(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】断熱建具
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20230419BHJP
E06B 1/28 20060101ALI20230419BHJP
E06B 1/36 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
E06B5/00 B
E06B1/28
E06B1/36 Z
(21)【出願番号】P 2018206956
(22)【出願日】2018-11-01
【審査請求日】2021-05-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184066
【氏名又は名称】宮崎 恭
(72)【発明者】
【氏名】増山 新作
(72)【発明者】
【氏名】七山 貴志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 広大
(72)【発明者】
【氏名】谷内 智
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-7343(JP,A)
【文献】特開2011-21465(JP,A)
【文献】特開2017-61832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
E06B 1/28
E06B 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、枠体の室内側面に取付けられるケース体を備え、
ケース体は、断熱材を収容する収容空間と、収容空間と連続し室外側に向けて開口する開口部とを長手方向に沿って有するとともに、
開口部は断熱材を出し入れ自在であり、開口部が枠体の室内側面によって塞がれている断熱建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物開口部に配置される断熱建具に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂により枠および障子を形成した建具が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された建具のように、樹脂形材により形成された樹脂サッシは断熱性能に優れている。
しかし近年、サッシにおいて、さらに高い断熱性能が求められている。
【0005】
本発明は、サッシにおいて、さらに高い断熱性能を付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、枠体と、枠体の室内側面に取付けられるケース体を備え、ケース体は、断熱材を収容する収容空間と、収容空間と連続し室外側に向けて開口する開口部とを長手方向に沿って有するとともに、開口部は断熱材を出し入れ自在であり、開口部が枠体の室内側面によって塞がれている断熱建具である。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態の断熱建具の構成により、さらに高い断熱性能を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る建具の図であり、(a)は竪断面図、(b)はケース体の断面図、(c)は断熱材を収容したケース体の断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る建具の横断面図である。
【
図3】第2の実施形態に係る建具の図であり、(a)は竪断面図、(b)はケース体の断面図、(c)は断熱材を収容したケース体の断面図である。
【
図4】第2の実施形態に係る建具の横断面図である。
【
図5】(a)は第1の実施形態に係る建具の内観図、(b)は第2の実施形態に係る建具の内観図である。
【
図6】(a)は第3の実施形態に係る建具の上枠部分の竪断面図、(b)は第3の実施形態に係るケース体の断面図、(c)は第4の実施形態に係る建具の上枠部分の竪断面図、(d)は第4の実施形態に係るケース体の断面図である。
【
図7】(a)は第5の実施形態に係る建具の上枠部分の竪断面図であり、(b)はケース体の断面図、(c)は、断熱材を収容したケース体の断面図である。
【
図8】(a)(b)は第3及の実施形態に係る建具のハンドル部分の図、(c)(d)は第4の実施形態に係る建具のハンドル部分の図である。
【
図9】(a)(b)は他の実施形態に係る建具の横断面図である。
【
