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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】プレス機とロボットとを同期させる方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20230419BHJP
   B21D 43/05 20060101ALI20230419BHJP
   B30B 13/00 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
B21D43/05 U
B30B13/00 C
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019516227
(86)(22)【出願日】2017-09-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 US2017053399
(87)【国際公開番号】W WO2018058092
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】62/399,744
(32)【優先日】2016-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514079114
【氏名又は名称】ファナック アメリカ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】レオ ケセルマン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー デニオ
(72)【発明者】
【氏名】エリック リー
(72)【発明者】
【氏名】ホ チュン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター スワンソン
(72)【発明者】
【氏名】サイ-カイ チョン
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-202419(JP,A)
【文献】特開平11-104900(JP,A)
【文献】特表2009-525877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
B30B 1/00- 7/04
B30B 12/00-13/00
B30B 15/30-15/34
B21D 43/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランクを部品にプレスする動作領域を含むプレス機と、取出ロボットと、落下ロボットとを同期させる方法であって、
前記ブランクをプレスした後に、前記プレス機の前記動作領域を開くことと、
前記プレス機の前記動作領域の開口部が上死点位置の前に取出インターロック角度に達するときに、前記取出ロボットを、前記プレス機の前記動作領域内に移動させることと、
前記取出ロボットを用いて、前記プレス機の前記動作領域から前記部品を取り出すことと、
前記ブランクを運搬する前記落下ロボットを前記動作領域内へ移動させる間に、前記動作領域から前記取出ロボット及び前記部品を移動させることであり、前記取出ロボットの少なくとも一部、又は前記部品の少なくとも一部が前記動作領域内に存在すると同時に、前記落下ロボットの少なくとも一部、又は前記ブランクの少なくとも一部が前記動作領域内に存在し、前記取出ロボットが落下ロボットと通信し、前記取出ロボットの動きが、前記取出ロボット又は前記部品が前記落下ロボット又は前記ブランクと衝突するのを防止するように、前記落下ロボットの動きと同期される、前記動作領域から前記取出ロボット及び前記部品を移動させることと、
前記落下ロボットを用いて、前記ブランクを、前記プレス機の前記動作領域に落下させることと、
前記プレス機の前記動作領域から前記落下ロボットを移動させることと、
を含み、
前記動作領域から前記取出ロボット及び前記部品を移動させることには、複数の取出区間移動が含まれ、
前記ブランクを運搬する前記落下ロボットを前記動作領域内へ移動させることには、複数の落下区間移動が含まれ、
前記複数の取出区間移動に関連する複数のパラメーターを前記落下ロボットが用いて、前記取出ロボットと前記落下ロボットの動きを同期させ、前記複数の落下区間移動に関連する複数のパラメーターを前記取出ロボットが用いて、前記取出ロボットと前記落下ロボットの動きを同期させ、
前記複数の取出区間移動に関連する複数のパラメーターを測定し、測定されたパラメーターを、先に存在する取出区間パラメーターと比較して、前記取出ロボットが取出同期閾値内にあるか否かを判断し、前記取出ロボットが、取出同期閾値外にあるときに、学習モードに入ること、
前記複数の落下区間移動に関連する複数のパラメーターを測定し、測定されたパラメーターを、先に存在する落下区間パラメーターと比較して、前記落下ロボットが落下同期閾値内にあるか否かを判断し、前記落下ロボットが、落下同期閾値外にあるときに、学習モードに入ること、をさらに含む、方法。
【請求項2】
前記落下ロボットを用いて、前記プレス機の前記動作領域の閉鎖時に前記落下ロボットが前記プレス機と衝突しないことを、前記プレス機に通信することと、
