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▶ ジョイデルマ アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/728 20060101AFI20230419BHJP
   A61K 31/593 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 31/525 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 31/455 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 31/375 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 31/07 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 31/164 20060101ALI20230419BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230419BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230419BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
A61K31/728
A61K31/593
A61K31/525
A61K31/455
A61K31/519
A61K31/375
A61K31/355
A61K31/07
A61K31/164
A61P17/00
A61P17/06
A61P17/16
A61K9/127
A61K9/107
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/12
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022169413
(22)【出願日】2022-10-21
(62)【分割の表示】P 2020501595の分割
【原出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2023002724
(43)【公開日】2023-01-10
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】00386/17
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521554631
【氏名又は名称】ジョイデルマ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルバーラーノ、テオ
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-175731(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0149385(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0110731(US,A1)
【文献】特表2009-510168(JP,A)
【文献】特表2008-540514(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0262505(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0128777(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0201871(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0058061(US,A1)
【文献】Skin Pharmacol. Pysiol.,2004年,Vol.17,p.207-213
【文献】Journal of Photochemistry and Photobiology B:Biology,2005年,Vol.78,p.141-148
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質ベースのコロイド状キャリアシステムにカプセル化された少なくとも1つのビタミンD3またはその前駆体もしくは誘導体、および少なくとも1つのヒアルロン酸またはその誘導体を含む組成物であって、
少なくとも1つのビタミンD3またはその前駆体もしくは誘導体が、ビタミンD3、7-DHC、25-ヒドロキシビタミンD3、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3、および1α-ヒドロキシビタミンD3から選択され、かつ少なくとも1つのヒアルロン酸またはその誘導体が、4kDa~50kDaの低分子量ヒアルロン酸と最大200,000kDaのより高い分子量ヒアルロン酸との混合物である
組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのビタミンD3またはその前駆体もしくは誘導体が7-DHCである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
脂質ベースのコロイド状キャリアシステムが、リポソーム、ニオソーム、トランスフェロソーム、ミセル、ナノ粒子、およびマイクロエマルジョンから選択される請求項1記載の組成物。
【請求項4】
ビタミンA、少なくとも1つビタミンB、ビタミンC、およびビタミンEから選択されるさらに1つまたはそれ以上の成分を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1つのビタミンBがリボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシンアミド(ビタミンB3)、デクスパンテノール(プロビタミンB5)、および/または葉酸(ビタミンB9)である請求項4記載の組成物。
【請求項6】
さらに、(i)パルミチン酸レチノール(ビタミンA)、(ii)リボフラビン(ビタミンB2)、(iii)ナイアシンアミド(ビタミンB3)、(iv)デクスパンテノール(プロビタミンB5)、(v)葉酸(ビタミンB9)、(vi)L-アスコルビン酸(ビタミンC)、および(vii)酢酸トコフェロール(ビタミンE)を含む請求項1記載の組成物。
【請求項7】
さらに少なくとも1つのUV-フィルターを含む請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
さらに、界面活性剤、乳化剤、エモリエント、増粘剤、コンディショニング保存料、緩衝剤、保湿剤、香料から選択される少なくとも1つのアジュバントを含む請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
界面活性剤がポリカーボネート、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビドン、オビドンメンブレン、ポビドン、コポビドン、ヒプロメロースまたはオイドラギットEPOである請求項8記載の組成物。
【請求項10】
界面活性剤が、ポリソルベート10~150である請求項8記載の組成物。
【請求項11】
脂質ベースのコロイド状キャリアシステムが、リン脂質、レシチン、スフォンゴミエリン、リノレン酸、リノール酸、ホスファチジルコリンおよびカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドから選択される1つそれ以上の成分から構成されている請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~11記載の組成物を固体、液体または半固体の形態で含む局所製剤。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物をエマルジョン、マイクロエマルジョン、水性ディスパージョン、オイル、ミルク、バルサム、フォーム、水性もしくは油性ローション、水性もしくは油性ゲル、クリーム、溶液、含水アルコール溶液、含水グリコール溶液、ハイドロゲル、セラム、軟膏、ムース、ペースト、スプレーまたはエアロゾル、または経皮パッチの形態で含む局所製剤。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物を含む皮膚疾患の予防または治療剤。
【請求項15】
皮膚疾患が、皮膚炎症、湿疹、酒さ、アトピー性皮膚炎、乾癬、光損傷、皮膚萎縮、皮膚の色素沈着異常、光線皮膚炎、毛細管拡張症(クーパーローズ)、光線性角化症から選択される請求項14記載の予防または治療剤。
