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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】流体循環式寝具
(51)【国際特許分類】
   A47C 17/02 20060101AFI20230419BHJP
   A47C 21/04 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
A47C17/02 Z
A47C21/04 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021199798
(22)【出願日】2021-12-09
【基礎とした実用新案登録】
【原出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2022078012
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】515200995
【氏名又は名称】株式会社YUNOHANA
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 道典
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-104125(JP,A)
【文献】特開2005-143729(JP,A)
【文献】登録実用新案第3080045(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 17/02
A47C 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の身体を挿入する袋体と、
温度を調節した流体を前記袋体に供給する流体供給ユニットと
前記袋体の上面及び下面に設置され、第1層及び第2層を有する積層体と、
前記第1層と前記第2層との一部を密着し、直線の四辺を有する略矩形の密着部と、
複数の前記密着部の間に位置し、前記積層体に対して格子状に設けられる流路と、を有し、
前記流路は、複数の前記密着部を等間隔に並べることにより、平面視における太さが一定となるよう形成されることを特徴とする、流体循環式寝具。
【請求項2】
請求項1に記載の流体循環式寝具であって、
前記袋体の上面及び下面は、テラヘルツ鉱石、トルマリン鉱石、又はブラックシリカ鉱石の粉末と、ラジウムを含む湯の花の精製物との少なくともいずれか1つを付着させた領域を所定のパターンに配置した内布を有することを特徴とする、流体循環式寝具。
【請求項3】
請求項2に記載の流体循環式寝具であって、
前記袋体の上面及び下面は、複数の側地と、前記複数の側地の間に設置される前記積層体と、前記内布とを有し、
前記内布は、前記積層体よりも身体側に位置するよう配置されることを特徴とする、流体循環式寝具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の流体循環式寝具であって、
前記袋体の上面は、足元に相当する部分が他の部分より隆起するよう構成されることを特徴とする、流体循環式寝具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体循環式寝具に関する。
【背景技術】
【0002】
寝具の温度を調節して、快適な睡眠を促す装置がある。
【0003】
特許文献1には、「内部に液体1が封入され上部にたるみを持つ水密性の袋体2と、袋体2の表面に配置される流体流入管接続口3と、袋体2の側面または下面に配置される流体排出管接続口4と、流体流入管接続口3で袋体と接続される流体流入管6および流体排出管接続口4で袋体と接続される流体排出管7および流体を循環させる流体循環ポンプ8および循環させる流体を貯留する貯留タンク9とから成り袋体2外部に配置された流体循環経路5と、流体循環経路5内に配置され流体を加熱又は冷却するための熱源器10と、温度センサからの信号に応じて熱源器の出力と流体の移動を制御する循環制御装置11と、流体循環経路5内に配置され経路内の気体を適宜排出制御可能なエア抜口12と、流体循環経路5内、あるいは袋体2の内部あるいは表面に配置され流体の温度を検出する温度センサ13と、流体排出管接続口4または流入管接続口3または流体循環経路5に接続され袋体2内部上面付近に配置される断面または表面に孔を設けた柔軟性のあるチューブ14とからなる寝具」に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開第2006-320648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