前記プレス機の前記動作領域を閉鎖して、前記ブランクを別の部品にプレスすることと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プレス機の前記動作領域から前記落下ロボットを移動させることが、前記プレス機の前記動作領域の閉鎖が、下死点位置の前に落下インターロック角度に達するときに、前記プレス機の前記動作領域から前記落下ロボットを移動させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記取出区間移動のうちの1つに関連するパラメーターを前記落下ロボットが用いて、前記取出ロボットと前記落下ロボットの動きを同期させるか、又は
前記落下区間移動のうちの1つに関連するパラメーターを前記取出ロボットが用いて、前記取出ロボットと前記落下ロボットの動きを同期させる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記取出区間移動のうちの1つに関連するパラメーター、又は前記落下区間移動のうちの1つに関連するパラメーターには、移動長さ、移動時間、加速時間、減速時間、現在位置、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される構成物が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の取出区間移動に関連する複数のパラメーターには、移動長さ、移動時間、加速時間、減速時間、現在位置、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される構成物が含まれ、
前記複数の落下区間移動に関連する複数のパラメーターには、移動長さ、移動時間、加速時間、減速時間、現在位置、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される構成物が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記先に存在する取出区間パラメーターには、前記取出ロボットのプログラミングから記録された取出区間パラメーターが含まれ、前記先に存在する落下区間パラメーターには、前記落下ロボットのプログラミングから記録された落下区間パラメーターが含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記先に存在する取出区間パラメーターには、前記取出ロボットの先の動作から記録された取出区間パラメーターが含まれ、前記先に存在する落下区間パラメーターには、前記落下ロボットの先の動作から記録された落下区間パラメーターが含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ブランクを部品にプレスする動作領域を含むプレス機と、取出ロボットと、落下ロボットとを同期させる方法であって、
前記ブランクをプレスした後に、前記プレス機の前記動作領域を開くことと、
前記プレス機の前記動作領域の開口部が上死点位置の前に取出インターロック角度に達するときに、前記取出ロボットを、前記プレス機の前記動作領域内に移動させることと、
前記取出ロボットを用いて、前記プレス機の前記動作領域から前記部品を取り出すことと、
前記ブランクを運搬する前記落下ロボットを前記動作領域内へ移動させる間に、前記動作領域から前記取出ロボット及び前記部品を移動させることであり、前記取出ロボットの少なくとも一部、又は前記部品の少なくとも一部が前記動作領域内に存在すると同時に、前記落下ロボットの少なくとも一部、又は前記ブランクの少なくとも一部が前記動作領域内に存在し、前記取出ロボットが落下ロボットと通信し、前記取出ロボットの動きが、前記取出ロボット又は前記部品が前記落下ロボット又は前記ブランクと衝突するのを防止するように、前記落下ロボットの動きと同期される、前記動作領域から前記取出ロボット及び前記部品を移動させることと、
前記落下ロボットを用いて、前記ブランクを、前記プレス機の前記動作領域に落下させることと、
前記プレス機の前記動作領域から前記落下ロボットを移動させることと、
を含み、
前記動作領域から前記取出ロボット及び前記部品を移動させることには、複数の取出区間移動が含まれ、
前記ブランクを運搬する前記落下ロボットを前記動作領域内へ移動させることには、複数の落下区間移動が含まれ、
前記複数の取出区間移動に関連する複数のパラメーターを前記落下ロボットが用いて、前記取出ロボットと前記落下ロボットの動きを同期させ、前記複数の落下区間移動に関連する複数のパラメーターを前記取出ロボットが用いて、前記取出ロボットと前記落下ロボットの動きを同期させ、
前記複数の取出区間移動に関連する複数のパラメーターを測定し、測定されたパラメーターを、先に存在する取出区間パラメーターと比較して、前記取出ロボットが取出同期閾値内にあるか否かを判断し、前記取出ロボットが取出同期閾値外にあるときに、前記取出ロボットを、前記先に存在する取出区間パラメーター内で作動させるように調節すること、
前記複数の落下区間移動に関連する複数のパラメーターを測定し、測定されたパラメーターを、先に存在する落下区間パラメーターと比較して、前記落下ロボットが落下同期閾値内にあるか否かを判断し、前記落下ロボットが落下同期閾値外にあるときに、前記落下ロボットを、前記先に存在する落下区間パラメーター内で作動させるように調節すること、をさらに含む、方法。
