(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】試験システム、インタフェースユニット
(51)【国際特許分類】
G01R 29/08 20060101AFI20230419BHJP
【FI】
G01R29/08 A
(21)【出願番号】P 2019036449
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】青木 芳之
(72)【発明者】
【氏名】家泉 和広
(72)【発明者】
【氏名】板倉 智幸
(72)【発明者】
【氏名】稲毛 秀一
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-516344(JP,A)
【文献】再公表特許第2010/089996(JP,A1)
【文献】再公表特許第2009/075262(JP,A1)
【文献】特開平01-136080(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0089005(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/00-29/26
G01R 31/28-31/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線デバイスである被試験デバイスを試験する試験システムであって、
前記被試験デバイスとの間で双方向通信するゴールデンデバイスと、
少なくとも前記被試験デバイスの出力を含む第1信号を取り込む測定器と、
前記ゴールデンデバイスの出力と前記被試験デバイスの出力の少なくとも一方を含む第2信号を監視し、所定の波形パターンが現れたことに応答して、前記測定器による信号の取り込みを指示するトリガー信号を生成するインタフェースユニットと、
を備えることを特徴とする試験システム。
【請求項2】
前記第2信号は、前記ゴールデンデバイスの出力のみを含むことを特徴とする請求項1に記載の試験システム。
【請求項3】
前記インタフェースユニットは、
前記ゴールデンデバイスの出力を、前記被試験デバイスに向かう経路と別経路とに分岐する分波器と、
前記別経路に生ずる前記第2信号を検波する検波器と、
前記検波器の出力に応じて前記トリガー信号を生成するトリガー発生器と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の試験システム。
【請求項4】
前記ゴールデンデバイスと前記被試験デバイスはコモンパスを介して、双方向通信を行い、
前記分波器は、前記コモンパスに設けられた方向性結合器であることを特徴とする請求項3に記載の試験システム。
【請求項5】
前記インタフェースユニットは、前記検波器の出力を二値化するコンパレータをさらに備え、
前記トリガー発生器は、前記コンパレータの出力にもとづいて、所定の期待波形を検出することを特徴とする請求項3または4に記載の試験システム。
【請求項6】
前記測定器は、前記コモンパスから分岐するサブパスと接続されることを特徴とする請求項
4に記載の試験システム。
【請求項7】
前記測定器は、さらに、前記方向性結合器により分岐された前記第2信号を利用して、前記ゴールデンデバイスの出力のみを含む第3信号を取り込むことを特徴とする請求項6に記載の試験システム。
【請求項8】
前記測定器は、
RF帯域の測定対象の信号を、低い周波数に変換するアナライザと、
前記アナライザの出力をデジタル信号に変換するデジタイザと、
を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の試験システム。
【請求項9】
前記ゴールデンデバイスを制御するとともに、前記測定器の出力を取得するテスターコントローラをさらに備えることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の試験システム。
【請求項10】
有線信号を用いて試験することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の試験システム。
【請求項11】
前記インタフェースユニットは、1枚のボード上に実装されることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の試験システム。
【請求項12】
無線デバイスである被試験デバイスを試験する試験システムに使用されるインタフェースユニットであって、
前記試験システムは、
前記被試験デバイスとの間で双方向通信するゴールデンデバイスと、
少なくとも前記被試験デバイスの出力を含む第1信号を取り込む測定器と、
を備え、
前記インタフェースユニットは、
前記ゴールデンデバイスと前記被試験デバイスの間を伝送する信号の一部を取り出す分波器と、
前記分波器により取り出された信号を検波する検波器と、
前記検波器の出力
を監視し、前記分波器により取り出された信号に所定の波形パターンが現れたことに応答して、前記測定器による信号の取り込みを指示するトリガー信号を生成するタイミング発生器と、
を備えることを特徴とするインタフェースユニット。
【請求項13】
前記ゴールデンデバイスと前記被試験デバイスはコモンパスを介して、双方向通信を行い、
前記分波器は、前記コモンパスに設けられた方向性結合器であることを特徴とする請求項12に記載のインタフェースユニット。
