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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】モジュラープラグ及びケーブルハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6461 20110101AFI20230419BHJP
   H01R 13/6466 20110101ALI20230419BHJP
   H01R 24/64 20110101ALI20230419BHJP
【FI】
H01R13/6461
H01R13/6466
H01R24/64
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019131840
(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公開番号】P2021018842
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100154900
【弁理士】
【氏名又は名称】関 京悟
(72)【発明者】
【氏名】田中 理司
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-243537(JP,A)
【文献】特開2010-277861(JP,A)
【文献】特開2016-039040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/6461
H01R 13/6466
H01R 13/658
H01R 24/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュラージャックの複数の相手コンタクトとそれぞれ接触可能な複数のコンタクトと、
前記複数のコンタクトを保持するコンタクト保持部と、
基板と、
を備え、
前記複数のコンタクトは所定ピッチで一列に並べられており、
前記基板は、第1コンタクト接続面と、前記第1コンタクト接続面と反対の第2コンタクト接続面と、を有し、
前記複数のコンタクトは、
前記第1コンタクト接続面と対向すると共に前記第1コンタクト接続面に形成された第1電極パッドに電気的に接続する第1接続部を有する、第1コンタクトと、
前記第2コンタクト接続面と対向すると共に前記第2コンタクト接続面に形成された第2電極パッドに電気的に接続する第2接続部を有する、第2コンタクトと、
を含み、
前記複数のコンタクトは、複数の差動伝送対を含み、
前記複数の差動伝送対のうち対を成す2つのコンタクトが互いに隣接している差動伝送対には前記第1コンタクトが適用され、
前記複数の差動伝送対のうち対を成す2つのコンタクトが互いに隣接していない差動伝送対には前記第2コンタクトが適用される、
モジュラープラグ。
【請求項2】
請求項1に記載のモジュラープラグであって、
前記基板は、前記基板の板厚方向において、前記第1接続部と前記第2接続部の間に配置されている、
モジュラープラグ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモジュラープラグであって、
前記第1接続部は前記第1電極パッドに半田接続されており、
前記第2接続部は前記第2電極パッドに半田接続されており、
前記コンタクト保持部は、前記基板の板厚方向において前記第1接続部及び前記第2接続部を覆わないように形成されている、
モジュラープラグ。
【請求項4】
請求項3に記載のモジュラープラグであって、
前記基板の板厚方向において前記第1接続部を覆う第1カバー部と、
前記基板の板厚方向において前記第2接続部を覆う第2カバー部と、
を更に備えた、
モジュラープラグ。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか1項に記載のモジュラープラグであって、
前記コンタクト保持部には、前記第1コンタクトの前記第1接続部と前記第2コンタクトの前記第2接続部の間に前記基板を挿入する際に前記基板を案内する挿入ガイドが形成されている、
モジュラープラグ。
【請求項6】
請求項5に記載のモジュラープラグであって、
前記挿入ガイドは、前記基板の板厚方向において前記基板と対向する2つの第1対向部と、前記基板の板厚方向及び前記基板の挿入方向に対して直交する方向で前記基板と対向する2つの第2対向部と、を有する、
