(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6461 20110101AFI20230419BHJP
H01R 12/71 20110101ALI20230419BHJP
【FI】
H01R13/6461
H01R12/71
(21)【出願番号】P 2019102600
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】大坂 純士
(72)【発明者】
【氏名】栗林 宏明
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 正道
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3195845(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0194749(US,A1)
【文献】特開2018-085348(JP,A)
【文献】特開2017-059457(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0269620(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R13/56-13/72
H01R24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の有効接続長を有するコネクタであって、
それぞれ相手側コネクタとの嵌合方向に延び且つ前記嵌合方向に直交する配列方向に配列された導電性の複数のコンタクトと、
前記嵌合方向および前記配列方向に延びて前記複数のコンタクトに対向するように配置された導電性の平板状のミッドプレートと、
前記複数のコンタクトおよび前記ミッドプレートを保持する絶縁性のハウジングと
を備え、
前記複数のコンタクトは、前記ミッドプレートを挟んで前記ミッドプレートの両面にそれぞれ対向するように配列された第1コンタクト列および第2コンタクト列を有し、
前記第1コンタクト列および前記第2コンタクト列は、それぞれ、複数ペアのコンタクトを含み、
前記複数のコンタクトは、それぞれ、前記嵌合方向の前端部分に配置され且つ前記嵌合方向に沿って前記有効接続長に相当する長さを有すると共に前記ハウジングから露出されて前記相手側コネクタのコンタクトに接触する接触部と、前記接触部に対して前記嵌合方向の後端側に隣接し且つ前記ハウジングから露出されている露出部と、前記嵌合方向の後端部分に配置され且つ接続対象物に接続される接続部と、前記露出部および前記接続部の間に配置され且つ少なくとも一部が前記ハウジングに埋め込まれる保持部とを有し、
前記複数のコンタクトの前記接触部および前記露出部と前記露出部に対して前記嵌合方向の後端側に隣接する部分の前記保持部は、前記ミッドプレートに対して前記ミッドプレートに垂直な方向に対向し、
前記複数のコンタクトは、それぞれ、前記接触部において前記ミッドプレートから前記ミッドプレートに垂直な方向に所定の距離だけ離れて配置され、
前記複数のコンタクトのうち少なくとも前記複数ペアのコンタクトは、それぞれ、前記所定の距離よりも長い離間距離だけ前記ミッドプレートから前記ミッドプレートに垂直な方向に離れた離間部を有し、
前記離間部は、前記露出部と前記露出部に対して前記嵌合方向の後端側に隣接する部分の前記保持部とを含むことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記複数ペアのコンタクトを含む前記複数のコンタクトは、すべて前記離間部を有する請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記複数のコンタクトの前記離間部は、互いに等しい前記離間距離だけ前記ミッドプレートから離れている請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記複数のコンタクトの前記露出部に対して前記嵌合方向の後端側に隣接する前記保持部の一部を覆うハウジング段差部を有し、
