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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】観察撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/04 20060101AFI20230419BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20230419BHJP
   G02B 23/26 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
G02B13/04
G02B23/24 B
G02B23/26 C
G02B23/26 D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019038701
(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公開番号】P2020144166
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082821
【弁理士】
【氏名又は名称】村社 厚夫
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】帯金 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 嘉人
(72)【発明者】
【氏名】今宮 悠一
(72)【発明者】
【氏名】小山 由莉
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-54450(JP,A)
【文献】特開2006-39259(JP,A)
【文献】国際公開第2014/175038(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/043063(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 23/24 - 23/26
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の挿入部と、
前記挿入部の先端部に配置され中間結像面を有さない撮像光学系であって1枚以上のレンズを含む撮像光学系と、
前記撮像光学系の像側に当該撮像光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子と、を備える観察撮像装置であって、
前記撮像素子の有効撮影範囲の中心を通る前記挿入部の断面のうち、面積が最も小さくなる前記挿入部の断面Sの重心位置を通る法線を法線Aとしたとき、
前記撮像光学系は、当該撮像光学系の最も観察被写体側に配置されるレンズL1の観察被写体側面の軸上主光線Bが前記法線Aに対して傾くように、前記挿入部に対して固定して配置され、
前記法線Aと前記軸上主光線Bとの距離が最も小さくなる前記軸上主光線B上の点Pが前記レンズL1の観察被写体側面より像側かつ前記撮像素子より観察被写体側に位置し、
以下の条件式を満足する、
ことを特徴とする観察撮像装置。
0.10 < Dm/Ds < 0.80 ・・・・・(1)
0.00 ≦ tan(|β|-|α|) < 2.00 ・・・・・(9)
但し、
Dm: 前記撮像素子の有効撮像範囲の面積
Ds: 前記断面Sの面積
α:前記法線Aと前記軸上主光線Bがなす角度
β:前記撮像光学系の最軸外主光線の半画角
【請求項2】
前記撮像光学系は、反射面を備える光学素子を有さない、
ことを特徴とする請求項1に記載の観察撮像装置。
【請求項3】
前記撮像光学系は、5枚以上のレンズから構成される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の観察撮像装置。
【請求項4】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の観察撮像装置。
-50.00 < fL1/f < -0.01 ・・・・・(2)
但し、
fL1:前記レンズL1の焦点距離
f:前記撮像光学系の焦点距離
【請求項5】
前記撮像光学系は、前記レンズL1の像側に正の屈折力を有するレンズL2を有し、
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の観察撮像装置。
0.02 < fL2/|fL1| < 20.00 ・・・・・(3)
但し、
fL1:前記レンズL1の焦点距離
fL2:前記正の屈折力を有するレンズL2の焦点距離
【請求項6】
前記撮像光学系は、前記レンズL1より像側に負の屈折力を有するレンズNを少なくとも1枚有し、
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の観察撮像装置。
1.500 < NdN < 2.200 ・・・・・(4)
但し、
NdN:前記レンズNのd線における屈折率
【請求項7】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の観察撮像装置。
0.2 < OAL/YY < 10.0 ・・・・・(5)
但し、
OAL:前記撮像光学系の最も観察被写体側のレンズ面から前記撮像素子までの距離
YY:前記撮像素子の有効対角長
【請求項8】
前記撮像光学系は、樹脂を材料とするレンズを少なくとも1枚有し、
以下の条件を満足することを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の観察撮像装置。
0.30 < |fLP|/f < 10.00 ・・・・・(6)
但し、
fLP:前記樹脂を材料とするレンズの焦点距離
f:前記撮像光学系の焦点距離
【請求項9】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の観察撮像装置。
20.0 < YY/PIT/Fno < 2000.0 ・・・・・(7)
但し、
YY:前記撮像素子の有効対角長
PIT:前記撮像素子の画素ピッチ
Fno:前記撮像光学系のF値
【請求項10】
前記挿入部は、挿入方向に延びる筒状部材で構成され、
以下の条件を満足することを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の観察撮像装置。
2.0 < L/OAL ・・・・・(8)
但し、
L:前記挿入部の挿入方向の長さ
OAL:前記撮像光学系の最も観察被写体側のレンズ面から結像面までの距離
【請求項11】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載の観察撮像装置。
0.01<(OAL×sin|α|+YY×cos|α|)/DI<5.00
・・・・・・(10)
但し、
OAL:前記撮像光学系の最も観察被写体側レンズ面から結像面までの距離
YY :前記撮像素子の有効対角長
DI :前記断面Sの外接円直径
【請求項12】
前記撮像素子の有効撮影範囲が略長方形の形状を有し、
以下の条件を満足することを特徴とする請求項1から11の何れか1項に記載の観察撮像装置。
0.00 ≦ tan|γ| < 0.60 ・・・・・(11)
但し、
γ:前記法線A及び前記軸上主光線Bがなす角度αと前記軸上主光線Bとで作られる平面と、前記撮像素子の有効撮影範囲の短手方向とのなす角度
【請求項13】
前記挿入部の先端に観察被写体を照明するための照明部を備え、
前記軸上主光線Bと前記照明部が照明する配向性の軸が略平行であることを特徴とする請求項1から12の何れか1項に記載の観察撮像装置。
【請求項14】
前記撮像素子で撮影した画像データを電気的に加工して画像の歪みを補正する画像処理部を備える、
ことを特徴とする請求項1から13の何れか1項に記載の観察撮像装置。
【請求項15】
前記撮像光学系は、前記法線Aを回転中心として回転可能に取り付けられており、
前記撮像光学系を回転させながら前記撮像素子により撮影された画像を合成する画像処理部を備える、
ことを特徴とする請求項1から14の何れか1項に記載の観察撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察撮像装置に関する。固体撮像素子等を用いた観察撮像装置、例えば、生
体内部を観察する内視鏡、人が入り込めない狭小空間内部を観察する装置等、狭小空間の
内部観察に適した観察撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルスチルカメラ等の撮像装置が広く普及しており、固体撮像素子の高性能化、高画素も進んでいる。また、近年では、モニタ等の画像表示装置の大画面化、高画素化も進んでいる。これらに伴い、撮像装置で取得した被写体像を画像表示装置の大きな画面に表示させ、多くの人が同時に被写体像を細部まで観察できるようにした観察システムの普及も進んできている。観察システムは、例えば、生体内部や人が直接入ることのできない狭小空間内に挿入して内部を観察するときなどに用いられる。
【0003】
このような観察システムでは、極めて高画素の固体撮像素子が用いられる傾向にあるため、光学系においても一層の高性能化、高解像度化が求められている。また、狭小空間に挿入する必要があるため、最も観察対象側に配置される対物レンズの小型化や広角化への要望が強く求められてきている。
