の磁石の配列をハルバッハ配列とした構成において、前記第1付勢用磁石が、前記振動方向で構成する前記ハルバッハ配列の両端部として前記他方の磁石を兼ねるようにしたことにある。
この構成によれば、第1付勢用磁石がハルバッハ配列を構成する磁石の役割も兼ねるため、可動子に使用する磁石の総数を減らしても、コイルに鎖交する磁束密度を大きくすることが出来る。
【0018】
他の特徴としては、前記平板状コイルの前記振動方向における巻線の幅が前記ハルバッハ配列を構成する前記一方の磁石の前記振動方向における長さ以下としたことにある。
この構成によれば、振動によって可動子が中点から移動してもコイルにより多くの磁束が鎖交するので、振動1周期の間のより長い区間で、可動子に推力を発生させることができる。
【0019】
他の特徴としては、前記平面を、相互間に前記可動子を挟む一対の平面で構成することにある。
この構成によれば、一対となる両平面に平板状コイルが配置されることにより、一方の平面にのみ平板状コイルを配置する場合と比較して、可動子により大きな推力を発生することができる。
【0020】
他の特徴としては、ガイド部の構成において、前記可動子の振動方向に沿った端縁が、当該振動方向に直進移動可能に嵌め込まれるガイド溝を有するレール部材を備えており、前記可動子の前記端縁に配置された第1浮上用磁石と、前記ガイド溝の内面に、前記第1浮上用磁石と対向するように配置され、当該第1浮上用磁石の極性と同じ極性を有することで、前記端縁を前記ガイド溝の内面から浮かせる第2浮上用磁石とを備えることにある。
この構成によれば、可動子の動作状況によって可動子とガイド溝とが摺動する場合に、ガイド溝からガイドが浮上するため、また、たとえ接触したとしても互いの接触面積が小さくなるため、摩擦を低減できる。
【0021】
他の特徴としては、ガイド部の構成において、可動子の振動方向に沿った端縁が振動方向に直進移動可能に嵌め込まれるガイド溝を有するレール部材を備える。そして、複数の前記平板状コイルが配置される前記平面は1つであり、この平面と対向する側とは反対側の前記可動子における面に配置された第1浮上用部材と、前記筐体の内面に、前記第1浮上用磁石と対向するように配置される第2浮上用部材とを備える。そして、前記第1浮上用部材と前記第2浮上用部材とは、その組合せにより、前記可動子の前記端縁を前記ガイド溝の内面から浮かせるものであり、前記第1浮上用部材と前記第2浮上用部材との前記組合せは、互いに逆極性を有する磁石同士又は、磁石と磁性体或いは磁性体と磁石となるようにしたことにある。
この構成によれば、可動子を滑らかに直進振動させることができるうえに磁石の使用数を抑えることができるので、製造コストを削減することができる。
【0022】
他の特徴としては、ガイド部の構成において、ガイド部は、棒状のガイドシャフトであって、このガイドシャフトは前記可動子を摺動可能に保持し、前記可動子の前記外枠部に、前記ガイドシャフトとの間で摺動可能な保持部が形成されていることにある。
この構成によれば、容易に可動子を高精度に位置決めして保持することができる。
【0023】
他の特徴としては、複数の可動子が、振動方向に配列されて、隣り合うものどうしが弾性的に連結されていることにある。
この構成によれば、複数の共振周波数を発生することができるので、広い帯域の範囲内において、可動子の振幅を大きくすることができる。
【0024】
他の特徴としては、前記筐体が周壁部、底板部および天井板部から構成されており、周壁部を軟磁性材料で形成することにある。
この構成によれば、筐体内に配置された永久磁石からの漏洩磁束を抑えることができるので、より効率良く可動子を振動させることができるとともに、外部機器への磁気ノイズによる影響を抑えることができる。
【0025】
他の特徴としては、前記底板部および前記天井板部の材質について、少なくとも前記振動方向に直線配列された複数の磁石と対向する部分を非磁性材料としたことにある。
この構成によれば、可動子に配列された磁石との磁気吸引により駆動力が減少することを回避することができる。
【0026】
他の特徴としては、前記底板部および前記天井板部がそれぞれ3つに分割され、3つのうち両端部が軟磁性材料で形成したことにある。
この構成によれば、第1付勢用磁石と第2付勢用磁石とによる磁気バネからの漏洩磁束を抑えることができるので、より大きな付勢力を得ることが出来るとともに磁石同士の衝突を回避することができる。
【0027】
次に、上記特徴を有する好ましい実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
尚、各実施例を説明する図面において、一部の共通する構成要素については同じ符号を用いている。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明の一実施形態にかかるリニア振動アクチュエータを示す図である。また、
図2は、
図1に示されているリニア振動アクチュエータの分解斜視図である。
【0029】
本実施形態のリニア振動アクチュエータ1は、可動子12を所定の振動方向D11に直進振動させるものであり、筐体11、可動子12、ガイド部13、平板状コイル14、コイル保持部15、及び、一対の磁気バネ16を備えている。
【0030】
筐体11は、振動方向D11に延在する直方体状の箱であり、少なくとも一部が磁性材料で形成されている。筐体11は、周壁部111と、底壁部112と、天井壁部113と、を備えている。尚、