図10】(a)(b)は他の実施形態に係る建具の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態は、建具の枠体1の室内側に露出する部位に、内部に断熱材6が収容されたケース体5を配置することで、断熱性能を向上させた断熱建具である。
以下、具体的に説明する。
【0010】
-第1の実施形態-
第1の実施形態の断熱建具について、
図1及び
図2に示す、枠体1の内周に障子2が開閉自在に配置されてなるすべり出し窓を用いて説明する。
枠体1は、合成樹脂材料からなる上枠11、下枠12及び左右の竪枠13,13を有している。上枠11、下枠12及び左右の竪枠13,13は断面形状が同じ枠材であり、各枠材の端部が45度の角度で切断され、端面同士を当接させて溶接することで四周にわたる枠体1が形成されている。
【0011】
一方、障子2は、合成樹脂材料からなる上框21、下框22及び左右の竪框23,23を有している。上框21、下框22及び左右の竪框23,23は断面形状が同じ框材であり、各框材の端部が45度の角度で切断され、端面同士を当接させて溶接することで四周にわたる框体が形成されている。そして、框体の内周には複層ガラス25が配置されている。
【0012】
(上枠部分の構成)
枠体1の上枠11は、
図1(a)に示すように、複数の中空部を有する上枠本体部111と、上枠本体部111の室内側内周面から内周方向に延設される室内側壁部112と、上枠本体部111の室内側端から室内方向に延びるアングル部113を有している。上枠本体部111の一部もしくはすべての中空部内には、真空断熱材等の断熱材66が収容されていてもよい。
【0013】
室内側壁部112の室外側面の内周端には、障子2の上框21の室内側面に当接する気密材s1が配置されており、上枠本体部111の内周面から室内側壁部112の室外側面にかけて断面略L字状の断熱シート81及び合成樹脂製の断熱シートカバー91が配置されている。また、上枠11の室内側壁部112は、室内側下端に内周凸部112aを有している。
【0014】
障子2の上框21は、複数の中空部を有する上框本体部211と、上框本体部211の室外側外周面から外周方向に延設される室外側壁部212を有しており、上框本体部211の室外側内周部分に押縁213が取り付けられ、複層ガラス25の外周を保持するガラス間口211aが形成されている。
室外側壁部212の室内側面の外周端には、上枠11の上枠本体部111の室外側面に当接する気密材s2が配置されている。また、枠体1の上枠本体部111の内周面と障子2の上框本体部211の外周面との間には、障子2のすべり出し開閉を可能にするリンク機構41が配置されている。
【0015】
そして、本実施形態においては、上枠11の上枠本体部111及び室内側壁部112の室内側面と、アングル部113及び室内側壁部112の内周面に、断熱材61を収容したケース体51が配置されており、上枠11の室内側面及び障子2の上框21の室内側面を覆っている。
【0016】
上枠11に取り付けられるケース体51は、合成樹脂材料からなり、
図1(b)に示すように、上枠11のアングル部113の内周面に当接される外周壁部51aと、外周壁部51aの室外側端から下方に延びる外周側室外壁部51bと、外周壁部51aの室内側端から下方に延びて下方部分が室外側に傾斜する傾斜面として形成されている室内壁部51cと、室内壁部51cの下端から室外側に延びる内周壁部51dと、内周壁部51dの室外側端から上方に延びる内周側室外壁部51eと、内周側室外壁部51eの上端から室内側に向かって延びる固定壁部51fを有し、全体として断熱材61を収容する収容空間Sを形成している。
【0017】
そして、ケース体51は、外周側室外壁部51bと固定壁部51fとの間に収容空間Sに連続する開口部aが形成されており、
図1(c)に示すように、開口部aを介して真空断熱材等の断熱材61を収容することができる。そして、断熱材61は、内周部分を障子2の上框21に近接させて覆うことができるので、障子2の室内側を通って冷熱が伝達することを抑制することができ、断熱性を向上させることができる。
【0018】
また、ケース体51の内周壁部51dの室外側から室外側方向に向かって突片51gが形成されている。なお、突片51gは、ケース体51と同じ硬質の合成樹脂材料によって形成されてもよいが、軟質の合成樹脂材料によって形成されていてもよい。
【0019】
そして、断熱材61を収容したケース体51は、外周壁部51aを上枠11のアングル部113の内周面に当接させるとともに、固定壁部51fを上枠の室内側壁部112の内周面に当接させて、開口部aを上枠11の室内側面によって閉鎖した状態で、両面テープ等の取付手段によって上枠11の室内側に露出する部分を覆うように取り付けられている。
