(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】セグメントの継手構造
(51)【国際特許分類】
E21D 11/14 20060101AFI20230419BHJP
【FI】
E21D11/14
(21)【出願番号】P 2019041219
(22)【出願日】2019-03-07
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【氏名又は名称】石井 理太
(72)【発明者】
【氏名】大関 宗孝
(72)【発明者】
【氏名】煙山 史
(72)【発明者】
【氏名】新川 照雄
(72)【発明者】
【氏名】浦澤 康治
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-280390(JP,A)
【文献】特開2017-008653(JP,A)
【文献】特開2002-295189(JP,A)
【文献】特開2007-056554(JP,A)
【文献】特開2004-162416(JP,A)
【文献】特開2016-216892(JP,A)
【文献】実開昭62-085600(JP,U)
【文献】特開2015-140540(JP,A)
【文献】特開2001-262980(JP,A)
【文献】実開昭51-023335(JP,U)
【文献】特開2001-140596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を置いて対向する一対の円弧状の主桁と、該両主桁の両端を接続する継手板とを有する鋼製の外殻を備えてなるセグメントをセグメント周方向に接合する継手であって、互いに接合される一方のセグメントの継手板からセグメント周方向に突出した雄継手と、他方のセグメントの継手板の内側に配置された雌継手とを備え、互いに接合される両セグメントをセグメント幅方向でずれた状態で前記両継手板が互いに突き合わされた状態で両セグメントがセグメント幅方向に相対的にスライド移動されることによって雄継手と雌継手とが互いに係合するようにしたセグメントの継手構造において、
前記雄継手には、前記一方のセグメントの継手板から突出し、前記他方のセグメントの継手板に形成された挿通溝に挿通される雄継手基部と、該雄継手基部に支持された雄側係合体とを備え、
前記雌継手は、前記継手板の裏側に配置され、前記雄側係合体と係合する雌側楔体と、該雌側楔体の後端側が当接される反力受体とを備え、
前記雌側楔体は、
前記継手板上を摺動する楔状の楔本体と、
前記雌側楔体を構成する板材の後方に配置された空隙部とを備え、該空隙部の側方の板材が該楔本体の後方に一体に延出した板バネ状の変形部を形成し、該変形部の後端側が前記反力受け体に支持されていることを特徴とするセグメントの継手構造。
【請求項2】
前記雄側係合体は、前記雄継手基部の側面に突設され、前記雌側楔体は、前記挿通溝の両側縁部に配置されている
請求項1に記載のセグメントの継手構造。
【請求項3】
前記雄側係合体は、前記雄継手基部のスライド方向前方に突出した鈎状に形成され、前記雌側楔体は、前記挿通溝のスライド方向奥側に配置されている
請求項1に記載のセグメントの継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの内部覆工に用いられるセグメント間を連結するセグメントの継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法よるトンネル構築においては、シールド掘削機の後方側で掘削孔の内周面に沿って円弧版状のセグメントを周方向に連結してセグメントリングを組み立て、このセグメントリングをシールド掘削機の進行に合わせて順次トンネル軸方向に連設することによりトンネル内に覆工がなされている。
【0003】
この種のセグメントには、鋼製セグメント、コンクリート中詰め鋼製セグメント、合成セグメント(以下、鋼製セグメント類という)が広く用いられている。
【0004】
この鋼製セグメント類のセグメント間の連結は、主にボルトによって締結するボルト継手が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、主桁や継手板に複雑な切り欠きを設ける必要がある等、構造が複雑化するため大幅なコストアップが避けられないため、鋼製セグメント、コンクリート中詰め鋼製セグメント、合成セグメント等の鋼製セグメント類を使用する場合、未だにセグメント間をボルトによって締結するボルト継手が主流とならざるを得ず、鋼製セグメントやコンクリート中詰め鋼製セグメントに自動組立てに対応する継手を適用できないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、鋼製セグメント、コンクリート中詰め鋼製セグメント、合成セグメント等の鋼製セグメント類の接合に際し、コストアップを極力抑えつつ、自動組立てに対応可能なセグメントの継手構造の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、間隔を置いて対向する一対の円弧状の主桁と、該両主桁の両端を接続する継手板とを有する鋼製の外殻を備えてなるセグメントをセグメント周方向に接合する継手であって、互いに接