前記離間部に対応する部分の前記ハウジング段差部は、前記離間距離に等しい厚さを有する請求項1~3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記第1コンタクト列および前記第2コンタクト列に対応して一対の前記ハウジング段差部を有する請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記一対の前記ハウジング段差部の上にそれぞれ配置された導電性の平板状のグランドプレートをさらに備える請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記複数のコンタクトは、前記ハウジングに一体に成形されている請求項1~6のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記複数のコンタクトの前記接触部および前記露出部を囲むように前記ハウジングの外周部を覆い且つ前記嵌合方向の前方に向けて開口する相手側コネクタ収容部を有する導電性の外周シェルをさらに備える請求項1~7のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コネクタに係り、特に、複数のコンタクトと導電性のミッドプレートとを備えるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のコンタクトと、複数のコンタクトに対向する導電性のミッドプレートとを有するコネクタが知られている。例えば特許文献1には、
図12に示されるように、金属からなる平板状のミッドプレート1の一方の面に複数のコンタクト2が対向し、ミッドプレート1の他方の面に複数のコンタクト3が対向するコネクタが開示されている。
【0003】
図13に示されるように、それぞれのコンタクト2は、嵌合方向の前端部分に配置され且つ図示しない相手側コネクタのコンタクトに接触する接触部2Aと、嵌合方向の後端部分に配置され且つ図示しない基板等に接続される接続部2Bと、接触部2Aと接続部2Bとの間に配置された保持部2Cとを有している。それぞれのコンタクト3も、コンタクト2と同様に、接触部3Aと接続部3Bと保持部3Cとを有している。
【0004】
そして、
図14に示されるように、ミッドプレート1と複数のコンタクト2および複数のコンタクト3が、ハウジング4により一体に成形されることで、コネクタが形成されている。複数のコンタクト2の接触部2Aおよび複数のコンタクト3の接触部3Aは、ハウジング4から露出するように配置され、複数のコンタクト2の接続部2Bおよび複数のコンタクト3の接続部3Bは、ハウジング4の後方に突出している。
【0005】
ミッドプレート1は、複数のコンタクト2と複数のコンタクト3とを互いに電気的に隔離するためのものであるが、このようなミッドプレート1と複数のコンタクト2および複数のコンタクト3とを有するコネクタにおいては、複数のコンタクト2および複数のコンタクト3がミッドプレート1に近接して配置されるために、複数のコンタクト2の相互間あるいは複数のコンタクト3の相互間で、ミッドプレート1を介してクロストークが発生して伝送特性が劣化することがある。
【0006】
そこで、
図13に示されるように、コンタクト2の保持部2Cおよびコンタクト3の保持部3Cの一部に、ミッドプレート1から離れるように変形された変形部2Dおよび3Dが形成されている。これら変形部2Dおよび3Dの存在により、ミッドプレート1を介したクロストークの発生が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、
図14から推測されるように、コンタクト2および3の接触部2Aおよび3Aは、ハウジング4から露出しているものの、変形部2Dおよび3Dは、ハウジング4内に埋設されている。すなわち、ミッドプレート1から離れるように変形されたコンタクト2および3の変形部2Dおよび3Dは、ハウジング4内に埋設される部分に限定されるため、嵌合方向に沿って長く延びる変形部2Dおよび3Dを確保することができず、クロストークの発生を十分に抑制することが困難であるという問題がある。
【0009】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、複数のコンタクトと導電性のミッドプレートとを備えながらも、クロストークの発生を十分に抑制することができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るコネクタは、所定の有効接続長を有するコネクタであって、
それぞれ相手側コネクタとの嵌合方向に延び且つ嵌合方向に直交する配列方向に配列された導電性の複数のコンタクトと、
