(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20230419BHJP
H05K 3/36 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
G02B6/42
H05K3/36 B
(21)【出願番号】P 2019175610
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】519283819
【氏名又は名称】CIG Photonics Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三枝 慈
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕史
(72)【発明者】
【氏名】村上 大介
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-121644(JP,A)
【文献】特開2007-305863(JP,A)
【文献】特開2004-342969(JP,A)
【文献】特開2016-181584(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0174620(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/42-6/43
H05K 1/14
H05K 3/36
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号及び電気信号を少なくとも一方から他方に変換するための光サブアセンブリと、
第1面を有し、複数の第1パッドを前記第1面に備える第1基板と、
第2面を有し、複数の第2パッドを前記第2面に備え、前記複数の第1パッドのそれぞれと前記複数の第2パッドの対応する1つからなる一対のパッドが対向するように配置された第2基板と、
対向する前記一対のパッドを接合するハンダと、
前記第1基板の前記第1面に接触して、前記第1面及び前記第2面の間に介在する
複数の第1絶縁壁と、
前記第2基板の前記第2面に接触して、前記第1面及び前記第2面の間に介在する
複数の第2絶縁壁と、
を有し、
前記複数の第1絶縁壁は、それぞれ、前記複数の第1パッドの隣同士の間に存在し、
前記複数の第2絶縁壁は、それぞれ、前記複数の第2パッドの隣同士の間に存在し、
前記複数の第1絶縁壁のそれぞれと、前記複数の第2絶縁壁の対応する1つは、一対の絶縁壁を構成し、
前記
一対の絶縁壁は、
前記第1面及び前記第2面に垂直な方向に一直線上に対向せず、対向する前記一対のパッドのいずれにも重ならずに、前記第1面及び前記第2面に沿った方向に隣り合っていることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載された光モジュールであって、
前記
複数の第1絶縁壁は、前記第2基板の前記第2面に接触し、
前記
複数の第2絶縁壁は、前記第1基板の前記第1面に接触していることを特徴とする光モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載された光モジュールであって、
前記
複数の第1絶縁壁は、前記第2基板の前記第2面に接触せず、
前記
複数の第2絶縁壁は、前記第1基板の前記第1面に接触しないことを特徴とする光モジュール。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された光モジュールであって、
前記
一対の絶縁壁は、相互に接触していることを特徴とする光モジュール。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載された光モジュールであって、
前記
一対の絶縁壁は、相互に接触しないことを特徴とする光モジュール。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載された光モジュールであって、
前記
複数の第1絶縁壁
のそれぞれは、前記複数の第1パッドの前記隣同士の方向に、前記ハンダの全体に隣り合い、
前記
複数の第2絶縁壁
のそれぞれは、前記複数の第2パッドの前記隣同士の方向に、前記ハンダの全体に隣り合うことを特徴とする光モジュール。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載された光モジュールであって、
前記
複数の第1絶縁壁及び前記