【0004】
そこでこのような観察システムに用いられる光学系として、小型で高性能な硬性鏡に適した光学系が特許文献1によって提案されている。特許文献1に記載の光学系は、細い筒状の挿入部内に収容される対物レンズを備えている。特許文献1に記載の光学系では、小型、広角な対物レンズにより生体内部等の狭小空間内に挿入して内部を良好に観察することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-203972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1では、硬性鏡の挿入方向と光学系の観察方向(軸上主光線)が同方向であることが前提となっていて、硬性鏡の挿入方向に対して視野が固定される。挿入方向に対して斜め方向の観察を達成するためには光学系を超広角に対応させなければならないが、光学系の大型化や高価格化を招いてしまう。
【0007】
また、特許文献1では、4Kや8Kの解像力を満足し、最観察被写体側レンズから撮像素子までの間隔が大きい(光学全長の長い)光学系とするため、対物レンズのほかにリレー系光学系や結像レンズ系を備え、光学系の中で中間結像面が形成される構成となっている。
【0008】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、挿入方向に対して所望の視野を撮影できる高解像度で小型の観察撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る観察撮像装置は、上記の課題を解決するため、筒状の挿入部と、前記挿入部の先端部に配置され中間結像面を有さない撮像光学系であって1枚以上のレンズを含む撮像光学系と、前記撮像光学系の像側に当該撮像光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子と、を備える観察撮像装置であって、前記撮像素子の有効撮影範囲の中心を通る前記挿入部の断面のうち、面積が最も小さくなる前記挿入部の断面Sの重心位置を通る法線を法線Aとしたとき、前記撮像光学系は、当該撮像光学系の最も観察被写体側に配置されるレンズL1の観察被写体側面の軸上主光線Bが前記法線Aに対して傾くように、前記挿入部に対して固定して配置され、前記法線Aと前記軸上主光線Bとの距離が最も小さくなる前記軸上主光線B上の点Pが前記レンズL1の観察被写体側面より像側かつ前記撮像素子より観察被写体側に位置し、以下の条件式を満足することを特徴とする。
0.10 < Dm/Ds < 0.80 ・・・・・(1)
但し、
Dm: 前記撮像素子の有効撮像範囲の面積
Ds: 前記断面Sの面積
【発明の効果】
【0010】
これによれば、挿入方向に対して所望の視野を撮影できる高解像度で小型の観察撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る観察撮像装置の一例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る観察撮像装置の挿入部における撮像レンズの配置を模式的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る観察撮像装置における、挿入部に対して撮像レンズを傾斜配置した際の角度の関係を模式的に示す図である。
図4】法線A及び軸上主光線Bのなす角度αと軸上主光線Bとで作られる平面と撮像 との配置関係を模式的に示す図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る観察撮像装置の一例を示す図である。
図6】本発明の実施例1 に係る撮像レンズのレンズ構成を示す断面図である。
図7】本発明の実施例1 に係る撮像レンズの縦収差を示す縦収差図である。
図8】本発明の実施例2 に係る撮像レンズのレンズ構成を示す断面図である。
図9】本発明の実施例2 に係る撮像レンズの縦収差を示す縦収差図である。
図10】本発明の実施例3 に係る撮像レンズのレンズ構成を示す断面図である。
図11】本発明の実施例3 に係る撮像レンズの縦収差を示す縦収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の一実施形態に係る観察撮像装置について図1を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る観察撮像装置1の一例を示す図である。観察撮像装置1は図1に示すように、筒状の挿入部2と、挿入部2の先端部3に配置され中間結像を有さない撮像レンズ(撮像光学系)5と、前記撮像レンズの像側に当該撮像レンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子6と、を備えている。
【0013】
〔挿入部〕
挿入部2は、筒状の形状を有しており、狭小空間を撮影するために狭小空間への挿入に適した形状となっている。本実施形態では、挿入部2を狭小空間に挿入することから、挿入部2は筒の挿入方向(長さ方向、軸方向)に延びる細長い筒状部材であることが好ましく、筒の外径は小さいほど好ましい。挿入部2は例えば、全体として略円筒形であると狭小空間への挿入がスムーズであり挿入部2に接する狭小空間に対する負荷も小さく好ましいが、これに限定されるものではない。例えば挿入部2は、挿入方向に垂直な断面が楕円形状を有する筒であってもよいし、三角形や四角形などの多角形状の断面を有する筒であってもよいし、多角形の各角がテーパ形状を有する形状の筒であってもよい。
【0014】
挿入部2の先端部3は、内部に配置される撮像レンズ5が挿入部2の外部を撮像可能なように、窓部4を備えている。本実施形態では、窓部4はガラスによって構成されているが、特に限定されるものではなく、透明な樹脂材料によって構成されていてもよい。
【0015】
また、窓部4は、後述する撮像レンズ5の最も観察被写体側のレンズL1(第1レンズL1)の観察被写体側面の光軸に垂直な平面に略平行に設けられることが好ましい。窓部4をこのように配置することにより、撮像レンズ5に入射する光の歪みを最小限に抑えることができる。
【0016】
挿入部2の外径は具体的には、φ20mm以下であることが好ましく、φ15mm以下であることがより好ましく、φ12mm以下であることがさらに好ましく、φ10mm以下であることがさらに好ましく、φ8mm以下であることがさらに好ましく、φ6mm以下であることがさらに好ましい。外径が小さいほど狭小空間への挿入が容易になり、特に人体の手術等で使用される内視鏡に適用される場合には人体への負担を減らすことが可能となる。
【0017】
また、挿入部2の構成や挿入部2を構成する部品点数などは特に限定されるものではなく、一つの部品で構成してもよいし、複数の部品で構成してもよい。挿入部2を複数の部品で構成する場合、先端部3に配置される撮像レンズ5(撮像レンズ5については後述する)と併せて先端部3を挿入部2から取り外し可能に構成してもよい。
【0018】
挿入部2の長さ方向の長さは撮影シーンの拡大の点から長いほうが好ましく、具体的に前期挿入部の長さLは、100mm以上であることが好ましく、300mm以上であることがより好ましく、500mm以上であることがさらに好ましく、1000mm以上であることがさらに好ましく、1500mm以上であることがさらに好ましい。
【0019】
〔撮像レンズ〕
撮像レンズ5は、挿入部2の先端部3に配置されている。また、撮像レンズ5は1枚以上のレンズからなり、そのレンズ系において中間結像面を有さない(レンズ系の途中で結像面が形成されない)ように構成されている。
【0020】
ここで、従来の硬性内視鏡等の撮像装置では、例えば特許文献1のように対物レンズによって中間結像された観察被写体像をリレーレンズ系を介してリレーした後結像レンズで撮像素子に結像させることにより径方向の大型化を避けながら長い筒状の硬性内視鏡を達成している。しかし、従来の構成ではレンズ枚数が多くなることからコストが高く、挿入方向に対する画角を広げることも難しく、これを解決するには対物レンズを超広角レンズとするか対物レンズに反射部材を含み光線の角度を変える必要があった。しかしながら、これらの対応では、コストが高くなるとともに対物レンズの大型化が避けられず小型化の点で好ましくない。そのため、本実施形態に係る観察撮像装置1の撮像レンズ5は、中間結像を有さないことが好ましい。
【0021】
撮像レンズ5を構成するレンズ枚数は特に限定されるものではないが、高い光学性能を得るという観点から少なくとも5枚のレンズを備えることが好ましい。一方で、レンズ枚数が8枚を超えると撮像レンズの全長方向の小型化の妨げとなるため、レンズ枚数は8枚以下であることが好ましい。
【0022】
また、撮像レンズ5は空気間隔が変化する2つ以上のレンズ群により焦点距離を変倍可能なズームレンズとして構成されていてもよいし、焦点距離が変わらない単焦点レンズとして構成されていてもよいが、本実施形態では撮像レンズ5が単焦点レンズである場合を例に挙げて説明する。なお、撮像レンズ5は外径の小さい挿入部2の先端部3に配置されることから、挿入部2の小径化および観察撮像装置1全体の構成の簡略化の観点から単焦点レンズであることが好ましい。
【0023】
