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特許7265294ガス環境中の有機化合物をモニタリングするためのシステム、機器及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】ガス環境中の有機化合物をモニタリングするためのシステム、機器及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/08 20060101AFI20230419BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20230419BHJP
   B01J 20/282 20060101ALI20230419BHJP
   G01N 30/64 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
G01N30/08 G
G01N30/26 P
B01J20/282 J
G01N30/64 F
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022029540
(22)【出願日】2022-02-28
(62)【分割の表示】P 2018553906の分割
【原出願日】2017-04-14
(65)【公開番号】P2022066291
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】62/322,980
(32)【優先日】2016-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593152720
【氏名又は名称】イェール ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】Yale University
【住所又は居所原語表記】2 Whitney Avenue, New Haven, CT 06510, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(72)【発明者】
【氏名】ドリュー ジェントナー
【審査官】倉持 俊輔
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00,30/88,
G01N 27/62,
G01N 33/00,33/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ、
フロー絞り器、
トラップ、
クロマトグラフィーカラム、
ディテクタ、及び、
ポンプ
を含む、ガス混合物を分析するためのシステムであって、
前記トラップ及び前記ポンプは、前記トラップの下流に位置する前記ポンプで第一のガス流路を形成するように流体連通可能であり
前記フィルタ、前記フロー絞り器、前記トラップ、前記クロマトグラフィーカラム、前記ディテクタ及び前記ポンプは、前記フィルタ、前記トラップ、前記クロマトグラフィーカラム、及び前記ディテクタの下流に位置する前記ポンプで第二のガス流路を形成するように流体連通可能であり、前記フロー絞り器は、前記トラップ、前記クロマトグラフィーカラム、前記ディテクタ及び前記ポンプの上流に位置しており、
前記フロー絞り器は前記第二のガス流路のみに位置している、システム。
【請求項2】
前記トラップ及び前記クロマトグラフィーカラムに流体連通していないフィルタ、前記ディテクタ及び前記ポンプが、第三のガス流路を形成するように流体連通可能である、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記クロマトグラフィーカラムは気体-固体吸着クロマトグラフィーカラム及び気体-液体ガスクロマトグラフィーカラムからなる群より選ばれる、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記トラップは吸着材料をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記フィルタは活性炭フィルタである、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記ディテクタは光イオン化ディテクタ、質量分析計、分光光度計及び熱伝導率ディテクタからなる群より選ばれる、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記ディテクタは光イオン化ディテクタである、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記ポンプは前記第一のガス流路及び前記第二のガス流路に負圧を提供する、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
ハウジングをさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
前記ハウジングは216立方インチ以下である、請求項9記載のシステム。
【請求項11】
前記システムはppt(1兆分率)の感度で化合物を検出することができる、請求項1記載のシステム。
【請求項12】
ガス混合物中の少なくとも1つの化合物を分析する方法であって、前記方法は、
トラップの下流に位置するポンプを用いて、前記トラップを通るように前記ガス混合物のフローを指向させて、少なくともある量の化合物を濃縮すること、
フィルタの下流に位置する前記ポンプを用いて、前記フィルタ、及び前記フィルタの下流のフロー絞り器を通るようにガス混合物のフローを再指向させて、ろ過されたガスフローをトラップに提供すること、
前記ろ過されたガスフロー中に、少なくともある量の濃縮された化合物を解放すること、及び、
少なくともある量の解放された濃縮された化合物を分析すること、
を含み、
前記トラップを通るガス混合物のフローの方向は、前記トラップを通るろ過されたガスのフローの方向とは反対である、方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの化合物は少なくとも1つの有機化合物を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの有機化合物は少なくとも1つの揮発性有機化合物を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
少なくともある量の解放された濃縮された化合物の分析は、解放された濃縮された化合物の少なくともある量をガスクロマトグラフィーカラムを通過させることを含む、請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記ガスクロマトグラフィーカラムは気体-固体吸着クロマトグラフィーカラム及び気体-液体ガスクロマトグラフィーカラムからなる群より選ばれる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
少なくともある量の解放された濃縮された化合物の分析は光イオン化、質量分析法、分光光度法及び熱伝導率ディテクタを用いる方法からなる群より選ばれる方法によって有機化合物を同定することを含む、請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記化合物を定量化することをさらに含む、請求項17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2016年4月15日に出願された米国仮出願第62/322,980号の優先権を主張し、それ全体を参照により本明細書中に取り込む。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
一般に、大気又は他の環境下での揮発性有機化合物(VOC)を含む有機化合物の測定は、大きく(最小で約2フィートx 2フィートx 2フィート)、高価で($25k~500kの範囲)、そしてクロマトグラフィー用の消費可能ガス、例えば、高純度ヘリウム、水素及び/又は窒素シリンダを必要とする計器を必要とする。科学の進歩、健康スクリーニング、環境モニタリング及び規制政策はこれらの制約及びそのコストによって大きく制限され、開発途上国又は恵まれない地域社会においてはさらになおさらである。現在の測定ツールは、現場での大型ガスクロマトグラフ及び/又は質量分析計の設置(及び訓練を受けた専門家による操作)を必要とするか、又は、1フィートのガスキャニスターで空気サンプルを捕捉して、次いで、実験室で分析するために(さらには海洋間の距離で)輸送する必要があり、その測定値は、凝縮及びその壁への吸着により、キャニスタから回収できるものによって限定される。