モジュラープラグ。
【請求項7】
請求項5に記載のモジュラープラグであって、
前記挿入ガイドは、前記基板が挿入される開口を有する、
モジュラープラグ。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか1項に記載のモジュラープラグと、
前記モジュラープラグが取り付けられるケーブルと、
を備えた、
ケーブルハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュラープラグ及びケーブルハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(米国特許出願公開第2018/0254586号明細書)は、本願の図18に示すように、RJ45プラグアセンブリ100を開示している。RJ45プラグアセンブリ100は、フロントハウジング101と、フロントコーム102と、導電シェル103と、PCBアセンブリ104と、リア導電シェル105と、曲げ径抑制フード106と、を備えている。PCBアセンブリ104は、PCB110と、PCB110に圧入保持された複数のプラグコンタクト111と、フロントロードバー112と、リアロードバー113と、を備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、昨今の通信速度の高速化に伴い、モジュラープラグにおけるクロストークの要求水準が厳しくなってきている。
【0004】
本発明の目的は、モジュラープラグにおけるクロストークを抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明の観点によれば、モジュラージャックの複数の相手コンタクトとそれぞれ接触可能な複数のコンタクトと、前記複数のコンタクトを保持するコンタクト保持部と、基板と、を備え、前記基板は、第1コンタクト接続面と、前記第1コンタクト接続面と反対の第2コンタクト接続面と、を有し、前記複数のコンタクトは、前記第1コンタクト接続面と対向すると共に前記第1コンタクト接続面に形成された第1電極パッドに電気的に接続する第1接続部を有する、第1コンタクトと、前記第2コンタクト接続面と対向すると共に前記第2コンタクト接続面に形成された第2電極パッドに電気的に接続する第2接続部を有する、第2コンタクトと、を含む、モジュラープラグが提供される。
好ましくは、前記基板は、前記基板の板厚方向において、前記第1接続部と前記第2接続部の間に配置されている。
好ましくは、前記第1接続部は前記第1電極パッドに半田接続されており、前記第2接続部は前記第2電極パッドに半田接続されており、前記コンタクト保持部は、前記基板の板厚方向において前記第1接続部及び前記第2接続部を覆わないように形成されている。
好ましくは、前記基板の板厚方向において前記第1接続部を覆う第1カバー部と、前記基板の板厚方向において前記第2接続部を覆う第2カバー部と、を更に備える。
好ましくは、前記コンタクト保持部には、前記第1コンタクトの前記第1接続部と前記第2コンタクトの前記第2接続部の間に前記基板を挿入する際に前記基板を案内する挿入ガイドが形成されている。
好ましくは、前記挿入ガイドは、前記基板の板厚方向において前記基板と対向する2つの第1対向部と、前記基板の板厚方向及び前記基板の挿入方向に対して直交する方向で前記基板と対向する2つの第2対向部と、を有する。
好ましくは、前記挿入ガイドは、前記基板が挿入される開口を有する。
上記のモジュラープラグと、前記モジュラープラグが取り付けられるケーブルと、を備えた、ケーブルハーネスが提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、前記基板を挟んで前記第1コンタクトの前記第1接続部の反対側に前記第2コンタクトの前記第2接続部が配置されるので、前記第1コンタクトと前記第2コンタクトの間のクロストークを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】プラグ付きLANケーブルの斜視図である。
図2】プラグ付きLANケーブルの分解斜視図である。
図3】プラグ本体の斜視図である。
図4】コンタクト保持部の斜視図である。
図5】コンタクト保持部の別の角度から見た斜視図である。
図6】上コンタクトの斜視図である。
図7】下コンタクトの斜視図である。
図8】プラグ本体の一部切り欠き斜視図である。
図9】中継基板の斜視図である。