【請求項10】
前記複数の取出区間移動には、少なくとも1つの方向転換が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の落下区間移動には、少なくとも1つの方向転換が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記落下ロボットを用いて、前記プレス機の前記動作領域の閉鎖時に前記落下ロボットが前記プレス機と衝突しないことを、前記プレス機に通信することと、
前記プレス機の前記動作領域を閉鎖して、前記ブランクを別の部品にプレスすることと、
をさらに含み、
前記プレス機の前記動作領域から前記落下ロボットを移動させることが、前記プレス機の前記動作領域の閉鎖が、下死点位置の前に落下インターロック角度に達するときに、前記プレス機の前記動作領域から前記落下ロボットを移動させることを含み、
前記ブランクを運搬する前記落下ロボットを前記動作領域内へ移動させることには、複数の落下区間移動が含まれ、
前記落下区間移動のうちの1つに関連するパラメーターを前記プレス機が用いて、前記プレス機の動きと前記落下ロボットの動きとを同期させて、前記プレス機の動作を終了させ前記ブランクを別の部品にプレスする間に、前記落下ロボット又は前記ブランクが前記プレス機と衝突するのを防止する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記取出ロボットが、さらに、下流ブランクとして下流プレス機に前記部品を送って前記下流ブランクを下流部品にプレスするように、前記下流プレス機の下流落下ロボットとして構成され、該下流落下ロボットが下流取出ロボットと通信し、該下流取出ロボットの動きを前記下流落下ロボットの動きと同期させて、前記下流取出ロボット又は前記下流部品が、前記下流落下ロボット又は前記下流ブランクと衝突するのを防止する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記落下ロボットの動きと同期される前記取出ロボットには、臨界点が含まれ、該臨界点が、前記取出ロボットが最初に達した場合に、前記取出ロボット又は前記部品と前記落下ロボット又は前記ブランクとの衝突がないことを保証する条件を定義する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ブランクを運搬する前記落下ロボットを前記動作領域内へ移動させる間に、前記動作領域から前記取出ロボット及び前記部品を移動させることは、前記取出ロボットが前記落下ロボットと前記臨界点に関して通信することに依存し、前記落下ロボットは、前記取出ロボットが前記臨界点に達するまで待機する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記動作領域から前記取出ロボット及び前記部品を移動させることには、複数の取出区間移動が含まれ、該複数の取出区間移動には複数のパラメーターが関連し、
前記ブランクを運搬する前記落下ロボットを前記動作領域内へ移動させることには、複数の落下区間移動が含まれ、該複数の落下区間移動には複数のパラメーターが関連し、
前記複数の取出区間移動に関連するパラメーター、前記複数の落下区間移動に関連するパラメーター、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される構成物が、前記取出ロボット及び前記落下ロボットのうちの一方の前記待機を最小にするように調節される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の取出区間移動に関連するパラメーター、及び前記複数の落下区間移動に関連するパラメーターには、移動長さ、移動時間、加速、減速、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される構成物が含まれる、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年9月26日に出願された米国仮出願第62/399,744号の利益を主張する。本仮出願の全開示は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本技術は、最適な性能を達成するための、プレス機とプレス間搬送ロボット(press tending robots)の動作の同期化に関する。
【背景技術】
【0003】
本節では、必ずしも先行技術ではない、本開示に関する背景技術情報を示す。
【0004】
プレス機とプレス間搬送ロボットとの衝突を回避するために、プレス機は、部品をプレスするか又はスタンピングした後、上死点(TDC)とも呼ばれる最上位置に移動することができる。その後、プレス機動作領域に取出ロボット(pick robot)が入って、プレスされたか又はスタンピングされた部品を取り出すことができる。取出ロボットがプレス機動作領域から出た後、プレス機動作領域に落下ロボット(drop robot)が入って、ブランクを落下させ、これを、部品にプレスするか又はスタンピングすることができる。落下ロボットがプレス機動作領域から出た後、落下ロボットは、プレス機に降下するように信号を送信し、ブランクをプレスするか又はスタンピングする次のサイクルを開始して、別の部品を形成することができる。
