(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】柱梁接合方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/30 20060101AFI20230419BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
E04B1/30 K
E04B1/58 508P
(21)【出願番号】P 2019102579
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】土井 公人
(72)【発明者】
【氏名】岡田 光博
(72)【発明者】
【氏名】慶 祐一
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-007950(JP,A)
【文献】特開2015-209705(JP,A)
【文献】特開2018-009355(JP,A)
【文献】特開2017-061818(JP,A)
【文献】特開2005-126973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/16
E04B 1/20
E04B 1/21
E04B 1/24
E04B 1/30
E04B 1/58
E04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート柱が建て込まれ、前記鉄筋コンクリート柱の外周面に備えられるブラケットに鉄骨梁の端部が載置され、前記鉄骨梁の端部の下フランジと前記ブラケットとが接合手段にて接合される柱梁接合方法であって、
前記鉄筋コンクリート柱が、前記ブラケットの鉄筋コンクリート柱側を埋め込む状態で前記ブラケットが予め外周面に一体的に備えられたプレキャストコンクリート製のブラケット付き柱部材として構成され
、
前記ブラケットの鉄筋コンクリート柱側には、前記鉄筋コンクリート柱の外周面に埋め込まれて前記鉄筋コンクリート柱にせん断力を伝達するせん断力伝達部材と、前記鉄筋コンクリート柱の外周面に前記せん断力伝達部材よりも深く埋め込まれて前記鉄筋コンクリート柱に引張力を伝達する引張力伝達部材とが備えられ、
前記引張力伝達部材が、前記ブラケットの上方側部位に配置され、
前記ブラケットには、上フランジと、前記上フランジの鉄筋コンクリート柱側と鉄骨梁側との間の中間部から下方に延びるウェブとが備えられ、
前記ブラケットの前記上フランジは、それの鉄筋コンクリート柱側が前記鉄筋コンクリート柱の外周面に埋め込み自在な埋設板部として構成され、それの鉄骨梁側が前記鉄骨梁を載置自在な載置板部として構成され、
前記ブラケットの前記ウェブの鉄筋コンクリート柱側の表面には、前記せん断力伝達部材としての第1棒状部材が、当該ウェブの前記表面から立ち上がる姿勢で溶接固定され、
前記ブラケットの前記上フランジの前記埋設板部の上面又は下面には、前記引張力伝達部材としての第2棒状部材が、当該埋設板部の上面又は下面に沿わせた姿勢で溶接固定される柱梁接合方法。
【請求項2】
前記ブラケットには、前記鉄骨梁を載置自在な載置板部が備えられ、
前記接合手段が、前記鉄骨梁の前記下フランジと前記ブラケットの前記載置板部とを締め付けて固定自在なボルト及びナットにて構成され、
前記鉄骨梁の前記下フランジ及び前記ブラケットの前記載置板部には、前記ボルトの軸部を挿通自在な挿通孔が備えられ、
前記鉄骨梁の前記下フランジの前記挿通孔と、前記ブラケットの前記載置板部の前記挿通孔との少なくとも一方が、前記鉄骨梁の長さ方向に長い長孔として構成される請求項
1記載の柱梁接合方法。
【請求項3】
前記鉄骨梁は、前記ブラケットに接合される端部の梁せいが、前記ブラケットに接合されない中間部の梁せいよりも小に構成される請求項1
又は2記載の柱梁接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁とを接合するための柱梁接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の柱梁接合方法として、鉄筋コンクリート柱が建て込まれ、前記鉄筋コンクリート柱の外周面に備えられるブラケットに鉄骨梁の端部が載置され、前記鉄骨梁の端部の下フランジと前記ブラケットとが接合手段にて接合される方法が知られている。このような柱梁接合方法では、鉄骨梁の端部と鉄筋コンクリート柱とをピン接合にて接合することができ、鉄筋コンクリート柱に曲げ応力が伝達されるのを回避してスリムな柱断面を実現することができる。