この時、室内側壁部112の室内側下端の内周凸部112aに対して固定壁部51fの室内側端が当接することで、安定した取付状態を維持することができる。
【0020】
上枠11に取り付けられたケース体51は、内周端が障子2の上框21の内周端とほぼ同じ高さ位置となって上框21の室内側面を覆い、障子2の上框21の室内側面が室内に露出することを防止している。
そして、内周壁部51dに形成された突片51gが上框21の室内側下端部分に対して近接もしくは当接することで、上框21の室内側面とケース体51の内周側室外壁部51eの室外側面との間に断熱空間Aを形成している。
【0021】
以上、ケース体5による断熱構造について上枠部分を用いて説明したが、下枠部分及び左右の竪枠部分における断熱構造も上枠部分と同様である。
すなわち、下枠12は、
図1(a)に示すように、下枠本体部121、室内側壁部122及びアングル部123を備えており、下框22は、複数の中空部を有する下框本体部221と、下框本体部221の室外側外周面から外周方向に延設される室外側壁部222を有しており、下框本体部221の室外側内周部分に押縁223が取り付けられ、複層ガラス25の外周を保持するガラス間口221aが形成されている。
【0022】
枠体1の下枠本体部121の内周面と障子2の下框本体部221の外周面との間には、障子2のすべり出し開閉を可能にするリンク機構41が配置されている。
【0023】
そして、断熱材62を収容したケース体52は、外周壁部52aを下枠12のアングル部123の内周面に当接させるとともに、固定壁部52fを上枠の室内側壁部122の内周面に当接させて、開口部aを下枠12の室内側面によって閉鎖した状態で、両面テープ等の取付手段によって下枠12の室内側に露出する部分を覆うように取り付けられている。
【0024】
下枠12に取り付けられたケース体52は、内周端が障子2の下框22の内周端とほぼ同じ高さ位置となって下框22の室内側面を覆い、障子2の下框22の室内側面が室内に露出することを防止している。
そして、内周壁部52dに形成された突片52gが下框22の室内側下端部分に対して近接もしくは当接することで、下框22の室内側面とケース体52の内周側室外壁部52eの室外側面との間に断熱空間を形成している。
【0025】
また、竪枠13は、
図2に示すように、竪枠本体部131、室内側壁部132及びアングル部133を備えており、竪框23は、複数の中空部を有する竪框本体部231と、竪框本体部231の室外側外周面から外周方向に延設される室外側壁部232を有しており、竪框本体部231の室外側内周部分に押縁233が取り付けられ、複層ガラス25の外周を保持するガラス間口231aが形成されている。
【0026】
枠体1の竪枠本体部131の内周面と障子2の竪框本体部231の外周面との間には、障子2の閉鎖状態を補助、維持する引寄せ手段43もしくはロック機構44等が配置されている。
【0027】
そして、断熱材63を収容したケース体53は、外周壁部53aを竪枠13のアングル部133の内周面に当接させるとともに、固定壁部53fを竪枠13の室内側壁部132の内周面に当接させて、開口部aを竪枠13の室内側面によって閉鎖した状態で、両面テープ等の取付手段によって竪枠13の室内側に露出する部分を覆うように取り付けられている。
【0028】
竪枠13に取り付けられたケース体53は、内周端が左右方向で障子2の竪框23の内周端とほぼ同じ位置となって竪框23の室内側面を覆い、障子2の竪框23の室内側面が室内に露出することを防止している。
また、内周壁部53dに形成された突片53gが竪框23の室内側下端部分に対して近接もしくは当接することで、竪框23の室内側面とケース体53の内周側室外壁部53eの室外側面との間に断熱空間を形成している。
【0029】
なお、障子2の右の竪框23にハンドル46(点線で示す)が取り付けられており、右の竪枠13のケース体53はハンドル46の取付部分において一部切り欠かれている。
【0030】
以上の本実施形態の断熱建具においては、
図5(a)に示すように、ケース体5は、枠体1の室内側面から障子2の框体の室内側面に亘る広い範囲を覆うことができ、建具に対してさらに高い断熱性能を付与することができる。
そして、本実施形態におけるケース体5は、断熱材6を収容する収容空間に連続する開口部aを長手方向に沿って有しているので、収容空間Sに対して断熱材6を簡単に出し入れすることができ、断熱材6が劣化した際の交換を容易に行うことできるとともに、収容空間内での断熱材の配置状況を確認しながら作業ができるので、施工性が良い。
