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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】炎に基づく真空発生器
(51)【国際特許分類】
   F23J 99/00 20060101AFI20230419BHJP
   F23N 5/00 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
F23J99/00
F23N5/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021181039
(22)【出願日】2021-11-05
(65)【公開番号】P2022091116
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】202011445446.7
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】黎 ▲しん▼
(72)【発明者】
【氏名】沈 許烽
(72)【発明者】
【氏名】韓 ▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】賀 英杰
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102028978(CN,A)
【文献】T. Han and X. Li,Development of Vacuum Suction Unit Using Flame Extinguishment,2018 IEEE/ASME International Conference on Advanced Intelligent Mechatronics (AIM),米国,IEEE,2018年,p. 432-437,https://doi.org/10.1109/AIM.2018.8452706
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 99/00
F23N 1/00-5/26
B66C 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎に基づく真空発生器であって、ハウジングと燃焼アセンブリを備え、前記ハウジングは空洞を有し、空洞は少なくとも1つの開口を有する空間であり、前記燃焼アセンブリは燃焼物と点火装置を含み、点火装置は燃焼物を点火するために使用され、燃焼物は空洞内で炎を発生させ、且つ炎は空洞内で消え
前記真空発生器は、炎が発生した時に空洞内で形成される高圧を低減するための高圧抑制装置をさらに含み、
前記高圧抑制装置は、空洞内の圧力がハウジングの外部の圧力よりも大きい場合にのみ、空洞と外気を連通する、ことを特徴とする炎に基づく真空発生器。
【請求項2】
前記燃焼アセンブリには、前記空洞内に燃焼物に必要な燃料を補給するための燃料補給ユニットがさらに含まれる、ことを特徴とする請求項1に記載の炎に基づく真空発生器。
【請求項3】
前記燃料補給ユニットにより前記空洞内に補給される燃料は可燃性ガス、可燃性液体、または霧化された可燃性液体である、ことを特徴とする請求項2に記載の炎に基づく真空発生器。
【請求項4】
前記真空発生器は、空洞内に空気または助燃ガスを輸送するための換気機構をさらに含む、ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の炎に基づく真空発生器。
【請求項5】
前記換気機構は送風装置と遮断機構を含み、遮断機構は、送風装置が空洞内に空気または助燃ガスを送り込むのを容易にするように、空洞と外気との間の連通を開閉するために使用される、ことを特徴とする請求項4に記載の炎に基づく真空発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空技術分野に属し、炎に基づく真空発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
真空は様々な産業に広く使用されている。一般的に、真空を生成する機器は真空ポンプとジェット真空管がある。真空ポンプは電力を消費することによってモーターを駆動し、モーターはブレードまたはスクリュー等の構造体を駆動して運動して真空を生成し、ジェット真空管は、高圧流体の高速運動の渦巻き作用によって真空を生成する。このような真空発生機器は、以下の欠点がある。
【0003】