嵌合方向および配列方向に延びて複数のコンタクトに対向するように配置された導電性の平板状のミッドプレートと、
複数のコンタクトおよびミッドプレートを保持する絶縁性のハウジングとを備え、
複数のコンタクトは、ミッドプレートを挟んでミッドプレートの両面にそれぞれ対向するように配列された第1コンタクト列および第2コンタクト列を有し、
第1コンタクト列および第2コンタクト列は、それぞれ、複数ペアのコンタクトを含み、
複数のコンタクトは、それぞれ、嵌合方向の前端部分に配置され且つ嵌合方向に沿って有効接続長に相当する長さを有すると共にハウジングから露出されて相手側コネクタのコンタクトに接触する接触部と、接触部に対して嵌合方向の後端側に隣接し且つハウジングから露出されている露出部と、嵌合方向の後端部分に配置され且つ接続対象物に接続される接続部と、露出部および接続部の間に配置され且つ少なくとも一部がハウジングに埋め込まれる保持部とを有し、
複数のコンタクトの接触部および露出部と露出部に対して嵌合方向の後端側に隣接する部分の保持部は、ミッドプレートに対してミッドプレートに垂直な方向に対向し、
複数のコンタクトは、それぞれ、接触部においてミッドプレートからミッドプレートに垂直な方向に所定の距離だけ離れて配置され、
複数のコンタクトのうち少なくとも複数ペアのコンタクトは、それぞれ、所定の距離よりも長い離間距離だけミッドプレートからミッドプレートに垂直な方向に離れた離間部を有し、
離間部は、露出部と露出部に対して嵌合方向の後端側に隣接する部分の保持部とを含むものである。
【0011】
複数ペアのコンタクトを含む複数のコンタクトは、すべて離間部を有するように構成することができる。
複数のコンタクトの離間部は、互いに等しい離間距離だけミッドプレートから離れていることが好ましい。
【0012】
ハウジングは、複数のコンタクトの露出部に対して嵌合方向の後端側に隣接する保持部の一部を覆うハウジング段差部を有し、離間部に対応する部分のハウジング段差部は、離間距離に等しい厚さを有することが好ましい。
ハウジングは、第1コンタクト列および第2コンタクト列に対応して一対のハウジング段差部を有することが好ましい。
一対のハウジング段差部の上にそれぞれ配置された導電性の平板状のグランドプレートをさらに備えることができる。
【0013】
複数のコンタクトは、ハウジングに一体に成形されるように構成することができる。
複数のコンタクトの接触部および露出部を囲むようにハウジングの外周部を覆い且つ嵌合方向の前方に向けて開口する相手側コネクタ収容部を有する導電性の外周シェルをさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、複数のコンタクトは、それぞれ、ハウジングから露出されて相手側コネクタのコンタクトに接触する接触部と、接触部に対して嵌合方向の後端側に隣接し且つハウジングから露出されている露出部と、接続対象物に接続される接続部と、露出部および接続部の間に配置され且つ少なくとも一部がハウジングに埋め込まれる保持部とを有し、複数のコンタクトのうち少なくとも複数ペアのコンタクトは、それぞれ、所定の距離よりも長い離間距離だけミッドプレートからミッドプレートに垂直な方向に離れた離間部を有し、離間部は、露出部と露出部に対して嵌合方向の後端側に隣接する部分の保持部とを含むので、複数のコンタクトと導電性のミッドプレートとを備えながらも、クロストークの発生を十分に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の実施の形態に係るコネクタを示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に係るコネクタの分解斜視図である。
【
図3】実施の形態に係るコネクタにおけるコンタクト組立体を示す斜視図である。
【
図4】実施の形態に係るコネクタに用いられたミッドプレートおよび複数のコンタクトを示す斜視図である。
【
図5】実施の形態に係るコネクタに用いられたミッドプレートおよび複数のコンタクトを模式的に示す図である。
【
図6】実施の形態に係るコネクタに用いられた第1コンタクトを示す側面図である。
【
図7】実施の形態に係るコネクタに用いられた第2コンタクトを示す側面図である。
【
図8】実施の形態に係るコネクタの側面断面図である。
【
図9】実施の形態に係るコネクタにおいてハウジングに保持されたミッドプレートと第1コンタクトおよび第2コンタクトとを模式的に示す部分断面図である。
