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特許7265456ホットメルト接着剤、補強テープ、及びフレキシブルフラットケーブル
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  • 特許-ホットメルト接着剤、補強テープ、及びフレキシブルフラットケーブル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤、補強テープ、及びフレキシブルフラットケーブル
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/35 20180101AFI20230419BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20230419BHJP
   C09J 109/06 20060101ALI20230419BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230419BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230419BHJP
   H01B 7/08 20060101ALN20230419BHJP
【FI】
C09J7/35
C09J153/02
C09J109/06
C09J11/08
C09J11/04
H01B7/08
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019162514
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021004349
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2018166488
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019119250
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184653
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 寧
(72)【発明者】
【氏名】杉谷孝輔
(72)【発明者】
【氏名】善如寺芳弘
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/186073(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/049922(WO,A1)
【文献】米国特許第4468089(US,A)
【文献】国際公開第1998/33861(WO,A1)
【文献】特開平10-279774(JP,A)
【文献】特開2015-145471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強テープであって、
絶縁フィルムの片面の上に、ホットメルト接着剤層を有し;
上記ホットメルト接着剤層を形成するホットメルト接着剤は、
(P1)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物であって、芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の含有量が65質量%以下である上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物、
(P2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物、
(P3)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物の酸変性体、及び、
(P4)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物のアミン変性体
からなる群から選択される1種以上を含み;
フレキシブルフラットケーブルの導体端末補強用である;
上記補強テープ。
【請求項2】
上記ホットメルト接着剤が更に(Q)石油樹脂を含む請求項1に記載の補強テープ。
【請求項3】
上記ホットメルト接着剤が
上記(P1)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物であって、芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の含有量が65質量%以下である上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物、
上記(P2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物、
上記(P3)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物の酸変性体、及び、
上記(P4)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物のアミン変性体
からなる群から選択される1種以上 100質量部;及び、
上記(Q)石油樹脂 1~100質量部;
を含む請求項2に記載の補強テープ。
【請求項4】
上記(Q)石油樹脂の軟化点が120~160℃である請求項2又は3に記載の補強テープ。
【請求項5】
上記ホットメルト接着剤が更に(R)アンチブロッキング剤を含む請求項1~4の何れか1項に記載の補強テープ。
【請求項6】
上記ホットメルト接着剤が
上記(P1)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物であって、芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の含有量が65質量%以下である上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物、
上記(P2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物、
上記(P3)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物の酸変性体、及び、
上記(P4)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物のアミン変性体
からなる群から選択される1種以上 100質量部;
上記(Q)石油樹脂 1~100質量部;及び、
上記(R)アンチブロッキング剤 5~200質量部;
を含む請求項5に記載の補強テープ。
【請求項7】
上記(R)アンチブロッキング剤の平均粒子径が5~25μmである請求項5又は6に記載の補強テープ。
【請求項8】
上記補強テープの上記ホットメルト接着剤層とシンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムとの接着強度が5N/25mm以上である請求項1~7の何れか1項に記載の補強テープ。
【請求項9】
配列させた複数の導体を挟持し、被覆する絶縁接着性積層体の絶縁基材フィルムがシンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムであるフレキシブルフラットケーブルの導体端末補強用である請求項1~8の何れか1項に記載の補強テープ。
【請求項10】
上記ホットメルト接着剤がスチレンと共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物を含み、上記スチレンと共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物のスチレンに由来する構成単位の含有量は5~65質量%であり、質量平均分子量は1~25万である請求項1~9の何れか1項に記載の補強テープ。
【請求項11】
上記ホットメルト接着剤がスチレンと共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物を含む請求項1~9の何れか1項に記載の補強テープ。
【請求項12】
上記ホットメルト接着剤がスチレンと共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物の酸変性体を含む請求項1~9の何れか1項に記載の補強テープ。
【請求項13】
上記ホットメルト接着剤がスチレンと共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物のアミン変性体を含む請求項1~9の何れか1項に記載の補強テープ。
【請求項14】
請求項1~13の何れか1項に記載の導体端末補強用テープにより導体端末が補強されたフレキシブルフラットケーブル。
【請求項15】
配列させた複数の導体を挟持し、被覆する絶縁接着性積層体の絶縁基材フィルムがシンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムである請求項14に記載のフレキシブルフラットケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤、補強テープ、及びフレキシブルフラットケーブルに関する。更に詳しくは、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムとの接着強度が良好なホットメルト接着剤、及びこれを用いた補強テープ、並びに該補強テープを用いて導体端末を補強されたフレキシブルフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フレキシブルフラットケーブルは、コンピュータ、画像表示装置、携帯電話、プリンター、カーナビ、及び複写機などの電子機器の配線に使用されている。フレキシブルフラットケーブルは、配列させた複数の導体を、絶縁基材フィルムの片面の上に接着性樹脂組成物層、典型的にはポリエステル系ホットメルト接着剤層を設けた絶縁接着性積層体により挟持し、被覆した構造を有するケーブルである。また上記導体の端末は、ケーブルを電子機器にコネクター接続できるようにするため、通常、補強テープが貼合され、補強されている。上記補強テープとしては、厚肉の絶縁フィルムの片面の上にホットメルト接着剤層を設けたもの、典型的には厚み150~250μm程度の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にポリエステル系ホットメルト接着剤層を設けたものが使用されている。
【0003】
近年、電子機器は、その小型化、及び動作の高速化が加速しており、電子機器に使用されるケーブルには、周波数が数GHz~数十GHz帯の高速デジタル信号を、その高周波特性を損なうことなく高速伝送することが要求されている。そして、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムは、比誘電率が小さいことから、このような高速伝送用のフレキシブルフラットケーブルに使用する材料、典型的には、絶縁接着性積層体の絶縁基材フィルムとして注目されている。しかし、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムには、ポリエステル系ホットメルト接着剤との接着強度が非常に低いという問題のあることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/031342号
【文献】国際公開第2016/185956号
【文献】特開2013‐151638号公報
【文献】特開2004‐189764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムとの接着強度が良好なホットメルト接着剤、該ホットメルト接着剤を用いた補強テープ、該補強テープを用いて導体端末を補強されたフレキシブルフラットケーブル、及び上記ホットメルト接着剤を用いたフレキシブルフラットケーブルを提供することにある。本発明の更なる課題は、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム(ポリエステル系樹脂の塗膜を含む。)の何れにも良好な接着強度を示すホットメルト接着剤、該ホットメルト接着剤を用いた補強テープ、該補強テープを用いて導体端末を補強されたフレキシブルフラットケーブル、及び上記ホットメルト接着剤を用いたフレキシブルフラットケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究した結果、特定の構成により、上記課題を達成できることを見出した。
【0007】
即ち、本発明の諸態様は以下の通りである。
[1].
補強テープであって、
絶縁フィルムの片面の上に、ホットメルト接着剤層を有し;
上記ホットメルト接着剤層を形成するホットメルト接着剤は、
(P1)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物であって、芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の含有量が65質量%以下である上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物、
(P2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物、
(P3)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物の酸変性体、及び、
(P4)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物のアミン変性体
からなる群から選択される1種以上を含み;
フレキシブルフラットケーブルの導体端末補強用である;
上記補強テープ。
[2].
上記ホットメルト接着剤が更に(Q)石油樹脂を含む[1]項に記載の補強テープ。
[3].
上記ホットメルト接着剤が
上記(P1)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物であって、芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の含有量が65質量%以下である上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物、
上記(P2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物、
上記(P3)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物の酸変性体、及び、
上記(P4)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物のアミン変性体
からなる群から選択される1種以上 100質量部;及び、
上記(Q)石油樹脂 1~100質量部;
を含む[2]項に記載の補強テープ。
[4].
上記(Q)石油樹脂の軟化点が120~160℃である[2]又は[3]項に記載の補強テープ。
[5].
上記ホットメルト接着剤が更に(R)アンチブロッキング剤を含む[1]~[4]項の何れか1項に記載の補強テープ。
[6].
上記ホットメルト接着剤が
上記(P1)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物であって、芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の含有量が65質量%以下である上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物、
上記(P2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物、
上記(P3)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物の酸変性体、及び、
上記(P4)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物のアミン変性体
からなる群から選択される1種以上 100質量部;
上記(Q)石油樹脂 1~100質量部;及び、
上記(R)アンチブロッキング剤 5~200質量部;
を含む[5]項に記載の補強テープ。
[7].
上記(R)アンチブロッキング剤の平均粒子径が5~25μmである[5]又は[6]項に記載の補強テープ。
[8].
上記補強テープの上記ホットメルト接着剤層とシンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムとの接着強度が5N/25mm以上である[1]~[7]項の何れか1項に記載の補強テープ。
[9].
