(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】溶接装置
(51)【国際特許分類】
B23K 9/067 20060101AFI20230419BHJP
B23K 9/00 20060101ALI20230419BHJP
B23K 9/073 20060101ALI20230419BHJP
B23K 9/167 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
B23K9/067
B23K9/00 330A
B23K9/073 520
B23K9/167 A
(21)【出願番号】P 2019157542
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(72)【発明者】
【氏名】宮島 雄一
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-216562(JP,A)
【文献】国際公開第2011/105022(WO,A1)
【文献】特開平04-081275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/067
B23K 9/00
B23K 9/073
B23K 9/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非消耗電極アーク溶接に用いられる電極を有する溶接トーチと、
前記溶接トーチと母材間に溶接電流及び出力電圧を出力する溶接電源と、
前記電極と前記母材間に高周波電圧を印加する高周波印加部と、
前記溶接電流を測定する溶接電流測定部と、
前記出力電圧を測定する出力電圧測定部と、
前記溶接電流測定部の測定した溶接電流測定値が予め定められた電流判別値よりも大きい場合は溶接電流が流れていると判別する電流判別部と、
前記出力電圧測定部の測定した出力電圧測定値が予め定められた電圧判別値よりも小さい場合は溶接電流が流れていると判別する電圧判別部と、
前記電流判別部の信号と前記電圧判別部の信号とを入力として、溶接電流が通電中であると判別する通電検出部と、
を備えており、
前記高周波印加部が前記電極と前記母材間に前記高周波電圧を印加される期間は、前記通電検出部は、前記電圧判別部の信号のみにより溶接電流が通電中であると判別すること、
を特徴とする溶接装置。
【請求項2】
前記高周波印加部が前記電極と前記母材間に前記高周波電圧を印加されない期間は、前記通電検出部は、
前記電流判別部の信号と前記電圧判別部の信号の論理和により溶接電流が通電中であると判別すること、
を特徴とする請求項1に記載の溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非消耗電極アーク溶接において、溶接のスタート時に溶接トーチに装着された電極と母材間に高周波電圧を印加し、アークを発生させる方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電極と母材間に高周波電圧を印加しスタートする方式では、特許文献1に記載されているとおり、高周波電圧を印加した際に発生する強い電磁波ノイズにより溶接電源が誤動作を起こすおそれがある。特に、スタート時においては、高周波電圧により溶接電流測定器に電磁波ノイズが混入し、溶接電流が流れていないにも関わらず通電検出部が、溶接電流が流れていると誤判別する問題がある。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、高周波電圧印加時に、通電検出部の誤判別を防止するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、
非消耗電極アーク溶接に用いられる電極を有する溶接トーチと、
前記溶接トーチと母材間に溶接電流及び出力電圧を出力する溶接電源と、
前記電極と前記母材間に高周波電圧を印加する高周波印加部と、
前記溶接電流を測定する溶接電流測定部と、
前記出力電圧を測定する出力電圧測定部と、