【請求項16】
請求項12または13記載の局所製剤である請求項14または15記載の予防または治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質ベースのコロイド状キャリアシステム(好ましくは、リポソーム、ニオソーム、トランフェロソームなどの脂質ベースのベジクル)にカプセル化された、ビタミンD3またはその誘導体もしくは前駆体とヒアルロン酸またはその誘導体との相乗的な組み合わせを含む新しい組成物、その局所製剤、ならびに炎症性皮膚および粘膜の予防および/または治療、特に皮膚光損傷の予防および/または治療、とりわけ皮膚紅斑(皮膚炎症)および光線角質化、ならびに非メラノーマ皮膚がんの予防および/または治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ICD-10(国際疾病分類、バージョン2016)に基づく皮膚障害には、(a)皮膚が炎症を起こし、水疱を形成し、硬く、厚く、うろこ状になる症状のグループ(火傷やかゆみを引き起こす湿疹を含む)、(b)あらゆるタイプの皮膚炎症、(c)皮膚に影響を与える炎症プロセス(赤い発疹、かゆみ、水疱形成の兆候)接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎および乾癬、および(d)多くの内因性および外因性物質に対する反応として生じる掻痒性丘疹水疱性皮膚炎(pruritic papulovesicular dermatitis)が含まれる。皮膚の光損傷(ICD-10バージョン2016に準拠)は、紫外線A(UVA)および紫外線B(UVB)の照射による皮膚障害として特徴付けられ、次の主要な症状を伴う:皮膚萎縮、皮膚色素沈着異常(パッチ/スポット)、光線性皮膚炎(紅斑:炎症、発赤した皮膚)、毛細血管拡張症(クーパーローズ(couperose))および光線性角化症。波長280~315nmのUVBは、皮膚がビタミンD3を生成するために必要なエネルギーを提供するが、皮膚の表皮層を通って浸透する主要な突然変異原でもあり、DNA突然変異を引き起こし、皮膚がん(非メラノーマ皮膚がん(NMSC)およびメラノーマ)を強く誘発する。これらの変異は、皮膚の萎縮を引き起こすエラスチンやコラーゲンの欠損の増加など、光損傷の特定の兆候と臨床的に関連している可能性がある。波長315~400nmのUVAは、UVB光線と比較して皮膚の奥深くまで浸透することができるため、表皮層と真皮層の両方に損傷を与える可能性がある。一定のUVA曝露により、真皮層のサイズが縮小され、皮膚の萎縮が引き起こされる。潜在的な損傷には、血管拡張症(クーペローズ)を引き起こす拡張または破損した血管、または、細胞傷害性の活性酸素種(ROS)の生成による、細胞DNAならびに皮膚バリアの脂質およびタンパク質への間接的な損傷などが含まれる。UVAとUVBの両方の曝露はまた、炎症および血管拡張を引き起こし、これは、毛細血管拡張症、(クーペローズ)および光線性皮膚炎(炎症および発赤した皮膚をもたらす紅斑)、色素沈着異常(パッチ/スポット)およびほかの皮膚障害として臨床的に示される[例えば、1、2、3参照]
【0003】
炎症を起こした皮膚組織には、一酸化窒素のような高濃度の活性酸素種(ROS)が存在する。一酸化窒素(NO)はさらに酸素(O2)と反応して、過酸化亜硝酸塩(peroxynitrite)(ONOO-)になる。過酸化亜硝酸塩およびCO2との反応によるその分解物(NO2 -およびCO3 -)は、表皮における脂質、タンパク質、およびDNAの酸化全体を通して非常に細胞毒性がある。
【0004】
ビタミン、例えばビタミンD3およびその誘導体および前駆体、ならびにヒアルロン酸などの使用を含む、光損傷およびその影響などの皮膚炎症に対抗するためのさまざまなアプローチが提案されている。
【0005】
ビタミンDは脂溶性ビタミンのグループであり、ビタミンD3(またはコレカルシフェロール)とビタミンD2(またはエルゴカルシフェロール)が人間の最も重要で代表的なものである。通常、ビタミンD3は、UVBによる7-デヒドロコレステロール(または7-DHC、皮膚の上層の有棘層および基底層に約25-50ug/cm2で優先的に見出される)の光分解により[4~7、図1参照]、前駆体プレビタミンD3を得、その後、熱的に異性化されてビタミンD3が得られる。皮膚全体でのビタミンD3の生産は、加齢とともに劇的に減少することが知られている(70歳で75重量%まで)。ビタミンD3とその前駆体および誘導体は、生物学的に非常に活性である。たとえば、前駆体7-DHCは、反応性酸素種NOに結合する能力を有するため、皮膚の上部での細胞分裂性過酸化亜硝酸の過剰産生を回避し、細胞性皮膚損傷を伴う皮膚炎症の悪循環(白斑)を防ぐ[図2、3]。ビタミンD3は、骨の石灰化、骨の成長と骨のリモデリング、細胞増殖の調節、神経筋および免疫機能などを含む多くのプロセスで役割を果たす。また、特定のビタミンD3類縁体(例えば、25-ヒドロキシ-ビタミン-D3またはカルシジオール、1,25-ジヒドロキシビタミン-D3またはカルシトリオール、カルシポトリオールなど;例えば、8、9、10、図3参照)を、乾癬を含む皮膚の状態を治療するために局所的に使用できることも提案されている[例えば、11、12、13、14参照]。さらに、高いビタミンD3活性により変化したミネラル恒常性を示す遺伝子組み換えマウスを使用した最近の研究では、成長の遅延、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化、異所性石灰化、免疫不全、皮膚および一般的な臓器萎縮を含む早期老化の特徴が示された。この知見およびその他の知見は、血清カルシジオールが、がんを含む加齢に関連した慢性疾患のリスク増加と関連している可能性があることを示唆している。ビタミンDは、皮膚バリアの再構築にも関与し[例えば、1、5、図2参照]、微生物に対する免疫防御を維持し、健康な微生物叢を保護する[例えば、16参照]。ビタミンD3はまた、炎症を軽減し、皮膚を支え、創傷治癒に関与し[例えば、17~20参照]、そして光損傷から肌を保護する[例えば、21~25、図2、3参照]。皮膚の褐変と共に皮膚におけるビタミンDの局所生産の全体が、光損傷に対する皮膚の保護の最も重要な機序であると推定される[例えば、26参照]。
【0006】
ヒアルロン酸(HA)は、グルクロン酸とN-アセチルグルコサミンとで構成される二糖類の繰り返し単位を有する直鎖状多糖類であり、細胞およびコラーゲンやエラスチンなどのマトリックスの線維成分埋め込まれている主要なマトリックス物質の1つである[例えば、27、28、図2参照]。HAは非常に高い水結合能力を有し[例えば、29参照]、主に細胞外空間の維持と、保湿剤として働く組織の水和の制御に貢献している[例えば、30参照]。架橋HAポリマー鎖はHA溶液をゲルに変換することが知られている。架橋剤分子は個々のHAポリマー鎖に結合してネットワークを構築し、巨視的にはゲルの塊として現れる。HAは組織再生において極めて重要な役割を果たすことが示唆されている[例えば、31、32、図2参照]。
【0007】
しかし、多数の製剤が皮膚治療用に商品化されているにもかかわらず、皮膚炎症、特に光損傷の一般的な症状、すなわち罹患皮膚を予防および/または治療でき、そしてさらに日光への暴露、特に紫外線により引き起こされる皮膚損傷を非常に効果的に予防することのできる製剤が依然として強く必要とされている。
【0008】
出願人は、ビタミンD3またはその誘導体または前駆体、好ましくは7-デヒドロコレステロール(7-DHC)またはその誘導体などの前駆体を、安定化コロイドとしてHAと組み合わせて製剤化できることを見出した。このコロイド状キャリアシステムは、炎症を起こした皮膚、皮膚萎縮、皮膚色素異常症(パッチ/スポット)、光線皮膚炎(紅斑:炎症および発赤した皮膚)、毛細血管拡張症(クーパーローズ)などの治療および/または予防において、皮膚の紅斑および光線性角化症などを避けるためのUV防止に相乗効果を示す[図2]。
【0009】
したがって、出願人は、ビタミンD3またはその誘導体または前駆体、好ましくは7-DHCまたはその誘導体、およびHAまたは誘導体を、任意には追加の賦形剤と組み合わせて、安定化されたビタミンD3またはその誘導体または前駆体、好ましくは7-DHCまたはその誘導体などの前駆体を上層に浸透させ、局所送達が可能となるように脂質ベースのコロイド状キャリアシステム(好ましくは、リポソーム、ニオソーム、トランスフェロソームなどの脂質ベースのベジクル)にカプセル化した新しい組成物を提供する。
【0010】