【0005】
このような方法は安全であり、プレス機とプレス間搬送ロボットとの衝突を防止することができるが、これらの方法は効率的ではなく、最適なスループットとは言い難い。効率を向上させる種々の方法としては、(1)プレス機動作領域に入る取出ロボット:プログラマブルロジックコントローラー(PLC)を用いて、ロボットが入るのにプレスが離れているか否かについて、取出ロボットと通信すること、(2)取出ロボットが、プレスされたか又はスタンピングされた部品を含むプレスから出るときに、プレス機動作領域に入る落下ロボット:PLCを用いて、離隔信号(clear signal)に基づき、取出ロボットと落下ロボットとの間のI/Oハンドシェイクを管理すること、及び(3)プレスが降下しているときに、プレス機動作領域から出る落下ロボット:落下ロボットを用いて、ブランクが落下した後、PLCに信号を送信して、次のプレスサイクルを開始することが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、効率を向上させるためのこれらの試みは、依然として、いくつかの欠点を示している。上述の(1)では、PLCは、取出ロボット接近速度を制御しない。取出ロボットがプレス機動作領域に入るために、プレスが離れる前に、取出ロボットが十分に速い速度で到達した場合、取出ロボットは、減速して待機する必要がある。しかしながら、このような高速な動きは、ロボットの動作寿命を延ばすためには最適ではない。さらに、ロボットコントローラーとのPLC通信には、固有のPLC遅延があり、このため、取出ロボットがプレス機動作領域に入るタイミングは、最適ではない。ロボット進入タイミングの手動調整が必要であることが多い。上述の(2)では、PLCは、プレス機動作領域内に存在する間の取出ロボットと落下ロボット両方についての正確な動作軌道及び動作タイミングを有していない。取出ロボットと落下ロボットのI/Oハンドシェイク信号の管理は最適ではない。取出ロボット退出タイミングに対する、落下ロボット進入タイミングの手動調整が必要であることが多い。上述の(3)では、PLCは、プレス機動作領域内に存在する落下ロボットについての正確な動作タイミングを有していない。落下ロボットによるプレス開始信号の手動調整が必要であることが多いが、このようなタイミングは最適ではないことが多い。3つの場合すべてにおいて、手動調整は手間がかかり、強固ではない可能性がある。例えば、プログラムされた位置が変更された場合、又はロボットのプログラムオーバーライドが変更された場合は、以前に調整された信号タイミングを再度使用することはできない。
【0007】
したがって、1つ以上のプレス間搬送ロボットと1つ以上のプレス機の同期動作を最適化して、その性能を向上させることが引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の技術には、最適な性能、使いやすさ、及び性能の一貫性のための、プレス機とプレス間搬送ロボットとの間の自動動作同期の達成に関するシステム及び方法が含まれる。プレスロボット動作タイミングの学習は、学習サイクルにおいて始まり、また、プレス機動作タイミングの連続的な学習は、1つ以上のブランクがプレスされたかスタンピングされた部品に加工されるときに、1つ以上のプレス機及び1つ以上のプレス間搬送ロボットのすべてのサイクルにおいて始まり得る。いったん、学習させたデータが収集されると、プレスがロボットを収容するのに十分開いているときにちょうどロボットがプレスに入るように、ロボット接近速度が調節され、タイミングが制御される。学習させたロボット動作計画データは、プレス間搬送ロボットを、同じプレスへ進む別の下流ロボットと同期させるのにも用いることができ、プレスロボットは、ブランクを積載し、プレスされたか又はスタンピングされた部品を降ろし、また、新しいブランクを積載することによって加工を繰り返すため、プレス機内において要する時間は最小となる。また、プレス及びロボットの学習させたデータも、プレスロボットが用いて、次のサイクルを開始するようにプレスに信号を送信することができ、プレス機が降下しようとするときに、プレスからプレスロボットが出る。
【0009】
特定の実施形態では、プレス機においてエンコーダーを用いて、プレスへ進む落下ロボットコントローラーと取出ロボットコントローラー両方にプレス角度又は位置情報を提供するシステム及び方法が提供される。ロボットコントローラーへのプレスエンコーダーの通信は、直接接続又は無線通信ネットワークを用いることができる。
【0010】
一部の実施形態では、通信ネットワークを用いて、ロボット動作計画情報、並びに、リアルタイムロボット実行タイミング情報、及び同じプレスへ進む少なくとも2つのロボット間の実行状態を通信するシステム及び方法が提供される。
【0011】
種々の実施形態では、プレス角度又は位置移動、及びすべてのプレスサイクルにおけるプレスタイミングを連続的に学習し、また、学習モード時にそれぞれのロボットがプレス機動作領域内に1つずつ存在するときに、落下ロボットと取出ロボット両方のロボット動作計画情報を学習させるように構成されたシステム及び方法が提供される。ロボット動作計画情報には、動作区間移動時間及び減速時間が含まれ得る。
【0012】