前記溶接電流測定部の測定した溶接電流測定値が予め定められた電流判別値よりも大きい場合は溶接電流が流れている判別する電流判別部と、
前記出力電圧測定部の測定した出力電圧測定値が予め定められた電圧判別値よりも小さい場合は溶接電流が流れていると判別する電圧判別部と、
前記電流判別部の信号と前記電圧判別部の信号とを入力として、溶接電流が通電中であると判別する通電検出部と、
を備えており、
前記高周波印加部が前記電極と前記母材間に前記高周波電圧を印加される期間は、前記通電検出部は、前記電圧判別部の信号のみにより溶接電流が通電中であると判別すること、
を特徴とする溶接装置である。
【0007】
請求項2の発明は、
前記高周波印加部が前記電極と前記母材間に前記高周波電圧を印加されない期間は、前記通電検出部は、前記電流判別部の信号と前記電圧判別部の信号の論理和により溶接電流が通電中であると判別すること、
を特徴とする請求項1に記載の溶接装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スタート時における高周波電圧による誤動作を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る溶接装置の接続図および各機能のブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態を行っていない従来技術の場合のスタート時のタイミングチャートである。
【
図3】本発明の実施の形態を行った場合の溶接時のタイミングチャートである。
【
図4】本発明の実施の形態を行った場合の溶接中に出力電圧が上昇した時の動作を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
〔実施の形態〕
図1は、本発明の実施の形態に係る非消耗電極アーク溶接の溶接装置の接続図および各機能のブロック図である。以下、同図を参照して各ブロックについて説明する。溶接電源PMは、非消耗電極式アーク溶接電源である。溶接トーチ3は、溶接電源PMの出力端子マイナス側に接続され、溶接トーチ3の電極2に溶接電源PMの出力電圧Vを印加する。母材ケーブル5は、溶接電源PMの出力端子プラス側と母材4を接続している。トーチスイッチ1は溶接トーチ3に搭載されており、トーチスイッチケーブル10で溶接電源PMの通電検出部11、電圧判別部9、高周波印加部12および溶接電源PMの図示しない制御部に接続されている。
【0012】
溶接電流測定部6は、溶接電流Iwを検出し、溶接電流100Aあたり1V(1V/100A)の溶接電流測定値Idを電流判別部8に出力する。
【0013】
出力電圧測定部7は、溶接電源PMの出力電圧Vを検出し、出力電圧20Vあたり1V(1V/20V)の出力電圧測定値Vdを電圧判別部9に出力する。
【0014】
電流判別部8は、溶接電流測定値Idにより、下記のとおり溶接電流が流れていると判別するWCR信号を生成し、通電検出部11に出力する。
・溶接電流測定値Idが20mS間6A未満の場合:WCR信号はL
・溶接電流測定値Idが3mS間6A以上の場合:WCR信号はH
なお、WCR信号はWelding Current Relayの略であり、溶接電流が流れていると判別した場合はH、溶接電流が流れていないと判別した場合はLとなる信号である。なお、WCR信号がHからLに切り替わるのに20mS間の期間を設けているのは、20mS以下の短い時間のアーク切れでは、WCRがHからLに切り替わらないようにするためである。
【0015】
電圧判別部9は、起動信号TSおよび出力電圧測定値Vdにより、溶接電流が流れていると判別するOVR信号を生成し、通電検出部11に出力する。
1)起動信号TSが起動(H)の時は、出力電圧測定値Vdが20mS間45V以上の場合:OVR信号はL
2)起動信号TSが起動(H)の時は、出力電圧測定値Vdが3mS間40V以下の場合:OVR信号はH
3)起動信号TSが停止(L)の場合:OVR信号はL