配列させた複数の導体を挟持し、被覆する絶縁接着性積層体の絶縁基材フィルムがシンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムであるフレキシブルフラットケーブルの導体端末補強用である[1]~[8]項の何れか1項に記載の補強テープ。
[10].
上記ホットメルト接着剤がスチレンと共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物を含み、上記スチレンと共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物のスチレンに由来する構成単位の含有量は5~65質量%であり、質量平均分子量は1~25万である[1]~[9]項の何れか1項に記載の補強テープ。
[11].
上記ホットメルト接着剤がスチレンと共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物を含む[1]~[9]項の何れか1項に記載の補強テープ。
[12].
上記ホットメルト接着剤がスチレンと共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物の酸変性体を含む[1]~[9]項の何れか1項に記載の補強テープ。
[13].
上記ホットメルト接着剤がスチレンと共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物のアミン変性体を含む[1]~[9]項の何れか1項に記載の補強テープ。
[14].
[1]~[13]項の何れか1項に記載の導体端末補強用テープにより導体端末が補強されたフレキシブルフラットケーブル。
[15].
配列させた複数の導体を挟持し、被覆する絶縁接着性積層体の絶縁基材フィルムがシンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムである[14]項に記載のフレキシブルフラットケーブル。
【発明の効果】
【0008】
本発明のホットメルト接着剤は、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムとの接着強度が良好である。本発明の好ましいホットメルト接着剤は、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム(ポリエステル系樹脂の塗膜を含む。)の何れにも良好な接着強度を示す。そのため、本発明のホットメルト接着剤が用いられている補強テープは、フレキシブルフラットケーブルの導体の端末を補強するためのテープとして、特に絶縁接着性積層体の絶縁基材フィルムとしてシンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムが用いられているフレキシブルフラットケーブルの導体の端末を補強するためのテープとして好適に用いることができる。そのため、本発明のホットメルト接着剤が用いられているフレキシブルフラットケーブルは、特に絶縁接着性積層体の絶縁基材フィルムとしてシンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムが用いられているフレキシブルフラットケーブルは、高速デジタル信号を高速伝送するためのフレキシブルフラットケーブルとして好適に用いることができる。また本発明のホットメルト接着剤が用いられている補強テープにより導体の端末を補強されているフレキシブルフラットケーブルは、特に絶縁接着性積層体の絶縁基材フィルムとしてシンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムが用いられているフレキシブルフラットケーブルは、高速デジタル信号を高速伝送するためのフレキシブルフラットケーブルとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において「樹脂」の用語は、2種以上の樹脂を含む樹脂混合物や、樹脂以外の成分を含む樹脂組成物をも含む用語として使用する。本明細書において「フィルム」の用語は、「シート」と相互交換的に又は相互置換可能に使用する。本明細書において、「フィルム」及び「シート」の用語は、工業的にロール状に巻き取ることのできるものに使用する。「板」の用語は、工業的にロール状に巻き取ることのできないものに使用する。また本明細書において、ある層と他の層とを順に積層することは、それらの層を直接積層すること、及び、それらの層の間にアンカーコートなどの別の層を1層以上介在させて積層することの両方を含む。
【0010】
本明細書において「ホットメルト接着剤」の用語は、JIS K6800‐1985に規定された意味、即ち「溶融状態で塗付し、冷えると固まって接着する接着剤」の意味で使用する。
【0011】
本明細書において数値範囲に係る「以上」の用語は、ある数値又はある数値超の意味で使用する。例えば、20%以上は、20%又は20%超を意味する。数値範囲に係る「以下」の用語は、ある数値又はある数値未満の意味で使用する。例えば、20%以下は、20%又は20%未満を意味する。数値範囲に係る「~」の記号は、ある数値、ある数値超かつ他のある数値未満、又は他のある数値の意味で使用する。ここで、他のある数値は、ある数値よりも大きい数値とする。例えば、10~90%は、10%、10%超かつ90%未満、又は90%を意味する。更に、数値範囲の上限と下限とは、任意に組み合わせることができるものとし、任意に組み合わせた実施形態が読み取れるものとする。例えば、ある特性の数値範囲に係る「通常10%以上、好ましくは20%以上である。一方、通常40%以下、好ましくは30%以下である。」や「通常10~40%、好ましくは20~30%である。」という記載から、そのある特性の数値範囲は、一実施形態において10~40%、20~30%、10~30%、又は20~40%であることが読み取れるものとする。
【0012】
実施例以外において、又は別段に指定されていない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用されるすべての数値は、「約」という用語により修飾されるものとして理解されるべきである。特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとすることなく、各数値は、有効数字に照らして、及び通常の丸め手法を適用することにより解釈されるべきである。
【0013】
1.ホットメルト接着剤:
本発明のホットメルト接着剤は、(P1)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物、(P2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物、(P3)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物の酸変性体、(P4)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物のアミン変性体からなる群から選択される1種以上(以下、上記成分(P1)、上記成分(P2)、上記成分(P3)、及び上記成分(P4)を総称して「成分(P)」ということがある。)を含む。好ましくは更に(Q)石油樹脂を含む。好ましくは更に(R)アンチブロッキング剤を含む。以下、各成分について説明する。
【0014】
(P1)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物:
上記成分(P1)は、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物である。上記成分(P1)は、通常、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも1個、好ましくは2個以上と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体の水素添加物である。上記成分(P1)としては、例えば、A-B、A-B-A、B-A-B-A、A-B-A-B-A等の構造を有する芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物をあげることができる。
【0015】
上記重合体ブロックAは、芳香族ビニル化合物のみからなる重合体ブロック又は芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックである。重合体ブロックAが共重合体ブロックである場合における、重合体ブロックA中の芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の含有量は、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であってよい。上記重合体ブロックA中の共役ジエン化合物に由来する構成単位の分布は、特に制限されない。上記重合体ブロックAが2個以上あるとき、これらは同一構造であってもよく、互いに異なる構造であってもよい。
【0016】
上記重合体ブロックBは、共役ジエン化合物のみからなる重合体ブロック又は芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックである。上記重合体ブロックBが共重合体ブロックである場合における、重合体ブロックB中の共役ジエン化合物に由来する構成単位の含有量は、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であってよい。上記重合体ブロックB中の芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の分布は、特に制限されない。共役ジエン化合物と共役ジエン化合物との結合様式(以下、「ミクロ構造」と略すことがある。)は、特に制限されない。上記重合体ブロックBが2個以上あるとき、これらは同一構造であってもよく、互いに異なる構造であってもよい。
【0017】
上記芳香族ビニル化合物は、重合性の炭素・炭素二重結合と芳香環を有する重合性モノマーである。上記芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、t‐ブチルスチレン、α‐メチルスチレン、p‐メチルスチレン(4‐メチルスチレン)、ジビニルベンゼン、1,1‐ジフェニルスチレン、N,N‐ジエチル‐p‐アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、及びp‐t‐ブチルスチレンなどをあげることができる。これらの中でスチレンが好ましい。上記芳香族ビニル化合物としては、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
上記共役ジエン化合物は、2つの炭素・炭素二重結合が1つの炭素・炭素単結合により結合された構造を有する重合性モノマーである。上記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3‐ブタジエン、イソプレン(2‐メチル‐1,3‐ブタジエン)、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、及びクロロプレン(2‐クロロ‐1,3‐ブタジエン)などをあげることができる。これらの中で、1,3‐ブタジエン及びイソプレンが好ましい。上記共役ジエン化合物としては、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0019】
上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体は、任意の芳香族ビニル化合物と任意の共役ジエン化合物とを公知の方法、例えば、特公昭40-023798号公報に記載された方法によりブロック共重合することにより得ることができる。上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の分子鎖構造は、直鎖状、分岐状、放射状、及びこれらの任意の組合せの何れであってもよい。