【
図10】実施の形態に係るコネクタに相手側コネクタが嵌合した状態を示す側面断面図である。
【
図11】変形例に係るコネクタにおいてハウジングに保持されたミッドプレートと第1コンタクトおよび第2コンタクトとを模式的に示す部分断面図である。
【
図12】従来のコネクタに用いられたミッドプレートおよび複数のコンタクトを示す斜視図である。
【
図13】従来のコネクタに用いられたミッドプレートおよび複数のコンタクトを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に、実施の形態に係るコネクタ11を示す。このコネクタ11は、電子機器内の回路基板等に実装されるレセプタクルコネクタであり、それぞれ嵌合軸C1に沿って嵌合方向に延び且つ嵌合軸C1に対して直交する方向に配列された導電性の複数のコンタクト12を有している。
【0017】
複数のコンタクト12の嵌合方向の前端部の外周を覆うように嵌合軸C1に沿って延びる導電性の外周シェル13が配置され、外周シェル13の内部に、嵌合方向の前方に向けて開口し且つ図示しない相手側コネクタが挿入される相手側コネクタ収容部13Aが形成されている。相手側コネクタ収容部13A内には、絶縁性のハウジング14が配置されており、ハウジング14に複数のコンタクト12が保持され、ハウジング14の外周部を外周シェル13が囲っている。
また、ハウジング14には、導電性の平板状のミッドプレート15が埋め込まれて保持されている。
【0018】
コネクタ11の分解図を
図2に示す。複数のコンタクト12は、ミッドプレート15の一方の面に対向するように配列された第1コンタクト列21と、ミッドプレート15の他方の面に対向するように配列された第2コンタクト列31とを有している。第1コンタクト列21は、複数の第1コンタクト22からなり、複数の第1コンタクト22は、インシュレータ23によりモジュール化された第1モジュール24を形成している。同様に、第2コンタクト列31は、複数の第2コンタクト32からなり、複数の第2コンタクト32は、インシュレータ33によりモジュール化された第2モジュール34を形成している。
【0019】
コネクタ11は、ミッドプレート15と第1モジュール24および第2モジュール34とを一体に成形するインシュレータ41を有しており、インシュレータ23、33および41により、ハウジング14が構成されている。
【0020】
ここで、便宜上、嵌合軸C1に沿ってコネクタ11の前部から後部に向かう方向を+Y方向、第1コンタクト列21および第2コンタクト列31の配列方向をX方向、XY面に垂直で且つ第2モジュール34から第1モジュール24へ向かう方向を+Z方向と呼ぶこととする。
【0021】
インシュレータ41の成形により、
図3に示されるように、第1コンタクト列21の複数の第1コンタクト22と第2コンタクト列31の複数の第2コンタクト32とミッドプレート15とがハウジング14に一体に成形されたコンタクト組立体42が形成される。なお、
図3においては、第2コンタクト列31の複数の第2コンタクト32が、インシュレータ41の-Z方向側に隠れているため、図示されていない。
このコンタクト組立体42に外周シェル13を取り付けることで、
図1に示されるコネクタ11が作製されている。
【0022】
ミッドプレート15を挟んでミッドプレート15の+Z方向側に配置された第1コンタクト列21およびミッドプレート15の-Z方向側に配置された第2コンタクト列31を
図4に示す。第1コンタクト列21を構成する複数の第1コンタクト22は、X方向に配列されており、それぞれ、概ねY方向に伸張する板状の金属部材から形成されている。同様に、第2コンタクト列31を構成する複数の第2コンタクト32は、X方向に配列されており、それぞれ、概ねY方向に伸張する板状の金属部材から形成されている。
また、ミッドプレート15は、第1コンタクト列21と第2コンタクト列31とを互いに電気的に隔離するためのものであり、例えば金属板から形成されている。
【0023】
図5に示されるように、第1コンタクト列21を構成する複数の第1コンタクト22は、-X方向から+X方向に向けて配列された12本のコンタクトS1~S12を有している。これらのコンタクトのうち、X方向の中央部に位置する2本のコンタクトS6およびS7は、低速信号伝送用の第1ペアSP1のコンタクトを構成し、X方向において最も外側に位置するコンタクトS1およびS12はグランド用コンタクトであり、コンタクトS1に隣接する2本のコンタクトS2およびS3と、コンタクトS12に隣接する2本のコンタクトS11およびS10は、それぞれ、高速信号伝送用の第2ペアSP2のコンタクトを構成している。残りのコンタクトS4、S5、S8およびS9は、電源用コンタクト、あるいは、コネクタ11の挿抜検出等に用いられるコンタクトである。
