(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】貫通穴防火構造及び耐火材集合体
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20230419BHJP
F16L 5/04 20060101ALI20230419BHJP
H02G 3/22 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
E04B1/94 F
E04B1/94 V
F16L5/04
H02G3/22
(21)【出願番号】P 2019088368
(22)【出願日】2019-05-08
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000119830
【氏名又は名称】因幡電機産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】龍田 佳招
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-187488(JP,A)
【文献】特開2017-225812(JP,A)
【文献】特開2013-096501(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145790(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
F16L 5/04
H02G 3/22
A62C 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物防火区画の境界に位置する壁または床に形成された貫通穴に設けられ、当該壁または床により隔てられた二つの建物防火区画間を防火する貫通穴防火構造であり、
前記貫通穴には、複数の長尺物が隣接して集合し
、隣り合う前記長尺物の間には凹部が存在する長尺物集合体が貫通しており、
前記貫通穴の内部において、前記長尺物集合体に当接し、火災時の熱により膨張する内側耐火材と、
前記貫通穴の内部において、前記内側耐火材から径外方向に離れて位置し、火災時の熱により膨張する外側耐火材と、
前記内側耐火材と前記外側耐火材との間に位置し、火災時に少なくとも前記内側耐火材の膨張開始の時点では形状を保
つことで、前記長尺物集合体へ向かうように内側耐火材を膨張させられ、その後、火災時の熱によって消滅または縮小する支持材と、を備え
、
前記内側耐火材及び前記支持材のそれぞれ一部は前記長尺物集合体の前記凹部に位置する貫通穴防火構造。
【請求項2】
前記外側耐火材は、前記支持材が火災時の熱によって消滅または縮小することを開始した後に、径内方向への膨張を開始する、請求項
1に記載の貫通穴防火構造。
【請求項3】
前記内側耐火材、前記外側耐火材、前記支持材を一体に備えた、請求項1
または2に記載の貫通穴防火構造。
【請求項4】
前記内側耐火材を周方向に分断する分断部を備えた、請求項
3に記載の貫通穴防火構造。
【請求項5】
前記支持材が、火災時に焼失する可燃性材料で形成されている、請求項1~
4のいずれかに記載の貫通穴防火構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の貫通穴防火構造に適用される耐火材集合体であって、建物防火区画の境界に位置する壁または床に形成された貫通穴に挿入して用いられ、当該壁または床により隔てられた二つの建物防火区画間を防火する耐火材集合体であり、
長手方向に延び、火災時の熱により膨張する第1耐火材と、
前記第1耐火材に対向して長手方向に延び、火災時の熱により膨張する第2耐火材と、
前記第1耐火材と前記第2耐火材との間に位置し、前記貫通穴に挿入された状態で火災時において、前記第1耐火材と前記第2耐火材の少なくとも一方の膨張開始の時点では形状を保っており 、その後、火災時の熱によって消滅または縮小する支持材と、を一体に備えた、耐火材集合体。
【請求項7】
前記第1耐火材と前記第2耐火材の少なくとも一方を長手方向に分断する分断部を備えた、請求項
6に記載の耐火材集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物防火区画の境界に位置する壁または床における長尺物の貫通部に適する貫通穴防火構造及び耐火材集合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物防火区画の境界に位置する壁または床における、配管・配線等の長尺物の貫通部には、壁または床に形成された貫通穴と長尺物との隙間を埋めるために耐火材が用いられる。この耐火材は、建物の火災時の熱により膨張することで、貫通穴が有する空間(長尺物が焼失したことにより生じる空間も含む)を埋める。これにより、建物防火区画の境界を越える延焼を防止できる。このような耐火材を用いた耐火構造は、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