【0003】
特許文献1には、この種の柱梁接合方法において、鉄筋コンクリート柱が、ブラケット固定用の複数本のアンカーボルトが埋設されたプレキャストコンクリート製(PCa製)の柱部材として構成される点が開示されている。この特許文献1の柱梁接合方法では、建方工事において、重機等でPCa製の柱部材を建て込む形態で鉄筋コンクリート柱が建て込まれ、その建て込まれた鉄筋コンクリート柱の外周面のアンカーボルトを使用し、鉄筋コンクリート柱の外周面に対して位置調整を行いながらブラケットが固定される。そして、そのブラケットに鉄骨梁の端部が載置され、鉄骨梁の端部の下フランジとブラケットとがボルト及びナット(接合手段の一例)にて接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の柱梁接合方法では、鉄筋コンクリート柱をPCa柱部材で構成する分、建方工事において作業性を向上させて省人化と短工期化が図られているが、作業性を更に向上させて更なる省人化と短工期化を図ることが望まれている。
ちなみに、この特許文献1記載の柱梁接合方法では、鉄筋コンクリート柱の外周面に埋設された比較的長尺なアンカーボルトにより、引張力だけでなく、せん断力も、ブラケットから鉄筋コンクリート柱に伝達するので、比較的長尺なアンカーボルトの本数が多くなり、コスト面で不利になる。また、柱内部の納まり(柱断面)も複雑になり、PCa柱部材の製作時にアンカーボルトと柱鉄筋との干渉を避けるのに手間がかかるという不都合もある。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、建方工事において作業性を更に向上させて更なる省人化と短工期化を図ることができる柱梁接合方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、鉄筋コンクリート柱が建て込まれ、前記鉄筋コンクリート柱の外周面に備えられるブラケットに鉄骨梁の端部が載置され、前記鉄骨梁の端部の下フランジと前記ブラケットとが接合手段にて接合される柱梁接合方法であって、
前記鉄筋コンクリート柱が、前記ブラケットの鉄筋コンクリート柱側を埋め込む状態で前記ブラケットが予め外周面に一体的に備えられたプレキャストコンクリート製のブラケット付き柱部材として構成され、
前記ブラケットの鉄筋コンクリート柱側には、前記鉄筋コンクリート柱の外周面に埋め込まれて前記鉄筋コンクリート柱にせん断力を伝達するせん断力伝達部材と、前記鉄筋コンクリート柱の外周面に前記せん断力伝達部材よりも深く埋め込まれて前記鉄筋コンクリート柱に引張力を伝達する引張力伝達部材とが備えられ、
前記引張力伝達部材が、前記ブラケットの上方側部位に配置され、
前記ブラケットには、上フランジと、前記上フランジの鉄筋コンクリート柱側と鉄骨梁側との間の中間部から下方に延びるウェブとが備えられ、
前記ブラケットの前記上フランジは、それの鉄筋コンクリート柱側が前記鉄筋コンクリート柱の外周面に埋め込み自在な埋設板部として構成され、それの鉄骨梁側が前記鉄骨梁を載置自在な載置板部として構成され、
前記ブラケットの前記ウェブの鉄筋コンクリート柱側の表面には、前記せん断力伝達部材としての第1棒状部材が、当該ウェブの前記表面から立ち上がる姿勢で溶接固定され、
前記ブラケットの前記上フランジの前記埋設板部の上面又は下面には、前記引張力伝達部材としての第2棒状部材が、当該埋設板部の上面又は下面に沿わせた姿勢で溶接固定される点にある。
【0008】
本構成によれば、建方工事において、重機等でブラケット付き柱部材を建て込む形態で鉄筋コンクリート柱を建て込み、その建て込まれた鉄筋コンクリート柱の外周面のブラケットに鉄骨梁の端部を載置し、鉄骨梁の端部の下フランジとブラケットとを接合手段にて接合する。そのため、建方工事において鉄筋コンクリート柱の外周面にブラケットを固定する作業を無くすことができる。よって、建方工事において作業性を更に向上させて更なる省人化と短工期化を図ることができる
【0010】
