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特許7265435調理の方法、システム、プログラムおよび機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】調理の方法、システム、プログラムおよび機器
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/06 20060101AFI20230419BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20230419BHJP
【FI】
A47J37/06 316
A23L5/10 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019130556
(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2021013607
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】浅輪 泰久
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼屋 駿介
(72)【発明者】
【氏名】中倉 雛子
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-018051(JP,A)
【文献】特開平05-209825(JP,A)
【文献】特表2015-521921(JP,A)
【文献】特開平08-009932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/06
A23L 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼き色を目標焼き色レベルに到達させる加熱終了時間を設定する工程と、
加熱中、被調理物の焼き色情報を取得する工程と、
前記焼き色情報が示す焼き色の時間推移から前記目標焼き色レベルに到達する予測加熱終了時間を算出する工程と、
前記加熱終了時間と前記予測加熱終了時間とを比較し、両者の時間差が予め設定した範囲内であれば前記加熱終了時間を維持し、両者の時間差が前記範囲を超えていば前記加熱終了時間を前記予測加熱終了時間に補正する工程と、
を含むことを特徴とする調理方法。
【請求項2】
さらに、被調理物の加熱時間を計測する工程と、
焼き色レベルと加熱時間とが関係付けられた比較情報を用いて前記焼き色情報が該当する焼き色レベルおよび加熱時間を特定する工程と、
前記焼き色レベルと加熱開始から該焼き色レベルに到達までの実時間とを用いて前記予測加熱終了時間を算出する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の調理方法。
【請求項3】
さらに、加熱時間が加熱終了時間に到達したとき、前記被調理物の加熱部に含まれるプラテン部を前記被調理物から分離する工程を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の調理方法。
【請求項4】
前記比較情報に、加熱前の前記被調理物を基準に段階的な濃度レベルを持つ焼き色レベル情報を用いることを特徴とする請求項に記載の調理方法。
【請求項5】
加熱中、被調理物の焼き色情報を取得する焼き色情報取得部と、
目標焼き色レベルに焼き色を到達させるための加熱終了時間が設定され、前記焼き色情報が示す焼き色の時間推移から前記目標焼き色レベルに到達する予測終了時間を算出し、前記予測終了時間加熱終了時間とを比較し、両者の時間差が予め設定した範囲内であれば前記加熱終了時間を維持し、両者の時間差が前記範囲を超えていれば、該予測終了時間に前記加熱終了時間を補正する制御部と、
を備えることを特徴とする調理システム。
【請求項6】
さらに、被調理物の加熱時間を計測する計時部を備え、
前記制御部は、焼き色レベルと加熱時間とが関係付けられた比較情報を用いて前記焼き色情報が該当する焼き色レベルおよび加熱時間を特定し、前記焼き色レベルと加熱開始から該焼き色レベルに到達までの実時間とを用いて前記予測終了時間を算出することを特徴とする請求項5に記載の調理システム。
【請求項7】
前記焼き色情報の取得にカメラを備えることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の調理システム。
【請求項8】
前記制御部は、さらに、前記加熱終了時間に到達したとき、前記被調理物の加熱部に含まれるプラテン部を前記被調理物から分離させることを特徴とする請求項5ないし請求項7の何れかの請求項に記載の調理システム。
【請求項9】
前記制御部は、さらに、加熱前の前記被調理物を基準に段階的な濃度レベルを持つ焼き色レベル情報を生成することを特徴とする請求項に記載の調理システム。
【請求項10】
コンピュータで実現させるためのプログラムであって、
焼き色を目標焼き色レベルに到達させる加熱終了時間を設定する機能と、
加熱中、被調理物の焼き色情報を取得する機能と、
前記焼き色情報が示す焼き色の時間推移から前記目標焼き色レベルに到達する予測加熱終了時間を算出する機能と、
前記加熱終了時間と前記予測加熱終了時間とを比較し、両者の時間差が予め設定した範囲内であれば前記加熱終了時間を維持し、両者の時間差が前記範囲を超えていば前記加熱終了時間を前記予測加熱終了時間に補正する機能と、
を前記コンピュータに実現させるためのプログラム。
【請求項11】
さらに、被調理物の加熱時間を計測する機能と、
焼き色レベルと加熱時間とが関係付けられた比較情報を用いて前記焼き色情報が該当する焼き色レベルおよび加熱時間を特定する機能と、
前記焼き色レベルと加熱開始から該焼き色レベルに到達までの実時間とを用いて前記予測加熱終了時間を算出する機能と、
を前記コンピュータに実現させるための請求項10に記載のプログラム。
【請求項12】
さらに、加熱時間が加熱終了時間に到達したとき、前記被調理物の加熱部に含まれるプラテン部を前記被調理物から分離する機能を前記コンピュータに実現させるための請求項10または請求項11に記載のプログラム。
【請求項13】
前記比較情報に、加熱前の前記被調理物を基準に段階的な濃度レベルを持つ焼き色レベル情報を用いる機能を前記コンピュータに実現させるための請求項11に記載のプログラム。
【請求項14】
加熱中、被調理物の焼き色情報を取得する焼き色情報取得部と、