なお、OVR信号はOutput Voltage Relayの略であり、起動中に溶接電流が流れていると判別した場合はH、それ以外はLとなる信号である。なお、OVR信号がHからLに切り替わるのに20mS間の期間を設けているのは、20mS以下の短い時間のアーク切れでは、OVRがHからLに切り替わらないようにするためである。
【0016】
通電検出部11は、電流判別部8のWCR信号および電圧判別部9のOVR信号より、下記のとおり通電検出信号Arcを生成し、高周波印加部12に出力する。
1)通電検出信号ArcがLの場合は、電圧判別部9のOVR信号のみにより、通電検出信号Arcを決定する。すなわち、通電検出信号ArcがLの場合、電圧判別部9のOVR信号がHに切り替わった時点で通電検出信号ArcもHに切り替わる。
2)通電検出信号ArcがHの場合は、電流判別部8のWCR信号と電圧判別部9のOVR信号の論理和(OR)により、通電検出信号Arcを決定する。すなわち、通電検出信号ArcがHの場合、電流判別部8のWCR信号と電圧判別部9のOVR信号の両方がLにならないと、通電検出信号ArcはLに切り替わらない。
【0017】
高周波印加部12は、起動信号TSが起動(H)で、通電検出部11の通電検出信号ArcがLの場合、高周波電圧HFを電極2と母材4間に印加し、電極2から母材4間にアークを発生させる。
【0018】
従来技術の場合について、溶接装置の動作説明を行う。
図2は、高周波電圧HFの発生や停止に関わらず、通電検出部11が電流判別部8のWCR信号と電圧判別部9のOVR信号の論理和にて、通電検出信号Arcの判別を行った場合に発生する誤判別について説明するためのタイムチャートである。同図(a)は起動信号TSの起動/停止を示し、同図(b)は溶接電流測定信号Idの時間変化を示し、同図(c)は出力電圧測定信号Vdの時間変化を示し、同図(d)は電流判別部8の出力であるWCR信号の時間変化を示し、同図(e)は電圧判別部9の出力であるOVR信号の時間変化を示し、同図(f)は通電検出部11の出力である通電検出信号Arcの時間変化を示し、同図(g)は高周波電圧HFの印加/停止を示す。
【0019】
時刻t0:時刻t0の時点で、同図(a)に示すように、起動信号TSが起動(H)に切り替わり、溶接電源PMの出力電圧Vには無負荷電圧70V程度が出力され、同図(c)に示すように、出力電圧測定信号Vdも無負荷電圧に相当する値となる。また同時に、高周波電圧印加部12は電極2と母材4間に、同図(g)に示すように、高周波電圧HFを印加する。すると先述したとおり、高周波電圧HFによる電磁ノイズが溶接電流測定部6に混入し、同図(b)に示すように、溶接電流測定値Idに重畳され、溶接電流Iwが流れていないにも関わらずスパイク状のノイズが溶接電流測定値Idに混入する。
【0020】
時刻t1:溶接電流測定値Idに混入したスパイク状の電圧により、電流判別部8は溶接電流測定値Idが3mS間6A以上と判別した時点である時刻t1で、同図(d)に示すように、電流判別部8のWCR信号は、LからHに切り替わる。時刻t0から時刻t1の間は、同図(c)に示すように、出力電圧測定信号Vdは無負荷電圧70V程度に対応する値であるので、時刻t1の時点においても、同図(e)に示すように、電圧判別部9のOVR信号はHのままであるが、通電検出部11の通電検出信号Arcは電流判別部8のWCR信号と電圧判別部9のOVR信号の論理和(OR)となるため、時刻t1の時点で、同図(f)に示すように、通電検出信号ArcはLからHに切り替わり、溶接電流が通電していないにも関わらず溶接電流が流れていると誤判別した状態になる。時刻t1の時点で、同図(f)に示すように、通電検出信号ArcがHとなったため、高周波印加部12は、同図(g)に示すように、高周波電圧HFの印加を停止する。そのため、溶接電流測定部6に混入していた電磁波ノイズの影響はなくなり、同図(b)に示すように、溶接電流測定値Idは0Aを保ったままとなる。
【0021】