【0003】
職業上及び工業上の設備は、制限された毎日又はそれ以上の平均測定値、又は、低い精度及び選択性のデータをそれぞれ提供する吸着剤「チューブ」又は「バッジ」又は化学的に非選択的なセンサーに依存しなければならない。ヒトの健康スクリーニングのためのツールは非常に高価であり、侵入性であるか又は放射線を伴う試験が必要な場合があるため、ヒトの呼吸又は他のガス媒体の分析の分野は、低コストで非侵入的な方法としての可能性について大きな有望性を示す。しかしながら、呼吸分析のための利用可能な方法は、例えばリアルタイムの大気圧イオン化質量分析計などの、維持及び操作に必要とされる特殊な専門知識を考慮すると、非常に高価でかつ稀である。この問題には、ヘルスケアサービスネットワーク全体に広がることができる堅牢で低コストの解決策が必要である。
【0004】
したがって、特に圧縮キャリアガスを必要とせずに動作するシステム及び方法において、ガス環境中の有機化合物を同定及び定量化するためのシステム及び方法が当該技術分野において引き続き必要とされている。本発明は、当該分野におけるこの継続的な必要性に取り組むものである。
【発明の概要】
【0005】
発明の要旨
1つの態様において、本発明は、ガス混合物を分析するためのシステムであって、
フィルタ、トラップ、クロマトグラフィーカラム、ディテクタ及びポンプを含み、前記トラップ及び前記ポンプは流体連通されて、第一のガスフローパスを形成し、前記フィルタ、前記トラップ、前記クロマトグラフィーカラム、前記ディテクタ及び前記ポンプは流体連通されて、第二のガスフローパスを形成する、システムに関する。1つの実施形態において、ディテクタ及びポンプは流体連通されて、第三のガスフローパスを形成する。別の実施形態において、クロマトグラフィーカラムは、気体-固体吸着クロマトグラフィーカラムである。別の実施形態において、クロマトグラフィーカラムは気体-液体ガスクロマトグラフィーカラムである。別の実施形態において、トラップは吸着材料をさらに含む。別の実施形態において、フィルタは活性炭フィルタである。別の実施形態において、ディテクタは、光イオン化ディテクタ、質量分析計、分光光度計及び熱伝導率ディテクタからなる群より選ばれる。別の実施形態において、ディテクタは光イオン化ディテクタである。別の実施形態において、ポンプは負圧を提供する。別の実施形態において、システムは、ハウジングをさらに含む。別の実施形態において、ハウジングは216立方インチ以下である。
【0006】
別の態様において、本発明は、ガス混合物中の少なくとも1つの化合物を分析する方法であって、トラップを通るようにガス混合物のフローを指向させ、少なくとも1つの化合物の少なくともある量を濃縮すること、フィルタを通るようにガス混合物のフローを再指向させて、ろ過されたガスフローをトラップに提供すること、少なくとも1つの濃縮された化合物の少なくともある量を前記ろ過されたガスフローに解放すること、及び、解放された少なくとも1つの濃縮された化合物の少なくともある量を分析することを含む、方法に関する。1つの実施形態において、少なくとも1つの化合物は、少なくとも1つの有機化合物を含む。別の実施形態において、少なくとも1つの有機化合物は少なくとも1つの揮発性有機化合物を含む。1つの実施形態において、解放された少なくとも1つの濃縮された化学化合物の少なくともある量の分析は、解放された少なくとも1つの濃縮された化合物の少なくともある量をガスクロマトグラフィーカラムに通すことを含む。1つの実施形態において、ガスクロマトグラフィーカラムは気体-固体吸着クロマトグラフィーカラムである。別の実施形態において、クロマトグラフィーカラムは気体-液体ガスクロマトグラフィーカラムである。別の実施形態において、解放された少なくとも1つの濃縮された化合物の少なくともある量の分析は、光イオン化、質量分析、分光光度法及び熱伝導性からなる群より選ばれる方法によって少なくとも1つの有機化合物を同定することを含む。別の実施形態において、解放された少なくとも1つの濃縮された化合物の少なくともある量の分析は、少なくとも1つの化合物を定量化することをさらに含む。1つの実施形態において、ガス混合物は環境ガス混合物である。別の実施形態において、ガス混合物は、生体対象によって吐き出されるか、又はさもなければ放出されるガスを含む。別の実施形態において、ガス混合物は空気である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図面の簡単な説明
本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、よりよく理解されるであろう。本発明を例示する目的のために、図面には現在好ましい実施形態が示されている。しかしながら、本発明は、図面に示された実施形態の正確な配置及び手段に限定されないことを理解されたい。
図1A図1A~1Hを含む図1は、本発明の2つの実施形態によるシステム又は機器の概略的なフローダイアグラムであり、検体の有無にかかわらずシステム又は機器を通るガス、すなわち空気のフローに関するものである。
図1B図1A~1Hを含む図1は、本発明の2つの実施形態によるシステム又は機器の概略的なフローダイアグラムであり、検体の有無にかかわらずシステム又は機器を通るガス、すなわち空気のフローに関するものである。
図1C図1A~1Hを含む図1は、本発明の2つの実施形態によるシステム又は機器の概略的なフローダイアグラムであり、検体の有無にかかわらずシステム又は機器を通るガス、すなわち空気のフローに関するものである。
図1D図1A~1Hを含む図1は、本発明の2つの実施形態によるシステム又は機器の概略的なフローダイアグラムであり、検体の有無にかかわらずシステム又は機器を通るガス、すなわち空気のフローに関するものである。
図1E図1A~1Hを含む図1は、本発明の2つの実施形態によるシステム又は機器の概略的なフローダイアグラムであり、検体の有無にかかわらずシステム又は機器を通るガス、すなわち空気のフローに関するものである。
図1F図1A~1Hを含む図1は、本発明の2つの実施形態によるシステム又は機器の概略的なフローダイアグラムであり、検体の有無にかかわらずシステム又は機器を通るガス、すなわち空気のフローに関するものである。
図1G図1A~1Hを含む図1は、本発明の2つの実施形態によるシステム又は機器の概略的なフローダイアグラムであり、検体の有無にかかわらずシステム又は機器を通るガス、すなわち空気のフローに関するものである。
図1H図1A~1Hを含む図1は、本発明の2つの実施形態によるシステム又は機器の概略的なフローダイアグラムであり、検体の有無にかかわらずシステム又は機器を通るガス、すなわち空気のフローに関するものである。
図2A図2A及び図2Bを含む図2は、本発明の1つの実施形態による機器の部分概略電気回路図である。
図2B図2A及び図2Bを含む図2は、本発明の1つの実施形態による機器の部分概略電気回路図である。
図3図3は、本発明の1つの実施形態による制御システムを示す簡略化した電気ダイアグラムである。
図4図4は、本発明の1つの実施形態による機器の斜視図である。
図5A-5B】図5A図5Dを含む図5は、ガスクロマトグラフィーカラムが巻回されたスプール及びそのためのカバーの図を示す。
図5C-5D】図5A図5Dを含む図5は、ガスクロマトグラフィーカラムが巻回されたスプール及びそのためのカバーの図を示す。
図6A-6B】図6A~6Eを含む図6は、ガスクロマトグラフィーカラムのオーブン及び関連部品の図を示す。
図6C図6A~6Eを含む図6は、ガスクロマトグラフィーカラムのオーブン及び関連部品の図を示す。
図6D-6E】図6A~6Eを含む図6は、ガスクロマトグラフィーカラムのオーブン及び関連部品の図を示す。
図7A-7B】図7A及び図7Bを含む図7は、加熱及び冷却のための吸着剤トラップの外部を取り囲むブロックの2つの図を示す。
図7C-7D】図7A及び図7Bを含む図7は、加熱及び冷却のための吸着剤トラップの外部を取り囲むブロックの2つの図を示す。
図8A-8B】図8A及び8Bを含む図8は、光イオン化ディテクタを収容するハウジングの構成要素の2つの図を示し、該構成要素はインレットポートを含む。
図9A-9B】図9A及び図9Bを含む図9は、光イオン化ディテクタを収容するハウジングの構成要素の2つの図を示し、該構成要素はアウトレットポートを含む。
図9C図9A及び図9Bを含む図9は、光イオン化ディテクタを収容するハウジングの構成要素の2つの図を示し、該構成要素はアウトレットポートを含む。
図10A-10B】図10A及び図10Bを含む図10は、光イオン化ディテクタを収容するハウジングの構成要素の2つの図を示し、該構成要素はディテクタピンのための、すなわち電力及びシグナル用の3つの穴を含む。