図1は、リニア振動アクチュエータ1の内部構造が見えるように、天井壁部113及びコイル保持部15の図示が省略されている。
【0031】
可動子12は、筐体11に収容される、振動方向D11に延在する直方体状の部材であり、外枠部121と、複数の磁石122と、を備えている。複数の磁石122は、振動方向D11に直線配列された状態で外枠部121に嵌め込まれている。この磁石122の配列については後で詳細に説明する。外枠部121は、これら複数の磁石122を内側に収める長方形の枠である。外枠部121における振動方向D11に沿った一対の端縁123は、各々、振動方向D11に対する直交断面が、外枠部121の外側に向かって凸のV字形状となるように突出している。
【0032】
ガイド部13は、筐体11に収容され、可動子12を振動方向D11に直進移動可能に保持するものであり、一対のレール部材131を備えている。各レール部材131は、可動子12における断面V字状の端縁123が、振動方向D11に直進移動可能に嵌め込まれるガイド溝132を有する。ガイド溝132は、振動方向D11に対する直交断面が、筐体11の外側に向かって凹となったV字溝である。
尚、外枠部121とガイド溝132の振動方向D11に対する直交断面の形状の組合せは、凸V字形状と凹V字形状に限定されるものでは無く、例えば、凸U字形状と凹U字形状とによる組合せや、他の凸形状と凹形状の組合せとしてもよい。
また、振動方向D11に対する外枠部121又はガイド溝132の直交断面の形状は、一部の範囲で切り欠きや、部分的に窪みがある形状となるようにしてもよい。このとき、可動子12の動作状況によって外枠部121とガイド溝132とが摺動する場合に、互いの接触面積が小さくなる分、摩擦を低減できる。
【0033】
平板状コイル14は、振動方向D11に沿うとともに相互間に可動子12を挟む一対の平面151それぞれに3つずつ配置された部材である。各平板状コイル14は、各平面151において面内方向に平板状に延在するようにリング状に巻かれている。ここで、平板状コイル14が配置される一対の平面151は、後述のコイル保持部15の一部位である。平板状コイル14は、交流電流が駆動電流として流されることで、可動子12における複数の磁石122との間に作用するローレンツ力により、この可動子12を振動方向D11に直進振動させる。
尚、各平板状コイル14は、複数のコイルを並列に接続して形成してもよい。例えば、
図4の模式図で示すように、コイル14aとコイル14bとを並列に接続して平板状コイル14を形成し、この平板状コイル14を平面151上に3つ直列で配置する。このようにコイル14aとコイル14bの2つのコイル並列にすることで、並列接続しない場合と比較して最大許容電流を流すことのできる巻線のターン数を2倍にできる。その結果として、可動子12の推力についても並列接続しない場合と比較して、2倍の推力を得ることができる。
【0034】
コイル保持部15は、筐体11に収容され、振動方向D11に延在するとともに相互間に可動子12を挟む一対の長方形板部152と、これら一対の長方形板部152を繋ぐ連結部153と、を有する一体のフレキシブル配線基板(FPC)である。各長方形板部152において可動子12の方を向いた面が、上記の平板状コイル14が配置される平面151となっている。連結部153は、長方形板部152における振動方向D11に沿った縁で、この振動方向D11における端部どうしを繋いでいる。連結部153は、FPCの柔軟性によって折り曲げられている。
【0035】
本実施例では、一体のFPCを用いて一対の長方形板部152と連結部153を有するコイル保持部15を形成したが、一対の長方形板部152の各々をガラスエポキシ基板など柔軟性の無い別体の基板で形成してもよい。このとき、連結部153にはFPC或いは電線を用いて、一対の長方形板部152を接続する。
また、後述する、ハルバッハ配列を採用して磁力を一方の面に強めた可動子を使用する場合や、リニア振動アクチュエータ1の薄型化を優先する場合などには、複数の平板状コイル14を配置する長方形板部152を一方のみに配置する形態とすることもできる。
【0036】
一対の磁気バネ16は、磁石の反発力によって可動子12を振動方向D11に付勢する部材であり、可動子12における振動方向D11の両端部それぞれに配置されている。各磁気バネ16は、第1付勢用磁石161と、第2付勢用磁石162と、を備えている。第1付勢用磁石161は、可動子12における振動方向D11の各端部に1つずつ配置されている。第2付勢用磁石162は、筐体11の内部において、各第1付勢用磁石161それぞれと対向するように配置されている。第2付勢用磁石162は、第1付勢用磁石161の極性と同じ極性を有する。各磁気バネ16は、互いに同極性の第1付勢用磁石161及び第2付勢用磁石162の相互間に発生する反発力により、可動子12を振動方向D11について筐体11の内壁面から離す向きに付勢している。
【0037】
以上に説明したリニア振動アクチュエータ1では、一対の磁気バネ16で付勢されていることで、可動子12が以下に説明するような振動特性を有する。
【0038】
図3は、
図1及び
図2に示されているリニア振動アクチュエータにおいて可動子が一対の磁気バネで付勢される構成を模式的に表した図である。
【0039】
一般に、コイルや板バネ等といった機械バネは、バネ力が、バネの変位量に比例する線形バネとなる。これに対し、本実施形態において可動子12の付勢に採用されている磁気バネ16では、バネ力に相当する磁石間の反発力F11が、バネの変位量に相当するバネ間距離の変化量の2乗に反比例する。つまり、磁気バネ16は非線形バネとなる。