複数の第2絶縁壁は、ソルダーレジストからなることを特徴とする光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光モジュールは、光伝送装置に多く用いられ、光信号と電気信号の間の変換を高速で行う機能を提供している。光モジュールは、レーザーダイオードやフォトダイオードを含んだ光サブアッセンブリと制御用のプリント基板(PCB)を備えている。光サブアッセンブリとPCBとの電気的な接続には、フレキシブル基板が用いられることがある。フレキシブル基板とPCBは、互いに対向して複数の端子(接続パッド)同士がハンダで接続される。
【0003】
近年、光モジュールは、複数チャンネルに対応して高機能化及び小型化され、接続パッド間の狭ピッチ化が進んでいる。接続パッド間のハンダによる短絡を防止するために、接続パッド間に絶縁物(ソルダーレジスト)が配置される。例えば、特許文献1では、ソルダーレジストは接続パッドに一部重畳し、特許文献2では、ソルダーレジストは接続パッドに重畳しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-53643号公報
【文献】特開平7-283520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板同士の接続に用いるハンダは、二つの基板に挟まれることとなり、二つの基板との間で縦方向に逃げることができず、横に広がりやすくなる。そのためICの搭載と比べて、接続パッド間の短絡の懸念が高まる。単純に接続パッド間隔を広げることで短絡そのものの防止は可能であるが、狭ピッチ化の要求を満足できない。
【0006】
ソルダーレジストが接続パッドに一部重畳している構造(特許文献1)を、PCB及びフレキシブル基板の両方に適用すれば、ソルダーレジストが広く配置されるので短絡を防止することができ、狭ピッチ化の要求も満足できる。しかし、接続パッドの一部がソルダーレジストに覆われるために、ハンダによる接合領域が狭くなり、インピーダンスのミスマッチによって高周波特性に影響を与える。
【0007】
本発明は、高周波特性への影響を抑えつつ、短絡を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る光モジュールは、光信号及び電気信号を少なくとも一方から他方に変換するための光サブアセンブリと、第1面を有し、複数の第1パッドを前記第1面に備える第1基板と、第2面を有し、複数の第2パッドを前記第2面に備え、前記複数の第1パッドのそれぞれと前記複数の第2パッドの対応する1つからなる一対のパッドが対向するように配置された第2基板と、対向する前記一対のパッドを接合するハンダと、前記複数の第1パッドの隣同士の間で、前記第1基板の前記第1面に接触して、前記第1面及び前記第2面の間に介在する第1絶縁壁と、前記複数の第2パッドの隣同士の間で、前記第2基板の前記第2面に接触して、前記第1面及び前記第2面の間に介在する第2絶縁壁と、を有し、前記第1絶縁壁及び前記第2絶縁壁は、対向する前記一対のパッドのいずれにも重ならずに、前記第1面及び前記第2面に沿った方向に隣り合っていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、第1絶縁壁及び前記第2絶縁壁によって、短絡が防止される。第1絶縁壁及び前記第2絶縁壁は、対向する一対のパッドのいずれにも重ならないので、インピーダンスのミスマッチがなく、高周波特性への影響を抑えることができる。
【0010】
(2)(1)に記載された光モジュールであって、前記第1絶縁壁は、前記第2基板の前記第2面に接触し、前記第2絶縁壁は、前記第1基板の前記第1面に接触していることを特徴としてもよい。
【0011】
(3)(1)に記載された光モジュールであって、前記第1絶縁壁は、前記第2基板の前記第2面に接触せず、前記第2絶縁壁は、前記第1基板の前記第1面に接触しないことを特徴としてもよい。
【0012】
(4)(1)から(3)のいずれか1項に記載された光モジュールであって、前記第1絶縁壁及び前記第2絶縁壁は、相互に接触していることを特徴としてもよい。
【0013】
(5)(1)から(3)のいずれか1項に記載された光モジュールであって、前記第1絶縁壁及び前記第2絶縁壁は、相互に接触しないことを特徴としてもよい。
【0014】
(6)(1)から(5)のいずれか1項に記載された光モジュールであって、前記第1絶縁壁は、前記複数の第1パッドの前記隣同士の方向に、前記ハンダの全体に隣り合い、前記第2絶縁壁は、前記複数の第2パッドの前記隣同士の方向に、前記ハンダの全体に隣り合うことを特徴としてもよい。