【0024】
同様に、第2コンタクト列31を構成する複数の第2コンタクト32は、-X方向から+X方向に向けて配列された12本のコンタクトT1~T12を有している。これらのコンタクトのうち、X方向の中央部に位置する2本のコンタクトT6およびT7は、低速信号伝送用の第1ペアTP1のコンタクトを構成し、X方向において最も外側に位置するコンタクトT1およびT12はグランド用コンタクトであり、コンタクトT1に隣接する2本のコンタクトT2およびT3と、コンタクトT12に隣接する2本のコンタクトT11およびT10は、それぞれ、高速信号伝送用の第2ペアTP2のコンタクトを構成している。残りのコンタクトT4、T5、T8およびT9は、電源用コンタクト、あるいは、コネクタ11の挿抜検出等に用いられるコンタクトである。
このように、第1コンタクト列21および第2コンタクト列31は、それぞれ、電気信号を伝送するために使用される3組のペアのコンタクトを含んでいる。
【0025】
図6に示されるように、第1コンタクト22の-Y方向端部には、ハウジング14から露出されて図示しない相手側コネクタのコンタクトに接触するための接触部22Aが形成され、接触部22Aに対して嵌合方向の後端側、すなわち、接触部22Aの+Y方向側に隣接して所定長さの露出部22Bが形成されている。露出部22Bは、ハウジング14から露出されるものの相手側コネクタのコンタクトに接触することはない部分である。
また、第1コンタクト22の+Y方向端部には、コネクタ11が実装される回路基板等の接続対象物に接続される接続部22Cが配置され、露出部22Bと接続部22Cとの間には、少なくとも一部がハウジング14に埋め込まれることによりハウジング14に保持される保持部22Dが配置されている。
【0026】
接触部22Aは、Y方向に沿って延び、コネクタ11の有効接続長に相当する長さを有している。なお、「コネクタ11の有効接続長」とは、コネクタ11に図示しない相手側コネクタが嵌合する際に、相手側コネクタのコンタクトがコネクタ11の第1コンタクト22または第2コンタクト32の表面に接触して移動する距離を意味している。露出部22Bも、接触部22Aと同様にY方向に沿って延びているが、接触部22Aよりも+Z方向側にずれた位置にあり、接触部22Aと露出部22Bとの境界部分にコンタクト段差部22Eが形成されている。
【0027】
露出部22Bに接続される保持部22Dの-Y方向部分は、露出部22Bと同じZ方向位置においてY方向に沿って延びており、露出部22Bと保持部22Dとの境界部分に段差は存在しない。このため、露出部22Bと保持部22Dとの境界部分は、第1コンタクト22から見分けることができず、
図3のように、コンタクト組立体42を形成したときに、ハウジング14に埋め込まれることなく露出する部分が露出部22Bとなり、ハウジング14に埋め込まれる部分から+Y方向側が保持部22Dとなる。
【0028】
図7に示されるように、第2コンタクト32の-Y方向端部には、ハウジング14から露出されて図示しない相手側コネクタのコンタクトに接触するための接触部32Aが形成され、接触部32Aに対して嵌合方向の後端側、すなわち、接触部32Aの+Y方向側に隣接して所定長さの露出部32Bが形成されている。露出部32Bは、ハウジング14から露出されるものの相手側コネクタのコンタクトに接触することはない部分である。
また、第2コンタクト32の+Y方向端部には、コネクタ11が実装される回路基板等の接続対象物に接続される接続部32Cが配置され、露出部32Bと接続部32Cとの間には、少なくとも一部がハウジング14に埋め込まれることによりハウジング14に保持される保持部32Dが配置されている。
【0029】
接触部32Aは、Y方向に沿って延び、コネクタ11の有効接続長に相当する長さを有している。露出部32Bも、接触部32Aと同様にY方向に沿って延びているが、接触部32Aよりも-Z方向側にずれた位置にあり、接触部32Aと露出部32Bとの境界部分にコンタクト段差部32Eが形成されている。
【0030】