局所的に組み合わされた2つの活性物質は、炎症性皮膚の優勢な障害、特に光損傷、特に日光およびとりわけ照射に曝され損傷された皮膚のICD-10による適応に、皮膚の上層で直接相乗的に作用することができる。したがって、本発明の新しい組成物は、先行技術の欠点を克服することができる。追加の7つの賦形剤は、2つの活性物質と相乗的に作用し、説明された皮膚障害を予防および/または治療するための最適な効力とする。説明された組成物(およびその製剤)は、炎症を起こした皮膚、日光、および特に紫外線で損傷した皮膚のほとんどの障害を予防および/または治療するための新しいアプローチを提供する[図2、3]。
【発明の概要】
【0011】
第1の実施態様では、本発明は、脂質ベースのコロイド状キャリアシステムにカプセル化された(ビタミンD3またはその前駆体もしくは誘導体の最適な皮膚浸透および安定化を可能にするため)、少なくとも1つのビタミンD3またはその誘導体もしくは前駆体、好ましくは7-DHCまたはその誘導体などの前駆体と少なくとも1つのHAまたはその誘導体との相乗的組み合わせを含む新規組成物(本発明の組成物とも呼ばれる)およびその適切な製剤に関する。油(または脂質)相にカプセル化することにより、ビタミンD3またはその前駆体もしくは誘導体(特に7-DHCまたはその誘導体)が安定化され、望ましくない反応(酸化または他の分解反応など)が排除される。脂質ベースのコロイド状キャリアシステムにより、ビタミンD3(および7-DHCやその誘導体などの不活性なビタミンD3前駆体)が皮膚の上部層に浸透し、その活性が発揮される(UVAおよびUVB暴露により活性ビタミンD3に変換された後)。
【0012】
好ましい実施形態では、ビタミンD3は、7-DHCまたはその誘導体などのビタミンD3前駆体であり、本発明の組成物は、脂質ベースのコロイド状キャリアシステムにカプセル化された、HAまたはその誘導体と組み合わせて、7-DHCまたはその誘導体などのビタミンD前駆体を含む。ビタミンD(および特に7-DHCまたはその誘導体などのビタミンD3前駆体)は、0.01~0.5重量%の最終濃度でコロイド状キャリアシステムに存在することが好ましい。
【0013】
他の実施形態では、組成物は、さらに、ビタミンA(好ましくはパルミチン酸レチノール)、少なくとも1つのビタミンB、ビタミンC(好ましくはL-アスコルビン酸)およびビタミンE(好ましくは、酢酸トコフェロール)から選択される1つ以上、好ましくは1、2、3、4、5、6、7のさらなる成分を含む。好ましくは、組成物は、(i)パルミチン酸レチノール(ビタミンA)、(ii)リボフラビン(ビタミンB2)、(iii)ナイアシンアミド(ビタミンB3)、(iv)デクスパンテノール(プロビタミンB5)、(v)葉酸(ビタミンB9)、(vi)L-アスコルビン酸(ビタミンC)、および(vii)酢酸トコフェロール(ビタミンE)の1つ以上、最も好ましくはすべてをさらに含む。
【0014】
別の特定の実施形態では、脂質ベースのコロイド状キャリアシステムは、少なくとも1つのリン脂質および少なくとも1つの脂肪酸から構成されるリポソームキャリアシステム(好ましくは、リポソーム、ニオソーム、トランフェロソームなどの脂質ベースのベジクル)である。好ましくは、脂質ベースのコロイド状キャリアシステムは、例えば、レシチン、リノレン酸、リノール酸、ホスファチジルコリン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドなどの1つまたはそれ以上を含む。
【0015】
好ましい実施形態では、脂質ベースのコロイド状キャリア(例えば、リポソーム、ニオソーム、トランフェロソームなどの脂質ベースのベジクル)は、2つの親油性薬剤、パルミチン酸レチノール(ビタミンA)、酢酸トコフェロール(ビタミンE)と、および5つの親水性薬剤、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシンアミド(ビタミンB3)、デクスパンテノール(プロビタミンB5)、葉酸(ビタミンB9)、L-アスコルビン酸(ビタミンC)と組み合わせて、7-DHCおよびHAの相乗的組み合わせを含む。
【0016】
親油性薬剤は二重層または多層システム内にカプセル化されるが、親水性薬剤は水相にカプセル化される。したがって、一実施形態では、本発明の組成物は、(i)室温で、脂質ベースのコロイド状キャリアシステムの油(または脂質)相にビタミンD3(および特に7-DHCまたはその誘導体などのビタミンD3前駆体)をカプセル化すること、および(ii)別途に水相にHAを調製すること、により得られる。組成物は、油相(または脂質相)と水相の乳化(室温での混合または自発的統合)によって得られる。好ましくは、粒子は、10~500nm、より好ましくは10~300nm、最も好ましくは20~150nmの直径を有するであろう。
【0017】
さらなる実施態様では、本発明の組成物は、局所または経皮および粘膜投与に適した様々な製剤の形態である。これらの局所製剤は、本発明の医薬組成物、ならびに緩衝剤、保存剤などのさらなる補助剤を含む。典型的な製剤には、ハイドロゲル、リオゲル、ハイドロローション、リポローション、クリーム、軟膏などが含まれる。
【0018】
さらなる実施態様において、本発明は、皮膚光損傷症状の予防および/または治療、特に皮膚萎縮、皮膚の色素沈着異常(パッチ/スポット)、光線皮膚炎(紅斑:炎症および発赤皮膚)、毛細管拡張症(クーパーローズ)、および光線皮膚炎(紅斑)の予防、光線性角化症、および皮膚UVAおよびUVB保護の予防および/または治療における本発明の組成物(およびその局所製剤)の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】不活性前駆体7-DHCの適切な濃度が、皮膚の上層において本発明の脂質ベースのコロイドの形態で輸送され、そこでUVAおよびUVBに曝されると活性ビタミンD3に変換される。
図2】油(または脂質)相中の7-DHCおよび水相中のヒアルロン酸(HA)は、コロイド状キャリアシステム内に統合され、皮膚の上層への浸透が可能となる。7-DHCからのビタミンD3の活性化と合成により、日光UVA/UVBによる皮膚損傷の経路を妨げることができる。不活性7-DHCは、キャリアシステムへのカプセル化により酸化プロセスから保護され、さらに、硝酸塩の酸化プロセスから生じるペルオキシ硝酸塩としての細胞毒性ROSを排除する強力な機能を有する皮膚上層へのターゲットでのみ活性化される。過剰に生成されたNOsのこのスカベンジャー機能により、UVA/UVBによる皮膚損傷の保護が可能となる。
図3】ビタミンD3に活性化された後の皮膚の上層における強力な抗炎症活性の7-DHC経路
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1の実施態様では、本発明は、脂質ベースのコロイド状キャリアシステム(好ましくは、リポソーム、ニオソーム、トランスフェロソームなどの脂質ベースのベジクル)にカプセル化されている、少なくとも1つのビタミンD3またはその前駆体もしくは誘導体、好ましくは7-デヒドロコレステロール(7-DHC)またはその誘導体などの前駆体と、少なくとも1つのHAまたはその誘導体との相乗的な組み合わせを含む、本発明の組成物とも呼ばれる新しい組成物、ならびにその適切な局所製剤に関する。以下に明記されるすべての定義および実施形態は、本発明の組成物(および局所製剤)ならびにその使用に適用される(特段の断りがない限り)。本明細書において使用される用語「局所」は、眼粘膜を含む皮膚および粘膜の任意の部分への投与をいう。本明細書において使用される用語「光損傷」は、ICD-10定義2016を引用し、日光暴露ならびにUVAおよびUVBの放射による皮膚障害として特徴付けられる。本発明の組成物に関して使用される用語「相乗的」は、薬剤の組み合わせの治療効果が、組み合わせにおける個々の薬剤の効果の合計よりも大きいことを意味する。
【0021】
本明細書において使用される用語「ビタミンD」は、ビタミンD1、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンD4、ビタミンD5、ビタミンD6、およびビタミンD7など、栄養用途に適していることが当技術分野において知られている任意の抗くる病形態をいう。「ビタミンD3」が好ましく、これは、本明細書において使用する場合、ビタミンD3ならびに7-DHC(プロビタミンD3)またはその誘導体などのビタミンD3の前駆体、または25-ヒドロキシビタミンD3、または1a,25-ジヒドロキシビタミンD3(1a-ヒドロキシビタミンD3など)などのビタミンD3の誘導体を意味し、それらはビタミンD受容体を活性化するか、ヒトにおいてビタミンD受容体を活性化する化合物に代謝的に変換できる。7-DHCが好ましい。ビタミンD、好ましくはビタミンD3およびその前駆体7-DHCは、10,000IU~50,000IEおよび0.01~4重量%の濃度で使用される。本発明による組成物の総重量の0.01~3重量%の濃度が好ましく、0.01~0.75重量%の濃度がより好ましく、0.01~0.5重量%の濃度が最も好ましい。