【0020】
上記成分(P1)は、上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体中の炭素・炭素二重結合を、水素添加して炭素・炭素単結合にすることにより得ることができる。上記水素添加は、公知の方法、例えば、不活性溶媒中で水素添加触媒を用いて処理することにより行うことができる。
【0021】
上記成分(P1)の水素添加率(水素添加前の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体中の炭素・炭素二重結合の数に対する水素添加により炭素・炭素単結合となった結合の数の割合。)は、特に制限されない。上記成分(P1)の水素添加率は、接着強度の耐熱老化性(高温環境下に長時間暴露した後の接着強度)の観点から、通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であってよい。
【0022】
上記成分(P1)の芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の含有量は、接着性の観点から、通常65質量%以下、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、最も好ましくは40質量%以下である。一方、タック性を抑制する観点から、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であってよい。また接着性の観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上であってよい。ここで芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の含有量と共役ジエン化合物に由来する構成単位の含有量の和を100質量%とする。
【0023】
上記成分(P1)の質量平均分子量は、ホットメルト接着剤の接着性の観点から、通常25万以下、好ましくは20万以下、より好ましくは15万以下、更に好ましくは12万以下、最も好ましくは9万以下であってよい。一方、上記質量平均分子量は、タック性を抑制する観点から、通常1万以上、好ましくは3万以上、より好ましくは5万以上であってよい。上記成分(P1)の数平均分子量は、ホットメルト接着剤の接着性の観点から、通常12万以下、好ましくは10万以下、より好ましくは8万以下、更に好ましくは7万以下であってよい。一方、上記数平均分子量は、タック性を抑制する観点から、通常5千以上、好ましくは1万以上、より好ましくは2万以上であってよい。
【0024】
本明細書において、上記成分(P)の質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略すことがある。)により、移動相としてクロロホルムを使用して測定した微分分子量分布曲線(以下、「GPC曲線」と略すことがある。)から算出したポリスチレン換算の質量平均分子量である。数平均分子量は、GPCにより、移動相としてクロロホルムを使用して測定したGPC曲線から算出したポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0025】
GPCの測定は、システムとして日本分光株式会社の高速液体クロマトグラフィーシステム(デガッサー、送液ポンプ、オートサンプラー、カラムオーブン及びRI(示差屈折率)検出器を含むシステム。)を使用し;GPCカラムとしてアジレントテクノロジー(Agilent Technologies)株式会社のGPCカラム「PLgelMIXED‐D(商品名)」を2本連結して使用し;和光純薬工業株式会社の高速液体クロマトグラフ用クロロホルムを移動相として;流速1.0ミリリットル/分、カラム温度40℃、試料濃度1ミリグラム/ミリリットル、及び試料注入量100マイクロリットルの条件で行うことができる。各保持容量における溶出量は、測定試料の屈折率の分子量依存性が無いと見なしてRI検出器の検出量から求めることができる。また保持容量からポリスチレン換算分子量への較正曲線は、アジレントテクノロジー(Agilent Technologies)株式会社の標準ポリスチレン「EasiCal PS-1(商品名)」(Plain Aの分子量6375000、573000、117000、31500、3480;Plain Bの分子量2517000、270600、71800、10750、705)を使用して作成することができる。解析プログラムは、日本分光株式会社の「ChromNAV(商品名)」を使用することができる。なおGPCの理論及び測定の実際については、共立出版株式会社の「サイズ排除クロマトグラフィー 高分子の高速液体クロマトグラフィー、著者:森定雄、初版第1刷1991年12月10日」、株式会社オーム社の「合成高分子クロマトグラフィー、編者:大谷肇、寶崎達也、初版第1刷2013年7月25日」などの参考書を参照することができる。
【0026】
上記成分(P1)としては、例えば、スチレン・エチレン・ブテン共重合体(SEB)、スチレン・エチレン・プロピレン共重合体(SEP)、スチレン・エチレン・ブテン・スチレン共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEPS)、スチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン・ブタジエン・ブチレン・スチレン共重合体(スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体の部分水素添加物:SBBS)、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体の部分水素添加物、及びスチレン・イソプレン・ブタジエン・スチレン共重合体の部分水素添加物などをあげることができる。上記成分(P1)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0027】
(P2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物:
上記成分(P2)は芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物である。
【0028】
上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体は、任意の芳香族ビニル化合物と任意の共役ジエン化合物とを用い公知の方法によりランダム共重合することにより得ることができる。上記芳香族ビニル化合物については、上記成分(P1)の説明において上述した。上記芳香族ビニル化合物としてはこれらの1種又は2種以上を用いることができる。上記共役ジエン化合物については、上記成分(P1)の説明において上述した。上記共役ジエン化合物としてはこれらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0029】
上記成分(P2)は、上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体中の炭素・炭素二重結合を、水素添加して炭素・炭素単結合にすることにより得ることができる。上記水素添加は、公知の方法、例えば、不活性溶媒中で水素添加触媒を用いて処理することにより行うことができる。
【0030】
上記成分(P2)の水素添加率(水素添加前の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体中の炭素・炭素二重結合の数に対する水素添加により炭素・炭素単結合となった結合の数の割合。)は、特に制限されない。上記成分(P2)の水素添加率は、接着強度の耐熱老化性(高温環境下に長時間暴露した後の接着強度)の観点から、通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、最も好ましくは99モル%以上であってよい。
【0031】
上記成分(P2)の芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の含有量は、接着性の観点から、通常50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、最も好ましくは15質量%以下であってよい。一方、ホットメルト接着剤層の機械的強度の観点から、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であってよい。ここで芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の含有量と共役ジエン化合物に由来する構成単位の含有量の和を100質量%とする。
【0032】
上記成分(P2)の質量平均分子量は、接着性の観点から、好ましくは100万以下、より好ましくは60万以下、更に好ましくは50万以下であってよい。一方、タック性を抑制する観点から、好ましくは5万以上、より好ましくは10万以上、更に好ましくは20万以上であってよい。GPCの測定は、上記成分(P1)の説明において上述した方法で行うことができる。
【0033】
上記成分(P2)としては、例えば、スチレンとブタジエンとのランダム共重合体の水素添加物(HSBR)などをあげることができる。上記成分(P2)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0034】
(P3)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物の酸変性体:
上記成分(P3)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物の酸変性体は、(P3‐a)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物に(P3‐b)不飽和カルボン酸、及び不飽和カルボン酸の誘導体からなる群から選択される1種以上が共重合(通常はグラフト共重合)されている(以下、「酸変性」ということがある。)物質である。上記成分(P3)は、任意の上記成分(P3‐a)と任意の上記成分(P3‐b)とを用い、公知の方法で反応させることにより得ることができる。
【0035】
上記成分(P3)の好ましい生産方法としては、例えば、任意の上記成分(P3‐a)と任意の上記成分(P3‐b)とを用い、(P3‐c)有機過酸化物の存在下、溶融混錬する方法;より好ましくは上記成分(P3‐c)有機過酸化物の1分半減期温度以上の温度で1分間以上、更に好ましくは上記成分(P3‐c)有機過酸化物の1分半減期温度以上の温度で2分間以上、溶融混錬する方法をあげることができる。なお1分間半減期温度とは、半減期が1分間になる温度である。1分間半減期温度は、この温度で有機過酸化物中の-O-O-結合を分解させたとき、該結合の現在の個数が初期の個数の半分になるのに要する時間が1分間であることを意味する。
【0036】
(P3‐a)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物:
上記成分(P3‐a)は、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物であり、上記成分(P3)の生産に用いられる。上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物としては、例えば、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物、及び芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物などをあげることができる。上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物については、上記成分(P1)の説明において上述した。上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物については、上記成分(P2)の説明において上述した。上記成分(P3‐a)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0037】