【0031】
さらに、ケース体5は、開口部aを有することで変形追従性を備えることができ、ケース体5を取り付ける枠体が変形している場合であっても、枠体の表面に密着するように取り付けることができる。
また、ケース体5の開口部aは、枠体1によって塞がれるので、開口部aを塞ぐ手間が増えることなく、施工が煩雑になることもない。
【0032】
-第2の実施形態-
第2の実施形態の断熱建具について、
図3及び
図4に示す、枠体1の内周に障子2が開閉自在に配置されてなる、横開き窓の例を用いて説明する。
本実施形態の断熱建具において、枠体1は、合成樹脂材料からなり断面形状が同じ枠材である上枠11、下枠12及び左右の竪枠13,13を有し、各枠材の端部が45度の角度で切断され、端面同士を当接させて溶接することで四周にわたる枠体1が形成されている。
【0033】
一方、障子2は、合成樹脂材料からなり断面形状が同じ框材である上框21、下框22及び左右の竪框23,23を有し、各框材の端部が45度の角度で切断され、端面同士を当接させて溶接することで四周にわたる框体が形成され、框体の内周に複層ガラス25が配置されている。
【0034】
(上枠部分の構成)
枠体1の上枠11は、
図3(a)に示すように、複数の中空部を有する上枠本体部111と、上枠本体部111の室内側内周面から内周方向に延設される室内側壁部112と、上枠本体部111の室内側端から室内方向に延びるアングル部113を有している。なお、上枠本体部111の中空部内には、真空断熱材等の断熱材が収容されていてもよい。
室内側壁部112の室外側面の内周端には、障子2の上框21の室内側面に当接する気密材s1が配置されている。また、上枠11の室内側壁部112は、室内側下端に内周凸部112aを有している。
【0035】
障子2の上框21は、複数の中空部を有する上框本体部211と、上框本体部211の室外側外周面から外周方向に延設される室外側壁部212を有しており、上框本体部211の室外側内周に押縁213が取り付けられ、複層ガラス25の外周を保持するガラス間口211aが形成されている。
室外側壁部212の室内側面の外周端には、上枠11の上枠本体部111の室外側面に当接する気密材s2が配置されている。枠体1の上枠本体部111の内周面と障子2の上框本体部211の外周面との間には、必要に応じて障子2の横開きを補助するリンク機構41が配置されている。
【0036】
そして、本実施形態の断熱建具においては、上枠11の室内側壁部112の内周面に、断熱材61を収容したケース体51が内周方向に向かって配置され、障子の框体の室内側面を覆っている。
【0037】
上枠11に取り付けられるケース体51は、合成樹脂材料からなり、
図3(b)に示すように、外周壁部51hと室内壁部51iと室外壁部51jと内周壁部51kを有する断面略矩形の中空形状をしている。
ケース体51の室内壁部51iは、外周側が外周壁部51hよりも外周側に突出しており、外周壁部51hの室内側には、上枠11の室内側壁部112の内周凸部112aが係合する係合凹部51mが形成されている。
【0038】
そして、ケース体51は、中空部が断熱材61を収容する収容空間Sとして形成されており、
図3(c)に示すように、収容空間Sの中に真空断熱材等の断熱材61が配置されている。また、ケース体51の内周壁部51kの室外側から室外側方向に向かって突片51gが形成されている。なお、突片51gは、ケース体51と同じ硬質の合成樹脂材料によって形成されてもよいが、軟質の合成樹脂材料によって形成されていてもよい。
【0039】
断熱材61を収容したケース体51は、外周壁部51hを上枠11の室内側壁部112の内周面に当接させた状態で、両面テープ等の取付手段によって上枠11の室内側壁部112の内周面を覆うように取り付けられている。
ケース体51の外周壁部51hを室内側壁部112の内周面に当接させた状態では、上枠11の室内側壁部112の内周凸部112aがケース体51の係合凹部51mに係合することで、ケース体51の位置ずれを防止しており、安定した取付状態を維持することができる。
【0040】
上枠11に取り付けられたケース体51は、内周端が障子2の上框21の内周端とほぼ同じ高さ位置となって上框21の室内側面を覆い、障子2の上框21の室内側面が室内に露出することを防止している。
そして、内周壁部51dに形成された突片51gが上框21の室内側下端部分に対して近接もしくは当接することで、上框21の室内側面とケース体51の室外壁部51jの室外側面との間に断熱空間を形成している。
