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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】遠心ファン
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/42 20060101AFI20230419BHJP
   F04D 29/62 20060101ALI20230419BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20230419BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
F04D29/42 H
F04D29/62 F
F04D29/66 L
F04D29/42 N
H02K7/14 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019051249
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020153275
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】奈良 精久
(72)【発明者】
【氏名】津崎 淳
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-173045(JP,A)
【文献】特開平05-280491(JP,A)
【文献】実開昭52-157504(JP,U)
【文献】実開昭55-085599(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/42
F04D 29/62
F04D 29/66
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ケーシングと、
前記第1ケーシングと協働してケーシングを構成する第2ケーシングと、
前記ケーシング内に回転可能に設けられたインペラと、
前記インペラを回転させるモータと、
前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとを結合する複数の支柱と、
を備え、
前記支柱は、前記第1ケーシング側から前記第2ケーシング側へ先細りとなって延びるテーパ部を備え、前記第2ケーシングは、前記テーパ部の周囲を覆う支柱受け部を備え、前記テーパ部と前記支柱受け部との間に弾性部材を介在させ、
前記支柱は、前記第1ケーシングと融合した同一樹脂の一体物であり、前記テーパ部の先端面に固定部を備え、前記固定部は、前記第2ケーシングに設けた貫通孔に挿入した軸部と、前記貫通孔から突出した前記貫通孔よりも大径のカシメ部とからなる遠心ファン。
【請求項2】
第1ケーシングと、
前記第1ケーシングと協働してケーシングを構成する第2ケーシングと、
前記ケーシング内に回転可能に設けられたインペラと、
前記インペラを回転させるモータと、
前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとを結合する複数の支柱と、
を備え、
前記支柱は、前記第1ケーシング側から前記第2ケーシング側へ先細りとなって延びるテーパ部を備え、前記第2ケーシングは、前記テーパ部の周囲を覆う支柱受け部を備え、前記テーパ部と前記支柱受け部との間に弾性部材を介在させ、
前記支柱受け部は、前記テーパ部の外周面と相似形な内周面を有するテーパ凹部を備え、前記テーパ部と前記テーパ凹部との間に、厚さが一様なテーパ筒状の前記弾性部材を配置し、
前記弾性部材の前記第1ケーシング側の端部に、半径方向外側に突出する第1フランジ部を設け、前記第1フランジ部を前記第1ケーシングと前記支柱受け部の端部との間に挟持した遠心ファン。
【請求項3】
前記テーパ部、前記テーパ凹部、および弾性部材は円錐台状をなす請求項2に記載の遠心ファン。
【請求項4】
前記弾性部材の前記第2ケーシング側の端部に、半径方向内側に突出する第2フランジ部を設け、前記第2フランジ部を前記第2ケーシングと前記支柱の端部との間に挟持した請求項2または3に記載の遠心ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠心ファンに係り、特に、下ケーシングに装着したモータの振動が上ケーシングに伝達するのを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