さらなる実施形態では、プレスの学習させたタイミング情報、及びプレスロボットの学習させた動作タイミングを用いて、(1)プレスが十分に高く開いたときにちょうどロボットが達するように、ロボット接近速度を調節し、(2)プレスから取出ロボットが移動している間に、落下ロボットがプレスに入ることができるタイミングを制御し、及び/又は(3)プレスから落下ロボットが移動しているときに、落下ロボットがプレスに信号を送信して次のサイクルを開始することができるタイミングを制御するシステム及び方法が提供される。プレスインターロック角度(Press interlock angles)は、入力プレスプロファイル、及び学習モード時に決定されたロボット進路の高さに基づいて、自動的に決定することができる。これによって、セットアップがさらに容易になるだけでなく、これは、インターロック角度を自動的に再学習させることにより作業者が進路を調節するため、システムが長期間にわたって性能及び機械の保護を維持できることを意味する。
【0013】
さらなる分野の応用可能性は、本明細書に示されている説明から明らかになる。本概要における説明及び具体例は、例示のみを目的とするものであり、本開示の範囲を限定しないものとする。
【0014】
本明細書に記載されている図面は、選択されている実施形態を例示することのみを目的としており、考え得るすべての実施形態ではなく、本開示の範囲を限定しないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本技術によって達成される3つの同期領域の図である。
図1A】プレスサイクル時のプレス機の角度及び位置の例の図である。
図2】通信インフラストラクチャーの図である。
図3】プレス機周囲及びプレス機内において相互作用する取出ロボット及び落下ロボットのロボット進路の概観図である。
図3a】落下ロボットがプレスに接近し離れるときの、落下ロボットが教示された場所の配置である。
図3b】取出ロボットがプレスに接近し離れるときの、取出ロボットが教示された場所の配置である。
図4】1つのロボットが一度にプレス内に存在する、システムの学習モード動作の図である。
図5】収集されるプレス機の学習データの図である。
図6】収集される落下ロボット及び取出ロボットの学習データの図である。
図7】取出ロボットがプレス機に入る同期動作モードの図である。
図8】落下ロボットが衝突することなく取出ロボットの後を追跡することを決定する学習臨界点の図である。
図9】落下ロボットが衝突することなく取出ロボットの後を追跡する同期動作モードの図である。
図10】落下ロボットがプレスに信号を送信して次のサイクルを開始することで、時間どおりに落下ロボットがプレスから出る同期動作モードの図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
技術についての次の説明は、本質的に、主題、1つ以上の発明の製造及び使用における例示にすぎず、本出願の若しくは本出願の優先権を主張して出願され得る他の出願の特許請求の範囲に記載された特定の発明、又はこれらの出願から付与された特許の、範囲、用途又は使用に限定されないものとする。開示されている方法に関して、示されている段階の順序は、本質的に例示であり、このため、段階の順序は、種々の実施形態において異なり得る。特に明示されている場合を除いて、本説明におけるすべての数量は、「約(about)」という語によって改められるものと理解され、すべての幾何学的及び空間的記述語は、本技術の最も広い範囲を説明する際に「実質的に(substantially)」という語によって改められるものと理解される。数値に利用されるときの「約」は、計算又は測定によって値に若干の不正確さ(とともに、その値の正確さへの何らかの近似、ほぼ若しくは合理的にその値に近く、ほとんどその値であること)が許容されることを示す。何らかの理由により、「約」によって示される不正確さが、この通常の意味により当技術分野では特に理解されていない場合、本明細書に用いられる「約」は、少なくとも、このようなパラメーターを測定するか又は用いる通常の方法から生じ得る変動を示す。
【0017】
本詳細な説明において引用されている、特許、特許出願及び科学文献を含むすべての書類は、特に明示しない限り、参照により本明細書に援用される。参照により援用される書類と本詳細な説明との間に何らかの矛盾又は不確実性が存在し得る場合、本詳細な説明が優先する(controls)。
【0018】
含む(including)、含有する(containing)、又は有する(having)などの限定的ではない用語の同義語としての「含む(comprising)」というオープンエンドな用語(open-ended term)は、本技術の実施形態を説明し特許請求の範囲に記載するのに、本明細書に用いられているが、その代わりに、実施形態は、「…からなる(consisting of)」又は「…から本質的になる(consisting essentially of)」などの、さらに限定的な用語を用いて説明されてもよい。このため、材料、構成部品、又は方法の段階を挙げる、所与の実施形態について、本技術には、具体的に、たとえ、本出願において、付加的な材料、構成部品又は方法が明示的に挙げられていなくても、付加的な材料、構成部品若しくは方法を除外し(…からなる)、また、実施形態の重要な特性に影響を及ぼす、付加的な材料、構成部品若しくは方法を除外する(…から本質的になる)、このような材料、構成部品、若しくは方法の段階からなる、又はこのような材料、構成部品、若しくは方法の段階から本質的になる実施形態も含まれる。例えば、要素A、B及びCを挙げる組成物又は方法の列挙は、たとえ、当技術分野において挙げられ得る要素Dが、本明細書において除外されると明示されていなくても、要素Dを除外して、A、B及びCからなる実施形態、並びにA、B及びCから本質的になる実施形態を具体的に想定する。