【0015】
(7)(1)から(6)のいずれか1項に記載された光モジュールであって、前記第1絶縁壁及び前記第2絶縁壁は、ソルダーレジストからなることを特徴としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態に係る光モジュールの斜視図である。
【
図2】第1基板及び第2基板の接続構造の詳細な平面図である。
【
図5】
図2に示す接続構造のV-V線断面図である。
【
図6】
図2に示す接続構造のVI-VI線断面図である。
【
図7】第2の実施形態に係る第1基板及び第2基板の接続構造の断面図である。
【
図8】第3の実施形態に係る第1基板及び第2基板の接続構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。全図において同一の符号を付した部材は同一又は同等の機能を有するものであり、その繰り返しの説明を省略する。なお、図形の大きさは倍率に必ずしも一致するものではない。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る光モジュールの斜視図である。光モジュール100は、送信機能及び受信機能を有するトランシーバであり、QSFP-DD(Quad small form- factor pluggable Double Density)規格に適応しており、伝送レートは400Gbit/sであるが、他の規格や伝送レートでの使用を限定するものではない。光モジュール100は、モジュールケース102(筺体)と、光サブアセンブリ10と、第1基板12と、第2基板14を含む。
【0019】
光サブアセンブリ10は、放熱面となる底部を有するボックス型であり、光信号及び電気信号を少なくとも一方から他方に変換するようになっている。光サブアセンブリ10は、例えば、光送信サブアセンブリ10A及び光受信サブアセンブリ10Bの少なくとも一方である。光サブアセンブリ10は、複数の半導体素子(送信側ではレーザーダイオード等の発振素子、受信側ではフォトダイオード等の受光素子)を内蔵し、複数チャンネルに対応している。
【0020】
第1基板12及び第2基板14は相互に接続されている。光サブアセンブリ10と第1基板12とは、第2基板14を介して接続される。第1基板12より電気信号が第2基板14を介して光送信サブアセンブリ10Aへ伝送される。光受信サブアセンブリ10Bより電気信号が第2基板14を介して第1基板12へ伝送される。
【0021】
図2は、第1基板12及び第2基板14の接続構造の詳細な平面図である。
図3は、第1基板12の詳細な平面図である。
【0022】
第1基板12は、例えばプリント基板(PCB)などのリジッド基板である。第1基板12は、複数の第1パッド16を第1面18に備えている。複数の第1パッド16は、複数の第1接地パッド16Aと、複数の第1信号パッド16Bを含む。第1接地パッド16Aは、グランドライン21に電気的に接続されている。第1信号パッド16Bは、第1信号ライン20に接続されている。第1信号ライン20、グランドライン21は、第1絶縁層22に覆われて保護されている。複数の第1パッド16のそれぞれは、第1絶縁層22から少なくとも一部が露出するようになっている。
【0023】
複数の第1パッド16の隣同士の間に、第1絶縁壁24が設けられている。第1絶縁壁24は、第1基板12の第1面18に接触している。第1絶縁壁24は、ソルダーレジストからなる。第1絶縁壁24は、第1絶縁層22の一部であり、最も外側の第1パッド16の外側にも第1絶縁層26が配置されている。
【0024】
図4は、第2基板14の裏面の詳細な平面図である。第2基板14は、例えばフレキシブル基板である。第2基板14は、光サブアセンブリ10に取り付けられるフィードスルー(図示せず)に接続される。第2基板14は、第2面28を有する。第2面28は、
図2に示す表面とは反対の面(裏面)である。第2基板14は、複数の第2パッド30を第2面28に備えている。複数の第2パッド30は、第2面28に設けられたグランドプレーン(図示せず)に電気的に接続される第2接地パッド30Aと、
図2に示す表面に設けられた第2信号ライン32に接続される第2信号パッド30Bを含む。なお、図示しないグランドプレーン及び第2信号ライン32は、第2絶縁層35、第2カバー層34に覆われて保護される。
【0025】