(1)エネルギー消費が大きい。真空を生成する過程において、エネルギーは複数回の変換及び伝達が発生する。真空ポンプを例として、まず、発電所は石炭を燃やして電力を生成し、石油化学エネルギーは電力エネルギーに変換され、電力は電力網を介して伝送され、電力は真空ポンプに伝送され、電力エネルギーは機械的運動エネルギーに変換され、機械的運動エネルギーは、ブレードまたはスクリュー等の構造体を駆動して運動し、真空を生成し、機械的運動エネルギーは流体の位置エネルギー(真空圧は流体の位置エネルギーの形態である)に変換される。過程全体には、3回のエネルギー形態の変換と長距離のエネルギー伝達が発生し、これにより、巨大なエネルギー損失を引き起こす。再びジェット真空管を例として、高圧空気の駆動を必要とするため、真空ポンプよりもエネルギー形態の変換(流体コンプレッサーの機械的運動エネルギーは高速流体の流体運動エネルギーに変換され、次に、流体運動エネルギーは流体の位置エネルギーに変換される)が1回多くある。
【0004】
(2)使用の条件が制限される。真空ポンプもジェット真空管も高出力の電力供給が必要であるため、電力供給の条件下でしか使用できない。
【0005】
(3)騒音が大きい。真空ポンプのモーターと構造体の運動により絶えず巨大な騒音が発生する。モーターと構造体が回転すると、真空ポンプ全体が振動し、振動によって騒音が発生する。このため、振動する真空ポンプは、振動騒音の発生源であり、外部に巨大な騒音を出し続ける。真空ジェット管の高速ジェットは大量の気流渦を発生させ、気流渦が巨大な空気動力騒音を生成し、そして、騒音は真空ジェット管の排気の流れとともに外部に伝達され、巨大な騒音をもたらす。
【0006】
生活の経験と常識から分かるように、炎の燃焼によってカッピングなどの真空を形成してもよい。しかし、カッピングは、炎を使用して吸い玉の空洞を予熱し、次に、炎を取り出して、空洞を逆さまにし、人の体に押し付けることである。吸い玉の空洞内の温度が徐々に低下するのに伴って、内部の空気が収縮して真空を形成する。しかしながら、このような真空発生方法は、(1)空気冷却の速度が比較的遅い(数秒、ひいては数分)ため、真空形成過程の時間が長く、(2)温度が低下すると高真空を生成できないため、真空の吸着力が不十分であり、エンジニアリングアプリケーションの価値がないという2つの欠点がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、従来の技術の欠陥に対して、空洞内で炎を発生させて炎を消すことによって真空を生成し、真空形成の内部メカニズムを研究することによって構造改善を行い、真空圧をさらに効果的に上げ、エンジニアリングアプリケーションに役に立つ炎に基づく真空発生器を提供する。
【0008】
本発明が採用する技術案は以下の通りである。
【0009】
炎に基づく真空発生器であって、ハウジングと燃焼アセンブリを備え、前記ハウジングは空洞を有し、空洞は少なくとも1つの開口を有する空間であり、前記燃焼アセンブリは燃焼物と点火装置を含み、点火装置は燃焼物を点火するために使用され、燃焼物は空洞内で炎を発生させ、且つ炎は空洞内で消える。
【0010】
上記の技術案では、さらに、前記燃焼アセンブリには、前記空洞内に燃焼物に必要な燃料を補給するための燃料補給ユニットがさらに含まれる。燃料の補給によって炎の燃焼と消失の過程を空洞内で継続的に実行させて、真空を改善する。
【0011】
さらに、前記燃料補給ユニットにより前記空洞内に補給される燃料は可燃性ガス、可燃性液体、または霧化された可燃性液体である。ガス状または霧化された燃料の使用は、炎が空洞を満たすことに役に立ち、即ち燃焼炎をより大きく、より完全にして、真空を改善する。
【0012】
さらに、前記真空発生器は、空洞内に空気または助燃ガスを輸送するための換気機構をさらに含む。燃焼過程において空洞内の酸素は継続的に消費され、これは真空の更なる改善に不利であり、換気機構を介して空気または助燃ガスを補給することにより、燃焼過程を継続的またはより十分にすることができる。
【0013】
よりさらに、前記換気機構は送風装置と遮断機構を含み、遮断機構は、送風装置が空洞内に空気または助燃ガスを送り込むのを容易にするように、空洞と外気との間の連通を開閉するために使用される。
【0014】
さらに、前記真空発生器は、炎が発生した時に空洞内で形成される高圧を低減するための高圧抑制装置をさらに含む。空洞が密閉状態にある場合、燃料がその内部で燃焼して炎を発生させる過程は空洞内の圧力を著しく増加させ、これは、後続の炎が消えた後の空洞内の真空の形成と改善に非常に不利になり、高圧抑制装置を設計することにより、この問題を効果的に解決し、真空を改善することができる。
