IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスアイアイ・プリンテック株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230419BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/01 301
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019107218
(22)【出願日】2019-06-07
(65)【公開番号】P2020199669
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 高徳
(72)【発明者】
【氏名】緑川 雄
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-030228(JP,A)
【文献】特開2015-174449(JP,A)
【文献】特開2018-047562(JP,A)
【文献】特開2012-135989(JP,A)
【文献】特開2007-001107(JP,A)
【文献】特開2018-192781(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0044296(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射記録装置のキャリッジに取り付けられる液体噴射ヘッドであって、
液体を噴射するノズル孔が設けられた噴射部と、
前記噴射部を支持するとともに、前記液体の噴射方向に貫通する貫通穴を含む孔部が設けられた支持部材と、
前記孔部内に設けられ、かつ、前記支持部材を前記キャリッジに付勢する付勢部材と、
前記キャリッジに対して所定の位置に配置されるとともに前記孔部内で前記付勢部材に付勢されることにより、前記キャリッジに対する前記ノズル孔の位置を決定する被付勢部材と
を備えた液体噴射ヘッド。
【請求項2】
更に、前記孔部の内側に設けられるとともに、前記被付勢部材が当接される基準面を有し、
前記被付勢部材は、前記キャリッジに対する前記ノズル孔の位置を調整する位置調整部材である
請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記位置調整部材は、前記基準面に当接する部分を含む偏心部と、前記キャリッジに設けられた軸孔に軸支される第1軸部とを含む偏心カムである
請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記位置調整部材は、前記偏心部を間にして前記第1軸部の反対側に設けられるとともに、前記キャリッジに設けられた軸孔に軸支可能な第2軸部を含む
請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記ノズル孔の変位量は、前記位置調整部材の回転量に対応している
請求項3または請求項4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記偏心部は、
回転中心から第1の距離を有する初期部と、
前記初期部に隣接して設けられるとともに、前記回転中心から前記第1の距離よりも大きい第2の距離を有する回転規制部とを含み、
前記第2の距離は、前記孔部の前記回転中心に対応する位置から前記基準面までの距離よりも大きく、
前記孔部には、前記回転規制部に係合されることにより、前記位置調整部材の一方の方向の回転を規制する係合部が設けられている
請求項3ないし請求項5のうちいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記被付勢部材は前記孔部に挿通されるとともに、前記キャリッジに設けられた軸孔に回動可能に軸支されている
請求項1ないし請求項6のうちいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記噴射部では、複数の前記ノズル孔が所定の方向に沿って並び、
前記支持部材は、前記噴射部の前記所定の方向の外側に位置決め領域を有し、
前記孔部は、前記位置決め領域に設けられている
請求項1ないし請求項7のうちいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
前記支持部材は、前記所定の方向の両側に前記位置決め領域を有する
請求項8に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
前記付勢部材は、線バネにより構成されている
請求項1ないし請求項9のうちいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のうちいずれか1項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドが搭載された前記キャリッジと
を備えた液体噴射記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射記録装置の1つとして、記録紙等の被記録媒体にインク(液体)を吐出(噴射)して画像や文字等の記録を行う、インクジェット方式の記録装置が提供されている。この方式の液体噴射記録装置では、インクタンクからインクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)へインクを供給し、このインクジェットヘッドのノズル孔から被記録媒体に対してインクを吐出することで、画像や文字等の記録が行われるようになっている。
【0003】
インクジェットヘッドには、例えば、複数のノズル孔が所定の方向に並んで配置されたノズル列が設けられている。液体噴射記録装置内では、キャリッジに対して所定の位置にノズル列が配置されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-136507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなインクジェットヘッドでは、液体噴射ヘッドの設置に必要な面積を小さくすることが望まれている。
【0006】
そこで、液体噴射ヘッドの設置面積を小さくすることが可能な液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドは、液体噴射記録装置のキャリッジに取り付けられる液体噴射ヘッドであって、液体を噴射するノズル孔が設けられた噴射部と、噴射部を支持するとともに、液体の噴射方向に貫通する貫通穴を含む孔部が設けられた支持部材と、孔部内に設けられ、かつ、支持部材をキャリッジに付勢する付勢部材と、キャリッジに対して所定の位置に配置されるとともに孔部内で付勢部材に付勢されることにより、キャリッジに対するノズル孔の位置を決定する被付勢部材とを備えたものである。