露出部32Bに接続される保持部32Dの-Y方向部分は、露出部32Bと同じZ方向位置においてY方向に沿って延びており、露出部32Bと保持部32Dとの境界部分に段差は存在しない。このため、露出部32Bと保持部32Dとの境界部分は、第2コンタクト32から見分けることができず、
図3のように、コンタクト組立体42を形成したときに、ハウジング14に埋め込まれることなく露出する部分が露出部32Bとなり、ハウジング14に埋め込まれる部分から+Y方向側が保持部32Dとなる。
【0031】
第2コンタクト32の接触部32Aおよび露出部32Bは、それぞれ、第1コンタクト22の接触部22Aおよび露出部22Bと同じY方向長さを有している。一方、第2コンタクト32の保持部32Dは、第1コンタクト22の保持部22Dよりも短いY方向長さを有している。
【0032】
YZ面により切断したコネクタ11の側面断面図を
図8に示す。第1コンタクト22の接触部22A、露出部22Bおよび保持部22Dの-Y方向部分と、第2コンタクト32の接触部32A、露出部32Bおよび保持部32Dが、外周シェル13により囲まれて相手側コネクタ収容部13A内に配置され、第1コンタクト22の接触部22Aおよび露出部22Bと保持部22Dの-Y方向部分とがミッドプレート15の+Z方向側の面に対向し、第2コンタクト32の接触部32Aおよび露出部32Bと保持部32Dの-Y方向部分とがミッドプレート15の-Z方向側の面に対向している。
【0033】
第1コンタクト22の接触部22Aおよび露出部22Bは、ハウジング14に埋め込まれることなく、相手側コネクタ収容部13A内においてハウジング14から+Z方向に露出している。同様に、第2コンタクト32の接触部32Aおよび露出部32Bは、ハウジング14に埋め込まれることなく、相手側コネクタ収容部13A内においてハウジング14から-Z方向に露出している。
【0034】
一方、第1コンタクト22の露出部22Bに隣接する保持部22Dの-Y方向部分は、ハウジング14に埋設されており、ハウジング14は、保持部22Dの-Y方向部分を+Z方向から覆うハウジング段差部16を有している。同様に、第2コンタクト32の露出部32Bに隣接する保持部32Dの-Y方向部分は、ハウジング14に埋設されており、ハウジング14は、保持部32Dの-Y方向部分を-Z方向から覆うハウジング段差部17を有している。
【0035】
なお、第1コンタクト22の接続部22Cおよび第2コンタクト32の接続部32Cは、コネクタ11の+Y方向端部において、ハウジング14から-Z方向に突出している。第2コンタクト32の保持部32Dは、第1コンタクト22の保持部22Dよりも短いY方向長さを有しているので、第2コンタクト32の接続部32Cは、第1コンタクト22の接続部22Cよりも-Y方向側に位置している。このように、X方向に配列された複数の第1コンタクト22の接続部22CとX方向に配列された複数の第2コンタクト32の接続部32Cとを、互いにY方向の異なる位置に配置することにより、それぞれの接続部22Cまたは32Cの設置スペースが確保され、回路基板等の接続対象物に接続しやすくなる。
【0036】
ここで、
図9に示されるように、第1コンタクト22の露出部22Bは、接触部22Aよりも+Z方向側にずれた位置にあり、接触部22Aは、ミッドプレート15からミッドプレート15に垂直な方向である+Z方向に所定の距離D1だけ離れて配置され、露出部22Bは、ミッドプレート15から+Z方向に所定の距離D1よりも長い離間距離D2だけ離れて配置されている。接触部22Aと露出部22Bとの境界部分に形成されているコンタクト段差部22Eの高さをH1とすると、D2=D1+H1となる。
【0037】
さらに、露出部22Bに隣接する保持部22Dの-Y方向部分も、露出部22Bと同じZ方向位置においてY方向に沿って延びているので、露出部22Bから保持部22Dの-Y方向部分にかけて、所定の距離D1よりも長い離間距離D2だけミッドプレート15から離れた離間部22Fが形成されている。
【0038】
同様に、第2コンタクト32の露出部32Bは、接触部32Aよりも-Z方向側にずれた位置にあり、接触部32Aは、ミッドプレート15からミッドプレート15に垂直な方向である-Z方向に所定の距離D1だけ離れて配置され、露出部32Bは、ミッドプレート15から-Z方向に所定の距離D1よりも長い離間距離D2だけ離れて配置されている。接触部32Aと露出部32Bとの境界部分に形成されているコンタクト段差部32Eの高さをH1とすると、D2=D1+H1となる。