【0019】
本技術は、所与のプレスラインにおいて、1つ以上のプレス機と、これに関連する、1つ以上の搬送ロボットとの間の動作同期を達成する種々の方法を提供し、複数のプレス機と複数の搬送ロボットが存在し、搬送ロボットは、プレス機の間、並びにプレスラインの前面及び端部に存在し得る。プレス機と、取出ロボットと、落下ロボットとを同期させる方法及びシステムが含まれ、プレス機には、ブランクを部品にプレスする動作領域が含まれる。プレス機の動作領域は、部品をプレスした後に開く。プレス機の動作領域の開口部が上死点位置の前に取出インターロック角度に達すると、取出ロボットがプレス機の動作領域内に移動する。部品は、取出ロボットを用いて、プレス機の動作領域から取り出される。ブランクを運搬する落下ロボットが動作領域内へ移動する間に、動作領域から取出ロボット及び部品が移動する。取出ロボットの少なくとも一部、又は部品の少なくとも一部が動作領域内に存在すると同時に、落下ロボットの少なくとも一部、又はブランクの少なくとも一部が動作領域内に存在する。取出ロボットは落下ロボットと通信し、取出ロボットの動きは、取出ロボット又は部品が落下ロボット又はブランクと衝突するのを防止するように、落下ロボットの動きと同期される。ブランクは、落下ロボットを用いて、プレス機の動作領域に落下させる。また、落下ロボットは、プレス機の動作領域から移動する。
【0020】
落下ロボットは、さらに、プレス機の動作領域の閉鎖時に落下ロボットがプレス機と衝突しないことを、プレス機に通信できる。したがって、プレス機の動作領域を閉鎖して、ブランクを別の部品にプレスすることができる。プレス機の動作領域から落下ロボットを移動させることには、プレス機の動作領域の閉鎖が、下死点位置の前に落下インターロック角度に達するときに、プレス機の動作領域から落下ロボットを移動させることも含まれ得る。
【0021】
本明細書に用いられるプレス機(press machine)は、単にプレス(press)ともいう。同様に、所与の搬送ロボットは、所与のプレス機に対するロボットのその時点の動作に応じて、取出ロボット又は落下ロボットであり得る。例えば、単一のプレス、及び2つの搬送ロボット(例えば、落下ロボット及び取出ロボット)は、次のように表されてもよい。
R1 → P1 → R2
ここで、第1のロボット(R1)は、プレス(P1)に対して落下ロボットと考えられ、第2のロボット(R2)は、プレス(P1)に対して取出ロボットと考えられる。同様に、一般化された一連のロボット(RN)及びプレス(PNaa)の区分は、次のように記述されてもよい。
RN → PN → RN+1
ここで、(RN)は、(PN)に対して落下ロボットと考えられ、(RN+1)は、(PN)に対して取出ロボットと考えられる。プレス及び搬送ロボットの複数の区間を連続して配置することができ、例えば、第1のプレス(P1)、第2のプレス(P2)、第3のプレス(P3)など、最大N個のプレス、及び関連する搬送ロボットは、次のように表されてもよい。
R1 → P1 → R2 → P2 → R3 → P3 → R4 → ( . . . ) → PN → RN+1
したがって、部品は、所与のプレスに対する部品の関係に基づいて、ブランク、又はスタンピングされたか若しくはプレスされた部品と考えることが可能となる。例えば、所与のプレスに送られた部品は、その特定のプレスのブランクといってもよいが、ブランクには、先のプレスによって、あらかじめスタンピング又はプレス操作がされていてもよい。同様に、スタンピングされたか又はプレスされた部品は、次のプレスに送られたときにはブランクといってもよい。したがって、本技術は、所与のプレスへ進む所与のロボットと、一連のプレスへそれぞれ進む一連のロボットとの間の関係に応用可能であることが理解される。よって、本技術は、一連のプレスが、搬送ロボットによって取り出され/落下させられる1つ以上の部品上で作動するシナリオ、一連のプレス及び搬送ロボットが、単一の加工流れとして構成できるシナリオ、若しくは複数の加工流れが集中するか若しくは分岐でき、これによって、複数の部品を一緒に供給できるシナリオ、及び/又は部品が種々のプレス操作に分割されるシナリオに応用されると理解される。本明細書におけるロボット及び関連するコントローラーへの言及は、複数のロボット、複数のコントローラー、及び/又はマスター/スレーブロボット構成にも該当する。
【0022】
ロボットの移動、制御及び同期には、複数の移動区間が含まれ得る。例えば、動作領域から取出ロボット及び部品を移動させることには、複数の取出区間移動が含まれ、ブランクを運搬する落下ロボットを動作領域内へ移動させることには、複数の落下区間移動が含まれていてもよい。そして、取出区間移動のうちの1つに関連するパラメーターを落下ロボットが用いて、取出ロボットと落下ロボットの動きを同期させることができる。同様に、落下区間移動のうちの1つに関連するパラメーターを取出ロボットが用いて、取出ロボットと落下ロボットの動きを同期させることができる。取出区間移動のうちの1つに関連するパラメーター、又は落下区間移動のうちの1つに関連するパラメーターには、移動長さ、移動時間、加速時間、減速時間、及び/又は現在位置が含まれ得る。また、ロボット区間移動に関連する他のパラメーターも用いることができる。複数の取出区間移動及び/又は複数の落下区間移動に関連する複数のパラメーターを、取出ロボット及び/又は落下ロボットがそれぞれ用いて、取出ロボットと落下ロボットの動きを同期させることができる。
