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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】電波透過板および電波透過システム
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/10 20060101AFI20230419BHJP
   H01P 1/00 20060101ALN20230419BHJP
【FI】
H01Q15/10
H01P1/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019178395
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021057722
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】松野 宏己
(72)【発明者】
【氏名】林 高弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智史
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-112942(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0116347(KR,A)
【文献】特開2007-270459(JP,A)
【文献】特開2009-207078(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0098673(US,A1)
【文献】特表2010-527565(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0270623(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00-25/04
H01P 1/00- 1/08
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の周波数の電波を透過させる電波透過板であって、
第1平面上の第1方向および第1方向と直交する第2方向において周期的に配置されている複数の第1素子と、
複数の前記第1素子に対応する位置に、前記第1平面と平行な第2平面上の前記第1方向および前記第2方向に隙間を介して配置されており、特定の誘電率をそれぞれ有する複数の第1ユニットセルと
を備え、
数の前記第1ユニットセルは、複数の前記第1ユニットセルの誘電率が前記第1方向において一定の割合で増加または減少するように配置されていることにより、複数の前記第1素子を介して入力した電波の伝播方向を変化させ
複数の前記第1ユニットセルの間の隙間には、前記第1ユニットセルの誘電率とは異なる誘電率の誘電体が形成されている、
電波透過板。
【請求項2】
複数の前記第1素子は、前記第1平面に向けて入力する特定の周波数の電波を透過させる周波数選択膜の少なくとも一部として形成されている、請求項1に記載の電波透過板。
【請求項3】
複数の前記第1ユニットセルは、前記第1方向においてセルのサイズ、形状、および材質の少なくとも1つが異なるように形成されている、請求項1または2に記載の電波透過板。
【請求項4】
複数の前記第1ユニットセルは、入力する制御信号に応じて誘電率が可変のデバイスの一部として形成されている、請求項1または2に記載の電波透過板。
【請求項5】
複数の前記第1素子は、
前記第1平面に向けて入力する特定の周波数の電波を透過させる周波数選択膜の少なくとも一部として形成されており、
前記第1方向において素子のサイズおよび/または面積が増加または減少するように形成され、当該素子のサイズおよび/または面積の変化に応じて複数の前記第1素子を透過した電波の伝播方向を変更する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電波透過板。
【請求項6】
特定の周波数の電波を透過させる電波透過板であって、
電波が入力される第1平面上の第1方向および第1方向と直交する第2方向において、周期的に配置されている複数の第1素子と、
複数の前記第1素子に対応する位置に、前記第1平面と平行な第2平面上の前記第1方向および前記第2方向に隙間を介して設けられており、特定の誘電率をそれぞれ有する複数の第1ユニットセルと、
複数の前記第1ユニットセルを透過した電波が入力され、前記第1平面と平行な第3平面上の前記第1方向および前記第2方向において周期的に配置されている複数の第2素子と、
複数の前記第2素子に対応する位置に、前記第3平面と平行な第4平面上の前記第1方向および前記第2方向に設けられており、特定の誘電率をそれぞれ有する複数の第2ユニットセルと
を備え、
数の前記第1ユニットセル数の前記第2ユニットセルとのうち、少なくとも一方は、ユニットセルの誘電率が前記第1方向において一定の割合で増加または減少するように配置されていることにより、複数の前記第1素子を介して入力した電波の伝播方向を変化させ
複数の前記第1ユニットセルの間の隙間には、前記第1ユニットセルの誘電率とは異なる誘電率の誘電体が形成されている、
電波透過板。
【請求項7】