温度調節を行う寝具として、例えば電気毛布が挙げられる。電気毛布は、横臥した身体の上側を暖める寝具であるが、身体の一方の面のみの温度調節を行うため、その効果は限定的である。また、特許文献1に係る寝具のように、大掛かりな設備を用いて流体の温度調節を行う場合、設備の制約上、温度調節を行う部位が限定される。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、温度調節を効率的に行うことのできる流体循環式寝具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る流体循環式寝具は、使用者の身体を挿入する袋体と、温度を調節した流体を前記袋体に供給する流体供給ユニットと、前記袋体の上面及び下面に設置され、第1層及び第2層を有する積層体と、前記第1層と前記第2層との一部を密着し、直線の四辺を有する略矩形の密着部と、複数の前記密着部の間に位置し、前記積層体に対して格子状に設けられる流路と、を有し、前記流路は、複数の前記密着部を等間隔に並べることにより、平面視における太さが一定となるよう形成されることを特徴とする。
【0008】
上記いずれかの前記前記袋体の上面及び下面は、テラヘルツ鉱石、トルマリン鉱石、又はブラックシリカ鉱石の粉末と、ラジウムを含む湯の花の精製物との少なくともいずれか1つを付着させた領域を所定のパターンに配置した内布を有することを特徴としてもよい。
【0009】
上記いずれかの前記袋体の上面及び下面は、複数の側地と、前記複数の側地の間に設置される前記積層体と、前記内布とを有し、前記内布は、前記積層体よりも身体側に位置するよう配置されることを特徴としてもよい。
【0010】
上記いずれかの前記袋体の上面は、足元に相当する部分が他の部分より隆起するよう構成されることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、温度調節を効率的に行うことのできる流体循環式寝具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】流体循環式寝具の概要を示す図である。図1(A)は、流体循環式寝具の外観の一例を示す図である。図1(B)は、袋体の一部の外観の一例を示す図である。
図2】流体供給ユニット及び切替装置の概要を説明するための図である。図2(A)は、流体供給ユニットの正面図の一例である。図2(B)は、切替装置の外観の一例を示す図である。
図3】袋体の構造を説明するための図である。図3(A)は、袋体下部の一部の断面を拡大した図の一例である。図3(B)は、内布を上から見た図の一例である。図3(C)は、積層体の一部の断面を拡大した図の一例である。
図4】積層体の上面図の一例である。図4(A)は、矩形形状の積層体の上面図の一例を示す。図4(B)は、図4(A)の積層体のうち、v部分を拡大した図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、流体循環式寝具1の概要を示す図である。図1(A)は、流体循環式寝具1の外観の一例を示す図である。図1(B)は、袋体10の一部の外観の一例を示す図である。
【0014】
流体循環式寝具1は、袋体10と、流体供給ユニット13と、切替装置14と、ホース15とを有する。袋体10は、使用者の身体を挿入する袋状の寝具である。袋体10は、使用者の頭部に相当する部分に位置する一辺を略凹形状に切り欠いた多角形形状の袋体上面10aと、略長方形形状の袋体下面10bとを有し、袋体上面10aと袋体下面10bとの少なくとも一辺を互いに縫合して構成される。なお、図1(A)に示す袋体上面10aは、使用者の足元に相当する部分が隆起するよう、複数の面で構成されている。このように、袋体上面10a及び袋体下面10bは、複数の面で構成されていてもよい。
【0015】
図1(A)に示す袋体10は、使用者の足元の部分に相当する短辺と一方の長辺との2辺が縫合されている。袋体上面10aは、2つの頭部片11を有し、頭部片11の間が袋体上面10aの中央に向かって略凹形状に窪んでいる。頭部片11及び略凹形状に窪んだ部分は、開口している。
【0016】
袋体10は、少なくとも一辺が開口しており、使用者は開口部から身体を挿入する。図1に示す袋体10は、頭部側の一辺の他、長辺の一方に開口部12を有する。袋体上面10aの有する開口部12aと、袋体下面10bの有する開口部12bとは、固定部材により閉じた状態を保つことができる。固定部材には、例えば線ファスナーや面ファスナーを用いることができる。
【0017】
袋体上面10a及び袋体下面10bは、流体を導く流路を内部に有する。流路の構成については後述する。
【0018】
流体供給ユニット13は、温度を調節した流体をホース15を介して袋体10に供給する。流体には、液体や気体を用いることができるが、液体を用いることが好ましく、水を用いることがさらに好ましい。流体供給ユニット13は、ボイラーを内蔵しており、流体を加熱することができる。なお、流体供給ユニット13は、ボイラーのほか、流体を冷却する冷却装置を有していてもよい。
【0019】
流体供給ユニット13は、好ましくは0.5L以上1L以下、さらに好ましくは0.7L以上0.8L以下の量の流体を収容することができる。また、流体供給ユニット13は、好ましくは25度以上75度以下の温度になるよう、流体の温度調節を行うことができる。
【0020】