ここで、複数の長尺物が建物防火区画の境界を貫通することがある。複数の長尺物が束ねられるように、隣接して集合した長尺物集合体を形成する場合、長尺物集合体の外周面には凹凸が存在することになる。
【0004】
特許文献1に記載の発明では、建物防火区画の境界に設けられた貫通穴における径外側に熱膨張部材が設けられており、径内側には火災時に焼失する充填材が設けられている。
【0005】
しかし、熱膨張部材が径外側にのみ存在することから、貫通穴の径内側領域に着目すると、火災時に熱膨張部材の膨張が到るまでに時間がかかると言える。しかも、長尺物集合体の外周面に存在する凹凸に対して熱膨張部材が速やかに膨張することで、当該凹凸部分における空間の閉塞がなされるものではなかった。このため、長尺物集合体に対して適した構造にはなっていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、長尺物集合体が貫通する貫通穴に適した貫通穴防火構造、及び、これに用いる耐火材集合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、建物防火区画の境界に位置する壁または床に形成された貫通穴に設けられ、当該壁または床により隔てられた二つの建物防火区画間を防火する貫通穴防火構造であり、前記貫通穴には、複数の長尺物が隣接して集合した長尺物集合体が貫通しており、前記貫通穴の内部において、前記長尺物集合体に当接し、火災時の熱により膨張する内側耐火材と、前記貫通穴の内部において、前記内側耐火材から径外方向に離れて位置し、火災時の熱により膨張する外側耐火材と、前記内側耐火材と前記外側耐火材との間に位置し、火災時に少なくとも前記内側耐火材の膨張開始の時点では形状を保っており、その後、火災時の熱によって消滅または縮小する支持材と、を備えた、貫通穴防火構造である。
【0009】
この構成によれば、支持材が、少なくとも内側耐火材の膨張開始の時点では形状を保っていることで、長尺物集合体へ向かうように内側耐火材を膨張させられる。また、支持材が火災時の熱によって消滅または縮小することで、消滅または縮小により生じた空間にも内側耐火材及び外側耐火材を膨張させられる。この結果、貫通穴が閉鎖される。
【0010】
また、前記長尺物集合体において隣り合う長尺物の間には凹部が存在し、前記内側耐火材及び前記支持材のそれぞれ一部は前記凹部に位置するものとできる。
【0011】
この構成によれば、長尺物集合体において隣り合う長尺物の間に凹部が存在していても、内側耐火材を長尺物集合体に近づけられる。
【0012】
また、前記外側耐火材は、前記支持材が火災時の熱によって消滅または縮小することを開始した後に、径内方向への膨張を開始するものとできる。
【0013】
この構成によれば、支持材が消滅または縮小することでできる空間が、膨張した外側耐火材で埋められるため、火災の炎が貫通穴を通過することを防止できる。
【0014】
また、前記内側耐火材、前記外側耐火材、前記支持材を一体に備えたものとできる。
【0015】
この構成によれば、一体構成とすることにより、貫通穴に設置することが容易である。
【0016】
また、前記内側耐火材を周方向に分断する分断部を備えたものとできる。
【0017】
この構成によれば、内側耐火材が周方向に分断されているため、長尺物集合体が有する凹凸に内側耐火材を追随させやすい。
【0018】
また、前記支持材が、火災時に焼失する可燃性材料で形成されているものとできる。
【0019】
この構成によれば、支持材が火災時に焼失することにより、火災前に支持材が設けられていた部分全体に内側耐火材及び外側耐火材を膨張させられる。
【0020】
また本発明は、建物防火区画の境界に位置する壁または床に形成された貫通穴に挿入して用いられ、当該壁または床により隔てられた二つの建物防火区画間を防火する耐火材集合体であり、長手方向に延び、火災時の熱により膨張する第1耐火材と、前記第1耐火材に対向して長手方向に延び、火災時の熱により膨張する第2耐火材と、前記第1耐火材と前記第2耐火材との間に位置し、前記貫通穴に挿入された状態で火災時において、前記第1耐火材と前記第2耐火材の少なくとも一方の膨張開始の時点では形状を保っており 、その後、火災時の熱によって消滅または縮小する支持材と、を一体に備えた、耐火材集合体である。
【0021】