【0022】
本明細書において使用される用語「ヒアルロン酸」(ヒアルロナン、ヒアルロン酸塩、またはHAとしても知られる)は、交互にβ-1,4およびベータ-1,3グリコシド結合によって連結されたN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)およびグルクロン酸(GlcUA)の二糖単位の繰り返しで構成される非硫酸化グリコサミノグリカンをいう。本出願において使用される用語「ヒアルロン酸」または「HA」は、HAまたは、とりわけナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウム塩などのHAの塩をいう。用語「ヒアルロン酸」または「HA」は、天然および合成の両方の式(formula)、ならびにこれらの天然および合成の式の組み合わせを含み、その塩形態を含む。HAおよびその様々な分子サイズ画分およびそれぞれの塩は、特に関節疾患の治療における薬剤として、特に眼科および美容外科における天然の臓器および組織の補助剤および/または代替剤として、および化粧品における薬剤として使用されてきた。HAの製品は、整形外科、リウマチ、および皮膚科で使用するためにも開発されている。約1~約1.5MDaの平均MWを有するHAの高分子量(MW)画分は、ローションおよびクリームなどの化粧品組成物に優れた保湿特性を提供することでよく知られている。HAの非常に低いMW画分は、皮膚バリアを透過する能力が高いことが報告されている。好ましい実施形態では、架橋剤(例えば、1,4-ブタンジオールジグリシダルエーテル(BDDE)など)を使用してHAポリマー鎖を互いに結合させ、液体HA溶液をゲルに変換することができる。したがって、特定の実施形態では、HAは、皮膚への高い保水能力を示す低分子架橋HAを有する、HAポリマー鎖を(HAモノマー単位内の一次ヒドロキシル部位(-CH2OH)および/または二次ヒドロキシル部位(-CHOH)を通して)架橋することにより得られるゲルの形態である。本発明で使用するためのHAは、好ましくは、最大200,000kDaのより高いMWと組み合わせた、低MW、例えば4kDa~50kDaのものである。典型的には、HAは、0.01~8重量%(または80mg/ml)、好ましくは0.01~5重量%(または50mg/ml)、より好ましくは0.01~4重量%(または40mg/ml)、最も好ましくは0.01~3重量%(または30mg/ml)の濃度で使用される。全HAの最も好ましい濃度は、好ましくは4~5kDaの最低MW HA、40~50kDaの低~中または中分子HA、および50,000~200,000kDaの高MW HA(wt%)の混合物として3重量%である。好ましくは、4~5kDaの最低分子HAと40~50kDaの中分子HAと50,000~200,000kDaの高MW HAの比は、(1~10):(0.1~2):(0.1~2)、好ましくは(2~6):(0.5~1.5):(0.5~1.5)、最も好ましくは約4:約1:約1(または中および高MW HAのほぼ等しい重量%)である。したがって、最も好ましいのは、4~5kDaの最低分子HAが2重量%、40~50kDaの低~中または中分子HAが0.5重量%、および50,000~200,000kDaの高MW HAが0.5重量%のHA混合物として3重量%である。
【0023】
HAは、ビタミンD、例えばビタミンD3、例えば7-DHCと一緒に、表皮の水和に、また免疫保護効果にも相乗効果がある(例えば、33、34、35、36、図2、3参照]。HAは、7-DHCなどのビタミンD3と一緒になって、光損傷した皮膚に対する相乗的な物理化学的作用機序を有する。
【0024】
したがって、好ましい実施形態では、本発明の組成物は、コロイド状キャリアシステムの油相中に7-DHCを含み、コロイド状キャリアシステムの水相中に活性物質としてHAを含む。2つの相は別々に取得され、次に脂質ベースのコロイド状キャリアシステムを形成するために合わせられる。
【0025】
さらに、7-DHCは、光損傷の予防および/または治療に特に有効である、さらなる成分(以下、補助剤ともいう)の追加の活性化剤としても機能することが見出された。特に、ビタミンA(好ましくはパルミチン酸レチノール)、少なくとも1つのビタミンB、ビタミンC(好ましくはL-アスコルビン酸)およびビタミンE(好ましくは酢酸トコフェロール)から選択される1つまたは複数の成分をさらに含む組成物が、光損傷の効果的な予防および/または治療を達成することが見出された[図1、2、3を参照]。
【0026】
したがって、特定の実施形態では、本発明の組成物は、ビタミンA(好ましくはパルミチン酸レチノール)、少なくとも1つのビタミンB、ビタミンC(好ましくはL-アスコルビン酸)およびビタミンE(好ましくは酢酸トコフェロール)から選択される1つ以上、好ましくは1、2、3、4、5、6、または7個のさらなる成分をさらに含む。
【0027】
本明細書において使用される用語「ビタミンA」は、レチノール、レチナール、レチノイン酸、およびいくつかのプロビタミンAカロテノイド(最も顕著にはベータ-カロチン)、好ましくは主要形態のパルミチン酸レチノールをいう。ビタミンA、特にパルミチン酸レチノールは、短波長UVA範囲の光を吸収し、皮膚に光保護効果をもたらす。パルミチン酸レチノールは、7-DHCと一緒に、短波長UVA範囲の吸収、NF-κΒのダウンレギュレーション、それによる皮膚のUV誘発炎症に関する効果に利点を示すことが見出された[例えば、36、37参照]。パルミチン酸レチノールは皮膚中に拡散し、そこでレチノールに部分的に加水分解され、角質層、表皮、および真皮に浸透し、300~350nmの範囲のUV放射を吸収することによりUVフィルターとして作用し、それにより、本発明の組成物の効果を支持する。典型的には、パルミチン酸レチノールは、0.01重量%から2重量%まで、好ましくは0.01重量%~0.5重量%、より好ましくは0.01~0.2重量%、最も好ましくは0.01~0.1重量%の濃度で使用される。
【0028】
本明細書において使用される用語「ビタミンB」は、チアミン(B1)、リボフラビン(B2)、ナイアシン(B3)、パントテン酸(B5)、ピリドキシン(B6)、葉酸塩(B7)および各種コバラミン(B12)などの水溶性の化学的に異なるビタミンのクラスをいう。一実施形態では、本明細書において使用される用語「ビタミンB」は、リボフラビン(B2)をいう。通常、リボフラビンは、本発明の組成物の総重量の0.01重量%~2重量%、好ましくは0.01重量%~0.2重量%、より好ましくは0.01重量%~0.1重量%、最も好ましくは0.01重量%~0.05重量%の濃度で使用される。別の実施形態では、本明細書において使用される用語「ビタミンB」は、ナイアシンアミドをいう。ナイアシン(B3)のアミドであるナイアシンアミドは、抗酸化物質として作用する可能性がある親水性の内因性物質であり、表皮バリア機能を改善し、皮膚の色素沈着を減らし、皮膚萎縮を低減し、発赤/しみを減少させ、皮膚の弾力性を改善することができる[54、55]。ナイアシンアミドは、表皮バリア機能の構造的および機能的完全性を再構築し、表皮の保湿剤としてHAと相乗効果を示す[図2]。ナイアシンアミドは、核ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ-1(PARP-1)を阻害することにより、NFKBを介したシグナル伝達分子の転写を制御する。さらに、ナイアシンアミドは、7-DHCおよびビタミンA(特にパルミチン酸レチノール)を使用したNFκBを介した転写に対する効果が追加される[例えば、38、40]。典型的には、ナイアシンアミド(ビタミンB3)は、本発明の組成物の総重量の0.5重量%から5重量%まで、好ましくは4重量%まで、より好ましくは3重量%まで、最も好ましくは3重量%の濃度で使用される。
【0029】
別の実施形態では、本明細書において使用される用語「ビタミンB」は、デクスパンテノール(プロビタミンB5)をいう。局所のデクスパンテノールは保湿剤のように作用し、その活性はおそらくデクスパンテノールの吸湿特性に基づく。デクスパンテノールはさらに、皮膚刺激に対する保護効果を示す[例えば、39参照]。デクスパンテノールは、扁桃摘出術後の小児の創傷治癒プロセスを有意に加速する[例えば、36参照]。典型的には、デクスパンテノール(ビタミンB5)は、本発明の組成物の総重量の0.5重量%から5重量%まで、好ましくは3重量%まで、より好ましくは2.5重量%、最も好ましくは1重量%の濃度で使用される。
【0030】