【0040】
磁気バネ16を機械バネに置き換えた場合の可動子12の振動特性は、途中に急峻なピークを有することとなる。つまり、この場合には、非常に狭い帯域の共振周波数を有する振動特性となる。
【0041】
これに対し、磁気バネ16を採用した本実施形態では、振動特性では、緩やかに加速度が上昇してピークに至ることから、共振周波数が広い帯域の周波数となる。
【0042】
リニア振動アクチュエータ1では、加速度aが一定の値を超える帯域の周波数fで可動子12を振動させることで、例えばスマートフォン等のバイブレーション機能等で要求される振動強度が実現される。このとき、リニア振動アクチュエータ1では、可動子12の共振周波数が上記のように広い帯域の周波数となるので、バイブレーション機能等で要求される振動強度が得られるような帯域も広くなる。本実施形態によれば、このような広い帯域において振動周波数についてある程度の幅を持たせて可動子12を振動させることができる。
【0043】
また、本実施形態とは異なりコイルバネや板バネ等の機械バネを用いる場合には、それら機械バネと可動子12や筐体11との接続部に、可動子12の振動に伴う応力が掛かり、接続部の劣化を招く恐れがある。これに対し、本実施形態では、可動子12の付勢に上記の磁気バネ16が用いられ、可動子12の振動による応力が掛かるような機械的な接続部が存在しない。従って、本実施形態によれば、可動子12の付勢による上記のような劣化の懸念が払拭されるため装置寿命を延ばすこともできる。
【0044】
次に、可動子12における複数の磁石122の配列について、N-S配列とハルバッハ配列との二例を挙げて説明する。
【0045】
図5は、
図1~
図3に示されている可動子における複数の磁石の配列としてN-S配列が採用された場合について説明する模式図である。また、
図6は、
図1に示されているリニア振動アクチュエータの、図中のV11-V11線に沿った断面を示す断面図である。尚、
図6では、
図1において図示が省略されていた天井壁部113及びコイル保持部15が示されている。
【0046】
図5に示されるように、N-S配列は、可動子12において隣り合う2つの磁石122それぞれの着磁方向D12,D13が、平板状コイル14が配置される一対の平面151と直交するとともに互いに逆向きとなる配列である。このN-S配列では、可動子12において各平面151の方を向く表面には、N極とS極とが交互に現れる。そして、このN-S配列を採用した可動子12では、上記の一対の平面151それぞれに向かう略均等な大きさの磁力を得ることができる。このため、筐体11の内部において、上記の一対の平面151と交差する方向について可動子12の位置を安定させ易く、可動子12を安定的に振動させることができる。
【0047】
図7は、
図1~
図3に示されている可動子における複数の磁石の配列としてハルバッハ配列が採用された場合について説明する模式図である。
【0048】
ハルバッハ配列は、所望の方向に向かう磁力が強まるように設定された磁石配列である。本実施形態では、振動方向D11に沿うとともに相互間に可動子12を挟む一対の平面のうちの一方の平面へと向かう、
図7中上側の磁力が強まるように設定された磁石配列となっている。このように磁力を強めるために、本実施形態のハルバッハ配列では、
図7に示されているように、隣り合う2つの磁石122の着磁方向D14,D15,D16,D17が、次のような方向を向く。即ち、一方の磁石122aの着磁方向D14,D16が、平板状コイル14が配置される平面151と直交する。そして、他方の磁石122bの着磁方向D15、D17が振動方向D11と平行となる。このように磁石の磁極が90°ずつ回転するように配列されている。このようなハルバッハ配列により、可動子12の周囲では、
図7中上側に向かう磁力が強められる。一例の試算によると、この
図7に示されているハルバッハ配列の可動子12では、
図5に示されているN-S配列の可動子12に比べて、同じ磁極ピッチにおいて、
図7中上側に向かう磁力が、表面磁束密度で約1.7倍に強められることとなる。
【0049】
このようなハルバッハ配列を採用した可動子12によれば、磁力が強められた一方の平面151に配置された平板状コイル14から大きな駆動力を得ることができる。これにより、可動子12をより強力に振動させることができ、例えばスマートフォン等におけるバイブレーション機能に適用する場合に、使用者に対する通知の確実性を高めることができる。
【0050】
ここで、ハルバッハ配列を採用した可動子12を用いる場合、上記のように磁力が強められた平面151とは反対側へと向かう磁力については弱められることとなる。可動子12におけるこのような磁力の偏りを受けて、駆動力を発生させるための平板状コイル14を、
図1,2,6に示されている本実施形態の配置とは異なり、次の変形例のように配置してもよい。
【0051】
図8は、ハルバッハ配列を採用した可動子に対する平板状コイルの配置の変形例を示す図である。
【0052】
この
図8に示されている変形例のリニア振動アクチュエータ1’では、平板状コイル14は、磁力が強められている
