(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】青色の色調が鮮明化された飲食品及び組合せ冷菓、並びに飲食品の青色色調鮮明化方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/43 20160101AFI20230419BHJP
A23G 9/00 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
A23L5/43
A23G9/00 101
(21)【出願番号】P 2017005474
(22)【出願日】2017-01-16
【審査請求日】2019-12-20
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】393029974
【氏名又は名称】クラシエフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】増本 智
(72)【発明者】
【氏名】深津 泰久
【合議体】
【審判長】大島 祥吾
【審判官】磯貝 香苗
【審判官】植前 充司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0208705(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0000169(US,A1)
【文献】特開2000-325022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23G
CAplus/REGSTRY/FSTA(STN)
JSTplus/JMEDplus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性領域で青色を呈し、発色団の基本骨格がアントシアニジンであるアントシアニン系色素を含有
し、かつ該アントシアニン系色素100重量部に対し3価鉄イオンを5.9~11.8重量部含有する
pHが7~8領域において青色を呈する飲食品において、
前記3価鉄イオン1重量部に対し、マグネシウムイオンを
0.25重量部以上含有することを特徴とす
る飲食品。
【請求項2】
測色色差計で測定したb*が、-15.0以下である請求項
1記載の
飲食品。
【請求項3】
飲食品が冷菓である請求項
1又は2に記載
の飲食品。
【請求項4】
請求項
3に記載
の飲食品と、pH2~3に調整された冷菓とが同一容器に相接するように充填されてなる組合せ冷菓。
【請求項5】
アルカリ性領域で青色を呈し、発色団の基本骨格がアントシアニジンであるアントシアニン系色素を含有
し、かつ該アントシアニン系色素100重量部に対し3価鉄イオンを5.9~11.8重量部含有する飲食品の青色色調鮮明化方法であって、該飲食品に
前記3価鉄イオン1重量部に対し、マグネシウムイオン
を0.25重量部以上添加することを特徴とする飲食品の青色色調鮮明化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アントシアニン系色素を含有しpHが7~8領域にあって青色を呈し、かつ3価鉄イオンを含有する飲食品において、その青色の色調が黒ずむことなく鮮やかな青色を呈する飲食品及び組合せ冷菓、並びに飲食品の青色色調鮮明化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アントシアニン系色素はpHの変動によって色調ならびに安定性が大きく変化し、赤色を呈する酸性領域では比較的安定性が高いが、紫色から青色を呈する中性からアルカリ性領域では不安定で退色しやすいことが知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【0003】
さらに、アルカリ性に調整してアントシアニン系色素を青色に発色させた飲食品(特に冷菓)は、ドライアイスに接触すると、保管中にドライアイスが昇華して飲食品中の水分と反応して炭酸水となり酸性になるため青色が変色して紫色から赤色に変色する。またドライアイスと接触しなくても3価鉄入りの青色飲食品は経時や添加量により黒ずみが生じる。
【0004】
従来、赤キャベツ色素のような特定の色素を含有しpH3.0~4.5の酸性領域に調整することで赤色の飲料を調製し、更にピロリン酸第二鉄のような3価の鉄イオンを特定量添加することで光照射等によって生じる退色を防止し、赤色の発色を安定化させた飲料が知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、該飲料をアルカリ性領域に調整し青色を安定化させること、その青色の色調を鮮明化することについてまでは一切示唆がない。