合される一方のセグメントの継手板からセグメント周方向に突出した雄継手と、他方のセグメントの継手板の内側に配置された雌継手とを備え、互いに接合される両セグメントをセグメント幅方向でずれた状態で前記両継手板が互いに突き合わされた状態で両セグメントがセグメント幅方向に相対的にスライド移動されることによって雄継手と雌継手とが互いに係合するようにしたセグメントの継手構造において、前記雄継手には、前記一方のセグメントの継手板から突出し、前記他方のセグメントの継手板に形成された挿通溝に挿通される雄継手基部と、該雄継手基部に支持された雄側係合体とを備え、前記雌継手は、前記継手板の裏側に配置され、前記雄側係合体と係合する雌側楔体と、該雌側楔体の後端側が当接される反力受体とを備え、前記雌側楔体は、前記継手板上を摺動する楔状の楔本体と、前記雌側楔体を構成する板材の後方に配置された空隙部とを備え、該空隙部の側方の板材が該楔本体の後方に一体に延出した板バネ状の変形部を形成し、該変形部の後端側が前記反力受け体に支持されていることにある。
【0009】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記雄側係合体は、前記雄継手基部の側面に突設され、前記雌側楔体は、前記挿通溝の両側縁部に配置されていることにある。
【0010】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記雄側係合体は、前記雄継手基部のスライド方向前方に突出した鈎状に形成され、前記雌側楔体は、前記挿通溝のスライド方向奥側に配置されていることにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るセグメントの継手構造は、請求項1に記載の構成を具備することによって、構造を簡素化し、コストアップを極力抑えつつ、効率的に組み立てることができるとともに、高い締結力を確保することができ、鋼製セグメント、中詰めコンクリート鋼製セグメント、合成セグメント等の鋼製セグメント類の自動組立てに適応することができる。また、雌側楔体を一枚の板材から構成することができる。
【0012】
さらに、本発明において、請求項2乃至3に記載の構成を具備することによって、様々な鋼製セグメント類の態様に適応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る継手構造の実施態様を示す図である。
【
図2】
図1中の継手構造部分を示す部分拡大分解斜視図である。
【
図3】(a)は同上の雄継手を示す部分拡大平面図、(b)は同部分拡大側面図である。
【
図4】(a)は同上の雄継手を示す部分拡大平面図、(b)は同部分拡大側面図である。
【
図5】(a)は継手構造の締結初期段階を示す拡大断面図、(b)は同係合した状態を示す拡大断面図である。
【
図6】本発明に係る継手構造の他の実施態様を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係るセグメントの継手構造の実施態様を
図1~
図5に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1はセグメントである。
【0015】
セグメント1,1は、間隔を置いて対向する一対の円弧状の主桁2,2と、両主桁2,2の両端を接続する継手板3,3とを有する鋼製の外殻を備えている鋼製セグメント、コンクリート中詰鋼製セグメント、合成セグメント等の鋼製セグメント類であって、セグメント周方向で互いに対向する継手板3,3を互いに突き合わせて連結することにより円環状のセグメントリングが組み立てられるようになっている。
【0016】
尚、本実施例では、組み立てられるセグメントリングを基準として、その周方向をセグメント周方向、セグメントリングの軸方向をセグメント幅方向、セグメントリングの径方向をセグメント厚み方向とし、また、後述する両セグメント1,1のスライド移動における雄継手4の移動を適宜基準にして説明する。
【0017】
この各セグメント1,1間を接合する継手構造は、
図2に示すように、接合される一方のセグメント1の継手板3からセグメント周方向に向けて突出した雄継手4と、他方のセグメント1の継手板3の内側に配置された雌継手5とを備え、両セグメント1,1がセグメント幅方向でずれた状態で雄継手4を雌継手5に挿し込み、両継手板3,3が互いに突き合わされ、その状態で両セグメント1,1がセグメント幅方向に相対的にスライド移動されることによって雄継手4と雌継手5とが互いに係合し、それによりセグメント1,1が連結されるようになっている。
【0018】
雄継手4は、
図3に示すように、一方のセグメント1の継手板3から突出し、他方のセグメント1の継手板3に形成された挿通溝6に挿通される雄継手基部7と、雄継手基部7に支持された雄側係合体8,8とを備えている。
【0019】
雄継手基部7は、平板状に形成され、板厚方向をセグメント厚み方向に向けて継手板3,3より突出した状態に支持されている。
【0020】
雄側係合体8,8は、係合面がセグメント幅方向に対し傾いた配置に雄継手基部7の表面に突設され、雄継手基部7が挿通溝6に挿通されると、雄側係合体8,8と継手板3,3の裏面との間に後述する雌側楔体9,9が挿入されるようになっている。