また、流体供給ユニット13は、ポンプを有し、温度を調節した流体をホース15に排出するほか、ホース15から導かれた流体を回収する。回収した流体は流体供給ユニット13により温度調節され、ホース15を経由して再度袋体10に供給される。即ち、流体供給ユニット13は、袋体10内の流体を循環させる機能を有する。
【0021】
流体供給ユニット13は、切替装置14と接続するための接続口131を背面に有する。また、流体供給ユニット13は、カバーの一部である蓋132を開口させることができる。蓋132を開口させることにより、内部の流体の補充やフィルターの交換が可能である。また、蓋132は、流体供給ユニット13への入力操作を受け付けるリモコンの機能を有していてもよい。
【0022】
一例として、流体供給ユニット13は、電気を動力とする。そのため、流体供給ユニット13は、電源ケーブルに接続されているが、本実施形態では図示を省略している。
【0023】
なお、流体供給ユニット13は、内部に温度センサーを有する。先述のボイラー又は冷却装置は、温度センサーを用いて、指定された温度になるよう流体の温度を調節する。また、流体供給ユニット13は、温度過升防止装置を有しており、所定温度以上の流体の温度を検出すると、自動的に加熱を停止する等により、過度の温度上昇を防止する。
【0024】
また、流体供給ユニット13は、傾斜センサーを備えており、水平でない状態での使用を防ぐ。そのほか、流体供給ユニット13は、ボイラー内の流体量(水位)が適切であるか否かを検出する水位センサーや、過電流を検出する過電流センサー、入力操作の受付を中断するロック機能、誤作動防止機能、強制ガイド接点を有する安全リレー装置等を有していてもよい。また、流体供給ユニット13は、流体内の異物を除去するフィルターを有していてもよい。
【0025】
切替装置14は、温度を調節する領域の切替指示の入力操作を受け付ける装置である。袋体10の有する流路は、異なる複数の領域の温度を調節するよう、袋体10に設置されている。一例として、流路は、袋体上面10aを1つの領域とし、袋体下面10bをもう1つの領域とする2つの領域に設置されている。切替装置14は、入力された指示に従い、複数の領域の温度調節の切替を行う。
【0026】
例えば、切替装置14は、袋体上面10aの領域の温度調節を行うか、袋体下面10bの領域の温度調節を行うか、又は袋体上面10a及び袋体下面10bの双方の温度調節を行うかといった切替指示を受け付ける。切替装置14は、切替指示に応じた領域の流路に流体が供給されるよう、流体を分配する。なお、温度調節の対象となる領域はこれに限られず、例えば袋体上面10aと、袋体下面10bとのそれぞれが複数の領域に分割されていてもよい。
【0027】
切替装置14は、内部に逆止弁を有し、流体供給ユニット13からホース15に排出された流体、又はホース15から流体供給ユニット13に進入するよう導かれた流体の逆流を防止する。ホース15は、流体供給ユニット13から袋体10に対して供給される流体、及び袋体10から流体供給ユニット13に対して戻ってくる流体を導く。
【0028】
図2は、流体供給ユニット13及び切替装置14の概要を説明するための図である。図2(A)は、流体供給ユニット13の正面図の一例である。流体供給ユニット13は、接続口131と、蓋132とのほか、操作パネル133を有する。例えば操作パネル133は、電源ボタンと、流体の温度設定の入力操作を受け付けるボタンと、タイマーに関する入力操作を受け付けるボタンとを有する。
【0029】
図2(B)は、切替装置の外観の一例を示す図である。切替装置14は、切替スイッチ141を有する。切替スイッチ141は、温度調節を行う領域を指示する入力操作を受け付ける。図2(B)に示す切替装置14は、図2(B)右側の切替装置14(操作ダイヤル)を回転させることにより、温度調節を行う領域の指定を受け付ける。
【0030】
図3は、袋体10の構造を説明するための図である。図3(A)は、袋体下面10bの一部の断面16を拡大した図の一例である。図3(A)下方向(-y方向)が重力方向である。
【0031】
袋体10は、複数の側地161と、内布162と、積層体163とを有する。内布162と積層体163とは、複数の側地161の間に設置される。側地161は、袋体10の外面を覆う生地である。側地161の素材は問わないが、身体が触れる側の側地161(例えば、図3(A)の上側の側地161)に熱伝導性に優れた布地を用いることにより、効率的に温度調節効果を得ることができる。また、袋体10の外面を構成する側地161(例えば、図3(A)の下側の側地161)に断熱性に優れた布地を用いることにより、保温効率又は保冷効率に優れた寝具を構成することができる。
【0032】
図3(B)は、内布162を上から見た図の一例である。即ち、図3(B)は、図3(A)の+y方向から見た内布162の一例である。内布162は、所定形状の区域を複数有している。図3(B)は、内布162の有するパターンを模式的に示している。一例として、内布162は、略ひし形形状である矩形領域eを複数有しており、矩形領域eはパターンを形成するように配列している。
【0033】