図10】中継基板の別の角度から見た斜視図である。
図11】配線パターンの斜視図である。
図12】層毎の配線パターンの平面図である。
図13】プラグ本体に中継基板を取り付けた状態を示す斜視図である。
図14】プラグ本体に中継基板を取り付けた状態を示す別の角度から見た斜視図である。
図15】ロケータの斜視図である。
図16】ロケータに取り付けられたケーブルの一部が樹脂封止された様子を示す斜視図である。
図17】中継基板にケーブルを半田接続した状態を示す斜視図である。
図18】特許文献1の図12を簡略化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、各図において半田そのものは説明の都合上、その描画を省略している。
【0009】
図1には、プラグ付きLANケーブル1(ケーブルハーネス)を示している。本実施形態のプラグ付きLANケーブル1は、IEEE802.3bt(type4)で規定された給電性能を有するPoE対応型であって、更に通信速度が10[Gbps]である高速通信に対応したものである。
【0010】
プラグ付きLANケーブル1は、モジュラープラグ2とケーブル3で構成されている。モジュラープラグ2は、RJ45に準拠したものである。図2に示すように、ケーブル3は、4対の撚り対線pをシールド3A及び外部被覆3Bで覆って構成されている。
【0011】
ただし、プラグ付きLANケーブル1の給電性能や通信速度、モジュラープラグのコネクタ形状、ケーブル3の撚り対線pの対数及びシールドの有無は上記に限定されない。
【0012】
図2に示すように、モジュラープラグ2は、プラグ本体4と、中継基板5(基板)、ロケータ6、上カバー7(第1カバー部)、下カバー8(第2カバー部)、シールド9、フード10を備えている。
【0013】
(方向の定義)
ここで、図1及び図2を参照して、「挿抜方向」「上下方向」「幅方向」を定義する。
【0014】
挿抜方向は、モジュラープラグ2を図示しないモジュラージャックに挿抜する方向と定義する。挿抜方向は、嵌合方向と、その反対の抜去方向を含む。嵌合方向は、モジュラープラグ2をモジュラージャックに嵌合させるためにモジュラープラグ2をモジュラージャックに向かって移動させる方向である。
【0015】
上下方向は、挿抜方向に対して直交する方向であって、図2において、中継基板5の板厚方向と定義する。上下方向は、上方と下方を含む。上方は、中継基板5から上カバー7を見る方向である。
【0016】
幅方向は、挿抜方向及び上下方向に直交する方向である。
【0017】
(プラグ本体4)
以下、図3から図8を参照して、プラグ本体4を説明する。
【0018】
図3に示すように、プラグ本体4は、複数のプラグコンタクト20(コンタクト)と、複数のプラグコンタクト20を保持するコンタクト保持部21と、を備える。
【0019】
図4及び図5に示すように、コンタクト保持部21は、保持部本体22と、挿入ガイド23と、2つの連結部24と、で構成されている。
【0020】
保持部本体22は、複数のプラグコンタクト20を圧入により保持する部分であって、略直方体状に形成され、複数のプラグコンタクト20がそれぞれ圧入される複数のコンタクトスリット25が形成されている。複数のコンタクトスリット25は、幅方向に所定ピッチで形成されており、上下方向に開口している。
【0021】
挿入ガイド23は、中継基板5をコンタクト保持部21に挿入して取り付けるに際し中継基板5の挿入をガイドする部分であって、保持部本体22から抜去方向に離れて配置されている。挿入ガイド23は、挿抜方向に開口する角筒状であって、上下方向で互いに対向する天板23A及び底板23B、幅方向で互いに対向する2つの側板23Cで構成されている。天板23Aは、底板23Bよりも上方に配置されている。2つの側板23Cは、何れも、天板23A及び底板23Bを幅方向で離れた位置で連結している。従って、挿入ガイド23は、挿抜方向で開口する挿入開口23Dを有する。
【0022】
2つの連結部24は、何れも、保持部本体22と挿入ガイド23を幅方向で離れた位置で連結する部分であって、保持部本体22から挿入ガイド23へ挿抜方向に沿って梁状に延びている。2つの連結部24は、幅方向で互いから離れるように配置されており、幅方向で互いに対向している。2つの連結部24は、それぞれ、挿入ガイド23の2つの側板23Cを保持部本体22の幅方向における端部に連結している。従って、図5に示すように、コンタクト保持部21は、上下方向で開口する確認窓26を有する。