【0008】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置は、上記本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドと、液体噴射ヘッドが搭載されたキャリッジとを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置によれば、液体噴射ヘッドの設置面積を小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置の概略構成例を表す模式斜視図である。
図2図1に示した液体噴射ヘッドおよびキャリッジの構成例を模式的に表す斜視図である。
図3図2に示した液体噴射ヘッドおよびキャリッジの平面図である。
図4図3に示した液体噴射ヘッドの具体的な構成の一例を表す平面図である。
図5図4に示した液体噴射ヘッドの構成を模式的に表す分解斜視図である。
図6図5に示した液体噴射ヘッドの構成を表す平面模式図である。
図7図5に示した位置決め領域近傍を拡大して表す分解斜視図である。
図8A図5に示した孔部および孔部の内側の構成を表す平面模式図である。
図8B図8Aに示したB-B’線に沿った断面構成を表す模式図である。
図9図7に示した位置調整部材の構成の一例を表す斜視図である。
図10図9に示した偏心部の断面構成を表す模式図である。
図11図7に示した孔部の構成の一例を表す平面模式図である。
図12図2等に示した液体噴射ヘッドのキャリッジへの取付方法の一工程を表す斜視図である。
図13図12に続く工程を表す斜視図である。
図14A図13に続く工程を表す平面図(1)である。
図14B図13に続く工程を表す平面図(2)である。
図15図14A図14Bに続く工程を表す斜視図である。
図16図14A図14Bに示した位置調整部材の回転角度と、ノズル孔の変位量との関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
<1.実施の形態>
[プリンタ1の全体構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置としてのプリンタ1の概略構成例を、模式的に斜視図にて表したものである。このプリンタ1は、インクを利用して、被記録媒体としての記録紙Pに対して、画像や文字等の記録(印刷)を行うインクジェットプリンタである。
【0013】
プリンタ1は、図1に示したように、一対の搬送機構2a,2bと、インクタンク3と、インクジェットヘッド4と、供給チューブ50と、走査機構6とを備えている。これらの各部材は、所定形状を有する筺体10内に収容されている。なお、本明細書の説明に用いられる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0014】
ここで、プリンタ1は、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応し、インクジェットヘッド4は、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。
【0015】
搬送機構2a,2bはそれぞれ、図1に示したように、記録紙Pを搬送方向d(X軸方向)に沿って搬送する機構である。これらの搬送機構2a,2bはそれぞれ、グリッドローラ21、ピンチローラ22および駆動機構(不図示)を有している。グリッドローラ21およびピンチローラ22はそれぞれ、Y軸方向(記録紙Pの幅方向)に沿って延設されている。駆動機構は、グリッドローラ21を軸周りに回転させる(Z-X面内で回転させる)機構であり、例えばモータ等によって構成されている。
【0016】
(インクタンク3)
インクタンク3は、インクを内部に収容するタンクである。このインクタンク3としては、この例では図1に示したように、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)の4色のインクを個別に収容する、4種類のタンクが設けられている。すなわち、イエローのインクを収容するインクタンク3Yと、マゼンダのインクを収容するインクタンク3Mと、シアンのインクを収容するインクタンク3Cと、ブラックのインクを収容するインクタンク3Kとが設けられている。これらのインクタンク3Y,3M,3C,3Kは、筺体10内において、X軸方向に沿って並んで配置されている。。
【0017】
なお、インクタンク3Y,3M,3C,3Kはそれぞれ、収容するインクの色以外については同一の構成であるので、以下ではインクタンク3と総称して説明する。
【0018】
(インクジェットヘッド4)
インクジェットヘッド4は、後述する複数のノズル78から記録紙Pに対して液滴状のインクを噴射(吐出)して、画像や文字等の記録を行うヘッドである。プリンタ1には、このインクジェットヘッド4が、複数設けられている。例えば、プリンタ1には、12のインクジェットヘッド4が設けられている(後述の図2等参照)。図1には、簡略化のため、1つのインクジェットヘッド4を図示している。複数のインクジェットヘッド4の配置については、後述する。例えば、複数のインクジェットヘッド4各々に、イエロー、マゼンダ、シアンおよびブラックのうちの1色または2色のインクが供給されるようになっている。プリンタ1が有するインクジェットヘッド4の数は、12より少なくなっていてもよく、あるいは、12より多くなっていてもよい。
【0019】
供給チューブ50は、インクタンク3内からインクジェットヘッド4内へとインクを供給するためのチューブである。
【0020】
(走査機構6)
走査機構6は、記録紙Pの幅方向(Y軸方向)に沿って、インクジェットヘッド4を走査させる機構である。この走査機構6は、図1に示したように、Y軸方向に沿って延設された一対のガイドレール31,32と、これらのガイドレール31,32に移動可能に支持されたキャリッジ33と、このキャリッジ33をY軸方向に沿って移動させる駆動機構34と、を有している。また、駆動機構34は、ガイドレール31,32の間に配置された一対のプーリ35,36と、これらのプーリ35,36間に巻回された無端ベルト37と、プーリ35を回転駆動させる駆動モータ38と、を有している。
【0021】
プーリ35,36はそれぞれ、Y軸方向に沿って、各ガイドレール31,32における両端付近に対応する領域に配置されている。無端ベルト37には、キャリッジ33が連結されている。このキャリッジ33は、例えば、前述したインクジェットヘッドを載置する平板状の基台を有している。
【0022】
図2および図3は、キャリッジ33に搭載された複数のインクジェットヘッド4の配置の一例を表している。図2は、キャリッジ33に搭載された複数のインクジェットヘッド4の構成を表す斜視図であり、図3は、その平面構成を表している。