矩形領域eには、テラヘルツ鉱石、トルマリン鉱石、又はブラックシリカ鉱石の粉末と、ラジウムを含む湯の花の精製物との少なくともいずれか1つが所定のパターンで付着している。
【0034】
テラヘルツ鉱石は、高純度のシリコン(珪素)である。例えば、石英から酸素を除去することにより、高純度のシリコンであるテラヘルツ鉱石を得る。テラヘルツ鉱石は、例えば加熱等の刺激により励起し、テラヘルツ波を発生させると考えられている。テラヘルツ波は、周波数100GHz~10THzの電磁波であり、周波数が光波と電波との中間領域に該当する。テラヘルツ波を照射することにより、細胞の振動エネルギーが高まり、生命活動が活発化し自然治癒力が向上すると考えられている。
【0035】
また、トルマリン鉱石は、トルマリンを含む鉱物であって、圧電効果を有しており、マイナスイオンを発生させると考えられている。ブラックシリカ鉱石は、ブラックシリカ(黒鉛珪素)を含む鉱物であって、遠赤外線を放出することにより細胞の活性化を促す効果が期待されている。
【0036】
ラジウムは、ラジウム放射線を放射する元素であり、生物活性を刺激したり、高線量の放射線の照射に対する抵抗性をもたらしたりする放射線ホルミシス効果を有するものとして注目されている。放射線ホルミシス効果により、体内に活性酸素が発生し、免疫の活性反応を進行させると考えられている。
【0037】
このようなラジウムを有する天然鉱物として、一般的に北投石が知られているが、北投石は世界で台湾台北州と秋田県の玉川温泉の2か所でしか産出されないため、日本では特別天然記念物に指定されている。現在、日本では北投石の採取は禁止されている。
【0038】
本実施形態では、玉川温泉で産出される湯の花を、酸、硫黄、重金属等の有害物質を除去することにより精製し、精製物を得る。玉川温泉の温泉水は、PH1.1~1.2の強酸性泉(硫化水素含有塩酸性緑ばん泉)であって、北投石とほぼ同程度のラジウム放射線を放射することに着目し、玉川温泉で採取される湯の花を精製することで人工北投石ともいえる精製物を作製する。つまり、湯の花の精製物を付着させた内布162を流体循環式寝具1に用いることで、ラジウム放射線がもたらす健康増進効果が期待できる。
【0039】
また、精製物が放出するラジウムが壊変することにより、ラドンを含む不活性ガスが発生する。ラドンガスは、皮膚組織や神経系等を刺激することにより、ラジウム同様に放射線ホルミシス効果を有すると考えられる。従って、玉川温泉の湯の花の精製物を付着させた内布162を流体循環式寝具1に用いることで、皮膚細胞や体内組織が活性化し、健康を増進させることができる。
【0040】
なお、精製物によるラジウム放射量は、毎分1200CPMカウント以上であることが望ましい。ラジウム放射量が毎分1200CPMカウント以上あれば、一般的に医療用として充分な効果が期待できるとされているためである。また、ラジウム放射量が多すぎると刺激が強すぎる恐れがあるため、毎分1200CPM~1600CPMカウントの範囲内で放射されることがさらに望ましい。
【0041】
矩形領域eに付着させる湯の花は、玉川温泉で産出されたものが望ましい。しかしながら、本実施形態において用いる湯の花は、玉川温泉で産出されたものに限定されない。
【0042】
湯の花の精製方法については限定されない。例えば、採取した湯の花を焼成することにより、不純物を除去して精製を行ってもよい。また、矩形領域eに対する精製物の付加方法についても、特に限定されない。例えば、精製物を含有させたインクをシルクスクリーン印刷を用いて内布162に印刷することにより、精製物を矩形領域eに付着させることができる。
【0043】
内布162の有する矩形領域eの対角線のうち、長い方の対角線は、望ましくは10mm以上20mm以下であり、より望ましくは12mm以上16mm以下である。また、矩形領域eの短いほうの対角線は、望ましくは2mm以上10mm以下であり、より望ましくは4mm以上10mmm以下である。この構成により、矩形領域eに付着させた精製物による効果を効率的に享受することができる。
【0044】
図3(C)は、積層体163の一部の断面を拡大した図の一例である。積層体163は、第1層163aと、第2層163bとを有している。第1層163a及び第2層163bには、可撓性のある材料を用いる。例えば、第1層163a及び第2層163bには、ポリ塩化ビニル等の樹脂素材を用いることができる。
【0045】
積層体163は、第1層163aと第2層163bとが互いに密着した密着部165を有する。第1層163aと第2層163bとが密着していない部分の少なくとも一部は、流路164として機能する。即ち、流路164は、第1層163aと第2層163bとの一部を密着させることにより形成される。
【0046】
図4は、積層体163の上面図の一例である。図4(A)は、矩形形状の積層体163の上面図の一例を示す。図4(B)は、図4(A)の積層体163のうち、v部分を拡大した図の一例である。なお、図4(B)に示すs-s´断面が、図3(A)に示す積層体163の断面図である。s-s´断面は密着部165の断面であるため、図3(A)では積層体163を構成する第1層163aと第2層163bとが互いに密着している。