図11A図11Aは、本発明の1つの実施形態による機器を用いた、高揮発性分析物の冷却サンプルの収集及び脱着のための実験結果を示すチャートである。
図11B図11Bは、本発明の1つの実施形態による機器を用いた、キャリアガスとしての空気を含む2成分混合物を分離するための実験の結果を示すチャートである。
図12A図12Aは、本発明の1つの実施形態の「トラップアンドラン」モードを試験する実験の結果を示すチャートである。
図12B図12Bは周囲空気サンプルの実験的クロマトグラムの結果を示すチャートである。
図13図13は本発明の1つの実施形態による、ガス環境中の有機化合物を同定及び定量化するためのリアルタイム分析方法のフローチャートである。
図14図14は、本発明の1つの実施形態による、ガス環境中の有機化合物を同定及び定量化するためのガスクロマトグラフィー法のフローチャートである。
図15図15は、本発明の1つの実施形態による、ガス環境中の有機化合物を同定及び定量化するためのガスクロマトグラフィー法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
本発明は、ガス環境中の有機化合物を濃縮、同定及び定量化するためのシステムに関する。本発明は、特に、ガス環境中の有機化合物を濃縮、同定及び定量化するための、空間、時間及びコスト効率の良いデバイスであるマイクロモニター機器に関する。本発明はさらに、圧縮された事前にボトル詰めされた精製されたキャリアガスを必要とせずに、ガス環境中の有機化合物を同定及び定量化するためのガスクロマトグラフィーを中心とする方法に関する。
【0009】
本発明は、本発明の方法、システム及び機器が圧縮ガスなしで動作し、そのため、既存のシステムに対して有意な改善をもたらすように設計されているので、分析化学における予期せぬ進歩を提供する。当該技術分野で知られている既存のシステムは、大きく、扱いにくくそして高価である。一方、本発明の機器は、1つの実施形態において、小さく、約6インチ×6インチ×6インチであり、そして低コストであり、例えば<1000ドルである。別の実施形態において、本発明のシステム又は機器は、大気又は他のガス環境中の有機化合物のためのモニターであり、その有機化合物は典型的には微量の濃度で存在し、例えば、ppb(10億分率)又はppt(1兆分率)である。それは、圧縮ガスシリンダを使用せずに、周期的なガスクロマトグラフィーを介して、全濃度と化学的分解能の同時リアルタイム測定値を提供する。このモニターは、重要な有機化合物を同定及び測定するために、前例のないような小型で持ち運び可能で低コストの機能を提供する。
【0010】
本発明のシステム又は機器は、屋外モニタリングサイト、工業施設又は住宅屋内での研究又は環境モニタリングのために、呼吸、他の身体物質又は表面を分析することによる低コスト健康スクリーニングデバイスとして、又は、有機化合物の測定が重要である他の用途(例えば、食品、飲料品又は化学製品の品質制御、軍事モニタリング、低コスト実験室データ収集、及び、水中の揮発性有機物のモニタリング)のために使用することができる。特定の用途は、毒性及び/又は発癌性化合物(例えば、ベンゼン)である空気中の揮発性有機化合物(VOC)、及び、オゾン及び二次有機エアロゾルへの反応性前駆体のディテクタとしての使用であり、これらは健康への影響が最も大きい2種類の大気汚染物質である。
【0011】
本発明は、ガス環境中の有機化合物を濃縮、同定及び定量化する、機能的、空間的、時間的及びコスト的に効率のよい機器及び方法を提供し、とりわけ、高頻度データのリアルタイム測定の追加的特徴を有するガスクロマトグラフの能力を効果的に再現することによる。本発明は幾つかの重要な進歩に部分的に依存する:(1)高純度ガスシリンダ、すなわち、高圧シリンダからの多量で、高価で、高純度のヘリウム、水素及び/又は窒素を必要とすることなく、キャリアガスとして、疎水性層及びフィルタを通して吸引された空気、すなわち微量の二酸化炭素(CO)、水及びメタンを含む、窒素(N)、酸素(O)及びアルゴン、及び、小型ポンプを用いた、ガスストリーム中の顕著な有機化合物のガスクロマトグラフィーを行う能力、(2)小さなサイズ及びコストは特別に設計された部品及びエレクトロニクスを必要とし、このため、複数のデバイスで構成されたネットワークの一部を含めて、携帯測定又はアクセスが困難な場所での測定を行うためにデバイスを使用することができる能力を形成すること、(3)特定の化合物をクロマトグラフィーで同定する能力と組み合わせた1Hz周波数の同時リアルタイム測定であって、時に、コスト、サイズ及びメンテナンスが大きい選択された数少ない機器、例えばイオニコン(Ionicon)カスタマイズされたプロトン移動反応質量分析計によってのみ以前に行うことができた測定。これにより、有機化合物、特に1~25個の炭素原子を有する広範な有機化合物の研究グレードの高品質データが得られる。
【0012】
定義
本発明の明確な理解に関連する要素を例示するために、本発明の図面及び説明は簡略化されており、一方、明確にするために、ガスクロマトグラフィー、ガスストリーム精製、有機化合物の吸着/脱着及び/又は捕捉、有機化合物の検出、ガスポンプ、クロマトグラフィーシステムの較正などに関連して当該技術分野で見られる他の要素を排除している。当業者であれば、本発明を実施する上で他の要素及び/又は工程が望ましい及び/又は必要であることを認識することができる。本明細書の開示は、当業者に知られているそのような要素及び方法に対するそのようなすべての変更及び修正を対象とする。
【0013】
他に規定されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似又は等価の任意の方法、材料及び構成要素を本発明の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法及び材料は記載されている。
【0014】
本明細書中で使用されるときに、以下の用語の各々は、このセクションにおいてそれに関連する意味を有する。
【0015】
冠詞「a」及び「an」は、冠詞の文法上の対象物の1つ又は複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために本明細書で使用される。例えば、「要素(an element)」は、1つの要素又は1つを超える数の要素を意味する。
【0016】
量、時間的持続長さなどの測定可能な値を指すときに本明細書中で使用される際の「約」は、指定された値から±20%、±10%、±5%、±1%又は±0.1%の変動を、このような変動が適切であるときに、包含することを意味する。
【0017】
本開示を通じて、本発明の様々な態様を範囲形式で提示することができる。範囲形式の記載は単に便宜上のものであり、本発明の範囲に対する融通性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、その範囲内のすべての可能な副次範囲及び個々の数値を具体的に開示したものと考えられるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの副次範囲、及び、その範囲内の個々の数字、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、6及びそれらの間の任意の全体及び部分増分を具体的に開示したものと考えるべきである。これは範囲の広さに関係なく適用される。
【0018】
詳細な説明
ここで図面を詳細に参照すると、いくつかの図を通して同様の参照番号は同様の部品又は要素を示し、様々な実施形態において、ガス環境中の有機化合物を同定及び定量化するためのシステム又は機器及び方法は本明細書中に提示される。
【0019】