【0005】
また、山川ムラサキ(甘藷)から塩酸酸性アルコール溶液で抽出したイポメア色素に、鉄イオンを200ppm濃度に添加した結果、熱安定性が高くなることが知られている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、ここでの熱安定性とは、沸騰水浴中20分間の加熱処理に対し退色が抑制されることを意味しており、イポメア色素の色調の鮮明化については考慮されていない。
【0006】
また、アントシアニン系色素を含有する酸性の飲食品に鉄イオン等の金属イオンを含有させると、飲食品の赤色が退色することが知られている(例えば、特許文献1、4参照)。
【0007】
すなわち、アントシアニン系色素を含有する飲食品は、酸性領域(赤色発色)で鉄イオンを用いると退色することや、熱安定性や光退色防止のために、特定量の鉄イオンを添加することは知られているものの、アントシアニン系色素を含有する飲食品を、アルカリ性領域で青色に発色させるときの退色防止や青色の発色を鮮明化して黒ずみを防止する方法は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-104841号公報
【文献】特開2009-136187号公報
【文献】特開平6-65517号公報
【文献】特表2009-529913号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】清水孝重、中村幹雄、株式会社光琳「新版・食品天然色素」、平成13年3月31日、p.49-50
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、アントシアニン系色素を含有しpHが7~8領域にあって青色を呈し、かつ3価鉄イオンを含有する飲食品において、その青色の色調が黒ずむことなく鮮やかな青色を呈する飲食品及び組合せ冷菓、並びに飲食品の青色色調鮮明化方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、アントシアニン系色素を含有しpHが7~8領域にあって青色を呈し、かつ該アントシアニン系色素100重量部に対し3価鉄イオンを5.9~11.8重量部含有する飲食品において、マグネシウムイオンを含有することを特徴とする青色の色調が鮮明化された飲食品により上記目的を達成する。
【0012】
好ましくは、3価鉄イオン1重量部に対し、マグネシウムイオンを0.25重量部以上含有する。さらに好ましくは、測色色差計で測定したb*が、-15.0以下である。
【0013】
また、飲食品が冷菓であることが好適であり、該飲食品とpH2~3に調整された冷菓とが同一容器に相接するように充填されてなる組合せ冷菓とすることが更に好適である。
【0014】
他に、アントシアニン系色素を含有しpHが7~8領域にあって青色を呈し、かつ該アントシアニン系色素100重量部に対し3価鉄イオンを5.9~11.8重量部含有する飲食品の青色色調鮮明化方法であって、該飲食品にマグネシウムイオンを添加することを特徴とする飲食品の青色色調鮮明化方法により、上記目的を達成する。好ましくは、3価鉄イオン1重量部に対し、マグネシウムイオンを0.25重量部以上添加する。
【0015】
すなわち、本発明者らは、アルカリ性領域で青色を呈するアントシアニン系色素の青色の経時的安定化、及び発色の鮮明化方法について検討をおこなった。そして、まず、アントシアニン系色素に対し、酸性領域で赤色発色の安定化が認められた3価鉄イオンをはじめ、その他の金属イオン(マグネシウムイオン、カルシウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオンなど)を用いて、アルカリ性領域でのアントシアニン系色素の青色の経時変化に対する色調安定性を確認した。
【0016】
その結果、3価鉄イオンのみに変色や退色に対する安定化傾向が認められ、その他の金属イオンには変色や退色に対し好ましい結果は得られなかった。しかし、アルカリ性領域の場合、3価鉄イオンで経時的色調の変化は防止できても、その発色は黒ずんだような青色であり、青色の発色鮮明度が低下するという問題があることが判明した。
【0017】