家電機器、OA機器、産業機器の冷却、換気、空調や、車両用の空調、送風などに広く用いられている送風機として、遠心ファンが知られている。従来の遠心ファンとして、ケースが上ケーシングと下ケーシングとからなり、上ケーシングと下ケーシングの間にインペラを収納し、インペラの回転に伴って吸い込み口から吸入した空気を上ケーシングと下ケーシングの間の側面に形成された開口からケースの外側に向けて吹き出す遠心ファンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の遠心ファンにおいて、樹脂製の上ケーシング101と樹脂製の下ケーシング102の結合は、上ケーシング101と下ケーシング102の間に支柱107を介装して行っている。支柱107は樹脂(PBT樹脂で、PBTのGF強化も含む)の射出成形により、上ケーシング101と一体成形で形成され、支柱107の先端部に形成された突起部107aを下ケーシング102のフランジ118に形成した貫通孔119に挿通し、貫通孔119から突出した突起部107aを溶着(例えば、超音波溶着、振動溶着、レーザ溶着、等)や、熱カシメ等をすることで、支柱107と下ケーシング102とが接合されている。下ケーシング102には回路基板112と一体化されたモータ110が装着されている。
【0004】
通常、この種の遠心ファンでは、モータの回転数を変更することで遠心ファンの送風量を調整している。このため、モータを駆動する回転数に応じてモータの振動も変化する。モータの振動は、モータのステータコイルとマグネットとの間で生じる電磁振動であり、この電磁振動が下ケーシングに伝達され、遠心ファンの振動となる。
【0005】
このようなモータの振動を減衰させるために、モータとモータ支持板との間に防振ゴムを介装した送風機が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2の送風機において、駆動用モータ42とモータ支持板44との結合用のフランジ42gは、環状の防振ゴム45を介してモータ支持板44と結合しているため、駆動用モータ42の振動は防振ゴム45によって減衰させることによって、モータ支持板44への振動伝達が抑制される。
【0007】
特許文献1に記載されたような遠心ファンにおけるモータの振動が上ケーシングへ伝達することを抑制する手段として、特許文献2に記載されたような防振ゴムを上下のケーシングの結合箇所に介装することが考えられる。具体的には、上ケーシング101と一体成形で形成された支柱107の外周を環状の防振ゴムで被覆し、上ケーシング101と下ケーシング102との間で防振ゴムを挟んだ状態で上ケーシング101と下ケーシング102を結合することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-155188号公報
【文献】特開2007-198203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のように支柱の外周全域を防振ゴムで覆うと、支柱周りの外径が増加し、支柱周りの外径が吹き出し口の面積を減少させる要因となる。そこで、支柱の下端面と下ケーシングとの間に防振ゴムを介装することが考えられる。しかしながら、そのような構成では、支柱の下端面の僅かな部分にしか防振ゴムを介装することができないため、振動の減衰が不十分となる。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、支柱周りの外径を増加させることなく、下ケーシングに装着したモータの振動が上ケーシングに伝達することを効率よく抑制することができる遠心ファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、第1ケーシングと、前記第1ケーシングと協働してケーシングを構成する第2ケーシングと、前記ケーシング内に回転可能に設けられたインペラと、前記インペラを回転させるモータと、前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとを結合する複数の支柱と、を備え、前記支柱は、前記第1ケーシング側から前記第2ケーシング側へ先細りとなって延びるテーパ部を備え、前記第2ケーシングは、前記テーパ部の周囲を覆う支柱受け部を備え、前記テーパ部と前記支柱受け部との間に弾性部材を介在させ、前記支柱は、前記第1ケーシングと融合した同一樹脂の一体物であり、前記テーパ部の先端面に固定部を備え、前記固定部は、前記第2ケーシングに設けた貫通孔に挿入した軸部と、前記貫通孔から突出した前記貫通孔よりも大径のカシメ部とからなる遠心ファンである。
【0012】