【0023】
キャリッジ33には、上述のように、例えば、12のインクジェットヘッド4が載置されている。インクジェットヘッド4の詳細な構成については後述する。複数のインクジェットヘッド4は、各々、ベースプレート41と、ベースプレート41に搭載されたヘッドモジュール(後述の図4のヘッドモジュール40)の一部を覆うカバー42とを含んでいる(図3)。ベースプレート41は、例えば、略矩形の平面(XY平面)形状を有する板状部材である。ベースプレート41は、例えば、長辺方向(X軸方向)の両端部に、位置決め領域41Rを有している。カバー42は、例えば、直方体の箱型形状を有しており、ベースプレート41の長辺方向(X軸方向)に沿って、カバー42の長辺が配置されている。即ち、インクジェットヘッド4は、略矩形の平面形状を有している。カバー42から露出されたベースプレート41の部分に、位置決め領域41Rが設けられている。ここで、ベースプレート41が、本開示の「支持部材」の一具体例に対応する。
【0024】
平面(XY平面)視で、例えば、X軸方向(図1の搬送方向d)に沿って、インクジェットヘッド4各々の長辺が配置され、Y軸方向(図1の記録紙Pの幅方向)に沿って、インクジェットヘッド4各々の短辺が配置されている。例えば、キャリッジ33のX軸方向に沿って3つのインクジェットヘッド4が設けられている。この3つのインクジェットヘッド4は、Y軸方向の位置が揃うように配置されている。また、キャリッジ33のY軸方向には、4つのインクジェットヘッド4が互い違いに配置されている。具体的には、Y軸方向に隣り合うインクジェットヘッド4では、長辺の一端および他端のX軸方向の位置が、長辺の大きさの半分程度ずれて配置されている。即ち、プリンタ1では、複数のインクジェットヘッド4がキャリッジ33に千鳥状に配置されている。このように複数のインクジェットヘッド4を千鳥状に配置することにより、X軸方向に隣り合うインクジェットヘッド4の間の隙間を、Y軸方向に隣接する他のインクジェットヘッド4により埋めることができる。
【0025】
なお、このような走査機構6と前述した搬送機構2a,2bとにより、インクジェットヘッド4と記録紙Pとを相対的に移動させる、移動機構が構成されるようになっている。
【0026】
[インクジェットヘッド4の詳細構成]
次に、図2図3に加えて図4図5を参照して、インクジェットヘッド4の詳細構成例について説明する。図4は、インクジェットヘッド4の平面構成を表し、図5は、インクジェットヘッド4の模式的な分解斜視図である。図5では、カバー42の図示を省略している。
【0027】
インクジェットヘッド4は、主に、キャリッジ33に固定されるベースプレート41と、このベースプレート41に搭載されたヘッドモジュール40と、ヘッドモジュール40の一部を保護するカバー42とを有している。ヘッドモジュール40には、複数のノズル孔401Hが設けられている。ここで、ヘッドモジュール40が、本開示の「噴射部」の一具体例に対応する。
【0028】
(ベースプレート41)
ベースプレート41は、ヘッドモジュール40を支持する支持体である。平板状のベースプレート41は、表面S1と、表面S1と反対を向く裏面S2とを有しており、表面S1にカバー42が載置されている。ベースプレート41の厚み方向(Z軸方向)は、ノズル孔401Hからのインク(後述の図6のインク9)の噴射方向に平行に設けられている。表面S1および裏面S2は、例えば、略矩形である。このようなベースプレート41は、略矩形の外周縁41Eを有している。外周縁41Eは、ベースプレート41の厚み方向(インクの噴射方向)に垂直なX軸方向およびY軸方向のベースプレート41の縁であり、略矩形の形状を有している。例えば、ベースプレート41の外周縁41Eを構成する一対の短辺(Y軸方向に延在する辺)の一方には、周囲の外周縁41EよりもX軸方向に突出した突当部411Aが設けられている。突当部411Aは、例えば、ベースプレート41の短辺の中央部付近に設けられている。ベースプレート41の外周縁41Eを構成する一対の長辺(X軸方向に延在する辺)の一方には、周囲の外周縁41EよりもY軸方向に突出した突当部411Bが設けられている。突当部411Bは、例えば、ベースプレート41の長辺の両端付近に設けられている。突当部411A,411Bは、キャリッジ33の所定の位置に突き当てられている。この突当部411A,411Bにより、キャリッジ33に対するベースプレート41のおおよその位置が決定される。
【0029】
ベースプレート41の中央部には、ヘッドモジュール40が挿入される挿入孔410が設けられている。挿入孔410は、例えば、矩形の平面形状を有する長孔であり、ベースプレート41を厚み方向に貫通している。挿入孔410の長辺は、外周縁41Eを構成する長辺と略平行に配置され、挿入孔410の短辺は、外周縁41Eを構成する短辺と略平行に配置されている。例えば、ベースプレート41には、Y軸方向に並んで2つの挿入孔410が設けられており、この挿入孔410各々にヘッドモジュール40が挿入されている。
【0030】
このようなベースプレート41の長辺方向(X軸方向)の両端部には、位置決め領域41Rが設けられている。この一対の位置決め領域41Rは、ベースプレート41に搭載されたヘッドモジュール40のノズル孔401H(ノズル列)を、キャリッジ33に位置決めするための領域である。一対の位置決め領域41Rは、平面視で、ヘッドモジュール40およびカバー42の外側に設けられている。位置決め領域41Rの詳細な構成については後述する。このようなベースプレート41は、例えば、ステンレス鋼(SUS)などの金属材料により構成されている。
【0031】
(ヘッドモジュール40)
図6は、インクジェットヘッド4の平面(XZ平面)構成を模式的に表している。インクジェットヘッド4は、例えば、上記ヘッドモジュール40に加えて、電子制御盤43を有している。ヘッドモジュール40は、例えば、ヘッドチップ400、導入ポート44、および排出ポート45を含んでいる。
【0032】
このヘッドモジュール40では、導入ポート44から排出ポート45に向かうインク9の流路が形成されていると共に、その流路にノズル孔401H(放出口)が設けられている。
【0033】
ヘッドチップ400は、ノズル孔401Hから放出することにより、そのインク9を被記録媒体に噴射する。このヘッドチップ400は、例えば、電子制御盤43よりも遠い側から順に積層されたノズルプレート401、アクチュエータプレート402およびカバープレート403を含んでいる。
【0034】