複数の前記第1素子は、前記第1平面に向けて入力する特定の周波数の電波を透過させる周波数選択膜の少なくとも一部として形成されている、請求項6に記載の電波透過板。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか一項に記載の前記電波透過板が複数設けられており、
複数の前記電波透過板のそれぞれは、特定の距離だけ離れて積み重ねられている、
電波透過板。
【請求項9】
特定の周波数の第1電波が外部から伝播し、第1空間に通じている電波入力部と、
前記電波入力部に設けられている請求項1から8のいずれか一項に記載の前記電波透過板と
を備え、
前記電波透過板は、前記電波入力部から入力した前記第1電波の伝播方向を、前記第1空間内の特定の領域へと伝播する方向に変更する、
電波透過システム。
【請求項10】
特定の周波数の第1電波を発生する第1電波発生装置と、
外部の第1空間に通じており、前記第1電波を前記第1空間へと伝播させる電波出力部と、
前記電波出力部に設けられている請求項1から8のいずれか一項に記載の前記電波透過板と
を備え、
前記電波透過板は、前記第1電波発生装置が発生した前記第1電波の伝播方向を、前記第1空間内の特定の領域へと伝播する方向に変更する、
電波透過システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波透過板および電波透過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特定の構造を有する導体パタ一ンを周期的に配置することによって、電磁波の伝播特性を制御するメタマテリアル(Metamaterial)技術が知られている。例えば、入射する電磁波の波長よりも小さいサイズの導体パタ一ンを2次元状に周期的に配列することで、入射する電磁波の透過特性および反射特性を制御する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-60430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メタマテリアル技術は、例えば、伝播すべき電波を透過させつつ、不要な電波を反射させる周波数選択機能を実現できる。このような技術は、より効率的に電波を送受信できるように、入射する電磁波の透過特性および反射特性だけでなく、電波の伝播方向も制御できるようにすることが期待されている。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、入射する電磁波を選択的に透過させつつ、出射方向を制御できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、特定の周波数の電波を透過させる電波透過板であって、第1平面上の第1方向および第1方向と直交する第2方向において周期的に配置されている複数の第1素子と、複数の前記第1素子に対応して、前記第1平面と平行な第2平面上の前記第1方向および前記第2方向に配置されており、特定の誘電率をそれぞれ有する複数の第1ユニットセルとを備え、複数の前記第1素子の形状と複数の前記第1ユニットセルの誘電率との少なくとも一方は、前記第1方向において変化するように形成されている、電波透過板を提供する。
【0007】
複数の前記第1素子は、前記第1平面に向けて入力する特定の周波数の電波を透過させる周波数選択膜の少なくとも一部として形成されていてもよい。複数の前記第1ユニットセルは、前記第1方向においてセルのサイズ、形状、および材質の少なくとも1つが異なるように形成されていてもよい。
【0008】
複数の前記第1ユニットセルは、入力する制御信号に応じて誘電率が可変のデバイスの一部として形成されていてもよい。
【0009】
複数の前記第1素子は、前記第1平面に向けて入力する特定の周波数の電波を透過させる周波数選択膜の少なくとも一部として形成されており、前記第1方向において素子のサイズおよび/または面積が増加または減少するように形成され、当該素子のサイズおよび/または面積の変化に応じて複数の前記第1素子を透過した電波の伝播方向を変更してもよい。
【0010】
本発明の第2の態様においては、特定の周波数の電波を透過させる電波透過板であって、電波が入力される第1平面上の第1方向および第1方向と直交する第2方向において、周期的に配置されている複数の第1素子と、複数の前記第1素子に対応して、前記第1平面と平行な第2平面上の前記第1方向および前記第2方向に設けられており、特定の誘電率をそれぞれ有する複数の第1ユニットセルと、複数の前記第1ユニットセルを透過した電波が入力され、前記第1平面と平行な第3平面上の前記第1方向および前記第2方向において周期的に配置されている複数の第2素子と、複数の前記第2素子に対応して、前記第3平面と平行な第4平面上の前記第1方向および前記第2方向に設けられており、特定の誘電率をそれぞれ有する複数の第2ユニットセルとを備え、複数の前記第1素子の形状と、複数の前記第1ユニットセルの誘電率と、複数の前記第2素子の形状と、複数の前記第2ユニットセルの誘電率と、複数の前記第1ユニットセルのそれぞれおよび対応する複数の前記第2素子のそれぞれの間の距離とのうち、少なくとも1つは、前記第1方向において変化するように形成されている、電波透過板を提供する。
【0011】
複数の前記第1素子は、前記第1平面に向けて入力する特定の周波数の電波を透過させる周波数選択膜の少なくとも一部として形成されていてもよい。
【0012】
本発明の第3の態様においては、第1の態様の前記電波透過板が複数設けられており、複数の前記電波透過板のそれぞれは、特定の距離だけ離れて積み重ねられている、電波透過板。