前記ゴールデンデバイスの出力と前記被試験デバイスの出力の少なくとも一方を含む第2信号を監視し、前記測定器による信号の取り込みを指示するトリガー信号を生成するインタフェースユニットと、
を備えることを特徴とする試験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線デバイスの試験技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)などの通信手段を備える無線デバイスが普及している。これらの無線デバイスは出荷前に試験装置によって試験される。無線デバイスの試験は、パス、フェイルを判定する機能試験と、性能を測定するパラメトリック試験に分けられる。パラメトリック試験では、被試験デバイスの出力パワー、歪み、ビットエラーレートなどが評価される。
【0003】
通常の動作モードにおいて、無線デバイスの出力信号は間欠的に発生する。このように間欠動作する無線デバイスを試験する方法としては、以下のアプローチが考えられる。ひとつは、無線デバイスの出力信号の発生の有無にかかわらず、長い期間にわたり、無線デバイスの出力信号を取り込み続け、取り込んだ信号を評価するものである。一般的に、無線デバイスの通信周期は数百ms~数秒と長いため、このアプローチでは、波形取り込み用に膨大なメモリが必要となり、コストが増大する。
【0004】
別のアプローチは、無線デバイスに、テストモードを実装するものである。テストモードにおいて無線デバイスは、評価に必要な信号を連続的に、あるいは短時間に集中して発生する。これにより、無線デバイスの出力信号を所定の短時間にわたり取り込めばよいため、波形取り込みのメモリの容量を削減できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、必ずしもすべての無線デバイスがテストモードをサポートしているわけではない。またテストモードにおける無線デバイスと、通常動作モードにおける無線デバイスとでは、電気的状態、物理的状態が必ずしも同じであるとは言えないことから、テストモードをサポートしていたとしても、テストモードではなく、通常動作モードの状態で、無線デバイスを試験したいという要請がある。
【0006】
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、テストモードによらずに、無線デバイスを試験可能な試験システムあるいはインタフェースユニットの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、無線デバイスである被試験デバイスを試験する試験システムに関する。試験システムは、被試験デバイスとの間で双方向通信するゴールデンデバイスと、少なくとも被試験デバイスの出力を含む第1信号を取り込む測定器と、ゴールデンデバイスと被試験デバイスの間の信号を監視し、所定の波形パターンが現れたことに応答して、測定器による信号の取り込みを指示するトリガー信号を生成するインタフェースユニットと、を備える。
【0008】
本発明の別の態様は、無線デバイスである被試験デバイスを試験する試験システムに使用されるインタフェースユニットに関する。試験システムは、被試験デバイスとの間で双方向通信するゴールデンデバイスと、少なくとも被試験デバイスの出力を含む第1信号を取り込む測定器と、を備える。インタフェースユニットは、ゴールデンデバイスと被試験デバイスの間を伝送する信号の一部を取り出す分波器と、分波器により取り出された信号を検波する検波器と、検波器の出力にもとづいて、測定器による信号の取り込みを指示するトリガー信号を生成するタイミング発生器と、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のある態様によれば、テストモードによらずに、無線デバイスを試験できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る試験システムの基本構成を示すブロック図である。
【
図3】実施例1に係る試験システムのブロック図である。
【
図4】
図3の試験システムの動作を説明する図である。
【
図5】Wi-Fiに準拠したDUTの試験を説明する図である。
【
図6】実施例2に係る試験システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態の概要)
本明細書に開示される一実施の形態は、無線デバイスである被試験デバイスを試験する試験システムに関する。試験システムは、被試験デバイスとの間で双方向通信するゴールデンデバイスと、少なくとも被試験デバイスの出力を含む第1信号を取り込む測定器と、ゴールデンデバイスと被試験デバイスの間の信号を監視し、所定の波形パターンが現れたことに応答して、測定器による信号の取り込みを指示するトリガー信号を生成するインタフェースユニットと、を備える。
【0013】
ゴールデンデバイスと被試験デバイスの間の信号には、無線デバイスが準拠する通信プロトコルにしたがった波形パターンが発生する。そこでこの信号を監視し、所定の波形パターンの発生にもとづいてトリガー信号を生成することにより、無線デバイスの評価に必要な信号を無駄なく取り込むことができる。
【0014】