ノズルプレート401は、インク9の噴射口であるノズル孔401Hを有している。ここでは、ノズルプレート401は、例えば、複数のノズル孔401Hを有しており、その複数のノズル孔401Hは、例えば、X軸方向に並んで配置されている。換言すれば、ノズルプレート401は、X軸方向に延びるノズル列を有している(図5)。ただし、図6では、図示内容を簡略化するために、1個のノズル孔401Hだけを示している。ヘッドモジュール40では、インク9が、ノズル孔401Hを介してベースプレート41の裏面S2側からZ軸方向に噴射されるようになっている。
【0035】
アクチュエータプレート402は、例えば、図示しない複数のチャネル(インク9が導入される複数の噴射チャネルおよびインク9が導入されない複数のダミーチャネル)を有している。このアクチュエータプレート402は、例えば、記録時において、インク9が導入された噴射チャネルの内圧を電気的に変化させることにより、その噴射チャネルからノズル孔401Hを経由して外部にインク9を噴射させる。カバープレート403は、例えば、図示しない複数のスリットを有しており、その複数のスリットを経由してアクチュエータプレート402(複数の噴射チャネル)にインク9を導入させる。
【0036】
(電子制御盤43)
電子制御盤43は、インクジェットヘッド4の全体の動作を制御する。この電子制御盤43は、例えば、回路基板431と、駆動回路432と、フレキシブル基板433とを含んでいる。回路基板431は、例えば、ヘッドチップ400に立設されている。駆動回路432は、例えば、回路基板431に設けられており、集積回路(IC)などの電子部品を含んでいる。フレキシブル基板433は、例えば、ヘッドチップ400および駆動回路432のそれぞれに接続されている。
【0037】
導入ポート44は、インク9の導入口が設けられた管状の部品であり、ヘッドチップ400(カバープレート403)の一端部に接続されている。排出ポート45は、インク9の排出口が設けられた管状の部品であり、ヘッドチップ400(カバープレート403)の他端部に接続されている。なお、導入ポート44および排出ポート45のそれぞれは、例えば、インク9を循環させるために、図示しない供給チューブなどに接続可能である。
【0038】
(カバー42)
カバー42は、電子制御盤43の周囲を覆うように、ベースプレート41上に設けられている。箱型のカバー42内に電子制御盤43が封止されている。このカバー42は、電子制御盤43へのインク9の付着を防止するための部材である。カバー42は、インク9の材料に耐性を有する材料により構成されている。カバー42は、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS:Poly Phenylene Sulfide)およびナイロン等の樹脂材料、または金属材料により構成されている。
【0039】
(位置決め領域41R)
図7は、位置決め領域41R近傍の構成を表す分解斜視図である。一対の位置決め領域41R各々には、孔部Hおよびネジ孔41SHが設けられている。孔部Hの内側には、位置調整部材412および付勢部材413が設けられている。ここで、位置調整部材412が、本開示の「被付勢部材」の一具体例に対応する。
【0040】
図8Aは、孔部Hの内側に設けられた位置調整部材412および付勢部材413を表す平面図であり、図8B図8Aに示したB-B’線に沿った断面構成を表している。
【0041】
孔部Hは、ベースプレート41の厚み方向の表面S1側に設けられた有底穴Haと、ベースプレート41を厚み方向に貫通する貫通穴Hbとを有している。ベースプレート41の表面S1と裏面S2との間、即ち、ベースプレート41の厚み方向の途中に、有底穴Haの着座面41Zが設けられている。着座面41Zには、表面S1側に突出した凸部Hpが設けられている。貫通穴Hbは、有底穴Haに連通しており、ベースプレート41の表面S1から着座面41Zを介して裏面S2まで貫通している。
【0042】
ネジ孔41SHは、ベースプレート41を厚み方向に貫通しており、このネジ孔41SHにはネジ46(図5参照)が挿通されている。ネジ46は、ネジ孔41SHとともに、キャリッジ33に設けられたネジ孔にも挿通されている。即ち、ネジ46により、キャリッジ33に対するベースプレート41の位置が固定されている。例えば、一対の位置決め領域41R各々に、2つのネジ孔41SHと、1つの孔部Hとが設けられている。
【0043】
次に、図7図8Bとともに図9を用いて孔部Hに挿通された位置調整部材412について説明する。図9は、位置調整部材412の構成を表す斜視図である。位置調整部材412は、キャリッジ33に対するベースプレート41のXY平面での位置を高い精度で調整するためのものである。即ち、位置調整部材412により、キャリッジ33に対するノズル孔401H(ノズル列)のXY平面での位置を調整することができる。例えば、位置調整部材412により、ノズル列のY軸方向の位置およびノズル列の並び方向が調整されるようになっている。本実施の形態では、この位置調整部材412が、付勢部材413とともにベースプレート41の外周縁41Eの内側、具体的には孔部H内に設けられている。詳細は後述するが、これにより、インクジェットヘッド4を設置するための面積を小さくすることが可能となる。
【0044】
位置調整部材412は、例えば、ベースプレート41の厚み方向に沿って、軸部4121a、偏心部4122、中間部4123および軸部4121bをこの順に含んでいる(図9)。即ち、位置調整部材412は、例えば、偏心部4122を含む偏心カムにより構成されている。偏心カムにより構成された位置調整部材412は、ベースプレート41の厚み方向に沿ってコンパクトな構成としやすく、偏心部4122および中間部4123が容易にベースプレート41の厚みの範囲内に収容される。このため、後述のように、キャリッジ33の裏面から位置調整部材412を取り付けることも可能となる。このような位置調整部材412により、簡便に、精密な位置調整を行うことができる。ここで、軸部4121bが本開示の「第1軸部」の一具体例、軸部4121aが本開示の「第2軸部」の一具体例に各々対応する。
【0045】
例えば、軸部4121bは、キャリッジ33の軸孔33Hに挿入されている(図8B)。軸部4121bの断面(XY断面)形状は、例えば、円である。軸孔33Hの平面形状は、例えば、円である。このとき、軸部4121bの直径は、軸孔33Hの直径と略同じである。これにより、位置調整部材412が、キャリッジ33の軸孔33Hに回動可能に軸支される。位置調整部材412がキャリッジ33の軸孔33Hに軸支されることにより、キャリッジ33に対する位置調整部材412の位置が固定される。換言すれば、キャリッジ33に対する位置調整部材412の位置は、キャリッジ33の軸孔33Hのみにより決定することができる。即ち、キャリッジ33に対する位置調整部材412の位置を決定するために、複数の部材を用いる必要がない。よって簡単な構成要素でキャリッジ33に対するノズル孔401Hの位置を調整することができる。
【0046】
