IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クレハエラストマー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-感圧センサシートおよび感圧センサ 図1
  • 特許-感圧センサシートおよび感圧センサ 図2
  • 特許-感圧センサシートおよび感圧センサ 図3
  • 特許-感圧センサシートおよび感圧センサ 図4
  • 特許-感圧センサシートおよび感圧センサ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】感圧センサシートおよび感圧センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20230419BHJP
   G01L 1/14 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
G01L1/14 J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019092895
(22)【出願日】2019-05-16
(65)【公開番号】P2020187053
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-04-29
(73)【特許権者】
【識別番号】591005006
【氏名又は名称】マクセルクレハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(72)【発明者】
【氏名】水谷 武
(72)【発明者】
【氏名】大西 正人
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-088670(JP,A)
【文献】特開2002-090213(JP,A)
【文献】特開2010-043881(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057598(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/133251(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014201434(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00
G01L 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ面に荷重が加わった際に生じる伸長の変位率に応じて発生する静電容量を検出する感圧センサに用いられる感圧センサシートであって、
前記感圧センサシートは、伸長性を有する帯状の第1電極が複数平行に配列された第1電極部と、伸長性を有する帯状の第2電極が複数平行に配列された第2電極部とを有し、前記第1電極と前記第2電極は互いに交差し、交差した部分で接触しており、
前記第1電極および前記第2電極はそれぞれ、誘電層および導電層が接着されて積層した構造を有し、前記第1電極の導電層と前記第2電極の導電層の間に、前記第1電極の誘電層および前記第2電極の誘電層が配置され
前記第1電極および前記第2電極の切断時伸びが200%以上であり、
前記第1電極部および前記第2電極部は、対向配置された一対のゴム製のシート部材間に収容されており、前記第1電極部と前記第2電極部は互いに接着されていないことを特徴とする感圧センサシート。
【請求項2】
前記第1電極の誘電層は前記第1電極の導電層よりも層厚さが小さく、かつ、前記第2電極の誘電層は前記第2電極の導電層よりも層厚さが小さいことを特徴とする請求項1記載の感圧センサシート。
【請求項3】
センサ面に荷重が加わった際に生じる伸長の変位率に応じて発生する静電容量を検出する感圧センサであって、
ハウジングの開口部に感圧センサシートが張られたセンサ本体部と、前記感圧センサシートに配線を介して接続される制御部とを備え、
前記感圧センサシートが請求項1または請求項2記載の感圧センサシートであることを特徴とする感圧センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、感圧センサシートおよびその感圧センサシートを備える感圧センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷重に伴う静電容量の変化を検出する感圧センサが知られている。この感圧センサにより、複数の検出部で静電容量の変化を検出することで、感圧センサの面方向の圧力分布を測定することができる。このような感圧センサは、例えばベッドなどに設置され、就寝者の体圧分布の測定などに用いられる。