目標焼き色レベルに焼き色を到達させるための加熱終了時間が設定され、前記焼き色情報が示す焼き色の時間推移から前記目標焼き色レベルに到達する予測終了時間を算出し、前記予測終了時間加熱終了時間とを比較し、両者の時間差が予め設定した範囲内であれば前記加熱終了時間を維持し、両者の時間差が前記範囲を超えていれば、該予測終了時間に前記加熱終了時間を補正する制御部と、
を備えることを特徴とする機器。
【請求項15】
さらに、被調理物の加熱時間を計測する計時部を備え、
前記制御部は、焼き色レベルと加熱時間とが関係付けられた比較情報を用いて前記焼き色情報が該当する焼き色レベルおよび加熱時間を特定し、前記焼き色レベルと加熱開始から該焼き色レベルに到達までの実時間とを用いて前記予測終了時間を算出することを特徴とする請求項14に記載の機器。
【請求項16】
前記焼き色情報の取得にカメラを備えることを特徴とする請求項14または請求項15に記載の機器。
【請求項17】
前記制御部は、さらに、前記加熱終了時間に到達したとき、前記被調理物の加熱部に含まれるプラテン部を前記被調理物から分離させることを特徴とする請求項14ないし請求項16の何れかの請求項に記載の機器。
【請求項18】
前記制御部は、さらに、加熱前の前記被調理物を基準に段階的な濃度レベルを持つ焼き色レベル情報を生成することを特徴とする請求項15に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はたとえば、クラムシェルグリドルなど、パティなどの被調理物を加熱調理に適する調理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
クラムシェルグリドルは、焼板とプラテンとの間にパティなどの被調理物を挟んで加熱する調理機器であり、焼板側に燃焼熱源、プラテン側に電熱源を備える。
斯かるクラムシェルグリドルに関し、プラテンの昇降、回転移動および焼板とプラテンの間隔設定を単一のモーターの回転により自動的にかつ一工程で行うことが知られている(特許文献1)。
このクラムシェルグリドルに関し、プレートカバーとしてグリルプレートを2分割して覆い、プレートカバー41を、短冊形状のカバー部材31aを複数連結して、グリルプレート3を覆うことが知られている(特許文献2の段落番号0021および図8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-309236号公報
【文献】特開2014-124409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、クラムシェルグリドルでは一回の調理で、複数のパティなどの被調理物を焼き上げることができる。
しかしながら、ひとつの焼板に複数の被調理物を設置して焼き上げるクラムシェルグリドルでは、一度の調理で被調理物の焼き上げ数が多い反面、複数の被調理物が共通のプラテンで加熱され、加熱条件は同一となる。斯かる場合、被調理物の厚さが異なれば、焼き上がりや焼き色に相違を生じ、焼き上がりを均一化できない。焼き上がりを均一化するために調理の途中でプラテンの開閉頻度を増加させると、加熱条件に変化を来すという課題がある。
【0005】
複数の被調理物に対してひとつのプラテンで押圧する場合には、被調理物ごとにその押圧力を変更できない。このため、被調理物が厚ければ、被調理物が受ける押圧力が大となるので、焼きが深くなり、被調理物が薄ければ、焼きが浅く、焼きムラや軟らかめの焼き上がりとなる。つまり、被調理物の厚さは、焼き上がりに影響する。
また、被調理物がパティなどの成形品であっても、その表面部には凹凸があるため、その凸部で熱集中を生じるなど、凹凸部が焼きムラや焼き色に変化を生じさせるという課題もある。同一の加熱条件で複数の被調理物を加熱する場合には、個別に焼き色を変更できないという課題がある。
発明者は、被調理物に対する加熱条件たとえば、加熱温度を一定にしても、被調理物によって焼き色に変化が生じ、均一化できないこと、プラテンの分割化が焼き上がりに多様性を付与できるとの知見を得た。
そこで、本発明の目的は上記課題および知見に鑑み、被調理物に厚さ変動や凹凸が存在しても、被調理物を所望の焼き色に焼き上げまたは所定の焼き色に均一化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の調理方法の一側面によれば、焼き色を目標焼き色レベルに到達させる加熱終了時間を設定する工程と、加熱中、被調理物の焼き色情報を取得する工程と、前記焼き色情報が示す焼き色の時間推移から前記目標焼き色レベルに到達する予測加熱終了時間を算出する工程と、前記加熱終了時間と前記予測加熱終了時間とを比較し、両者の時間差が予め設定した範囲内であれば前記加熱終了時間を維持し、両者の時間差が前記範囲を超えていば前記加熱終了時間を前記予測加熱終了時間に補正する工程とを含む。
この調理方法において、さらに、被調理物の加熱時間を計測する工程と、焼き色レベルと加熱時間とが関係付けられた比較情報を用いて前記焼き色情報が該当する焼き色レベルおよび加熱時間を特定する工程と、前記焼き色レベルと加熱開始から該焼き色レベルに到達までの実時間とを用いて前記予測加熱終了時間を算出する工程とを含んでよい。
この調理方法において、さらに、加熱時間が加熱終了時間に到達したとき、前記被調理
物の加熱部に含まれるプラテン部を前記被調理物から分離する工程を含んでよい。
この調理方法において、前記比較情報に、加熱前の前記被調理物を基準に段階的な濃度レベルを持つ焼き色レベル情報を用いてよい。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の調理システムの一側面によれば、加熱中、被調理物の焼き色情報を取得する焼き色情報取得部と、目標焼き色レベルに焼き色を到達させるための加熱終了時間が設定され、前記焼き色情報が示す焼き色の時間推移から前記目標焼き色レベルに到達する予測終了時間を算出し、前記予測終了時間加熱終了時間とを比較し、両者の時間差が予め設定した範囲内であれば前記加熱終了時間を維持し、両者の時間差が前記範囲を超えていれば、該予測終了時間に前記加熱終了時間を補正する制御部とを備える。
この調理システムにおいて、さらに、被調理物の加熱時間を計測する計時部を備え、前記制御部は、焼き色レベルと加熱時間とが関係付けられた比較情報を用いて前記焼き色情報が該当する焼き色レベルおよび加熱時間を特定し、前記焼き色レベルと加熱開始から該焼き色レベルに到達までの実時間とを用いて前記予測終了時間を算出してよい。