インタフェースユニットは、ゴールデンデバイスの出力のみにもとづいて、トリガー信号を生成してもよい。被試験デバイスは正常に動作するか不明である反面、ゴールデンデバイスは正常に動作することが保証されている。そこでゴールデンデバイスの出力の波形をパターンマッチングすることで、波形取り込みのトリガーを正確に生成できる。
【0015】
インタフェースユニットは、ゴールデンデバイスの出力を、被試験デバイスに向かう経路と別経路とに分岐する分波器と、別経路の信号を検波する検波器と、検波器の出力に応じてトリガー信号を生成するトリガー発生器と、を備えてもよい。
【0016】
インタフェースユニットは、検波器の出力を二値化するコンパレータをさらに備えてもよい。トリガー発生器は、コンパレータの出力に応じて、所定のバースト波形を検出してもよい。
【0017】
ゴールデンデバイスと被試験デバイスはコモンパスを介して、双方向通信を行ってもよい。分波器は、コモンパスに設けられた方向性結合器であってもよい。
【0018】
測定器は、コモンパスから分岐するサブパスと接続されてもよい。これにより、被試験デバイスの出力とゴールデンデバイスの出力の両方を同時に取得できる。
【0019】
測定器は、さらに、方向性結合器により分岐された信号を利用して、ゴールデンデバイスの出力のみを含む第2信号を取り込んでもよい。第1信号と第2信号の差分をとることにより、被試験デバイスの出力のみを取り出すことができる。
【0020】
測定器は、RF帯域の測定対象の信号を低い周波数に変換するアナライザと、アナライザの出力をデジタル信号に変換するデジタイザと、を含んでもよい。
【0021】
試験システムは、ゴールデンデバイスを制御するとともに、測定器の出力を取得するテスターコントローラをさらに備えてもよい。
【0022】
試験システムは、有線信号を用いて試験してもよい。
【0023】
インタフェースユニットは、1枚のボード上に実装されてもよい。インタフェースユニットを、既存の試験システムに追加することで、テストモードによらずに、被試験デバイスの評価が可能となる。
【0024】
(実施の形態)
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0025】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0026】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0027】
図1は、実施の形態に係る試験システム100の基本構成を示すブロック図である。試験システム100は、無線デバイスであるDUT2を試験する。試験システム100は、ゴールデンデバイス110、測定器120およびインタフェースユニット200を備える。
【0028】
ゴールデンデバイス110は、DUT2との間で双方向通信する。本来的にはゴールデンデバイス110およびDUT2の間の通信は無線であるが、試験に際しては、無線であってもよいし、有線であってもよい。ゴールデンデバイス110の出力信号をSGD、DUT2の出力信号をSDUTとする。DUT2とゴールデンデバイス110の通信経路をコモンチャンネル102と称する。
【0029】
測定器120は、少なくともDUT2の出力SDUTを含む第1信号S1を取り込み可能に構成される。
【0030】
インタフェースユニット200は、ゴールデンデバイス110の出力SGDとDUT2の出力SDUTの少なくとも一方を含む第2信号S2を監視し、所定の波形パターンが現れたことに応答して、測定器120による信号の取り込みを指示するトリガー信号TRIGを生成する。なお、ここでの波形パターンとは、RF(Radio Frequency)帯域の波形ではなく、RF信号の包絡線であることに留意されたい。
【0031】
第2信号S2は、ゴールデンデバイス110の出力SGDのみを含むことが望ましい。この理由のひとつは、ゴールデンデバイス110とDUT2の間の通信が、ゴールデンデバイス110の主導により開始することによる。また別の理由は、DUT2は正常動作するか不明であるのに対して、ゴールデンデバイス110は正常動作することが保証されており、ゴールデンデバイス110は、規格で定まるプロトコルに準拠した波形パターンを有する信号SGDを生成することが期待されるからである。
【0032】
測定器120は、このトリガー信号TRIGに応答して、第1信号S1の取り込みを開始する。試験システム100は、測定器120が取り込んだ信号にもとづいて、DUT2の性能を評価する。
【0033】
以上が試験システム100の基本構成である。続いてその動作を説明する。
図2は、
図1の試験システム100の動作波形図である。時刻t
0に試験がスタートする。S0は、コモンチャンネル102を伝送する双方向信号を示す。双方向信号S0には、ゴールデンデバイス110の出力S
GDと、DUT2の出力S
DUTの両方の成分が含まれている。インタフェースユニット200は、ゴールデンデバイス110の出力S
GDのみを含む第2信号S2を監視し、監視波形WAVにもとづいて、トリガー信号TRIGを生成する。その限りでないが、監視波形WAVは、第2信号S2の包絡線を用いることができる。具体的には、監視波形WAVが、その期待波形WAV_EXPと比較される。期待波形WAV_EXPは、DUT2が準拠する無線通信の規格にもとづいて規定することができる。
【0034】
時刻t