本発明においては、テーパ部と支柱受け部との間に弾性部材を介在させているから、縦方向の振動も横方向の振動も弾性部材によって減衰させることができる。しかも、弾性部材はテーパ部に沿って設けられるので、支柱周りの外径を増加させることなくテーパ部の大きな面積に弾性部材を配置することができる。したがって、下ケーシングに装着したモータの振動が上ケーシングに伝達することを効率よく抑制することができる。
【0013】
また、支柱は、第1ケーシングと融合した同一樹脂の一体物であり、テーパ部の先端面にピン状の突起を備え、突起を第2ケーシングに設けた貫通孔に貫通させ、貫通孔から突出した部分を熱で潰して固定しているから、部品点数を少なくすることができ、かつ組立作業工数を低減することができるので、製造コストを低減することができる。
【0014】
また、本発明は、第1ケーシングと、前記第1ケーシングと協働してケーシングを構成する第2ケーシングと、前記ケーシング内に回転可能に設けられたインペラと、前記インペラを回転させるモータと、前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとを結合する複数の支柱と、を備え、前記支柱は、前記第1ケーシング側から前記第2ケーシング側へ先細りとなって延びるテーパ部を備え、前記第2ケーシングは、前記テーパ部の周囲を覆う支柱受け部を備え、前記テーパ部と前記支柱受け部との間に弾性部材を介在させ、前記支柱受け部は、前記テーパ部の外周面と相似形な内周面を有するテーパ凹部を備え、前記テーパ部と前記テーパ凹部との間に、厚さが一様なテーパ筒状の前記弾性部材を配置し、前記弾性部材の前記第1ケーシング側の端部に、半径方向外側に突出する第1フランジ部を設け、前記第1フランジ部を前記第1ケーシングと前記支柱受け部の端部との間に挟持した遠心ファンである。
【0015】
上記構成の遠心ファンによれば、前記遠心ファンと同等の作用および効果を得ることができるのは勿論のこと、支柱受け部はテーパ部の外周面と相似形な内周面を有するテーパ凹部を備え、テーパ部とテーパ凹部との間に、厚さが一様なテーパ筒状の弾性部材を配置しているから、支柱と支柱受け部との芯合わせを容易に行うことができる。この場合において、テーパ部、テーパ凹部、および弾性部材は円錐台状をなすと好適である。また、弾性部材の第1ケーシング側の端部に、半径方向外側に突出する第1フランジ部を設け、第1フランジ部を第1ケーシングと支柱受け部の端部との間に挟持しているから、上下方向の振動を効率よく減衰させることができる。さらに、弾性部材の第2ケーシング側の端部に、半径方向内側に突出する第2フランジ部を設け、第2フランジ部を第2ケーシングと支柱の端部との間に挟持すれば、第1、第2フランジ部によって上下方向の振動を効率よく減衰させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、支柱周りの外径を増加させることなく、下ケーシングに装着したモータの振動が上ケーシングに伝達することを効率よく抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の遠心ファンの断面図を示した図で、図6におけるA-A線の断面図である。
図2】実施形態の遠心ファンの断面図を示した図で、図6におけるA-B線の断面図である。
図3図2の一部拡大断面図である。
図4】(A)は図2における支柱の箇所の拡大断面図、(B)は弾性部材の変形例を示す断面図である。
図5】(A)は図4に示す弾性部材の平面図、(B)は断面図である。
図6図1に示す上ケーシングの組立前のものを下面側から見た平面図である。
図7図1に示す上ケーシングとインペラを取り外した状態の下ケーシングの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[1]遠心ファンの構成
図1は、本発明の一実施形態の遠心ファン100の断面図である。遠心ファン100は、略円板状をなす上ケーシング(第1ケーシング)110および下ケーシング(第2ケーシング)130を支柱140で結合したケーシング150を備えている。上ケーシング110と下ケーシング130の間には、樹脂製のインペラ120が回転可能な状態で収納されている。なお、実施形態の説明において、構成要素に付する「上」および「下」の記載は、図1図3における方向を示すものであり、実機での遠心ファン100の姿勢を特定するものではない。
【0019】
上ケーシング110の中央には、吸込口111が設けられている。また、上ケーシング110の上面には、軽量化と材料費の低減のための3条の溝(肉盗み部)113が全周を巡るように形成されている。上ケーシング110と下ケーシング130は樹脂の成形品であり、図2に示すように、上ケーシング110と支柱140は一体成形で一体物として形成されている。