【0013】
本発明の第4の態様においては、特定の周波数の第1電波が外部から伝播し、第1空間に通じている電波入力部と、前記電波入力部に設けられている第1から第3の態様のいずれかの態様の前記電波透過板とを備え、前記電波透過板は、前記電波入力部から入力した前記第1電波の伝播方向を、前記第1空間内の特定の領域へと伝播する方向に変更する、電波透過システムを提供する。
【0014】
本発明の第5の態様においては、特定の周波数の第1電波を発生する第1電波発生装置と、外部の第1空間に通じており、前記第1電波を前記第1空間へと伝播させる電波出力部と、前記電波出力部に設けられている第1から第3の態様のいずれかの態様の前記電波透過板とを備え、前記電波透過板は、前記第1電波発生装置が発生した前記第1電波の伝播方向を、前記第1空間内の特定の領域へと伝播する方向に変更する、電波透過システムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、入射する電磁波を選択的に透過させつつ、出射方向を制御できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る電波透過板10の第1構成例を示す。
図2図1に示す第1構成例の電波透過板10のA-A’断面図の一例を示す。
図3】本実施形態に係る電波透過板10の第2構成例を示す。
図4】本実施形態に係る電波透過板10の第3構成例を示す。
図5】第3構成例の電波透過板10の等価回路の一例を示す。
図6】本実施形態に係る電波透過板10を用いた電波透過システム100の第1構成例を示す。
図7】本実施形態に係る電波透過板10を用いた電波透過システム100の第2構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<電波透過板10の第1構成例>
図1は、本実施形態に係る電波透過板10の第1構成例を示す。本実施形態において、電磁波の一例として、電波透過板10に入射する電波について説明するが、本発明の技術的範囲が電波に限定されることはない。図2は、図1に示す第1構成例の電波透過板10のA-A’断面図の一例を示す。図1および図2において、互いに直交する3つの軸をX軸、Y軸、Z軸として示す。
【0018】
電波透過板10は、特定の周波数の電波を透過させる。特定の周波数は、例えば、予め定められた周波数である。また、電波透過板10は、特定の周波数以外の周波数の電波を反射または吸収する。例えば、電波透過板10は、無線通信で用いられている通信帯域の電波を透過させる。また、電波透過板10は、特定の出射方向へと透過させた電波を出射する。特定の出射方向は、例えば、予め定められた出射方向である。図1および図2は、電波透過板10がXY平面と略平行に配置されており、電波透過板10に入射する電波の方向をZ軸と略平行な方向とした例を示す。電波透過板10は、第1素子20と、第1ユニットセル30と、基板40とを備える。
【0019】
複数の第1素子20は、導電性を有し、第1平面上の第1方向および第1方向と直交する第2方向において周期的に配置されている。図1および図2において、第1平面をXY面と略平行な面、第1方向をX軸と略平行な方向、第2方向をY軸と略平行な方向とする。複数の第1素子20は、例えば、略同一の形状を有し、第1方向および第2方向において予め定められた間隔で配置されている。複数の第1素子20は、一例として、第1方向および第2方向において等間隔に配置されている。
【0020】
複数の第1素子20は、第1平面に向けて入力する予め定められた周波数の電波を透過させる周波数選択膜の少なくとも一部として形成されている。第1素子20の形状は、例えば、反射または吸収させる電波の波長の1/2、1/3、・・・等の長さと同程度の長さの辺、直径等を有する。
【0021】
第1素子20の具体的な形状は、例えば、三角形、正方形、長方形、および台形等を含む多角形、円形、楕円形、線状、十字形状等である。また、第1素子20の形状は、切込み(ノッチ)、開口等を有してもよい。第1素子20は、金属等で形成されていることが望ましい。第1素子20の形状および材質は、メタマテリアル技術においてFSS(Frequency Selective Sheet/Surface)として既知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。複数の第1素子20は、更に、誘電体材料等の保護膜で覆われていてもよい。
【0022】
複数の第1ユニットセル30は、複数の第1素子20に対応して、第1平面と平行な第2平面上の第1方向および第2方向に配置されている。例えば、それぞれの第1ユニットセル30の上面に、対応する第1素子20がそれぞれ形成されている。この場合、複数の第1ユニットセル30の上面が第1平面として形成されている。そして、一の第1素子20を透過した電波が、対応する一の第1ユニットセル30に入力する。なお、複数の第1ユニットセル30と複数の第1素子20との間には、誘電体膜等が形成されていてもよい。
【0023】
複数の第1ユニットセル30は、特定の誘電率をそれぞれ有し、複数の第1素子20を透過した電波を透過させる。特定の誘電率は、例えば、予め定められた誘電率である。複数の第1ユニットセル30の誘電率は、第1方向において変化するように形成されている。複数の第1ユニットセル30は、第1方向においてセルのサイズ、形状、および材質の少なくとも1つが異なるように形成されている。例えば、複数の第1ユニットセル30の誘電率は、一定の割合で増加または減少するように形成されている。また、第1ユニットセル30は、第2方向において誘電率が略一定に形成されている。