撮像レンズ5は、撮像レンズ5を構成する光学素子として、反射面を有する光学素子を有さないことが好ましい。ここで、反射面を有する光学素子とは、例えばミラーや全反射プリズムなどを指し、反射面を有さないということは、撮像レンズ5が屈折レンズや回折レンズ、液晶レンズなどの光学素子から構成されることを意味する。
【0024】
例えば、観察撮像装置1が人体に挿入する内視鏡である場合、先端部3を一度体内に挿入したものは、衛生面の観点から再度観察撮像装置1を使用する際に交換して新しい先端部3とすることが好ましい。しかし、光軸の角度を変化させるプリズムを配置すると、撮像レンズ5が高価になってしまうため、先端部3を使用の都度交換することが難しくなる。この場合には先端部3を挿入する度に洗浄や煮沸消毒を行う必要がある。また、煮沸消毒を行う場合には熱に弱い樹脂レンズの使用が困難となることから、更に撮像レンズ5が高価となる。そこで、プリズムを有さないことによって撮像レンズ5のコストを抑えることができ、使用する度に先端部3を交換しても費用を抑えることができる。更に、使用する度に先端部3を交換することで煮沸消毒が不要となることから、撮像レンズ5に樹脂レンズを用いることが可能となり、より低コスト化が可能となる。また、ミラーを配置すると、反射面のスペースを確保するために小型化を達成することが困難となる。
【0025】
(レンズ構成)
撮像レンズ5の具体的なレンズ構成については、後述する各実施例にて説明し、ここではまず撮像レンズ5の基本的なレンズ構成について簡単に説明する。
撮像レンズ5の最も観察被写体側に配置されるレンズL1は、負の屈折力を有することが好ましい。最も観察被写体側に負の屈折力を有するレンズL1を配置することで、撮像レンズ5の広角化を達成しつつ大型化を避けやすくなる。
【0026】
レンズL1の像側には正の屈折力を有するレンズL2(実施例1、2では第2レンズL2、実施例3では第3レンズL3)は、ことが好ましい。負の屈折力を有するレンズの像側に正の屈折力を有するレンズを配置することで、レンズL1の径方向の小型化を図ることができる。また、レンズL2をレンズL1の像側に隣接して配置することがより好ましい。観察被写体側から順に負の屈折力を有するレンズL1、正の屈折力を有するレンズL2を配置することにより、レンズL1の径方向の小型化を図りつつ撮像レンズ5の広角化を図ることができる。
【0027】
また、レンズL1より像側に、負の屈折力を有するレンズNを少なくとも1枚有することが、像面性の補正のために好ましい。ここで、撮像レンズ5における像面性を向上させる補正のためにはペッツバール和を小さくする必要があるが、正の屈折力を有するレンズNを少なくとも1枚配置することにより、撮像レンズ5全体でペッツバール和を小さくすることが容易となる。より具体的には、最も観察被写体側に負の屈折力を有するレンズL1を配置した場合、レンズL1より像側に負の屈折力を有するレンズNを配置することにより、収差の打ち消しあいが起きるため、歪曲収差や像面湾曲などの補正に効果的となる。
【0028】
また、撮像レンズ5を構成するレンズのうち、少なくとも1枚のレンズを、樹脂を材料とするレンズ(所謂プラスチックレンズ。以降、樹脂レンズとも呼称する)とすることが低コスト化のために好ましい。加えて、撮像レンズ5を構成するレンズのうち、正の屈折力を有する樹脂レンズと負の屈折力を有する樹脂レンズの組み合わせを樹脂レンズとすることが好ましい。また、この組み合わせを1組、2組、3組と増やすことが好ましい。これによって、ガラスを材料とするレンズと異なる温度特性を有する樹脂レンズによる諸収差を互いに効果的に打ち消すことができ、低コスト化を実現しつつ性能の低下を防ぐことができる。
更に、樹脂レンズの少なくとも1つの面に、近軸曲率の屈折力を弱くする形状の非球面を有することが、高性能化の点で好ましい。
【0029】
〔撮像素子〕
撮像素子6は、撮像レンズ5の像側に配置され、撮像レンズ5によって形成された観察被写体像(光学像)を電気的信号(画像データ)に変換する。
【0030】
ここで、撮像素子6は特に限定されず、例えば、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの固体撮像素子を用いることができる。固体撮像素子の解像度や大きさについても特に限定されるものではないが、フルハイビジョン以上の解像度であることが好ましく、4K以上の解像度であることがより好ましく、8K以上の解像度であることがさらに好ましい。
【0031】
撮像素子6の高画素化に伴い、撮像素子6の有効撮影範囲が大型化し、それに伴い撮像レンズ5も大型化してしまうため、観察撮像装置1全体の小型化と高画素化を両立させるには、最適な大きさの撮像素子6を採用する必要がある。撮像素子6の大きさについては後述する。
【0032】
なお、本実施形態では撮像素子6が1つの撮像素子からなる構成を例に挙げて説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、複数の撮像素子をその撮像面(撮像レンズ5によって観察被写体像が形成される面)を互いに重ならないように配置し、撮像レンズ5の光路を分割プリズム等により分割して各撮像素子の撮像面にそれぞれ集光するような場合には、複数の撮像素子全体で一つの大きな撮像素子と等価の機能を有する。このように複数の撮像素子を用いる場合、撮像素子6の撮像面は、複数の撮像素子と等価とみなされる一つの大きな撮像素子の撮像面を意味するものとする。なお、後述する撮像素子6の画素ピッチは、撮像面において互いに隣り合う画素の画素中心間隔を指し、複数の撮像素子が画素をずらして配置されている場合には、画素をずらした量を指すものとする。
【0033】
〔画像処理部〕
本実施形態に係る観察撮像装置1は、撮像素子6において生成された画像データを電気的に加工する画像処理部7を備えている。画像処理部7は、入力される画像データを電気的に加工し、補正画像データを生成して出力する。
【0034】
撮像レンズ5は小型で且つ広角な光学系であることが好ましいが、そのような光学系では撮像素子6上に結像される光学像の歪みが生じやすくなる。そこで、撮像素子6で生成された画像データの示す観察被写体画像の歪みを電気的に加工する画像処理部7を備えることにより、歪みの少ない補正後観察被写体画像を生成することができる。本実施形態では、画像処理部7は画像データの示す観察被写体画像の歪みを補正するための補正用データが予め記録されている記録部と、記録部から読み出した補正用データに基づいて画像データを補正する演算処理部(例えば、CPUなど)を備えている(何れも不図示)。
【0035】
(観察被写体画像の補正)
画像処理部7は、観察被写体画像を示す画像データのうち、歪曲収差に関するデータを電気的に加工することが好ましい。これによれば、撮像レンズ5の最も観察被写体側に負の屈折力を有するレンズL1を配置することによって撮像レンズ5の広角化を図りつつ、画像処理部7において歪曲収差の小さい補正画像データを生成することができるため、補正画像データの示す補正後観察被写体画像を表示装置などへ表示してユーザが参照することで、ユーザは広画角でかつ歪曲収差の小さい画像を参照することができる。
また、画像処理部7は、画像データのうち倍率色収差に関するデータを電気的に加工してもよい。倍率色収差に関するデータを電気的に加工することができれば、色収差の小さい補正後観察被写体画像を得ることができる。これにより、撮像レンズ5を構成するレンズ枚数を削減することが可能になり、観察撮像装置1全体の小型化を図ることがより容易となる。
【0036】
更に、撮像レンズ5は後述する法線Aを回転中心として(つまり、挿入部2の長さ方向に対して)回転可能に配置されていてもよい。このとき、挿入部2が回転せず撮像レンズ5のみが回転可能な構成の場合には、窓部4は先端部3の全周に渡って形成されていることが好ましい。また、撮像レンズ5がその先端部3と一体となって回転可能に構成されている場合、画像処理部7は、先端部3を回転させながら撮影された複数の観察被写体画像に対応する複数の画像データを電気的に加工及び結合し、広い範囲が撮影された一つの結合画像を示す結合画像データを生成してもよい。
【0037】
これによれば、疑似的に広範囲が撮影された観察被写体画像を得ることができるため、撮像レンズ5のみではなく撮像レンズ5と画像処理部7とにより広角化を図ることができる。これにより、必要以上に撮像レンズ5の高性能化を求める必要がなく、撮像レンズ5を構成するレンズの枚数を削減することが可能になり、観察撮像装置1の小型化を図ることができる。
【0038】
〔撮像レンズの傾斜配置〕
次に、挿入部2(より具体的には、挿入部2の先端部3)における撮像レンズ5の配置について図2を参照して説明する。図2は挿入部2内における撮像レンズ5の配置を簡易的に示す図である。図2(a)は観察撮像装置1の斜視図であり、(b)は観察撮像装置1の挿入方向の断面図であり、(c)は挿入部2の断面Sにおける断面図である。なお、観察撮像装置1の内部に配置される撮像レンズ5の配置位置の説明の簡単化のため、図2(a)及び(c)において破線にて撮像レンズ5を示している。
【0039】