【0015】
よりさらに、前記高圧抑制装置は、空洞内の圧力がハウジングの外部の圧力よりも大きい場合にのみ、空洞と外気を連通する。
【0016】
本発明は、炎の燃焼によって生成される真空の内部メカニズムを深く研究することによって、その中の主要な要因、即ち、炎がガス状に類似した物質であり、炎が消える過程はこのようなガス状に類似した物質が液体または固体状態に凝縮し、それにより真空を生成することを発見した。しかも、炎が大きいほど、炎が消えた後に発生する真空圧が高くなる。なお、密閉空洞内で炎が発生すると、空洞内に高圧が発生し、これは、炎が消えた後に形成される真空のサイズに大きな影響を与えることを発見した。これに基づいて、本発明は、炎に基づく真空発生器を提供し、且つそれに基づいて様々な改善及び最適化を行い、従来の真空発生装置(真空ポンプ、ジェット真空管等)と比べて、本発明の真空発生器は以下の利点を有する。
【0017】
(1)エネルギー消費が非常に低い。本発明は、燃料を動力源として直接使用する。燃料の燃焼により流体の位置エネルギー(即ち、真空圧)を直接発生させる。過程全体でエネルギー形態の変換は1回だけであり、エネルギーの損失を最大限に減らす。
【0018】
(2)使用範囲が広い。本発明は、高出力の電力機器を必要とせず、このため、高出力の電力供給も必要としない。非常に低い電力供給(点火火花を生成する点火装置の電力が非常に低いため、非常に小さなボタン電池で点火できる)の条件下で作動できる。
【0019】
(3)騒音が低い。点火時、点火装置による電気火花の発生は非常にかすかな音を出す。密閉していない空洞内で、炎の発生はほとんど音がない。密閉された空洞内で、炎の発生は瞬間的な音を出すが、空洞が密閉状態にあるため、音を効果的に外部に伝えることができないため、音がはっきりしない。炎が消えてもほとんど音を出さない。要するに、本発明は、連続的な機械的振動及び高速気流を発生させず、このため、明らかな騒音を発生させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明における最も基本的な構造及び過程模式図である。
図2】炎の燃焼と消えの全過程における空洞内の圧力と温度の変化曲線である。
図3】空洞内の炎のサイズと真空圧との関係実験(a)及び結果図(b)である。
図4】本発明による具体的な実施形態の構造模式図である。
図5図4に示す構造の使用模式図である。
図6図5の実験過程における空洞内の圧力の変化曲線である。
図7】本発明の他の具体的な実施形態の構造模式図である。
図8図7に示す構造の実験過程における空洞内の圧力の変化曲線である。
図9】本発明による他の具体的な実施形態の構造模式図である。
図10】本発明による他の具体的な実施形態の構造模式図である。
図11】本発明による他の具体的な実施形態の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施例及び図面を参照して本発明の手段をさらに解釈して説明する。
【実施例1】
【0022】
本例では、真空発生器は、ハウジング、燃焼物及び点火装置からなる。燃焼物はアルコールブロックである。ハウジング内に空洞が形成され、アルコールブロックは空洞内に設けられる。前記空洞に1つの開口が設けられる。空洞内の圧力と温度の変化をテストするために、ワークピースの表面に温度センサーと圧力センサーが設けられる。
【0023】
図1に示すように、まず、点火装置は固体アルコールブロックに点火し、固体アルコールブロックが空洞内で燃焼し、炎を形成する。次に、ハウジングの開口の端面をワークピースに置き、ワークピースが空洞の開口を覆って空洞を外気から隔離することにより、空洞は密閉空間を形成する。炎は空洞内の酸素を消費し、酸素濃度が徐々に低下するに伴って、炎が消え、空洞内に真空圧を形成し、ハウジングの開口が真空圧をワークピースの表面に連通し、ワークピースを吸着する役割を果たす。
【0024】
図2はハウジングの開口端面をワークピースに置いた後の空洞内の圧力と温度の変化結果曲線である。これから分かるように、図1におけるステップ3の前に、空洞が外気に連通し、空洞内の圧力が大気圧と等しくなり、ステップ3の後に、空洞内の圧力は炎の消失に伴って低下し、最終的に50キロパスカルの真空圧を形成する。空洞内で上記の真空圧を発生させる原因を以下のように分析する。
【0025】
1)固体アルコールブロックの燃焼は酸素を消費する