さらなる実施形態では、本明細書において使用される用語「ビタミンB」は、葉酸(B9)をいう。葉酸は、DNAの合成、修復、メチル化、特にヌクレオチド生合成とホモシステインの再メチル化に不可欠である。葉酸は、細胞のDNA、RNAの生成に不可欠であり、神経管欠損(NTDs)および重度の先天異常の予防、および葉酸欠乏による貧血の治療における使用により知られている。葉酸はまた、インビトロおよびインビボでクレアチンと組み合わせて、表皮の皮膚再生を著しく促進し[例えば、41参照]、したがって、UV誘導の細胞損傷および炎症をカバーする7-DHCとの相乗効果を促進することができる[図2]。典型的には、葉酸(ビタミンB9)は、本発明の組成物の総重量の0.01重量%から0.2重量%まで、好ましくは0.07重量%まで、より好ましくは0.05重量%、最も好ましくは0.02重量%の濃度で使用される。
【0031】
本明細書において使用される用語「ビタミンC」は、皮膚の壊血病および紅斑を治療および予防するためのサプリメントとして使用されるL-アスコルビン酸をいう[例えば、42、43参照]。壊血病は、皮膚上の茶色の斑点の形成、スポンジ状の歯肉、およびすべての粘膜からの出血を引き起こす。L-アスコルビン酸は、コラーゲンの合成[例えば、44、45、46参照]およびカルニチン(真皮の細胞におけるATP産生のために、脂肪酸のミトコンドリア中への輸送に必須である)の合成[例えば、47、48参照]におけるプロリンとリジンのヒドロキシル化に必要な皮膚におけるさまざまな必須酵素の電子供与体として作用する。アスコルビン酸塩は、酸化ストレスから保護する抗酸化剤としても働き[例えば、49参照]、多数の活性酸素種(ROS)を迅速に除去できる強力な還元剤であり、7-DHCとの相乗効果を促進できる。典型的には、L-アスコルビン酸は、本発明の組成物の総重量の0.1重量%から10重量%まで、好ましくは5重量%まで、より好ましくは2重量%、最も好ましくは3重量%の濃度で使用される。
【0032】
本明細書で使用される用語「ビタミンE」は、トコフェロールおよびトコトレエノールとして知られる化合物、好ましくは酢酸トコフェロールをいう。酢酸トコフェロールは、皮膚の中を通り、約5重量%が遊離トコフェロールに変換される生細胞に浸透できる。酢酸トコフェロールは抗酸化活性を示し、ペルオキシルラジカルスカベンジャーとして作用し、組織内の有害なフリーラジカルの生成を無効とし[例えば、50参照]、したがって、7-DHCとの相乗効果を促進できる。典型的に、酢酸トコフェロールは、本発明の組成物の総重量の0.1重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%、より好ましくは0.1重量%~3重量%、最も好ましくは0.1重量%~2重量%の濃度で使用される。
【0033】
したがって、好ましい実施形態では、7-DHCおよびHAを含む本発明の組成物は、脂質ベースのコロイド状キャリアシステムにカプセル化された、パルミチン酸レチノール、リボフラビン、ナイアシンアミド、デクスパンテノール、葉酸、L-アスコルビン酸および酢酸トコフェロールから選択される1つ以上の成分をさらに含む。特定の実施形態では、本発明の組成物は、7-DHCおよびHA、ならびに以下の成分の組み合わせを含む:
a)パルミチン酸レチノールおよびリボフラビンまたはパルミチン酸レチノールおよびナイアシンアミドまたはパルミチン酸レチノールおよびデクスパンテノールまたはパルミチン酸レチノールおよび葉酸またはパルミチン酸レチノールおよびL-アスコルビン酸またはパルミチン酸レチノールおよび酢酸トコフェロール。
b)リボフラビンおよびナイアシンアミドまたはリボフラビンおよびデクスパンテノールまたはリボフラビンおよび(v)葉酸またはリボフラビンおよびL-アスコルビン酸またはリボフラビンおよび酢酸トコフェロール。
c)ナイアシンアミドおよびデクスパンテノールまたはナイアシンアミドおよび葉酸またはナイアシンアミドおよびL-アスコルビン酸またはナイアシンアミドおよび酢酸トコフェロール(ビタミンE)。
d)デクスパンテノールおよび葉酸またはデクスパンテノールおよびL-アスコルビン酸またはデクスパンテノールおよび酢酸トコフェロール。
e)葉酸およびL-アスコルビン酸または葉酸および酢酸トコフェロール。
f)L-アスコルビン酸および酢酸トコフェロール。
【0034】
最も好ましくは、7-DHCおよびHAを含む本発明の組成物(および局所製剤)は、脂質ベースのコロイド状キャリアシステムにカプセル化された成分、パルミチン酸レチノール、リボフラビン、ナイアシンアミド、デクスパンテノール、葉酸、L-アスコルビン酸および酢酸トコフェロールをさらに含む。最も好ましい濃度および濃度の範囲は、表1に次のように記載されている。
【0035】
【表1】
【0036】
本明細書において使用される用語「脂質ベースのコロイド状キャリア(システム)」(または「コロイド」)は、周知の微粒子キャリアシステム、好ましくは少なくとも1つの脂質二重層を有する球状ベジクルをいう。典型的なコロイド状キャリアには、リポソーム、ニオソーム、トランスフェロソーム、ミセル、ナノ粒子、マイクロエマルジョンなどが含まれ、好ましくはリポソーム、ニオソーム、トランスフェロソーム、最も好ましくはリポソームである。脂質ベースのコロイド状キャリアシステムは、そのサイズと二重層の数に応じて、(a)多重層ベジクル(multilamellar vessel)(MLV)、(b)大きな単層ベジクル(LUV)、(c)小さな単層ベジクル(SUV)、(d)多重ベシクルベシクル(MW)、オリゴ層ベシクル(OLV)の形態である。好ましい粒子サイズは、10~500nm、好ましくは10~300nm、より好ましくは20~150nmの範囲である。
【0037】
特定の実施形態では、コロイドは天然および/または合成リン脂質に基づき、典型的には処方の10重量%を構成する。通常使用されるリン脂質には、親水性で水に可溶なリン酸含有極性末端基と、グリセロール分子(グリセロリン脂質など)またはスフィンゴシン分子(リン脂質など)によって結合された脂肪に可溶な疎水性末端基を有する脂肪酸が含まれる。
【0038】
いくつかの実施形態では、コロイド状キャリアシステムで使用されるリン脂質には、ホスファチジルコリン、リゾホスホチジルコリン、水素化リン脂質、および不飽和リン脂質の1つまたは複数が含まれる。グリセロリン脂質の例としては、ホスファチジン酸(ホスファチジン酸)(PA)、ホスファチジルエタノールアミン(セファリン)(PE)、ホスファチジルコリン(レシチン)(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、およびホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルイノシトールリン酸(PIP)、ホスファチジルイノシトール二リン酸(PIP2)、およびホスファチジルイノシトール三リン酸(PIP3)などのホスホイノシタイドなどが挙げられる。ホスホスフィンゴ脂質の例としては、セラミドホスホリルコリン(スフィンゴミエリン)(SPH)、セラミドホスホリルエタノールアミン(スフィンゴミエリン)(Cer-PE)、およびセラミドホスホリルグリセロールが挙げられる。本発明のコロイド状キャリアシステムは、オメガ-3、オメガ-6およびオメガ-9脂肪酸などの脂肪酸をさらに含んでもよい。本発明で使用される好ましい例は、レシチン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、リノール酸、リノレン酸、カプリル酸、カプリン酸、ルピナスアルブス種子油、スクアレン、イミダゾリジニル尿素およびアスコルビルリン酸ナトリウムである。脂質ベースのコロイド状キャリアシステムの好ましい実施形態を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
さらなる実施形態では、コロイド状キャリアシステムは、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン(PVP)、またポリビドンまたはポビドン膜、好ましくはMW10nm~500nmのコポビドンも含むことができる。コポビドンは、フィルム形成剤およびバインダーとして、またキャリアシステムとしても使用される。
【0041】
本発明における使用のために、親油性薬剤は二重層システム内にカプセル化され、一方親水性薬剤はシステムの水相にカプセル化される。したがって、ビタミンD前駆体(7-DHCまたはその誘導体など)およびリン脂質および任意の追加の親油性薬剤(パルミチン酸レチノールおよび酢酸トコフェロールなど)は、室温でコロイド状キャリアシステムの油相に直接組み込まれる。別の工程において、HAおよび任意の追加の親水性薬剤(例えば、リボフラビン、ナイアシンアミド、デクスパンテノール、葉酸、L-アスコルビン酸など)は、別に水溶液で一緒に混合する。HAおよび任意の追加の親水性薬剤を含む水溶液は、ビタミンD前駆体(7-DHCまたはその誘導体など)を含む油相に混合される。2相の乳化後、組成物の親水性成分(HAおよび追加の親水性物質)は水性コンパートメントに存在し、一方、組成物の親油性成分は粒子のリン脂質二重層に最初のステップですでに挿入されている。