軸部4121bと偏心部4122との間の中間部4123は、貫通穴Hbのうち、着座面41Zよりも裏面S2側の部分に設けられている。中間部4123の平面形状は、例えば、円であり、軸部4121a,4121bの直径よりも小さくなっている。偏心部4122は、孔部Hの内側に設けられた基準面SS(後述)に当接されている。位置調整部材412を回転させることにより、基準面SSへの偏心部4122の当接状態が変化し、ベースプレート41がXY平面で変位するようになっている。
【0047】
図10は、偏心部4122の断面(XY断面)構成を表している。偏心部4122の断面形状は、例えば、歪んだ円形状であり、位置調整部材412の回転中心Cから外周までの距離が異なる部分を有している。偏心部4122は、例えば、回転中心Cから外周までの距離が最も短い距離r1を有する初期部4122sと、回転中心Cから外周までの距離が距離r1よりも長い距離r2を有する回転規制部4122rとを含んでいる。初期部4122sは、位置調整部材412を孔部Hに挿入後、かつ、位置調整部材412を回転させる前の状態、即ち、初期状態で基準面SSに当接される部分である。回転規制部4122rは、例えば、初期部4122sに隣接して配置されており、初期部4122sと回転規制部4122rとの間には、平面視で段差が形成されている。距離r2は、例えば、偏心部4122が有する回転中心Cから外周までの距離の最大値である。
【0048】
偏心部4122を間にして、軸部4121bと反対側に設けられた軸部4121aは、例えば、ベースプレート41の表面S1からZ軸方向に突出して設けられている。この軸部4121aの平面形状は、例えば、軸部4121bの平面形状と同様に円であり、軸部4121aの直径は、軸部4121bの直径と略同じになっている。この軸部4121aは、キャリッジ33の軸孔33Hに軸支可能に構成されている。位置調整部材412が、このような軸部4121aを有することにより、軸部4121aをキャリッジ33の軸孔33Hに挿入することも可能となる。したがって、キャリッジ33の両面どちらからでも、インクジェットヘッド4の取り付けが可能となる。
【0049】
付勢部材413は、孔部Hの有底穴Haに設けられている(図8A図8B)。この付勢部材413は、主に、キャリッジ33に対してベースプレート41を付勢するためのものである。より具体的には、付勢部材413が位置調整部材412を付勢することにより、キャリッジ33に対してベースプレート41が付勢されるようになっている。このような付勢部材413を設けることにより、キャリッジ33に対するベースプレート41のXY平面でのおおよその位置、即ち、キャリッジ33に対するノズル孔401HのXY平面でのおおよその位置が決まる。また、付勢部材413が設けられていることにより、この位置から位置調整部材412を回転させても、ベースプレート41をガタつかせることなく、変位させることができる。ここでは、孔部H内に位置調整部材412とともに付勢部材413が設けられている。このため、ベースプレート41の外周縁41Eの外側に、付勢部材413を設けるためのスペースが不要となる。
【0050】
付勢部材413は、例えば、線バネにより構成されており、延在方向の中央付近に屈曲部413Vを有している。この屈曲部413Vが凸部Hpと有底穴Haの内壁との間に設けられ、有底穴Haに付勢部材413が固定される。付勢部材413では、屈曲部413Vから一方に延在する部分が有底穴Haの内壁に当接され、屈曲部413Vから他方に延在する部分が位置調整部材412の偏心部4122に当接されている。これにより、付勢部材413は、キャリッジ33に軸支された位置調整部材412を付勢し、この付勢力の反作用により、孔部Hの内壁を介してベースプレート41がキャリッジ33に付勢される。このように、付勢部材413を孔部Hの内側に設けることにより、孔部Hの内側での力の及ぼし合いにより、ベースプレート41に対する位置調整部材412の位置が維持されるとともに、キャリッジ33に対するベースプレート41の位置が維持される。
【0051】
線バネにより構成された付勢部材413は、容易に屈曲部413Vを形成することができ、孔部Hの内側に配置し易い。よって、上記のように、孔部Hの内側での位置調整部材412とベースプレート41との間の力の及ぼし合いを容易に実現することができる。
【0052】
次に、図7図8Bとともに、図11を用いて、孔部Hについて説明する。図11は、孔部Hの平面形状を表している。孔部Hは、例えば、略四角形の平面形状を有する有底穴Haと、鍵穴状の平面形状を有する貫通穴Hbとを含んでいる。有底穴Haの方が貫通穴Hbよりも大きくなっており、平面視では、貫通穴Hbの外周縁の外側に有底穴Haの外周縁が配置されている。この有底穴Haの外周縁を形成する有底穴Haの内壁の一部に、偏心部4122が当接される基準面SSが設けられている(図8B)。
【0053】
基準面SSは、例えば、位置調整部材412の回転中心Cに対応する位置から、距離d1を有している(図8B図11)。距離d1は、例えば、偏心部4122の初期部4122sの回転中心Cからの距離r1と、略同じである。位置調整部材412を回転させることにより、基準面SSに当接される偏心部4122の回転中心Cからの距離が徐々に変化する。それに伴って、ベースプレート41とともに、キャリッジ33に対するノズル孔401H(ヘッドモジュール40)がXY平面で変位するようになっている。
【0054】
有底穴Haには、基準面SSに隣接する位置に係合部Eが設けられている(図8A図11)。係合部Eは、略四角形状の有底穴Haの外周縁の一辺に設けられた段差部分であり、位置調整部材412の回転方向において、基準面SSと隣り合う位置に設けられている。例えば、係合部Eは、基準面SSの位置から、距離d2分、外側に張り出した部分である。距離d2と距離d1との和は、偏心部4122の回転規制部4122rの回転中心Cからの距離r2よりも大きくなっている。偏心部4122の初期部4122sが、基準面SSに当接されているとき、このような係合部Eに偏心部4122の回転規制部4122rが係合される。
【0055】
鍵穴形状の貫通穴Hbは、略円の平面形状を有する第1貫通穴部分Hb1と、略四角形の平面形状を有する第2貫通穴部分Hb2とを含んでいる。第1貫通穴部分Hb1および第2貫通穴部分Hb2は連通しており、所定方向(例えば、図11では略Y軸に沿った方向)に並んで配置されている。第1貫通穴部分Hb1の外周縁は、第2貫通穴部分Hb2の外周縁よりも外側(有底穴Haの外周縁側)に広がっている。位置調整部材412の中間部4123は、第2貫通穴部分Hb2に設けられている(図8A)。中間部4123は、ベースプレート41をキャリッジ33に取り付ける前に第1貫通穴部分Hb1に挿入された後、貫通穴Hb内をスライドして第2貫通穴部分Hb2に設けられる。
【0056】
[インクジェットヘッド4の取付方法]