【0041】
以上、ケース体5による断熱構造について上枠部分を用いて説明したが、下枠部分及び左右における断熱構造も上枠部分と同様である。
すなわち、下枠12は、
図3(a)に示すように、下枠本体部121、室内側壁部122及びアングル部123を備えており、下框22は、複数の中空部を有する下框本体部221と、下框本体部221の室外側外周面から外周方向に延設される室外側壁部222を有しており、下框本体部221の室外側内周部分に押縁223が取り付けられ、複層ガラス25の外周を保持するガラス間口221aが形成されている。
【0042】
そして、断熱材62を収容したケース体52は、外周壁部52hを下枠12の室内側壁部122の内周面に当接させた状態で、両面テープ等の取付手段によって下枠12の室内側壁部122の内周面を覆うように取り付けられている。
下枠12に取り付けられたケース体52は、内周端が障子2の下框22の内周端とほぼ同じ高さ位置となって下框22の室内側面を覆い、障子2の下框22の室内側面が室内に露出することを防止している。
また、内周壁部52dに形成された突片52gが下框22の室内側下端部分に対して近接もしくは当接することで、下框22の室内側面とケース体52の室外壁部52jの室外側面との間に断熱空間を形成している。
【0043】
また、竪枠13は、
図4に示すように、竪枠本体部131、室内側壁部132及びアングル部133を備えており、竪框23は、複数の中空部を有する竪框本体部231と、竪框本体部231の室外側外周面から外周方向に延設される室外側壁部232を有しており、竪框本体部231の室外側内周部分に押縁233が取り付けられ、複層ガラス25の外周を保持するガラス間口231aが形成されている。
【0044】
枠体1の左の竪枠13と障子2の左の竪框23は、ヒンジ45によって揺動自在に連結されており、右の竪枠13の竪枠本体部131の内周面と障子2の右の竪框23の竪框本体部231の外周面との間には、障子2の閉鎖状態を維持するロック機構44が配置されている。
【0045】
そして、断熱材63を収容したケース体53は、外周壁部53hを竪枠13の室内側壁部132の内周面に当接させた状態で、両面テープ等の取付手段によって竪枠13の室内側壁部132の内周面を覆うように取り付けられている。
竪枠13に取り付けられたケース体53は、内周端が障子2の竪框23の内周端とほぼ同じ位置となって竪框23の室内側面を覆い、障子2の竪框23の室内側面が室内に露出することを防止している。
【0046】
また、内周壁部53dに形成された突片53gが竪框23の室内側内周端部分に対して近接もしくは当接することで、竪框23の室内側面とケース体53の室外壁部53jの室外側面との間に断熱空間を形成している。
なお、障子2の右の竪框23にハンドル46が取り付けられており、右の竪枠13のケース体53はハンドル46の取付部分において一部切り欠かれている。
【0047】
以上の本実施形態の断熱建具においては、
図5(b)に示すように、枠体1の内周にケース体5を配置することで、ケース体5は、障子2の框体の室内側面を覆うことができ、建具に対してさらに高い断熱性能を付与することができる。
さらに、本実施形態のケース体51は、開口部aを有するものではないが、ケース体51の外周壁部51aに収容空間Sに連続する開口部aを設け、枠体1に取り付ける際に開口部aを覆うように取り付けることで、第1の実施形態の断熱建具と同様の効果を奏することができる。
【0048】
-第3の実施形態-
第3の実施形態の断熱建具について、
図6(a),(b)に示す、上枠部分の竪断面の図面を用いて説明する。なお、第3の実施形態の断熱建具の枠体1及び障子2自体の構成は、第1の実施形態の断熱建具の枠体1及び障子2と同様であって、ケース体51及び断熱材61の構成において違いが存在する。
また、第3の実施形態の建具は、第1及び第2の実施形態の建具と同様に、枠体1を構成する各枠材は同一の断面形状を有しており、各枠においてケース体51を取り付けてなる断熱構造に差異はないので、本実施形態の説明においては、下枠部分及び竪枠部分については省略する。
【0049】
本実施形態においては、上枠11に取り付けられるケース体51は、第1の実施形態のケース体と同様に、合成樹脂材料からなり、上枠11のアングル部113の内周面に当接される外周壁部51aと、外周壁部51aの室外側端から下方に延びる外周側室外壁部51bと、外周壁部51aの室内側端から下方に延びる室内壁部51cと、室内壁部51cの下端から室外側に延びる内周壁部51dと、内周壁部51dの室外側端から上方に延びる内周側室外壁部51eと、内周側室外壁部51eの上端から室内側に向かって延びる固定壁部51fを有し、全体として断熱材61を収容する収容空間Sを形成している。