そこで、次に3価鉄イオンを含有していても、鮮明に青色を発色する方法について鋭意検討した。その結果、意外なことに、変色や退色に対しては好結果を得られなかったマグネシウムイオンを3価鉄イオンに併せて添加すると、青色の色調が黒ずむことなく鮮やかな青色を呈することを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0018】
本発明の飲食品は、3価鉄イオンを含有していても、黒ずむことなく鮮やかな青色を呈する。
【0019】
本発明の組合せ冷菓は、アントシアニン系色素を含有しpHが7~8領域にあって青色を呈する冷菓と、pH2~3に調整された冷菓とを、同一容器に相接するように接触した状態で充填しても、青色冷菓の鮮やかな青色が確保されており、冷凍保管中、あるいは購入店から自宅に持ち帰る際の保冷材としてドライアイス等と一緒にしても青色冷菓が紫色乃至赤色への変色を生じない。
【0020】
また、本発明の組合せ冷菓は、喫食時にスプーンなどで単に混練するだけで冷菓が紫色を経て赤色になることから、混練前後の冷菓の色変化を楽しむことができる。また、pH2~3に調整された冷菓の選択する色によって、混練前後の色変化の様々な楽しみ方を提供できる。
【0021】
例えば、pH2~3に調整された冷菓に青色を選択すると、全体が青色の冷菓が、混練するだけで紫色を経て赤色に変化することから、意外性を提供できる。
【0022】
他に、pH2~3に調整された冷菓に青色以外の色を選択すると、混練するだけで、2色の混色により紫色を経て赤色への色変化を楽しむことができる。例えば、pH2~3に調整された冷菓に白色や黄色を選択すると、青色と白色の冷菓を混練して紫色から赤色に変化する冷菓(一般的な混色の場合水色に変化)を、青色と黄色の冷菓を混練して橙色に変化する冷菓(一般的な混色の場合緑色に変化)を、というように一般的な混色で想起する色とは異なる色に変化することから、意外性を提供できる。ひいては、色変化の意外性を体感することが、喫食者の脳への刺激にも繋がり、子どもやシニア世代の脳機能活性化を目的とした組合せ冷菓への応用性が期待できる。
【0023】
本発明の飲食品の青色色調鮮明化方法は、アントシアニン系色素がアルカリ性領域で示す青色の色調が黒ずむことなく、鮮やかな青色を発色させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明を詳しく説明する。
本発明の青色の色調が鮮明化された飲食品は、アントシアニン系色素を含有しpHが7~8領域にあって青色を呈し、かつ該アントシアニン系色素100重量部に対し3価鉄イオンを5.9~11.8重量部含有する飲食品を対象とするものである。
【0025】
上記アントシアニン系色素は、pHの変動によって色調が変化し、酸性では赤色を、アルカリ性では青色を呈する。また、花色ならびに果実の色の発現に大きく関与しているフラボノイド系の水溶性天然色素で、発色団の基本骨格はアントシアニジンである。具体的な色素としては、例えば、赤キャベツ色素、シソ色素、ハイビスカス色素、ブドウ果汁色素、ブドウ果皮色素、ムラサキイモ色素、ムラサキトウモロコシ色素、エルダーベリー色素、ボイセンベリー色素、赤ダイコン色素等が挙げられる。これらの中でも、赤キャベツ色素は、マグネシウムイオンを含有する際の青色の鮮明な発色性の点で好適に用いられる。
【0026】
本発明の飲食品のpHの調整は、飲食品自体の組成によってpH7~8を示すものであればそのままでよいが、そうでない場合は、重曹、クエン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、乳酸ナトリウムなどのpH調整剤を添加してpH7~8となるように調整してもよい。
【0027】
上記3価鉄イオンとしては、飲食品に含有させることが可能な、食品添加物として認められている鉄素材であり、例えば、塩化第二鉄、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、ピロリン酸第二鉄等が挙げられ、単独或いは複数組み合わせて用いてもよい。これらの中
でも、ピロリン酸第二鉄は飲食品の風味やアントシアニン系色素以外の原料との反応性の点で好適に用いられる。
【0028】
3価鉄イオンは、アントシアニン系色素を含有する飲食品の経時的な変色や退色、ならびドライアイスと接触して酸性化した時の変色や退色に対する安定化作用があることから、アントシアニン系色素100重量部に対し5.9~11.8重量部含有することが飲食品の色安定性及び鮮明性の点で重要である。この重量比より少ないとアントシアニン系色素を含有する青色飲食品の変色(赤色への変色)に対する安定性が低下し、多いと飲食品の青色が濃くなりすぎて黒ずむのでマグネシウムイオンを添加しても鮮明化できない。