次に、図12図15を用いて、インクジェットヘッド4の取付方法について説明する。図12図13および図15は、各工程を表す斜視図であり、図14Aおよび図14Bは、インクジェットヘッド4の位置合わせ工程を表す平面図である。
【0057】
まず、ベースプレート41の孔部Hの内側に、位置調整部材412および付勢部材413をこの順に取付ける。このとき、付勢部材413は、有底穴Haの着座面41Zに載せ、凸部Hpと有底穴Haの内壁の間に屈曲部413Vを嵌め込む(図7参照)。また、位置調整部材412は、軸部4121bおよび中間部4123を貫通穴Hbの第1貫通穴部分Hb1に挿入した後、貫通穴Hb内をスライドさせて第2貫通穴部分Hb2に移動させる(図8A図8B参照)。これにより、軸部4121bがベースプレート41の裏面S2からZ方向に突出するとともに、中間部4123が第2貫通穴部分Hb2の着座面41Zよりも裏面S2側に設けられる。
【0058】
ベースプレート41の孔部Hの内側に、位置調整部材412および付勢部材413を取付けた後、図12に示したように、ベースプレート41の裏面S2から突出した位置調整部材412の軸部4121bをキャリッジ33の軸孔33Hに挿入する。これにより、位置調整部材412がキャリッジ33の軸孔33Hに軸支される。
【0059】
位置調整部材412の軸部4121bをキャリッジ33の軸孔33Hに挿入し、ベースプレート41をキャリッジ33に載置すると、位置調整部材412(具体的には偏心部4122)に当接された付勢部材413が、キャリッジ33の軸孔33Hに軸支された位置調整部材412を付勢する。この付勢力の反作用により、有底穴Haの内壁が付勢部材413に付勢される。これにより、ベースプレート41の突当部411A,411Bが、キャリッジ33の所定の位置に突き当てられ、キャリッジ33に対するベースプレート41のXY平面でのおおよその位置、即ちノズル孔401HのXY平面でのおおよその位置が決まる(図13)。このとき、有底穴Haの内壁に設けられた基準面SSに対向する位置に、偏心部4122(位置調整部材412)の初期部4122sが設けられている。初期部4122sは、例えば、基準面SSに当接されている(図8A図8B参照)。初期部4122sと基準面SSとの間に間隙が設けられていてもよい。ベースプレート41がキャリッジ33に対して上記の位置にあるとき、偏心部4122の回転規制部4122rは孔部H(有底穴Ha)の係合部E近傍に配置されている。
【0060】
続いて、図14A図14Bに示したように、位置調整部材412(偏心部4122)を回転させることにより、ノズル孔401HのX軸方向およびY軸方向の位置を、高い精度で調整する。例えば、位置調整部材412を紙面時計回りに回転させると、基準面SSに当接された初期部4122sが移動し、より回転中心Cからの距離が大きい偏心部4122の部分が基準面SSに当接される。このように、回転中心Cからの距離がより大きい偏心部4122が基準面SSに当接されることにより、ベースプレート41のXY平面での位置ひいてはノズル孔401H(ノズル列)のXY平面での位置が変位する。例えば、位置決め領域41Rの一方に設けられた位置調整部材412を回転させると、ベースプレート41は、他方の位置決め領域41Rを支点として反時計回りに変位する(図14A)。また、位置決め領域41Rの他方に設けられた位置調整部材412を回転させると、ベースプレート41は、一方の位置決め領域41Rを支点として時計回りに変位する(図14B)。両方の位置決め領域41Rの位置調整部材412を回転させることにより、ベースプレート41をY軸方向に平行移動させることも可能である。
【0061】
図16は、位置調整部材412の回転角度(rad)と、ノズル孔401HのXY平面での変位量(μm)との関係を表している。このように、ノズル孔401Hの変位量は、位置調整部材412の回転角度に対応しており、位置調整部材412の回転角度が大きくなるに連れてノズル孔401Hの変位量が大きくなる。具体的には、より回転中心Cからの距離が大きい部分の偏心部4122が基準面SSに当接されることにより、ベースプレート41の変位量ひいてはノズル孔401Hの変位量が大きくなる。このように、ノズル孔401Hの変位量と位置調整部材412の回転量とは比例関係にある。これにより、位置調整部材412の回転量からノズル孔401Hの変位量を容易に算出することができる。
【0062】
なお、位置調整部材412を図14A図14Bの紙面反時計回りに回転させようとすると、位置調整部材412(偏心部4122)の回転規制部4122rが、有底穴Haの係合部Eに係合する(図8A図8B参照)。これにより、作業者による位置調整部材412の反対方向への回転ミスの発生が抑えられ、簡便にノズル孔401Hの位置調整を行うことが可能となる。
【0063】
ノズル孔401Hを所望の位置に調整した後、図15に示したように、ネジ孔41SHにネジ46を挿入し、インクジェットヘッド4をキャリッジ33に固定する。例えば、このようにして、インクジェットヘッド4を取り付けることができる。キャリッジ33に、複数のインクジェットヘッド4を取り付けるときには、各々のインクジェットヘッド4をこのようにして、キャリッジ33に取り付ければよい。このようなインクジェットヘッド4の取り付けは、例えば、プリンタ1の製造時およびインクジェットヘッド4の交換時等に行われる。
【0064】
[動作および作用・効果]
(A.プリンタ1の基本動作)
このプリンタ1では、以下のようにして、記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作(印刷動作)が行われる。なお、初期状態として、図1に示した4種類のインクタンク3にはそれぞれ、対応する色(4色)のインクが十分に封入されているものとする。また、インクタンク3内のインクがインクジェットヘッド4内に充填された状態となっている。
【0065】
このような初期状態において、プリンタ1を作動させると、搬送機構2a,2bにおけるグリッドローラ21がそれぞれ回転することで、グリッドローラ21とピンチローラ22と間に記録紙Pが挟持されつつ搬送方向d(X軸方向)に沿って搬送される。また、このような搬送動作と同時に、駆動機構34における駆動モータ38が、プーリ35,36をそれぞれ回転させることにより無端ベルト37を動作させる。これにより、キャリッジ33がガイドレール31,32にガイドされながら、記録紙Pの幅方向(Y軸方向)に沿って往復移動する。そしてこの際に、各インクジェットヘッド4によって、インクを記録紙Pに適宜吐出させることで、この記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作がなされる。
【0066】
(B.ヘッドモジュール40における動作)