この調理システムにおいて、前記焼き色情報の取得にカメラを備えてよい。
この調理システムにおいて、前記制御部は、さらに、前記加熱終了時間に到達したとき、前記被調理物の加熱部に含まれるプラテン部を前記被調理物から分離させてよい。
この調理システムにおいて、前記制御部は、さらに、加熱前の前記被調理物を基準に段階的な濃度レベルを持つ焼き色レベル情報を生成してよい。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のプログラムの一側面によれば、コンピュータで実現させるためのプログラムであって、焼き色を目標焼き色レベルに到達させる加熱終了時間を設定する機能と、加熱中、被調理物の焼き色情報を取得する機能と、前記焼き色情報が示す焼き色の時間推移から前記目標焼き色レベルに到達する予測加熱終了時間を算出する機能と、前記加熱終了時間と前記予測加熱終了時間とを比較し、両者の時間差が予め設定した範囲内であれば前記加熱終了時間を維持し、両者の時間差が前記範囲を超えていば前記加熱終了時間を前記予測加熱終了時間に補正する機能とを前記コンピュータに実現させる。
このプログラムにおいて、さらに、被調理物の加熱時間を計測する機能と、焼き色レベルと加熱時間とが関係付けられた比較情報を用いて前記焼き色情報が該当する焼き色レベルおよび加熱時間を特定する機能と、前記焼き色レベルと加熱開始から該焼き色レベルに到達までの実時間とを用いて前記予測加熱終了時間を算出する機能とを前記コンピュータに実現させてよい。
このプログラムにおいて、さらに、加熱時間が加熱終了時間に到達したとき、前記被調理物の加熱部に含まれるプラテン部を前記被調理物から分離する機能を前記コンピュータに実現させてよい。
このプログラムにおいて、前記比較情報に、加熱前の前記被調理物を基準に段階的な濃度レベルを持つ焼き色レベル情報を用いる機能を前記コンピュータに実現させてよい。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の機器の一側面によれば、加熱中、被調理物の焼き色情報を取得する焼き色情報取得部と、目標焼き色レベルに焼き色を到達させるための加熱終了時間が設定され、前記焼き色情報が示す焼き色の時間推移から前記目標焼き色レベルに到達する予測終了時間を算出し、前記予測終了時間加熱終了時間とを比較し、両者の時間差が予め設定した範囲内であれば前記加熱終了時間を維持し、両者の時間差が前記範囲を超えていれば、該予測終了時間に前記加熱終了時間を補正する制御部とを備える。
この機器において、さらに、被調理物の加熱時間を計測する計時部を備え、前記制御部は、焼き色レベルと加熱時間とが関係付けられた比較情報を用いて前記焼き色情報が該当する焼き色レベルおよび加熱時間を特定し、前記焼き色レベルと加熱開始から該焼き色レベルに到達までの実時間とを用いて前記予測終了時間を算出してよい。
この機器において、前記焼き色情報の取得にカメラを備えてよい。
この機器において、前記制御部は、さらに、前記加熱終了時間に到達したとき、前記被
調理物の加熱部に含まれるプラテン部を前記被調理物から分離させてよい。
この機器において、前記制御部は、さらに、加熱前の前記被調理物を基準に段階的な濃度レベルを持つ焼き色レベル情報を生成させてよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、次の何れかの効果が得られる。
(1) 加熱中または加熱後、被調理物の焼き色の時間推移から加熱終了時間を調整し、被調理物の焼き色を所望の焼き色レベルに調整し、均一化できるとともに、焼き色品質を高めることができる。
(2) 被調理物の焼き色の自由度を高め、所望の焼き色を実現できる。
(3) 被調理物の焼き色設定や調整を簡略化でき、焼き色設定の自動化とともに、調理に対する人的な負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態に係る調理工程の手順を示すフローチャートである。
図2】調理機器の一例を示す図である。
図3】調理機器の各グリドル部の熱源部を示す図である。
図4】調理機器の各プラテン部の熱源部を示す図である。
図5】プラテン開閉機構部の一例を示す図である。
図6】Aはプラテン部の上昇状態を示す図であり、Bはプラテン部の下降状態を示す図である。
図7】Aはプラテン部の回動を示す図であり、Bはプラテン部の全開状態を示す図である。
図8】グリドル部上の被調理物の検出を示す図である。
図9】被調理物の加熱を示す図である。
図10】Aは被調理物の画像取得を示す図であり、Bは被調理物の取出しを示す図である。
図11】第1の調理情報ファイルを示す図である。
図12】比較情報ファイルを示す図である。
図13】焼き色の時間推移を示す図である。
図14】予測加熱終了時間の算出処理を示すフローチャートである。
図15】比較情報の生成手順を示すフローチャートである。
図16】第2の実施の形態に係る調理システムの一例を示す図である。
図17】制御部のハードウェアの一例を示す図である。
図18】第2の調理情報ファイルの一例を示す図である。
図19】情報提示部による情報提示を示す図である。
図20】調理の処理シーケンスを示す図である。
図21】第3の実施の形態に係る調理機器の一部を切欠いて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係る調理工程の一例を示している。この図1に示す工程は一例であり、斯かる工程に本発明が限定されるものではない。
この調理工程は、本発明の調理方法またはプログラムにより実現される工程であり、図1において、Sは工程、Sに付した番号は工程順の一例である。
この調理工程には目標焼き色レベル(加熱終了時間)の設定(S101)、被調理物Fの投入(S102)、被調理物Fの色情報の取得(S103)、第1の加熱管理(S104、S105)、焼き色情報の取得(S106)、予測加熱終了時間の算出(S107)、加熱終了時間の調整(S108、S109、S110)、第2の加熱管理(S111、S112)、被調理物Fの取出し(S113)が含まれる。
目標焼き色レベル(加熱終了時間)の設定(S101): 調理すべき被調理物Fについて、目標焼き色レベルへの到達つまり、加熱を終了させる加熱終了時間を設定する。
被調理物Fの投入(S102): 調理機器2(図2)に被調理物Fを投入する。調理機器2はたとえば、クラムシェルグリドルであり、被調理物Fはたとえば、パティである。