1つの態様において、本発明は、ガスフローを管理及び分析することができる様々な構成要素及びデバイスを含むシステム又は機器に関する。例えば、図1Aに示すように、例示的なシステム100は、サンプリングインレット110及び120、吸着床トラップ130、フィルタ135、ヒータ140、ポンプ150、ディテクタ151、クロマトグラフィーカラム152、クロマトグラフィーカラムヒータ153、較正源154、及び、これらの構成要素を必要に応じて流体連通する導管155、156及び157を含む。サンプリングインレット110及び120は、遮断される能力を有するか又は有しない、任意のタイプの標準ポートであることができる。インレットは水の侵入を低減させる疎水性膜を含むことができる。吸着床トラップ130は、化合物、特に有機化合物、より具体的には揮発性有機化合物を可逆的に吸着することができる任意の適切な材料から作製することができる。いくつかの実施形態において、吸着剤トラップは多層構造のシリカゲル及び/又はビーズを含むことができる。フィルタ135は、化合物、特に有機化合物、より具体的には揮発性有機化合物を保持することができる任意の適切なタイプのろ過材料から作製することができる。1つの実施形態において、フィルタ135は活性炭から作製される。ヒータ140は、吸着床130を加熱することができ、吸着床130からの化合物の脱着を容易にする、任意の適切なヒータ、例えばカートリッジヒータとすることができる。ポンプ150は、システム100を操作するための圧力を発生させることができる、任意の適切なポンプであることができる。1つの実施形態において、ポンプ150は負圧を生成する。別の実施形態又はフロースキームにおいて、ポンプ150の正圧排気は、いくつか又はすべてのシステム要素の上流のバルブを介して、脱着及び/又はガスクロマトグラフィーに使用することができる。ディテクタ151は、化合物、特に有機化合物、より具体的には揮発性有機化合物を検出するための任意の適切なディテクタとすることができる。クロマトグラフィーカラム152は、任意の適切な吸着表面、例えばガスクロマトグラフィーカラムであることができる。いくつかの実施形態において、クロマトグラフィーカラムは、活性相のための100%ジメチルポリシロキサン(例えば、DB-1)又はトリフルオロプロピルメチルポリシロキサン(例えば、DB-200、DB-210)を含む。他の実施形態において、クロマトグラフィーカラムは多孔性ポリマーカラム、例えばPoraplot-Qカラムである。トラップ及びクロマトグラフィーカラムに使用される吸着性材料は、長期間にわたる検体の効率的な収集、その後の空気中での材料の熱脱着及びクロマトグラフィー分離を可能にする。このシステムは、検体及び吸着材料を酸素による熱分解から保護するので、有利である。このようにして、このシステムは、同等の装置よりも高い精度で個々の検体を定量化する能力を提供する。
【0020】
いくつかの実施形態において、デバイスは伝統的なシリカカラムを使用することができる。他の実施形態において、デバイスは、不動態化されたスチールカラム、例えばRTX-1を含む。不動態化されたスチールカラムは、より高い熱伝導率により、より迅速で正確な加熱及び冷却を提供し、また、従来のフェルール及び継手とのより安全な接続を提供する。その結果、不動態化されたスチールカラムの使用は信頼性を高め、現場で必要なメンテナンスの量を低減する。
【0021】
クロマトグラフィーカラムヒータ153は、クロマトグラフィーカラム152を加熱することができ、特にプログラムされた温度ランプを生成することができる、任意の適切なヒータ、例えばカートリッジヒータとすることができる。いくつかの実施形態において、本発明のシステムは複数の加熱ゾーンを含む。例えば、伝達効率を最適化するために、すべてのトランスファーラインを含むシステム全体を加熱することができる。幾つかの実施形態において、カラム152及びヒータを「GCオンチップ」、「カラムオンチップ」又は「ガスクロマトグラフオンチップ」形態に統合することができ、ここで、「カラム」は、限定するわけではないが、金属、シリカ又はガラスを含む当該技術分野で知られている任意の適切な材料から作製されたプレートにミリング又はエッチングされた連結溝である。次いで、エッチングされた又はミリングされた材料を活性カラム相で処理することができ、それにより、従来のカラムと同様に挙動する。
【0022】
較正源154は、使用中の適切なディテクタ及び/又はクロマトグラフィーカラムのための任意の適切な較正源である。1つの実施形態において、較正源は単一の揮発性有機化合物を含む。導管155、156及び157は、限定するわけではないが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ステンレススチール、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又は、当業者に理解されるような任意の他の適切な材料などの材料から作製されたチューブであることができる。
【0023】
幾つかの実施形態において、クロマトグラフィーカラム152は気体-液体吸着クロマトグラフィーを利用することができる。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィーカラム152は異なる活性カラム「相」、すなわち高温で熱分解が起こりにくい吸着性化学物質を含むことができる。
【0024】
1つの態様において、クロマトグラフィーカラム152は、空気中の酸素の存在下に高温で分解しにくい気体-固体吸着クロマトグラフィーを利用することができる。気体-固体吸着クロマトグラフィーカラムを使用することの別の利点は、水蒸気又は二酸化炭素の影響を受けにくいことである。気体-固体分離はトラッピング/濃縮吸着床及び開放管状カラムにわたって起こり、異なる吸着剤、例えばジビニルベンゼン又はモレキュラーシーブを有する様々な特定のカラムに適合させることができる。1つの実施形態において、クロマトグラフィーカラムは、キャリアガスとしての空気の主要成分、すなわち窒素及び酸素を使用することができるカラムである。窒素は空気の主要成分であり、酸素と構造が類似しているので、キャリアガスとしてのそれらの性能は同様である。
【0025】
1つの実施形態において、システム又は機器は、例えば、負圧源を提供することによって、真空ガスクロマトグラフィーを使用して操作される。別の実施形態において、システム又は機器は正圧ガスクロマトグラフィーを使用して操作される。様々な実施形態の間の違いは、ポンプ、バルブ及び接続部の向きに依存し、様々な構成は当業者によって想到されうる。1つの実施形態において、システム又は機器は、高速クロマトグラフィーの要素、例えばマイクロボア(microbore)カラムを使用する。1つの実施形態において、マイクロボアは0.05~0.15mmの内径を有する。別の実施形態において、カラムは0.15~1.00mmの内径を有する。1つの実施形態において、マイクロボアは0.53mmの内径を有する。1つの実施形態において、クロマトグラフィーカラムは0.05~1.00mmの内径を有する。別の実施形態において、クロマトグラフィーカラムは0.53mmの内径を有する。別の実施形態において、システム又は機器は標的検体及びポンプ仕様に応じて他のカラムを使用する。他の実施形態において、システム又は機器は操作温度での酸素劣化に対して耐性のある固定相を有する気体-液体クロマトグラフィーカラムを使用する。
【0026】
本発明のシステムはまた、任意の特定の検体セットに対してカスタマイズ可能であるが、広範囲の検体に最適化されるようにフロー(速度及び方向)及び温度を調整することができる、結合された収集トラップ及びクロマトグラフィー制御及び分析モジュールを含むこともできる。1つの例において、制御及び分析モジュールは、15~30分まで≦5℃の温度での冷却状態で検体を収集する。別の例において、制御及び分析モジュールは、トラップを通る空気の流れを逆転させ、トラップに清浄空気をチャコールフィルタを通して供給する。別の例において、モジュールはトラップを急速に加熱して検体を、検体に応じて<5~10℃に冷却されたカラム上に脱着させる。本例又は他の例は、カラムの開始部にクライオトラップ又は低温焦点化要素をさらに含むことができる。トラップ及びカラムを冷却することにより、検体の保持、集束及び性能の改善が可能になるので、トラップ及びカラムに冷却要素を使用することは、当該技術分野で知られているシステムよりも利点を示す。さらに別の例において、モジュールは、設定された温度ホールドで操作を開始し、次いで、所定のランプ速度でシステムを加熱し、その間、様々なフローを調整してカラムの最大分離効率を達成することができる。本例又は他の例において、システムは、ポンプでフローを最適化するために、カラムのヘッドに圧力絞り器をさらに備えていてもよい。
【0027】
別の例において、システムは、第一のサンプルを依然として分析している間に、第二のサンプルの収集を開始することができる。制御及び分析モジュールは、ガスクロマトグラフィー専用モードにおいてトラップの周りのバイパスラインにバルブを開くことによってこれを達成することができる。これにより、残りのガスクロマトグラフィー分析運転が、運転の後半部分に最適化された流速で操作することが可能になる。別の例において、モジュールは、加熱プログラム及びGC分析を実行し、次いで、次の分析運転のためにシステムを準備するための急速冷却段階を実行する。
【0028】