【0003】
感圧センサの構造として、複数の表側電極と、複数の裏側電極と、誘電層とを備えたものが知られている。複数の表側電極と複数の裏側電極は互いに直交しており、表側電極と裏側電極の複数の交差部分(重複部分)が検出部となる。
【0004】
例えば、特許文献1には、エラストマー製の誘電層と、誘電層の表側に配置され、エラストマーおよび導電性フィラーを含んで形成された表側電極部と、誘電層の裏側に配置され、エラストマーおよび導電性フィラーを含んで形成された裏側電極部とを有する感圧センサが記載されている。表側電極部は、帯状に形成された複数の表側電極を有し、各電極はX軸方向に延出している。また、裏側電極部は、帯状に形成された複数の裏側電極を有し、各電極はY軸方向に延出している。この感圧センサは、誘電層に加えて、表側電極部および裏側電極部がエラストマーで形成されるので、検出部に荷重が付与されると、表側電極および裏側電極が、誘電層とともに伸長する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-43881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の感圧センサにおいて、誘電層は、表側電極および裏側電極を含むシート全体を覆うように、X軸方向およびY軸方向に延在している。誘電層によって広範囲が覆われることで、各検出部における変形の独立性が損なわれ、対象物の圧力分布を精度良く測定することが困難となるおそれがある。
【0007】
本発明はこのような事情に対処するためになされたものであり、対象物の圧力分布を精度良く測定できる感圧センサシート、およびその感圧センサシートを備える感圧センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の感圧センサシートは、センサ面に荷重が加わった際に生じる伸長の変位率に応じて発生する静電容量を検出する感圧センサに用いられる感圧センサシートであって、上記感圧センサシートは、伸長性を有する帯状の第1電極が複数平行に配列された第1電極部と、伸長性を有する帯状の第2電極が複数平行に配列された第2電極部とを有し、上記第1電極と上記第2電極は互いに交差し、交差した部分で接触しており、上記第1電極および上記第2電極はそれぞれ、誘電層および導電層が積層した構造を有し、上記第1電極の導電層と上記第2電極の導電層の間に、上記第1電極の誘電層および上記第2電極の誘電層の少なくともいずれか一方の誘電層が配置されることを特徴とする。
【0009】
上記第1電極の誘電層は上記第1電極の導電層よりも層厚さが小さく、かつ、上記第2電極の誘電層は上記第2電極の導電層よりも層厚さが小さいことを特徴とする。
【0010】
上記第1電極の導電層と上記第2電極の導電層の間に、上記第1電極の誘電層および上記第2電極の誘電層が配置されることを特徴とする。
【0011】
上記第1電極および上記第2電極の切断時伸びが200%以上であることを特徴とする。
【0012】
上記第1電極部および上記第2電極部は、対向配置された一対のゴム製のシート部材間に収容されており、上記第1電極部と上記第2電極部は互いに接着されていないことを特徴とする。
【0013】
本発明の感圧センサは、センサ面に荷重が加わった際に生じる伸長の変位率に応じて発生する静電容量を検出する感圧センサであって、ハウジングの開口部に感圧センサシートが張られたセンサ本体部と、上記感圧センサシートに配線を介して接続される制御部とを備え、上記感圧センサシートが本発明の感圧センサシートであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の感圧センサシートは、第1電極部の各電極と第2電極部の各電極とがそれぞれ交差しており、各交差部分の静電容量が検出される。このような構成において、第1電極および第2電極はそれぞれ、誘電層および導電層が積層した帯状の構造を有し、第1電極の導電層と第2電極の導電層の間に、少なくともいずれか一方の誘電層が配置されるので、誘電層がシート全体を覆う構成に比べて、各検出部の独立性が確保され、対象物の圧力分布を精度良く測定できる。また、シート全体の伸長性の低下を抑制できる。
【0015】
第1電極の誘電層は第1電極の導電層よりも層厚さが小さく、かつ、第2電極の誘電層は第2電極の導電層よりも層厚さが小さいので、導電層間に介在する誘電層の厚さが小さくなり、変形に伴う静電容量の変化が大きくなり、ひいてはセンサ精度を向上できる。