【0024】
隣り合う第1ユニットセル30は、例えば、別個に形成される。なお、第1ユニットセル30は、第2方向において誘電率が一定に形成され、第2方向においては一体に形成されていてもよい。また、隣り合う第1ユニットセル30は、接するように形成されていてもよい。これに代えて、複数の第1ユニットセル30は、一体に形成されていてもよい。この場合、例えば、複数の第1ユニットセル30は、第1方向において誘電率が変化する分布を有する誘電体膜として形成される。
【0025】
基板40は、複数の第1素子20および複数の第1ユニットセル30が設けられている。基板40は、例えば、上面に複数の第1ユニットセル30が設けられている。この場合、基板40の上面が第2平面となる。また、基板40および複数の第1ユニットセル30の間には、他の誘電体膜等が形成されていてもよい。例えば、隣接する第1ユニットセル30の間に隙間が生じている場合、複数の第1ユニットセル30と基板40との間に隙間が生じている場合等は、当該隙間の少なくとも一部を埋めるように、他の誘電体膜等が形成されていることが望ましい。
【0026】
基板40は、複数の第1ユニットセル30を透過した電波を透過させる材質で形成されている。基板40は、一例として、ガラス基板である。なお、複数の第1ユニットセル30が誘電体膜として形成されている場合、基板40は省略されてもよい。
【0027】
以上の本実施形態に係る電波透過板10は、第1ユニットセル30のそれぞれの誘電率に応じて、予め定められた出射方向から透過させた電波を出射する。ここで、周波数fの電波が物質に入射した場合を考える。物質中の位相速度vは、真空中の光速度cおよび物質の屈折率nを用いてv=f・λ=c/nと表すことができ、屈折率nは、(ε・μ1/2に等しい。なお、εは物質の誘電率、μは物質の透磁率である。したがって、誘電体媒質中を通過する周波数fの電波は、誘電率εの増加に伴って位相速度が遅くなり、波長λが短縮される。
【0028】
図2は、複数の第1ユニットセル30の誘電率εrmが、第1方向において一定の割合で増加するように形成されている例を示す。この場合、複数の第1ユニットセル30の屈折率も、第1方向において一定の割合で増加することになり、位相速度は減少することになる。したがって、複数の第1ユニットセル30を透過する電波の位相は、第1方向において第1ユニットセル30毎に一定の割合で変化することになる。ここで、第1ユニットセル30毎の電波の位相の変化量をφとする。
【0029】
例えば、1番目の第1ユニットセル30を透過する電波の位相の回転量をφとすると、m番目の第1ユニットセル30を透過する電波の位相の回転量φは、次式で示される。
(数1)
φ=φ+(m-1)φ
【0030】
なお、1つの第1素子20と1つの第1ユニットセル30との組み合わせの等価回路は、LC成分に対応するインピーダンス成分Zと、誘電率に対応するインピーダンス成分δとの並列回路となるので、電波の入射方向から見たインピーダンスZは、これらの和Z+δで表現される。例えば、m番目の第1素子20および第1ユニットセル30の組のインピーダンスZは次式で示され、当該インピーダンスZによって入射した電波の位相は次式の回転量φだけ回転する。
(数2)
=Zmp+δ
φ=arg(Z
【0031】
このように、複数の第1ユニットセル30を透過して位相がそれぞれ回転した電波は、異なる第1ユニットセル30を透過した電波との間の位相差を保ったまま基板40を透過して出力される。図2の例の場合、電波透過板10を透過した電波のうち、1番目の第1ユニットセル30に近い電波ほど位相の進みが速く、1番目の第1ユニットセル30から離れた電波は離れるほど位相の進みが遅くなる。
【0032】
このように、電波透過板10を透過した電波は、複数の第1ユニットセル30の誘電率の変化に対応して、第1方向において一定の割合の位相差を有する。言い換えると、電波透過板10を透過した電波は、第1方向における複数の第1ユニットセル30の誘電率の変化に応じて、等位相面がXY面に対してθだけ傾斜して出力される。これは、電波透過板10を透過した電波が入力した方向に対してθだけ異なる方向に伝播したことを意味する。図2の例の場合、電波透過板10を透過した電波は、第1方向側に傾いて出力される。
【0033】
ここで、電波透過板10に入力する電波の伝播方向を-Z方向とし、電波透過板10を透過した電波の伝播方向と-Z方向との角度を出力角θとすると、出力角θは次式で示される。ここで、dは、隣り合う第1ユニットセル30の間の距離である。
(数3)
θ=asin(φ/d)
【0034】
以上のように、本実施形態に係る電波透過板10は、入力する電波のうち、予め定められた周波数の電波を透過させ、透過させた電波を複数の第1ユニットセル30の誘電率に基づく方向に出力する。即ち、電波透過板10は、複数の第1素子20と複数の第1ユニットセル30とを用いた簡便な構成で、入射する電波の透過特性および反射特性と電波の伝播方向とを制御できる。
【0035】
言い換えると、隣接する第1ユニットセル30の中心間の距離を波長比で表してpとすると、第1ユニットセル30毎に入力する電波の位相をφ=psinθだけ遅延させて出力させれば、透過する電波の出力角をθとすることできる。この場合、例えば、m番目の第1ユニットセル30は、入射した電波を次式の回転量φだけ回転するように設計すればよい。