図8中上側の一方の平面151においてのみで巻かれている。このような変形例であっても、強められた磁力と、一方の平面151にのみ配置された平板状コイル14との間には十分に強力なローレンツ力が発生することから、可動子12を強力に振動させることができる。また、この変形例では、筐体11の底壁部112の側について平板状コイル14の配置が省略される。これを受けて、この変形例ではコイル保持部15’が、平板状コイル14が配置される天井壁部113の側にのみ長方形板部152を有する形状となっている。
【0053】
また、この変形例のリニア振動アクチュエータ1’では、筐体11の内部において、平板状コイル14が配置されない底壁部112の側の空間S11が空くこととなる。これにより、この空いた空間S11の分だけリニア振動アクチュエータ1’の薄型化を図る等といった運用や、この空いた空間S11を利用して、例えば可動子12の重量調整のための錘を配置する等いった運用を行うことができる。
【0054】
ここで、上述したように、筐体11は、少なくとも一部が磁性材料で構成されている。これは、可動子12や平板状コイル14からの磁力を筐体11の内部に閉じ込めることを目的としている。その結果、磁石122を有する可動子12と筐体11との間に吸引力が作用する。可動子12は、断面V字状の端縁123が、ガイド部13のレール部材131に設けられた断面V字状のガイド溝132に嵌め込まれて振動方向D11に直進移動可能に保持されている。このとき、上記の吸引力により、可動子12が筐体11における底壁部112、天井壁部113の何れかに引き寄せられると端縁123がガイド溝132に、大きな負荷をかけるかたちで接触する可能性がある。このような接触は、可動子12の滑らかな振動を阻害する要因となるので抑えられることが望ましい。
【0055】
以下では、可動子12の端縁123とガイド溝132との接触を抑えるための構造について、3つの例を挙げて説明する。
【0056】
図9は、可動子の端縁とガイド溝との接触を抑えるための第1の構造を示す模式図である。この
図9には、上記の第1の構造が、
図6や
図8に示されている断面図を簡略化した模式図で示されている。また、この簡略化においては、ガイド部13における一対のレール部材131の一方のみが図示されている。
【0057】
この
図9に示されている第1の構造では、可動子12の一対の端縁123それぞれに第1浮上用磁石171が配置され、一対のレール部材131それぞれのガイド溝132に第2浮上用磁石172が配置される。第1浮上用磁石171は、可動子12の各端縁123において、コイル保持部15の一対の平面151それぞれの側を向く部位に配置される。第2浮上用磁石172は、各ガイド溝132の内面に、第1浮上用磁石171と対向するように配置される。この第2浮上用磁石172は、第1浮上用磁石171の極性と同じ極性を有している。この第1の構造では、これら2つの磁石の反発により、可動子12の各端縁123において、コイル保持部15の一対の平面151それぞれの側を向く部位を、ガイド溝132の内面から離す浮上力F12が生じる。この浮上力F12により、可動子12の各端縁123が、ガイド溝132の内面から浮くこととなる。これにより、上記のような吸引力が作用しても、可動子12の端縁123がガイド溝132の内面に強く接することなく、可動子12を滑らかに直進振動させることができる。
【0058】
この
図9に示されている第1の構造は、
図5及び
図6のN-S配列を採用したリニア振動アクチュエータ1と、
図7及び
図8のハルバッハ配列を採用したリニア振動アクチュエータ1’と、の何れについても適用可能である。ここで、ハルバッハ配列を採用したリニア振動アクチュエータ1’では、可動子12からの磁力に偏りが生じるので可動子12と筐体11との間に作用する吸引力にも偏りが生じる。このとき、可動子12の端縁123とガイド溝132の内面との距離が非常に近く、第2浮上用磁石172と第1浮上用磁石171との反発による浮上力F12は吸引力の偏りを無視できる程に大きく設定することができる。このため、
図9に示されている第1の構造は、ハルバッハ配列を採用したリニア振動アクチュエータ1’にも適用可能となっている。
【0059】
図10は、可動子の端縁とガイド溝との接触を抑えるための第2の構造を示す模式図である。この
図10には、上記の第2の構造が、
図8に示されている断面図を簡略化した模式図で示されている。また、この簡略化においても、ガイド部13における一対のレール部材131の一方のみが図示されている。
【0060】
この
図10に示されている第2の構造は、
図7及び
図8のハルバッハ配列を採用したリニア振動アクチュエータ1’への適用を想定したものである。このリニア振動アクチュエータ1’では、上述したように可動子12と筐体11との間に働く吸引力に偏りが生じる。ここでの例では、可動子12から天井壁部113へと向かう吸引力F13が大きくなる。第2の構造は、このような吸引力の偏りを前提としたものである。
【0061】
この第2の構造では、可動子12の端縁123では、強い吸引力F13が働く天井壁部113の側を向く部位にのみ第1浮上用磁石171が配置される。そして、ガイド溝132の内面には、この天井壁部113の側の第1浮上用磁石171と対向する部位にのみ第2浮上用磁石172が配置される。このとき、第2浮上用磁石172と第1浮上用磁石171との反発による浮上力F12は、上記の吸引力F13よりも大きくなり過ぎて、端縁123が、ガイド溝132における底壁部112の側の内面に強く接触しない大きさに設定されている。
【0062】
以上に説明した第2の構造によれば、磁石の使用数を抑えて製造コストを削減しつつも、ガイド溝132の内面から可動子12の端縁123を浮かせて可動子12を滑らかに直進振動させることができる。