【0050】
したがって、本実施形態のケース体51は、室内壁部51cが見付方向に垂直な面として形成されており、収容空間S内には、断熱材61の内周側を室外方向に近づけるように規制する規制片51nが設けられている点で、第1の実施形態のケース体51と異なっている。
そして、収容空間Sの中には、真空断熱材61が規制片51nに沿って内周側に曲げられて収容されている。
このため断熱材61の内周端部を障子2に近接させて配置することができるので、障子2の室内側を通って冷熱が伝達することを抑制することができ、断熱性を向上させることができる。
【0051】
そして、断熱材61を収容したケース体51は、第1の実施形態と同様に、外周壁部51aを上枠11のアングル部113の内周面に当接させるとともに、固定壁部51fを上枠の室内側壁部112の内周面に当接させて、開口部aを上枠11の室内側面によって閉鎖した状態で、両面テープ等の取付手段によって上枠11の室内側に露出する部分を覆うように取り付けられている。
上枠1に取り付けられたケース体51は、収容空間Sによって上枠11の室内側面及び障子2の上框21の室内側面を覆っている。
【0052】
-第4の実施形態-
第4の実施形態の断熱建具について、
図6(c),(d)に示す、上枠部分の竪断面の図面を用いて説明する。なお、第4の実施形態の断熱建具の枠体1及び障子2自体の構成は、第1の実施形態の断熱建具の枠体1及び障子2と同様であって、ケース体51及び断熱材61の構成において違いが存在する。
また、第4の実施形態の建具は、第1及び第2の実施形態の建具と同様に、枠体1を構成する各枠材は同一の断面形状を有しており、各枠においてケース体51を取り付けてなる断熱構造に差異はないので、本実施形態の説明においては、下枠部分及び竪枠部分については省略する。
【0053】
本実施形態においては、上枠11に取り付けられるケース体51は、第1の実施形態のケース体と同様に、合成樹脂材料からなり、上枠11のアングル部113の内周面に当接される外周壁部51aと、外周壁部51aの室外側端から下方に延びる外周側室外壁部51bと、外周壁部51aの室内側端から下方に延びる室内壁部51cと、室内壁部51cの下端から室外側に延びる内周壁部51dと、内周壁部51dの室外側端から上方に延びる内周側室外壁部51eと、内周側室外壁部51eの上端から室内側に向かって延びる中間壁部51oと、中間壁部51oの外周面から外周方向に突出する立上壁部51pを有している。
【0054】
本実施形態のケース体51は、中間壁部51oによって断熱材61の収容空間が上下に分割されており、内周側に形成される収容空間S2部分は、外周側に形成される収容空間S1部分よりも見込み方向の寸法が大きい。
【0055】
そして、外周側に形成される収容空間S1は、外周側室外壁部51bと立上壁部51pとの間に開口部aが形成されており、収容空間S1の中には、真空断熱材等の断熱材61aが配置されている。また、内周側に形成される収容空間S2は、開口部が形成されていない中空部として形成されており、収容空間S2の中には、断熱材61bが配置されている。
なお、内周側の収容空間S2の中に配置される断熱材61bは、真空断熱材とは異なる切断加工が可能な発泡プラスチック系断熱材等を配置してもよい。
また、ケース体51の収容空間Sに連続する開口部は、収容空間S1に連続する開口部だけでなく、収容空間S2に連続する開口部を中間壁部51o等に設けてもよい。
【0056】
断熱材61a,61bを収容したケース体51は、外周壁部51aを上枠11のアングル部113の内周面に当接させるとともに、中間壁部51oの室外側外周面を上枠の室内側壁部112の内周面に当接させて、開口部aを上枠11の室内側面によって閉鎖した状態で、両面テープ等の取付手段によって上枠11の室内側に露出する部分を覆うように取り付けられている。
上枠1に取り付けられたケース体51は、外周側に形成される収容空間S1部分によって上枠11の室内側面を覆い、内周側に形成される収容空間S2部分によって障子2の上框21の室内側面を覆っている。
【0057】
以上のように、第3、4の実施形態の断熱建具においては、第1の実施形態と同様に、ケース体5は、枠体1の室内側面から障子2の框体の室内側面に亘る広い範囲を覆うことができ、建具に対してさらに高い断熱性能を付与することができる。