図2に示すように、観察撮像装置1は、狭小空間内の撮影を行うため挿入部2の先端部3に、挿入部2の挿入方向に対して傾斜して撮像レンズ5が配置されている。換言すると、挿入部2の断面であって撮像素子6の中心(撮像素子6の有効撮影範囲の中心)を通る断面のうち、面積が最も小さくなる断面Sの重心位置を通る法線を法線Aとしたとき、レンズL1の観察被写体側面の軸上主光線Bが法線Aに対して傾くように(角度を有するように)、撮像レンズ5が挿入部2に固定されて配置されている。以降では、レンズL1の観察被写体側面の軸上主光線Bに沿う方向を、単に撮像レンズ5の撮影方向とも記載する。
【0040】
このように、撮像レンズ5の撮影方向が挿入部2の挿入方向に対して斜め方向を向くように配置して配置されることで、観察撮像装置1は、挿入部2の挿入方向に対して斜め方向を効率的に撮影することができる。
【0041】
また、法線Aと軸上主光線Bとの距離が最も小さくなる軸上主光線B上の点(本実施形態では、法線Aと軸上主光線Bとの交点)を点Pとしたとき、点Pが撮像レンズ5の最観察被写体側面より像側かつ撮像素子6より観察被写体側に存在することが好ましい。挿入部2の小径化を図りながら撮像レンズ5の高解像度化を図るためには、挿入部2の大きさに対して撮像レンズ5の配置効率を高めなければならないが、この構成によれば挿入部2の大きさに対して隙間(撮像レンズ5が配置されない挿入部2内の空間)を小さくしながら効率よく撮像レンズ5を配置することができる。
【0042】
また、撮像素子6の高画素化(有効撮影範囲の大型化)に伴い、撮像レンズ5も大型化するため、小型化と高画素化を成立させるには、撮像レンズ5を最適な傾き量で配置することが好ましい。撮像レンズ5の最適な傾き量については、撮像レンズ5の大きさや挿入部2の大きさを考慮する必要がある。
【0043】
図2(b)に示すように、点Pで交わる法線Aと軸上主光線Bとのなす角度をαとすると、角度αは、挿入部2の挿入方向に対する撮像レンズ5の撮影方向の傾きを表している。角度α(つまり、撮像レンズ5の撮影方向の傾き)の詳細については条件式と併せて後述する。
【0044】
本実施形態では、撮像素子6及びその有効撮影範囲の形状は、略長方形を有している。このとき、長方形の長手方向が法線A及び軸上主光線Bのなす角度αと軸上主光線Bとを含む平面に対して並行になる(つまり、撮像レンズ5の傾く方向と撮像素子6の長手方向とが同じ方向になる)場合、撮像レンズ5を傾けられる角度が小さくなってしまう。そこで、撮像素子6は、角度α及び軸上主光線Bを含む平面と撮像素子6の短手方向とが略平行(平面と長手方向とが略直行)になるように配置されることが好ましい。これによれば、撮像レンズ5の傾ける角度を大きくすることができる。
【0045】
〔観察撮像装置のその他の構成〕
本実施形態に係る観察撮像装置1は、挿入部2の先端部3に、照明部8を備えていてもよい。これにより、狭小空間へ挿入して周辺から撮影に必要な光量が得られない場合であっても、照明部8から必要な光量を確保することができる。また、照明部8は、その主たる照明方向(照明部8が照明する配向性の軸)が、撮像レンズ5の備えるレンズL1の観察被写体側面の軸上主光線Bと略平行(つまり、照明方向と撮影方向とが同じ方向)であることが照明効率の点で好ましい。
【0046】
また、本実施形態に係る観察撮像装置1は、表示装置9を備えている。表示装置9は例えば、液晶テレビや有機ELテレビ、パーソナルコンピュータのモニタなどであればよく、特に限定されるものではない。これにより、観察撮像装置1において取得した観察被写体画像に関する画像データ(又は補正画像データ、結合画像データ)を表示装置9に表示して、多くの人が同時に観察被写体画像を観察することができる。
【0047】
なお、本実施形態では観察撮像装置1が表示装置9を備える構成を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、表示装置9は観察撮像装置1とは別に用意されていてもよく、観察撮像装置1から表示装置9に画像データを出力可能であればよい。また、観察撮像装置1と表示装置9との接続方法は有線接続に限られず、例えばBluetooth(登録商標)やWi-Fiなどにより無線接続されてもよい。この場合には、表示装置9として例えばスマートフォンやタブレット端末などの携帯端末を採用することもできる。
【0048】
更に、本実施形態に係る観察撮像装置1は、挿入部2の先端部3に、観察被写体に対する操作(処置)を行う操作部を有していてもよい。
【0049】
また、本実施形態に係る観察撮像装置1は、上述のように挿入部2の先端部3が撮像レンズ5と共に挿入方向に対して回転可能に構成されていてもよい。この場合、撮像レンズ5と撮像素子6とが図1に示すように各々の光軸が同一方向に向くよう配置されていることが好ましい。そして、撮像素子6と画像処理部7とは例えば柔らかい線を用いて有線接続されるか無線接続されていることが好ましい。これによれば、先端部3の回転を容易にすることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る観察撮像装置1は、先端部3において挿入部2から取り外し可能に構成されていてもよい。例えば、撮像レンズ5及び撮像素子6が配置されている先端部3における撮像レンズ5の配置される側と異なる一端に、撮像素子6から出力される画像データを画像処理部7に伝達可能に電気的接続できるマウント部を設け、挿入部2のマウント部を介して挿入部2に接続可能に構成すればよい。また、撮像素子6と画像処理部7とを無線接続する場合には、先端部3と挿入部2とを機構的に接続するだけでもよい。
【0051】
この構成によれば、先端部3が観察撮像装置1の使用によって汚れる度や、観察撮像装置1を使用する度に先端部3を取り換えることができるため、観察撮像装置1全体を交換することなく綺麗な状態で観察撮像装置1を使用することができる。観察撮像装置1を人体内部を観察する内視鏡として使用する場合には、一度使用する度に先端部3の滅菌消毒(例えば高温での煮沸消毒など)を行う必要があるが、先端部3を取り換え可能であれば消毒によって撮像性能の劣化した観察撮像装置1を繰り返し使用する必要もなくなり、より衛生的に使用することができる。
【0052】
〔撮像レンズの調整〕
本実施形態に係る観察撮像装置1は、撮像レンズ5内の各レンズの空気間隔を調整することで製造誤差により発生する誤差量を小さくすることが可能なように構成されていることが好ましい。例えば、撮像素子6の画素ピッチPITが細かくなるほど、また許容錯乱円が小さくなるほど、観察撮像装置1に要求される収差許容量が小さくなる。このため、レンズの加工やレンズ枠の加工、組み立て工程などで発生する製造誤差が原因となって発生する収差が大きくなってしまう。そこで、撮像レンズ5の各レンズの空気間隔を調整することで製造誤差によって発生する誤差量を小さくすることが、高性能化にとって必要となる。
【0053】
製造誤差によって発生する誤差量とは、例えば、バック、球面収差、像面湾曲、色収差などを挙げることができる。なお、各レンズの空気間隔の調整方法については特に限定されるものではなく、変更箇所、変更個数、変更方法、及び変更回数については適宜選択し得る。
【0054】
また、観察撮像装置1は、撮像レンズ5内の少なくとも1つのレンズを偏芯することで製造誤差によって発生する偏芯誤差量を小さくすることも可能に構成されていることが好ましい。ここで、製造誤差によって発生する偏芯誤差量とは、アキシャルコマ、片ボケ、像高誤差、色ずれ等のことをいう。
【0055】
そして、レンズを偏芯するとは、レンズを光軸と垂直な方向に偏芯させたり、レンズを光軸に対して傾けたりしてレンズの配置を調整することを指し、その変更箇所、変更個数、変更方法、変更回数、及び回転中心は任意に決めることが出来る。また偏芯調整に用いられるレンズは1枚でも複数枚でもよく、任意に決めることが出来る。
【0056】
〔条件式の説明〕
本発明に係る観察撮像装置1は、上述の構成に加えて、以下に示す条件式の何れか1つ以上を満たすことが好ましい。
【0057】
(条件式(1))
観察撮像装置1は、以下の条件式満足することが好ましい。
0.10 < Dm/Ds < 0.80 ・・・・・(1)
但し、
Dm:撮像素子6の有効撮像範囲の面積
Ds:断面Sの面積
【0058】
条件式(1)は、撮像素子6の有効撮像範囲の面積と、挿入部2の断面Sの面積との比を規定するための式である。条件式(1)を満足することにより、有効撮像範囲の面積の大きい撮像素子6を効果的に配置することができ、挿入部2の大きさに対して適正な大きさの撮像素子6を選択することができる。
【0059】
条件式(1)の上限を超えると、断面Sの面積に対して撮像素子6の有効撮像範囲が大きくなり、挿入部2に撮像素子6を配置することが困難となる。また条件式(1)の下限を下回ると、断面Sの面積に対して撮像素子6の有効撮像範囲が小さくなり、必要な解像度を得ることが困難となり高性能の点で好ましくない。また、前記撮像素子の有効撮像範囲に対して前記断面Sの面積が大きくなりすぎるため、小型化の点で好ましくない。
【0060】
なお、条件式(1)の下限は0.15であると好ましく、0.20であるとより好ましく、0.25であると更に好ましく、0.30であると更に好ましく、0.35であると更に好ましい。また条件式(1)の上限は0.75であると好ましく、0.70であるとより好ましく、0.65であると更に好ましく、0.60であると更に好ましく、0.55であると更に好ましい。
【0061】
(条件式(2))