【0013】
被調理物Fの色情報の取得(S103): 調理機器2に投入された被調理物Fについて、被調理物Fから色情報を取得する。この色情報は加熱前の色情報である。この色情報の取得にはカメラ42による画像情報を用いる。この色情報は制御部76(図16)に受け取られ、第1の調理情報ファイル44(図11)に格納されて記憶部86(図17)に保存される。
第1の加熱管理(S104、S105): この加熱管理は、調理途上の被調理物Fから焼き色情報を取得するための管理である。被調理物Fの加熱開始(S104)から加熱時間を計測し、一定時間が経過したかを判断する(S105)。加熱時間の計測には、タイマー82(図16)を用いる。
焼き色情報の取得(S106): 加熱開始から一定時間が経過したとき(S104のYES)、被調理物Fの焼き色情報を取得する。この焼き色情報の取得にはカメラ42による画像情報を用いる。この色情報は制御部76に受け取られ、調理情報ファイル44(図11)に格納されて記憶部86(図17)に保存される。
【0014】
予測加熱時間の算出(S107): 加熱開始から一定時間が経過時に取得した焼き色情報は、被調理物Fの焼き色の時間推移情報である。この時間推移情報を用いて目標焼き色レベルに到達する予測加熱終了時間を算出する。たとえば、取得した焼き色情報が該当する焼き色レベルと、該焼き色レベルに到達までの実時間とを用いて目標焼き色レベルに到達する予測加熱終了時間を算出する。
加熱終了時間の調整(S108、S109、S110): この加熱終了時間の調整の第1段階として、予測加熱終了時間と設定された加熱終了時間とを比較し、予測加熱終了時間と加熱終了時間との時間差が一定範囲内かを判断する(S108)。該時間差が一定範囲内であれば(S108のYES)、つまり、加熱終了時間=予測加熱終了時間であれば、当初の加熱終了時間を維持する(S109)。該時間差が一定範囲内を超えていれば(S108のNO)、加熱終了時間を予測加熱終了時間に補正して新たな加熱終了時間とする(S110)。
第2の加熱管理(S111、S112): 被調理物Fの加熱の時間を監視し、この時間が加熱終了時間に到達したか判定する(S111)。この加熱終了時間もタイマー82(図16)により計測される。加熱終了時間に到達するまで(S111のNO)、加熱を継続し、加熱終了時間に到達すれば(S111のYES)、加熱を終了する(S112)。加熱を終了したとき、被調理物Fの加熱部に含まれるプラテン部10(図2)を開き、被調理物Fから分離させる。
被調理物Fの取出し(S113): 加熱された被調理物Fは調理機器2から取り出し、調理品として提供する。
【0015】
<調理機器2>
図2は、調理機器2の一例を示している。この調理機器2は機器の一例である。この調理機器2は、複数の被調理物Fを加熱するグリドル4およびプラテン6を有する。グリドル4およびプラテン6は加熱部の一例である。
グリドル4は被調理物Fを加熱する鉄板などの加熱板である。このグリドル4には一例として、左右2列、各列4面の合計8面のグリドル部8としてグリドル部8-L1、8-L2、8-L3、8-L4、8-R1、8-R2、8-R3、8-R4に分割されている。以後、特定の位置を指定しない場合には、単にグリドル部8と称する。各グリドル部8は図中単一の被調理物Fを破線で示しているが、二以上の被調理物Fを加熱してもよく、グリドル部8は二以上の被調理物Fの加熱に必要な面積を有してよい。
【0016】
グリドル4の上面には開閉可能なプラテン6が備えられる。プラテン6には各グリドル部8-L1、8-L2、8-L3、8-L4、8-R1、8-R2、8-R3、8-R4に対応し、プラテン部10-L1、10-L2、10-L3、10-L4、10-R1、10-R2、10-R3、10-R4が開閉可能に設置されている。以後、特定の位置を指定しない場合には、単にプラテン部10と称する。各プラテン部10はたとえば、ひとつ以上の被調理物Fを加熱するに必要な面積を有する。
この例では、図中、上側に加熱前の被調理物Fを待機させる加熱前待機部12-1、下側に加熱後の被調理物Fを待機させる加熱後待機部12-2が設けられている。
【0017】
<各グリドル部8の熱源部14>
図3は、各グリドル部8の熱源部14を示している。各グリドル部8には、各グリドル部8を個別に加熱する熱源部14が設けられている。各熱源部14は燃焼熱源、電熱源の何れでもよい。各熱源部14は加熱駆動部16により個別に制御される。
【0018】
<プラテン部10の熱源部18>
図4はプラテン部10の熱源部18を示している。各プラテン部10には各グリドル部8上の被調理物Fのたとえば、上面側を個別に加熱する熱源部18が設けられている。各熱源部18はたとえば、電熱源が用いられる。各熱源部18は加熱駆動部20により個別に制御される。
各プラテン部10は個別にプラテン開閉機構部22(図5)により開閉可能である。
【0019】
<プラテン開閉機構部22>
図5は、プラテン開閉機構部22を示している。プラテン開閉機構部22は、各プラテン部10に備えられる。このプラテン開閉機構部22は、昇降・加圧機構部24および回動機構部26を備える。昇降・加圧機構部24は、制御部76(図16)の制御により、プラテン部10を個別に昇降させるとともに、プラテン部10を下降させて被調理物Fを加圧する。回動機構部26は、各プラテン部10を個別に回動させる。つまり、プラテン部10の開閉は、昇降・加圧機構部24によるプラテン部10の昇降と、回動機構部26によるプラテン部10の回動の併用により行われる。
昇降・加圧機構部24は、プラテン部10の回動機構部26を支持するプランジャ28を備え、このプランジャ28をシリンダ部30で支持している。プラテン部10は、プランジャ28の進退により昇降させることができる。この昇降・加圧機構部24には昇降駆動部32が備えられ、プラテン部10の昇降位置は昇降センサー34により検出される。昇降センサー34の検出情報は制御部76(図16)に提供され、プラテン部10の昇降制御に用いられる。
プラテン部10の昇降位置は、グリドル部8とプラテン部10の間隔Dを表す。この間隔情報は調理情報ファイル44(図11)に書き込まれる。
回動機構部26は、プラテン部10を回転可能に支持し、回動駆動部36により駆動する。この回動駆動部36で回動するプラテン部10の角度θ(図7のA)は角度センサー38により検出される。角度センサー38の検出情報は制御部76(図16)に提供され、プラテン部10の回動制御に用いられる。