【0039】
さらに、露出部32Bに隣接する保持部32Dの-Y方向部分も、露出部32Bと同じZ方向位置においてY方向に沿って延びているので、露出部32Bから保持部32Dの-Y方向部分にかけて、所定の距離D1よりも長い離間距離D2だけミッドプレート15から離れた離間部32Fが形成されている。
【0040】
このように、コネクタ11においては、ミッドプレート15から離間距離D2だけ+Z方向に離れている第1コンタクト22の離間部22Fは、ハウジング14に埋め込まれている保持部22Dだけでなく、ハウジング14から露出している露出部22Bにまで延びている。同様に、ミッドプレート15から離間距離D2だけ-Z方向に離れている第2コンタクト32の離間部32Fは、ハウジング14に埋め込まれている保持部32Dだけでなく、ハウジング14から露出している露出部32Bにまで延びている。
なお、複数の第1コンタクト22は、それぞれ離間部22Fを有し、複数の第2コンタクト32は、それぞれ離間部32Fを有し、すべての離間部22Fおよび32Fは、互いに等しい離間距離D2だけミッドプレート15から離れている。
【0041】
このため、それぞれの第1コンタクト22および第2コンタクト32において、Y方向に沿った長い離間部22Fおよび32Fが確保され、ミッドプレート15により複数の第1コンタクト22と複数の第2コンタクト32とを互いに電気的に隔離しながらも、ミッドプレート15を介したクロストークの発生を十分に抑制することが可能となる。従って、優れた特性で電気信号の伝送を行うことができる。
【0042】
また、第1コンタクト22の保持部22Dの-Y方向部分を+Z方向から覆っているハウジング段差部16は、離間部22Fにおけるミッドプレート15からの離間距離D2に等しい厚さD3を有している。同様に、第2コンタクト32の保持部32Dの-Y方向部分を-Z方向から覆っているハウジング段差部17も、離間部32Fにおけるミッドプレート15からの離間距離D2に等しい厚さD3を有している。
【0043】
図10に、相手側コネクタ51との嵌合状態にあるコネクタ11を示す。相手側コネクタ51は金属製のシェル52を有し、シェル52内の+Z方向側には、X方向に配列された複数の板バネ状の第1コンタクト53が配置され、シェル52内の-Z方向側には、X方向に配列された複数の板バネ状の第2コンタクト54が配置されている。複数の第1コンタクト53は、コネクタ11の複数の第1コンタクト22に対応し、複数の第2コンタクト54は、コネクタ11の複数の第2コンタクト32に対応している。
また、相手側コネクタ51の+Y方向端部の近傍におけるシェル52の内部には、シェル52に電気的に接続された金属製の板バネ状の一対の押さえ部55および56が互いにZ方向に対向するように配置されている。
【0044】
相手側コネクタ51の+Y方向端部が、嵌合軸C1に沿ってコネクタ11の相手側コネクタ収容部13Aに挿入され、相手側コネクタ51の押さえ部55が、コネクタ11の+Z方向側のハウジング段差部16の上に接触してハウジング段差部16を-Z方向に押し付けると共に、相手側コネクタ51の押さえ部56が、コネクタ11の-Z方向側のハウジング段差部17の上に接触してハウジング段差部17を+Z方向に押し付ける。これにより、相手側コネクタ51の+Y方向端部がコネクタ11の相手側コネクタ収容部13A内に位置決めされる。
【0045】
このとき、相手側コネクタ51の複数の第1コンタクト53が、それぞれ、コネクタ11の対応する第1コンタクト22の接触部22Aに接触し、相手側コネクタ51の複数の第2コンタクト54が、それぞれ、コネクタ11の対応する第2コンタクト32の接触部32Aに接触する。これにより、相手側コネクタ51の複数の第1コンタクト53および複数の第2コンタクト54が、コネクタ11の複数の第1コンタクト22および複数の第2コンタクト32に電気的に接続され、この状態で、電気信号の伝送が行われる。
【0046】
コネクタ11の+Z方向側のハウジング段差部16の上に相手側コネクタ51の金属製の押さえ部55が接触するため、第1コンタクト22の保持部22Dの-Y方向部分は、導電性のミッドプレート15と相手側コネクタ51の押さえ部55とでZ方向に挟まれることとなるが、ミッドプレート15からの離間距離D2とハウジング段差部16の厚さD3が互いに等しいので、効率よく電気信号を伝送することができる。