【0029】
次に、本発明の青色の色調が鮮明化された飲食品は、マグネシウムイオンを含有する。マグネシウムイオンは、アントシアニン系色素と3価鉄イオンを併用してpH7~8に調整する場合、3価鉄イオンによって青色の色調が黒ずむことを抑制し青色を鮮明化する点で重要である。マグネシウムイオンとしては、飲食品に含有させることが可能な、食品添加物として認められているマグネシウム素材であればよく、例えば、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等が挙げられ、単独或いは複数組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、塩化マグネシウムは溶解性の点で好適に用いられる。
【0030】
また、マグネシウムイオンは、3価鉄イオン1重量部に対し、好ましくは0.25重量部以上、より好ましくは1.0重量部以上含有することが、飲食品の青色鮮明化の点で望ましい。この重量比より少ないと黒ずみ、青色鮮明性が低下する傾向がある。
【0031】
他に、例えば、発明の青色の色調が鮮明化された飲食品を冷菓とする場合、3価鉄イオン1重量部に対する上限を、好ましくは3.9重量部以下に設定すると、より好ましくは2.0重量部以下に設定すると、後述するようなpH2~3に調整された冷菓と同一容器に相接するように充填されてなる組合せ冷菓としても、青色の安定性が良好である点で好適である。
【0032】
なお、マグネシウムイオンを含有しない場合の青色を、JIS Z 8102「物体色の色名」の慣用色名で具体的に示すと、「縹(はなだ)色」のように黒ずんだ青色を呈する。また、3価鉄イオン1重量部に対しマグネシウムイオンを0.25重量部以上2.0重量部以下含有すると「セルリアンブルー」、「露草色」、「瑠璃色」のように徐々に鮮明化された青色を呈する。2.0重量部を超えると「青緑」、「ピーコックグリーン」のような緑がかった鮮明化された青色を呈するようになる。
【0033】
次に、本発明の青色の色調が鮮明化された飲食品の色調は、好ましくは、飲食品を測色色差計で測定したb*が、-15.0以下であることが、鮮明化された青色色調の基準となる点で好適である。該b*とは、L*a*b*表色系のうちのb*を指し、L*a*b*表色とは、ほぼ均等な空間距離で色が配置され、人の知覚と近似の状態で色を表すことができるとされている。L*a*b*のL*は明度、a*は色相と彩度、b*もまた色相と彩度を表す。a*とb*は表色が異なり、a*は赤方向、b*は黄方向、-a*は緑方向、-b*は青方向を表し、それぞれ絶対値が大きくなるほど彩度が増し鮮やかになる。また、絶対値が小さくなるほど彩度が低下しくすんだ色となる。本発明では、b*が、-15.0以下であると青色の色調が鮮明化された状態を意味し、-15.0を超えると鮮明性が低下し黒ずむ状態を指す。なお、b*の測定には、例えば、測色色差計ZE-2000(日本電色工業株式会社製)等が用いられる。
【0034】
なお、b*と青色(JIS Z 8102「物体色の色名」の慣用色名)との関係は、b*が-17.0±0.5の「露草色」、「瑠璃色」が最も青色の鮮明度が高く、この値を境にして上下すると青色の鮮明度は低下し、「縹色」のように黒ずんだ青色や、「青緑」
、「ピーコックグリーン」のように緑がかった青色を呈する。
【0035】
次に、本発明の飲食品は、アントシアニン系色素、3価鉄イオン及びマグネシウムイオンを含有できるものであれば特に限定するものではなく、例えば、冷菓、飲料、粉末飲料や即席デザートの素などの粉末食品、ゼリー等のデザート類、麺類、パン等のベーカリー食品、キャンディ、ガム等の菓子類等が挙げられる。これらの中でも冷菓、飲料は、本願効果を効果的に奏する点で好適である。すなわち、本発明の飲食品はアントシアニン系色素及び3価鉄イオンを含有していても、マグネシウムイオンを含有することで、青色の色調が黒ずむことを抑制し、鮮やかな青色を発色するものである。
【0036】
また、本発明の飲食品は、アントシアニン系色素及び3価鉄イオンを含有する飲食品の原料を、また必要に応じてpH調整剤を準備し、さらにマグネシウムイオンを添加し、目的の飲食品の公知の方法を用いて製造される。
【0037】
本発明の飲食品の一例として、例えば、冷菓の製造例を開示する。