【0023】
このようなパラメーターの使用によって、ロボットの同期及び安全性を促進することができる。特定の実施形態では、例えば、複数の取出区間移動に関連する複数のパラメーターが測定されてもよい。測定されたパラメーターを、先に存在する取出区間パラメーターと比較することによって、取出ロボットが取出同期閾値内にあるか否かを判断することが可能である。取出同期閾値内にない場合、取出ロボットは、プレス機の動作領域外の安全な空間に移動することができる。同様の方法により、複数の落下区間移動に関連する複数のパラメーターを測定し、これを、先に存在する落下区間パラメーターと比較して、落下ロボットが落下同期閾値内にあるか否かを判断することができる。
【0024】
取出同期閾値及び落下同期閾値は、種々の方法において用いることができる。落下ロボットが落下同期閾値外にあるとき、落下ロボットは、プレス機の動作領域外の安全な空間に移動することができる。このような先に存在する取出区間パラメーターには、取出ロボットのプログラミングから記録された取出区間パラメーターが含まれ、先に存在する落下区間パラメーターには、落下ロボットのプログラミングから記録された落下区間パラメーターが含まれ得る。また、先に存在する取出区間パラメーターには、取出ロボットの先の動作から記録された取出区間パラメーターも含まれ、先に存在する落下区間パラメーターには、落下ロボットの先の動作から記録された落下区間パラメーターも含まれ得る。このようにして、取出ロボットが取出同期閾値外にあるときに、取出ロボットを、先に存在する取出区間パラメーター内で作動させるように調節することができ、及び/又は、落下ロボットが取出同期閾値外にあるときに、落下ロボットを、先に存在する取出区間パラメーター内で作動させるように調節できる。
【0025】
取出区間移動及び落下区間移動は、取出ロボットと落下ロボットの同期動作を含む、それぞれのロボットの移動全体を細分化したものとして、理解することができる。区間は、移動長さ、移動時間、加速時間、減速時間、現在位置、方向、向きの転換、及び/又は回転を含む、特定のパラメーターによって定義することができる。区間は、ロボット全体の移動に関連し、また、多軸ロボットの特定のリンク、関節及び軸のパラメーターにも関連し得る。
【0026】
本技術の方法及びシステムには、さらに、落下ロボットを用いて、プレス機の動作領域の閉鎖時に落下ロボットがプレス機と衝突しないことを、プレス機に通信することが含まれ得る。このように、プレス機の動作領域を閉鎖して、ブランクを別の部品にプレスすることができる。プレス機の動作領域から落下ロボットを移動させることには、さらに、プレス機の動作領域の閉鎖が、下死点位置の前に落下インターロック角度に達するときに、プレス機の動作領域から落下ロボットを移動させることが含まれ得る。ブランクを運搬する落下ロボットを動作領域内へ移動させることには、複数の落下区間移動が含まれ、落下区間移動のうちの1つに関連するパラメーターをプレス機が用いて、プレス機の動きと落下ロボットの動きとを同期させることができる。これによって、プレス機の動作を終了させてブランクを別の部品にプレスする間に、落下ロボット又はブランクがプレス機と衝突するのを防止することができる。
【0027】
取出ロボットは、さらに、下流ブランクとして下流プレス機に部品を送って下流ブランクを下流部品にプレスするように、下流プレス機の下流落下ロボットとして構成できることが理解される。したがって、下流落下ロボット(すなわち、以前は取出ロボットとして作動していた。)は、下流取出ロボットと通信することができる。下流取出ロボットの動きを下流落下ロボットの動きと同期させて、下流取出ロボット又は下流部品が、下流落下ロボット又は下流ブランクと衝突するのを防止することができる。このシナリオは、集中及び分岐作業フローを含む、連続したプレス及び搬送ロボットを存続させることができる。
【0028】
特定の実施形態では、臨界点を含むように、取出ロボットを落下ロボットの動きと同期させることができ、臨界点は、取出ロボット又は部品が落下ロボット又はブランクと衝突する条件を定義する。このため、ブランクを運搬する落下ロボットを動作領域内へ移動させる間に、動作領域から取出ロボット及び部品を移動させることは、取出ロボットと落下ロボットとが臨界点に関して通信することに依存し、取出ロボット及び落下ロボットうちの一方は、取出ロボット及び落下ロボットのうちの他方が臨界点を明確にするまで待機する。本明細書に述べたように、動作領域から取出ロボット及び部品を移動させることには、複数の取出区間移動が含まれ、複数の取出区間移動には複数のパラメーターが関連し、同様に、ブランクを運搬する落下ロボットを動作領域内へ移動させることには、複数の落下区間移動と、複数の落下区間移動に関連する複数のパラメーターと、が含まれ得る。したがって、複数の取出区間移動に関連するパラメーター、及び/又は複数の落下区間移動に関連するパラメーターは、取出ロボット及び落下ロボットのうちの一方の待機を最小にするように調節できる。複数の取出区間移動に関連するパラメーター、及び/又は複数の落下区間移動に関連するパラメーターとしては、例えば、移動長さ、移動時間、加速及び/又は減速を挙げることができる。