(P3‐b)不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸:
上記成分(P3‐b)は、不飽和カルボン酸、及び不飽和カルボン酸の誘導体からなる群から選択される1種以上である。上記成分(P3‐b)は上記成分(P3‐a)と共重合(通常はグラフト共重合)し、接着性を高める働きをする。
【0038】
上記不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、アクリル酸、及びメタクリル酸などをあげることができる。上記不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、及び無水フマル酸などの不飽和多価カルボン酸の酸無水物;マレイン酸モノエステル、イタコン酸モノエステル、及びフマル酸モノエステルなどの不飽和多価カルボン酸のエステルであって1個以上のカルボキシル基を有する化合物;マレイン酸ジエステル、イタコン酸ジエステル、及びフマル酸ジエステルなどの不飽和多価カルボン酸の多価エステル;アクリル酸メチル等のアクリル酸アルキルエステル;及び、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸アルキルエステルなどをあげることができる。上記成分(P3‐b)としては、これらの中で、上記成分(P3‐a)との反応性の観点、及びホットメルト接着剤の接着性の観点から、不飽和カルボン酸、不飽和多価カルボン酸の酸無水物、及び不飽和多価カルボン酸のエステルであって1個以上のカルボキシル基を有する化合物が好ましく、不飽和カルボン酸、及び不飽和多価カルボン酸の酸無水物がより好ましく、無水マレイン酸が更に好ましい。上記成分(P3‐b)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0039】
上記成分(P3‐b)の配合量は、上記成分(P3‐a)100質量部に対して、接着性の向上効果を確実に得る観点から、通常0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であってよい。一方、ゲルの発生を抑止し、塗工性を良好に保つ観点から、通常20質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下であってよい。
【0040】
(P3‐c)有機過酸化物
上記成分(P3‐c)は有機過酸化物である。上記成分(P3‐c)は、上記成分(P3‐a)と上記成分(P3‐b)との反応を触媒する働きをする。
【0041】
上記有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ‐tert‐ブチルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ‐(tert‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(tert‐ブチルパーオキシ)ヘキシン‐3、1,3‐ビス(tert‐ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1‐ビス(tert‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、n‐ブチル‐4,4‐ビス(tert‐ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p‐クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4‐ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert‐ブチルパーオキシベンゾエート、tert‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、及びtert‐ブチルクミルパーオキサイドなどをあげることができる。上記成分(P3‐c)としては、これらの中で、上記成分(P3)の生産性や接着性の観点から、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ‐(tert‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、及び2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ‐(tert‐ブチルパーオキシ)ヘキシン‐3が好ましい。上記成分(P3‐c)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0042】
上記成分(P3‐c)の配合量は、上記成分(P3‐a)100質量部に対して、触媒効果を確実に得る観点から、通常0.001質量部以上、好ましくは0.03質量部以上であってよい。一方、ゲルの発生を抑止し、塗工性を良好に保つ観点から、通常3質量部以下、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下であってよい。
【0043】
上記溶融混練に使用する装置としては、特に制限されない。該装置としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、各種のニーダー、及びこれらを2以上組み合わせた装置などをあげることができる。
【0044】
上記成分(P3)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0045】
(P4)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物のアミン変性体:
上記成分(P4)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物のアミン変性体は、(P4‐a)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物に(P4‐b)アミン化合物が共重合(通常はグラフト共重合)されている(以下、「アミン変性」ということがある。)物質である。上記成分(P4)は、任意の上記成分(P4‐a)と任意の上記成分(P4‐b)とを用い、公知の方法で反応させることにより得ることができる。
【0046】
上記成分(P4)の生産方法としては、例えば、任意の上記成分(P4‐a)と任意の上記成分(P4‐b)とを用い、(P4‐c)有機過酸化物の存在下、溶融混錬する方法をあげることができる。
【0047】
(P4‐a)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物:
上記成分(P4‐a)は、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物であり、上記成分(P4)の生産に用いられる。上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体としては、例えば、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体、及び芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体などをあげることができる。上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物については、上記成分(P1)の説明において上述した。上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物については、上記成分(P2)の説明において上述した。上記成分(P4‐a)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0048】
(P4‐b)アミン化合物:
上記成分(P4‐b)は、アミン化合物である。上記成分(P4‐b)は上記成分(P4‐a)と共重合(通常はグラフト共重合)し、接着性を高める働きをする。
【0049】
上記アミン化合物としては、例えば、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、及び複素環式アミン化合物などをあげることができる。
【0050】
上記脂肪族アミン化合物としては、例えば、脂肪族1級アミン化合物、脂肪族2級アミン化合物、脂肪族3級アミン化合物、及び脂肪族多価アミン化合物(1分子中に2個以上のアミン基を有する脂肪族アミン化合物)などをあげることができる。
【0051】
上記脂肪族1級アミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、tert‐ブチルアミン、ペンチルアミン、イソペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2‐エチルヘキシルアミン、及びシクロヘキシルアミンなどの飽和脂肪族1級アミン化合物;ドデセニルアミン、オクタデセニルアミン、及びドコセニルアミンなどの不飽和脂肪族1級アミン化合物;などをあげることができる。
【0052】
上記脂肪族2級アミン化合物としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソブチルアミン、及びジシクロヘキシルアミンなどの飽和脂肪族2級アミン化合物;並びに、不飽和脂肪族2級アミン化合物などをあげることができる。
【0053】
上記脂肪族3級アミン化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン、N,N‐ジイソプロピルエチルアミン、及びN,N‐ジメチルシクロヘキシルアミンなどの飽和脂肪族3級アミン化合物;N,N‐ジメチルオクタデセニルアミンなどの不飽和脂肪族3級アミン化合物;などをあげることができる。
【0054】
上記脂肪族多価アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、及びN,N,N’,N’‐テトラメチルエチレンジアミンなどをあげることができる。
【0055】
上記芳香族アミン化合物としては、例えば、アニリン類(アニリン及びその誘導体)、及びアリールアルキルアミン化合物などをあげることができる。
【0056】
上記アニリン類としては、例えば、アニリン、トルイジン、キシリジン、アニシジン、フェネチジン、4‐エチルアニリン、2‐エチルアニリン、及び4‐イソプロピルアニリンなどのアニリン類であって1級アミンである化合物;N‐メチルアニリン、N‐エチルアニリン、及びN‐イソプロピルアニリンなどのアニリン類であって2級アミンである化合物;N,N‐ジメチルアニリン、N,N‐ジエチルアニリン、及びN,N‐ジイソプロピルアニリンなどのアニリン類であって3級アミンである化合物;などをあげることができる。
【0057】
上記アリールアルキルアミン化合物としては、例えば、ベンジルアミン、1‐フェニルエチルアミン、及び2‐フェニルエチルアミンなどのアリールアルキル1級アミン化合物;N‐メチルベンジルアミンなどのアリールアルキル2級アミン化合物;N,N‐ジエチルベンジルアミンなどのアリールアルキル3級アミン化合物;などをあげることができる。
【0058】
上記複素環式アミン類としては、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾール、2‐チエニルアミン、及び2‐チエニルメチルアミンなどをあげることができる。
【0059】