更に、本構成によれば、鉄筋コンクリート柱の外周面に埋め込まれて鉄筋コンクリート柱にせん断力を伝達するせん断力伝達部材として、鉄筋コンクリート柱の外周面にせん断力伝達部材よりも深く埋め込まれて鉄筋コンクリート柱に引張力を伝達する引張力伝達部材に比べて、長さの短い部材を用いることができる。よって、鋼材量等を削減してコストダウンを図ることができるとともに、柱内部の納まり(柱断面)を単純化してブラケット付き柱部材の製作に関する作業性も向上することができる。更に、引張力伝達部材が、引張力が最も作用するブラケットの上方側部位に配置されるので、鉄筋コンクリート柱に引張力を適切に伝達することができる。
【0012】
また、本構成によれば、ブラケットのウェブの鉄筋コンクリート柱側の面には、せん断力伝達部材としてのスタッド等の第1棒状部材の端部の縁部を溶接する等により、せん断力に耐え得るように第1棒状部材を適切に溶接固定することができる。また、ブラケットの上フランジの鉄筋コンクリート柱側の埋設板部の上面又は下面には、引張力伝達部材としての第2棒状部材を沿わせて、その端部から所定長さの範囲の外周面を溶接する等により、引き抜き力に耐え得るように第2棒状部材を適切に溶接固定することができる。更に、ブラケットの上フランジの鉄骨梁側の載置板部には、鉄骨梁を適切に載置させることができる。よって、鉄筋コンクリート柱の外周面で鉄骨梁の端部が載置されるブラケットを効率良く構成することができる。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、前記ブラケットには、前記鉄骨梁を載置自在な載置板部が備えられ、
前記接合手段が、前記鉄骨梁の前記下フランジと前記ブラケットの前記載置板部とを締め付けて固定自在なボルト及びナットにて構成され、
前記鉄骨梁の前記下フランジ及び前記ブラケットの前記載置板部には、前記ボルトの軸部を挿通自在な挿通孔が備えられ、
前記鉄骨梁の前記下フランジの前記挿通孔と、前記ブラケットの前記載置板部の前記挿通孔との少なくとも一方が、前記鉄骨梁の長さ方向に長い長孔として構成される点にある。
【0014】
本構成によれば、建方工事において、建て込まれた鉄筋コンクリート柱の外周面のブラケットの載置板部に鉄骨梁の端部を載置し、鉄骨梁の端部の下フランジとブラケットの載置板部とを接合手段としてのボルト及びナットにて締め付けることで、鉄骨梁の端部とブラケットとを接合することができる。
このとき、接合手段としてのボルトの軸部が挿通される鉄骨梁の下フランジの挿通孔とブラケットの載置板部のボルト用の挿通孔との少なくとも一方が、鉄骨梁の長さ方向に長い長孔として構成されるので、その長孔に沿って、鉄骨梁の下フランジとブラケットの載置板部との鉄骨梁の長さ方向での相対位置を調整することができる。
よって、鉄筋コンクリート柱として、ブラケットが予め外周面に一体的に備えられたプレキャストコンクリート製のブラケット付き柱部材を使用しながらも、鉄骨梁の端部を適切な位置に簡単に配置することができる。また、当該長孔は、建物の使用開始後において柱梁仕口部の変形を吸収する融通としても機能させることができる。
【0015】
本発明の第3特徴構成は、前記鉄骨梁は、前記ブラケットに接合される端部の梁せいが、前記ブラケットに接合されない中間部の梁せいよりも小に構成される点にある。
【0016】
本構成によれば、鉄骨梁の端部の梁せいを中間部の梁せいよりも小にすることで、鉄骨梁から鉄筋コンクリート柱に曲げ応力が伝達されるのを一層抑制して更にスリムな柱断面を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の柱梁接合方法の実施形態を図面に基づいて説明する。
この柱梁接合方法は、
図1及び
図2に示すように、鉄骨梁3の端部3Aと鉄筋コンクリート柱1とをピン接合にて接合する方法であり、鉄筋コンクリート柱1が建て込まれ、その鉄筋コンクリート柱1の外周面に備えられる鉄骨製のブラケット2に鉄骨梁3の端部3Aが載置され、その鉄骨梁3の端部3Aの下フランジ32とブラケット2とが接合手段4(
図2参照)にて接合される。この接合状態では、鉄骨梁3の端部3Aの端面と鉄筋コンクリート柱1の外周面との間に隙間S1が形成される。鉄骨梁3の上には、鉄筋コンクリート製のスラブ5(
図2参照)が構築される。
【0019】