図1Aに示すように、システム100はディテクタ151を含む。1つの実施形態において、ディテクタ151は、光イオン化ディテクタ(PID)、小型質量分析計、分光光度計、熱伝導率ディテクタ、任意の他の適切な分光器、又は、任意の他の適切なディテクタなどの検出要素である。1つの態様において、本発明は、光イオン化検出を用いるシステム又は機器に関する。ランプ内部のハロゲンガスを変化させることによってPIDランプのイオン化ポテンシャルを例えば9.6~11.7eVで変化させることにより、異なるイオン化エネルギー、すなわち約7eV~約11.7eVを有する検体の範囲にわたってより大きな選択性を機器に与える。1つの実施形態において、9.6eVランプの使用は、芳香族炭化水素(BTEXとしても知られる)及び9.6eV未満のイオン化エネルギーを有する他の化合物の選択的イオン化を可能にする。ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、m-及びp-キシレン、o-キシレン及び3-トリメチルベンゼン異性体は、イオン化エネルギーが9.6eVより低い化合物の例である。他の例において、PIDランプのイオン化ポテンシャルは10.0eV又は10.6eVである。別の実施形態において、ディテクタとしての小型質量分析計の使用は、デバイスの可変選択性を拡張する。
【0029】
1つの態様において、本発明は、バルブ、ヒータ、冷却器のシステムを操作し、PIDシグナル、相対湿度、圧力及び温度に関するデータをシステムにわたって収集するマイクロプロセッサ及びソフトウェアによって自動化されるシステム又は機器に関する。幾つかの実施形態において、収集された相対湿度、圧力及び温度データは、PIDからのデータを補正するために使用される。1つの実施形態において、図1Aのシステムの構成要素などのシステム構成要素は、それぞれ図2A及び図2Bに示される概略的な電気回路210及び220により電気的に接続されうる。1つの実施形態において、構成要素は、カートリッジ電源211及び221、ヒータ212、PID213、アナログ/デジタル変換器及び利得増幅器214、マイクロコントローラ215、レベルシフタ216、熱電対217、リレー218、ポンプ222 、デジタル/アナログ変換器223及びオペレーショナル増幅器224からなる群より選ばれる。幾つかの実施形態において、制御回路は少なくとも1つのマイクロコントローラを含み、一部又は全部のマイクロコントローラは複数の処理コアを含む。幾つかの実施形態において、マイクロコントローラ215は、Arduino(登録商標)などのシングルボードコンピュータ(SBC)を含む。他の実施形態において、マイクロコントローラは、Cypress(登録商標)によって製造されるような、プログラマブルシステムオンチップ(PSoC)を含む。他の実施形態において、マイクロコントローラはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含む。幾つかの実施形態において、制御回路は超低ノイズ回路を含む。幾つかの実施形態において、制御回路は、ワイファイ(Wi-Fi)、セルラー接続性、ブルートゥース(BlueTooth)(登録商標)又は当該技術分野で知られている他の任意の無線通信システムを含む無線通信リンクを含む。無線通信リンクにより、システムの機能の一部又は全部を遠隔的に実行することができ、収集されたデータの一部又は全部を分析のために遠隔システムに転送することができる。幾つかの実施形態において、デバイスは、ローカル又はリモートでユーザーが介入することなく、自動的に動作することができる。
【0030】
ここで図3を参照すると、本発明の1つの実施形態の簡略化制御システムダイアグラム250が示されている。マイクロプロセッサ251は、様々なセンサからのデータ収集及びシステムの様々な電気的及び機械的要素の作動を調整する一連の指令を実行する。マイクロプロセッサ251は、さらに、ポンプ150を制御するポンプコントローラ252に接続されている。マイクロプロセッサ251は、リレー253、PIDデータコレクタ256、環境センサ258及びペルチェプレートコントローラ259のセットにさらに接続されている。リレー253はエレクトロニクスバルブアクチュエータ254に電気接続され、限定するわけではないが、バルブ102、172及び177を含む、システム内の様々なバルブを機械的に制御して、図1C~1Gに記載の流路を形成する。PIDデータコレクタ256は、PID151からのシグナルを受け、そのデータをマイクロプロセッサ251によって記録可能な形式に変換する。PIDデータコレクタ256はまた、マイクロプロセッサ251がPID151に指令を送るための制御回路を含むことができる。環境センサ258は、周期的に又は要求に応じて、環境データをマイクロプロセッサ251に送り、システムの制御を促進する。環境センサは、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ又は当該技術分野で知られている他のセンサのセットからの任意のセンサであることができる。ペルチェプレートコントローラ259は、ペルチェプレート141及び183に電気的に接続され、それを通して、マイクロプロセッサ251は、プレート141及び183の冷却機能を独立して調整し又は無効にすることができる。マイクロプロセッサ251は単一の要素として示されているが、より高い効率を達成するために、マイクロプロセッサ251の機能は複数のマイクロプロセッサにわたって分割されうることを理解されたい。1つの実施形態において、制御システムダイアグラム250は、オーブン及びペルチェプレートを含む本発明のシステムの温度制御要素を制御する第二のマイクロプロセッサを含む。
【0031】
幾つかの実施形態において、マイクロプロセッサ251は、ディスプレイ255及びワイヤレス通信モジュール257のある組み合わせに電気的に接続されている。ディスプレイ255は、システムの操作及びトラブルシューティングを容易にするために、システムステータス及びエラーメッセージを表示する。幾つかの実施形態において、ディスプレイ255はLCDディスプレイである。ワイヤレス通信モジュール257は、マイクロプロセッサ251とリモートデバイスとの間の通信を容易にする。幾つかの実施形態において、リモートデバイスは、マイクロプロセッサ251から測定情報又はシステムステータスデータを定期的に受信する。幾つかの実施形態において、ワイヤレス通信デバイスも、リモートデバイスから制御シグナル又はコマンドを受信し、遠隔ユーザーがシステムの機能に対して制御を実行することを可能にする。
【0032】
再び図1Aの例示的なシステム100を参照すると、ガスストリーム、例えば空気は2つのサンプリングインレット、すなわちチューブ110及び120を通して引き込まれる。1つの実施形態において、ガスは、ポンプ150を介して負圧によって引っ張られ、ポンプ150は計器のはるか下流の末端に配置されている。リアルタイムインレット120は、オン/オフバルブ101に従って、ディテクタ151、すなわちPIDに直接つながるチューブに接続されている。インレット120に接続されたチューブを通るこのガスストリームは、ガスストリーム中の総有機化合物、又は、検出方法に感受性のある有機化合物の総濃度のリアルタイム測定値を提供する。
【0033】
インレット110は微量濃度の有機ガスをアルミニウムブロック内で熱電冷却された活性又は不活性吸着剤表面又は充填床130上で濃縮する。1つの実施形態において、吸着床は有機ガスのトラップとして機能する。微量有機物を濃縮する調整可能な時間間隔の後に、有機化合物を含まない空気を提供するチャコールフィルタ135を通して空気を引き込むようにバルブ102を切り換える。1つの実施形態において、時間間隔は2~30分である。「リアルタイム」インレット上のオン/オフバルブ101は、すべてのフローがクロマトグラフィーカラム152のためのキャリアガスとして作用する清浄空気を提供するチャコールフィルタを通るように指向される。インレット110からの清浄空気のフローは、チャコールフィルタ135、吸着床130、次いでガスクロマトグラフィーカラム152へと指向される。吸着床/表面130は、例えばヒータ140によって徐々に加熱されて、有機化合物をその蒸気圧又は極性の関数として熱脱着又は解放し、粗い分離方法を効果的に提供する。このトラップからのエフルエントは、気体-固体吸着クロマトグラフィー又は気体-液体クロマトグラフィーの原理で動作するキャピラリーガスクロマトグラフィーカラム152に進む。1つの実施形態において、ガスクロマトグラフィーカラムをガスクロマトグラフィーマイクロ流体チップで置き換える。カラムをカスタムメイド機械加工したアルミニウムシリンダの周りに巻き付けるか、又は、マイクロ流体チップをアルミニウムブロックに当てて、該ブロックはカラム内の検体をさらに分離/分解する速度でカートリッジ153を加熱することで加熱される。1つの実施形態において、カラムは、カスタムメイド機械加工したアルミニウムオーブン内に配置される。1つの実施形態において、アルミニウムシリンダは、スプールの形状に機械加工された図5A及び5Bに記載のとおりのものである。別の実施形態において、シリンダは、限定するわけではないが、シリンダを機器の残りの部分に固定するために、加熱/冷却要素を付加するため、又は、通気のために使用することができる様々な機械加工された窪み、キャビティ又はチャネルを含む。別の実施形態において、シリンダは、クロマトグラフィーカラムの入口/出口のためにスプールの縁に2つの溝をさらに含む。別の実施形態において、シリンダは、図5C及び図5Dに記載されているように、筒形カバーによって覆われている。