【0023】
図3に示す複数のプラグコンタクト20は、図6に示す上コンタクト30(第1コンタクト)と、図7に示す下コンタクト31(第2コンタクト)と、を含む。本実施形態において、複数のプラグコンタクト20は、8つのプラグコンタクト20を含む。8つのプラグコンタクト20は、6つの上コンタクト30と、2つの下コンタクト31と、を含む。ただし、プラグコンタクト20や上コンタクト30、下コンタクト31の個数はこれに限定されない。複数のプラグコンタクト20は、例えば、銅又は銅合金の金属板を打ち抜き加工し、その後にニッケル及び金にてメッキすることで製造される。
【0024】
図6に示すように、各上コンタクト30は、圧入部32、上方突出部33、接続腕部34を含む。
【0025】
圧入部32は、図4のコンタクト保持部21の保持部本体22の各コンタクトスリット25に圧入される部分である。
【0026】
上方突出部33は、圧入部32から上方に突出する部分である。
【0027】
接続腕部34は、上方突出部33の上端部33Aから抜去方向に延びる片持梁である。接続腕部34は、抜去方向側の自由端部としての上接続部35(第1接続部)を有する。上接続部35は、下方に若干膨らみ出るように形成されている。
【0028】
図7に示すように、各下コンタクト31は、圧入部36及び接続腕部37を含む。
【0029】
圧入部36は、図4のコンタクト保持部21の保持部本体22の各コンタクトスリット25に圧入される部分である。
【0030】
接続腕部37は、圧入部36の上端部36Aから抜去方向に延びる片持梁である。接続腕部37は、抜去方向側の自由端部としての下接続部38(第2接続部)を有する。
【0031】
図8には、複数のプラグコンタクト20がコンタクト保持部21の保持部本体22の複数のコンタクトスリット25にそれぞれ圧入された状態を示している。説明の便宜上、コンタクト保持部21の一部を切り欠いている。
【0032】
以下、説明の便宜上、図8において、複数のプラグコンタクト20を、幅方向において順に、プラグコンタクト201、プラグコンタクト202、プラグコンタクト203、プラグコンタクト204、プラグコンタクト205、プラグコンタクト206、プラグコンタクト207、プラグコンタクト208と称する。周知の通り、プラグコンタクト201とプラグコンタクト202が対となって差動信号を伝送する。また、プラグコンタクト203とプラグコンタクト206が対となって差動信号を伝送する。また、プラグコンタクト204とプラグコンタクト205が対となって差動信号を伝送する。また、プラグコンタクト207とプラグコンタクト208が対となって差動信号を伝送する。そして、プラグコンタクト203及びプラグコンタクト206は、差動信号を伝送する対をなすにもかかわらず相互に隣接しておらず、プラグコンタクト204及び205を間に挟んで配置されている。従って、プラグコンタクト203及び206は、隣接する差動信号対との間でクロストークが発生し易い。詳しくは、プラグコンタクト203は、隣接するプラグコンタクト201、202の対及び204、205の対とそれぞれクロストークを発生し易く、またプラグコンタクト206は、隣接するプラグコンタクト204、205の対及び207、208の対とそれぞれクロストークを発生し易い。このためプラグコンタクト203及び206は、とりわけNEXT(Near End Crosstalk)性能が出し難いものとなっている。そこで、本実施形態では、プラグコンタクト201、202、204、205、207、208として上コンタクト30が採用され、残りのプラグコンタクト203及び206として下コンタクト31が採用されている。換言すれば、差動信号を伝送する対をなすにもかかわらず相互に隣接しないプラグコンタクト203及び206には下コンタクト31を採用し、残余の差動信号を伝送する対をなすもの同士が相互に隣接するプラグコンタクト201、202、204、205、207、208には上コンタクト30を採用している。これにより、プラグコンタクト201、202、204、205、207、208の上接続部35と、プラグコンタクト203及び206の下接続部38は、上下方向において互いに離れて配置される。従って、プラグコンタクト201、202、204、205、207、208の上接続部35と、プラグコンタクト203及び206の下接続部38が幅方向で隣り合う場合と比較して、プラグコンタクト203及び206のクロストークが抑制され、所望のNEXT性能が出し易くなる。なお、本実施形態とは逆に、差動信号を伝送する対をなすにもかかわらず相互に隣接しないプラグコンタクト203及び206として上コンタクト30を採用し、残余の差動信号を伝送する対をなすもの同士が相互に隣接するプラグコンタクト201、202、204、205、207、208として下コンタクト31を採用する形態も可能である。