本実施形態では、鉄骨梁3は、その端部3Aの下方側にブラケット2の全体を内部に配置可能な凹部S2を形成する状態で、ブラケット2に接合される端部3Aの梁せいHaが、ブラケット2に接合されない中間部3Bの梁せいHbよりも小に構成される。鉄骨梁3は、上フランジ31、端部3Aの下フランジ32、中間部3Bの下フランジ33、ウェブ34、縦スチフナ35,36等を一体的に備えて構成される。そのため、鉄骨梁3の端部3Aと鉄筋コンクリート柱1との接合状態で、鉄骨梁3から鉄筋コンクリート柱1に曲げ応力が伝達されるのを抑制できるとともに、ブラケット2が鉄骨梁3の下面から下方に突出するのを回避して柱梁仕口部の仕上げ等を納まり良く構成することができる。
鉄筋コンクリート柱1は、
図3に示すように、鉄骨梁3の長さ方向Xを長辺方向とする長方形断面のスリムな四角柱状に構成されている。
【0020】
そして、この柱梁接合方法では、
図1~
図3に示すように、鉄筋コンクリート柱1が、ブラケット2の鉄筋コンクリート柱1側を埋め込む状態でブラケット2が予め外周面に一体的に備えられたプレキャストコンクリート製のブラケット付き柱部材Mとして構成される。ブラケット付き柱部材Mは、製作工場や敷地内の製作サイト等にて建方工事に先立って製作される。
そのため、建方工事において鉄筋コンクリート柱1の外周面にブラケット2を固定する作業を無くすことができ、建方工事の作業性を更に向上させて更なる省人化と短工期化を図ることができる。
【0021】
ブラケット付き柱部材Mにおいて、ブラケット2の鉄筋コンクリート柱1側には、鉄筋コンクリート柱1の外周面に鉄骨梁3の長さ方向Xに沿って埋め込まれて鉄筋コンクリート柱1にせん断力を伝達するせん断力伝達部材21と、鉄筋コンクリート柱1の外周面に鉄骨梁3の長さ方向Xに沿ってせん断力伝達部材21よりも深く埋め込まれて鉄筋コンクリート柱1に引張力を伝達する引張力伝達部材22とが備えられている。図示例では、引張力伝達部材22の埋め込み深さは、長方形断面の鉄筋コンクリート柱1の短辺寸法よりも大となっている(
図3参照)。
【0022】
せん断力伝達部材21は、ブラケット2の鉄筋コンクリート柱1側における上下中間部位及び下方側部位に配置される複数本のスタッドボルト21A(第1棒状部材の一例)にて構成される。
引張力伝達部材22は、ブラケット2の鉄筋コンクリート柱1側における上方側部位に配置される複数本のアンカーボルト22A(第2棒状部材の一例)にて構成される。アンカーボルト22Aは、引張力が最も作用するブラケット2の上方側部位から鉄筋コンクリート柱1に引張力を適切に伝達する。
【0023】
具体的には、ブラケット2には、略水平な上フランジ24と、上フランジ24の鉄筋コンクリート柱1側と鉄骨梁3側との間の中間部から鉄筋コンクリート柱1の外周面に沿う姿勢で下方に延びるウェブ25とを一体的に有するブラケット本体23が備えられる。ブラケット本体23は、梁幅方向Yに沿うH型鋼の下フランジを切断除去したカットT型鋼等から構成される。このブラケット本体23には、上フランジ24の鉄骨梁3側の下面とウェブ25の鉄骨梁3側の面とに亘る縦姿勢の補強板26が溶接固定される。補強板26は、ブラケット本体23における左右中央部(鉄骨梁3の幅方向Y(
図3参照)の中央部)に配置される。
【0024】
ブラケット本体23の上フランジ24は、それの鉄筋コンクリート柱1側が鉄筋コンクリート柱1の外周面に埋め込み自在な埋設板部24Aとして構成され、それの鉄骨梁3側が鉄骨梁3を上面に載置自在な載置板部24Bとして構成される。なお、
図2に示すように、ブラケット本体23のウェブ25は、それの鉄骨梁3側の面が鉄筋コンクリート柱1の外周面と面一になる状態で略全体が鉄筋コンクリート柱1の外周面に埋め込まれる。
【0025】
図3に示すように、上フランジ24の鉄筋コンクリート柱1側の埋設板部24Aの左右両側部(鉄骨梁3の幅方向Yの両側部)には、鉄筋コンクリート柱1の外周面に埋め込まれた状態で鉄筋コンクリート柱1の柱主筋11との干渉を回避するための切り欠き24bが形成される。
そして、この埋設板部24Aの上面には、引張力伝達部材22としての複数本のアンカーボルト22Aが、当該埋設板部24Aの上面に沿わせた姿勢で溶接固定される。アンカーボルト22Aは、その端部から軸方向に沿って所定長さ範囲に亘って外周面を埋設板部24Aの上面と溶接する等により、引き抜き力に耐え得るように適切に溶接固定される。本実施形態では、一対のアンカーボルト22Aが、左右方向(鉄骨梁3の幅方向Y)で間隔を空けて平行に並ぶ状態で備えられる。