(数4)
φ=arg(Z)=(mp)sinθ
【0036】
なお、図1および図2において、電波透過板10は、第1方向において誘電率を変化させた複数の第1ユニットセル30を備える例を説明したが、これに限定されることはない。複数の第1ユニットセル30は、第2方向において誘電率を変化させてもよく、また、第1方向および第2方向の両方において、誘電率を変化させてもよい。
【0037】
また、図1および図2において、第1ユニットセル30のそれぞれは、予め定められた誘電率を有する例を説明したが、これに限定されることはない。例えば、複数の第1ユニットセル30は、入力する制御信号に応じて誘電率が可変のデバイスの一部として形成されていてもよい。例えば、複数の第1ユニットセル30は、液晶パネルの少なくとも一部である。この場合、液晶パネルの誘電率を調節可能な1つの画素が1つの第1ユニットセル30として形成されていてもよく、これに代えて、複数の画素が1つの第1ユニットセル30として形成されていてもよい。
【0038】
液晶パネルは、例えば、各画素に数V程度の電圧を印加することにより、画素を透過する電波の位相を調節することができる。そこで、複数の第1ユニットセル30に対して、第1方向および/または第2方向において誘電率を変化させる制御信号を供給することで、制御信号に応じた方向に電波透過板10から電波を出力できる。また、制御信号を時間的に切り換えることにより、電波透過板10が出力する電波の方向を切り換えることもできる。
【0039】
以上の本実施形態に係る電波透過板10において、電波が第1平面に対して略垂直に入射する例を説明したが、これに限定されることはない。電波透過板10には、垂直方向に対して特定の角度θinを有する方向で電波が入射してもよい。この場合、入力する電波の位相は、ユニットセル毎にp×cos(θin)回転することになる。言い換えると、電波透過板10から垂直方向に対して特定の角度θoutを有する方向で電波を透過させる場合、ユニットセル毎に位相がp×cos(θout)-p×cos(θin)だけ回転するように、ユニットの誘電率等をそれぞれ設計すればよい。
【0040】
更に、電波透過板10から特定の方位角ψoutおよび/または仰角θoutを有する方向で電波を透過させてもよい。この場合、X方向のユニットセル間隔をp、Y方向のユニットセル間隔をpとすると、ユニットセル毎に位相がp×sin(θout)×cos(θout)+p×sin(ψout)×sin(ψout)だけ回転するように、ユニットの誘電率等をそれぞれ設計すればよい。
【0041】
以上の本実施形態に係る電波透過板10は、複数の第1ユニットセル30の誘電率を変化させることで、電波透過板10が出力する電波の方向を制御する例を説明したが、これに限定されることはない。これに代えて、または、これに加えて、電波透過板10に設けられている複数の前記第1素子の形状を変化することで、電波透過板10が出力する電波の方向を制御してもよい。このような電波透過板10について、次に説明する。
【0042】
<電波透過板10の第2構成例>
図3は、本実施形態に係る電波透過板10の第2構成例を示す。第2構成例の電波透過板10において、図1および図2に示された本実施形態に係る電波透過板10の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第2構成例の電波透過板10は、第1方向において形状が変化するように形成されている複数の第1素子20を備える。また、第2構成例の電波透過板10は、第1構成例の電波透過板10で説明した複数の第1ユニットセル30を備える。
【0043】
図1および図2でも説明したように、複数の第1素子20は、第1平面に向けて入力する予め定められた周波数の電波を透過させる周波数選択膜の少なくとも一部として形成されている。そして、複数の第1素子20は、第1方向において素子のサイズおよび/または面積が増加または減少するように形成され、当該素子のサイズおよび/または面積の変化に応じて複数の第1素子20を透過した電波の伝播方向を変更する。
【0044】
図3は、複数の第1素子20のサイズが、第1方向において一定の割合で増加するように設けられている例を示す。これにより、(数2)式の容量成分に対応するインピーダンス成分Zmpが第1方向において一定の割合で増加するので、全体のインピーダンスZも、図2の誘電率の変化の例と同様に、第1方向において一定の割合で増加する。したがって、図3に示す第2構成例の電波透過板10は、第1平面に垂直に入力する予め定められた周波数の電波を透過させ、透過させた電波を第1方向側に曲げて出力する。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る電波透過板10において、複数の第1素子20の形状または複数の第1ユニットセル30の誘電率が第1方向において変化するように形成することにより、電波透過板10に入力する電波の伝播方向を変更して出力することができる。なお、複数の第1素子20の形状および複数の第1ユニットセル30の誘電率の両方が、第1平面上の予め定められた方向に対して変化するように形成されていてもよい。
【0046】