【0016】
第1電極の導電層と第2電極の導電層の間に、第1電極の誘電層および第2電極の誘電層が配置されるので、変形に伴って第1電極の導電層と第2電極の導電層とが導通することを好適に防止できる。
【0017】
第1電極部および第2電極部は、対向配置された一対のゴム製のシート部材間に収容されることで、各検出部における電極間の密着性が維持され、さらに、第1電極部と第2電極部が互いに接着されていないので、各電極の伸張性を良好に維持できる。また、この構成によれば、検出部において電極が剥がれることによる検出不良を回避できる。
【0018】
本発明の感圧センサは、ハウジングの開口部に本発明の感圧センサシートが張られたセンサ本体部と、該感圧センサシートに配線を介して接続される制御部とを備えるので、対象物の圧力分布を精度良く測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の感圧センサシートを模式的に示す平面図である。
図2図1の感圧センサシートの部分断面図である。
図3】本発明の感圧センサシートの他の例の部分断面図である。
図4】本発明の感圧センサを模式的に示す平面図である。
図5】感圧センサに荷重が加わった状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の感圧センサシートの一例を図1に基づいて説明する。図1は感圧センサシートの平面図である。感圧センサシート1は全体として伸長性を有するシートであり、センサ面に加わる荷重に応じて伸長する。感圧センサシート1は、伸長に伴う静電容量の変化を検出する感圧センサのセンサシートとして使用される。なお、説明の便宜上、図1の平面視において、左右方向をX軸方向とし、前後方向をY軸方向とする。X軸方向およびY軸方向は互いに直交している。
【0021】
図1に示すように、感圧センサシート1は、帯状のX軸電極3A~3Gが平行に配列されたX軸電極部3と、帯状のY軸電極6A~6Gが平行に配列されたY軸電極部6とを有する。X軸電極部3の各電極はX軸方向に延び、Y軸電極部6の各電極はY軸方向に延びており、これらは格子状に並んでいる。X軸電極部3の各電極とY軸電極部6の各電極は交差しており、この交差部分(検出部2)で互いに接触している。図1では検出部2をハッチングで示しており、感圧センサでは検出部2の静電容量が測定される。図1の形態では、X軸方向に延びる電極が7本、Y軸方向に延びる電極が7本形成され、検出部2は49ヶ所形成される。なお、X軸電極3A~3Gは、本発明の「第1電極」に相当し、Y軸電極6A~6Gは、本発明の「第2電極」に相当する。
【0022】
図2に、図1のA-A線断面図を示す。図2に示すように、感圧センサシート1は、上から順に、上側シート部材9、X軸電極部3、Y軸電極部6、下側シート部材10が積層されている。対向配置された一対のシート部材の間に、X軸電極部3およびY軸電極部6が挟まれて収容されている。上側シート部材9の表面がセンサ面1aとなる。図2の断面視において、シート厚さ方向をZ軸方向とする。
【0023】
図2に示すように、X軸電極部3は、誘電層4と導電層5が積層した2層構造を有する。誘電層4と導電層5は接着されている。また、Y軸電極部6は、誘電層7と導電層8が積層した2層構造を有する。誘電層7と導電層8は接着されている。X軸電極部3およびY軸電極部6は、それぞれエラストマーで形成されており、伸長性を有する。図2の形態では、X軸電極部3の導電層5とY軸電極部6の導電層8の間に、Y軸電極部6の誘電層7が配置されている。つまり、X軸電極部3の導電層5とY軸電極部6の導電層8とが誘電層7を挟んで対向するように配置される。このような構成において、検出部に荷重がかかると、X軸電極およびY軸電極が上下のシート部材とともに伸長する。この場合、該検出部2の導電層5、誘電層7、導電層8の伸長率に応じて、該検出部における静電容量が変化する。検出部における静電容量は、1対の導電層とそれらの間に介在する誘電層の伸長率に対して相対的に変化する。
【0024】
本発明の感圧センサシートは、各電極の伸び率を大きくし、誘電層の変形量を大きくすることで、静電容量の変化を検出しやすくすることができる。X軸電極およびY軸電極の切断時伸びは100%以上が好ましく、200%以上がより好ましく、300%以上がさらに好ましい。本発明における「切断時伸び」は、試験片が切断したときの伸びであり、試験前の試験長さに対する比率(%)で表し、JIS K 6251で規定される試験法による。