【0020】
上ケーシング110と下ケーシング130は、上ケーシング110と下ケーシング130の間に介装した支柱140によって結合されている。なお、支柱140の箇所の構成は後に詳述する。ケーシング150の側面における支柱140を除いた部分は、上ケーシング110と下ケーシング130の間の隙間となっており、この隙間の部分が吹出口112となっている。
【0021】
インペラ120は樹脂製であり、環状のシュラウド121と、主板122と、シュラウド121と主板122の間に配置された複数の羽根123とから構成されている。羽根123は全て同じ形状の後向き羽根で周方向に均等に配置されている。シュラウド121の上面の内周部には、上方へ向けて突出する環状突起部121aが形成されている。一方、上ケーシング110の内周側下面には、環状突起部121aが嵌まる環状溝110aが形成されている。そして、環状突起部121aと環状溝110aによってラビリンスシールが構成されている。
【0022】
図2に示すように、インペラ120は、軟磁性材(例えば、鉄材)からなる環状のロータヨーク124と、回転軸となる金属製のシャフト125と一体に形成されている。すなわち、樹脂製のインペラ120は、ロータヨーク124とシャフト125をインサート成形することで構成されている。
【0023】
インペラ120は、吸込口111の方向に突出したボス126を有し、シャフト125は、インサート成形によってボス126の中に埋め込まれている。ボス126の下面には、軸方向に突出する環状の突起部127が形成されている。ロータヨーク124の内周面には、ロータマグネットとなる環状のマグネット128が接着剤を用いて固定されている。
【0024】
環状のマグネット128の内側(軸中心側)には、隙間を介してステータ160の一部を構成するステータコア161が配置されている。ステータコア161は、電磁鋼板等の薄板状の軟磁性材料を積層したもので、環状の形状を有し、外周に複数の突極が設けられている。ステータコア161には、上下に半割構造とされた樹脂製のインシュレータ162が装着され、各突極には、インシュレータ162を介してステータコイル163が巻かれている。下側のインシュレータ162は、例えば、次に説明する軸受ホルダー170の外周に装着するか、あるいは、下方へ向けて突出するピンを下ケーシング130に形成した貫通孔に貫通させ、貫通孔から突出したピンの先端部を熱カシメ、または赤外線カシメなどの手段で潰すことにより下ケーシング130に取り付けてもよい。
【0025】
下ケーシング130には、金属製(例えば、真鍮)で筒形状を有した軸受ホルダー170がインサート成形によって固定され、軸受ホルダー170の外周にステータコア161が固定されている。軸受ホルダー170の外周面には、フランジ部170a(図3参照)が形成されており、このフランジ部170aの段差の部分を利用してステータコア161が固定されている。
【0026】
ステータコア161、インシュレータ162およびステータコイル163により、ステータ160が構成されている。また、ロータヨーク124およびマグネット128により、ロータ129が構成されている。なおロータ129は、インペラ120と一体化されているので、ロータ129と共にインペラ120が回転する。ステータ160とロータ129により、アウターロータ型のブラシレスDCモータが構成されている。なお、シャフト125は、ボス126の中に埋め込まれているが、ロータヨーク124を中央部に開口部を有するカップ状に形成し、その開口縁部をシャフト125に固定した構成であってもよい。
【0027】
下ケーシング130は、平たい有底筒状の構造を有し、凹部132を有している。凹部132には、回路基板133が収納されている。回路基板133は、下ケーシング130に取り付けられ、ステータコイル163への駆動電流を供給する駆動回路を備えている。下ケーシング130には、コネクタハウジング131が一体成形により一体物として形成されている。コネクタハウジング131には、回路基板133への外部からの電気的な接続を行うための端子ピン134が配置されている。なお、図中符号135は電子部品である。
【0028】
図3に示すように、軸受ホルダー170の内側には、一対の玉軸受181,182が上下方向に離間して装着され、玉軸受181,182により、シャフト125が回転自在な状態で軸受ホルダー170の内側に保持されている。上側の玉軸受181の内輪181aに、ボス126に形成した環状の突起部127が当接している。