例えば、電波透過板10において、複数の第1素子20の形状および複数の第1ユニットセル30の誘電率が、電波透過板10の同一方向において変化するように形成される。この場合、例えば、第1素子20の形状が大きくなる方向と、第1ユニットセル30の誘電率が大きくなる方向とが同一方向となるように形成されていることが望ましい。これにより、電波透過板10が電波の伝播方向を変更できる範囲を拡大することができる。
【0047】
また、電波透過板10において、複数の第1素子20の形状の変化の方向と複数の第1ユニットセル30の誘電率の変化の方向とが、異なる方向に形成されていてもよい。この場合、電波透過板10は、第1素子20の形状の変化方向と第1ユニットセル30の誘電率の変化方向とを合成した方向へと、電波の伝播方向を変更することができ、電波透過板10の設計自由度を向上させることができる。
【0048】
以上の本実施形態に係る電波透過板10において、複数の第1素子20による層と複数の第1ユニットセル30による層とが、基板40上に1層ずつ形成されている例を説明したが、これに限定されることはない。電波透過板10には、複数の第1素子20による層と複数の第1ユニットセル30による層とのうち、少なくとも一方の層が複数層設けられていてもよい。このような電波透過板10の例について次に説明する。
【0049】
<電波透過板10の第3構成例>
図4は、本実施形態に係る電波透過板10の第3構成例を示す。図4は、図2に示した第1構成例の電波透過板10の断面図に対応する、第3構成例の電波透過板10の断面図の一例である。第3構成例の電波透過板10において、図1および図2に示された本実施形態に係る電波透過板10の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第3構成例の電波透過板10は、複数の第2素子50と複数の第2ユニットセル60とを更に備える。
【0050】
複数の第1素子20は、導電性を有し、電波が入力される第1平面上の第1方向および第1方向と直交する第2方向において周期的に配置されている。複数の第1ユニットセル30は、複数の第1素子20に対応して、第1平面と平行な第2平面上の第1方向および第2方向に設けられており、予め定められた誘電率をそれぞれ有する。第1素子20および第1ユニットセル30については、図1から図3において説明したので、ここでは説明を省略する。
【0051】
複数の第2素子50には、複数の第1ユニットセル30を透過した電波が入力される。複数の第2素子50は、複数の第1素子20と同様に、導電性を有し、第1平面と平行な第3平面上の第1方向および第2方向において周期的に配置されている。複数の第2素子50は、複数の第1素子20と略同一の材質および形状で形成されている。複数の第2素子50は、例えば、対応する第1素子20と略同一の形状に形成されている。この場合、一の第1素子20を透過した電波が一の第1ユニットセル30を介して入力する一の第2素子50を、当該一の第1素子20に対応する素子とする。
【0052】
複数の第2ユニットセル60は、複数の第2素子50に対応して、第3平面と平行な第4平面上の第1方向および第2方向に設けられており、予め定められた誘電率をそれぞれ有する。複数の第2ユニットセル60は、複数の第1ユニットセル30と略同一の材質および形状で形成されている。例えば、それぞれの第2ユニットセル60の上面に、対応する第2素子50がそれぞれ形成されている。この場合、複数の第2ユニットセル60の上面が第3平面として形成されている。そして、一の第2素子50を透過した電波が対応する一の第2ユニットセル60に入力する。なお、複数の第2ユニットセル60と複数の第2素子50との間には、誘電体膜等が形成されていてもよい。
【0053】
基板40は、例えば、上面に複数の第2ユニットセル60が設けられている。この場合、基板40の上面が第4平面となる。また、基板40および複数の第2ユニットセル60の間には、他の誘電体膜等が形成されていてもよい。
【0054】
以上の第3構成例の電波透過板10において、複数の第1素子20の形状と、複数の第1ユニットセル30の誘電率と、複数の第2素子50の形状と、複数の第2ユニットセル60の誘電率と、複数の第1ユニットセル30のそれぞれおよび対応する複数の第2素子50のそれぞれの間の距離とのうち、少なくとも1つは、第1方向において変化するように形成されている。
【0055】
複数の第1ユニットセル30の誘電率が第1方向において変化するように複数の第1ユニットセル30を配置することにより、電波透過板10から出力する電波の伝播方向を変更できることは、既に図1および図2において説明した。同様に、複数の第2ユニットセル60の誘電率が第1方向において変化するように複数の第2ユニットセル60を配置することにより、電波透過板10から出力する電波の伝播方向を変更できることは言うまでもない。なお、第1ユニットセル30の誘電率の変化方向と、第2ユニットセル60の誘電率の変化方向とは、同一方向であってもよく、異なる方向であってもよい。
【0056】
また、複数の第1素子20のサイズおよび/または面積が第1方向において変化するように複数の第1素子20を配置することにより、電波透過板10から出力する電波の伝播方向を変更できることは、既に図3において説明した。同様に、複数の第2素子50の誘電率が第1方向において変化するように複数の第2素子50の誘電率を配置することにより、電波透過板10から出力する電波の伝播方向を変更できることは言うまでもない。なお、第1素子20のサイズおよび/または面積の変化方向と、第2素子50のサイズおよび/または面積の変化方向とは、同一方向であってもよく、異なる方向であってもよい。