そして、本実施形態におけるケース体5は、断熱材6を収容する収容空間に連続する開口部aを長手方向に沿って有しているので、収容空間Sに対して断熱材6を簡単に出し入れすることができ、断熱材6が劣化した際の交換を容易に行うことできるとともに、収容空間内での断熱材の配置状況を確認しながら作業ができるので、施工性が良い。
また、ケース体5の開口部aは、枠体1によって塞がれるので、開口部aを塞ぐ手間が増えることなく、施工が煩雑になることもない。
なお、ケース体51の内周壁部51dの室外側から室外側方向に向かって突片51gが形成されていてもよく、突片51gの構成については、第1の実施形態と同様である。
【0058】
-第5の実施形態-
第5の実施形態の断熱建具について、
図7に示す、躯体開口部に固定される枠体1の各枠材がガラス間口を有するFIX窓を用いて説明する。
なお、第5の実施形態の建具は、第1ないし第4の実施形態の建具と同様に、枠体1を構成する各枠材は同一の断面形状を有しており、各枠材に構造上の差異はないので、本実施形態の説明においては、竪枠部分については省略する。
【0059】
(上枠部分の構成)
本実施形態の枠体1の上枠11は、
図7(a)に示すように、複数の中空部を有する上枠本体部111と、上枠本体部111の室内側内周面から内周方向に延設される室内側壁部112と、上枠本体部111の室内側端から室内方向に延びるアングル部113を有しており、上枠本体部111の室外側内周部分に押縁114が取り付けられて、室内側壁部112と押縁114によって、ガラス間口111aが形成されている。上枠本体部111の中空部内には、必要に応じて、真空断熱材等の断熱材66が収容されていてもよい。
【0060】
ガラス間口111aにおいて、上枠本体部111の内周面から室内側壁部112の室外側面にかけて、断面略L字状の断熱シート81及び合成樹脂製の断熱シートカバー91が配置されている。
【0061】
そして、本実施形態においては、上枠11の上枠本体部111及び室内側壁部112の室内側面を覆うように、断熱材61を収容したケース体51が取り付けられている。
【0062】
上枠11に取り付けられるケース体51は、合成樹脂材料からなり、
図7(b)に示すように、上枠11のアングル部113の内周面に当接される外周壁部51aと、外周壁部51aの室外側端から下方に延びる外周側室外壁部51bと、外周壁部51aの室内側端から下方に延びる室内壁部51cと、室内壁部51cの下端から室外側に延びる内周壁部51dと、内周壁部51dの室外側端から上方に延びる内周側室外壁部51qを有し、全体として断熱材61を収容する収容空間Sを形成している。
【0063】
本実施形態のケース体51は、外周側室外壁部51bと内周側室外壁部51qとの間に開口部aが形成されており、
図7(c)に示すように、収容空間Sの中には、真空断熱材等の断熱材61が配置されている。
そして、断熱材61を収容したケース体51は、外周壁部51aを上枠11のアングル部113の内周面に当接させるとともに、外周側室外壁部51bと内周側室外壁部51qを上枠本体部111及び室内側壁部112の室内側面に当接させて、開口部aを上枠11の室内側面によって閉鎖した状態で、両面テープ等の取付手段によって上枠11の室内側面を覆うように取り付けられている。
【0064】
以上の第5の実施形態の断熱建具においては、ケース体5は、枠体1の室内側面を覆うことができ、建具に対してさらに高い断熱性能を付与することができる。
そして、本実施形態におけるケース体5は、断熱材6を収容する収容空間に連続する開口部aを長手方向に沿って有しているので、収容空間Sに対して断熱材6を簡単に出し入れすることができ、断熱材6が劣化した際の交換を容易に行うことできるとともに、収容空間内での断熱材の配置状況を確認しながら作業ができるので、施工性が良い。
また、ケース体5の開口部aは、枠体1によって塞がれるので、開口部aを塞ぐ手間が増えることなく、施工が煩雑になることもない。
【0065】
次に、第3、4の実施形態における右の竪框23のハンドル部分を用いて、ケース体51のハンドル46を取り付ける部分の構成について、説明する。
第3の実施形態の断熱建具の右の竪框23においては、
図8(a),(b)に示すように、ハンドル部分においてケース体53の内周側が切りかかれており、切り欠き部分を塞ぐようにハンドル46が配置されている。
【0066】
ケース体53の収容空間Sに収容された真空断熱材等の断熱材63は、ハンドル46の上方位置及び下方位置まで収容されており、ハンドル部分には収容されていない。そして、ハンドル部分の外周側には、例えば発泡ポリエチレン等の切断加工が容易な断熱材65が収容されている。
【0067】