【0020】
<プラテン部10の昇降>
図6のAはプラテン部10の上昇状態、図6のBはプラテン部10の下降および被調理物Fの加圧状態を示している。
プラテン部10は、図6のAに示すように、昇降・加圧機構部24により上昇させてグリドル部8の被調理物Fから離すことができるとともに、図6のBに示すように、昇降・加圧機構部24によりグリドル部8に載置された被調理物Fの上面に下降させ、被調理物Fに任意の押圧力を付与できる。このプラテン部10の昇降位置は昇降センサー34(図5)で検出できる。
【0021】
<プラテン部10の回動>
図7のAはプラテン部10の回動、図7のBはプラテン部10の全開状態を示している。
プラテン部10は図7のAに示すように、プランジャ28を上限点まで上昇させた位置で回動機構部26により回動させることができ、たとえば、0度ないし90度の範囲における任意の角度θで維持することができる。この回動制御は制御部76(図16)により行われる。また、プラテン部10は図7のBに示すように、θ=90度の位置で全開状態となり、加熱面40をグリドル部8の上面と直交状態に維持させることができる。このプラテン部10の角度θは角度センサー38(図5)で検出できる。
【0022】
<被調理物Fの投入から加熱前の色情報の取得>
図8は、被調理物Fの投入時、色情報の取得処理を示している。被調理物Fの投入の検出から加熱前の色情報の取得はカメラ42によって行う。このカメラ42はプラテン部10の開閉位置を避けて、プラテン部10の上方に設置されている。
グリドル部8を既述の90度の位置、つまり、プラテン部10が全開状態で、グリドル部8上の被調理物Fがカメラ42の撮影により検出される。この検出はプラテン部10の半開状態でも可能である。カメラ42の撮影および画像取得は制御部76(図16)により実行される。
【0023】
<被調理物Fの加熱処理>
図9は、被調理物Fの加熱処理を示している。グリドル部8に投入された被調理物Fにはその上面に平行にプラテン部10が当てられる。被調理物Fはグリドル部8とプラテン部10に挟まれ、各熱源部14、18により加熱処理が行われる。つまり、被調理物Fの上下面が同時に加熱され、いわゆる被調理物Fの両面焼きが行われる。
【0024】
<加熱中または加熱後の焼き色情報の取得>
図10のAは、加熱中または加熱後、被調理物Fの焼き色情報の取得を示している。被調理物Fの焼き色情報は被調理物Fの投入時と同様に、カメラ42により取得できる。この画像情報は制御部76(図16)に取り込まれ、被調理物Fに関係付けられて調理情報ファイル44(図11)に書き込まれる。
図10のBは、加熱後の被調理物Fの取出しを示している。被調理物Fに設定された加熱時間が経過すると、プラテン部10が加熱中の被調理物Fから分離させて全開状態に制御され、この全開状態で、被調理物Fがグリドル部8から取り出される。
【0025】
<調理情報ファイル44>
図11は、被調理物Fの調理に用いられる調理情報ファイル44を示している。この調理情報ファイル44には被調理物部46、調理状況部48、加熱前色情報部50、加熱時間部52、加熱中焼き色情報部54、焼き色レベル部56、目標焼き色レベル58、加熱終了時間部59、予測加熱終了時間部60、時間差部61、加熱後焼き色情報部62が含まれる。
被調理物部46には被調理物Fを特定する名称を含む識別情報が格納される。調理状況部48には、被調理物Fが加熱前か、加熱中か、加熱後かの状態情報が格納される。加熱前色情報部50には、加熱前の被調理物Fの色情報が格納される。この色情報は、比較情報ファイル64(図12)の基準加熱時間Tr=0を基準とした被調理物Fの画像情報が格納される。加熱時間部52には、加熱開始からの加熱時間、タイマー82の加熱開始からの計測時間を表す時間情報が格納される。
加熱中焼き色情報部54には、加熱中の被調理物Fの焼き色情報として加熱開始から一定時間経過後に被調理物Fから取得した焼き色情報が格納される。焼き色レベル部56には、加熱中に被調理物Fから取得した焼き色情報が該当する焼き色レベルを表すレベル情報が格納される。
目標焼き色レベル58には被調理物Fの目標焼き色レベルが格納される。加熱終了時間部59には目標焼き色レベルに対して設定される目標基準時間が格納される。予測加熱終了時間部60には、被調理物Fの目標焼き色レベルに到達させる予測加熱終了時間が格納される。時間差部61には加熱終了時間と予測加熱終了時間との時間差が格納される。加熱後焼き色情報部62には被調理物Fの焼き色終了時間後の焼き色画像情報が格納される。
【0026】
<比較情報ファイル64>
図12は、比較情報ファイル64を示している。この比較情報ファイル64には比較被調理物部66、焼き色情報部68、焼き色レベル部70、基準加熱時間部72が含まれる。比較被調理物部66には被調理物Fの比較情報を取得した比較被調理物Frを表す情報が格納される。焼き色情報部68には比較被調理物Frの焼き色レベルに相当する焼き色画像情報が格納される。この例では、焼き色レベルを一例として7段階レベルを設定し、焼き色レベルをコントラスト情報で表している。焼き色レベル部70には焼き色の濃度レベルを表す段階値0、1、2、・・・6が格納される。基準加熱時間部72には比較被調理物Frの各焼き色レベルに到達する加熱時間0、Tr1、Tr2、Tr3、・・・Tr6が格納される。
【0027】
<焼き色の時間推移による加熱時間の予測>
図13は、横軸に加熱時間、縦軸に焼き色レベルを取り焼き色の時間推移を示している。
基準近似線Lrは基準加熱時間Trに対する焼き色レベルの時間推移である。これに対し、近似線L1、L2は焼き色レベル=2と、焼き色レベル=2に到達させた加熱時間=T21、T22とから求めた焼き色の時間推移(つまり、被調理物Fの焼き色トレンド)を表わしている。この場合、近似線L1では基準加熱時間Tr2に到達するまでの加熱時間T21は基準加熱時間Tr2より短く、近似線L2では基準加熱時間Tr2に到達するまでの加熱時間T22は基準加熱時間Tr2より長い。
【0028】
近似線L1の傾きK1は、式(1) から求められる。
K1=2÷T21 ・・・(1)
同様に、近似線L2の傾きK2は、式(2) から求められる。
K2=2÷T22 ・・・(2)
被調理物Fの焼き色を目標焼き色レベル=「5」に設定したとすれば、この目標焼き色レベル=5に到達する加熱時間をT51またはT52とすると、式(3) 、(4) が成立する。