【0057】
複数の第1ユニットセル30のそれぞれおよび対応する複数の第2素子50のそれぞれの間の距離が異なると、第1ユニットセル30と対応する第2素子50との間の結合インピーダンスが異なる。この場合、結合インピーダンスに対応する結合係数kを用いて、第1素子20と第1ユニットセル30との組み合わせのインピーダンスと、第2素子50と第2ユニットセル60との組み合わせのインピーダンスとを結合させる等価回路を構成できる。このような第3構成例の電波透過板10の等価回路の一例を図5に示す。
【0058】
例えば、m番目の第1素子20および第1ユニットセル30の組のインピーダンスをZ1m、m番目の第2素子50および第2ユニットセル60の組のインピーダンスをZ2mとする。この場合、m番目の第1素子20、第1ユニットセル30、第2素子50、および第2ユニットセル60の組のインピーダンスZは、次式で示される。また、インピーダンスZによって入射した電波の位相は次式の回転量φだけ回転する。
(数5)
=Z1m+k2m
φ=arg(Z
【0059】
したがって、例えば、複数の第1ユニットセル30のそれぞれおよび対応する複数の第2素子50のそれぞれの間の距離を変化させて結合係数kを第1方向において一定の割合で変化させれば、電波透過板10から出力する電波の伝播方向を変更できる。なお、結合係数kの値は、第1ユニットセル30および第2素子50の間の距離だけでなく、第1ユニットセル30および第2素子50のXY面において重なっている面積を変化させても調節できる。このように、複数の第1ユニットセル30のそれぞれと対応する複数の第2素子50との配置を変化させることで、電波透過板10から出力する電波の伝播方向を変更できる。
【0060】
以上のように、基板40の積層方向であるZ方向に、導電性を有する素子および誘電体のユニットセルを積層させることにより、電波透過板10を透過する電波の伝播方向を変更できる範囲を拡大することができる。また、電波透過板10の設計自由度を向上させることができる。なお、積層させる素子およびユニットの数は、2つに限定されるものではなく、3以上積層してもよい。
【0061】
例えば、第j層のm番目の第j素子および第jユニットセルの組のインピーダンスをZjmとし、第j-1層と第j層との結合係数をk(j-1)mとすると、全体のインピーダンスZは、次式で示される。
(数6)
=Z1m+k1m2m+k2m3m+・・・+k(j-1)mjm+・・・
【0062】
なお、電波透過板10が、複数の素子および複数のユニットセルを積層させる場合、異なる素子および異なるユニットセルをそれぞれ積層させてもよく、これに代えて、少なくとも一部の素子またはユニットセルを略同一に形成してもよい。また、電波透過板10には、図1から図3に示す複数の第1素子20および複数の第1ユニットセル30が複数設けられていてもよい。例えば、個別に作成した電波透過板10を、複数積み重ねてもよい。この場合、電波透過板10のそれぞれは、特定の距離だけ離れて積み重ねられてよく、また、第1方向および第2方向の少なくとも一方にずらして積み重ねられていてもよい。特定の距離は、例えば、予め定められた距離である。
【0063】
以上の本実施形態に係る電波透過板10は、入力する電波の伝播方向を角度θだけ変更して出力する例を説明したが、これに限定されることはない。電波透過板10は、入力する電波の伝播方向を複数の角度に変更して出力してもよい。例えば、1番目からs番目の第1ユニットセル30は入力する電波の伝播方向を角度θだけ変更し、s番目からt番目の第1ユニットセル30は入力する電波の伝播方向を角度θだけ変更してもよい。また、複数の第1ユニットセル30は、入力する電波をそれぞれ異なる方向に変更してもよい。
【0064】
<電波透過システム100の第1構成例>
図6は、本実施形態に係る電波透過板10を用いた電波透過システム100の第1構成例を示す。第1構成例の電波透過システム100は、外部から伝播する第1電波を、受信すべき受信装置130へと簡便に供給する。受信装置130は、例えば、携帯端末等である。電波透過システム100は、一例として、ビル等の建物に設けられている。電波透過システム100は、電波透過板10と、電波入力部110とを備える。電波透過板10は、図1から図4で説明した電波透過板10である。
【0065】
電波入力部110には、予め定められた周波数の第1電波が外部から伝播する。第1電波は、例えば、Wi-Fi(登録商標)、セルラ等の通信信号である。電波入力部110は、第1空間120に通じている。図6において、第1空間120は、ビル内の部屋である例を示す。また、電波入力部110は、一例として、窓である。図6は、ビルの部屋の一部の領域に存在している受信装置130が窓から伝播するWi-Fi、セルラ等の通信信号を受信する例を示す。
【0066】
電波透過板10は、このような電波入力部110に設けられている。電波透過板10は、例えば、電波入力部110である窓のガラス部分の少なくとも一部に貼りつけられている。なお、電波入力部110には、伝播方向が異なる複数の電波透過板10が設けられていてもよい。電波透過板10は、予め定められた周波数の電波を透過させる周波数選択膜として機能するので、受信すべき第1電波とは異なる周波数の信号の強度レベルを低減させて、電波干渉等が発生することを防止できる。
【0067】