上記成分(P4‐b)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0060】
上記成分(P4‐b)の配合量は、上記成分(P4‐a)100質量部に対して、接着性の向上効果を確実に得る観点から、通常0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であってよい。一方、ゲルの発生を抑止し、塗工性を良好に保つ観点から、通常20質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下であってよい。
【0061】
(P4‐c)有機過酸化物:
上記成分(P4‐c)は有機過酸化物である。上記成分(P4‐c)は、上記成分(P4‐a)と上記成分(P4‐b)との反応を触媒する働きをする。
【0062】
上記有機過酸化物としては、上記成分(P3‐c)の説明において上述したものをあげることができる。上記成分(P4‐c)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0063】
上記成分(P4‐c)の配合量は、上記成分(P4‐a)100質量部に対して、触媒効果を確実に得る観点から、通常0.001質量部以上、好ましくは0.03質量部以上であってよい。一方、ゲルの発生を抑止し、塗工性を良好に保つ観点から、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下であってよい。
【0064】
上記溶融混練に使用する装置としては、特に制限されない。該装置としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、各種のニーダー、及びこれらを2以上組み合わせた装置などをあげることができる。
【0065】
上記溶融混錬は、上記成分(P4‐c)有機過酸化物の1分半減期温度以上の温度で1分間以上行うことが好ましく、上記成分(P4‐c)有機過酸化物の1分半減期温度以上の温度で2分間以上行うことがより好ましい。
【0066】
上記成分(P4)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0067】
上記成分(P1)、上記成分(P2)、上記成分(P3‐a)、上記成分(P4‐a)は、本発明の目的に反しない限度において、上記芳香族ビニル化合物、及び上記共役ジエン化合物以外の重合性化合物に由来する構成単位を含むものであってよい。上記重合性化合物は、上記芳香族ビニル化合物と上記共役ジエン化合物の少なくとも何れかと、好ましくは何れとも共重合可能な化合物である。上記重合性化合物は、通常、炭素・炭素二重結合を有する化合物であり、典型的にはエチレン性二重結合を有する化合物である。上記重合性化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、1‐ブテン、1‐ヘキセン、及び1‐オクテンなどのα‐オレフィン;イソブチレンなどの非共役ジエン;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、及びメタクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、及び無水マレイン酸;などをあげることができる。上記重合性化合物としては、これらの1種以上を用いることができる。
【0068】
(Q)石油樹脂:
本発明のホットメルト接着剤は、好ましくは更に上記成分(Q)石油樹脂を含む。上記成分(Q)は、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムとの接着強度を高める働きをする。また上記成分(Q)は、ポリエステル系樹脂フィルム(ポリエステル系樹脂の塗膜を含む。)との接着強度を高める働きをする。更に上記成分(Q)は、導体との接着強度を高める働きをする。
【0069】
上記成分(Q)石油樹脂は、ナフサ等の分解により生成する不飽和炭化水素化合物であって、炭素数の多い(通常、炭素数4~20程度)不飽和炭化水素化合物の重合体である。上記成分(Q)のモノマーとして用いられる上記不飽和炭化水素化合物は、典型的には、脂肪族不飽和炭化水素化合物、又は/及び芳香族不飽和炭化水素化合物である。
【0070】
上記脂肪族不飽和炭化水素化合物としては、例えば、1‐ブテン、2‐ブテン、1‐ペンテン、2‐ペンテン、1‐ヘキセン、2‐ヘキセン、3‐ヘキセン、1‐ヘプテン、2‐ヘプテン、3‐ヘプテン、1,3‐ペンタジエン、シクロペンタジエン(シクロペンタ‐1,3‐ジエン)、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、1,3‐ブタジエン、イソプレン(2‐メチル‐1,3‐ブタジエン)、及びジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ‐3,8‐ジエン)などをあげることができる。上記脂肪族不飽和炭化水素化合物としてはこれらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0071】
上記芳香族不飽和炭化水素化合物としては、例えば、スチレン,α‐メチルスチレン,β‐メチルスチレン、4‐メチルスチレン、ビニルキシレン、インデン、メチルインデン、及びエチルインデンなどをあげることができる。上記芳香族不飽和炭化水素化合物としてはこれらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0072】
上記成分(Q)石油樹脂は、上記成分(P)との混和性の観点から、水素添加されているものが好ましい。上記成分(Q)の水素添加率(水素添加前の石油樹脂中の炭素・炭素二重結合の数に対する水素添加により炭素・炭素単結合となった結合の数の割合。)は、通常80モル%以上、好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であってよい。上記水素添加は、公知の方法、例えば、不活性溶媒中で水素添加触媒を用いて処理することにより行うことができる。
【0073】
上記成分(Q)石油樹脂の軟化点は、特に制限されず、本発明のホットメルト接着剤の用いられるフレキシブルフラットケーブルの定格温度を勘案し、適宜決定することができる。上記成分(Q)の軟化点は、本発明のホットメルト接着剤を、より高い定格温度のフレキシブルフラットケーブルにも使用できるようにする観点から、通常90℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは135℃以上であってよい。一方、上記成分(Q)の軟化点は、フレキシブルフラットケーブルを製造する際の生産効率の観点から、通常200℃以下、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下であってよい。ここで軟化点は、JIS K2207‐1996の6.4軟化点試験方法(環球法)に従い測定される。
【0074】
上記成分(Q)石油樹脂の数平均分子量は、特に制限されない。上記成分(Q)の数平均分子量は、通常100~3000、好ましくは200~2000であってよい。本明細書において、上記成分(Q)の数平均分子量は、GPCにより、移動相としてテトラヒドロフランを使用して測定したGPC曲線から算出したポリスチレン換算の数平均分子量である。GPCの測定は、GPCカラムとして、上流側から順に、昭和電工株式会社のスチレンジビニルベンゼン共重合体カラム「GPC KF‐806L(商品名)」2本、「GPC KF‐802(商品名)」1本、「GPC KF‐801(商品名)」1本を連結して使用し;和光純薬工業株式会社の高速液体クロマトグラフ用テトラヒドロフランを移動相とし;標準サンプルを、上記成分(Q)の数平均分子量の測定値が検量線において内挿されるように適宜選択すること以外は、上述した方法と同様にして行うことができる。
【0075】
上記成分(Q)石油樹脂の配合量は任意成分であるから特に制限されない。上記成分(Q)の配合量は、上記成分(P)100質量部に対して、接着強度を高める効果を確実に得る観点から、通常1質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上、最も好ましくは40質量部以上であってよい。一方、上記成分(Q)の配合量は、通常100質量部以下、好ましくは80質量部以下、より好ましくは70質量部以下であってよい。
【0076】
(R)アンチブロッキング剤:
本発明のホットメルト接着剤は、好ましくは更に上記成分(R)アンチブロッキング剤を含む。上記成分(R)は、補強テープのホットメルト接着剤層の面が、フレキシブルフラットケーブルの製造装置のチャックなどに触れてタックすることによる生産トラブルを抑制する働きをする。一方、上記成分(R)は接着強度を低下させることがない。
【0077】
理論に拘束される意図はないが、補強テープのホットメルト接着剤層の面から、上記成分(R)アンチブロッキング剤が突起として出ており、そのため補強テープのホットメルト接着剤層の面が、フレキシブルフラットケーブルの製造装置のチャックなどに触れてタックすることによる生産トラブルが抑制される;一方、フレキシブルフラットケーブルに補強テープを貼る際の押圧は十分に大きな圧力で行われるため、上記成分(R)アンチブロッキング剤は、ホットメルト接着剤層の中にめり込み、そのため接着強度を低下させることがない;と考察している。
【0078】
上記成分(R)アンチブロッキング剤は、典型的には、無機粒子、樹脂粒子である。上記無機粒子としては、例えば、シリカ(二酸化珪素);タルク;炭酸カルシウム;酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、及び酸化セリウムなどの金属酸化物粒子;弗化マグネシウム、及び弗化ナトリウムなどの金属弗化物粒子;金属硫化物粒子;金属窒化物粒子;金属粒子;などをあげることができる。上記樹脂粒子としては、シリコン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、弗素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エチレン系樹脂、及びこれらの架橋物、並びにアミノ系化合物とホルムアルデヒドとの硬化樹脂などをあげることができる。上記成分(R)アンチブロッキング剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0079】
上記成分(R)アンチブロッキング剤の平均粒子径は、上述の生産トラブルを抑制する働きを確実に得る観点から、通常、補強テープのホットメルト接着剤層の厚みの1/30以上、好ましくは補強テープのホットメルト接着剤層の厚みの1/6以上、より好ましくは補強テープのホットメルト接着剤層の厚みの4/15以上、更に好ましくは補強テープのホットメルト接着剤層の厚みの1/3以上であってよい。一方、上記成分(R)の平均粒子径は、接着強度が低下しないようにする観点から、通常、補強テープのホットメルト接着剤層の厚み以下、好ましくは補強テープのホットメルト接着剤層の厚みの5/6以下、より好ましくは補強テープのホットメルト接着剤層の厚みの2/3以下であってよい。上記成分(R)の平均粒子径は、補強テープのホットメルト接着剤層の厚みが30μmである場合には、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上、更に好ましくは10μm以上であってよい。一方、上記成分(R)の平均粒子径は、補強テープのホットメルト接着剤層の厚みが30μmである場合には、通常30μm以下、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下であってよい。
【0080】
本明細書において、上記成分(R)アンチブロッキング剤の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分析計を使用して測定した粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。上記レーザー回折・散乱式粒度分析計としては、例えば、日機装株式会社のレーザー回折・散乱式粒度分析計「MT3200II(商品名)」を使用することができる。