この構成によれば、支持材が、第1耐火材と第2耐火材の少なくとも一方の膨張開始の時点では形状を保っていることで、第1耐火材と第2耐火材の少なくとも一方を支持材と反対方向に膨張させられる。また、支持材が火災時の熱によって消滅または縮小することで、消滅または縮小により生じた空間にも内側耐火材及び外側耐火材を膨張させられる。
【0022】
また、前記第1耐火材と前記第2耐火材の少なくとも一方を長手方向に分断する分断部を備えたものとできる。
【0023】
この構成によれば、第1耐火材と第2耐火材の少なくとも一方が長手方向に分断されているため、複数の長尺物が隣接して集合した長尺物集合体が貫通穴を貫通している場合、長尺物集合体が有する凹凸に、第1耐火材と第2耐火材のうち分断部を備えたものを追随させやすい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の構成によれば、支持材によって長尺物集合体へ向かうように内側耐火材を膨張させられる。また、支持材が火災時の熱によって消滅または縮小により生じた空間にも内側耐火材及び外側耐火材を膨張させられる。よって、長尺物集合体が貫通する貫通穴に適した貫通穴防火構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る貫通穴防火構造が建物防火区画の境界に位置する壁に設けられた例を示す、貫通穴の貫通方向に沿う縦断面図である。
【
図2】前記貫通穴防火構造を示す、貫通穴の貫通方向に直交する断面での縦断面図である。
【
図3】前記貫通穴防火構造であって、貫通穴に対して長尺物集合体が大きい場合を示す、貫通穴の貫通方向に直交する断面での縦断面図である。
【
図4】前記貫通穴防火構造に用いられる耐火材集合体を示す側面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る貫通穴防火構造に用いられる耐火材集合体を示す側面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る貫通穴防火構造に用いられる耐火材集合体を示す側面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る貫通穴防火構造に用いられる耐火材集合体を示す側面図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る貫通穴防火構造につき、貫通穴の貫通方向に直交する断面での縦断面図であって、(a)は内側耐火材と外側耐火材との間に中間耐火材を設けた例を示し、(b)は外側耐火材から分岐した分岐耐火材を設けた例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明につき、一実施形態を取り上げて説明を行う。
【0027】
本実施形態の貫通穴防火構造1は、
図1に示すように、建物防火区画の境界に位置する壁W(または床)に形成された貫通穴Hであって、複数の長尺物L0~L0が隣接して集合した長尺物集合体Lが貫通した貫通穴Hに設けられる。なお、本実施形態では貫通穴Hの断面形状を真円形としているが、四角形等であってもよく、形状が特に限定されるものではない。
【0028】
ここで、
図2または
図3に示すように、本実施形態における各長尺物L0の横断面形状は円形とされている(ただしこれに限定されず、長円形等であってもよい)。このため、長尺物集合体Lの状態では、隣り合う長尺物L0,L0の間に、長手方向に延びる溝状の凹部L1が存在する。凹部L1は、長尺物L0の外周部の湾曲に応じた、略V字形状である。
図2は、貫通穴Hの断面積に対して長尺物集合体Lの占める割合が小さい場合を示し、
図3は、貫通穴Hの断面積に対して長尺物集合体Lの占める割合が大きい場合を示す。
【0029】
この貫通穴防火構造1は、内側耐火材11、外側耐火材12、支持材13を備える。
【0030】
内側耐火材11は、貫通穴Hの内部において長尺物集合体Lを取り巻いており、長尺物集合体Lの外周面に当接する。内側耐火材11は、火災時の熱により膨張する。
【0031】
外側耐火材12は、貫通穴Hの内部において、内側耐火材11から径外方向に離れて位置する。外側耐火材12は内側耐火材11と同様に、火災時の熱により膨張する。本実施形態では、各耐火材11,12が同一の材料から形成されている。各耐火材を形成する材料自体は公知であって、一例としては、熱膨張性黒鉛を樹脂中に含有させた材料が挙げられる。各耐火材11,12の膨張開始温度は120℃~300℃の間で設定されている。
【0032】