5=K1×T51 ・・・(3)
5=K2×T52 ・・・(4)
式(3) に式(1) のK1、式(4) に式(2) のK2を代入すると、加熱時間T51、T52は式(5) 、式(6) から求められる。
T51=(5/2)×T21 ・・・(5)
T52=(5/2)×T22 ・・・(6)
つまり、近似線L1の被調理物Fでは、目標焼き色レベル=5に到達させる予測加熱時間T51が基準加熱時間Tr5より短くなり、近似線L2の被調理物Fでは、目標焼き色レベル=5に到達させる予測加熱時間T51が基準加熱時間Tr5より長くなる。
予測加熱時間T51の短縮時間をΔT51、予測加熱時間T52の延長時間をΔT52とすれば、短縮時間ΔT51、延長時間ΔT52は式(7) 、式(8) から求められる。
ΔT51=Tr5-T51=(5/2)×T21 ・・・(7)
ΔT52=T52-Tr5=(5/2)×T22 ・・・(8)
この例では、近似線Lr、L1、L2のように、一次関数に直線近似しているが、これは一例であり、複数次の関数を用いても同様の関係から予測加熱時間を算出でき、目標加熱レベルに到達させることができる。
【0029】
<予測加熱終了時間の算出>
図14は、予測加熱終了時間の算出の処理手順を示している。この予測加熱終了時間の算出にはたとえば、加熱中の被調理物Fの焼き色情報を取得する(S201)。取得した焼き色情報について、この焼き色情報と比較情報ファイル64の焼き色情報とを比較し、焼き色情報が該当する焼き色レベルを特定する(S202)。
この焼き色レベル到達時点までの実時間を取得する(S203)。この実時間の取得には加熱開始から加熱時間を計測しているタイマー82(図16)の計測時間を当てればよい。
既述した図13に示すように、横軸に加熱時間、縦軸に焼き色レベルを取り、加熱時間=実時間に対する焼き色レベルと、基準近似線Lrと同様に、実時間=0および焼き色レベル=0の出発点を結べば、焼き色トレンドを示す近似線(たとえば、L1、L2)が得られる。この近似線と目標焼き色レベル点の交点が予測加熱時間を示す。
そして、この予測加熱時間の演算には式(5) または式(6) を用いて算出すればよい。これにより、予測加熱終了時間を算出できる(S204)。
【0030】
<比較情報の生成>
図15は、比較情報を生成する処理手順を示している。
この比較情報の生成には、被調理物Fと同等の比較被調理物Frを用いる。この比較被調理物Frは、複数の被調理物Fから選択したひとつまたは複数の被調理物Fでもよいし、被調理物Fと同一属性の被調理物の何れでもよい。
この比較情報の生成には被調理物Fの加熱処理に用いる調理機器2(図2)が用いられる。この調理機器2のグリドル部8とプラテン部10との間に比較被調理物Frを投入し(S301)、この比較被調理物Frの加熱前色情報を取得する(S302)。
この比較被調理物Frの加熱を開始し(S303)、この加熱開始から加熱時間を計測する。この計測にはタイマー82(図16)を用いればよい。
この加熱開始からの加熱時間の経過を監視し(S304、S306、S308、S310、S312、S314)、所定の加熱時間T1、T2、T3、T4、T5、T6ごとに比較被調理物Frの焼き色情報を取得する。この焼き色情報の取得には、カメラ42による画像を用いればよい。
【0031】
加熱開始から加熱時間T1が経過したとき(S304のYES)、比較被調理物Frの焼き色情報(レベル1)を取得し(S305)、同様に加熱時間T2が経過したとき(S306のYES)、比較被調理物Frの焼き色情報(レベル2)を取得する(S307)。同様に加熱時間T3が経過したとき(S308のYES)、比較被調理物Frの焼き色情報(レベル3)を取得し(S309)、加熱時間T4が経過したとき(S310のYES)、比較被調理物Frの焼き色情報(レベル4)を取得する(S311)。同様に加熱時間T5が経過したとき(S312のYES)、比較被調理物Frの焼き色情報(レベル5)を取得し(S313)、同様に加熱時間T6が経過したとき(S314のYES)、比較被調理物Frの焼き色情報(レベル6)を取得する(S315)。
そして、取得した各レベルの焼き色画像は、比較被調理物Fr、焼き色情報、焼き色レベルおよび加熱基準時間とともに比較情報ファイル64に格納される(S316)。
【0032】
<第1の実施の形態の効果>
この第1の実施の形態によれば、次の何れかの効果が得られる。
(1) 加熱される被調理物Fの焼き色の時間推移から予測加熱終了時間を算出し、予測加熱終了時間と予め設定した加熱終了時間とを比較し、両者の時間差が所定時間以上であれば、加熱終了時間を予測加熱終了時間に補正して加熱することができる。
(2) この結果、被調理物の焼き色を所望の焼き色レベルに調整し、均一化できるとともに、焼き色品質を高めることができる。
(3) 被調理物の焼き色の自由度を高めることができ、加熱終了時間の修正で被調理物Fを所望の焼き色に焼き上げることができる。
(4) 被調理物の焼き色設定や調整を簡略化でき、焼き色設定の自動化とともに、調理に対する人的な負荷を軽減できる。
【0033】
〔第2の実施の形態〕
図16は、第2の実施の形態に係る調理システム74の一例を示している。図16に示す構成は一例であり、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。
この調理システム74は、既述の調理工程をコンピュータによる情報処理で実現することができる。
この調理システム74には調理機器2、制御部76、操作入力部78、情報提示部80が備えられる。この実施の形態では、被調理物Fの加熱時間を計測するためのタイマー82が備えられ、その計測時間が制御部76に提供される。
制御部76は、昇降センサー34、角度センサー38の検出情報を受け、グリドル部8における加熱駆動部16、プラテン部10における加熱駆動部20、昇降駆動部32または回動駆動部36の制御、カメラ42の撮影制御、加熱時間制御などの他、操作入力部78の情報入力制御、情報提示部80の表示制御を行う。
【0034】
操作入力部78は焼き上げ情報入力部などの情報入力に用いられる。この操作入力部78には情報入力に用いられるキーボード、バーコード読取り部、マウス、I/O88(図17)に接続された情報端末の他、タッチパネルが含まれる。タッチパネルは情報提示部80の表示画面に設置すればよい。
情報提示部80はたとえば、LCD(Liquid Crystal Display)で構成され、制御部76の制御により、調理情報ファイル44(図11)の格納情報を含む、被調理物Fの調理情報を提示する。