【0034】
オーブンの別の実施形態は図6A図6Eに331で示すとおりである。この実施形態において、オーブンは、図6Aに示すようにアルミニウムハウジングであり、上面図を示し、図6Bは正面図を示す。オーブンは機械加工されたアルミニウムを含むことができ、取り付け穴333及び円形パターンの均等に離間した穴332のセットを含む。クロマトグラフィーチュービングは、インレット/アウトレット穴334又は335を介してオーブン331に入り、次に、インレット/アウトレット穴334又は335の他方を介してオーブンを出る前に穴332のまわりを包む。オーブンは図6Cに示すオーブンカバー336で包囲され、それは取り付け穴333に対応する取り付け穴337を含む。幾つかの実施形態において、オーブンは、正面図を示す図6D及び側面図を示す図6Eに示すペルチェプレート183をさらに含む。ペルチェプレート183は、ワイヤ343及び344を通して供給される電流に応答して低温側345と高温側346との間に温度差を生成するプレート342を備える。プレート342は、ペルチェ効果として当該技術分野でも知られている熱電効果に基づいて動作する。幾つかの実施形態において、低温側345から高温側346への熱伝達の有効性を高めるために、1つ以上のフィンを含むヒートシンクをペルチェプレート183の高温側346に取り付けることができる。
【0035】
クロマトグラフィーカラム152からのエフルエントはPID151又は他のディテクタに入り、そこで、各化合物の質量はPIDシグナルに基づいて定量化され、サンプリング中の既知の濃縮流速によって大気濃度が計算されうる。通常のクロマトグラフィーと同様に、各化合物の同定は、各運転で同じ加熱プログラムで加熱されるカラム吸着床システムから溶出する時間に基づいて確実に決定することができる。完了後に、バルブ101は開き、システムはリアルタイム測定に戻り、クロマトグラフィーインレットは、ファン及び熱電冷却器により冷却する。PIDに続いて、両方のフローはポンプ150を介して出る。内蔵較正方法は、オン/オフバルブ103によって制御される。1つの実施形態において、システムは、一定量の蒸発較正物質、例えば、単一のVOCを、サンプルインレットの1つにクリティカルオリフィスを介して流出させ、それはシステムを構成するために定期的に使用される。1つの実施形態において、容器154内の較正物質はリアルタイムインレットを通して導入される。PIDのための一貫した、既知の又は較正された相対応答係数は、他の測定された化合物すべてに対する交差較正を可能にする。
【0036】
本発明の別の実施形態は、図1B~1Hのシステム160に記載されている。図1Bのシステム160は、様々な部品の全体的な構造及びそれらがどのように接続されているかを示す。図1C~1Gは、システム160の様々なモードのフローダイアグラムを記載している。特に、図1Cはトラップモードを示し、図1Dは脱着/運転モードを示し、図1Eはリアルタイムモードを示し、図1Fは較正モードを示し、図1Gは、トラップ・アンド・ラン・モードを示す。システム160の動作は、システム100の動作と同様であるが、捕捉工程と脱着工程との間の吸着トラップ130を通る空気のフローを逆転させる追加工程を伴う。図1Hは、本発明の1つの実施形態で使用される材料を示す。
【0037】
図1Cを参照すると、システム160のトラップモードのフローダイアグラム161は示されている。真空はポンプ150によって形成され、ろ過されていない空気はインレット110を通して入る。空気は、まず、疎水性PMフィルタ171を通って進行し、バルブ172によって、吸着トラップ130の近端を通って送られ、そこで、幾つかの化合物は後の分析のために吸着によりトラップされる。幾つかの実施形態において、ペルチェプレート141を使用してトラップを冷却することができる。トラップ130を冷却することにより、検体の保持、集束及び性能が改善されうる。残りの空気は、バルブ177を通過し、ポンプ150を通ってシステムから出る。
【0038】
ここで図1Dを参照すると、システム160の脱着/運転モードのフローダイアグラム162が示されている。捕捉工程が完了すると、吸着トラップ130は分析される幾つかの化合物を含む。バルブ172及び177はフローダイアグラム162に示すように流れ方向を変え、インレット110を通してろ過されていない空気を導き、次に疎水性PMフィルタ171を通過させ、次いで、ろ過されていない空気を活性炭フィルタ135に通して導き、大部分の化合物を除去し、ろ過された空気をシステムに通過させて送る。ろ過された空気はフロー絞り器176を通って進行し、その後に、ダイアグラム161の流れとは反対の流れ方向で、遠端を通って吸着トラップ130に入る。幾つかの実施形態において、脱着/運転モード162中にヒータ140(単数又は複数)は従事し、化合物が吸着トラップ130から脱着する速度を速める。脱着された化合物は、ろ過された空気中に同伴され、バルブ172を通ってキャピラリーガスクロマトグラフィーカラム182に進み、該カラムも場合により加熱されていてよい。カラム182は、図1Aのカラム152と同様に動作する。カラム182からのエフルエントは、PID又は他のディテクタ151に入り、そこで、各化合物の質量は定量化される。最後に、空気はバルブ184及びポンプ150を通して進行し、その後に、システムを出る。幾つかの実施形態において、システムは、オーブン182に取り付けられ、システム空気フローの幾つかの段階で熱電冷却を提供するペルチェプレート183をさらに含む。
【0039】
フロー絞り器176は、吸着トラップ及びカラムに入る前に流れを抑制し、圧力がカラム全体にわたって低く、分解能(すなわち、カラム内の「プレート」の数)を高めることを保証するように機能する。これは、当該技術分野で公知の同様のシステムよりも有意な利点を提供する。
【0040】
図1Eは、システム160のリアルタイムモードのフローダイアグラム163を示す。リアルタイムモードにおいて、フローは本発明のシステム100のリアルタイムモードに類似している。ろ過されていない空気は、第二のインレット120、次いで、疎水性PMフィルタ187を通して入り、その後に、バルブ101を通して直接的にPID又は他のディテクタ151に進む。次いで、空気はバルブ184を通して流れ、ポンプ150を介してシステムから出る。本発明のシステムの1つの利点は図1C、1D、及び1Fに記載されたより完全なGC分析に周期的に切り替えながら、リアルタイムモードで連続的にモニターすることができる能力である。幾つかの実施形態において、リアルタイムサンプリングの間に検出される全濃度の高い読み取り値又はスパイクは、トラップ・アンド・ランモードへの切り換えの引き金となり、それによって、検出された化合物の化学組成のより正確な測定を可能にする。幾つかの実施形態において、トラップ・アンド・ラン測定は、1つ以上の化合物の供給源を識別するために使用されてもよい。
【0041】
図1C及び図1Eのフローパスを組み合わせることによって、さらなる操作モードは企図される。リアルタイムフローパス163を支持するデバイスの実施形態において、本発明のシステムは、トラップフローパス161を介してトラップ内に化合物を同時に収集しながら、フローパス163を介して化合物を連続的に収集することができる。このような「リアルタイム・アンド・トラップ」モードにおいて、システムは、収集期間の終わりに、全濃度の高い時間分解能データ(リアルタイムデータ)を収集し、トラップからの化合物を分析して、その期間にわたる混合物の化学種を決定することができ、その間に高い時間分解能データは収集される。このモードは、イベントの期間及び特徴が重要である短期間に起こるイベントを捕捉するために特に有用であり、その期間にわたる混合物の化学種を知るのにも有利である。
【0042】