【0081】
上記成分(R)アンチブロッキング剤の配合量は任意成分であるから特に制限されない。上記成分(R)の配合量は、上記成分(P)100質量部に対して、上述の生産トラブルを抑制する働きを確実に得る観点から、通常5質量部以上、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは70質量部以上、最も好ましくは80質量部以上であってよい。一方、上記成分(R)の配合量は、接着強度が低下しないようにする観点から、通常200質量部以下、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下であってよい。
【0082】
本発明のホットメルト接着剤には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、上記成分(P)、上記成分(Q)、及び上記成分(R)以外の成分、例えば、上記成分(P)及び上記成分(Q)以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー、難燃剤;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤などの添加剤;などを更に含ませることができる。
【0083】
2.補強テープ:
本発明の補強テープには、本発明のホットメルト接着剤が用いられている。本発明の補強テープは、典型的には、絶縁フィルムの片面の上に、直接又はアンカーコートを介して、本発明のホットメルト接着剤の層を設けたものである。本発明の補強テープは、通常は、広幅で生産された後、所望の幅にスリットして、フレキシブルフラットケーブルの生産に使用される。本発明の補強テープは、フレキシブルフラットケーブルの導体端末の補強に好適に用いることができる。本発明のホットメルト接着剤については上述した。
【0084】
上記絶縁フィルムは、本発明の補強テープに剛性と強度を付与し、フレキシブルフラットケーブルの導体端末を電子機器にコネクター接続できるようにする働きをする。
【0085】
上記絶縁フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂などのポリエステル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ポリアミド系樹脂;及び、ポリスチレン系樹脂;などの樹脂フィルムをあげることができる。これらのフィルムは無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、及び二軸延伸フィルムを包含する。またこれらの1種又は2種以上の混合物のフィルムを包含する。更にこれらの1種以上を2層以上積層した積層フィルムを包含する。これらの中で、剛性、強度、及びコストの観点から、ポリエチレンテレフタレート系樹脂の二軸延伸フィルム、及びこれを2層以上積層した積層フィルムが好ましい。
【0086】
上記絶縁フィルムの厚みは、特に制限されない。上記絶縁フィルムの厚みは、本発明の補強テープに剛性と強度を付与し、フレキシブルフラットケーブルの導体端末を電子機器にコネクター接続できるようにする観点から、通常50μm以上、好ましくは100μm以上、より好ましくは125μm以上、更に好ましくは150μm以上であってよい。一方、加工性の観点から、通常500μm以下、好ましくは400μm以下、より好ましくは300μm以下、更に好ましくは250μm以下であってよい。
【0087】
上記絶縁フィルムは、着色剤を含む樹脂からなる着色層を含むものであってよい。上記絶縁フィルムは、これを構成するフィルムの何れか1以上の面の上に、印刷を施されたものであってよい。
【0088】
上記絶縁フィルムの片面の上に、本発明のホットメルト接着剤の層を設ける方法は、特に制限されない。上記方法としては、例えば、押出機、Tダイ、及び引巻取機を備えた装置を使用し、上記絶縁フィルムの片面の上に、本発明のホットメルト接着剤を溶融押出する方法;上記装置を使用し、任意のフィルム基材の片面の上に、通常は易剥離処理の施された面の上に、本発明のホットメルト接着剤を溶融押出して本発明のホットメルト接着剤の膜を形成した後、該膜を上記絶縁フィルムの片面の上に転写する方法;本発明のホットメルト接着剤を溶剤に溶解し、公知のウェブ塗布方法により、上記絶縁フィルムの片面の上に塗膜として形成する方法;などをあげることができる。
【0089】
上記溶剤は本発明のホットメルト接着剤の成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。上記溶剤としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、1‐メトキシ‐2‐プロパノール、酢酸エチル、酢酸n‐ブチル、及びアセトンなどをあげることができる。上記溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0090】
上記ウェブ塗布方法としては、例えば、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
【0091】
本発明のホットメルト接着剤の層の厚みは、接着強度の観点から、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上であってよい。一方、本発明の補強テープを用いて導体端末を補強されたフレキシブルフラットケーブルとコネクターとの接続性(コネクターに接続可能な構造であること、接続作業が容易であることなど)の観点から、通常60μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下であってよい。
【0092】
上記アンカーコートは上記絶縁フィルムと本発明のホットメルト接着剤の層との接着強度を向上させる働きをする。
【0093】
上記アンカーコートを形成するためのアンカーコート形成用塗料としては、特に制限されず、任意のアンカーコート形成用塗料を用いることができる。上記アンカーコート形成用塗料としては、例えば、ポリエステル系、アクリル系、ポリウレタン系、アクリルウレタン系、及びポリエステルウレタン系のアンカーコート形成用塗料をあげることができる。上記アンカーコート形成用塗料としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0094】
上記絶縁フィルムとしてポリエステル系樹脂フィルムを用いる場合には、これらの中で、ポリエステル系のアンカーコート形成用塗料が好ましく、熱可塑性共重合ポリエステル系のアンカーコート形成用塗料がより好ましく、熱可塑性共重合ポリエステル 100質量部と1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物 5~50質量部を含むアンカーコート形成用塗料が更に好ましい。
【0095】
上記熱可塑性共重合ポリエステルは、好ましくは非結晶性又は低結晶性であってよく、より好ましくは非結晶性であってよい。非結晶性又は低結晶性の上記熱可塑性共重合ポリエステルは、メチルエチルケトン、酢酸エチルなどの汎用されている有機溶剤に、常温で容易に溶解し、塗料調製の作業性が良好である。
【0096】
上記熱可塑性共重合ポリエステルは、好ましくは、ガラス転移温度が40℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上の熱可塑性共重合ポリエステル1とガラス転移温度が20℃以下、好ましくは15℃以下、より好ましくは10℃以下の熱可塑性共重合ポリエステル2との混合物であってよい。接着強度と低温における物性とのバランスを向上させることができる。上記熱可塑性共重合ポリエステル1と上記熱可塑性共重合ポリエステル2との混合比(上記熱可塑性共重合ポリエステル1/上記熱可塑性共重合ポリエステル2)は、接着強度と低温における物性とのバランスが重視される場合には、通常70/30~30/70、好ましくは60/40~40/60であってよい。接着強度が重視される場合には、通常70/30~95/5、好ましくは75/25~90/10であってよい。低温における物性が重視される場合には、通常30/70~5/95、好ましくは25/75~10/90であってよい。ここで上記混合比は質量比である。
【0097】
本明細書では、株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond DSC型示差走査熱量計を使用し、300℃で5分間保持し、20℃/分の降温速度で-50℃まで冷却し、-50℃で5分間保持した後、20℃/分の昇温速度で300℃まで加熱するという温度プログラムで測定される最後の昇温過程の融解曲線から算出される融解熱量が、5J/g以下のポリエステルを非結晶性、5J/gを超えて通常20J/g以下、好ましくは15J/g以下、より好ましくは10J/g以下のポリエステルを低結晶性と定義した。またガラス転移温度は、上記融解曲線から算出した中間点ガラス転移温度である。
【0098】
上記熱可塑性共重合ポリエステルは、例えば、任意の多価カルボン酸と任意の多価オールを用い、公知の方法で重合することにより得ることができる。
【0099】
上記多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸、ジフェニル‐4、4’‐ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニル‐3、3’‐ジカルボン酸、ジフェニル‐4、4’‐ジカルボン酸、及びアントラセンジカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸;1,2‐シクロヘキサンジカルボン酸、1,3‐シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,4‐シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式多価カルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸などの脂肪族多価カルボン酸;及び、これらのエステル形成性誘導体などをあげることができる。上記多価カルボン酸としてはこれらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0100】
上記多価オールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、1,2‐プロパンジオール、1,3‐プロパンジオール、ポリプロピレングリコール、1,2‐ブタンジオール、1,3‐ブタンジオール、1,4‐ブタンジオール、1,5‐ペンタンジオール、1,6‐ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、3‐メチル‐1,5‐ペンタンジオール、2‐メチル‐1,3‐プロパンジオール、1,2‐シクロヘキサンジオール、1,4‐シクロヘキサンジオール、1,4‐シクロヘキサンジメタノール、2,2’,4,4’‐テトラメチル‐1,3‐シクロブタンジオール、グリセリン、及びトリメチロールプロパンなどの脂肪族多価アルコール;キシリレングリコール、4,4’‐ジヒドロキシビフェニル、2,2‐ビス(4‐ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4‐ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物などの芳香族多価オール;及び、これらのエステル形成性誘導体などをあげることができる。上記多価オールとしてはこれらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0101】