複数の第2パッド30の隣同士の間に第2絶縁壁36が設けられている。第2絶縁壁36は、第2基板14の第2面28に接触している。第2絶縁壁36は、ソルダーレジストからなる。第2絶縁壁36は、第2絶縁層35の一部であり、最も外側の第2パッド30の外側にも第2絶縁層38が配置されている。
【0026】
図5は、
図2に示す接続構造のV-V線断面図である。
図6は、
図2に示す接続構造のVI-VI線断面図である。
【0027】
複数の第1パッド16のそれぞれと複数の第2パッド30の対応する1つからなる一対のパッドPは、対向するようになっている。対向する一対のパッドPは、ハンダ40で接合されて電気的に接続されている。第2パッド30は、ビアホール42を有している。ビアホール42は、第2基板14を貫通しており、ハンダ40を溶融して、第2基板14の表面(
図2)から第2面28の方向に流し込むことができる。こうして、ハンダ40は一対のパッドPの間に設けられる。
【0028】
第1絶縁壁24及び第2絶縁壁36は、第1面18及び第2面28の間に介在する。第1絶縁壁24は、第2基板14の第2面28に接触している。第2絶縁壁36は、第1基板12の第1面18に接触している。第1絶縁壁24及び第2絶縁壁36は、同じ高さであることが望ましいが、第1パッド16又は第2パッド30よりも高ければ、異なる高さでもよい。
【0029】
第1絶縁壁24及び第2絶縁壁36は、対向する一対のパッドPのいずれにも重ならない。そのため、第1パッド16又は第2パッド30の、ハンダ40による接合領域が狭くならず、インピーダンスのミスマッチによって高周波特性が劣化することもない。
【0030】
第1絶縁壁24及び第2絶縁壁36は、第1面18及び第2面28に沿った方向に隣り合って、相互に接触している。これは、第1絶縁壁24及び第2絶縁壁36のそれぞれの側面を当てて、第1基板12及び第2基板14の位置合わせが行われた結果である。また、第1絶縁壁24及び第2絶縁壁36の製造ばらつきや接続時の位置ズレがあっても、隣同士の第1パッド16の間及び隣同士の第2パッド30の間に、確実に壁を作ることができる。
【0031】
第1絶縁壁24は、複数の第1パッド16の隣同士の方向に、ハンダ40の全体に隣り合っている。第2絶縁壁36は、複数の第2パッド30の隣同士の方向に、ハンダ40の全体に隣り合っている。これにより、ハンダ40の流動による短絡防止の効果が確実に得られる。
【0032】
なお、第1基板12及び第2基板14の組み合わせは、リジッド基板及びリジッド基板、あるいは、フレキシブル基板及びフレキシブル基板であってもよい。または、光サブアッセンブリに取り付けられるフィードスルー(セラミック配線基板)が第2基板であってもよい。
【0033】
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態に係る第1基板及び第2基板の接続構造の断面図である。本実施形態では、第1絶縁壁224及び第2絶縁壁236が相互に接触しないが、それでも二重の壁が形成されるので、ハンダ240の溶融時の流動による短絡防止の効果が得られる。
【0034】
[第3の実施形態]
図8は、第3の実施形態に係る第1基板及び第2基板の接続構造の断面図である。本実施形態では、第1絶縁壁324は、第2基板314の第2面328に接触しない。第2絶縁壁336は、第1基板312の第1面318に接触しない。第1絶縁壁324及び第2絶縁壁336は、相互に接触しない。
【0035】
本実施形態でも、二重の壁によって、溶融したハンダ340が流動するときのパスを長くすることができ、溶融したハンダ340の粘性の特徴も相まって、短絡を確実に防止することができる。
【0036】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0037】
10 光サブアセンブリ、10A 光送信サブアセンブリ、10B 光受信サブアセンブリ、12 第1基板、14 第2基板、16 第1パッド、16A 第1接地パッド、16B 第1信号パッド、18 第1面、20 第1信号ライン、21 グランドライン、22 第1絶縁層、24 第1絶縁壁、26 第1絶縁層、28 第2面、30 第2パッド、30A 第2接地パッド、30B 第2信号パッド、32 第2信号ライン、34 第2カバー層、35 第2絶縁層、36 第2絶縁壁、38 第2絶縁層、40 ハンダ、42 ビアホール、100 光モジュール、102 モジュールケース、224 第1絶縁壁、236 第2絶縁壁、240 ハンダ、312 第1基板、314 第2基板、318 第1面、324 第1絶縁壁、328 第2面、336 第2絶縁壁、340 ハンダ、P パッド。