【0033】
なお、プラグコンタクト201、202、204、205、207、208の上接続部35と、プラグコンタクト203及び206の下接続部38は、中継基板5に半田接続するために、平面視で図5に示す確認窓26内に突出している。
【0034】
(中継基板5)
次に、図9から図12を参照して、中継基板5を詳細に説明する。
【0035】
中継基板5は、ケーブル3とプラグ本体4の間に配置されて、通信や給電を中継するための基板である。本実施形態において、中継基板5は、NEXT性能を改善して前述した高速通信を実現すべく、中継基板5の両面及び内部に4層の配線パターンが形成された所謂4層基板としている。しかしながら、中継基板5は、中継基板5の両面に2層の配線パターンが形成された2層基板としてもよく、例えば6層などの4層以上の層を持つ基板としてもよい。中継基板5は、典型的にはガラスエポキシ基板である。
【0036】
図9及び図10に示すように、中継基板5は、上面40(第1コンタクト接続面)及び下面41(第2コンタクト接続面)を有する。
【0037】
図9に示すように、上面40には、複数のプラグコンタクト20と半田接続される複数のコンタクト電極パッド42(第1電極パッド)が形成されている。具体的には、以下に示す6つのコンタクト電極パッド42が形成されている。
プラグコンタクト201と半田接続されるコンタクト電極パッド421
プラグコンタクト202と半田接続されるコンタクト電極パッド422
プラグコンタクト204と半田接続されるコンタクト電極パッド424
プラグコンタクト205と半田接続されるコンタクト電極パッド425
プラグコンタクト207と半田接続されるコンタクト電極パッド427
プラグコンタクト208と半田接続されるコンタクト電極パッド428
【0038】
図10に示すように、下面41には、複数のプラグコンタクト20と半田接続される複数のコンタクト電極パッド42が形成されている。具体的には、以下に示す2つのコンタクト電極パッド42(第2電極パッド)が形成されている。
プラグコンタクト203と半田接続されるコンタクト電極パッド423
プラグコンタクト206と半田接続されるコンタクト電極パッド426
【0039】
図9に戻り、上面40には、ケーブル3の複数の電線が半田接続される複数のケーブル電極パッド43が形成されている。具体的には、以下に示す4つのケーブル電極パッド43が形成されている。
コンタクト電極パッド421と導通するケーブル電極パッド431
コンタクト電極パッド422と導通するケーブル電極パッド432
コンタクト電極パッド424と導通するケーブル電極パッド434
コンタクト電極パッド425と導通するケーブル電極パッド435
【0040】
図10に示すように、下面41には、ケーブル3の複数の電線が半田接続される複数のケーブル電極パッド43が形成されている。具体的には、以下に示す4つのケーブル電極パッド43が形成されている。
コンタクト電極パッド423と導通するケーブル電極パッド433
コンタクト電極パッド426と導通するケーブル電極パッド436
コンタクト電極パッド427と導通するケーブル電極パッド437
コンタクト電極パッド428と導通するケーブル電極パッド438
【0041】
そして、図11及び図12に示すように、コンタクト電極パッド422とコンタクト電極パッド425の間にはNEXT性能を向上させるための補償容量44が形成されている。同様に、コンタクト電極パッド426とコンタクト電極パッド428の間にはNEXT性能を向上させるための補償容量45が形成されている。
【0042】
(プラグ本体4と中継基板5との接続)
図13及び図14には、プラグ本体4に中継基板5が取り付けられた状態を示している。
【0043】
プラグ本体4に中継基板5を取り付けるには、図13に示すように、プラグ本体4のコンタクト保持部21の挿入ガイド23の挿入開口23Dに中継基板5を嵌合方向に挿入する。すると、図13及び図14に示すように、中継基板5が複数の上接続部35と複数の下接続部38の間に案内される。この結果、プラグコンタクト201の上接続部35がコンタクト電極パッド421と上下方向で対向する。この状態で、プラグコンタクト201の上接続部35をコンタクト電極パッド421に、例えば半田接続により電気的に接続する。他のプラグコンタクト20についても同様である。