また、電波透過板10は、電波入力部110から入力した第1電波の伝播方向を、第1空間120内の予め定められた領域へと伝播する方向に変更する。電波透過板10は、例えば、受信装置130を保持するユーザの動線を含む領域を予め定められた領域とする。これにより、第1空間120内の第1電波の伝播方向とは異なる領域であっても、受信電力が低減することを防止して正常な通信ができるように受信装置130を保持または設置することができる。したがって、第1空間120内において、受信装置130によって通信可能な領域を増加させることできる。
【0068】
<電波透過システム100の第2構成例>
図7は、本実施形態に係る電波透過板10を用いた電波透過システム100の第2構成例を示す。第2構成例の電波透過システム100は、外部へと伝播する第1電波の伝播方向を簡便に変更して、受信装置130へと簡便に第1電波を供給する。第2構成例の電波透過システム100は、一例として、ビル等の建物に設けられている。第2構成例の電波透過システム100は、電波透過板10と、第1電波発生装置140と、電波出力部150とを備える。電波透過板10は、図1から図4で説明した電波透過板10である。
【0069】
第1電波発生装置140は、予め定められた周波数の第1電波を発生する。第1電波発生装置140は、例えば、基地局装置および基地局アンテナである。第1電波は、例えば、Wi-Fi、セルラ等の通信信号である。第1電波発生装置140は、電波出力部150に向けて第1電波を出力する。
【0070】
電波出力部150は、外部の第1空間120に通じており、第1電波を第1空間120へと伝播させる。図7において、第1空間120は、ビルの外において第1電波を供給すべき空間である例を示す。また、電波出力部150は、一例として、窓である。図7は、ビルの部屋の一部の領域にある第1電波発生装置140から電波出力部150である窓を介してWi-Fi、セルラ等の通信信号を伝播させる例を示す。
【0071】
電波透過板10は、このような電波出力部150に設けられている。電波透過板10は、例えば、電波出力部150である窓のガラス部分に貼りつけられている。なお、電波出力部150には、伝播方向が異なる複数の電波透過板10が設けられていてもよい。電波透過板10は、予め定められた周波数の電波を透過させる周波数選択膜として機能するので、送信すべき第1電波とは異なる周波数の信号の強度レベルを低減させて、不要な電波が外部に伝播することを防止できる。
【0072】
また、電波透過板10は、第1電波発生装置140が発生した第1電波の伝播方向を、第1空間120内の予め定められた領域へと伝播する方向に変更する。電波透過板10は、例えば、第1電波発生装置140に割り当てられている領域を予め定められた領域とする。また、電波透過板10は、第1空間120内の第1電波の伝播方向とは異なる領域においてカバレッジホールとなっている領域を予め定められた領域としてもよい。
【0073】
これにより、基地局からの第1電波を受信可能な領域を増加させることできる。また、基地局および基地局アンテナ等を電波出力部150の近傍に配置しなくても、第1電波が届かなくなる領域が増加することを防止できる。したがって、基地局および基地局アンテナ等の設置可能な領域を拡大させ、基地局および基地局アンテナ等の設計自由度およびメンテナンス性を向上できる。
【0074】
以上の本実施形態において、複数の第1素子20の形状と複数の第1ユニットセル30の誘電率との少なくとも一方が第1方向において変化するように形成されていることにより、入力する電波の透過方向を制御する電波透過板10の例を説明した。ここで、電磁波の伝播特性を制御するメタマテリアル(Metamaterial)技術によって形成されるデバイスは、透過特性だけでなく、反射特性も同様に制御することができる。
【0075】
例えば、入射する電磁波の波長よりも小さいサイズの特定の構造の導体パタ一ンを2次元状に周期的に配列されて形成することにより、入力する電波を反射する反射板として形成することができる。これに代えて、特定の構造を有する誘電体パタ一ンを周期的に配置することによって、入力する電波を反射する反射板として形成することができる。なお、特定の構造は、特定の周波数の電磁波を反射するように形成されている。反射板には、本実施形態において説明した電波透過板10と同様に、導体パターンおよび/または誘電体パターンが複数層形成されていてもよく、また、パターン層の間には誘電体層、液晶等が挟まれて形成されていてもよい。
【0076】
このような電波反射板は、例えば、特定の周波数の電波を透過させる電波透過板であって、第1平面上の第1方向および第1方向と直交する第2方向において周期的に配置されている複数の第1素子と、複数の第1素子に対応して、第1平面と平行な第2平面上の第1方向および第2方向に配置されており、特定の誘電率をそれぞれ有する複数の第1ユニットセルとを備え、複数の第1素子の形状と複数の第1ユニットセルの誘電率との少なくとも一方は、第1方向において変化するように形成されている。
【0077】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0078】
10 電波透過板
20 第1素子
30 第1ユニットセル
40 基板
50 第2素子
60 第2ユニットセル
100 電波透過システム
110 電波入力部
120 第1空間
130 受信装置
140 第1電波発生装置
150 電波出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7