【0029】
軸受ホルダー170の内周面には、内側へ向けて突出するフランジ部170bが形成されている。このフランジ部170bと玉軸受181の外輪181bの間には、コイルばね183が装着されている。玉軸受181の内輪181aは、シャフト125に圧入または接着され、上下方向への移動が阻止されている。一方、外輪181bは、軸受ホルダー170に対して移動可能である。そして、外輪181bがコイルばね183によって上方へ向けて付勢されることにより、玉軸受181に予圧が付与されている。
【0030】
また、フランジ部170bの下面には、玉軸受182の外輪182bが当接し、玉軸受182の内輪182aの下面は、シャフト125の下端部に取り付けられたEリング185によって上方へ向けて押圧されている。玉軸受182の外輪182bは、軸受ホルダー170にフランジ部170bに当接するまで圧入され(またはその位置で接着され)、上下方向への移動が阻止されている。一方、内輪182aは、シャフト125に対して移動可能とされている。そして、内輪182aがEリング185によって上方へ向けて付勢されることにより、玉軸受182に予圧が付与されている。なお、内輪182aは、予圧を付与した状態でシャフト125に圧入または接着してもよい。
【0031】
次に、図4図7を参照して支柱140周りの構成について説明する。
図6に示すように、上ケーシング110には半径方向外側へ突出する複数(この実施形態では4個)のフランジ部116が形成され、フランジ部116に支柱140が形成されている。支柱140は、上ケーシング110と融合した同一樹脂の一体物であり、下方へ向けて先細りとなる円錐台状のテーパ部141を有している。テーパ部141の先端面には、ピン状の突起142が形成されている。
【0032】
一方、下ケーシング130には、図7に示すように、上ケーシング110のフランジ部116に位置を合わせて複数のフランジ部136が形成され、フランジ部136には貫通孔137が形成されている。図4(A)に示すように、ピン状の突起142は貫通孔137を貫通し、貫通孔137から突出したピン状の突起142は、溶着(例えば、超音波溶着、振動溶着、レーザ溶着、等)や、熱カシメ等によって潰されてカシメ部144とされ、これによって支柱140と下ケーシング130とが結合されている。
【0033】
また、フランジ部136には、円筒状をなして貫通孔137を取り囲む支柱受け部138が形成されている。支柱受け部138の内周面には、テーパ部141と相似形で円錐台状をなすテーパ凹部139が形成され、テーパ凹部139とテーパ部141との間には、弾性部材190が介装されている。弾性部材190は、テーパ凹部139に挿入しておくだけでもよいが、テーパ凹部139に接着することもできる。
【0034】
図5(A)は弾性部材190を示す平面図、(B)はその断面図である。図5に示すように、弾性部材190は、両端部に開口部191,192を有する厚さが一様な円錐台状をなしている。下側の開口部192にはピン状の突起142が挿通される。弾性部材190の上端部には、半径方向外側に突出する環状の第1フランジ部193が形成され、下端部には半径方向内側に突出する環状の第2フランジ部194が形成されている。このような弾性部材190は、シリコーンゴムやウレタンフォームなどのように柔軟性のある材料で構成されている。弾性部材190の厚さおよび材質は、振動の減衰レベルを考慮して決定される。
【0035】
図4(A)に示すように、弾性部材190の第1フランジ部193は、上ケーシング110の下面と支柱受け部138の上端面に挟持されている。また、弾性部材190の第2フランジ部194は、支柱140のテーパ部141とピン状の突起142との境界に形成された段部143と下ケーシング130の上面とによって挟持されている。
【0036】
[2]遠心ファンの組立方法
次に、図2図4を参照して上記構成の遠心ファン100の組立方法を説明する。
(1)軸受ホルダー170が固定された下ケーシング130に、回路基板133とステータ160とを取り付ける。また、支柱受け部138に弾性部材190を装着する。
(2)下側の玉軸受182を軸受ホルダー170の下方側から圧入してフランジ部170bの下端面に玉軸受182の外輪182bを当接させて装着する。この場合において、外輪182bをフランジ部170bに当接させた後、必要であれば、外輪182bに接着剤を塗布して接着してもよい。
【0037】
(3)ロータ129が装着されたインペラ120と結合したシャフト125に上側の玉軸受181を装着する。具体的には、上側の玉軸受181の内輪181aにシャフト125を圧入し、所定の位置に玉軸受181を装着する。必要であれば、玉軸受181の内輪181aに接着剤を塗布して接着してもよい。