【0042】
したがって、最も好ましい実施形態では、脂質ベースのコロイド状キャリアシステム(好ましくは、リポソーム、ニオソーム、トランフェロソームなどの脂質ベースのベジクル)は、レシチン、リノレン酸、リノール酸、ホスファチジルコリン、およびパプリル酸/パプリン酸トリグリセリドで構成され、これに7-DHCまたはその誘導体などのビタミンD3成分、およびHA、および任意には、パルミチン酸レチノール、リボフラビン、ナイアシンアミド、デクスパンテノール、葉酸、L-アスコルビン酸および酢酸トコフェロールの少なくとも1つ、好ましくは1、2、3、4、5、6または7個の成分が入れられる。独自に帯電され、安定なキャリアシステムは、皮膚の上層において皮膚に浸透して、本発明の相乗的組成物が所望の部位で直接効果を発揮することを可能とする。
【0043】
適用の性質および種類に応じて、本発明の組成物は、皮膚および/または粘膜への適用に使用される製剤において一般に使用される1つまたは複数の薬学的に許容され得る添加剤、賦形剤、アジュバントをさらに含んでもよい。
【0044】
典型的な添加剤には、例えば、関連するUVフィルターシステム、または光損傷の予防および日光UVAおよびUVB保護のための1つ以上のUVA/B保護剤、例えば、フィラグリントランス-ウロカニン酸、ブチルメトキシジベンゾイルメタン Neo Heliopan 357 Eusolex 9020、Parsol 1789、メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール(ナノ)、Tinosorb M、エチルヘキシルトリアゾン Uvinul T 150、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン Tinosorb S、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル Uvinul MC 80、Parsol MCX、Neo Heliopan AV 4などが含まれる。UVフィルターは、皮膚の紅斑や光線性角化症、または他の形態の非メラノーマ皮膚がん(NMSC)を予防するための有効成分と補助成分に埋め込まれる。
【0045】
典型的なアジュバントには、例えば、界面活性剤、乳化剤、エモリエント、増粘剤、コンディショニング保存剤、緩衝剤、保湿剤、香料などが含まれる。したがって、キャリアシステムは、1つまたは複数の界面活性剤をさらに含んでもよい。用語「界面活性剤」は、液体の表面張力と2つの液体間の界面張力を低下させ、それらの拡散を容易にする物質をいう。界面活性剤は、水分子に引き寄せられる親水性の頭部と、水をはじくと同時に汚れの中の油とグリースに付着する疎水性の尾部を有する。これらの正反対の力は、界面活性剤が水に溶解されると、汚れをほぐして水に懸濁し、ヒトの皮膚、織物、およびその他の固体などの表面から汚れを除去する能力を有する。適切な界面活性剤の例としては、非イオン性、イオン性(アニオン性またはカチオン性)または双性イオン性(または界面活性剤の頭部が2つの反対に帯電した基を含む両性)界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アニオン性界面活性剤の例としては、硫酸塩、スルホン酸塩またはパーフルオロオクタン酸塩(PFOAまたはPFO)などのカルボン酸塩アニオン、アルキルベンゼンスルホン酸塩、石鹸、脂肪酸塩、またはパーフルオロオクタンスルホン酸塩(PFOS)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウム、またはラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)などのアルキル硫酸塩に基づくものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。カチオン性界面活性剤の例としては、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)別名、または臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムなどのアルキルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム(CPC)、ポリエトキシル化牛脂アミン(POEA)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、または塩化ベンゼトニウム(BZT)などの第4級アンモニウムカチオンに基づくものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。両性イオン界面活性剤の例としては、ドデシルベタイン、コカミドプロピルベタイン、またはココアンホグリシン酸塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。非イオン性界面活性剤の例としては、アルキルポリ(エチレンオキシド)、アルキルフェノールポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)のコポリマー、ポリ(プロピレンオキシド)(商品名、ポロキサマーまたはポロキサミン)、オクチルグルコシドおよびデシルマルトシドを含むアルキルポリグルコシド、セチルアルコールおよびオレイルアルコールを含む脂肪アルコール、コカミドMEA、コカミドDEA、またはツイーン20、ツイーン80を含むポリソルベート、またはドデシルジメチルアミンオキシドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、界面活性剤は、ポリソルベート20または40などのポリソルベート、ココグルコシド、ラウリルグルコシド、デシルグルコシド、アンモニウム、ナトリウム、マグネシウムなどのラウリル硫酸塩、MEA、トリエチルアミン(TEA)、またはミパラウリル硫酸塩、コカミドプロピルベタイン、またはアルキルスルホコハク酸ナトリウムを含む、発泡性で肌に優しいものである。
【0046】
特定の実施形態では、界面活性剤は、少なくとも1つのポリソルベート、例えばポリソルベート10~150であり、これは賦形剤および乳化剤として一般的に使用される非イオン性界面活性剤である。好ましくは、ポリソルベートは、Scattics、PS20、Alkest TW 20およびTween 20として、ラウリン酸の添加前にソルビタンのエトキシ化により形成されるポリソルベート型の非イオン界面活性剤である。ポリソルベートは、コロイド状キャリアの安定化に有効であり、液体の存在下、種々の脂肪酸C鎖を有する脂質では、結晶構造が組織化されていないため、活性物質の収容能力が向上する。ポリソルベートの効果は、製剤化されたナノ粒子の物理化学的特性を介したキャリアシステムの安定化にある。コロイド状キャリアシステムは、ポリソルベート20またはポリソルベート80などのポリソルベートで安定化される。ポリソルベートは、リポソームキャリアシステムのより良好な分散剤として使用される。小さいサイズおよび優れた粒子表面対体積比は、活性物質の負荷効率およびバイオアベイラビリティを高め、したがって、リポソームキャリアシステムをより効率的な送達システムにするであろう。
【0047】
他の特定の実施形態では、界面活性剤はポリビニルピロリドン(PVP)であり、沈殿を防ぐか、pH依存性の強い水溶性を有する活性成分または補助物質の粒子サイズを小さくすることが知られている。PVP様のポロキサマー/コポビドンは、リポソーム製剤中の粒子を安定化するために使用される。溶解効率はポリビニルピロリドン(PVP)で高く、ポリマー濃度が高くなるほど増加すると推定される。PVPは通常、安定化として、またリポソームキャリアシステムの効率とバイオアベイラビリティを高めるために使用される。
【0048】
したがって、特定の実施形態では、キャリアシステムは、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビドン、ポビドン膜、ポビドン、コポビドン、ヒプロメロースおよびオイドラギットEPO、好ましくはMWが10nm~500nmのコポビドンをさらに含んでもよい。
【0049】
本発明の組成物中の界面活性剤の量は、本発明による組成物の総重量の0.5および10重量%のあいだである。
【0050】