支持材13は、内側耐火材11と外側耐火材12との間に位置する。支持材13は、火災時に少なくとも内側耐火材11の膨張開始の時点では形状を保っており、その後、火災時の熱によって消滅または縮小する。本実施形態の支持材13は、火災時に焼失することにより消滅する可燃性材料で形成されている。支持材13に用いることができる可燃性材料は、一例として、天然ゴム(NR)、合成ゴム(IIR,NBR,CR,IR,SBR等)、合成樹脂(ウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、EPDM等)が挙げられる。これら材料を用い、支持材13に柔軟性及び弾性(具体的には、支持材13を貫通穴Hに配置する際に、貫通穴Hの有する空間の形状に応じて変形できる程度の弾性)を持たせるため、成形の際には発泡させて、例えばスポンジ状とすることが望ましい。また、支持材13をからまった繊維の集合体とすることもできる。内側耐火材11の膨張開始の時点で支持材13が形状を保っているように、支持材13の焼失に係る発火温度は、各耐火材11,12の膨張開始温度よりも高く設定されている。支持材13が火災時に消滅または縮小することにより、火災前に支持材13が設けられていた部分の全体または一部が空間に変化する。この空間に内側耐火材11及び外側耐火材12を膨張させられる。この結果、貫通穴Hが閉鎖される。
【0033】
支持材13が、少なくとも内側耐火材11の膨張開始の時点では形状を保っていることで、長尺物集合体Lへ向かうように内側耐火材11を膨張させられる。つまり、形状を保った支持材13が内側耐火材11を径外方向から支える(内側耐火材11に対して突っ張る)ことにより、内側耐火材11を貫通穴Hにおける外側に膨張させずに、支持材13とは反対側で長尺物集合体Lが位置する内側に膨張するように誘導する。
【0034】
その後、支持材13が火災時の熱によって消滅または縮小することで、消滅または縮小により生じた空間にも内側耐火材11及び外側耐火材12を膨張させられる。つまり、外側耐火材12は、支持材13が火災時の熱によって消滅または縮小することを開始した後に、径内方向への膨張を開始する(なお、外側耐火材12と支持材13の形状変化につき、時間的に多少ラップすることは許容される)。支持材13が消滅または縮小することでできる空間が、膨張した外側耐火材12で埋められるため、火災の炎が貫通穴Hを通過して、建物防火区画を越えてしまうことを防止できる。
【0035】
特に、本実施形態のように支持材13が火災時に焼失する場合には、内側耐火材11と外側耐火材12とが共に膨張し、両者が少なくとも一部分において一体化する。このため、貫通穴Hを、膨張した内側耐火材11及び外側耐火材12で隙間なく埋めることができる。このように、支持材13に火災時の熱によって消滅または縮小する材料(特に、焼失する材料)を用いると、各膨張材の膨張を促進することができるため有利である。
【0036】
支持材13は柔軟性及び弾性を有しており、貫通穴Hの形状に応じて変形する。具体的には圧縮する。また弾性は、内側耐火材11を径外方向から支えるための保形性に関連する。このため、内側耐火材11及び支持材13のそれぞれ一部は、
図2または
図3に示すように、長尺物集合体Lにおいて隣り合う長尺物L0,L0の間に存在する凹部L1に、部分的に入り込むように位置する。よって、長尺物集合体Lにおいて隣り合う長尺物L0,L0の間に凹部L1が存在していても、柔軟性及び弾性を有する支持材13が凹部L1に入り込んで、この支持材13に支持された内側耐火材11を長尺物集合体Lに近づけられる。このため、本実施形態の貫通穴防火構造1は、複数の長尺物L0~L0が隣接して集合した、凹部L1を含む凹凸を有する長尺物集合体Lが存在する貫通穴Hに形状を追随させられるので、このような貫通穴Hに対して使用することに適している。なお、内側耐火材11は周方向に分断されていて、
図2または
図3に示すように、分断された個々の内側耐火材11が食い違うようにして凹部L1に入り込んでいる。この分断に関しては、後述の耐火材集合体2において説明する。
【0037】
以上のように貫通穴防火構造1が構成されるが、内側耐火材11、外側耐火材12、支持材13を貫通穴Hに挿入するための施工方法は特に限定されない。例えば、テープ状の内側耐火材11を長尺物集合体Lに巻き付けたり、管状とした内側耐火材11を長尺物集合体Lに差し込んだりすると共に、外側耐火材12を貫通穴Hの内周面に対して接着し、その後、支持材13を貫通穴Hに残った空間に詰め込むことができる。
【0038】
本実施形態では、
図4に示すように、内側耐火材11、外側耐火材12、支持材13を一体に備えた耐火材集合体2を用いている。この耐火材集合体2は、建物防火区画の境界に位置する壁W(または床)に形成された貫通穴Hに挿入して用いられる。一体構成とすることにより、長尺物集合体Lに対して適当な長さの耐火材集合体2を巻き付けるだけで施工できるため、耐火材集合体2を貫通穴Hに設置して、貫通穴防火構造1を構成することが容易であるから、施工性を向上できる。