【0047】
また、図4(B)に示すt-t´断面が、図3(C)に示す積層体163の断面図である。t-t´断面では、2つの密着部165と、密着部165に挟まれた流路164とが示される。なお、積層体163の形状は任意であり、矩形形状に限定されるものではない。
【0048】
積層体163の一部を密着させることにより、積層体163に対し流路164が格子状に設けられる。格子の一辺の距離fは、身体全体の温度を調節することを考慮すると、望ましくは3cm以上12cm以下であり、さらに望ましくは4cm以上9cm以下である。また、流体が水である場合に、円滑に水流の循環を促すためには、流路164の幅gは、望ましくは0.5cm以上6cm以下であり、さらに望ましくは1cm以上4cm以下である。
【0049】
矢印wは、流路164に導かれる流体を示す。流路164は格子状でなくてもよいが、格子状に設けることにより、積層体163を上から見た場合の流路164の太さが一定となり、より円滑に流体を導くことができる。また、流路164を流体が通過することによる、密着部165への負担が略均等となり、積層体163の劣化を防ぐことができる。
【0050】
また、積層体163には、少なくとも2本のホース15a・15bが接続される。一方のホース15から流体が積層体163に流入し、他方のホース15から流体が排出され、流体供給ユニット13へと導かれる。
【0051】
本実施形態において、袋体10の有する1つの領域に対して1つの積層体163が設置される。流体供給ユニット13及び切替装置14は、温度を調節する領域の積層体163に対して流体を供給し、積層体163内を循環した流体を回収する。切替装置14は、他の領域の温度調節を行う入力操作を受け付けると、これまで流体を供給していた積層体163への供給を停止し、入力操作に応じた領域に設置された積層体163に対する流体の供給を開始する。即ち、切替装置14は、各積層体163への流体の供給の切替を行う分配器として機能する。
【0052】
また、積層体163において、密着部165は、格子状の流路164の壁部分に設けられるだけでなく、流路164の一部(即ち格子の一部)を閉鎖するよう設けられている。流路164を閉鎖する密着部165は、例えばホース15aからホース15bへの最短距離の流れを妨げるよう設けられる。これにより、格子状の流路164の全体に流体が供給される。
【0053】
付言すれば、流路164は、積層体163を用いて構成されるのではなく、例えば各領域に分割して設置されたチューブにより構成されてもよい。その場合も、流路164は、側地161と内布162との間に設けられる。しかしながら、円筒状のチューブにより流路164を構成した場合、使用者の体重による負荷がかかる上面側の接地面積が狭く、円筒の一部に負荷が集中する。そのため、使用者の体重によりチューブがへこみ、流体の流れが妨げられる可能性がある。従って、流路164は、図3及び図4に示すように、積層体163を用いて構成されることが望ましい。
【0054】
本実施形態の積層体163により流路164を構成すると、円筒状のチューブに比べ、上面との接地面積を大きくすることができ、負荷を分散させることができる。即ち、使用者の体重が積層体163上に分散されるため、流路164への体重の影響を抑制することができる。これにより、袋体10の有する領域全体に対し、適切かつ効率的に温度調節を行うことが可能となる。
【0055】
以上、本実施形態の流体循環式寝具1によれば、上面又は下面の一方のみでなく、使用者の望む部分の温度調節を行うことができる。また、流体を用いて温度調節を行うため、電気毛布と比べて電磁波の影響を抑制することが可能となる。また、身体を温めるために流体循環式寝具1を用いる場合、電気毛布に比べて就寝中の静電誘導や絶縁不良の心配がなく、効果的に血流を促し、身体に優しい自然な暖かさを提供することができる。
【0056】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。上記実施形態に示した要件に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0057】
また、上記の流体循環式寝具1の機能構成は、理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分類したものである。構成要素の分類の仕方や名称によって、本発明が制限されることはない。流体循環式寝具1の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【符号の説明】
【0058】
1:流体循環式寝具、10:袋体、10a:袋体上面、10b:袋体下面、11:頭部片、12・12a・12b:開口部、13:流体供給ユニット、14:切替装置、15・15a・15b:ホース、16:断面、131:接続口、132:蓋、133:操作パネル、141:切替スイッチ、161:側地、162:内布、163:積層体、163a:第1層、163b:第2層、164:流路、165:密着部、e:矩形領域、w:矢印
図1
図2
図3
図4