【0044】
図13及び図14に示すように、コンタクト保持部21は、各プラグコンタクト20の上接続部35及び下接続部38を上下方向で覆わないように構成されている。即ち、各プラグコンタクト20の上接続部35及び下接続部38は、各プラグコンタクト20をコンタクト保持部21に取り付けた状態で上下方向に露出している。従って、各プラグコンタクト20の上接続部35及び下接続部38を各コンタクト電極パッド42に半田接続した場合、半田接続の成否を確認することができるようになっている。
【0045】
(ロケータ6)
次に、図15を参照して、ロケータ6を説明する。ロケータ6は、例えば、ポリアミド製である。
【0046】
図15及び図16に示すように、ロケータ6は、略直方体状であって、挿抜方向に開口する複数の貫通孔50が形成されている。複数の貫通孔50は、以下を含む。
ケーブル電極パッド431に接続される電線qが通る貫通孔501
ケーブル電極パッド432に接続される電線qが通る貫通孔502
ケーブル電極パッド433に接続される電線qが通る貫通孔503
ケーブル電極パッド434に接続される電線qが通る貫通孔504
ケーブル電極パッド435に接続される電線qが通る貫通孔505
ケーブル電極パッド436に接続される電線qが通る貫通孔506
ケーブル電極パッド437に接続される電線qが通る貫通孔507
ケーブル電極パッド438に接続される電線qが通る貫通孔508
【0047】
ロケータ6は、嵌合方向を向く先端面51と、抜去方向を向く後端面52と、を有する。先端面51には、中継基板5が嵌合する基板嵌合溝53が形成されている。基板嵌合溝53は、幅方向に延びている。貫通孔501、貫通孔502、貫通孔504、貫通孔505は、基板嵌合溝53よりも上方に形成されている。貫通孔503、貫通孔506、貫通孔507、貫通孔508は、基板嵌合溝53よりも下方に形成されている。
【0048】
図16には、ケーブル3の各電線qをロケータ6の対応する各貫通孔50に挿入した状態を示している。図16に示すように、ケーブル3の各電線qをロケータ6の対応する各貫通孔50に挿入したら、ロケータ6と外部被覆3Bとの間において複数の電線qを例えばポリエチレン系樹脂などの樹脂Rで封止することが好ましい。これによれば、ロケータ6に対する各電線qの挿抜方向における相対的な位置が固定されるので、図16及び図17に示すように、ケーブル3の各電線qを中継基板5に接続する作業性が良い。
【0049】
(上カバー7)
図2に戻り、上カバー7は、相互に結合したプラグ本体4、中継基板5、ロケータ6を上方から覆うものであって、モジュラープラグ2のモジュラージャックに対する嵌合をロックするランス60が形成されている。上カバー7は、例えば、ポリカーボネート製である。
【0050】
(下カバー8)
下カバー8は、相互に結合したプラグ本体4、中継基板5、ロケータ6を下方から覆うものである。下カバー8は、例えば、ポリカーボネート製である。
【0051】
(シールド9)
シールド9は、ノイズの空間伝導を遮断するためのものである。シールド9は、例えば、銅合金により形成されている。
【0052】
(フード10)
フード10は、ケーブル3の耐屈曲性能を向上するためのものである。フード10は、例えば、ポリ塩化ビニル系エラストマー製である。
【0053】
(モジュラープラグ2の製造方法)
次に、モジュラープラグ2の製造方法を説明する。
【0054】
まず、図3及び図4図8に示すように、複数のプラグコンタクト20をコンタクト保持部21の複数のコンタクトスリット25にそれぞれ圧入する。
【0055】
次に、図9に示す中継基板5の複数のコンタクト電極パッド42にクリーム半田を供給する。この段階で、クリーム半田を一度加熱して冷却することでクリーム半田を固化しておいてもよい。
【0056】