上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、メチレンビス‐4‐シクロヘキシルイソシアネート;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等のポリイソシアネート;及び、上記ポリイソシアネートのブロック型イソシアネート等のウレタン架橋剤などをあげることができる。上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。また、所望に応じて、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどの触媒を添加してもよい
【0102】
上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物の配合量は、上記絶縁フィルムと本発明のホットメルト接着剤の層との接着強度を向上させる観点から、好ましくは5~50質量部、より好ましくは10~40質量部、更に好ましくは15~30質量部であってよい。
【0103】
上記アンカーコート形成用塗料は、塗工し易い濃度に希釈するため、所望に応じて溶剤を含んでいてもよい。該溶剤はアンカーコート形成用塗料の成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。上記溶剤としては、例えば、1‐メトキシ‐2‐プロパノール、酢酸エチル、酢酸n‐ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。上記溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0104】
上記アンカーコート形成用塗料には、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、及びフィラーなどの添加剤を1種、又は2種以上含ませてもよい。
【0105】
上記アンカーコート形成用塗料は、これらの成分を混合攪拌することにより得ることができる。
【0106】
上記アンカーコート形成用塗料を用い、上記絶縁フィルムの片面(本発明のホットメルト接着剤の層の形成面)の上に、上記アンカーコートを形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。該方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
【0107】
上記アンカーコートの厚みは、接着強度の観点から、通常0.1~5μm、好ましくは0.3~3μm、より好ましくは0.5~2μmであってよい。
【0108】
3.フレキシブルフラットケーブル:
本発明のフレキシブルフラットケーブルには、本発明のホットメルト接着剤が用いられている。本発明のフレキシブルフラットケーブルには、配列させた複数の導体を挟持し、被覆する絶縁接着性積層体の絶縁基材フィルムとして、好ましくはシンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムが用いられている。本発明のフレキシブルフラットケーブルは、好ましくは本発明の補強テープにより導体の端末を補強されている。本発明のホットメルト接着剤と本発明の補強テープについては上述した。
【0109】
本発明のフレキシブルフラットケーブルを生産する得る方法は、特に制限されず、公知の方法で生産することができる。上記方法としては、例えば、以下のような方法をあげることができる。任意の絶縁基材フィルム、好ましくはシンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムの片面の上に、任意の難燃性ホットメルト接着剤の層を設けたフレキシブルフラットケーブル用絶縁接着性積層体を2ロール用い、実施形態の1つにおいてはシンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムの片面の上に、本発明のホットメルト接着剤を含む層を1層以上設けたフレキシブルフラットケーブル用絶縁接着性積層体を2ロール用い、公知のフレキシブルフラットケーブル製造装置を使用し、上記絶縁接着性積層体を上記難燃性ホットメルト接着剤の層が対向するように送り出し、その間に平行に引き揃えた導電体の平角線を挟み込み、上記装置の熱プレスロールで熱プレスして上記難燃性ホットメルト接着剤の層同士を互いに融着させる。上記絶縁接着性積層体には、導電体の平角線を挟み込む前に、孔を打抜くとともに、孔を打抜いた所に上記絶縁接着性積層体の絶縁基材フィルムの層の側から、本発明の補強テープを貼着する。次に、両側端をスリットして所定の仕上げ幅とし、孔と本発明の補強テープの部分で切断して、本発明のフレキシブルフラットケーブルとして完成することができる。
【0110】
上記導電体の平角線としては、特に制限されず、任意のものを用いることができる。上記導電体の平角線は、フレキシブルフラットケーブルの摺動性の観点から、厚さ12~50μm、幅0.2~2mmの軟銅線、硬銅線、及びこれらの錫メッキ線やニッケルメッキ線であってよい。
【0111】
上記シンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムは、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂のフィルムである。該フィルムは無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、及び二軸延伸フィルムを包含する。またこれらの1種以上を2層以上積層した積層フィルムを包含する。
【0112】
上記シンジオタクチックポリスチレン系樹脂は、スチレンに由来する構成単位を主として含む重合体であって、シンジオタクチック構造を主として含むポリスチレン系樹脂である。上記シンジオタクチックポリスチレン系樹脂は比誘電率が小さい。そのため上記シンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムは、高速伝送用のフレキシブルフラットケーブルに使用される材料、典型的には、絶縁接着性積層体の絶縁基材フィルムとして好適である。また上記シンジオタクチックポリスチレン系樹脂は、後述するように立体構造に規則性を有することから、結晶性を有し、耐熱性に優れている。
【0113】
ここで「スチレンに由来する構成単位を主として含む」とは、スチレンに由来する構成単位の含有量が通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは85モル%以上、更に好ましくは90~100モル%であることを意味する。「シンジオタクチック構造」とは、炭素・炭素結合により形成される主鎖に対して側鎖フェニル基(置換フェニル基を含む。)が交互に反対方向に位置する立体構造である。「シンジオタクチック構造を主として含む」とは、ラセミダイアッド分率(連続する2個のビニル芳香族モノマーに由来する構成単位の立体構造がシンジオタクチック構造を有している割合)が通常60モル%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは85~100%であることを意味する。また上記シンジオタクチックポリスチレン系樹脂に含み得る、スチレン以外の構成モノマーに由来する構成単位としては、例えば、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、t-ブチルスチレン、及びジビニルベンゼンなどのアルキルスチレン;クロロスチレン、ブロモスチレン、及びフルオロスチレンなどのハロゲン化スチレン;クロロメチルスチレンなどのハロゲン化アルキルスチレン;メトキシスチレン、及びエトキシスチレンなどのアルコキシスチレン;などの1種以上に由来する構成単位をあげることができる。
【0114】
上記のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムの片面の上に、本発明のホットメルト接着剤を含む層を1層以上設けたフレキシブルフラットケーブル用絶縁接着性積層体としては、例えば、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムの片面の上に、本発明のホットメルト接着剤と任意の難燃剤との組成物の層を設けたフレキシブルフラットケーブル用絶縁接着性積層体;及び、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムの片面の上に、本発明のホットメルト接着剤の層を設け、更にその面の上に任意の難燃性ホットメルト接着剤の層を設けたフレキシブルフラットケーブル用絶縁接着性積層体;などをあげることができる。
【0115】
上記任意の難燃性ホットメルト接着剤としては、例えば、公知の難燃性ポリエステル系ホットメルト接着剤や難燃性ポリオレフィン系ホットメルト接着剤などを用いることができる。上記難燃性ポリオレフィン系ホットメルト接着剤の好ましいものとしては、例えば、国際公開2016/181880号に記載されている接着性樹脂組成物「(A)酸変性ポリプロピレン系樹脂 20~70質量%;(B)ポリプロピレン系樹脂 20~60質量%;及び(C)エチレンと酢酸ビニル、メタクリル酸アルキル、及びアクリル酸アルキルからなる群から選択される1種以上のコモノマーとの共重合体 2~25質量%;を含み、ここで上記成分(A)、上記成分(B)及び上記成分(C)の和は100質量%である、接着性樹脂組成物。」や国際公開2018/042995号に記載されている樹脂組成物「(A)酸変性ポリプロピレン系樹脂55~85質量%;及び、(B)エチレンと、酢酸ビニル、メタクリル酸アルキル、及びアクリル酸アルキルからなる群から選択される1種以上のコモノマーとの共重合体45~15質量%;を含み、ここで前記成分(A)と前記成分(B)との和は100質量%であり;上記成分(A)の酸変性量が0.5~10モル%である;積層体の接着層用樹脂組成物。」などをあげることができる。
【実施例
【0116】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0117】
測定方法
以下の試験は何れも、特に条件が記載されていない限り、温度23℃、湿度50%の環境下で行った。
【0118】
(イ)シンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムとの接着強度(接着強度):
倉敷紡績株式会社のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルム「オイディスHN(商品名)」と補強テープのホットメルト接着剤層とを、株式会社東洋精機製作所のHG-100型ヒートシール試験機を使用し、温度180℃、時間2秒、圧力0.3MPaの条件で融着した。このとき180°引き剥がし試験の引張方向とシンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムのマシン方向、及び補強テープのマシン方向とが一致するようにした。次に、引き剥がし幅25mm、引き剥がし速度100mm/分、及び引き剥がし角度180°の条件で両者を引き剥がし、接着強度を測定した。また剥離界面を目視観察し、何れの界面で剥離したかを調べた。表には、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムとホットメルト接着剤層との界面で剥離した場合はSPS、ホットメルト接着剤層と補強テープのアンカーコートとの界面又は該アンカーコートと補強テープの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムとの界面で剥離した場合はACと記載した。シンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルム又は二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムが材料破壊をしたときは材破と記載した。接着強度は、通常3N/25mm以上、好ましくは5N/25mm以上、より好ましくは7N/25mm以上、更に好ましくは8N/25mm以上であってよい。接着強度は高い方が好ましい。