用語「エモリエント(emollient)」は、皮膚の乾燥とスケーリングを修正し、皮膚表面を滑らかにし、皮膚の水分保持を促進し、そして製品の質感を変えるために、皮膚を柔らかくし、滑らかにする薬剤をいう。適切な局所エモリエントの例としては、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ラノリン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、パルミチン酸セチル、オクチルドデカノール、セチルアルコール、イソステアリン酸イソプロピル、ジラウリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パームアルコール、ジメチコン、スクアラン、プルケネチア・ウォルビリス種子油、シア(Butyrospermum parkii)バター、ショ糖ココエート、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、エモリエントは、ジメチコン、スクアラン、プルケネチア・ウォルビリス種子油、シアバター、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、オクチルドデカノール、またはそれらの混合物からなる群から選択される。本発明の組成物中のエモリエントの量は、本発明による組成物の総重量の10から30重量%の間である。
【0051】
用語「保湿剤」は、吸収または吸着のいずれかを介して周囲の環境から水分子を引き付け、皮膚の水分損失を防ぐ吸湿剤をいう。適切な局所保湿剤の例としては、グリセリン、ジグリセリン、エチルヘキシルグリセリン、グルコース、蜂蜜、乳酸、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロース、またはトレロースが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、保湿剤は、グリセリン、ジグリセリン、エチルヘキシルグリセリン、およびそれらの混合物からなる群より選択される。本発明の組成物中の保湿剤の量は、本発明による組成物の総重量の0.5~15重量%、好ましくは0.5~10重量%である。
【0052】
本明細書において互換的に使用される用語「増粘剤(thickening agent)」または「増粘剤(thickener)」または「粘度剤(viscosity agent)」は、他の特性を実質的に変更することなく粘度を増加させる物質をいう。適切な増粘剤の例としては、セルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのその誘導体、ポリエチレングリコール、微結晶セルロース、セテアリルアルコール、アルギン酸塩、分岐多糖類、ヒュームドシリカ、キサンタンガム、カルボマー、およびポリアクリレートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、粘性剤は、微結晶セルロース、セテアリルアルコール、セルロース、キサンタンガム、およびカルボマーからなる群から選択される。本発明の組成物中の粘度剤の量は、本発明による組成物の総重量の0.5~15重量%、好ましくは0.5から10重量%である。
【0053】
本明細書において互換的に使用される用語「乳化剤(emulsifying agent)」または「乳化剤(emulsifier)」は、表面張力を低下させ、界面張力を変えることにより非混和性液体の密接な(intimate)混合物の形成を促進する物質をいう。乳化剤は、その運動学的安定性を高めることにより、エマルジョンを安定化する。適切な乳化剤の例としては、グリセリルトリオレエート、グリセリルオレエート、アセチル化スクロースジステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンモノステアレート、グリセロールモノオレエート、スクロースジステアレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、デアシルレリンペンタ-イソステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン、ヒドロキシル化ラノリン、レシチン、ラノリン、ジイソステアリン酸トリグリセリル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ステアロイル-2-乳酸カルシウム、ラウロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、セテアリルグルコシド、メチルグルコシドセスキステアリン酸、ソルビタンモノパルミテート、メトキシポリエチレングリコール-22/ドデシルグリコール共重合体、ポリエチレングリコール-45/ドデシルグリコール共重合体、ポリエチレングリコール400ジステアレートおよびグリセリルステアレート、カンデリラ/ホホバ/米ぬかポリグリセリル-3エステル、リン酸セチル、リン酸セチルカリウム、またはそれらの混合物。好ましくは、乳化剤は、オレイン酸グリセリル、レシチン、ラウロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアリン酸グリセリル、カンデリラ/ホホバ/米ぬかポリグリセリル-3エステル、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の組成物中の乳化剤の量は、本発明による組成物の総重量の0.5~15重量%、好ましくは0.5~10重量%である。
【0054】
用語「pH調節」または「緩衝」剤は、溶液の安定性に影響を与えることなく、最終製品のpHを所望のレベルに調整するために使用できる酸または塩基をいう。適切な局所pH調節剤の例としては、酢酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、エタノールアミン、ギ酸、シュウ酸、酒石酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、またはそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されるものではない。好ましくは、pH調節剤は、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、乳酸、およびクエン酸からなる群から選択される。本発明の組成物中のpH調節剤の量は、本発明による組成物の総重量の0.01および1重量%のあいだである。
【0055】
用語「コンディショニング保存料(conditioning conservant)」は、角質層を保湿した状態に保つための保湿機能を有する化合物、より具体的には、バリア機能に作用する化合物、例えば、セラミド、スフィンゴイド系化合物、レシチン、スフィンゴ糖脂質、リン脂質、コレステロールおよびその誘導体、フィトステロール(スチグマステロール、β-シトステロールまたはカンペステロール)、必須脂肪酸、1,2-ジアシルグリセロール、4-クロマノン、五環式トリテルペン、ワセリン、ラノリンなど;または、角質層の水分を直接増加させる化合物、例えば、トレロースおよびその誘導体、グリセロール、ペンタンジオール、ピドレート、セリン、キシリトール、ペルオキシエタノール、乳酸ナトリウム、グリセリルポリアクリレート、エクトインおよびその誘導体、キトサン、オリゴ-および多糖類、環状炭酸塩、N-ラウロイルピロリドンカルボン酸およびNa-ベンゾイル-L-アルギニンなどをいう。本発明の組成物中のダッチ化合物の量は、本発明による組成物の総重量の0.001重量%~30重量%、好ましくは0.01~20重量%である。
【0056】
用語「香料」は、心地よい香りを放つことができる香水またはアロマをいう。本発明の組成物に含まれる芳香物質は、天然または合成起源の香水およびアロマ、ならびにそれらの混合物に由来し得る。天然由来の香水およびアロマの例は、花の抽出物(ユリ、ラベンダー、ローズ、ジャスミン、イランイラン)、茎および葉(パチョリ、ゼラニウム、ビターリーフ)、果実(コリアンダー、アニス、クミン、ジュニパー)、果物の皮(ベルガモット、レモン、オレンジ)、根(アンジェリカ、セロリ、カルダモン、アイリス、ショウブ)、木(松、白檀、ユウソウボク、ピンクシダー)、ハーブおよびイネ科(タラゴン、レモングラス、セージ、タイム)、針および枝(トウヒ、モミ、マツ、ドワーフパイン)、樹脂およびバルサム(ガルバナム、エレミゴム、ベンゾインゴム、ミルラ、乳香、オポパナクス)。
【0057】
好ましくは、香料(perfuming agent)の量は、全組成物重量に対して1重量%~30重量%、より好ましくは2重量%~25重量%である。好ましい組成を表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