同様に、コネクタ11の-Z方向側のハウジング段差部17の上に相手側コネクタ51の金属製の押さえ部56が接触するため、第2コンタクト32の保持部32Dの-Y方向部分は、導電性のミッドプレート15と相手側コネクタ51の押さえ部56とでZ方向に挟まれることとなるが、ミッドプレート15からの離間距離D2とハウジング段差部17の厚さD3が互いに等しいので、効率よく電気信号を伝送することができる。
【0047】
なお、
図11に示されるように、+Z方向側のハウジング段差部16の上および-Z方向側のハウジング段差部17の上に、それぞれ、導電性の平板状のグランドプレート18および19を配置することもできる。これらのグランドプレート18および19は、例えば、金属板から形成され、
図8等に示されるコネクタ11の導電性の外周シェル13に電気的に接続される。
このような構成とすれば、
図10に示されるように、コネクタ11と相手側コネクタ51との嵌合状態において、相手側コネクタ51の一対の押さえ部55および56が、それぞれ、コネクタ11のグランドプレート18および19に接触することで、コネクタ11の外周シェル13と相手側コネクタ51のシェル52を電気的に接続することができる。
【0048】
このように、ハウジング段差部16および17の上にグランドプレート18および19がそれぞれ配置される場合に、第1コンタクト22の保持部22Dの-Y方向部分は、導電性のミッドプレート15とグランドプレート18とでZ方向に挟まれることとなるが、ミッドプレート15からの離間距離D2とハウジング段差部16の厚さD3が互いに等しいので、効率よく電気信号を伝送することができる。同様に、第2コンタクト32の保持部32Dの-Y方向部分は、導電性のミッドプレート15とグランドプレート19とでZ方向に挟まれることとなるが、ミッドプレート15からの離間距離D2とハウジング段差部17の厚さD3が互いに等しいので、効率よく電気信号を伝送することができる。
【0049】
上述した実施の形態では、第1コンタクト列21の複数の第1コンタクト22のすべてが離間部22Fを有し、第2コンタクト列31の複数の第2コンタクト32のすべてが離間部32Fを有しているが、これに限るものではない。
【0050】
離間部22Fおよび32Fは、電気信号を伝送する際のクロストークの発生を抑制するためのものであるので、
図5に示されるように、第1コンタクト列21の複数の第1コンタクト22のうち、電気信号伝送用の第1ペアSP1のコンタクトS6およびS7と、2組の第2ペアSP2のコンタクトS2、S3、S10およびS11のみが離間部22Fを有し、第2コンタクト列31の複数の第2コンタクト32のうち、電気信号伝送用の第1ペアTP1のコンタクトT6およびT7と、2組の第2ペアTP2のコンタクトT2、T3、T10およびT11のみが離間部32Fを有し、第1コンタクト列21および第2コンタクト列31の残りのコンタクトは離間部を有しない構成とすることもできる。このような構成としても、ミッドプレート15を介したクロストークの発生を十分に抑制して、優れた特性で電気信号の伝送を行うことが可能となる。
【0051】
なお、第1コンタクト列21および第2コンタクト列31のコンタクトの本数は制限されるものではなく、第1コンタクト列21および第2コンタクト列31が、それぞれ、電気信号伝送用の複数ペアのコンタクトを含んでいればよい。
【符号の説明】
【0052】
1 ミッドプレート、2,3 コンタクト、2A,3A 接触部、2B,3B 接続部、2C,3C 保持部、2D,3D 変形部、4 ハウジング、11 コネクタ、12 コンタクト、13 外周シェル、13A 相手側コネクタ収容部、14 ハウジング、15 ミッドプレート、16,17 ハウジング段差部、18,19 グランドプレート、21 第1コンタクト列、22 第1コンタクト、22A,32A 接触部、22B,32B 露出部、22C,32C 接続部、22D,32D 保持部、22E,32E コンタクト段差部、22F,32F 離間部、23,33,41 インシュレータ、24 第1モジュール、31 第2コンタクト列、32 第2コンタクト、34 第2モジュール、42 コンタクト組立体、51 相手側コネクタ、52 シェル、53 第1コンタクト、54 第2コンタクト、55,56 押さえ部、C1 嵌合軸、S1~S12,T1~T12 コンタクト、SP1,TP1 第1ペア、SP2,TP2 第2ペア、D1 所定の距離、D2 離間距離、D3 厚さ、H1 高さ。