次に、図13及び図14に示すように、中継基板5をプラグ本体4のコンタクト保持部21の挿入ガイド23の挿入開口23Dに嵌合方向で挿入する。このとき、中継基板5が挿入開口23Dに圧入されるよう、挿入開口23Dの少なくとも上下方向又は幅方向の何れか一方又は両方における内側寸法を設計しておいてもよい。中継基板5をプラグ本体4のコンタクト保持部21の挿入ガイド23の挿入開口23Dに挿入すると、図13及び図14に示すように、中継基板5は、複数のプラグコンタクト20の上接続部35と、複数のプラグコンタクト20の下接続部38の間に配置されることになる。この状態でプラグ本体4及び中継基板5をリフロー炉に入れることにより、複数のプラグコンタクト20の上接続部35及び下接続部38が複数のコンタクト電極パッド42に半田接続する。このとき、前述したように、コンタクト保持部21が複数のプラグコンタクト20の上接続部35及び下接続部38、及び、複数のコンタクト電極パッド42を上下方向で覆っていないので、上記の半田接続の成否を容易に確認することができる。
【0057】
次に、図15及び図16に示すように、ケーブル3の複数の撚り対線pの各電線qをロケータ6の各貫通孔50にそれぞれ挿入し、ロケータ6とケーブル3の外部被覆3Bの間において複数の撚り対線pを樹脂Rにより樹脂封止する。これにより、各電線qが挿抜方向で固定される。
【0058】
次に、中継基板5の各ケーブル電極パッド43とケーブル3の各電線qに予備半田を実施する。その後、図17に示すように、ロケータ6の基板嵌合溝53に中継基板5を嵌合する。この状態で、パルスヒートや高周波半田により、中継基板5の各ケーブル電極パッド43にケーブル3の各電線qをそれぞれ半田接続する。
【0059】
このように、ケーブル3の各電線qと中継基板5が半田接続されると共に、各プラグコンタクト20と中継基板5が半田接続されるので、各電線qが各プラグコンタクト20に圧接により接続される従来の場合と比較して安定した電気的接続が実現され、より大きな電力を安定的に供給することができるようになる。
【0060】
次に、図2に戻り、上カバー7と下カバー8で互いに結合したプラグ本体4及び中継基板5、ロケータ6を上下方向で挟むように、上カバー7と下カバー8を互いに嵌合させる。
【0061】
そして、上カバー7及び下カバー8の外側をシールド9で覆う。最後に、フード10をモールド成形により形成する。なお、フード10は、モールド成形により形成することに代えて、別部品として予め作製しておき、シールド9をケーブル3に対してかしめることでモジュラープラグ2をケーブル3に固定し、例えば上カバー7に設けた突起などにフード10を係止する簡易的な保持構造としてもよい。
【0062】
以上に、本願発明の好適な実施形態を説明したが、上記実施形態は、以下の特徴を有する。
【0063】
図1から図4に示すように、モジュラープラグ2は、図示しないモジュラージャックの複数の相手コンタクトとそれぞれ接触可能な複数のプラグコンタクト20(コンタクト)と、複数のプラグコンタクト20を保持するコンタクト保持部21と、中継基板5(基板)と、を備える。図9及び図10に示すように、中継基板5は、上面40(第1コンタクト接続面)と、上面40と反対の下面41(第2コンタクト接続面)と、を有する。図8に示すように、複数のプラグコンタクト20は、上コンタクト30(第1コンタクト)及び下コンタクト31(第2コンタクト)を含む。図8及び図13に示すように、上コンタクト30は、上面40と対向すると共に上面40に形成されたコンタクト電極パッド42(第1電極パッド)に電気的に接続する上接続部35(第1接続部)を有する。図8及び図14に示すように、下コンタクト31は、下面41と対向すると共に下面41に形成されたコンタクト電極パッド42(第2電極パッド)に電気的に接続する下接続部38(第2接続部)を有する。以上の構成によれば、図13及び図14に示すように、中継基板5を挟んで上コンタクト30の上接続部35の反対側に下コンタクト31の下接続部38が配置されるので、上コンタクト30と下コンタクト31の間のクロストーク、ひいては、モジュラープラグ2におけるクロストークを抑制することができる。
【0064】
また、図13及び図14に示すように、中継基板5は、上下方向(中継基板5の板厚方向)において、上接続部35と下接続部38の間に配置されている。
【0065】
また、図13及び図14に示すように、上接続部35はコンタクト電極パッド42であるコンタクト電極パッド421(第1電極パッド)に半田接続されており、下接続部38はコンタクト電極パッド42であるコンタクト電極パッド423(第2電極パッド)に半田接続されている。コンタクト保持部21は、中継基板5の板厚方向において上接続部35及び下接続部38を覆わないように形成されている。以上の構成によれば、上接続部35及び下接続部38のコンタクト電極パッド42に対する半田接続の成否を確認することができる。