続いて、ヘッドモジュール40の動作について説明する(図6)。このヘッドモジュール40では、導入ポート44から排出ポート45に向かうインク9の流路が形成されていると共に、その流路にノズル孔401H(放出口)が設けられている。このインク9の流路では、導入ポート44から流路にインク9が供給されると、そのインク9が導入ポート44から排出ポート45に向かって流れると共に、そのインク9の一部が必要時(記録時)においてノズル孔401Hから外部に放出される。
【0067】
(C.作用・効果)
本実施の形態では、位置決め領域41Rが、ベースプレート41の外周縁41Eの内側に設けられている。より具体的には、位置調整部材412および付勢部材413がベースプレート41の孔部H内に設けられている。この位置決め領域41Rの孔部Hに設けられた付勢部材413が位置調整部材412を付勢し、この付勢力の反作用によりベースプレート41がキャリッジ33に付勢される。これにより、キャリッジ33に対するノズル孔401HのXY平面でのおおよその位置が決定される。更に、ベースプレート41の孔部H(有底穴Ha)の内側に設けられた基準面SSに位置調整部材412を作用させることにより、キャリッジ33に対するベースプレート41およびヘッドモジュール40のXY平面での位置が変化する。即ち、キャリッジ33に対するノズル孔401H(ノズル列)の位置が調整される。
【0068】
このインクジェットヘッド4では、ベースプレート41の外周縁41Eよりも内側の位置決め領域41R、より具体的には孔部Hに位置調整部材412および付勢部材413が設けられている。即ち、キャリッジ33に対するノズル孔401HのXY平面でのおおよその位置を決定するための部材が、ベースプレート41の外周縁41Eの内側、具体的にはベースプレート41の孔部H内に配置されている。これにより、キャリッジ33に対するノズル孔401HのXY平面でのおおよその位置を決定するための部材をベースプレート41の外周縁41Eの外側に配置する場合に比べて、インクジェットヘッド4の占有領域が小さくなる。よって、インクジェットヘッド4を設置するための面積を小さくすることが可能となる。また、このインクジェットヘッド4の設置面積の縮小化により、複数のインクジェットヘッド4を高密度でキャリッジ33に配置することが可能となる。
【0069】
このインクジェットヘッド4では、更に、この孔部Hの内側に位置調整部材412が当接される基準面SSが設けられており、この基準面SSに位置調整部材412を押し当てることにより、キャリッジ33に対するノズル孔401HのXY平面での位置が高精度に調整される。即ち、孔部H内に設けた位置調整部材412により、キャリッジ33に対するノズル孔401HのXY平面での位置を高い精度で調整することができる。したがって、ノズル孔401Hの位置を調整するための部材をベースプレート41の外周縁41Eの外側に配置する場合に比べて、インクジェットヘッド4の占有領域が小さくなる。よって、インクジェットヘッド4では、高い位置精度でノズル孔401Hを配置するとともに、インクジェットヘッド4の設置面積を小さくすることが可能となる。
【0070】
また、位置決め領域41Rは、ノズル孔401Hの並び方向(以下ノズル列方向という。ここではX軸方向)に沿った、ヘッドモジュール40の外側に設けられていることが好ましい。これにより、ノズル列方向に交差する方向(Y軸方向)でのインクジェットヘッド4の占有領域を小さくしやすい。ノズル列方向に平行方向のインクジェットヘッド4の占有面積を小さくするよりも、ノズル列方向に交差する方向のインクジェットヘッド4の占有面積を小さくする方が、キャリッジ33に、より高密度で複数のインクジェットヘッド4を設けることが可能となる。以下、これについて説明する。
【0071】
例えば、図2および図3に示したように、複数のインクジェットヘッド4がキャリッジ33に設けられているとき、Y軸方向に並ぶインクジェットヘッド4で互いのノズル列が重なる領域が大きくなり過ぎると、インクが吐出されないノズル孔401Hが増えるので生産性が低下する。このため、X軸方向のインクジェットヘッド4の占有面積を小さくしても、このノズル列の重なり領域の制限のため、X軸方向に並ぶインクジェットヘッド4の密度を高めることは困難となる。これに対し、Y軸方向に並ぶインクジェットヘッド4の間では、このようなノズル列の重なり領域の制限がないので、Y軸方向のインクジェットヘッド4の占有面積を小さくすることにより、効果的にY軸方向に並ぶインクジェットヘッド4の密度を高めることができる。
【0072】
また、位置決め領域41Rは、ベースプレート41のノズル列方向の両端部に設けられていることが好ましい。これにより、上記のように、一方の位置決め領域41Rを支点として他方の位置決め領域41Rを回転させ、他方の位置決め領域41Rを支点として一方の位置決め領域41Rを回転させることができる。したがって、ベースプレート41のノズル列方向の片方の端部のみに位置決め領域41Rを設けた場合に比べて、より自由にベースプレート41の角度および位置、ひいてはノズル列方向の角度およびノズル列の位置を調整することが可能となる。
【0073】
以上のように本実施の形態のインクジェットヘッド4およびプリンタ1では、孔部H内に位置調整部材412および付勢部材413を設けるようにしたので、ベースプレート41の外周縁41Eの外側に、ノズル孔401Hの位置決めを行うための部材を設ける場合に比べて、インクジェットヘッド4の占有面積を小さくすることができる。よって、インクジェットヘッド4を設置するための面積を小さくすることが可能となる。また、この孔部H内に設けた位置調整部材412により、キャリッジ33に対するノズル孔401HのXT平面での位置を高い精度で調整することができる。
【0074】
<2.その他の変形例>
以上、実施の形態をいくつか挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0075】
例えば、上記実施の形態では、プリンタ、インクジェットヘッドおよびヘッドチップにおける各部材の構成例(形状、配置、個数等)を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。
【0076】
また、上記実施の形態では、ベースプレート41の長辺方向の両端部に位置決め領域41Rを設ける場合について説明したが、ベースプレート41の長辺方向の一方の端部に位置決め領域41Rを設けるようにしてもよい。あるいは、位置決め領域41Rは、ベースプレート41の外周縁41Eの内側に設けられていればよく、例えば、ベースプレート41の短辺方向の端部等に設けることも可能である。
【0077】