また、第4の実施形態の断熱建具の右の竪框23においては、ハンドル部分においてケース体53の内周側が切りかかれており、切り欠き部分を塞ぐようにハンドル46が配置されている。
ケース体53の外周側の収容空間S1に収容された真空断熱材等の断熱材63aは、ハンドル部分においても上下に連続して配置されており、ケース体53の内周側の収容空間S2に収容された断熱材63bは、ハンドル部の上方位置及び下方位置まで収容されており、ハンドル部分には収容されていない。
【0068】
このように、竪框23のハンドル部分においては、ケース体53を切り欠いてハンドル46を取り付けると共に、ハンドル46を避けるように断熱材6が配置されることで、枠体1の四周にわたって断熱材6を配置することができる。
【0069】
以上のように、上記実施形態の断熱建具においては、建具の枠体1に対して、室内側に露出する部分に断熱材6を収容したケース体5を取り付けることで、簡単な加工によって断熱性能を向上させることができる。
そして、本実施形態におけるケース体5は、断熱材6を収容する収容空間に連続する開口部aを長手方向に沿って有しているので、収容空間Sに対して断熱材6を簡単に出し入れすることができ、断熱材6が劣化した際の交換を容易に行うことできるとともに、収容空間内での断熱材の配置状況を確認しながら作業ができるので、施工性が良い。
【0070】
また、ケース体5の開口部aは、枠体1によって塞がれるので、開口部aを塞ぐ手間が増えることなく、施工が煩雑になることもない。
そして、ケース体5を枠体1に取り付ける際に、枠体1によってケース体5の開口部aを覆うように取り付けることで、ケース体5の収容空間Sに収容された断熱材6が外気や結露等に触れることを抑制することができ、断熱性能の低下を抑えることができる。
【0071】
また、ケース体5を取り付ける枠体1は、
図9(a)に示すように、連窓を構成する方立であってもよい。
その際には、ケース体55の収容空間は、ひとつの大きな収容空間Sでもよいが、
図9(b)に示すように、見付け方向に分割した複数の収容空間S1,S2によって形成されていてもよい。
【0072】
また、
図10(a)に示すように、竪枠13,13に取り付けられたケース体53の室内側にさらに網戸等の付加機能部材7を配置してもよく、
図10(b)に示すように、付加機能を有する部材をケース体53に一体的に形成してもよい。
【0073】
さらに、ケース体5が取り付けられる上枠、下枠及び左右の竪枠の材料、形状は、限定されるものではない。例えば、枠体等は合成樹脂製やアルミ合金からなるものでも、また、それらの複合サッシでも良い。また、枠体は、断面形状が同一のものでなくてもよく、アングル部を備えないものであってもよい。その場合には、ケース体を躯体の内周面に当接させて躯体とケース体にわたってコーキング等の接着剤を塗布しても良い。
【0074】
さらに、ケース体5の断面形状も各枠体に応じて異なる断面形状のものであってもよい。
また、ケース体5に収容される断熱材6は、真空断熱材に限定されるものではなく、場合によっては、断熱材を収容しなくてもよい。
また、収容する断熱材61は、収容空間Sの形状に合わせて形成されたものでもよいが、所定の寸法を有する断熱材を適宜個数収容してもよく、その際に、寸法及び材質の異なる複数種類の断熱材を配置してもよい。収容する断熱材61所定の寸法とすることで、コストダウンができ、また、開口部から収容することで施工性も良い。さらに、真空断熱材以外の切断可能な断熱材を用いることによっても、施工性を向上させることができる。
さらに、断熱材61は、開口部aからケース体51の内面に発泡断熱剤を吹き付けることによって形成(収容)してもよい。
【0075】
また、ケース体5は、既設の建具の枠体に対して、後付けによって取り付けられるものであってよい。ケース体5の取付には、構造用両面テープ等を用いることができるが、接着剤による接着でもよく、さらには、面ファスナー等の取付手段によって取り付けても良く、何ら限定されるものではない。
【0076】
さらに、断熱建具は、開き窓やすべり出し窓、FIX窓に限定されるものではなく、引違い窓等建具の種類は何ら限定されるものではない。
なお、以上の実施形態は,請求項に記載された発明を限定するものではなく,例示として取り扱われることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0077】
1 :枠体
11 :上枠
12 :下枠
13 :竪枠
2 :障子
21 :上框
22 :下框
23 :竪框
5 :ケース体
51~53:ケース体
6 :断熱材
61~63:断熱材
S :収容空間
S1 :収容空間
S2 :収容空間
a :開口部