【0038】
(4)次に、コイル183ばねとワッシャ(図示せず)を軸受ホルダー170の上方側から挿入する。
【0039】
(5)コイルばね183とワッシャを軸受ホルダー170内に挿入した後、シャフト125に装着した上側の玉軸受181を軸受ホルダー170の上方側から軸受ホルダー170に挿入すると共に、シャフト125を下側の玉軸受182の内輪182aに挿入し、シャフト125の下端部にEリング185を装着する。
【0040】
(6)これによって、上側の玉軸受181が軸受ホルダー170に装着される。このとき、上側の玉軸受181の外輪181bは、ゆるい状態で軸受ホルダー170に装着される。また、シャフトの下端に装着したEリング185がワッシャ184を介して下側の玉軸受182の内輪182aを押圧することで、下側の玉軸受182の内輪182aに圧力が加わる。また、コイルばね183の弾性力が上側の玉軸受181の外輪181bに加わる。なお、Eリング185を用いずに、内輪182aに上方への圧力を加えた状態で、シャフト125を内輪182aに圧入するか、接着剤を塗布して接着してもよい。
【0041】
(7)上記の組立手順によって、コイルばね183の弾性力がワッシャを介して上側の玉軸受181の外輪181bに加わり、ボス126の下面に形成された環状の突起部127が玉軸受181の内輪181aを押圧することで、玉軸受181に予圧が付与される。また、Eリング185によって下側の玉軸受182の内輪182aを押圧することで、玉軸受182の内輪182aに圧力が加わり、玉軸受182の外輪182bがフランジ部170bに当接することによって玉軸受182に予圧が付与される。
【0042】
(8)次に、支柱140を弾性部材190が装着された支柱受け部138に挿入する。その際に、支柱140のピン状の突起142を下ケーシング130の貫通孔137に貫通させ、貫通孔137から突出したピン状の突起142を加熱して潰し、カシメ部144を形成する。これにより、上ケーシング110が下ケーシング130に結合される。
【0043】
[3]遠心ファンの動作
ステータ160とロータ129を備えたDCブラシレスモータに駆動されてインペラ120が回転すると、その回転に伴って吸込口111から空気がケーシング150の内側に吸い込まれ、吸い込まれた空気は、インペラ120の羽根123の間を通過してインペラ120から半径方向外側に吹き出し、吹出口112からケーシング150の外側に向けて噴出する。
【0044】
その際、DCブラシレスモータが発生する振動が下ケーシング130に伝わるが、支柱140のテーパ部141と支柱受け部138との間に弾性部材190を介在させているから、縦方向の振動も横方向の振動も弾性部材190によって減衰される。しかも、弾性部材190はテーパ部141に沿って設けられているので、支柱140周りの外径を増加させることなく、テーパ部141の大きな面積に弾性部材190を配置することができる。したがって、下ケーシング130に装着したDCブラシレスモータの振動が上ケーシング110に伝達するのを効率よく抑制することができる。
【0045】
特に、上記実施形態では、支柱140を上ケーシング110と融合した同一樹脂の一体物とし、テーパ部141の先端面に形成したピン状の突起142を下ケーシング130に形成した貫通孔137に貫通させ、貫通孔137から突出した部分を熱で潰して固定しているから、部品点数を少なくすることができ、かつ組立作業工数を低減することができるので、製造コストを低減することができる。
【0046】
また、上記実施形態では、支柱受け部138はテーパ部141の外周面と相似形な内周面であるテーパ凹部139を備え、テーパ部141とテーパ凹部139との間に、厚さが一様な円錐台状の弾性部材190を配置しているから、支柱140と支柱受け部138との芯合わせを容易に行うことができる。その結果、環状突起部121aと環状溝110aによって構成するラビリンスシールの位置出し精度を阻害することがない。
【0047】
さらに、上記実施形態では、弾性部材190の上ケーシング110側の端部に、半径方向外側に突出する第1フランジ部193を設け、第1フランジ部193を上ケーシング110と支柱受け部138の端部との間に挟持し、弾性部材190の下ケーシング130側の端部に、半径方向内側に突出する第2フランジ部194を設け、第2フランジ部194を下ケーシング130と支柱140に設けた段部143との間に挟持しているから、第1、第2フランジ部193,194によって上下方向の振動を効率よく減衰させることができる。