【0035】
<制御部76のハードウェア>
図17は、制御部76のハードウェアを示している。図17において、図16と同一部分には同一符号を付してある。
制御部76には、プロセッサ84、記憶部86、入出力部(I/O)88、通信部90が設置されている。プロセッサ84は、記憶部86にあるOS(Operating System)を実行し、既述の調理方法や調理プログラムを実現するための情報処理を実行する。この情報処理には調理情報ファイル44(図11)、比較情報ファイル64(図12)が用いられ、各調理情報ファイル44、92の最新情報への更新を含む。
【0036】
I/O88は、プロセッサ84の制御により、情報の入力、情報取出しなどに用いられる。
記憶部86はROM(Read-Only Memory)、RAM(Random-Access Memory)などの記憶素子を備え、OS、調理プログラムなど、各種のプログラムを格納するとともに、各調理情報ファイル44、92が格納されている。通信部90はプロセッサ84の制御により、管理センターや携帯情報端末などと無線または有線による接続により情報の授受を行う。
【0037】
<制御部76の情報処理>
制御部76の情報処理には、
a)被調理物Fの検出や色情報の取込み、
b)被調理物Fの加熱終了時間の設定を含む時間管理、
c)熱源部14、18の制御、
d)焼き色情報の取得、
e)プラテン開閉機構部22の開閉制御および昇降制御、
f)ファイル更新、
g)角度情報の取込み、
h)被調理物Fの撮影制御および画像情報の取込み、
i)加熱による焼き色の時間推移情報の生成、
j)予測加熱終了時間の演算
k)予測加熱終了時間と初期設定に係る加熱終了時間との比較および加熱終了時間の補正
などが含まれている。
【0038】
<調理情報ファイル92>
図18は、調理情報ファイル92の一例を示している。この調理情報ファイル92には、既述の調理情報ファイル44と同様の項目として被調理物部94、調理状況部96、加熱前色情報部98、加熱時間部100、加熱中焼き色情報部102、焼き色レベル部104、目標焼き色レベル部106、加熱終了時間部108、予測加熱終了時間部110、時間差部112、加熱後焼き色情報部113が含まれる。各項目には既述した同様の情報が格納されるので、その説明を割愛する。
【0039】
<情報提示>
図19は、情報提示部80の情報提示画面114の表示例を示している。この情報提示画面114にはファイル情報提示部116、加熱時間提示部118が提示される。ファイル情報提示部116には被調理物Fの調理中の情報として、調理情報ファイル44(図11)と同等の調理情報ファイル92と同様に更新された調理情報が提示される。
加熱時間提示部118には加熱中の被調理物Fの加熱開始から現在までの経過時間が提示される。
【0040】
<情報処理>
図20は、調理システム74による調理の情報処理シーケンスを示している。この処理シーケンスは、本発明の調理プログラムまたは調理方法の一例である。この処理シーケンスにおいて、Sは手順または工程を示し、Sに付した番号は手順または工程の順序の一例である。
この情報処理では、制御部76の初期設定の後、被調理物Fの目標焼き色レベル(加熱終了時間)を設定する(S401)。
制御部76は、被調理物Fの投入指示を行う(S402)。この投入指示はたとえば、開状態に制御されたプラテン部10におけるグリドル部8を表す提示情報として、情報提示部80に投入指示を提示すればよい。
この投入指示の後、カメラ42に撮影指示を行い(S403)、カメラ42は、グリドル部8の加熱面上を撮影する(S404)。これにより、制御部76は、カメラ42から被調理物Fの色情報を取得する(S405)。
プラテン部10が閉じられた後、制御部76は、熱源部14、18に加熱の指示を行い(S406)、グリドル部8とプラテン部10に挟まれた被調理物Fの加熱を開始し(S407)、タイマー82は加熱開始から加熱時間を計測する(S408)。
制御部76は、タイマー82から時間情報を取得し(S409)、加熱開始から一定時間が経過したかを判定する(S410)。一定時間が経過した時点で、制御部76は特定のプラテン開閉機構部22に対して開く指示を行う(S411)。プラテン開閉機構部22はプラテン部10を開状態にする(S412)。カメラ42に撮影指示を行い(S413)、カメラ42は被調理物Fの撮影を行う(S414)。
制御部76はカメラ42により被調理物Fの焼き色情報を取得する(S415)。制御部76は、焼き色情報が該当する焼き色レベルと加熱時間を用いて予測加熱終了時間を算出する(S416)。制御部76は、予測加熱終了時間と設定されている加熱終了時間とを比較し(S417)、予測加熱終了時間と加熱終了時間の時間差が所定時間内であれば(S418のYES)、設定されている加熱終了時間を維持する(S419)。予測加熱終了時間と加熱終了時間の時間差が所定時間を超えていれば(S418のNO)、予測加熱終了時間に加熱終了時間を補正し、新たな加熱終了時間を設定する(S420)。
制御部76はタイマー82から時間情報を取得し(S421)、加熱終了時間が到来したかを判断する(S422)。
制御部76は、加熱終了時間が到来すれば(S422のYES)、熱源部14、18に加熱終了を指示し(S423)、熱源部14、18は加熱を終了する(S424)。
この加熱終了の後、制御部76はプラテン開閉機構部22に対し、プラテン部10を開く指示を発する(S425)。プラテン開閉機構部22はプラテン部10を開き、全開状態にする(S426)。
制御部76は、カメラ42に対し撮影指示を行い(S427)、カメラ42はグリドル部8上の被調理物Fを撮影する(S428)。
制御部76はカメラ42から被調理物Fの画像情報を取得し(S429)、被調理物Fの取出しを行う(S430)。
【0041】
<プログラムにより実現する機能>
調理プログラムではコンピュータにより次の機能が実現される。
(1) 情報提示部148に提示するための提示情報を生成するとともに、加熱時間の経過に応じて、被調理物Fの投入可能なまたは取出し可能なグリドル部情報、プラテン部情報の何れかまたは双方を含む提示情報を生成する。
(2) 制御部76は、グリドル部8およびプラテン部10による被調理物Fの加熱時間の経過を監視し、加熱時間が終了するグリドル部8およびプラテン部10を検索し、その検索結果とともに被調理物Fの投入指示を含む提示情報を生成する。