すなわち、まず、アントシアニン系色素、3価鉄イオン、及び一般的に用いられる冷菓原料を、また必要に応じてpH調整剤を準備し、さらにマグネシウムイオンを添加し、冷菓製造の公知の方法によって、pH7~8に調整された青色を呈する冷菓ミックスを調製する。次に、該冷菓ミックスに、ろ過、均質化、殺菌、冷却、エージング、フリージング等を適宜行い冷菓生地とした後、該冷菓生地を容器に充填後、冷凍硬化して製造される。なお、該容器は、紙、プラスチック製などの冷菓用カップを用いてもよく、あるいは、モナカ、セミシュガーコーン、シュガーコーン、ワッフル、クッキー、ケーキなどの生地を冷菓使用可能な形に成形したものなどによる可食容器を用いてもよい。また、冷菓の規格は、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓など、適宜選択すればよい。
【0038】
上記一般的に用いられる冷菓原料としては、例えば、糖類、牛乳、乳製品(脱脂粉乳、練乳、バター、生クリーム等)、クリーミングパウダー、油脂、乳化剤、安定剤、pH調整剤(重曹、クエン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、乳酸ナトリウム等)、香料、澱粉、酸味料、卵、嗜好品(茶類、酒類等)、調味料、ナッツ類、果肉、果汁、乾燥果実、ゼリー類、ベーカリー食品などの中から適宜組み合わせて用いればよい。
【0039】
また、本発明の組合せ冷菓は、上記青色の色調が鮮明化された飲食品が冷菓の場合において、pH2~3に調整された冷菓と同一容器に相接するように充填されてなるものである。該組合せ冷菓は、アントシアニン系色素を含有しpHが7~8領域にあって青色を呈する冷菓と、pH2~3に調整された冷菓とを、同一容器に接触した状態で充填しても、すなわち、青色冷菓が酸性の冷菓との接触面において酸性雰囲気に晒されている状態であっても、青色冷菓の鮮やかな青色が確保されており、冷凍保管中に、青色冷菓が青色から紫色乃至赤色への変色を生じない。あるいは、購入店から自宅に持ち帰る際の保冷材としてドライアイスを使用し、昇華した二酸化炭素が冷菓表面の水分に溶解して酸性状態に晒される場合でも青色冷菓が青色から紫色乃至赤色への変色を生じない。
【0040】
また、本発明の組合せ冷菓は、喫食時にスプーンなどで単に混練するだけで冷菓が紫色を経て赤色になることから、混練前後の冷菓の色変化を楽しむことができる。すなわち、pH2~3に調整された冷菓の選択する色によって、混練前後の色変化の様々な楽しみ方を提供できる。
【0041】
上記組合せ冷菓は、例えば、次のようにして製造される。
すなわち、まず、上述の方法で、青色の色調が鮮明化された冷菓の冷菓生地を調製する。これとは別に、一般的な冷菓原料、公知の方法によって、pH2~3に調整された冷菓の冷菓生地を調製する。次に、例えば、複数の冷菓生地を同時充填できるノズルから吐出さ
せて、両冷菓生地を同一容器に相接するように充填後、冷凍硬化して製造される。なお、両冷菓生地は、マーブル状に部分的に混合される、或いは完全に混合される状態にすると青色冷菓の赤色変色が生じるため、混合されることなく、相接するように充填される。
【0042】
また、pH2~3に調整された冷菓に用いる一般的冷菓原料としては、上述の本発明の青色を呈する冷菓の原料及び着色料等が挙げられる。他に、該冷菓自体がpH2~3を示すものであればそのままでよいが、そうでない場合は、酸味料(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、フマル酸等)などでpH2~3となるように調整すればよい。
【0043】
次に、pH2~3に調整された冷菓も青色に設計すると、全体が青色の冷菓が、喫食時に冷菓をスプーンなどで単に混練するだけで紫色を経て赤色に変化することから、意外性を提供できる点で好適である。
【0044】
他に、pH2~3に調整された冷菓を青色以外の色に設計すると、混練するだけで、2色の混色による紫色を経て赤色への色変化を楽しむことができる点で好適である。例えば、pH2~3に調整された冷菓に白色や黄色を選択すると、青色と白色の冷菓を混練して紫色から赤色に変化する冷菓(一般的な混色の場合水色に変化)を、青色と黄色の冷菓を混練して橙色に変化する冷菓(一般的な混色の場合緑色に変化)を、というように一般的な混色で想起する色とは異なる色に変化することから、意外性を提供できる。ひいては、色変化の意外性を体感することが、喫食者の脳への刺激にも繋がり、子どもやシニア世代の脳機能活性化を目的とした組合せ冷菓への応用性が期待できる。