【0063】
図11は、可動子の端縁とガイド溝との接触を抑えるための第3の構造を示す模式図である。この
図11には、上記の第3の構造が、
図8に示されている断面図を簡略化した模式図で示されている。また、この簡略化においても、ガイド部13における一対のレール部材131の一方のみが図示されている。
【0064】
この
図11に示されている第3の構造も、
図10に示されている第2の構造と同様に、
図7及び
図8のハルバッハ配列を採用したリニア振動アクチュエータ1’への適用を想定したものである。即ち、この第3の構造も、可動子12から筐体11の天井壁部113へと向かう吸引力F13が大きくなるという吸引力の偏りを前提としたものである。
【0065】
この第3の構造では、
図8に示されているように可動子12から見て、底壁部112の側には平板状コイル14を搭載しないことで空いた空間S11が活用されている。第3の構造では、可動子12において、平板状コイル14が配置される平面151とは反対側となる底壁部112を向く面に第1浮上用部材181が配置される。この第1浮上用部材181は、可動子12の重量調整のための錘の役割も果たす。そして、筐体11の内面において、第1浮上用部材181と対向する底壁部112には、第2浮上用部材182が配置される。第1浮上用部材181と第2浮上用部材182とは、その組合せにより互いに吸引することで、可動子12の端縁123をガイド溝132の内面から浮かせるものである。そして、この第1浮上用部材181と第2浮上用部材182との組合せは、例えば、互いに逆極性を有する磁石同士又は、磁石と磁性体或いは磁性体と磁石である。
【0066】
空間S11に更に余裕がある場合、可動子12と第1浮上用部材181との間に別の錘部材を可動子と一体に配置しても良い。錘部材の材質としては、タングステンなどの高比重の材質が適している。可動子12を含む振動体の質量を大きくすることで、より大きな振動エネルギーを得ることができる。
錘を増やして振動エネルギーを高める必要が無く、空間S11に更に余裕がある場合は、振動アクチュエータの薄型化、小型化を図ることができる。
【0067】
以上に説明した第3の構造では、リニア振動アクチュエータ1’において、第1浮上用部材181と第2浮上用部材182との間に吸引力F14が作用する。このとき、第1浮上用部材181と第2浮上用部材182との吸引力F14が、上記のように可動子12から天井壁部113の側へと向かう吸引力F13と逆向きの力となる。そして、第3の構造では、第1浮上用部材181と第2浮上用部材182との吸引力F14が、可動子12から天井壁部113の側へと向かう吸引力F13と釣り合うように設定されている。これにより、磁石の使用数を抑えて製造コストを削減しつつも、ガイド溝132の内面から可動子12の端縁123を浮かせて可動子12を滑らかに直進振動させることができる。
【0068】
以上で、可動子12の端縁123をガイド溝132の内面から浮かせるための3つの構造についての説明を終了し、次に、可動子それ自体の変形例について説明する。
【0069】
図12は、
図1~
図3に示されている可動子に対する変形例を、
図3と同様の模式図で示す図である。
【0070】
この変形例の可動子22は、振動方向D11に配列されて、隣り合うものどうしが弾性的に連結された2つの可動子部分221を有している。各可動子部分221は、複数の磁石222が配列されたものであり、その配列としては上述のN-S配列とハルバッハ配列との何れについても採用可能である。また、これら2つの可動子部分221を有する可動子22の両端には、上述した磁気バネ16が配置されている。そして、この変形例の可動子22では、2つの可動子部分221の弾性的な連結が、端部の磁気バネ16と同様の磁気バネ223を介して行われる。この磁気バネ223も互いに同極性で向き合った2つの付勢用磁石223aを備えており、両者間に反発力F15が生じている。2つの可動子部分221は、不図示のレール部材によって端縁が保持されつつ、可動子22の両端の磁気バネ16における反発力F11によって互いに近づけられる方向に付勢されている。この変形例の可動子22では、不図示のレール部材による保持、両端の磁気バネ16による付勢、及び中央の磁気バネ223による反発付勢によって、2つの可動子部分221が弾性的に連結されている。
【0071】
ここで、この変形例の可動子22は、弾性的に連結された2つの可動子部分221を有していることから、以下に説明するように2つの共振周波数を有する振動特性を有する。
【0072】
図13は、
図12に示されている可動子が有することとなる振動特性を表すグラフである。ここで、2つの可動子部分221の質量は同じで、磁気バネ16も同じ場合である。
図13に示されているグラフG21では、縦軸に可動子22の振動時に生ずる加速度a[G=9.8m/s2]がとられ、横軸に振動周波数f[Hz]がとられている。そして、可動子22の振動特性が、振動時の加速度aの振動周波数fに対する変化曲線L21で示されている。
【0073】
ここで、
図12に示されている可動子22では、両端部の付勢と、2つの可動子部分221の弾性的な連結が磁気バネ16,223によって行われる。これに対し、
図13に示されているグラフG21は、