(3) 制御部76は、被調理物Fの厚さに応じて、被調理物Fを挟む間隔Dまたは押圧力Pを設定または調整するための制御情報を生成する。
(4) 制御部76は、熱源部14、18に対し、被調理物Fを加熱するための加熱制御情報を生成する。
(5) 制御部76は、プラテン開閉機構部22に対し、プラテン部10の開閉制御情報を生成する。
(6) 制御部76は、調理情報ファイル44、92の更新情報を生成する。
(7) 制御部76は、被調理物Fの焼き色情報を取得し、予測加熱終了時間の算出、加熱終了時間との比較、その補正を行う。
(8) 制御部76は、焼き色情報の該当する焼き色レベルおよび加熱時間を特定し、加熱開始から該焼き色レベルに到達までの実時間とを用いて予測終了時間を算出する。
(9) 制御部76は加熱時間が加熱終了時間に到達したとき、被調理物Fからプラテン部10を分離させる制御を行う。
(10) 制御部76は、比較情報として、加熱前の前記被調理物を基準に前記加熱温度を表す段階的な濃度レベルを持つ焼き色レベル情報を生成し、焼き色レベルの特定に用いる制御を行う。
【0042】
<第2の実施の形態の効果>
この第2の実施の形態によれば、次の何れかの効果が得られる。
(1) 第1の実施の形態に係る調理方法およびプログラムを実現することができる。
(2) 第1の実施の形態で述べた効果を得ることができる。
(3) 情報提示部80の提示情報により調理状況を確認できる。
【0043】
〔第3の実施の形態〕
図21は、第3の実施の形態に係る調理機器2を示している。図21において、図2図10と同一部分には同一符号を付してある。
この調理機器2にはたとえば、機器筐体120に既述の制御部76、操作入力部78および情報提示部80が設置される。調理機器2、操作入力部78および情報提示部80は制御部76で制御される。
この調理機器2は、制御部76の構成および機能を備えたものであり、その詳細は第1および第2の実施の形態で説明しており、その説明を割愛する。
【0044】
<第3の実施の形態の効果>
この第3の実施の形態によれば、次の何れかの効果が得られる。
(1) この実施の形態によれば、調理機器2において、被調理物Fの調理方法をコンピュータによる情報処理により実現することができる。
(2) この調理機器2によれば、調理システムおよび調理プログラムにより、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同様の効果が得られる。
(3) クラムシェルグリドルに対して、次のような効果が得られる。
ア)調理機器2では被調理物Fを機器内に入れても、焼き上がりまでの間、任意のプラテン部10を自由に開閉できる。
イ)オーダーピーク時、追加オーダーに対応でき、即応性がよい。
ウ)被調理物Fを個別に調理できるので、繁忙状態に関係なく、所望数の被調理物Fの調理に対応でき、調理途中の被調理物Fがあっても追加調理が可能である。
エ)パティなどの被調理物Fの厚さの変動に対応でき、被調理物Fに対する何の精度を緩和できる。
オ)被調理物Fを順次に、需要に応じて加熱することができ、調理効率を高めることができる。
カ)機器構造は簡略化されており、製造コストを低減でき、グリドル部の選択駆動により、ランニングコストを抑制できる。
(4) 多面化された調理面での複数の被調理物Fの一括調理または少数調理ができるとともに、被調理物Fの加熱時間の調整や焼き色確認など調理者の負担軽減とともに、安全性を高めることができる。
【0045】
〔他の実施の形態〕
(1) 上記実施の形態では、左右4組のグリドル部8およびプラテン部10を設置しているが、3組以下または5組以上のグリドル部8およびプラテン部10を備えてよい。
(2) 上記実施の形態では、制御部76を調理システム74の制御部76として構成しているが、調理システム74と連係可能な情報端末を制御部76に用いてもよい。
(3) 上記実施の形態では、グリル面を複数のグリドル部に分割しているが、本発明は、クラムシェルグリドルなど、調理面が多面化されていない調理システムにも利用でき、上記実施の形態に限定されない。
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態等について説明した。本発明は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、被調理物から焼き色の時間推移から目標焼き色レベルに到達する予測加熱終了時間を算出し、この予測加熱終了時間と設定された加熱終了時間との時間差に応じて加熱終了時間を補正するので、被調理物の厚さなどが異なっていても被調理物の焼き色を含む焼き上がり品質の均一化などに寄与することができる。
【符号の説明】
【0047】
2 調理機器
4 グリドル
6 プラテン
8、8-L1、8-L2、8-L3、8-L4、8-R1、8-R2、8-R3、8-R4 グリドル部
10、10-L1、10-L2、10-L3、10-L4、10-R1、10-R2、10-R3、10-R4 プラテン部
12-1 加熱前待機部
12-2 加熱後待機部
14、18 熱源部
16、20 加熱駆動部
22 プラテン開閉機構部
24 昇降・加圧機構部
26 回動機構部
28 プランジャ
30 シリンダ部
32 昇降駆動部
34 昇降センサー
36 回動駆動部
38 角度センサー
40 加熱面
42 カメラ
44 調理情報ファイル
46 被調理物部
48 調理状況部
50 加熱前色情報部
52 加熱時間部
54 加熱中焼き色情報部
56 焼き色レベル部
58 目標焼き色レベル部
59 加熱終了時間部
60 予測加熱終了時間部
61 時間差部
62 加熱後焼き色情報部
64 比較情報ファイル
66 比較被調理物部
68 焼き色情報部
70 焼き色レベル部
72 基準加熱時間部
74 調理システム
76 制御部
78 操作入力部
80 情報提示部
82 タイマー
84 プロセッサ
86 記憶部
88 入出力部(I/O)
90 通信部
92 調理情報ファイル
94 被調理物部
96 調理状況部
98 加熱前色情報部
100 加熱時間部
102 加熱中焼き色情報部
104 焼き色レベル部
106 目標焼き色レベル部
108 加熱終了時間部
110 予測加熱終了時間部
112 時間差
113 加熱後焼き色情報部
114 情報提示画面
116 ファイル情報提示部
118 加熱時間提示部
120 機器筐体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21