【0026】
図1に示すように、ブラケット本体23のウェブ25の鉄筋コンクリート柱1側の面には、せん断力伝達部材21としての複数本のスタッドボルト21Aが、当該ウェブ25の鉄筋コンクリート柱1側の面から立ち上がる姿勢で溶接固定される。スタッドボルト21Aは、その端部の縁部をウェブ25の鉄筋コンクリート柱1側の面に溶接する等により、せん断力に耐え得るように適切に溶接固定される。本実施形態では、左右方向(鉄骨梁3の幅方向Y)で間隔を空けて平行に並ぶ一対のスタッドボルト21Aの複数組(図示例では4組)が上下方向に間隔を空けて備えらえる。各スタッドボルト21Aは、鉄筋コンクリート柱1の外周面に埋め込まれた状態で鉄筋コンクリート柱1の柱主筋11と干渉しないように、ブラケット本体23のウェブ25の鉄筋コンクリート柱1側の面における左右両側部(鉄骨梁3の幅方向Yの両側部)から外れた中央側に配置される。
【0027】
接合手段4は、鉄骨梁3の端部3Aの下フランジ32とブラケット2の載置板部24Bとを締め付けて固定自在なボルト41及びナット42にて構成される。
鉄骨梁3の端部3Aの下フランジ32の左右の二箇所、及び、ブラケット2の載置板部24Bの左右の二箇所には、ボルト41の軸部を上下方向に沿って挿通自在な挿通孔31a,24aが貫通形成されている。
【0028】
本実施形態では、鉄骨梁3の端部3Aの下フランジ32の挿通孔31a(一方の挿通孔31a)が、鉄骨梁3の長さ方向Xに長い長孔として構成され、ブラケット2の載置板部24Bの挿通孔31a(他方の挿通孔24a)がボルト41の軸部より僅かに大径の真円孔として構成される。
ちなみに、上記とは逆に、一方の挿通孔31aが真円孔として構成され、他方の挿通孔24aが上述の長孔として構成されていたり、両方の挿通孔31a,24aが上述の長孔として構成されていてもよい。要するに、両挿通孔31a,24aのうちの少なくとも一方が鉄骨梁3の長さ方向Xに長い上述の長孔として構成されていればよい。
【0029】
この柱梁接合方法の具体的な手順(工程)としては、
図1に示すように、まず、建方工事において、重機等で揚重してブラケット付き柱部材Mを建て込む形態で鉄筋コンクリート柱1を建て込む。次いで、建て込まれた鉄筋コンクリート柱1の外周面のブラケット2の載置板部24Bの上面に鉄骨梁3の端部3Aを載置する。
その後、鉄骨梁3の長さ方向Xに長い長孔として構成された鉄骨梁3の端部3Aの挿通孔31aに沿って、鉄骨梁3の端部3Aの下フランジ32とブラケット2の載置板部24Bとの相対位置を調整しつつ、鉄骨梁3の端部3Aの下フランジ32とブラケット2の載置板部24Bとを接合手段4としてのボルト41及びナット42にて締め付ける。
このようにして、鉄骨梁3の端部3Aと鉄筋コンクリート柱1とを適切な姿勢で簡単に接合することができ、建方工事の更なる省人化と短工期化を図ることができる。
【0030】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0031】
(1)上記実施形態では、アンカーボルト22A(第2棒状部材)が、ブラケット2の上フランジ24の埋設板部24Aの上面に沿わせた姿勢で当該上面に溶接固定される場合を例に示したが、埋設板部24Aの下面に沿わせた姿勢で当該下面に溶接固定されてもよい。
【0032】
(2)上記実施形態では、鉄骨梁3は、ブラケットに接合される端部3Aの梁せいHaが、ブラケットに接合されない中間部3Bの梁せいHbよりも小に構成される場合を例に示したが、端部3Aの梁せいHaと中間部3Bの梁せいHbが同一に構成されてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 鉄筋コンクリート柱
2 ブラケット
21 せん断力伝達部材
21A スタッドボルト(第1棒状部材)
22 引張力伝達部材
22A アンカーボルト(第2棒状部材)
24 上フランジ
24A 埋設板部
24B 載置板部
24a 挿通孔
25 ウェブ
3 鉄骨梁
3A 端部
3B 中間部
31 上フランジ
31a 挿通孔
32 下フランジ
33 下フランジ
34 ウェブ
4 接合手段
41 ボルト
42 ナット
M ブラケット付き柱部材