観察撮像装置1は、以下の条件式を満足することが好ましい。
-50.00 < fL1/f < -0.01 ・・・・・(2)
但し、
fL1:レンズL1の焦点距離
f :撮像レンズ5の焦点距離
【0062】
条件式(2)は、撮像レンズ5の最も観察被写体側のレンズL1の焦点距離と撮像レンズ5の焦点距離との比を規定するための式である。条件式(2)を満足することで、レンズL1の径方向の大型化を避けながら広角化を達成することができる。
【0063】
条件式(2)の上限を超えると、撮像レンズ5の焦点距離に対してレンズL1の焦点距離が短くなりすぎ、歪曲収差や像面湾曲、コマ収差の発生を招くことから高性能化の点で好ましくない。条件式(2)の下限を下回ると、撮像レンズ5の焦点距離に対してレンズL1の焦点距離が長くなりすぎ、入射瞳位置を撮像レンズ5の観察被写体側にすることが困難となるため、レンズL1の径方向の大型化を招き小型化の点で好ましくない。
【0064】
なお、条件式(2)の下限は-20.00であるとより好ましく、-10.00であると更に好ましく、-7.00であると更に好ましく、-5.00であると更に好ましく、-3.00であると更に好ましい。また条件式(2)の上限は-0.05であるとより好ましく、-0.10であると更に好ましく、-0.15であると更に好ましく、-0.20であると更に好ましく、-0.30であると更に好ましい。
【0065】
(条件式(3))
観察撮像装置1は、以下の条件式(3)を満足することが好ましい。
0.02 < fL2/|fL1| < 20.00 ・・・・・(3)
但し、
fL1:レンズL1の焦点距離
fL2:レンズL1の像側に配置され正の屈折力を有するレンズL2の焦点距離
【0066】
条件式(3)は、撮像レンズ5の最も観察被写体側のレンズL1とレンズL1の像側に配置され正の屈折力を有するレンズL2の焦点距離との比を規定するための式である。最も観察被写体側に負の屈折力を有するレンズL1を配置し、その像側に隣接して正の屈折力を有するレンズL2を配置し、条件式(3)を満足することで、撮像レンズ5の広角化と全長の小型化を両立させることができる。
【0067】
条件式(3)の上限を超えると、レンズL2の焦点距離がレンズL1の焦点距離の絶対値に対して長くなり過ぎるため、レンズL2における収束作用が弱くなり全長を短くすることが困難となるため、小型化の点で好ましくない。条件式(3)の下限を下回ると、レンズL2の焦点距離がレンズL1の焦点距離の絶対値に対して短くなり過ぎるため、球面収差、像面湾曲、コマ収差の発生を招き高性能化の点で好ましくない。
【0068】
なお、条件式(3)の下限は0.08であるとより好ましく、0.15であると更に好ましく、0.25であると更に好ましく、0.35であると更に好ましく、0.45であると更に好ましい。また条件式(3)の上限は5.00であるとより好ましく、3.50であると更に好ましく、2.50であると更に好ましく、2.00であると更に好ましく、1.50であると更に好ましい。
【0069】
(条件式(4))
観察撮像装置1は、以下の条件式を満足することが好ましい。
1.500 < NdN < 2.200 ・・・・・(4)
但し、
NdN:レンズNのd線における屈折率
【0070】
条件式(4)は、撮像レンズ5にレンズL1より像側に配置される少なくとも1枚の負の屈折力を有するレンズNの屈折率を規定するための式である。条件式(4)を満足することで、撮像レンズ5における像面性を良好に補正することができる。
【0071】
条件式(4)の上限を超えると、レンズNの屈折率が高くなり、材料が高価になり低コスト化の点で好ましくない。また、条件式(4)の下限を下回ると、ペッツバール和の補正が困難となり、高性能化の点で好ましくない。
【0072】
なお、条件式(4)の下限は1.510であるとより好ましく、1.520であると更に好ましく、1.530であると更に好ましい。また条件式(4)の上限は2.060であるとより好ましく、2.010であると更に好ましく、1.960であると更に好ましく、1.890であると更に好ましく、1.850であると更に好ましい。
【0073】
条件式(5))
観察撮像装置1 は、以下の条件式を満足することが好ましい。
0.2 < OAL/YY <10.0 ・・・・・(5)
但し、
OAL:レンズL1の観察被写体側面から結像面までの距離
YY :撮像素子6の有効対角長
【0074】
条件式(5)は、レンズL1の観察被写体側面から結像面までの距離と撮像素子6の有効対角長との比を規定するための式である。ここで、高画素化に伴い撮像素子6の有効撮影範囲は大型化していく傾向にあるが、挿入部2を小型化していくためには撮像レンズ5の大きさに対して適正な大きさの撮像素子6を選択する必要がある。条件式(5)を満足することにより、撮像レンズ5の大きさに対して適正な大きさの撮像素子6を配置して挿入部2の小型化を図ることができる。
【0075】
条件式(5)の上限を超えると、撮像素子の有効対角長に対して撮像レンズ5の全長が長くなり過ぎるため、挿入部2に対して撮像レンズを傾けて配置することが困難となり好ましくない。条件式(5)の下限を下回ると、撮像素子6の有効対角長に対して撮像レンズ5の全長が短くなり過ぎるため、高解像度に対応した収差発生量の小さな撮像レンズ5を達成することが困難となり好ましくない。
【0076】
なお、条件式(5)の下限は0.3であるとより好ましく、0.4であると更に好ましく、0.5であると更に好ましく、0.6であると更に好ましく、0.7であると更に好ましい。また条件式(5)の上限は8.0であるとより好ましく、6.0であると更に好ましく、4.0であると更に好ましく、3.0であると更に好ましく、2.0であると更に好ましい。
【0077】
(条件式(6))
観察撮像装置1は、以下の条件式を満足することが好ましい。
0.30 < |fLP|/f < 10.00 ・・・・・(6)
但し、
fLP:樹脂を材料とするレンズの焦点距離
f :撮像レンズの焦点距離
【0078】
条件式(6)は、樹脂レンズの焦点距離と撮像レンズ5の焦点距離との比を規定するための式である。条件式(6)を満たすことにより、樹脂レンズの屈折力を適切にして低コスト化を図りつつ高性能化を図ることができる。また、撮像レンズ5の全長方向の小型化にも効果的となる。撮像レンズ5に複数枚の樹脂レンズが含まれるとき、少なくともいずれか1枚の樹脂レンズが条件式(6)を満足すればよい。より好ましくは、全ての樹脂レンズが条件式(6)を満足することで、より高性能化を図ることが可能となる。
【0079】
条件式(6)は、樹脂を材料とするレンズの屈折力を最適化するための条件である。条件式(6)の上限を超えると、撮像レンズ5の焦点距離に対して樹脂レンズの焦点距離が長くなり過ぎるため樹脂レンズの収差補正能力が不足してしまい、不足する収差の補正を補うためレンズ枚数を増やさなければならず、低コスト化や全長の小型化が達成できなくなり好ましくない。条件式(6)の下限を下回ると、撮像レンズ5の焦点距離に対して樹脂レンズの焦点距離が短くなり過ぎるため、樹脂レンズの収差補正量が過剰となり高性能化が困難となり好ましくない。
【0080】
なお、条件式(6)の下限は0.40であるとより好ましく、0.45であると更に好ましく、0.50であると更に好ましく、0.55であると更に好ましく、0.60であると更に好ましい。また条件式(6)の上限は9.00であるとより好ましく、8.00であると更に好ましく、7.00であると更に好ましく、6.00であると更に好ましく、5.00であると更に好ましい。
【0081】
(条件式(7))
観察撮像装置1 は、以下の条件式を満足することが好ましい。
20.0 < YY/PIT/Fno < 2000.0 ・・・・・(7)
但し、
YY :撮像素子6の有効対角長
PIT:撮像素子6の画素ピッチ
Fno:撮像レンズ5のF値
【0082】
条件式(7)は、撮像素子6の大きさ、画素ピッチ、及び撮像レンズ5のFnoを規定するための式である。条件式(7)を満足することにより、撮像素子6の画素数(YY/PIT)と撮像レンズ5のFnoとの関係を適切にし、少ないレンズ枚数で収差補正を良好に行うことができることから、小型で解像度の高い観察光学系(撮像レンズ5と撮像素子6とを含む光学系)を得ることができる。
【0083】
条件式(7)の上限を超えると、すなわち撮像素子6の画素数に対して撮像レンズ5の
Fnoが小さくなり過ぎると、少ないレンズ枚数で収差補正を良好に行うことが困難になり、解像度の高い撮像レンズを得ようとすると撮像レンズ5の小型化を図ることが困難になるため好ましくない。一方、条件式(7)の数値が下限を下回ると、すなわち、撮像素子6の画素数に対して撮像レンズ5のFnoが大きくなり過ぎると、回折限界によって高周波成分の解像性能が低くなるため、好ましくない。
【0084】
なお、条件式(7)の下限は22.0であるとより好ましく、25.0であると更に好
ましく、30.0であると更に好ましく、35.0であると更に好ましく、40.0であ
ると更に好ましい。また条件式(7)の上限は800.0であるとより好ましく、750.0であるとより好ましく、700.0であると更に好ましく、650.0であると更に好ましく、600.0であると更に好ましく、550.0であると更に好ましい。
【0085】
(条件式(8))
観察撮像装置1は、以下の条件式を満足することが好ましい。