【0045】
本発明の飲食品の青色色調鮮明化方法は、アントシアニン系色素を含有しpHが7~8領域にあって青色を呈し、かつアントシアニン系色素100重量部に対し3価鉄イオンを5.9~11.8重量部含有する飲食品に、マグネシウムイオンを添加することで、好ましくは、3価鉄イオン1重量部に対しマグネシウムイオンを0.5重量部以上、より好ましくは1.0重量部以上添加することで、飲食品のアントシアニン系色素がアルカリ性領域で示す青色の色調が黒ずむことを防止し、鮮やかな青色を発色させることができる。
【実施例】
【0046】
次に、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は以下実施例に制限されるものではない。
【0047】
<実施例1~15、比較例1~2>
表1に示す組成で原料を混合し、60℃に加温しながら原料を溶解して冷菓ミックスを調製した。次に、該冷菓ミックスを、ろ過及び均質化し、85℃15秒間殺菌後10℃未満まで冷却した。その後、エージング、フリージングを行い、冷菓生地を得た。次に、該冷菓生地を容器に充填後、冷凍硬化(品温-23~-20℃)して青色を呈する冷菓を製造した。
【0048】
【0049】
以上のようにして得られた実施例及び比較例について、青色鮮明性、青色表記、b*、及び青色の経時安定性について評価した。その結果を合わせて表1に示す。
<青色鮮明性>
冷凍硬化した青色冷菓(品温-23~-20℃)を、専門パネラー4名にて目視で青色官能評価し4名の結果を総合して示した。
<青色表記>
冷凍硬化した青色冷菓(品温-23~-20℃)を、JIS Z 8102「物体色の色名」の慣用色名を用いて表記した。
<b*>
冷菓ミックスを85℃15秒間殺菌後冷却したもの(10℃)について、b*を測色色差計ZE-2000(日本電色工業株式会社製)で測定した。
<青色の経時安定性>
冷凍硬化した青色冷菓表面部を酸性状態とするために、発泡スチロール製の箱に、まず青色冷菓を容器にふたをして入れ、その上にドライアイスを載せて発泡スチロール製の箱のふたを閉めた状態で、雰囲気温度-41~-40℃で12時間保管した後、青色から赤色への変色の有無を、目視により官能評価した。
<総合評価>
上記青色鮮明性、b*、青色の経時安定性の3つの評価を合わせて導出した。
【0050】
評価の結果、マグネシウムイオンを含有する実施例は、マグネシウムイオンを含有しない比較例1、2の縹色の黒ずんだ青色に比べ、鮮やかな青色に発色していた。また、マグネシウムイオン重量比が高くなるにつれ鮮明度は増したが、3価鉄イオン1重量部に対し2重量部を超えると、更に緑色がかるような青色を呈していた。
【0051】
青色の経時安定性評価では、ドライアイスと一緒に12時間保管後赤色に変化した実施例6、7、14は、青色冷菓の表面が赤く変化しており、ドライアイスから昇華した二酸化炭素が表層部分の冷菓中の水分に溶解し酸性状態となったため、赤色に変化したと考えられる。
【0052】
<実施例16>
まず実施例2と同じ組成で青色冷菓の冷菓生地を調製した。これとは別に、表2の配合1の組成で白色冷菓の冷菓生地を、実施例2と同様の方法によって調製した。次に、この2色の冷菓生地を同時充填できるノズルから吐出させて、両冷菓生地を同量同一容器に充填後、冷凍硬化して、青色と白色の冷菓が同一の容器に相接するように充填された冷菓を製造した。
<比較例3>
表2の配合1の組成に代わりに、配合2の組成で白色冷菓の冷菓生地を調製する以外は実施例16と同様にして、青色と白色の冷菓が同一の容器に相接するように充填された冷菓を製造した。
【0053】
【0054】
以上のようにして得られた実施例16と比較例3について、専門パネラー4名に、容器中の2色の冷菓をスプーンで混練させた。実施例16は、青色と白色の2色の冷菓から全体が紫色を経て赤色の冷菓に変化したため、意外性のある色変化を楽しめたという感想であった。一方、比較例3は、冷菓全体が水色に変化したため意外性がなく、特に楽しいとは感じなかったという感想であった。
【0055】
また、実施例16について、モニターとして、5~10歳の男女30名に、各自1名の保護者同伴のもと、容器中の2色の冷菓をスプーンで混練させ、その様子を観察した。
その結果、モニター全員が、一生懸命に混練する様子は、保護者と一緒に非常に楽しそうであった。また、混練が進むにつれて冷菓の色が全体的に紫色に続いて赤色に変化すると、びっくりしたような表情をするモニターと保護者が多数見られ、色変化を楽しむ様子が観察された。