1にパターンマッチが検出されると、直ちに、あるいはそれから所定時間の経過後の時刻t
2に、トリガー信号TRIGがアサートされる。これにより、時刻t
2以降の第1信号S1(
図2には不図示)を、測定器120によって取り込むことができる。
【0035】
以上が試験システム100の動作である。この試験システム100によれば、所定の波形パターンの発生にもとづいてトリガー信号TRIGを生成することにより、DUT2の評価に必要な信号を無駄なく取り込むことができる。
【0036】
本発明は、
図1のブロック図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、方法に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や実施例を説明する。
【0037】
(実施例1)
図3は、実施例1に係る試験システム100Aのブロック図である。DUT2、ゴールデンデバイス110はそれぞれ、出力を有線で取り出すことが可能に構成され、DUT2とゴールデンデバイス110は有線のコモンパス104を介して接続される。コモンパス104は、
図1のコモンチャンネルに相当する。試験システム100Aは、有線信号にもとづいてDUT2を試験する。
【0038】
試験システム100Aは、ゴールデンデバイス110、測定器120、インタフェースユニット200A、分配器150、テスターコントローラ160を備える。
【0039】
インタフェースユニット200Aは、DUT2とゴールデンデバイス110の間に設けられており、1枚のボードに実装される。インタフェースユニット200Aは、分波器210、検波器220、コンパレータ222、トリガー発生器230を備える。
【0040】
分波器210はコモンパス104上に設けられており、コモンパス104を伝搬する双方向信号S0に含まれる2つの信号SGD,SDUTのうち、信号SGDの一部のみを含む第2信号S2を、コモンパス104とは別経路に分岐させる。言い換えれば分波器210は、ゴールデンデバイス110の出力信号SGDを、DUT2に向かう経路と別経路とに分岐する。分波器210は、一方のポートAから他方のポートBに伝搬する信号のみを抽出し、ポートCから出力する方向性結合器を用いることができる。
【0041】
検波器220は、第2信号S2を検波し、波形WAVを生成する。トリガー発生器230は、第2信号S2にもとづいてトリガー信号TRIGを生成する。検波器220の後段には、波形WAVをしきい値と比較して、ハイ・ロー二値のパターン信号PATに変換するコンパレータ222を設けてもよい。この場合、トリガー発生器230は、ハイ・ローの二値信号のパターン信号PATを、期待波形PAT_EXTと比較し、トリガー信号TRIGを生成することができる。この場合、振幅情報を考慮せずに、時間軸方向のハイ・ローの遷移波形のみにもとづいて、パターンマッチングを行うことができる。たとえばトリガー発生器230は、パターン信号PATのハイ区間および/またはロー区間の長さを測定するタイマー回路を含むことができる。トリガー信号TRIGは、トリガー出力ピンTRIG_OUTを介して測定器120に供給される。
【0042】
サブパス106は、分配器150を介してコモンパス104と接続されており、サブパス106には、DUT2の出力SDUTとゴールデンデバイス110の出力SGDの両方を含む双方向信号S0に応じた第1信号S1が発生する。なお分配器150は、インタフェースユニット200に内蔵されてもよい。
【0043】
測定器120は、サブパス106と接続され、DUT2の出力SDUTとゴールデンデバイス110の出力SGDの両方を含む第1信号S1を取り込む。
【0044】
測定器120は、ベクトルシグナルアナライザ130とベースバンド波形デジタイザ140を含む。ベクトルシグナルアナライザ130は、RF帯域の第1信号S1を、ベースバンド帯域のベースバンド信号SBBに周波数変換(ダウンコンバージョン)する。ベースバンド波形デジタイザ140は、ダウンコンバージョンされたベースバンド信号SBBをサンプリングし、デジタル信号に変換する。測定器120は、外部トリガー端子EXT_TRIGを備える。ベースバンド波形デジタイザ140は、外部トリガー端子EXT_TRIGに入力されるトリガー信号TRIGにもとづいて、ベースバンド信号SBBの取り込みを開始する。
【0045】
テスターコントローラ160は、ゴールデンデバイス110を制御するとともに、測定器120の出力を取得する。
【0046】
以上が試験システム100Aの構成である。
図4は、
図3の試験システム100Aの動作を説明する図である。分波器210によって、ゴールデンデバイス110の出力S
GDのみを含む第2信号S2が生成される。第2信号S2は検波器220によって包絡線検波され、監視波形WAVが生成される。コンパレータ222は、監視波形WAVをしきい値THと比較し、ハイ・ロー2値のデジタルのパターン信号PATに変換する。
【0047】
試験システム100Aの動作をWi-Fi(登録商標)を例に説明する。
図5は、Wi-Fiに準拠したDUT2の試験を説明する図である。
図5には、上から順に、ゴールデンデバイス110の出力S
GD、DUT2の出力S
DUT、2つの出力S
GD,S
DUTを含む双方向信号S0の波形が示される。波形は、検波して2値化した場合の簡略化したパターンとして示す。ゴールデンデバイス110は、Wi-Fiルータ(アクセスポイント)である。