図1Fは、システム160の較正モードのフローダイアグラム164を示す。較正モードの動作はリアルタイムモード163の動作と類似しているが、フィルタ187のインレットからシステムを通してろ過されていない空気を流す代わりに、バルブ101が閉じて、バルブ103が開いて一定量の標準蒸発較正物質154を引き込む。システム100の較正フローと同様に、較正モード164は、ディテクタ151からの結果を既知の相対応答係数と比較し、他の測定された化合物に交差較正することができる。
【0043】
図1Gは、システム160のトラップ・アンド・ラン・モードのフローダイアグラム165を示す。このモードにおいて、2つの平行な流路が一度に開かれる。第一の経路において、ろ過されていない空気はインレット110に入り、フィルタ171を通ってチャコールフィルタ135に進む。ろ過された空気はバルブ178及びフロー絞り器179を通過し、その後に、前の運転からの有機粒子が既に存在しているカラム182を通過する。幾つかの実施形態において、フロー絞り器179はカラムを通る、ろ過された空気が化合物の分離及び検出のためにより効果的に調整又は最適化されうるように、異なるサイズであってもよい。有機粒子は解放されそして通過し、ろ過された空気中に同伴されて、PID又は他のディテクタ151に入り、その後に、ポンプ150によりシステムからポンプアウトされる。第一のフローと同時に、第二の流路はろ過されていない空気をフィルタ171、次いでバルブ172を通ってトラップ130に引き込み、そこには、幾らかの粒子は将来の運転のためにトラップされている。
【0044】
このモードと図1Dに示す脱着/運転モードとを交互にすることにより、本発明のシステムはより効率的に動作し、より多くの時間をサンプリングに費やすことができる。
【0045】
図1Hは、本発明の特定の実施形態におけるフロー導管に使用される様々な材料を示す。「P」で標識されたセグメントはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む。「S」で標識されたセグメントはステンレススチールを含む。「T」で標識されたセグメントは、タイゴン(Tygon)又はテフロン(登録商標)(Teflon)を含む。本明細書に記載される材料は限定することを意図するものではなく、単に本発明のシステムの特定の構成で使用できる材料の例を示しているに過ぎない。
【0046】
別の態様において、システム構成要素は、図4に記載されるように、単一又は複数コンパートメント機器300に収容されうる。1つの実施形態において、機器のサイズは、約6インチ×6インチ×6インチであり、又は、216立方インチ以下の体積である。1つの実施形態において、機器は様々な部品を含み、例えば、ハウジング310、カラムオーブン及びスプール320、電源330、マイクロコントローラ及びカスタム回路基板340、ディテクタハウジング350、ポンプ360、較正ユニット及び活性炭フィルタ370、トラップ加熱及び冷却ブロック380及びトラップ冷却ファン390を含む。1つの実施形態において、ガスクロマトグラフィーユニット320は、筒形部品321及び322をさらに含む。本明細書の他の箇所に記載されているように、シリンダ321はスプールとして機械加工されていてよく、該スプール上にクロマトグラフィーカラムを巻かれることができる。1つの実施形態において、本発明の機器は、加熱及び冷却のための吸着トラップの外側を取り囲む図7A及び図7Bに示すようなブロック381をさらに含む。別の実施形態において、本発明の機器は、図7C(正面図を示す)及び図7D(上面図を示す)に示すようなブロック382を含む。ブロックヒータ(単数又は複数)はチャンネル385内に配置されうる。幾つかの実施形態において、ブロック382は、中央シーム386で分離された2つのハーフを含む。幾つかの実施形態において、熱電対はブロックの温度をモニターするために穴384内に配置されている。
【0047】
1つの実施形態において、本発明の機器は、光イオン化ディテクタを収容するハウジング350の構成要素351をさらに含み、該構成要素351はインレットポートを含む。別の実施形態において、本発明の機器は、光イオン化ディテクタを収容するハウジング350の構成要素352をさらに含み、該構成要素352はアウトレットポートを含む。図9Cに示す別の実施形態において、本発明の機器は、光イオン化ディテクタを収容するハウジング350の構成要素362をさらに含み、該構成要素362は複数のアウトレットポート367及び取り付け穴366を含む。
【0048】
別の実施形態において、本発明の機器は、光イオン化ディテクタを収容するハウジング350の構成要素353をさらに含み、該構成要素353はディテクタピン用、すなわち、電力及びシグナル用の3つの穴をさらに含む。1つの実施形態において、部品は、図面100に従って接続される。別の実施形態において、部品は、図面210及び220に従って接続される。
【0049】
本発明のシステムの小型サイズの1つの追加の利点は、カラムオーブン331が典型的に必要とされるよりも質量が小さく、したがって、サーマルマスもより低いことである。サーマルマスの低いオーブンは、大型のオーブンよりも少ない熱量を蓄える(及び再放射する)ことができるため、より厳しい温度管理が可能であり、出力が除去されたときに素早く冷却することができる。
【0050】
他の態様において、本発明は、ガス環境中の有機化合物を同定及び定量化するための方法に関する。図13を参照すると、リアルタイム分析の例示的な方法400は示されている。1つの実施形態において、リアルタイム分析方法400は、正圧又は負圧のいずれかを課す、例えば、ポンプでの吸引を課す工程410を含み、本発明のシステム又は機器などのシステム又は機器を通してガス混合物を強制輸送するであろう。リアルタイム分析方法400は、空気などのガス混合物をサンプリングインレット、例えば、システム100の一部として図1Aに示すようなサンプリングインレット120を通してサンプリングする工程420をさらに含む。リアルタイム分析方法400は、ガス混合物中の有機化合物を検出する工程430をさらに含む。検出は、システム100の一部として図1Aに示すようなディテクタ151などのPIDディテクタによって達成することができる。
【0051】
別の態様において、本発明は、ガス環境中の有機化合物を同定及び定量化するための方法であって、クロマトグラフィー工程を含む方法に関する。1つの実施形態において、クロマトグラフィー工程は、圧縮された事前にボトル詰めされた精製されたキャリアガスを必要とせず、むしろキャリアガスとして精製空気を使用することによって行われる。図14に示すように、1つの実施形態において、本方法はガスクロマトグラフィー分析方法500である。ガスクロマトグラフィー分析方法500は、正圧又は負圧のいずれかを課す、例えば、ポンプでの吸引を課す工程510を含み、本発明のシステム又は機器などのシステム又は機器を通してガス混合物を強制輸送するであろう。方法500は、環境空気などのガス混合物をサンプリングインレット、例えば、システム100の一部として図1Aに示すようなサンプリングインレット110を通してサンプリングする工程520をさらに含む。ガスクロマトグラフィー分析方法500は、ガス混合物のフローをトラップを通るように指向させ、少なくともある量の化合物を濃縮する工程530をさらに含み、ここで、有機化合物は、システム100の一部として例えば図1Aに示されるような吸着材料130の床にトラップされる。方法500は、ガス混合物のフローをフィルタを通るように再指向させ、ろ過されたガスフローをトラップに提供し、このようにして、有機化合物を含まないガス混合物、例えば、空気を提供する工程540をさらに含む。方法500の工程540は、サンプリングされたガスのフローを、例えば、システム100の一部として図1Aに示されるような活性炭フィルタ135を通るように振り向けることによって達成することができる。ろ過は、有機化合物の全部又は一部を除去して、清浄キャリアガス、例えば、清浄空気を提供する。ガスクロマトグラフィー分析方法500は、例えば、有機化合物の逐次熱脱着によって、少なくともある量の濃縮化合物をろ過されたガスフローに解放する工程550をさらに含み、ここで、事前にトラップされた有機化合物は、例えば、システム100の一部として図1Aに示すようなヒータ140を使用することにより温度を徐々に上げることにより吸着材料130の床から脱着される。ガスクロマトグラフィー分析方法500は、少なくともある量の解放された濃縮化合物を分離する工程560をさらに含む。1つの実施形態において、分離は、有機化合物を、例えばガスクロマトグラフィーによって分離することを含む。吸着材料の床から脱着された有機化合物は、システム100の一部として図1Aに示されるようなカラム152などのクロマトグラフィーカラムへの濾過によって提供される清浄空気と同伴される。ガスクロマトグラフィー分析方法500は、クロマトグラフィーカラムガスエフルエント中の有機化合物を検出する工程570をさらに含む。検出は、例えば、システム100の一部として図1Aに示されるようなディテクタ151などのPID検出器によって達成することができ、それは、例えば、光イオン化ディテクタ(PID)であることができる。