時刻t2:電磁波ノイズの影響はなくなった時刻t1の時点から電流判別部8は溶接電流測定値Idが20mS間6A以下と判別した時刻t2の時点で、同図(d)に示すように、電流判別部8のWCR信号はHからLに切り替わり、同図(f)の示すように、通電検出部11の通電検出信号ArcもHからLに切り替わる。すると、高周波電圧印加部12は、再度電極2と母材4間に高周波電圧HFを印加するt0の状態に戻り、以降時刻t0から時刻t2の動作を繰り返すことになる。
【0022】
図3は、本発明の実施の形態を行った場合の動作について説明するためのタイムチャートであり、本発明の実施の形態を行った場合の溶接装置の動作についての説明を行う。同図(a)は起動信号TSの起動/停止を示し、同図(b)は溶接電流測定信号Idの時間変化を示し、同図(c)は出力電圧測定信号Vdの時間変化を示し、同図(d)は電流判別部8の出力であるWCR信号の時間変化を示し、同図(e)は電圧判別部9の出力であるOVR信号の時間変化を示し、同図(f)は通電検出部11の出力である通電検出信号Arcの時間変化を示し、同図(g)は高周波電圧HFの印加/停止を示す。以下、同図を参照して動作について説明する。
【0023】
時刻t0から時刻t1:時刻t0から時刻t1の期間は、前述した
図2と同様である。ただし、時刻t1の時点において、通電検出部11は、電流判別部8のWCR信号に関係なく、電圧判別部9のOVR信号のみにて判別されるため、同図(f)に示すように、通電検出信号ArcはLからHに切り替わることはない。
【0024】
時刻t2:時刻t2においてアークが発生すると、出力電圧Vは無負荷70Vからアーク電圧の20V程度まで低下するため、同図(c)に示すように、出力電圧測定信号Vdも20Vに相当する値まで低下する。
【0025】
時刻t3:時刻t3において出力電圧測定値Vdが3mS間40V以下となったため、同図(e)に示すように、電圧判別部9のOVR信号はLからHに切り替わり、同図(f)に示すように、通電検出部11も通電検出信号ArcをLからHに切り替える。高周波印加部12は通電検出信号ArcがHになったため、同図(g)に示すように、高周波電圧HFの印加を停止し、同図(b)に示すように、溶接電流測定信号Idに重畳していたスパイク状のノイズはなくなる。
【0026】
時刻t3から時刻t4:時刻t3から時刻t4までの間は、通常のアーク溶接期間である。
【0027】
時刻t4から時刻t5:時刻t4から時刻t5では、電極2と母材4間の距離が広がり出力電圧Vが50V程度まで上昇した期間である。同図(c)に示すように、出力電圧検出信号Vdが50Vに相当する値となり、アーク電圧判定部9の閾値45Vを超えているが、期間が20mS以下であるため、同図(e)に示すように、電圧判別部9のOVR信号がHからLに切り替わることはない。
【0028】
時刻t5から時刻t6:
図3中の時刻t5の時点で出力電圧Vは50Vから20Vに戻り、同図(a)に示すように、起動信号TSが停止(L)に切り替る時刻t6の時点までである。起動停止がかかった時刻t6において、同図(e)に示すように、電圧判別部9のOVR信号はHからLに切り替わる。また、溶接電流Iwもただちに0Aとなるが、同図(d)に示すとおり、電流判別部8のWCR信号は時刻t6から20mS後までHを保ったままとなるので、同図(f)に示すとおり、通電検出部11の通電検出信号ArcもHを保ったままとなる。
【0029】
時刻t6から時刻t7: 起動信号TSが停止(L)に切り替わって溶接電流Iwが0Aになった時刻t6の時点から、溶接電流測定値Idが20mS間6A以下であった時刻t7の時点で、同図(d)の示すように、電流判別部8のWCR信号はHからLに切り替わるため、同図(f)の示すように、通電検出部11の通電検出信号ArcもHからLに切り替わる。
【0030】
図4は、