また、上記実施の形態では、本開示の「被付勢部材」が位置調整部材412である場合を例に挙げて説明したが、本開示の「被付勢部材」を他の部材により構成するようにしてもよい。例えば、偏心部4122の設けられていないピンにより、本開示の「被付勢部材」が構成されていてもよい。このとき、付勢部材413がピンを付勢し、この付勢力の反作用によりベースプレート41がキャリッジ33に付勢される。これにより、ベースプレート41の突当部411A,411Bが、キャリッジ33の所定の位置に突き当てられ、キャリッジ33に対するノズル孔401HのXY平面での位置が決定される。キャリッジ33に対するノズル孔401Hの高精度の位置調整が不要であるとき、つまり、キャリッジ33に対するノズル孔401Hの位置がおおよそ決定されれば、十分にプリンタ1を使用可能であるときには、「被付勢部材」としてピン等を用いることができる。このような位置調整機能を有さない「被付勢部材」は、位置調整機能を有する「被付勢部材」に比べて、高い精度が要求されない。したがって、より簡便に、キャリッジに対するインクジェットヘッド4の位置決めを行うとともに、インクジェットヘッド4を設置するための面積を小さくすることが可能となる。
【0078】
また、プリンタ1は、インクタンク3とインクジェットヘッド4との間でインクを循環させるインク循環機構を備えていてもよく、あるいは、インクが循環しない非循環型のインクジェットヘッド4を備えたものであってもよい。
【0079】
また、アクチュエータプレート402は、互いに異なる分極方向を有する2枚の圧電基板を積層したシェブロンタイプのアクチュエータプレートであってもよく、あるいは、カンチレバータイプのアクチュエータプレートであってもよい。カンチレバータイプのアクチュエータプレートは、分極方向が厚み方向に沿って一方向に設定されている1つの圧電基板により形成されている。
【0080】
また、インクジェットヘッド4は、エッジシュートタイプのインクジェットヘッドであってもよく、あるいは、サイドシュートタイプのインクジェットヘッドであってもよい。
【0081】
また、上記実施の形態等では、プリンタ1が、シャトル方式で記録を行う場合について説明したが、プリンタ1は、ワンパス方式等の他の方式で記録を行うようになっていてもよい。シャトル方式は、インクジェットヘッド4が移動して記録がなされる方式であり、ワンパス方式は、記録媒体が一方向に移動して記録がなされる方式である。
【0082】
さらに、上記実施の形態等では、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例として、プリンタ1(インクジェットプリンタ)を挙げて説明したが、この例には限られず、インクジェットプリンタ以外の他の装置にも、本開示を適用することが可能である。換言すると、本開示の「液体噴射ヘッド」(インクジェットヘッド4)を、インクジェットプリンタ以外の他の装置に適用するようにしてもよい。具体的には、例えば、ファクシミリやオンデマンド印刷機などの装置に、本開示の「液体噴射ヘッド」を適用するようにしてもよい。
【0083】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0084】
また、本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
液体噴射記録装置のキャリッジに取り付けられる液体噴射ヘッドであって、
液体を噴射するノズル孔が設けられた噴射部と、
前記噴射部を支持するとともに、前記液体の噴射方向に貫通する貫通穴を含む孔部が設けられた支持部材と、
前記孔部内に設けられ、かつ、前記支持部材を前記キャリッジに付勢する付勢部材と、
前記キャリッジに対して所定の位置に配置されるとともに前記孔部内で前記付勢部材に付勢されることにより、前記キャリッジに対する前記ノズル孔の位置を決定する被付勢部材と
を備えた液体噴射ヘッド。
(2)
更に、前記孔部の内側に設けられるとともに、前記被付勢部材が当接される基準面を有し、
前記被付勢部材は、前記キャリッジに対する前記ノズル孔の位置を調整する位置調整部材である
前記(1)に記載の液体噴射ヘッド。
(3)
前記位置調整部材は、前記基準面に当接する部分を含む偏心部と、前記キャリッジに設けられた軸孔に軸支される第1軸部とを含む偏心カムである
前記(2)に記載の液体噴射ヘッド。
(4)
前記位置調整部材は、前記偏心部を間にして前記第1軸部の反対側に設けられるとともに、前記キャリッジに設けられた軸孔に軸支可能な第2軸部を含む
前記(3)に記載の液体噴射ヘッド。
(5)
前記ノズル孔の変位量は、前記位置調整部材の回転量に対応している
前記(3)または前記(4)に記載の液体噴射ヘッド。
(6)
前記偏心部は、
回転中心から第1の距離を有する初期部と、
前記初期部に隣接して設けられるとともに、前記回転中心から前記第1の距離よりも大きい第2の距離を有する回転規制部とを含み、
前記第2の距離は、前記孔部の前記回転中心に対応する位置から前記基準面までの距離よりも大きく、
前記孔部には、前記回転規制部に係合されることにより、前記位置調整部材の一方の方向の回転を規制する係合部が設けられている
前記(3)ないし前記(5)のうちいずれか1つに記載の液体噴射ヘッド。
(7)
前記被付勢部材は前記孔部に挿通されるとともに、前記キャリッジに設けられた軸孔に回動可能に軸支されている
前記(1)ないし前記(6)のうちいずれか1つに記載の液体噴射ヘッド。
(8)
前記噴射部では、複数の前記ノズル孔が所定の方向に沿って並び、
前記支持部材は、前記噴射部の前記所定の方向の外側に位置決め領域を有し、
前記孔部は、前記位置決め領域に設けられている
前記(1)ないし前記(7)のうちいずれか1つに記載の液体噴射ヘッド。
(9)
前記支持部材は、前記所定の方向の両側に前記位置決め領域を有する
前記(8)に記載の液体噴射ヘッド。
(10)
前記付勢部材は、線バネにより構成されている
前記(1)ないし前記(9)のうちいずれか1つに記載の液体噴射ヘッド。
(11)
前記(1)ないし前記(10)のうちいずれか1つに記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドが搭載された前記キャリッジと
を備えた液体噴射記録装置。
【符号の説明】
【0085】
1…プリンタ、10…筺体、2a,2b…搬送機構、21…グリッドローラ、22…ピンチローラ、3…インクタンク、33…キャリッジ、4…インクジェットヘッド、40…ヘッドモジュール、400…ヘッドチップ、401…ノズルプレート、401H…ノズル孔、402…アクチュエータプレート、403…カバープレート、41…ベースプレート、41E…外周縁、41R…位置決め領域、41SH…ネジ孔、411A,411B…突当部、412…位置調整部材、4121a,4121b…軸部、4122…偏心部、4123…中間部、413…付勢部材、42…カバー、43…電子制御盤、44…導入ポート、45…排出ポート、46…ネジ、S1…表面、S2…裏面、P…記録紙、d…搬送方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16