【0052】
図15を参照すると、本発明の方法の別の実施形態600が示されている。方法600は、方法500に類似しているが、トラップを通るようにガスのフローを指向させた後であるが、ろ過されたガスのフローをトラップに提供するためにフィルタを通るようにフローを再指向させる前に、トラップを通るフローの方向を逆転させる工程535を含む。
【実施例
【0053】
実験例
以下の実験例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、例示のみを目的として提供されており、特記しない限り、限定することを意図するものではない。したがって、本発明は、以下の実施例に限定されるものと決して解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明らかになるいかなるそして全ての変更を包含すると解釈されるべきである。
【0054】
さらなる説明がない限り、当業者は、上記の説明及び以下の実施例を使用して、本発明の組成物を作製及び利用し、特許請求する方法を実施することができると考えられる。したがって、以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を具体的に指摘しており、決して本開示の残りの部分を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0055】
例1
図11Aに示すように、本発明のシステムを使用して、空気/アセトン混合物中のアセトンを検出した。最初に、サンプルインレットを空気中のアセトンのパルスに暴露した。このシステムは、約10分間、吸着材料の冷却床にアセトンをトラップしそして濃縮させた。約10分後に、吸着床ヒータに通電して約60℃/分の温度勾配増加を与えた。約30秒後に、光イオン化ディテクタの出力にピークが検出された。
【0056】
例2
図11Bに示すように、本発明のシステムを使用して、ガスクロマトグラフィー法においてキャリアガスとして空気を用いてイソペンタン及びアセトンを分離しそして検出した。連続運転の20時間後に実行された3回の運転を含む、分離方法の6回の別々の運転は、時間の経過にわたって分離及び再現性の高い有効性を実証した。
【0057】
例3
図12Aに示すように、本発明のシステムを、外部圧力又は真空なしで付加的な装置なしで、完全自動デバイスのトラップモード及び運転モードで使用した。この図は、PIDセンサ出力、トラップ温度及びY軸に沿ったオーブン温度及びX軸に沿った運転時間の「クロマトグラム」を示す。単環芳香族化合物の分析標準混合物を気相からサンプリングし、トラップし、保持し、次いでカラムに注入し、そこで自動温度プログラムで真空下に分離し、次いでPIDで測定した。示されている化合物は、科学、規制及び商業コミュニティで高い関心を集めている一般的で難しいBTEX化合物を含む。測定されそして標識化される具体的な検体はベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、m-キシレン及びp-キシレン、o-キシレン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン及び1,2,4,5-テトラメチルベンゼンである。
【0058】
例4
図12Bに示すように、クロマトグラム及びクロマトグラムの集束部分が示され、図12Aに記載されているようなデバイス自体のみを使用して収集された室内空気サンプルの20分間のトラップ及び脱着の結果が示されている。示されたピークは、微量の濃度(例えば、ppb又はppt)で室内に存在するすべての揮発性有機化合物である。グラフ及びそのサブプロットは、分解されたピークの量、狭いピークが多量に存在すること、優れたピーク形状及びピーク間の分解能を示すために、クロマトグラムの一部を拡大表示している。
【0059】
本明細書で引用した特許、特許出願及び刊行物の各々及びすべての開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本発明は、特定の実施形態を参照して開示されたが、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の他の実施形態及び変形形態が当業者によって考案されうることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、そのような実施形態及び同等の変形のすべてを含むと解釈されることが意図される。
本開示は以下も包含する。
[1] フィルタ、
トラップ、
クロマトグラフィーカラム、
ディテクタ、及び、
ポンプ
を含む、ガス混合物を分析するためのシステムであって、
前記トラップ及び前記ポンプを流体連通して、第一のガス流路を形成し、
前記フィルタ、前記トラップ、前記クロマトグラフィーカラム、前記ディテクタ及び前記ポンプを流体連通して、第二のガス流路を形成する、システム。
[2] 前記ディテクタ及び前記ポンプを流体連通して、第三のガス流路を形成する、上記態様1記載のシステム。
[3] 前記クロマトグラフィーカラムは気体-固体吸着クロマトグラフィーカラム及び気体-液体ガスクロマトグラフィーカラムからなる群より選ばれる、上記態様1記載のシステム。
[4] 前記トラップは吸着材料をさらに含む、上記態様1記載のシステム。
[5] 前記フィルタは活性炭フィルタである、上記態様1記載のシステム。
[6] 前記ディテクタは光イオン化ディテクタ、質量分析計、分光光度計及び熱伝導率ディテクタからなる群より選ばれる、上記態様1記載のシステム。
[7] 前記ディテクタは光イオン化ディテクタである、上記態様1記載のシステム。
[8] 前記ポンプは負圧を提供する、上記態様1記載のシステム。
[9] ハウジングをさらに含む、上記態様1記載のシステム。
[10] 前記ハウジングは216立方インチ以下である、上記態様9記載のシステム。
[11] 前記システムはppt(1兆分率)の感度で化合物を検出することができる、上記態様1記載のシステム。
[12] ガス混合物中の少なくとも1つの化合物を分析する方法であって、前記方法は、
トラップを通るように前記ガス混合物のフローを指向させて、少なくともある量の化合物を濃縮すること、
フィルタを通るようにガス混合物のフローを再指向させて、ろ過されたガスフローをトラップに提供すること、
前記ろ過されたガスフロー中に、少なくともある量の濃縮された化合物を解放すること、及び、
少なくともある量の解放された濃縮された化合物を分析すること、
を含み、
前記トラップを通るガス混合物のフローの方向は、前記トラップを通るろ過されたガスのフローの方向とは反対である、方法。
[13] 前記少なくとも1つの化合物は少なくとも1つの有機化合物を含む、上記態様12記載の方法。
[14] 前記少なくとも1つの有機化合物は少なくとも1つの揮発性有機化合物を含む、上記態様13記載の方法。
[15] 少なくともある量の解放された濃縮された化合物の分析は、解放された濃縮された化合物の少なくともある量をガスクロマトグラフィーカラムを通過させることを含む、上記態様12記載の方法。
[16] 前記ガスクロマトグラフィーカラムは気体-固体吸着クロマトグラフィーカラム及び気体-液体ガスクロマトグラフィーカラムからなる群より選ばれる、上記態様15記載の方法。
[17] 少なくともある量の解放された濃縮された化合物の分析は光イオン化、質量分析法、分光光度法及び熱伝導からなる群より選ばれる方法によって有機化合物を同定することを含む、上記態様12記載の方法。
[18] 前記化合物を定量化することをさらに含む、上記態様17記載の方法。
[19] 前記ガス混合物は環境ガス混合物である、上記態様12記載の方法。
[20] 前記ガス混合物は呼気ガス、又は、ヒト対象に由来する別のガスを含む、上記態様12記載の方法。
[21] 前記ガス混合物は空気である、上記態様12記載の方法。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図3
図4
図5A-5B】
図5C-5D】
図6A-6B】
図6C
図6D-6E】
図7A-7B】
図7C-7D】
図8A-8B】
図9A-9B】
図9C
図10A-10B】
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15