【0119】
(イ2)導体接着強度:
(イ2‐1)フレキシブルフラットケーブルの製造:
フレキシブルフラットケーブル装置を使用し、リケンテクノス株式会社のフレキシブルフラットケーブル用絶縁接着性積層体「NC5224(商品名)」を2ロール用い、導体幅1.4mm、厚み0.035mmの硬銅線を12本配列させたものを、一方の上記絶縁接着性積層体のホットメルト接着剤層と他方の上記絶縁接着性積層体のホットメルト接着剤層とで挟持し、温度180℃に予熱された押圧ロールと温度180℃に予熱された受けロールとで、ライン速度0.5m/分、圧力3MPaの条件で押圧し、融着させた後、両側端をスリットして幅24mmの仕上げ幅とし、孔と補強テープの部分におけるマシン方向の中央の線において切断して、長さ100mm、幅24mmのフレキシブルフラットケーブルを得た。その際に、上記絶縁接着性積層体には、マシン方向20mm×横方向24mmの孔を、マシン方向に100mm間隔で打抜き、そこに長さ150mmに裁断した補強テープを、絶縁接着性積層体の層の側から貼着した。
(イ2‐2)
上記で得たフレキシブルフラットケーブルの補強テープと銅線との接着力を、試験速度50mm/分の条件で、銅線を補強テープから180度剥離を行い測定した。
【0120】
(ロ)タック性1:
補強テープのホットメルト接着剤層を形成する工程中の乾燥後の巻取り工程におけるウェブハンドリング状況(移送ロール等にホットメルト接着剤層がタックしたか否かなど)、補強テープのホットメルト接着剤層の面を指触したときの感触、及びスリット工程においてセパレータなしで作成したフィルムロールから繰り出す際のウェブハンドリング状況(ブロッキングしたフィルムを引き剥がす際の異音、フィルムロールからの繰り出し位置の変動などの有無)から、商品とする際にセパレータが必要か否かを評価した。
A:商品とする際にもセパレータを必要としない。タック性は十分に低い。
B:試験はセパレータなしでも実施できた。しかし、商品とするには、セパレータが必要である。
C:試験もセパレータなしでは実施できなかった。
【0121】
(ロ2)タック性2:
補強テープのホットメルト接着剤層の面を指触したときの感触から、例1の補強テープと、市販の補強テープ(リケンテクノス株式会社の「P188B‐30(商品名)」)を標準サンプルとして、以下の基準でタック性を評価した。
A:タック性は市販の補強テープと略同等であった。
B:タック性は市販の補強テープよりも高かったが、例1の補強テープよりは低かった。
C:タック性は例1の補強テープと略同等であった。
D:タック性は例1の補強テープよりも高かった。
【0122】
使用した原材料
(P1)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物:
(P1‐1)旭化成株式会社のスチレンとブタジエンとのブロック共重合体の水素添加物「タフテックH1041(商品名)」。スチレンに由来する構成単位の含有量30質量%、質量平均分子量8.2万、数平均分子量6.3万
(P1‐2)旭化成株式会社のスチレンと1,3‐ブタジエンとのブロック共重合体の水素添加物「タフテックH1221(商品名)」。スチレンに由来する構成単位の含有量12質量%、質量平均分子量15万、数平均分子量10万。
(P1‐3)旭化成株式会社のスチレンと1,3‐ブタジエンとのブロック共重合体の水素添加物「タフテックH1043(商品名)」。スチレンに由来する構成単位の含有量67質量%、質量平均分子量5.7万、数平均分子量4.6万。
(P1‐4)株式会社クラレのスチレンと1,3‐ブタジエンとのブロック共重合体の水素添加物「セプトン8006(商品名)」。スチレンに由来する構成単位の含有量33質量%、質量平均分子量27万、数平均分子量13万。
(P1‐5)株式会社クラレのスチレンと1,3‐ブタジエン、イソプレンとのブロック共重合体の水素添加物「セプトン4033(商品名)」。スチレンに由来する構成単位の含有量30質量%、質量平均分子量9.5万、数平均分子量7.3万。水素添加率98.8モル%。
【0123】
(P2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物:
(P2‐1)スチレンと1,3‐ブタジエンとのランダム共重合体の水素添加物「ダイナロン1320P(商品名)」。水素添加率100モル%(99.9モル%以上)、スチレンに由来する構成単位の含有量9.7質量%、質量平均分子量26万、数平均分子量21万。
【0124】
(P3)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物の酸変性体:
(P3‐1)旭化成株式会社のスチレンと1,3‐ブタジエンとのブロック共重合体の水素添加物の無水マレイン酸変性体「タフテックM1913(商品名)」。スチレンに由来する構成単位の含有量30質量%、質量平均分子量9.1万、数平均分子量4.3万。酸価10mgCHONa/g。
【0125】
(P4)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物のアミン変性体:
(P4‐1)旭化成株式会社のスチレンと1,3‐ブタジエンとのブロック共重合体の水素添加物のアミン変性体「タフテックMP10(商品名)」。スチレンに由来する構成単位の含有量30質量%、質量平均分子量5.0万、数平均分子量2.1万。
【0126】
(P’)熱可塑性飽和共重合ポリエステル系樹脂:
(P’‐1)東亜合成株式会社の結晶性の熱可塑性飽和共重合ポリエステル系樹脂「アロンメルトPES-111EE(商品名)」。
【0127】
(Q)石油樹脂:
(Q‐1)出光興産株式会社のジシクロペンタジエンと芳香族不飽和炭化水素化合物との共重合体の水素添加物である石油樹脂「アイマーブ P‐140(商品名)」。軟化点140℃。
【0128】
(Q’)比較物質:
(Q’‐1)ヤスハラケミカル株式会社のテルペンフェノール樹脂「YSポリスターT145(商品名)」。軟化点145℃。
【0129】
(R)アンチブロッキング剤:
(R‐1)日本タルク株式会社のタルク「P‐6(商品名)」。平均粒子径4μm。
(R‐2)日本タルク株式会社のタルク「MS‐P(商品名)」。平均粒子径15μm。
【0130】
(A)アンカーコート形成用塗料:
(A-1)下記(a1)42質量部、下記(a2)58質量部、下記(a3)23質量部、下記(a4)35質量部、及びメチルエチルケトン600質量部を混合攪拌して得た塗料。
【0131】
(a1)東洋紡株式会社の熱可塑性共重合ポリエステル系樹脂「バイロン240(商品名)」。非結晶性(融解熱量0J/g(明瞭な融解ピークなし))、ガラス転移温度 60℃。
(a2)東洋紡株式会社の熱可塑性共重合ポリエステル系樹脂「バイロン560(商品名)」。非結晶性(融解熱量0J/g(明瞭な融解ピークなし))、ガラス転移温度 7℃。
(a3)東ソー株式会社の1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物「コロネートHX(商品名)」。
(a4)大日精化工業株式会社のインキ「NB500 739藍(商品名)」。
【0132】
例1
厚み188μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの片面の上に、ロールコーターを使用し、上記(A-1)を用い、乾燥後厚みが1μmとなるようにアンカーコートを形成した。次に、形成されたアンカーコートの面の上に、ロールコーターを使用し、上記(P1‐1)20質量部とトルエン80質量部とを混合攪拌して得た塗料を用い、乾燥後厚みが30μmとなるようにホットメルト接着剤層を形成した。幅30mmにスリットし、補強テープを得た。上記試験(イ)、(ロ)を行った。結果を表1に示す。なお表にはホットメルト接着剤層に用いた樹脂を「P成分」、ホットメルト接着剤層に用いた樹脂中のスチレンに由来する構成単位の含有量を「St含量」と表記した。
【0133】
例2~9
上記(P1‐1)の替わりに上記(P1‐2)~(P4‐1)、(P’‐1)の何れかを用いたこと以外は例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
例10~15
ホットメルト接着剤を表2に示す配合のものに変更したこと以外は例1と同様にして補強テープを得た。上記試験(イ)、(イ2)、及び(ロ2)を行った。また例1について上記試験(イ2)、及び(ロ2)を行った。結果を表2に示す。なお表2ではホットメルト接着剤を「HM」と表記している。
【0136】
【表2】
【0137】
本発明のホットメルト接着剤の塗膜は、ポリエステル系樹脂のアンカーコートの面の上に良好に形成することができた。本発明の補強テープは、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムとの接着強度が良好であった。また本発明の好ましい補強テープは、タック性が十分に低く、商品とする際にもセパレータを必要としないものであった。更に本発明の好ましい補強テープは、市販品(即ち、タック性が十分に低く、工業的に良好に使用されているもの)と略同等のタック性であった。従って、本発明の補強テープは、フレキシブルフラットケーブルの導体端末補強用として、特に絶縁接着性積層体の絶縁基材フィルムがシンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムであるフレキシブルフラットケーブルの導体端末補強用として好適に用いることができる。
【0138】
倉敷紡績株式会社のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルム「オイディスHN(商品名)」の片面の上に、ロールコーターを使用し、例11のホットメルト接着剤20質量部とトルエン80質量部とを混合攪拌して得た塗料を用い、乾燥後厚みが5μmとなるようにホットメルト接着剤層を設け、積層体を作成した。次に、株式会社東洋精機製作所のHG-100型ヒートシール試験機を使用し、温度180℃、時間2秒、圧力0.3MPaの条件で、上記積層体のホットメルト接着剤層側の面とリケンテクノス株式会社のフレキシブルフラットケーブル用絶縁接着性積層体「NC5224(商品名)」(難燃性ホットメルト接着剤は、難燃性ポリエステル系ホットメルト接着剤である。)の難燃性ホットメルト接着剤層側の面を融着した。このとき180°引き剥がし試験の引張方向とシンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムのマシン方向、及びフレキシブルフラットケーブル用絶縁接着性積層体のマシン方向とが一致するようにした。続いて、引き剥がし幅25mm、引き剥がし速度100mm/分、及び引き剥がし角度180°の条件で両者を引き剥がし、接着強度を測定した。その結果は接着強度16N/25mmであり、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムが材料破壊していた。
【0139】
当業者であれば、上述の試験結果から、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルムの片面の上に、本発明のホットメルト接着剤を含む層を1層以上設けた積層体が、フレキシブルフラットケーブル用絶縁接着性積層体として非常に有用なものであることをたちどころに理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0140】
図1】フレキシブルフラットケーブルの導体端末に補強テープを貼合して補強した構造の1つの例を示す部分斜視図である。
【符号の説明】
【0141】
1:フレキシブルフラットケーブル
2:補強テープ
3:導体端末

図1