酸素は空気の20%を占め、アルコール燃焼過程では、燃焼が完全に十分であると仮定すると、アルコール燃焼の化学反応は3つの酸素分子を消費するとともに、2つの二酸化炭素分子を生成し、この計算に基づいて、炎が消えた後、空洞内のガスは約7%(=20%/3)減少し、真空圧に換算するとわずか7キロパスカルである。この真空圧は、実験によって測定される真空圧よりもはるかに小さい。勿論、該原因は上記空洞内での真空の生成の主な原因ではない。
【0026】
2)炎が消えた後に温度が低下し、ガスが冷却して収縮する
固体アルコールブロックが燃焼する場合、大量の熱を放出し、空洞内の温度が高くなる。炎が消えた後、燃焼が中止し、アルコールブロックは熱を放出せず、空洞内の熱がハウジングの壁面との間の熱交換によって発散され、空洞内の温度が低下し、これにより、空洞内のガスは冷却して収縮し、真空圧を形成する。しかし、図2のデータから示すように、炎が完全に消える前に、温度が上昇し続ける。しかし、温度が上昇していても、真空圧が既に短時間で形成された。温度がピークに達すると、既に30キロパスカルの真空圧がある。明らかに、この30キロパスカルの真空圧は温度低下によって解釈できない。しかも、温度低下は非常に遅い過程であるため、温度低下によって真空圧の迅速な発生の現象を良く解釈することもできない。
【0027】
3)炎の凝縮
炎はガス状に類似した物質である。炎の消失は本質的に、このようなガス状に類似した物質を液体または固体状態に凝縮する過程である。つまり、炎が消えた後、ガス状に類似した炎が消失し、それにより、真空を生成する。炎の体積が大きいほど、炎が消えた後に発生する真空圧が高くなる。図3(a)は対応する実験の模式図である。1つの平面にいくつかのアルコールコットンボールを置き、いくつかのアルコールコットンボールを点火し、いくつかの炎の玉を生成し、次に、ハウジングで炎の玉を覆い、同時に、圧力センサーを使用してハウジングの内部の圧力を測定し、図3(b)の実験結果を得る。実験結果に示すように、炎の玉の数が多いほど、ハウジング内の真空圧が高くなり、つまり、炎の体積が大きいほど、真空圧が高くなる。また、この過程では、真空圧の発生が炎の消失と同期しているため、真空圧の発生速度が非常に速い。
【0028】
通常、人々は上記1)と2)しか知らないため、炎が消えた後、真空がゆっくりと形成され(温度低下過程は長い時間がかかる)、且つ、真空圧が非常に小さいという誤解を招く。このような誤解は、この現象の開発と利用を制限する。なお、真空の大きさが炎の大きさと関係がないという他の誤解を招く。このため、現在のカッピング技術は、炎を空洞内に置かず、炎のサイズにいずれの設計要件も求めることがない。本発明は、研究によって、第3の原因が真空圧の発生の主要な原因であることを発見し、それを真空発生器に適用し、十分な燃焼を確保し、十分に大きな炎を取得する限り、高真空圧を迅速に発生させることができる。このような真空発生器は工業用途の価値を持つことができる。
【実施例2】
【0029】
図4は本発明の他の実施形態である。実施例1と比べて、本実施例の真空発生器は燃料の補給によって十分な燃焼を保持し、大きな炎を取得する。燃料補給の方法は複数種あり、本例では、1つだけの具体的な方法を例として説明する。本実施例では、燃焼物はアルコールに浸したアスベストブロックであり、アスベストブロックはハウジングの空洞内に設けられる。前記真空発生器は燃料補給ユニットを更に備え、ハウジングの外部に設けられ、アスベストブロックとの間に搬送パイプで接続され、搬送パイプに開閉弁が取り付けられる燃料容器と、ハウジングの外部に設けられ、その点火ヘッドがハウジング内に伸びアスベストブロックに近づく点火装置と、を含む。
【0030】
開閉弁を開け、燃料容器に貯蔵された液体燃料(例えば、アルコール、灯油、ガソリンなど)が搬送パイプを通ってアスベストブロックに流れ、アスベストブロックを浸し、その後、開閉弁を閉じ、液体燃料の供給を遮断する。次に、点火装置はアスベストブロックにおける液体燃料を点火し、炎を発生させる。ハウジングの開口端の面をワークピースに置く。ワークピースは空洞の開口を覆い、空洞と外気を隔離する。炎が消え、空洞内に真空圧を形成する。ハウジングの開口によって真空圧をワークピースの表面に連通し、ワークピースを吸着する役割を果たす。複数回燃焼した後、アスベストブロックにおける液体燃料が少なくなり、炎が小さくなり、開閉弁を再開して、アスベストブロックに燃料を補給することができ、アスベストブロックに十分な燃料を有することを確保し、このように、燃焼して大きな炎を形成することができ、それにより、炎が消えた後に高い真空圧を取得する。
【実施例3】
【0031】