【0021】
尚、他方のセグメント1には、スライド方向手前側の主桁2に挿通溝6と連通した導入孔10が開口されており、両セグメント1,1のスライド移動によって雄継手4が継手板3の裏側に導入され、その状態で雄継手基部7が挿通溝6に挿通されるようになっている。
【0022】
挿通溝6は、セグメント幅方向のスリット溝状に形成され、板状の雄継手基部7が挿通されるようになっている。
【0023】
雌継手5は、
図4に示すように、他方のセグメント1の継手板3の裏側に配置された雌側楔体9,9と、雌側楔体9,9の後端側が当接される反力受体11とを備え、挿通溝6に挿通された雄継手基部7に支持された雄側係合体8,8が雌側楔体9,9と係合するようになっている。
【0024】
反力受体11は、鋼板等の板材によって構成され、その一端が継手板3の裏面に溶接等によって強固に固定され、他端に一端が主桁2,2に固定された閉鎖板12の他端が溶接等によって固定されている。
【0025】
よって、雌継手5は、継手板3,3、反力受体11、閉鎖板12及び主桁2,2によって囲まれた箱状を成し、その内部に雌側楔体9,9が配置されている。
【0026】
雌側楔体9,9は、鋼板等の金属製板材を持って構成され、楔状の楔本体13と、楔本体13の後方に一体に形成された変形部14とを備えている。
【0027】
また、両雌側楔体9,9は、スペーサー15によって一定間隔をもって互いに平行に配置され、両雌側楔体9,9間に雄継手基部7が挿入されるとともに、各雌側楔体9,9に対し雄継手基部7の表面に突設された雄側係合体8,8が係合するようになっている。
【0028】
楔本体13は、継手板3,3上を摺動する底面と所定の角度θを成す傾斜面13aを有する導入孔側に向けて傾斜した楔形状を成している。
【0029】
変形部14は、雌側楔体9,9を構成する板材の後方部に空隙部16を備えることによって、空隙部16の側方に位置する板材が楔本体13の後端側上縁より一体に延出した板バネ状を成すことによって形成されている。
【0030】
尚、空隙部16の態様は、本実施例に限定されず、例えば、円形、楕円形、V字型等に形成されてもよい。また、変形部14は、円弧状や波形状に形成されてもよい。
【0031】
また、変形部14の後端には、固定部17が支持され、固定部17が継手板3,3又は反力受体11に溶接等によって固定されることによって、変形部14の後端側が反力受体11に支持されるとともに、楔本体13が継手板3,3上を摺動可能な状態で雌側楔体9,9が保持されるようになっている。尚、固定部17を設けず、変形部14の後端を直接反力受体11に支持させてもよい。
【0032】
このように構成されたセグメント1,1の継手構造では、まず、両セグメント1,1がセグメント幅方向でずれた状態で、セグメント周方向で互いに隣り合うセグメント1,1の継手板3,3同士を突合せ配置とする。
【0033】
次に、両セグメント1,1をセグメント幅方向で相対的にスライド移動させ、スライド方向手前側の主桁2,2に開口した導入孔10より雄継手4を継手板3の裏側に導入し、その状態で雄継手基部7が挿通溝6及び雌側楔体9,9間に挿通される。
【0034】
その際、所定の位置までスライド移動するまでは、雄側係合体8,8と雌側楔体9,9とが非接触の状態にあるので、互い反力を受けず円滑にスライド移動することができる。
【0035】
そして、所定の位置までスライド移動が進むと、
図5(a)に示すように、雄側係合体8,8は、雌側楔体9,9の傾斜面13aと接触する。
【0036】
次に、
図5(a)に示す位置から更に両セグメント1,1の相対スライド移動が進むと、スライド移動の進行に伴い雄側係合体8,8からの力を受けて楔本体13が継手板3,3上を摺動しつつ押し込まれ、雄継手4による挿入力が増加する。
【0037】
その際、挿入力の増加に対し変形部14が変形することによって、反力が一定のまま変形が進行し、所定の位置までスライド移動させる。
【0038】
そして、
図5(b)に示すように、雄側係合体8,8が雌側楔体9,9を所定位置まで押し込むと、雄側係合体と雌側継手体とが互いに反力を受けた状態で楔状に係合され、所定の締結力によって両セグメント1,1が連結される。
【0039】
その際、変形部14は、雄継手4に押し込まれて塑性変形し、雄継手4を押し返す反力が低減するとともに、万が一破損しても雄側係合体8,8と雌側継手体とが互いに楔状に強固に係合されるので、締結力が損なわれることがない。
【0040】
尚、雄継手の態様は、上述の実施例に限定されず、例えば、
図6に示すように、雄継手基部20のスライド方向前方に突出した鈎状に形成された雄側係合体21を備えたものであってもよい。尚、上述の実施例と同様の構成には、同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
この場合、挿通溝22は、上述の実施例よりも短く形成され、雌側楔体9は、挿通溝22のスライド方向奥側に配置される。
【符号の説明】
【0042】
1 セグメント
2 主桁
3 継手板
4 雄継手
5 雌継手
6 挿通溝
7 雄継手基部
8 雄側係合体
9 雌側楔体
10 導入孔
11 反力受体
12 閉鎖板
13 楔本体
14 変形部
15 スペーサー
16 空隙部
17 固定部