2.0 < L/OAL ・・・・・(8)
但し、
L :挿入部2の挿入方向の長さ
OAL:撮像レンズ5の最も観察被写体側のレンズ面から結像面までの距離
【0086】
条件式(8)は、撮像レンズ5の全長と、挿入部2の挿入方向の長さとの比を規定するための式である。観察撮像装置1は、狭小空間等の撮影を行うために、挿入部2の挿入方向の長さが撮像レンズ5の全長に対してある程度長いことが必要となる。条件式(8)を満たすことにより、挿入部2の挿入方向の長さを撮像レンズ5の全長に対して十分に確保することができるため、狭小空間等の撮影に適した形状とすることができる。
【0087】
条件式(8)の数値が下限を下回ると、撮像レンズ5の全長に対して挿入部2の挿入方向の長さが短くなり過ぎ、狭小空間等の奥行方向の撮影が制限されるため好ましくない。また、条件式(8)の上限に制限はない。しかし、長すぎる挿入部も使用する際に不便となるため、上限は、500.0であることが観察撮像装置1の小型化の点で好ましい。
【0088】
なお、条件式(8)の下限は2.5であるとより好ましく、3.0であると更に好ましく、3.5であると更に好ましく、4.0であると更に好ましく、4.5であると更に好ましい。また条件式(8)の上限は450.0であるとより好ましく、400.0であると更に好ましく、350.0であると更に好ましく、300.0であると更に好ましく、250.0であると更に好ましい。
【0089】
(条件式(9))
観察撮像装置1は、以下の条件式を満足することが好ましい。
0.00 ≦ tan(|β|-|α|) < 2.00 ・・・・・(9)
但し、
α:法線Aと軸上主光線Bとのなす角度
β:撮像レンズ5の最軸外主光線の半画角
【0090】
条件式(9)は、法線Aと軸上主光線Bとのなす角度αと、撮像レンズ5の最軸外主光線の半画角βとの関係を規定するための式である。ここで、撮像レンズ5は上述のとおり挿入部2の断面Sの法線Aに対して傾いて配置されるため、|α|は0より大きな値をとる。条件式(9)を満足することで、撮像レンズ5の傾きと撮像レンズ5の最軸外主光線の半画角との関係を適切にし、挿入部2の挿入方向に撮像レンズ5の死角を作らないようにしつつ、超広角レンズを用いなくとも挿入方向に対して広い撮影範囲を確保することが可能となる。
【0091】
条件式(9)は0以上の値をとることから、撮像レンズ5は最軸外主光線の半画角βよりも傾きαが小さくなるように配置されることとなる。条件式(9)の下限を下回ると、つまり角度αが大きな値になると、半画角βとの関係|β|-|α|において法線Aの方向に対して死角ができることとなり好ましくない。条件式(9)の上限を超えると、挿入方向の軸に対して広い範囲が撮影できなくなるため好ましくない。
【0092】
なお、条件式(9)の上限は1.80であるとより好ましく、1.60であると更に好ましく、1.40であると更に好ましく、1.20であると更に好ましく、1.00であると更に好ましい。
【0093】
(条件式(10))
観察撮像装置1は、以下の条件式を満足することが好ましい。
0.01<(OAL×sin|α|+YY×cos|α|)/DI<5.00
・・・・・・(10)
但し、
OAL:撮像レンズの最も観察被写体側レンズ面から結像面までの距離
α :法線Aと前記軸上主光線Bがなす角度
YY :撮像素子の有効対角長
DI :断面Sの外接円直径
【0094】
条件式(10)は、撮像レンズ5を挿入部2に効率よく配置するための条件を規定する式である。高画素化に伴い撮像素子6の有効撮影範囲が大型化していくが、挿入部2を小型化していくためには挿入部2の内部に配置される撮像レンズ5の大きさに対して適正な大きさの撮像素子6を選択し、撮像レンズ5の傾き量を最適化する必要がある。
【0095】
ここで、図3に、挿入部2に対して撮像レンズ5を傾斜配置した際の角度の関係を模式的に示す。また、YYは上述のように撮像素子6の有効対角長を示しており、図3に示す例では、撮像素子6がその一方の対角線が角度αを含む平面に対して平行になるように配置されている。
【0096】
図3に示すように、OAL×sin|α|とYY×cos|α|の長さの和により疑似的に、挿入部2の直径方向における撮像レンズ5の配置の高さを表すことができる。つまり、条件式(10)は、挿入部2の直径方向に対する撮像レンズ5の占める割合を規定している。したがって、条件式(10)を満足することで、撮像レンズ5を挿入方向に対して傾いて配置する際の配置効率を向上させ、挿入部2の小型化と配置効率の向上との両立を図ることが可能となる。
【0097】
条件式(10)の下限を下回ると、挿入部2の大きさに対する撮像レンズ5の配置効率が低くなり、挿入部2の大型化を招くことになるため好ましくない。また条件式(10)の上限を超えると、挿入部2の大きさに対する撮像レンズ5の配置が物理的に困難となるため好ましくない。
【0098】
また、条件式(10)の下限は0.10であるとより好ましく、0.15であると更に好ましく、0.20であると更に好ましく、0.25であると更に好ましく、0.30であると更に好ましい。また条件式(10)の上限は4.00であるとより好ましく、3.00であると更に好ましく、2.00であると更に好ましく、1.00であると更に好ましく、0.80であると更に好ましい。
【0099】
なお、図3では撮像素子6が角度αを含む平面に対して1つの対角線が平行となるように配置される構成を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、角度αを含む平面に対して撮像素子6の短手方向が平行になるように配置されてもよい。この場合には、角度αを含む平面に沿って撮像素子6の短手方向を配置することができることから、挿入部2内において撮像レンズ5を最も効率よく配置することができる。
【0100】
(条件式(11))
観察撮像装置1は、以下の条件式を満足することが好ましい。
0.00 ≦ tan|γ| < 0.60 ・・・・・(11)
但し、
γ:法線A及び軸上主光線Bのなす角度αと軸上主光線Bとで作られる平面と、撮像素子
6の有効撮影範囲の短手方向とのなす角度
条件式(11)は、撮像レンズ5を傾ける方向と撮像素子6の配置に関する関係を規定するための条件式である。
【0101】
ここで、図4に、法線A及び軸上主光線Bのなす角度αと軸上主光線Bとで作られる平面(法線A及び軸上主光線Bのなす角度αを含む平面)と、撮像装置6と、の配置関係を模式的に示す。また、法線Aと軸上主光線Bとのなす角度αと軸上主光線Bとで作られる平面は、撮像レンズ5が傾く方向における挿入部2の断面を表している。
【0102】
図4(a)に示すように、法線A及び軸上主光線Bのなす角度αを含む平面に対して撮像素子6が傾いて配置されているとき、平面と有効撮影範囲の短手方向とのなす角度がγであり、(b)に示すように、平面と短手方向とが平行となるよう撮像素子6が配置されている場合にはなす角度γ=0である。
【0103】
条件式(11)を満足することにより、撮像レンズ5が傾く方向と、撮像素子6の短手方向とを略同方向とすることができ、挿入部2の小型化ひいては観察撮像装置1の小型化を図ることができる。条件式(11)の上限を超えると、撮像レンズ5が傾く方向と、撮像素子6の短手方向とが同方向にならないため(撮像レンズ5の傾き方向と撮像素子6の短手方向とのなす角度が大きくなり)、挿入部2が大型化してしまい好ましくない。
【0104】
なお、条件式(11)の上限は0.57(γ=約30°)であるとより好ましく、0.50(γ=約26°)であると更に好ましく、0.45(γ=約24°)であると更に好ましく、0.40(γ=約22°)であると更に好ましく、0.35(γ=約19°)であると更に好ましく、0.25(γ=約15°)であると更に好ましく、0.17(=約10°であると更に好ましく、0.10(γ=約5°)であると更に好ましい。
【0105】
<実施形態2>
次に、本発明の他の実施形態に係る観察撮像装置11について図5を参照して説明する。図5は、本発明の他の実施形態に係る観察撮像装置11の一例を示す図である。図5(a)は観察撮像装置11の斜視図であり、(b)は挿入部12の断面Sにおける断面図であり、(c)は角度αを模式的に示す図である。なお、観察撮像装置11の内部に配置される撮像レンズ5の配置位置の説明の簡単化のため、図5(a)及び(b)において破線にて撮像レンズ5を示している。
【0106】
本実施形態に係る観察撮像装置11は図5に示すように、撮像レンズ5の挿入部12における配置位置が実施形態1とは異なり、法線Aと軸上主光線Bとが交わらない(つまり、撮像レンズ5は挿入部12における軸の中心からずれて配置されている)ように撮像レンズ5が配置されている。観察撮像装置11はこの点を除き、実施形態1に記載の観察撮像装置1と同様の構成である。本実施形態では実施形態1と異なる構成のみ説明し、共通の構成については実施形態1と同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0107】
〔撮像レンズの傾斜配置〕
図5に示すように、観察撮像装置11は、狭小空間内において挿入方向に対して傾斜した方向の撮影を行うため、挿入部12の先端部13に、挿入部12の挿入方向に対して撮像レンズ5の撮影方向が傾けられて配置されている。換言すると、挿入部12の断面であって撮像素子6の有効撮影範囲の中心を通る断面のうち、面積が最も小さくなる断面Sの重心位置を通る法線を法線Aとしたとき、レンズL1の観察被写体側面の軸上主光線Bが法線Aに対して傾くように、撮像レンズ5が挿入部2に固定されて配置されている。