本実施例では、図5に示すように、図4の真空発生器をワークピースに予め置き、ハウジングとワークピースにより密閉空洞を構成する。次に、アスベストブロックにおける燃料を点火する。燃料と空洞内の空気が燃焼し、炎を発生させる。続いて、空洞内の空気がすべて消費され、炎が消える。図6は実験によって得られた上記過程における空洞内の圧力変化曲線である。燃料が密閉空洞内で燃焼する時に、炎の発生によって空洞内の圧力が迅速に上昇する。このような圧力上昇は炎が消える時の圧力低下曲線を上昇させ、その結果、空洞内の真空圧が低下し、ひいては真空圧を形成することができない。このため、工業用途では、密閉空洞内の燃焼物が燃焼する時の圧力上昇を抑制することは、真空圧を上げるのに役に立つ。本実施例において、高圧抑制装置を設けることによって、炎発生時の圧力上昇を抑制及び低減し、さらに真空圧を上げる目的を達成し、前記高圧抑制装置は、空洞内の圧力がハウジングの外部の圧力よりも大きい場合にのみ、空洞と外気を連通する。
【0032】
本実施例の高圧抑制装置は一方向弁であり、図7に示すように、一方向弁はパイプを介して空洞に互いに連通する。燃料が燃焼すると、空洞内の圧力が上昇し、両側の圧力差(大気圧が空洞内の圧力よりも低い)の作用下で一方向弁が開かれ、空洞内の高圧ガスは一方向弁を通じて排出され、空洞内の高圧を低下させる役割を果たす。空洞内に真空圧を形成し始めると、両側の圧力差(大気圧が空洞内の圧力よりも高い)の作用下で一方向弁が閉じられ、空洞内の真空圧を保持する役割を果たす。図8図7の装置の実験結果である。図6図8の結果を比較すると、高圧抑制装置は空洞内の圧力上昇を効果的に抑制及び低減し、炎が消えた後の真空圧を上げることができることが分かる。
【実施例4】
【0033】
図9は本発明の他の実施形態である。本実施例は上記の実施例に基づく更なる改善であり、ハウジングの開口を通じて真空圧を容易に使用することができる。
【0034】
本実施例のハウジングの開口は、縮小して穴になる。ハウジングの開口は真空管を介して空洞内の真空圧を吸盤などの真空使用機器に連通する。空洞内の真空によって吸盤がワークピースを吸着することができる。吸盤がワークピースから外れると、外気が吸盤と真空管を通って空洞に流れ込み、空洞内に一定量の酸素が存在し、2回目の燃焼が可能になる。
【0035】
1回の燃焼が完了した後、空洞内に排気ガスが発生する。本実施例のハウジングの開口が比較的小さく、排気ガスを効果的に排出することは困難である。排気ガスを排出できないと、空洞内の酸素含有量が減少し、その結果、燃料の燃焼が不十分になり、さらに炎の体積の大きさに影響を及ぼす。このため、図10に示すように、本実施例の真空発生器はまた、燃焼排気ガスを排出し、空気を送り込むための換気機構を設ける。換気機構は送風装置と遮断機構を含む。遮断機構は、送風装置が空洞内に空気を送り込み、空洞が排気ガスを外部にスムーズに排出するのを容易にするように、空洞と外気との連通を開閉するために使用される。次の燃焼の前に、遮断機構が開かれて、空洞と外気を連通させ、次に、送風装置が起動し、外部の空気が送風管を通って空洞内に送り込まれる。送風の過程では、前回の燃焼からの排気ガスは開口穴または遮断機構を通して外部に排出される。空洞内の排気ガスを排出して空気を満たした後、遮断機構は空洞と外気の連通を遮断し、同時に、送風装置を停止する。吸盤をワークピースに置いた後、点火装置はアスベストブロックにおける燃料を点火し、次回のワークピース吸着動作を行う。
【0036】
なお、燃焼炎を増加させるために、換気機構は、空洞内に純粋な酸素等の助燃ガスを送り込むこともできる。酸素は燃焼をより完全にし、炎を大きくすることができる。
【実施例5】
【0037】
本実施例では、真空発生器で使用される燃焼物は、メタン、霧化されたガソリンなどのガス状または準ガス状である。図11に示すように、燃料補給ユニットは、開閉弁、燃料容器、及び搬送パイプを含む。開閉弁が開かれ、燃料容器はこれらの可燃ガスまたはオイルミストを空洞内に輸送し、空洞内の空気と混合する。点火装置が点火された後、炎を発生させ、炎が消えて真空圧を形成する。可燃ガスまたはオイルミストなどのガス状燃料または準ガス状燃料を燃焼物として使用する利点は、空洞全体内に炎を形成し、真空圧を上げるのに役に立つことである。実験によれば、前述のアルコールブロックやアルコールに浸したアスベストブロックと比較して、霧化されたアルコールを燃料として使用すると、より高い真空圧を発生させることができることが判明する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11