図12の可動子22の振動特性を、磁気バネ16,223を、コイルバネや板バネ等といった線形バネに置き換えて示したものである。これは、非線形バネである磁気バネ16,223を有する構成では、急峻なピークを有する共振が現れないためである。ここでは、2つの可動子部分221を設けることで2つの共振が現れる様子を明瞭に示すべく上記のようなバネの置き換えを行なっている。また、例として2つの同じ質量の可動子部分221と2つの同じバネ定数の磁気バネ16を用いたが、異なる質量、異なるバネ定数を採用することで共振周波数を増やすことができ、ワイドバンドの振動を実現できる。
【0074】
図13のグラフG21において変化曲線L21が描いているように、2つの可動子部分221を設けることで2つの共振が現れる。尚、この変化曲線L21が描く2つの共振のピークP1,P2は、上記のように線形バネを用いていることから何れも急峻なものとなる。実際には、磁気バネ16,223を用いているので、各共振周波数が広い帯域の周波数となる。つまり、
図12に示されている変形例の可動子22によれば、2つの共振周波数の発生と、各共振周波数が広い帯域の周波数となることと、が相俟って、一定以上の振動強度が得られる広い帯域を得ることができる。これにより、このような広い帯域の範囲内において、振動周波数について幅を持たせて可動子22を振動させることができる。
【実施例2】
【0075】
図14は、本実施例にかかるリニア振動アクチュエータ1”を示す図である。また、
図15は、このリニア振動アクチュエータ1”の分解斜視図である。
【0076】
また、
図16及び
図17は、リニア振動アクチュエータ1”に適用される可動子の構成例を、磁極の向きを含め示した図である。
図18は、リニア振動アクチュエータ1”の平板状コイルと可動子磁石を示しており、
図18(a)の平面図で示すA-Aの断面を
図18(b)で示している。
【0077】
リニア振動アクチュエータ1”は、可動子32を実施例1と同様の振動方向D11に直進振動させるものであり、筐体11、可動子32、ガイドシャフト17、バックヨーク18、平板状コイル14、コイル保持部15、及び、一対の磁気バネ16を備えている。
【0078】
筐体11は、振動方向D11に延在する直方体状の箱であり、少なくとも一部が磁性材料で形成されている。筐体11は、周壁部111と、底壁部112と、天井壁部113と、を備えている。尚、
図14は、リニア振動アクチュエータ1”の内部構造が見えるように、天井壁部113及びコイル保持部15の図示が省略されている。
【0079】
可動子32は、筐体11に収容される、振動方向D11に延在する直方体状の部材であり、外枠部121’と、複数の磁石122と、を備えている。複数の磁石122は、振動方向D11に直線配列された状態で外枠部121’に嵌め込まれている。この複数の磁石122の配列については後で詳細に説明する。外枠部121’は、これら複数の磁石122を内側に収める長方形の枠である。また、外枠部121’における振動方向D11に沿った両端部には、第一付勢用磁石161を可動子32の中心に高精度に固定するための凹部が設けられる。
【0080】
外枠部121’における振動方向D11に沿った一対の保持部124は、各々、ガイドシャフト17を摺動可能に保持する。外枠部121’の振動方向D11に沿った全長を保持部124とする必要は必ずしも無く、
図15のように外枠部121’における中央部が切り取られても良い。
【0081】
外枠部121’の素材は特に限定されないが、可動子32の共振周波数を適宜設計するのに必要な重量が得られるように選択すれば良い。例えばガイドシャフト17との摺動が良好な樹脂であっても良いし、振動力を得るためにタングステンのような高比重の金属としても良い。
【0082】
ガイドシャフト17は円柱形状であり、筐体11の振動方向D11に沿った両端部に設けられた穴に挿入されるように収容され、保持部124と協働して、可動子32を振動方向D11に直進移動可能に保持する。ガイドシャフト17の素材としては可動子を構成する磁石との磁気吸引による抵抗が生じるのを回避するために、オーステナイト系ステンレスのSUS304のような非磁性シャフトが好ましい。
【0083】
尚、
図15における保持部124の振動方向D11に対する直交断面の形状は、凹U字形状に描かれているがこれに限定されるものでは無く、例えば円形状でも良い。
【0084】
可動子32の摺動を良好にするために、保持部124とガイドシャフト17との間にスリーブ状に部品を介在させても良い。このスリーブ状部品の素材は、SUS304シャフトとの組み合わせにおいては真鍮もしくはPEEKやPOMのような樹脂が好ましい。
【0085】
コイルおよび磁気バネを構成する付勢用磁石の作用については実施例1と同様であるので説明を省略するが、コイルと協働して可動子に駆動力を生じさせる複数の磁石122については、NS配列でも良いし、ハルバッハ配列を採用すればコイルに鎖交する磁束密度が大きくなり駆動力を強くすることが出来る。
【0086】
外枠部121’に収容されるハルバッハ配列を形成する磁石は、実施例1で説明したのと同様に、
図16中のD3~D9に示す様な磁極の配列でも良いし、
図17のようにハルバッハ配列の両端の磁石122bを省略しても良い。この場合は、第1付勢用磁石161が磁石122bの役割も兼ねるため、可動子に使用する磁石の総数を減らしても、コイルに鎖交する磁束密度を大きくすることが出来る。
【0087】