【0108】
また、実施形態1に係る観察撮像装置1では挿入部2の断面Sの法線AとレンズL1の軸上主光線Bとが点Pにおいて交わるように撮像レンズ5が配置されていたが、本実施形態に係る観察撮像装置11では図5に示すように法線Aと軸上主光線Bとが交わらない位置に撮像レンズ5が配置されている。このような配置をとることで、観察撮像装置11に例えば照明部や狭小空間内で作業を行うための操作部(何れも図5には不図示)などの挿入部12内への配置が容易になる。
【0109】
また、本実施形態においても実施形態1と同様に、法線Aと軸上主光線Bとの距離が最も小さくなる軸上主光線B上の点を点Pとしたとき、点Pが撮像レンズ5の最観察被写体側面より像側かつ撮像素子6より観察被写体側に存在することが好ましい。なお、本実施形態では法線Aと軸上主光線Bとが交わらないことから、図5(c)に示すように、軸上主光線Bを含み法線Aに対して平行となる平面へ法線Aを射影した射影法線A’と軸上主光線Bとの交点を点Pとしている。
【0110】
また、本実施形態では、挿入部12の挿入方向に対する撮像レンズ5の撮影方向の傾きについて、図5(c)に示すように、軸上主光線Bと射影法線A’とのなす角度を角度αとしている。
【0111】
このように、軸上主光線B上の点Pが撮像素子6より観察被写体側に存在するように撮像レンズ5の撮影方向を傾けて配置することにより、挿入部12の大きさに対して隙間を小さくしながら効率よく撮像レンズ5を配置することができる。
【0112】
<実施例>
次に、実施例を示して本発明に係る観察撮像装置1、11の先端部3に配置される撮像レンズ5の構成を具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例は上述の実施形態1に係る観察撮像装置1における撮像レンズ5の配置関係をもって説明する。以下に挙げる各実施例の光学系(撮像レンズ5)は、例えばデジタルカメラ、ビデオカメラ等の撮像装置(光学装置)に用いられる撮像光学系としての観察光学系であり、特に、狭小空間の内部観察を行うための顕微鏡や内視鏡などの観察撮像装置に好ましく適用することができる。また、各レンズ断面図において、図面に向かって左方が観察被写体側(物体側)であり、右方が像面側である。
【実施例1】
【0113】
まず、図6を参照して本発明の実施例1に係る撮像レンズを説明する。図6は、本発明の実施例1に係る撮像レンズのレンズ構成を示す断面図である。
【0114】
当該撮像レンズは、観察被写体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズL1、正の屈折力を有する第2レンズL2、正の屈折力を有する第3レンズL3、負の屈折力を有する第4レンズL4、正の屈折力を有する第5レンズL5とから構成される。開口絞りは第2レンズL2の物体側面に配置される。
【0115】
以下、レンズの形状を説明する。第1レンズL1は像側面が凹形状の平凹レンズであり、第2レンズL2は両凸レンズであり、第3レンズL3は両凸レンズであり、第4レンズL4は両凹レンズであり、第5レンズL5は物体側が凸形状のメニスカスレンズである。また、実施例1では第1レンズL1から第5レンズL5までの全てのレンズが樹脂レンズである。
【0116】
実施例1の撮像レンズは表7に示すように長さL及び直径DIの観察撮像装置の挿入部にα=45°で配置され、撮像素子はγ=0°で配置される。なお、撮像レンズ及び撮像素子の配置はこれに限定されるものではなく、例えば撮像レンズはα=30°やα=20°などで配置されてもよいし、撮像素子はγ=5°やγ=10°などで配置されてもよく、これは以降の各実施例においても同様である。
【0117】
また、図6に示す「IP」は結像面であり、撮像素子6が配置される。結像面IPの物体側にはカバーガラス等の実質的な屈折力を有さない平行平板を備える。これらの点は、他の実施例で示す各レンズ断面図においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0118】
表1に、実施例1の撮像レンズの面データを示す。表1において、「面番号」は物体側から数えたレンズ面の順番、「r」はレンズ面の曲率半径、「d」はレンズ面の光軸上の距離、「nd」はd線に対する屈折力、「vd」はd線に対するアッベ数を示す。面番号の横に付された「*」は当該レンズ面が非球面形状を有することを示し、「S」は開口絞りを示す。さらに、曲率半径の「∞」は平面を表す。各表中の長さの単位は全て「mm」であり、角度の単位は全て「°」である。
【0119】
表2に、各非球面の非球面係数を示す。当該非球面係数は、各非球面形状を以下の式で定義した時の値である。また、表7に各実施例の諸元値を示し、表8に各条件式の数値を示す。表7におけるfL1~fL7はそれぞれ、第1レンズL1から第7レンズL7の焦点距離を示す。
【0120】
X(Y)=CY2/[1+{1-(1+Κ)・C2Y2}1/2]+A4・Y4+A6・Y6+A8・Y8+A10・Y10+A12・Y12
【0121】
但し、表6において、「E-a」は「×10-a」を示す。また、上記式において、「X」は光軸方向の基準面からの変位量、「C」は面頂点での曲率、「Y」は光軸に垂直な方向の光軸からの高さ、「Κ」はコーニック係数、「An」はn次の非球面係数とする。
【0122】
これらの表に関する事項は他の実施例で示す各表においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0123】
[表1]
面番号 r d nd vd
物体面 ∞ 4.000
1 ∞ 0.300 1.5439 55.88
2* 0.471 0.481
3S* 50.000 0.462 1.5439 55.88
4* -0.888 0.100
5* 0.998 0.537 1.5439 55.88
6* -1.038 0.100
7* -1.153 0.300 1.6613 20.37
8* 1.945 0.100
9* 0.889 0.520 1.5439 55.88
10* 2.618 0.300
11 ∞ 0.400 1.5168 64.20
12 ∞ 0.100
【0124】
[表2]
面番号 k A4 A6 A8 A10 A12 A14
2 -0.8309 1.2183E+0 8.2912E-1 3.6335E+1 -1.5379E+2 -2.2706E-6 -5.3398E-7
3 -10.0000 -2.1240E+0 -5.8410E+0 -1.9426E+2 1.4864E+3 3.0895E-8 2.0113E-8
4 2.6644 -4.2369E+0 2.3617E+1 -1.2639E+2 3.2341E+2 8.2325E+1 -3.0036E+2
5 -10.0000 -2.5307E+0 1.1856E+1 -6.5833E+1 1.6942E+2 -1.5505E+0 1.7853E+1
6 0.3041 3.2582E-2 -1.0323E+1 3.6643E+1 -4.8778E+1 5.3768E+1 -2.7661E+1
7 3.8680 3.4322E-1 -5.1402E+0 3.2049E+0 6.3361E+1 4.7353E+0 -8.0984E+0
8 2.9990 -1.2469E-1 2.9578E-1 -4.0516E+0 9.8905E+0 -5.6130E+0 8.7334E-1
9 -1.9225 -1.7729E-1 -8.0408E-2 5.8687E-1 -2.1235E+0 1.2649E+0 -1.3398E+0
10 -0.8546 -2.2301E-2 -1.3362E+0 3.3310E+0 -5.8360E+0 4.1433E+0 -9.2867E-1
【0125】
また、図7に実施例1の撮像レンズの縦収差図を示す。縦収差図は、図面に向かって左
側から順に、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示す。球面収差を
表す図では、縦軸はFナンバー、横軸にデフォーカスをとり、実線がd線(波長λ=587.6nm)、長破線がC線(波長λ=656.3nm)、短波線がg線(波長λ=43
5.8nm)における球面収差を示す。非点収差を表す図では、縦軸は像高、横軸にデフ
ォーカスをとり、実線がd線に対するサジタル面、破線がd線に対するメリジオナル断面を示す。歪曲収差を表す図では、縦軸は像高、横軸に%を取り、歪曲収差を表す。これらの縦収差図に関する事項は、他の実施例で示す縦収差図においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【実施例2】
【0126】
次に、図8図9を参照して本発明の実施例2に係る撮像レンズを説明する。図8は、本発明の実施例2に係る撮像レンズのレンズ構成を示す断面図である。図9は、実施例2に係る撮像レンズの縦収差図である。
【0127】