【0066】
また、図2に示すように、モジュラープラグ2は、中継基板5の板厚方向において上接続部35を覆う上カバー7(第1カバー部)と、中継基板5の板厚方向において下接続部38を覆う下カバー8(第2カバー部)と、を更に備える。以上の構成によれば、上接続部35及び下接続部38を効果的に保護することができる。
【0067】
上カバー7及び下カバー8は、図5に示す確認窓26を上下方向で閉塞する。
【0068】
また、図13及び図14に示すように、コンタクト保持部21には、上コンタクト30の上接続部35と下コンタクト31の下接続部38の間に中継基板5を挿入する際に中継基板5を案内する挿入ガイド23が形成されている。以上の構成によれば、上コンタクト30の上接続部35と下コンタクト31の下接続部38の間に中継基板5を挿入する作業性がよい。
【0069】
また、図4に示すように、挿入ガイド23は、上下方向において中継基板5と対向する天板23A及び底板23B(2つの第1対向部)と、幅方向において中継基板5と対向する2つの側板23C(第2対向部)と、を有する。以上の構成によれば、中継基板5の挿入を上下方向及び幅方向で案内することができる。
【0070】
また、図4に示すように、挿入ガイド23は、中継基板5が挿入される挿入開口23Dを有する。以上の構成によれば、中継基板5の挿入を上下方向及び幅方向で案内することができる。
【0071】
なお、図4に示すように挿入ガイド23は切れ目のない角筒状に形成されているが、これに代えて、挿入ガイド23の側周面の何れかに挿抜方向に延びるスリットを設けた切れ目のある形状としてもよい。
【0072】
また、図1に示すように、プラグ付きLANケーブル1(ケーブルハーネス)は、
モジュラープラグ2と、モジュラープラグ2が取り付けられるケーブル3と、を備える。
【符号の説明】
【0073】
1 プラグ付きLANケーブル(ケーブルハーネス)
2 モジュラープラグ
3 ケーブル
3A シールド
3B 外部被覆
4 プラグ本体
5 中継基板(基板)
6 ロケータ
7 上カバー(第1カバー部)
8 下カバー(第2カバー部)
9 シールド
10 フード
20 プラグコンタクト(コンタクト)
201 プラグコンタクト(第1コンタクト)
202 プラグコンタクト(第1コンタクト)
203 プラグコンタクト(第2コンタクト)
204 プラグコンタクト(第1コンタクト)
205 プラグコンタクト(第1コンタクト)
206 プラグコンタクト(第2コンタクト)
207 プラグコンタクト(第1コンタクト)
208 プラグコンタクト(第1コンタクト)
21 コンタクト保持部
22 保持部本体
23 挿入ガイド
23A 天板(第1対向部)
23B 底板(第1対向部)
23C 側板(第2対向部)
23D 挿入開口
24 連結部
25 コンタクトスリット
26 確認窓
30 上コンタクト(第1コンタクト)
31 下コンタクト(第2コンタクト)
32 圧入部
33 上方突出部
33A 上端部
34 接続腕部
35 上接続部(第1接続部)
36 圧入部
36A 上端部
37 接続腕部
38 下接続部(第2接続部)
40 上面(第1コンタクト接続面)
41 下面(第2コンタクト接続面)
42 コンタクト電極パッド(第1電極パッド、第2電極パッド)
421 コンタクト電極パッド(第1電極パッド)
422 コンタクト電極パッド(第1電極パッド)
423 コンタクト電極パッド(第2電極パッド)
424 コンタクト電極パッド(第1電極パッド)
425 コンタクト電極パッド(第1電極パッド)
426 コンタクト電極パッド(第2電極パッド)
427 コンタクト電極パッド(第1電極パッド)
428 コンタクト電極パッド(第1電極パッド)
43 ケーブル電極パッド
431 ケーブル電極パッド
432 ケーブル電極パッド
433 ケーブル電極パッド
434 ケーブル電極パッド
435 ケーブル電極パッド
436 ケーブル電極パッド
437 ケーブル電極パッド
438 ケーブル電極パッド
44 補償容量
45 補償容量
50 貫通孔
501 貫通孔
502 貫通孔
503 貫通孔
504 貫通孔
505 貫通孔
506 貫通孔
507 貫通孔
508 貫通孔
51 先端面
52 後端面
53 基板嵌合溝
60 ランス
p 撚り対線
q 電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18