【0025】
本発明の感圧センサシートにおいて、誘電層は導電層の形状と同様の帯状に形成される。この場合、格子状に並べられた電極間の領域、つまり格子間の領域には誘電層が形成されない。そのため、従来の感圧センサのような、誘電層が格子間の領域を含むシート全体を覆う構成に比べて、各検出部の変形の独立性を高めることができる。その結果、曲面や凹凸面といった複雑な形状の対象物に合わせて、感圧センサシートの形状を追従させることができ、センサ面に加えられた圧力分布を正確に測定することができる。また、感圧センサシート全体の伸長性が低下することを抑制できる。
【0026】
図2において、上側シート部材9とX軸電極部3、X軸電極部3とY軸電極部6、Y軸電極部6と下側シート部材10は、それぞれ接着されていても、接着されていなくてもよい。ただし、検出部において各電極の伸長性が低下することを抑制するため、X軸電極部3とY軸電極部6とは接着されていない方が好ましい。一方、上側シート部材9と下側シート部材10は、密着されることが好ましい。
【0027】
ここで、感圧センサシートの静電容量は、下記式(1)で算出される。
静電容量C = (S/D)× ε ・・・(1)
【0028】
式(1)中、εは誘電率、Sは検出部の表面積、Dは一対の導電層間の距離である。式(1)より、誘電率εが大きいほど、静電容量Cが大きくなる。また、表面積Sが大きいほど、静電容量Cが大きくなり、一対の導電層間の距離Dが小さいほど、静電容量Cが大きくなる。静電容量Cが大きくなることで、荷重に伴う静電容量の変化も大きくなるため、感圧センサの測定精度が高くなる。
【0029】
一対の導電層間の距離Dは、一対の導電層間に介在する誘電層の厚さに相当する。そのため、静電容量Cを大きくするため、導電層間に介在する誘電層の厚さを薄くすることが好ましい。誘電層および導電層の厚さについて、図2に基づいて説明する。なお、図2では、誘電層4および誘電層7の厚さは同じであり、導電層5および導電層8の厚さは同じである。誘電層7の厚さtは、例えば5μm~100μmであり、好ましくは5μm~50μmであり、より好ましくは5μm~30μmである。導電層8の厚さtは、誘電層の厚さtよりも大きいことが好ましく、厚さtは、例えば100μm~500μmであり、好ましくは100μm~300μmである。図2の形態において、より具体的な層厚さは、誘電層の厚さtが15μmであり、導電層の厚さtが150μmである。
【0030】
また、静電容量Cを大きくするため、検出部の表面積、つまり平面視でX軸電極とY軸電極が重なる面積を大きくすることが好ましい。
【0031】
図3には、本発明の感圧センサシートの他の例の部分断面図を示す。図3の形態は、図2の形態と比較して、X軸電極部3のシート厚さ方向の向きが異なっている。図3の感圧センサシート1’では、X軸電極部3の導電層5とY軸電極部6の導電層8の間に、X軸電極部3の誘電層4およびY軸電極部6の誘電層7が配置されている。つまり、X軸電極部3の誘電層4とY軸電極部6の誘電層7とが対向するように配置される。図3の感圧センサシート1’では、各電極が大きく変形した場合であっても、X軸電極部3の導電層5とY軸電極部6の導電層8とが接触しにくい構造となっている。そのため、各電極部の導電層が接触することによって生じる短絡を、好適に防止できる。
【0032】
また、図3の形態では、検出部において、一対の導電層の間に誘電層が2層介在するため、図2の形態に比べて、誘電層の厚さtをより薄くすることが好ましい。図3の形態において、より具体的な層厚さは、誘電層の厚さtが7.5μmであり、導電層の厚さtが150μmである。図2および図3より、検出部において一対の導電層の間に介在する誘電層としての厚さは、10μm~30μmが好ましい。
【0033】
X軸電極およびY軸電極のシート厚さ方向の向きは、図2図3の形態に限らない。例えば、図3の形態においてY軸電極部6の向きを反対にし、Y軸電極部6の誘電層7と下側シート部材10とが対向するように配置してもよい。また、Y軸電極部6が、X軸電極部3よりもZ軸方向で上側(センサ面側)となるように配置してもよい。
【0034】
また、X軸電極部およびY軸電極部を構成する各電極の本数、配置パターンは特に限定されない。複数の検出部を配置する場合、検出部の配置密度は、測定エリア(圧力分布の測定可能なエリア)全面にわたり一定でなくてもよい。例えば、荷重が集中しやすい部分に密とし、荷重が集中しにくい部分を疎となるように検出部を配置してもよい。
【0035】