図3において時刻t4から時刻t5の期間が20mS以上となり、電圧判別部9のOVR信号がHからLに切り替わってしまった場合を説明するタイムチャートである。同図(c)に示すとおり、アーク長が伸びて出力電圧検出信号Vdが50Vに相当する値まで上昇した時点である時刻t4から20mS後の時刻t45時点で、同図(e)に示すように、電圧判別部9のOVR信号はHからLに切り替わる。しかし、アーク長が伸びても溶接電源PMは、定電流出力の溶接電源であるため、出力電流は設定20Aを保つため、同図(b)に示すように、溶接電流測定信号Idは一定であり、時刻t4から時刻t5の期間も、同図(d)に示すとおり、電流判別部8のWCR信号がLに落ちることはない。通電検出部11は、通電検出信号ArcがHの状態なので、電流判別部8のWCR信号と電圧判別部9のOVR信号の論理和にて決定されるため、同図(f)に示すように、Lに落ちることはない。このとおり、通電検出信号ArcはHの場合は、電流判別部8のWCR信号と電圧判別部9のOVR信号の論理和にて通電検出信号Arcを決定することにより、出力電圧測定信号が無負荷電圧に近い値まで上昇しても、出力電流測定値が6A以上流れているような状態であればアーク発生とみなすことにより、電極2と母材4間の距離が広がりアーク切れを起こしそうな極限の状態でも通電検出部11は通電検出信号Arcを正しくHに保つことができる。
【0031】
溶接電流測定部6に使用する溶接電流Iwを検出するためのホール電流検出器は、定格電流400Aのものが使用される。先述したとおり溶接電流測定部6は、溶接電流100Aあたり1Vに変換するため、溶接電流1Aあたり10mVである。ホール電流検出器は、溶接電流が流れていないときでも、残存出力(オフセット電圧)が±30mV出力される。また、残存出力(オフセット電圧)は1mV/℃程度の温度ドリフトをもっている。そのため、電流判別部8は、安全を見込んで溶接電流が流れているかいないかの判別レベルを6Aに設定している。なお、ホール電流検出器以外のシャント抵抗を用いる方式においても、シャント抵抗の電流/電圧変換レベルは50mV/400Aであり、0.5mV程度の微小な信号を判別しなければならないため、ホール電流検出器よりも溶接電流が流れているかいないかの判別は困難である。
【0032】
非消耗電極アーク溶接機では、溶接電流Iwが4A以下の溶接もできることが求められる。電流判別部8のWCR信号の判定値は6Aであるので、溶接電流Iwが6A以下の溶接ではWCR信号はLとなってしまい、溶接電流が流れていないと判定されてしまう。溶接電流Iwが4A以下の溶接においては、非常にアーク力は弱く、通常出力電圧Vは10V程度であり、アークが持続できる極限まで電極と母材の距離を広げても、出力電圧Vは45V以下である。45V以上の領域ではアークは持続できず消弧してしまい、出力電圧Vは急激に上昇し無負荷電圧70V程度となってしまう。そのため、電圧判定部9のOVR信号がHからLに切り替わる判定値を45Vに設定しておけば、溶接電流Iwが4Aにおいてもアークが持続している間は電圧判定部9により、正しく溶接電流が流れていると判別することができる。
【0033】
以上のとおり、通電検出信号ArcがLの場合は、電流判別部8のWCR信号は無視して、電圧判別部9のOVR信号のみにより通電検出部11は通電検出信号Arcを決定することにより、スタート時のアークを発生させるために高周波電圧HFを印加した状態でも電流判別部8のWCR信号の誤判別の影響を受けずに、正確な通電検出信号Arcが得られ、正常なアークスタートが可能となる。また、通電検出部11は通電検出信号ArcがHになった場合は、電流判別部8のWCR信号と電圧判別部9のOVR信号の論理和にて通電検出信号Arcを決定することにより、電流判別部8が溶接電流が流れていないと判別するような低い溶接電流においても、確実に正確な通電検出信号Arcが得られる。
【符号の説明】
【0034】
1 トーチスイッチ
2 電極
3 溶接トーチ
4 母材
5 母材ケーブル
6 溶接電流測定部
7 出力電圧測定部
8 電流判別部
9 電圧判別部
10 トーチスイッチケーブル
11 通電検出部
12 高周波印加部
PM 溶接電源
WCR WCR信号(溶接電流が流れているか流れていないかの判別信号)
OVR OVR信号(アーク電圧か無負荷電圧かの判別信号)
Arc 通電検出信号
V 出力電圧
HF 高周波電圧
TS 起動信号
Iw 溶接電流
Id 溶接電流測定値
Vd 出力電圧測定値