磁石122aが偶数個の場合は、両端の第1付勢用磁石161の磁極を同じ向きに設定し、奇数個の場合は両端の第1付勢用磁石161の磁極を互いに反対向きに設定するのが、ハルバッハ配列磁石の表面磁束密度を大きくする上で好適である。この時の磁石122aと第一付勢用磁石161との距離は、駆動力と付勢力が最適になるように設定すれば良い。
【0088】
以上に説明したリニア振動アクチュエータ1”では、以下の特徴を有する。
外枠部121’が、第一付勢用磁石161と磁石122とを可動子32の中心に、高精度位置決めできる形状となっているため、可動子32の振動方向と直交する方向において第1付勢用磁石161の表面の磁束密度分布が対称となる。また、ガイドシャフト17と保持部124とが協働してガイド部を形成することで、可動子32を筐体11の中心に保持することが容易になり、磁気バネを構成する第1付勢用磁石161と第2付勢用磁石162同士の中心を一致するように組み立てることが容易になる。これにより、高い加速度を得ることが出来る。
【0089】
また、ガイドシャフトでガイド部を構成することによって、表面の平滑な摺動面を低コストで形成することが容易になり、高い加速度を得ることが出来る。
【0090】
また、ハルバッハ配列を構成する駆動用の磁石の両端部122bを第1付勢用磁石161にて兼ねることにより、使用する磁石の数量を減らして低コストでリニア振動アクチュエータを提供することが出来るだけでなく、省略した磁石の替わりにタングステンのような高比重材料を配置することでより大きな加速度を得ることが出来るし、もしくは、可動子を小型化することでより小型のリニア振動アクチュエータを提供することが出来る。
【0091】
また、
図18に示される平板状コイル14と複数の磁石122との位置関係の様に、平板状コイル14の振動方向における巻線の幅Lcを、前記ハルバッハ配列を構成する前記一方の磁石122aの前記振動方向における長さLm以下とすることにより、アクチュエータの駆動によって可動子が中点から移動してもコイルにより多くの磁束が鎖交するので、振動1周期の間のより長い区間で、可動子により大きな推力を発生させることができる。
【実施例3】
【0092】
主に
図19~21を用いて実施例3について説明する。本実施例のリニア振動アクチュエータは、基本的に実施例2と同じ構成であるが、底壁部と天井壁部がそれぞれ分割された構成となっている。
図19は、本実施例のリニア振動アクチュエータの外観斜視図である。
図20は、本実施例のリニア振動アクチュエータにおける、可動子の変位に対する付勢力を示したグラフである。同じく
図21は、振動方向の両端面における漏洩磁束密度の分布を示したグラフである。
【0093】
図19に示す様に、周壁部111’は軟磁性材料で構成されており、底壁部112’と天井壁部113’はそれぞれ3つに分割され、中央部112aおよび113aをオーステナイト系ステンレスのSUS304の様な非磁性材料にて構成することで、駆動磁石との磁気吸引により駆動力が減少することを回避することが出来る。
【0094】
3分割された底壁部112’および天井壁部113’のうち、振動方向D11に沿った両端部112bおよび113bは、磁気バネからの漏洩磁束を抑えるために、軟磁性材料を使用することで、磁気バネを構成する付勢用磁石の表面磁束密度が大きくなり、より大きな付勢力を得ることが出来るだけでなく、磁石同士の衝突を回避することができる。この時の軟磁性材料の振動方向における長さは、第一付勢用磁石161の長さ以上であり、第一付勢用磁石161の長さと第二付勢用磁石162の長さとの合計以下であることが好ましい。
【0095】
以上に説明したリニア振動アクチュエータでは、駆動磁石との磁気吸引により駆動力が減少することを回避することが出来るので、高い加速度を得ることが出来る。
【0096】
更に、磁気バネからの漏洩磁束が抑えられるため、磁気バネを構成する付勢用磁石の表面磁束密度が大きくなり、
図20に示す様に、より大きな付勢力を得ることが出来るので、高い加速度を得ることが出来る。一方で、磁石同士の反発力が大きくなるため、落下等により可動子が意図せず大きく振動した場合でも、磁石同士が衝突し破壊することを回避し易くでき、装置寿命を延ばすこともできる。
【0097】
更に、
図21に示す様に、リニア振動アクチュエータの振動方向の両端面の中央部、筐体から0.1mm離れた場所をD2方向に走査したときの漏洩磁束密度を低減することができるので、スマートフォンのような薄型の電子機器に組み込まれた際に、周壁部からの漏洩磁束が周辺部品へ及ぼす悪影響を低減することが出来る。
【実施例4】
【0098】
主に
図22と
図23を用いて実施例4について説明する。
図22は、本実施例のリニア振動アクチュエータの内部を示す図である。
図23は、
図22のリニア振動アクチュエータ1”の平板状コイルと複数の磁石(可動子)を示しており、
図23(a)の平面図で示すB-Bの断面を
図23(b)で示している。
【0099】
複数の平板状コイル14を並列に接続する際に、
図18に示す様に駆動用の磁石122とコイル14とが対向する方向に複数のコイルを並列に並べると、それぞれのコイルと磁石とのエアギャップである距離Lag1とLag2とが異なり、磁石から遠いコイルの鎖交磁束密度はもう一方のコイルと比較して小さくなってしまうが、
図22および
図23に示す様に、並列に接続する複数のコイル14を振動方向に隣り合うように並べることで、Lag2をLag1に一致させることが出来るので、コイル全体でより多くの鎖交磁束を得ることができる。従って、使用する磁石122の表面磁束密度が同等で複数のコイルの巻数の合計が同じ条件においては、より少ない電流で所定の推力を得ることが出来る。このとき筐体内において可動子に割り当て可能な体積が変わることは無いので重量が維持されるため、より少ない電流で所定の振動力を得ることが出来る。