【0048】
[4]変形例
上記実施形態では、支柱140の下端面にピン状の突起142を形成し、下ケーシング130の貫通孔137から突出したピン状の突起142の先端を、例えば、赤外線や熱などによって塑性変形(潰して)して下ケーシング130と上ケーシング110を結合しているが、これに代えて、支柱140の下端面の中央に穴を形成し、下ケーシング140の貫通孔137、弾性部材190の開口部192、及び支柱140の穴にタッピングねじを挿通することによって、下ケーシング130と上ケーシング110とを結合する構成であってもよい。
【0049】
上記実施形態では、支柱140を上ケーシング110と一体成形にて形成しているが、上ケーシング110の下面に座刳り穴を形成し、その座刳り穴に別部品の支柱を嵌めて接着などで固定してもよい。同様に、上記実施形態では、支柱受け部138を下ケーシング130と一体成形にて形成しているが、下ケーシング130の上面に座刳り穴を形成し、その座刳り穴に別部品の支柱受け部を嵌めて接着などで固定してもよい。
【0050】
上記の場合、支柱受け部のみを製作する金型を用いることとなるため、支柱受け部の外周面に、乱流発生手段として、表面に小さな凹部を複数形成したボルテックスジェネレーターを容易に形成することができる。すなわち、インペラ120の外周から吹き出された空気流が支柱受け部に衝突した際、支柱受け部の表面からの離脱によって空気流が乱れて大きな渦が発生する場合がある。このような場合、乱流発生手段としてボルテックスジェネレーターを形成し、ボルテックスジェネレーターによって小さな渦を発生させることで、大きな渦の発生を抑制して騒音の増加を抑制することができる。
【0051】
上記実施形態では、支柱140のテーパ部141、支柱受け部138のテーパ凹部139、および弾性部材190を全て円錐台状に構成しているが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、支柱140のテーパ部141を多角錘台状など下方(下ケーシング130側)へ向かって先細りとなるテーパ状に構成し、支柱受け部138のテーパ凹部139および弾性部材190をテーパ部141と相似形の多角錐台状に構成してもよい。
【0052】
上記実施形態では、支柱受け部138の内周面を円錐台状のテーパ凹部139としているが、円筒状に形成し、弾性部材190の外周面を円筒曲面に形成するとともにその内周面をテーパ部141に密着する円錐台状に形成することができる。
【0053】
さらに、第1、第2フランジ部193,194のない弾性部材も本発明の範囲である。この場合、図4(B)に示すように、弾性部材190’は、テーパ部141の上端部からテーパ凹部139の下端部まで延在し、上ケーシング110と支柱受け部138の端部との間と、下ケーシング130と支柱140に設けた段部143との間に隙間195,196が形成される。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、家電機器、OA機器、産業機器の冷却、換気、空調や、車両用の空調、送風などに広く用いられている送風機としての遠心ファンの技術分野で利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
100…遠心ファン、110…上ケーシング(第1ケーシング)、110a…環状溝、111…吸込口、112…吹出口、113…溝(肉盗み部)、116…フランジ部、120…インペラ、121…シュラウド、121a…環状突起部、122…主板、123…羽根、124…ロータヨーク、125…シャフト、126…ボス、127…環状の突起部、128…マグネット、129…ロータ、130…下ケーシング(第2ケーシング)、131…コネクタハウジング、132…凹部、133…回路基板、134…端子ピン、137…貫通孔、138…支柱受け部、139…テーパ凹部、140…支柱、141…テーパ部、142…ピン状の突起、143…段部、144…カシメ部、150…ケーシング、160…ステータ、161…ステータコア、162…インシュレータ、163…ステータコイル、170…軸受ホルダー、170a…フランジ部、170b…フランジ部、181…玉軸受、181a…内輪、181b…外輪、182…玉軸受、182a…内輪、182b…外輪、190…弾性部材、190‘…弾性部材、191…開口部、192…開口部、193…第1フランジ部、194…第2フランジ部、195…隙間、196…隙間。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7