以下には、各シート部材、各電極の誘電層および導電層について説明する。
【0036】
各シート部材の材質としては、シリコーンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどが用いられる。これらは単独で使用してもよく、または2種以上を混合して用いてもよい。また、各シート部材の厚さはそれぞれ、例えば50μm~500μmであり、好ましくは50μm~300μmである。
【0037】
各電極の誘電層は、エラストマーで形成され、例えば、シリコーンゴム、EPDM、NBR、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどのゴム成分をベースとするゴム組成物が用いられる。上記ゴム成分は単独で使用してもよく、または2種以上を混合して用いてもよい。上記ゴム成分の中でも、伸び率に優れることからシリコーンゴムを用いることが好ましい。
【0038】
誘電層の具体的な組成として、例えば、シリコーンゴム100質量部に対して、シリコーンマスターバッチ20質量部を加えたゴム組成物を用いることができる。
【0039】
各電極の導電層は、ゴム成分に導電性充填剤を配合したゴム組成物からなり、導電性充填剤が層中に分散することで、導電性を有する。導電層に用いられるゴム成分としては、例えば、シリコーンゴム、EPDM、NBR、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどが用いられる。上記ゴム成分は単独で使用してもよく、または2種以上を混合して用いてもよい。各電極における誘電層と導電層は、それぞれベースとなるゴム成分が同じ種類であることが好ましい。
【0040】
導電性充填剤としては、黒鉛粉末、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの固体炭素材料や、銅粉、銀粉、鉄粉などの金属粉末、導電性酸化錫、導電性酸化チタンなどの導電性金属酸化物などが用いられる。これら導電性充填剤は、単独で使用してもよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、固体炭素材料が好ましく、黒鉛粉末、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブがより好ましい。
【0041】
導電性充填剤の配合量(2種以上用いる場合は合計の配合量)としては、ゴム成分100質量部に対して20質量部~70質量部含むことが好ましく、30質量部~50質量部含むことがより好ましい。
【0042】
導電層の具体的な組成として、例えば、導電性シリコーンゴム70質量部(導電性充填材としてカーボンブラックを30~40質量%配合)、シリコーンゴム30質量部、カーボンナノチューブ5質量部を加えたゴム組成物を用いることができる。
【0043】
誘電層および導電層に用いるゴム成分は架橋されていることが好ましい。架橋方法としては、放射線架橋やプレス加硫などの化学架橋を行うことができる。プレス加硫に用いる加硫剤には、2,5-ジメチル-2,5ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンなどの有機過酸化物を用いることができる。
【0044】
放射線架橋には、電子線、γ線、X線などを用いることができる。本発明においては放射線遮蔽層の効果を制御しやすいという観点で電子線照射が好ましい。電子線照射条件としては、加速電圧が50kV~1000kV、好ましくは200kV~500kVであり、照射線量が50kGy~400kGy、好ましくは50kGy~200kGyである。
【0045】
誘電層および導電層には、発明の効果を阻害しない範囲で、その他の添加剤を配合することも可能である。例えば、加硫剤、加硫促進剤、補強剤、老化防止剤、軟化剤、着色剤などを配合できる。
【0046】
本発明の感圧センサシートにおいて、X軸電極およびY軸電極は、同じ構成であることが好ましい。つまり、X軸電極およびY軸電極における、各誘電層の材質および厚さ、各導電層の材質および厚さが同じであることが好ましい。X軸電極およびY軸電極の構成を同じとすることで、感圧センサシートのX軸方向およびY軸方向の伸び率のバランスを保つことができる。また、感圧センサシートの製造も容易となる。
【0047】
以下には、X軸電極およびY軸電極の構成を同じとした場合の感圧センサシートの製造方法について説明する。
【0048】
上述したゴム成分などからなるシート基材を用意し、所定の大きさに裁断して、上側シート部材および下側シート部材を得る。