【0100】
スマートフォン用のリニア振動アクチュエータのような用途においては、小型であることは言うまでもなく、大きな加速度と低消費電流の両立が求められる中で、以上に説明したリニア振動アクチュエータでは、可動子体積および重量を維持しつつより少ない電流で所定の推力を得ることが出来るので、上記要求に応えることが出来る。
【0101】
以上、説明した実施形態及び具体的な複数の実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明のリニア振動アクチュエータの構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0102】
また、上述した実施例等では、本発明のリニア振動アクチュエータの一例として、例えばスマートフォン等のバイブレーション機能等に適用されるリニア振動アクチュエータ1,1’,1”が例示されている。しかしながら、本発明にいうリニア振動アクチュエータは、その適用態様を問うものではない。
【0103】
また、上述した実施例等では、本発明のリニア振動アクチュエータの一例として、直方体状の箱である筐体11に、直方体状の可動子12が収容されたリニア振動アクチュエータ1が例示されている。しかしながら、本発明のリニア振動アクチュエータはこれに限るものではなく、振動方向に延在する筐体に、振動方向に延在する可動子が収容されたものであれば、各部の具体的な形状を問うものではない。
【0104】
また、上述した実施例等では、本発明における可動子の一例として、直線配列された磁石122の個数について特には言及せずに可動子12,22が例示されている。本発明にいう可動子は、振動方向に直線配列された複数の磁石を有するものであれば、磁石の個数については任意に設定し得る。
【0105】
また、上述した実施例等では、本発明における平板状コイルの一例として、平面151における配置数について特には言及せずに平板状コイル14が例示されている。本発明における平板状コイルは、振動方向に沿うとともに可動子に対向する平面内で平板状に巻かれるものであれば、その平面における配置数については任意に設定し得る。また、平板状コイルが配置される平面は、必ずしも実体的な基板等の平面に限定されるものではなく、複数の平板状コイルの配置によって定まる仮想的な平面として解釈することもできる。
【0106】
また、上述した実施例等では、本発明におけるハルバッハ配列が適用された可動子の一例として、ハルバッハ配列が1列のみ設けられて片面についてのみ磁力が強められた可動子12(
図7)が例示されている。しかしながら、本発明におけるハルバッハ配列が適用された可動子はこれに限るものではない。本発明におけるハルバッハ配列が適用された可動子は、両面それぞれについて磁力が強められるようにハルバッハ配列が2列に設けられたもの等であってもよい。このとき、平板状コイルが配置される平面を、相互間に可動子を挟む一対の平面で構成とすることで、より大きな振動エネルギーを得ることができる。
【0107】
また、上述した実施例等では、底壁部側に平板状コイル14を搭載しないことで空いた空間S11(
図8)を活用する方法の1つとして、可動子12と第1浮上用部材181との間に別の錘部材を配置することに言及したが、条件によっては第1浮上用部材181を省略して、錘部材のみを可動子と一体にしてもよい。例えば、ハルバッハ配列の可動子と可動子から筐体の天井壁部へと向かう吸引力が問題とならない場合は、第1浮上用部材181を省略して、錘部材のみを可動子と一体として、振動エネルギーを増大できる。
【0108】
また、
図12及び
図13を参照して説明した例では、本発明にいう複数の可動子部分を有する可動子の一例として、2つの可動子部分221を有する可動子22が例示されている。しかしながら、本発明における複数の可動子部分を有する可動子は、これに限るものではなく、可動子部分の個数については任意に設定し得る。また、この変形例では、複数の可動子部分の弾性的な連結の一例として、磁気バネ223を介した連結が例示されている。しかしながら、ここでの弾性的な連結は、磁気バネを介した連結に限るものではなく、例えばコイルバネや板バネ等といった機械バネを介した連結等であってもよい。
【符号の説明】
【0109】
1,1’,1” リニア振動アクチュエータ
11 筐体
12,22 可動子
13 ガイド部
14 平板状コイル
15,15’ コイル保持部
16,223 磁気バネ
111,111’ 周壁部
112,112’ 底壁部
113,113’ 天井壁部
121,121’ 外枠部
122,122a,122b,222 磁石
123 端縁
131 レール部材
132 ガイド溝
151 平面
152 長方形板部
153 連結部
161 第1付勢用磁石
162 第2付勢用磁石
171 第1浮上用磁石
172 第2浮上用磁石
181 第1浮上用部材
182 第2浮上用部材
221 可動子部分
223a 付勢用磁石
D11 振動方向
D12,D13,D14,D15,D16,D17 着磁方向
D3,D4,D5,D6,D7,D8,D9 着磁方向
D2 振動方向両端面から漏洩する磁束の走査方向
F11,F15 反発力
F12 浮上力
F13,F14 吸引力
G21 グラフ
L21 変化曲線
P1,P2 ピーク