【0048】
ゴールデンデバイス110は、所定の期間にわたり、ビーコン300を発生する。DUT2は、ビーコン300に応答して起動(Wakeup)信号302を発生する。ゴールデンデバイス110は起動信号302に応答してアクナリッジ304を返す。続いてゴールデンデバイス110はエコー要求(Echo Request)306を発生し、これに応答してDUT2はアクナリッジ308を返す。続いてDUT2は、送信要求(RTS:Request to Send)310を送信する。ゴールデンデバイス110が送信許可(CTS:Clear to Send)312を与える。DUT2は送信許可312に応答して、エコー応答(Echo reply)314を送信する。ゴールデンデバイス110はエコー応答314を受領すると、アクナリッジ316を返す。
【0049】
この一連のシーケンスにおいて、ゴールデンデバイス110が生成するエコー要求306と、エコー応答314が、キャプチャすべき信号であり、ハッチングを付している。
【0050】
図4の試験システム100Aでは、ゴールデンデバイス110の出力S
GDのみを含む第2信号S2が監視される。そして、ビーコン300の波形と、それに続くアクナリッジ304の波形を含む波形パターンが、検出対象とされる。期待パターンPTN_EXPは、444μsのハイ区間と、460μsのロー区間と、28μsのハイ期間となる。
【0051】
アクナリッジ304のパターンのネガエッジにおいて、波形パターンの一致が検出されると、それを基準とした異なるタイミングで、トリガー信号TRIG1、TRIG2がアサートされる。測定器120は、トリガー信号TRIG1に応答して、第3信号S3を取り込み、トリガー信号TRIG2に応答して、第1信号S1を取り込むことができる。
【0052】
(実施例2)
図6は、実施例2に係る試験システム100Bのブロック図である。この実施例では、測定器120Bは、ゴールデンデバイス110の出力S
GDとDUT2の出力S
DUTの両方を含む第1信号S1に加えて、ゴールデンデバイス110の出力S
GDのみを含む第3信号S3を取り込み可能に構成されている。
【0053】
第3信号S3は、方向性結合器である分波器210により分岐された第2信号S2にもとづいて生成される。このためにインタフェースユニット200Bには、分波器210により分波された第2信号S2の一部を抽出し、第3信号S3を生成する分配器240が設けられる。
【0054】
第3信号S3は、第1信号S1とともに測定器120Bに供給される。測定器120Bは2チャンネルで構成される。ベクトルシグナルアナライザ130は、第1信号S1、第3信号S3それぞれをダウンコンバージョンし、2つのベースバンド信号SBB_DUT,SBB_GDを生成する。ベースバンド波形デジタイザ140は、ベースバンド信号SBB_DUT,SBB_GDそれぞれを、デジタル信号に変換する。
【0055】
この実施例において、分配器150には、複数のDUT2が同時に接続される。この構成により、複数のDUT2を時分割で、あるいは同時に測定することが可能となる。
【0056】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0057】
(変形例1)
実施例1,2では、方向性結合器を用いて、ゴールデンデバイス110の出力SGDのみを含む第2信号S2を生成したがその限りでない。ゴールデンデバイス110の出力SGDとDUT2の出力SDUTとで周波数が異なる場合には、方向性結合器に代えてフィルタを用いることができる。
【0058】
(変形例2)
実施例1,2では、ゴールデンデバイス110の出力SGDのみを含む第2信号S2にもとづいてトリガー信号TRIGを生成したがその限りでない。インタフェースユニット200は、ゴールデンデバイス110の出力SGDとDUT2の出力SDUTの両方を含む第2信号S2にもとづいて、トリガー信号TRIGを生成してもよい。あるいは、インタフェースユニット200は、DUT2の出力SDUTのみを含む第2信号S2にもとづいて、トリガー信号TRIGを生成してもよい。どのような信号を監視対象とすべきかは、無線通信の規格毎に、波形パターンの検出のしやすさと正確性を考慮して決めればよい。
【0059】
(変形例3)
実施例1,2では、有線による測定を説明したが無線によって測定してもよい。その場合、インタフェースユニット200に、DUT2とゴールデンデバイス110の間の無線通信を受信するためのアンテナを追加し、アンテナが受信した信号のパターンにもとづいてトリガー信号を生成すればよい。またアンテナが受信した信号を測定器120によってキャプチャすればよい。
【0060】
実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0061】
2 DUT
100 試験システム
102 コモンチャンネル
104 コモンパス
106 サブパス
110 ゴールデンデバイス
120 測定器
130 ベクトルシグナルアナライザ
140 ベースバンド波形デジタイザ
150 分配器
160 テスターコントローラ
200 インタフェースユニット
210 分波器
220 検波器
222 コンパレータ
230 トリガー発生器
240 分配器
TRIG トリガー信号
S0 双方向信号
S1 第1信号
S2 第2信号
S3 第3信号