当該撮像レンズは、観察被写体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズL1、正の屈折力を有する第2レンズL2、正の屈折力を有する第3レンズL3、負の屈折力を有する第4レンズL4、正の屈折力を有する第5レンズL5、負の屈折力を有する第6レンズL6とから構成される。開口絞りは第2レンズL2の物体側面に配置される。
【0128】
以下、レンズの形状を説明する。第1レンズL1は物体側面が凸形状のメニスカスレンズであり、第2レンズL2は像側に凸形状のメニスカスレンズであり、第3レンズL3は両凸レンズであり、第4レンズL4は両凹レンズであり、第5レンズL5両凸レンズであり、第6レンズL6は物体側に凸形状のメニスカスレンズである。また、実施例2では第1レンズL1から第6レンズL6までの全てのレンズが樹脂レンズである。
【0129】
実施例2の撮像レンズは表7に示す長さL及び直径DIの観察撮像装置の挿入部にα=45°で配置され、撮像素子はγ=0°で配置される
【0130】
表3に実施例2の撮像レンズの面データを示し、表4に各非球面の非球面係数を示す。
【0131】
[表3]
面番号 r d nd vd
物体面 ∞ 8.000
1* 30.000 0.300 1.5439 55.88
2* 0.827 0.473
3S* -2.380 0.561 1.5439 55.88
4* -0.543 0.100
5* 8.108 0.651 1.5439 55.88
6* -1.387 0.112
7* -1.179 0.300 1.6510 21.51
8* 3.059 0.100
9* 1.494 0.508 1.5439 55.88
10* -8.114 0.100
11* 2.383 0.300 1.6510 21.51
12* 1.983 0.251
13 ∞ 0.400 1.5168 64.20
14 ∞ 0.045
【0132】
[表4]
面番号 k A4 A6 A8 A10 A12 A14
1 -0.2985 3.6738E-1 -2.7189E-1 4.5988E-2 3.6446E-2 -7.1519E-4 -6.8962E-10
2 1.0552 4.6778E-1 2.1923E+0 -1.8925E-1 -1.0891E+1 -8.2460E-9 -6.9953E-10
3 8.8450 -1.1689E+0 -2.5852E+0 -4.5606E+1 2.9636E+2 1.0709E-10 2.4216E-11
4 -0.1644 1.4897E-1 -5.5923E-1 8.4186E+0 -2.9357E+1 2.9867E-1 -3.9230E-1
5 10.0000 -1.0083E-1 6.3686E-1 -5.3806E-1 3.7073E-1 -5.6252E-3 2.3317E-2
6 1.7458 -1.7867E-1 -7.9140E-1 1.7299E+0 3.3824E-1 1.9507E-1 -3.6127E-2
7 -7.3384 -1.5339E-1 -6.4502E-1 -3.1011E-1 1.4718E+0 1.7179E-2 -1.0577E-2
8 8.4411 -1.5865E-1 3.0286E-1 -2.9291E-1 1.0399E-2 -1.9892E-3 1.1407E-3
9 -2.5729 -1.2114E-1 -4.5848E-2 1.0068E-1 -4.5891E-2 4.5724E-3 -1.7739E-3
10 -6.2993 3.8951E-1 -4.0341E-1 6.7872E-2 3.1183E-2 5.7659E-3 -1.2141E-3
11 0.5240 -2.2868E-1 -3.7872E-2 1.0667E-1 -2.1951E-2 1.5472E-3 -2.4186E-3
12 0.1204 -4.8331E-2 -2.4289E-1 1.8472E-1 -3.7645E-2 -6.1259E-4 -2.9985E-4
【実施例3】
【0133】
次に、図10図11を参照して本発明の実施例3に係る撮像レンズを説明する。図10は、本発明の実施例3に係る撮像レンズのレンズ構成を示す断面図である。また、図11は、実施例3に係る撮像レンズの縦収差図である。
【0134】
当該撮像レンズは、観察被写体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズL1、負の屈折力を有する第2レンズL2、正の屈折力を有する第3レンズL3、正の屈折力を有する第4レンズL4、正の屈折力を有する第5レンズL5、負の屈折力を有する第6レンズL6と正の屈折力を有する第7レンズL7から構成される。開口絞りは第3レンズL3と第4レンズL4の間に配置される。
【0135】
以下、レンズの形状を説明する。第1レンズL1は物体側面が凸形状のメニスカスレンズであり、第2レンズL2は物体側に凸形状のメニスカスレンズであり、第3レンズL3は物体側に凸形状のメニスカスレンズであり、第4レンズL4は像側に凸形状のメニスカスレンズであり、第5レンズL5は両凸レンズであり、第6レンズL6は両凹レンズであり、第7レンズL7は両凸レンズである。また、実施例3では第5レンズL5及び第7レンズL7の2枚のレンズが樹脂レンズである。
【0136】
実施例3の撮像レンズは表7に示す長さL及び直径DIの観察撮像装置の挿入部にα=45°で配置され、撮像素子はγ=0°で配置される
【0137】
表5に実施例3の撮像レンズの面データを示し、表6に各非球面の非球面係数を示す。
【0138】
[表5]
面番号 r d nd vd
物体面 ∞ ∞
1 11.706 1.000 1.9537 32.32
2 4.850 2.727
3 415.404 0.500 1.5688 56.04
4 2.456 2.832
5 7.536 1.218 1.9537 32.32
6 275.631 0.500
7S ∞ 0.700
8 -15.181 1.272 1.8830 40.81
9 -4.955 0.300
10* 7.850 1.821 1.5533 71.68
11* -8.471 0.413
12 -7.415 0.300 2.0027 19.31
13 7.008 0.300
14* 4.093 2.749 1.5533 71.68
15* -5.025 1.668
16 ∞ 0.700 1.5168 64.20
17 ∞ 1.000
【0139】
[表6]
面番号 k A4 A6 A8 A10 A12 A14
10 -8.6873 -3.4428E-3 5.1418E-6 -7.7574E-4 2.1516E-4 -3.1262E-5 0.0000E+0
11 5.4719 -8.0609E-3 3.2449E-5 -2.9764E-4 5.7982E-5 -5.3481E-6 0.0000E+0
14 -7.6567 6.1786E-3 -8.8641E-4 1.0347E-4 -7.7893E-6 2.2764E-7 0.0000E+0
15 -7.0835 -2.4097E-3 5.3792E-4 -1.4962E-5 -2.6757E-6 1.0881E-7 0.0000E+0
【0140】
[表7]
諸元表
実施例1 実施例2 実施例3
Fno 4.000 4.000 2.060
f 0.816 1.120 2.245
β 60.000 68.798 87.000
PIT(mm) 0.0014 0.0014 0.0050
L 200.000 200.000 200.000
DI φ6.000 φ6.000 φ19.000
Dm(mm2) 4.064 4.064 58.080
Ds(mm2) 28.274 28.274 283.529
OAL 3.700 4.201 20.000
YY 3.084 3.084 11.000
fL1 -0.866 -1.570 -9.349
fL2 1.610 1.169 -4.345
fL3 1.031 2.231 8.106
fL4 -1.054 -1.272 7.871
fL5 2.239 2.363 7.668
fL6 - -25.721 -3.556
fL7 - - 4.567
【0141】
表8に各実施例における各条件式(1)から条件式(11)の値を示す。
[表8]
条件式 実施例1 実施例2 実施例3
(1) 0.144 0.144 0.205
(2) -1.062 -1.402 -4.165
(3) 1.859 0.745 0.867
(4) 1.661 1.651 1.5688
(5) 1.200 1.362 1.818
(6) 1.062 1.044 2.035
(7) 550.714 550.714 1067.961
(8) 54.047 47.604 10.000
(9) 0.268 0.441 0.900
(10) 0.800 0.859 1.154
(11) 0.000 0.000 0.000
【産業上の利用可能性】
【0142】
以上の通り、本発明は、例えば、解像度が高く、人が直接入ることのできない狭小空間の内部観察に好適に利用できる。また、本発明に係る観察撮像装置は、顕微鏡などの微細な被写体の観察に好適である。
【符号の説明】
【0143】
1、11 観察撮像装置
2、12 挿入部
3、13 先端部
4 窓部
5 撮像レンズ(撮像光学系)
6 撮像素子
7 画像処理部
8 照明部
9 表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11