【0039】
耐火材集合体2は、第1耐火材21、第2耐火材22、支持材23を備える。第1耐火材21は、前記貫通穴防火構造1における、内側耐火材11または外側耐火材12のうち一方に相当し、第2耐火材22は、前記貫通穴防火構造1における、内側耐火材11または外側耐火材12のうち他方に相当する。個々の構成は、前記貫通穴防火構造1における構成と同じである。
【0040】
第1耐火材21は、耐火材集合体2において長手方向に延び、火災時の熱により膨張する。第2耐火材22は、第1耐火材21に厚み方向で対向しており、耐火材集合体2において長手方向に延び、火災時の熱により膨張する。支持材23は、第1耐火材21と第2耐火材22との間に位置する。耐火材集合体2では、支持材23の厚み方向における一方側の面に第1耐火材21が接着され、他方側の面に第2耐火材22が接着されている。
【0041】
第1耐火材21と第2耐火材22の少なくとも一方には、当該耐火材を長手方向に分断する分断部24を備える。分断部24は、耐火材集合体2の長手方向に略等間隔で複数設けられている。各分断部24は、耐火材集合体2の幅方向(
図4における紙面奥行き方向)に延びている。本実施形態では、第1耐火材21を内側耐火材11に用いることを前提として、第1耐火材21に分断部24が形成されている。なお、本実施形態では分断部24はスリット状であって、支持材23にも及んでいる。分断部24は、耐火材集合体2が長手方向で完全に分離してしまわない限り、種々の形状とできる。
【0042】
第1耐火材21を内側耐火材11として貫通穴Hに挿入された状態が、
図2または
図3に示す状態である。長尺物集合体Lが貫通穴Hを貫通している場合、長尺物集合体Lが有する凹部L1を含む凹凸に、分断部24により分断された第1耐火材21の個々の部分が、図示のように一部重なるようにして配置される。なお、第1耐火材21の個々の部分の配置に合わせ、支持材23は適宜圧縮される。このように、凹凸に内側耐火材11(耐火材集合体2における第1耐火材21)を追随させやすい。この追随により、内側耐火材11を長尺物集合体Lに近づけることができるため、火災時に内側耐火材11を、貫通穴Hの径内方向に速やかに膨張させられる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0044】
例えば、一体構成の耐火材集合体2に関し、
図5に示すように、支持材23として可燃性のジェル状体を封入した袋を用い、厚み方向の各面に第1耐火材21と第2耐火材22とを接着して構成することもできる。なお、
図5に示す例では、第1耐火材21に分断部24が形成されている。支持材23としてジェル状体を用いることで、貫通穴Hに挿入した場合に、貫通穴H内部の形状に対して容易に変形するため、追従性を発揮できる。
【0045】
また、
図6または
図7に示すように、分断部24により分断された個々の支持材23に耐火材(第1耐火材21)を分けて設けることもできる。
図6は耐火材(第1耐火材21)が支持材23に露出している場合を示し、
図7は、耐火材(第1耐火材21)が支持材23に埋め込まれている場合を示す。このように、貫通穴防火構造1における外側耐火材12となる第2耐火材22は、貫通穴Hの内周面に沿わせるため、平らなシート状体であることが好ましい。一方、貫通穴防火構造1における内側耐火材11となる第1耐火材21の形状は特に限定されない。
【0046】
また、貫通穴防火構造1に関し、
図8(a)に示すように、内側耐火材11と外側耐火材12との間に中間耐火材14を設けることもできる。この中間耐火材14は、一体構成の耐火材集合体2であっても、相当するものを第1耐火材21と第2耐火材22との間に設けることもできる。
【0047】
また、
図8(b)に示すように、外側耐火材12から分岐して内方に向かう分岐耐火材15を設けることもできる。この分岐耐火材15は、一体構成の耐火材集合体2であっても、相当するものを、第2耐火材22(外側耐火材12に用いる)に対して分岐し、第1耐火材21に向けて斜め方向に延びるように設けることもできる。
【0048】
これらのように中間耐火材14や分岐耐火材15を設けることにより、膨張の起点が増えることになるので、迅速な膨張を生じさせ、貫通穴Hの閉鎖を速やかに行うことができる。
【符号の説明】
【0049】
1 貫通穴防火構造
11 内側耐火材
12 外側耐火材
13 支持材(貫通穴防火構造)
2 耐火材集合体
21 第1耐火材
22 第2耐火材
23 支持材(耐火材集合体)
24 分断部
W 壁
H 貫通穴
L 長尺物集合体
L0 長尺物
L1 凹部