脂質ベースのコロイド状キャリアシステム(例えば、リポソーム、ニオソーム、トランフェロソームなどの脂質ベースのベジクル)は、既知の技術のいずれかによって調製できる(一般的な脂質ベースのキャリアシステムの調製については、例えば、Liposomes, eds. Angel Catala, pub. InTech, 2017(ISBN 978-953-51-3580-7)参照、またはリポソームキャリアの調製については、例えば、Liposomes, Methods and Protocols, Springer Protocols, eds. D’Souza, Gerard G.M., 2017 参照)。例えば、コロイドは、多重層ベジクル(MLV)を調製するための従来の手法、つまり、親油性ビタミンD3またはその前駆体を1つ以上の脂質とともに適切な容器に入れ、脂質を有機溶媒、例えばクロロホルムに溶解し、有機溶媒を蒸発させて脂質膜を得ることにより形成することができる。次の工程では、ヒアルロン酸を含む親水性成分を含む水溶液を加えることにより脂質膜が水和される。通常、得られた脂質懸濁液を、本発明による最終組成物を得るために旋回(swirling)またはボルテックスする。あるいは、逆相蒸発、注入法、および界面活性剤希釈などの大きな単層ベジクル(LUV)を生成するために使用される技術は、本発明のリポソームを生成するために使用することができる。脂質ベジクルを生成するためのこれらおよび他の方法の概説が、the text Liposome Technology, Volume I, Gregory Gregoriadis Ed., CRC Press, Boca Raton, Fla.,(1984)に記載され、これは参照により本明細書に組み込まれる。例えば、脂質含有粒子は、ステロイド脂質ベシクル、安定した多層膜脂質ベシクル(SPLVs)、単相ベシクル(MPVs)、または脂質マトリックスキャリア(LMCs)の形態であり得る。MLVsの場合、必要に応じて、リポソームを複数回(5回以上)凍結融解サイクルにかけて、それらの捕捉容積および捕捉効率を高め、溶質のより均一な層間分布を提供することができる。
【0060】
一実施形態において、リポソームは、例えば、高いカプセル化効率(EE)に到達するために高温高圧均質化により調製される。カプセル化効率は、ナノ粒子中に首尾よく捕捉/吸着され、皮膚のより深い層に運ばれる活性物質の割合を示す。親水性活性物質のためのキャリアとしてのナノ構造脂質キャリア(NLC)の適用に対する主な障害は、[(添加された活性物質-遊離“非捕捉活性物質”)/添加された活性物質]×100(したがって、例として、5重量%の重量%EEは、5重量%の活性物質がキャリア系に捕捉されていることを意味する)と同等であるwt%EEによる、これらの分子のNLCsの制限された負荷容量(LC)とカプセル化効率(EE)である。
【0061】
ゲルの形態から液晶(fluid crystalline)構造において流動性に乏しい結晶性の2次元グリッド状態への相転移温度。上記の脂質の相転移温度は、頭部、鎖長、および脂肪酸の飽和レベルエステルに依存する。その温度は-20℃~60℃で、熱分析法で立証できる。液晶相に埋め込まれた親油性薬剤の移動性は増加し、脂質層内での移動が可能であるが、脂質層を離れることはできない[46]。
【0062】
多重層(multilamellar layer)系の物理的構造は、乾燥脂質の高圧均質化と脱水により、リン脂質と水性媒体との相互作用により形成される。この方法で多重層ベジクル(MLV)が構築される。リポソームの押出には、10~500nmサイズのポリカーボネート膜が使用される。均質化およびサイズは、フィルターの孔径と押出し工程の数によって決定される。目標は、最高のカプセル化効率を達成することである。
【0063】
このキャリアシステムの使用には、超小型サイズ(1~100nmの範囲の小さな粒子)、大きな表面積と質量比、高い反応性などの同じ組成のバルク材料とは異なる独自の物理化学的特性がある。これらの特性は、より大きなサイズの分子による皮膚浸透の制限を克服し、必要に応じて皮膚バリアを通過する親油性および親水性物質をカプセル化するために使用されている。
【0064】
さらなる実施態様では、本発明は、局所または経皮適用のための本発明の組成物の適切な製剤に関する。
【0065】
本発明の組成物は、種々の局所または経皮適用に使用することができ、これは固体、液体または半固体形態であってもよい。したがって、適切な製剤には、エマルジョン(例えば、水中油および/またはシリコーンエマルジョン、油および/またはシリコーン中水エマルジョン、水/油/水または水/シリコーン/水型エマルジョン、および油/水/油またはシリコーン/水/シリコーン型エマルジョン)、マイクロエマルジョン、水性分散液、オイル、ミルク、バルサム、フォーム、水性または油性ローション、水性または油性ゲル、クリーム、溶液、水性アルコール溶液、水性グリコール溶液、ハイドロゲル、セラム、軟膏、ムース、ペースト、スプレーまたはエアロゾル、ならびに本発明の組成物の任意の経皮パッチへの含有物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。パッチまたはパッドなどの典型的な経皮治療システムでは、本発明の組成物(少なくとも1つの補助剤を含むまたは含まない)は、必要に応じて、浸透強化剤および/または結晶化阻害剤と組み合わせて埋め込まれる。したがって、特定の実施形態では、組成物はクリームまたはゲルまたはローションの形態であり、他の特定の実施形態では、組成物はパッチまたはパッドなどの経皮治療システムの形態である。
【0066】
さらなる実施態様では、本発明は、皮膚の光損傷症状の予防および/または治療、特に皮膚萎縮、皮膚色素沈着(パッチ/スポット)、光線皮膚炎(紅斑:皮膚の炎症と発赤)、毛細血管拡張症(クーパーローズ)の予防および/または治療、光線性角化症の予防、ならびに皮膚の日光、UVA、UVB放射線からの保護における本発明の組成物(およびその製剤)の使用に関する。
【0067】
したがって、本発明は、光損傷プロセスを止める、すなわち、活性酸素種ROS、過酸化物O-2および一酸化窒素(NO)を阻害し、それゆえ細胞傷害性過酸化亜硝酸塩(ONOO-)の蓄積を阻害するのに有効な量で本発明の組成物(およびその局所製剤)を対象に投与することを含む、対象の皮膚の光損傷の予防および/または治療方法を検討する。
【0068】
組成物(またはその製剤)は、必要に応じて定期的に(例えば、1日1回、2回または数回)、または本質的に連続で(例えば、経皮パッチを介して)投与することができる。
【0069】
以下の実施例は、本発明を説明するための代表的な実施例であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0070】
方法と材料
乾燥したリン脂質を、室温で水溶液に分散し、自発的に球状のコロイドを形成した。純度98.7%(hplc;面積%)の7-DHCを、140および150℃のあいだの温度で液化した。プロピレングリコールを液化した7-DHCに加え、得られた混合物を室温で激しく攪拌しながらリン脂質コロイドと混合し、20~150nmの球を形成し、コロイドの油相に7-DHCを加えたコロイドを得た。HA(純度96.8%の低分子4KDaを2%、純度97.3%の中分子48.3KDaを0.5wt%および純度100の点眼グレードの高分子1.78×106Daを0.5wt%)を、攪拌しながら水に分散/溶解し、それぞれ室温で攪拌しながら添加した。HA混合物を、すでに7-DHCを充填したリン脂質コロイドに加え、室温で20分間撹拌して、均一なヒドロゲルの自発的な形成を得た。顕微鏡分析により、20~150nmサイズの球状粒子が示された。ヒドロゲルは巨視的であり、HPLC分析によれば、6ヶ月間にわたって同じ濃度の添加された7-DHCを示した。
【0071】
脂質相には、純度98.7%(hplc;面積%)の7-DHCを使用した(140および150℃の温度で液化した)。7-DHGCおよびリン脂質の有機溶媒としてプロピレングリコールを使用した。
【0072】
HA(2%の純度96.8%の低分子4KDa、0.5wt%の純度97.3%の中分子48.3KDa、0.5wt%の純度100%の点眼グレードの高分子1.78×106Daの混合物)を水相に使用した。
【0073】
室温で20分間撹拌し、均一なヒドロゲルが自発的に形成された。顕微鏡分析により、20~150nmサイズの球状粒子が示された。
【0074】
安定性試験では、6ヵ月間の高い安定性(≧98%)と分析(HPLC)でDHCの一定の含有量1.5%が示された。
【0075】
実施例1 UVフィルター系を含まないクリーム
【表4】
【0076】
実施例2 UVフィルター系を含まないゲル
【表5】
【0077】
実施例3 UVフィルター系を含まないセラム
【表6】
【0078】
実施例4 UVフィルター系を含む顔用
【表7】
【0079】
実施例5 UVフィルター系を含む体用
【表8】
【0080】
参考文献



図1
図2
図3