【0049】
誘電層を構成するゴム組成物を溶剤に溶解し、濾過、脱泡することで誘電層用塗料を得る。溶剤としては、ゴム成分を溶解可能であればよく、例えば、トルエンなどを用いることができる。得られた塗料を、塗工フィルム(例えば、50μm厚のPETフィルム)に帯状に塗工する。塗工方法としては、コンマバー法や、スプレー法、ディッピング法、刷毛塗り法など被膜を形成できるものであれば使用できる。塗工後、誘電層用塗料を乾燥する。乾燥は、例えば90℃の恒温槽内で10分程度行う。
【0050】
導電層を構成するゴム組成物を溶剤に溶解し、濾過、脱泡することで導電層用塗料を得る。溶剤としては、誘電層用塗料と同様の溶剤を用いることができる。得られた導電層用塗料を、誘電層用塗料の場合と同様の条件で、塗工フィルムに塗工して乾燥する。
【0051】
乾燥後の誘電層および導電層を重ね合わせて貼り合せる。貼り合せは圧着ロールなどによって行う。貼り合せた後、電子線照射を上述の照射条件にて行い、各層を架橋させるとともに、誘電層および導電層を接着させる。電子線照射は誘電層側、導電層側のいずれから照射してもよく、膜厚に応じて、片面照射、両面照射、照射回数を適宜調整する。各層を架橋及び接着させることで、X軸電極部およびY軸電極部を構成する電極を得る。
【0052】
下側シート部材の上に、上記で得た電極を格子状に配置して、上側シート部材を重ね合わせる。上側シート部材および下側シート部材を密着させることで、感圧センサシートが得られる。
【0053】
感圧センサシートの製造方法は、上記の製造方法に限定されない。例えば、塗工による成形に代えて、金型成形や押出成形、分出し成形によって各ゴム組成物を帯状に成形してもよく、この場合プレス加硫が適する。塗工による成形の場合、薄膜の長尺化や厚さ精度も良いという点で好ましい。また、乾燥した誘電層用塗料の上に直接、導電層用塗料を塗布して乾燥することで、各層を接着させる方法も採用できる。
【0054】
本発明の感圧センサの一形態を図4に示す。図4は、感圧センサの模式的な平面図である。図4に示すように、感圧センサ11は、平面視矩形状のハウジング16の開口部に、感圧センサシート1が張られたセンサ本体部12と、X軸電極部の各電極に接続された複数の配線13と、Y軸電極部の各電極に接続された複数の配線14と、配線13と配線14が接続された制御部15とを備える。感圧センサシート1は、該シートがX軸方向およびY軸方向にそれぞれ10~30%伸びる程度にテンションを掛けて張られている。制御部15は電源部(図示省略)と静電容量検出部(図示省略)を有している。
【0055】
図5に示すように、所定の電圧が印加された状態で、感圧センサシート1に圧力Fが負荷されると、感圧センサシート1の伸長に伴って検出部2も伸長する。検出部2の伸長率に応じて該検出部2の静電容量が変化する。図5に示すように、センサ本体部12内において、感圧センサシート1のセンサ面1aと反対側には感圧センサシート1が変形可能な空間部17が形成される。本発明の感圧センサは、荷重の大小によらず、感圧センサシート1の幅広い変形(小変形から大変形)に伴う検出が可能である。空間部17のシート厚さ方向における厚さdは、感圧センサの使用用途に基づく変形の程度によって設定できる。例えば、感圧センサシートの大きな変形を想定した感圧センサでは、厚さdは、大きく設定できる。
【0056】
本発明の感圧センサでは、複数の検出部における静電容量を検出することで、圧力分布を測定できる。本発明の感圧センサでは、特に、一対の導電層間に介在する誘電層が導電層の形状に沿って形成され、測定エリアにおいて誘電層が積層されない領域があるので、隣接する検出部の変形が互いに影響されにくい。その結果、個々の検出部における圧力の検出精度が向上し、複雑な形状の対象物の圧力分布も精度よく検出できる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の感圧センサは、柔軟性に優れ、センサ面に加わる圧力を精度良く測定でき、複雑な形状の対象物の圧力分布の測定にも適していることから、体圧や座圧などの測定する着座センサや面センサとして用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 感圧センサシート
2 検出部
3 X軸電極部
4 誘電層
5 導電層
6 Y軸電極部
7 誘電層
8 導電層
9 上側シート部材
10 下側シート部材
11 感圧センサ
12 センサ本体部
13 配線
14 配線
15 制御部
16 ハウジング
17 空間部
図1
図2
図3
図4
図5