【0029】
本技術には、プレス動作タイミング及びロボット動作計画データを学習させることによってプレス機とロボットとを同期させる方法も含まれる。プレスタイミングは、プレスが上死点(TDC)にある時から開始するプレスサイクル時に、学習させることができる。プレス角度又は位置、及びプレスが上死点に存在した時からの時間を含む表を記録することができる。プレスタイミング表は、それぞれのプレスサイクルにおいて連続的に更新され、プレスタイミングが最後に記録されたデータに変わらず近いか否かに関して確認することができる。プレスタイミングが閾値を超えて変化していない場合、プレスタイミング表を用いて、ロボットがプレスと同期する間に、1つ以上の臨界点が生じるまで、プレスの時間を算出することができる。プレスタイミングが閾値を超えて変化した場合、ロボットは、再学習のために安全モードに入ることができる。このような方法により、ロボットの取出進路と落下進路両方のそれぞれの動作区間についての区間移動時間及び減速時間を含むロボット計画データを学習させることができる。プレスインターロック角度は、入力プレスプロファイル、及び学習モード時に決定されたロボット進路の高さに基づいて、自動的に決定することができる。これによって、セットアップがさらに容易になるだけでなく、これは、インターロック角度を自動的に再学習させることにより作業者が進路を調節するため、システムが長期間にわたって性能及び機械の保護を維持できることを意味する。
【0030】
取出側のプレスとのロボットの同期には、取出かぎ爪(pick pounce)へのロボット動作を始める前に、取出インターロック角度での時間から、現プレス角度での時間を引くことにより、プレスタイミング表を用いて、プレスの取出インターロック角度までの時間を予測することも含まれ得る。取出かぎ爪へのロボット動作の計画移動速度を調節することで、ロボットの取出プレス進入点への移動が、プレスのプレスインターロック角度までの時間と同じになる。ロボットが取出かぎ爪に接近すると、プレスが取出インターロック角度に達するまで、取出かぎ爪までの時間及びプレスの時間を監視することができ、ロボットがさらに早くプレスに接近すると予測される場合、ロボットがプレスに入ることが阻止され得る。
【0031】
プレスの取出側からロボットの後を追跡するようにプレスの落下側からロボットを同期させることには、通信ネットワークを介して、取出ロボットと落下ロボットとの間で動作計画データを交換することも含まれ、ロボットのうちの一方又は両方が計画データを用いて、追跡臨界点を決定することができる。ロボット進路上の考え得る臨界点は、取出ロボット進路が落下ロボット進路の邪魔にならないように決定することができる。取出ロボット進路上の考え得る別の臨界点は、それ以降のすべての点が落下ロボット進路上のさらに下流の点よりも流れ方向に沿って速い所において、決定することができる。真の臨界点は、考え得る2つの臨界点の最上流として、決定することができる。計画データを有する一方又は両方のロボットは、落下ロボット及び取出ロボットの追跡臨界点に対する区間番号及び区間補間番号(segment interpolation number)を決定し、これを他のロボットに通信することができる。ロボット追跡の同期モード時に、落下ロボット接近速度は、追跡臨界点までの時間が、取出ロボットの追跡臨界点までの時間の直後であるように、調節することができる。落下ロボットが落下かぎ爪に接近するとき、落下ロボットの追跡臨界点までの時間は、この時間が、取出ロボットの追跡臨界点までの時間の直後であるか否かを判断するために確認することができ、直後でなければ、落下ロボットは、取出ロボットの追跡臨界点までの時間が、落下ロボットの追跡臨界点までの時間よりも短くなるまで、保持され得る。
【0032】
ロボットを落下側のプレスと同期させる他の方法には、プレスタイミング表を用いて、上死点からプレス落下インターロック角度までのプレスの時間を決定することが含まれる。そして、落下ロボットがプレスに入った後に、落下ロボットの落下退出臨界点までの時間のカウントダウンを始めることができる。落下ロボットの落下退出臨界点までの時間が、プレスの落下インターロック角度までの時間よりも短い場合、ロボットは、プレスに降下するように信号を送信して、次のプレスサイクルを開始することができる。
【0033】
実施例
本明細書に添付された複数の図を参照して、本技術の例示的な実施形態を示す。
【0034】
図1には、プレス機とプレス間搬送ロボットとの間の3つの動作同期領域が示されており、これらの領域には、次のものが含まれる。
1)取出ロボットとプレスとの同期:取出ロボットは、プレス機が上昇して取出インターロック角度に達すると同時にプレスに入り、取出インターロック角度は、ツールを運搬する取出ロボットが衝突することなくプレスに入るのに十分に高い、プレスの角度又は位置である。
2)ロボット間の同期:落下ロボットは、取出ロボット及び落下ロボットがプレス内に存在する合計時間を最小にするように、取出ロボットの後を追跡し、取出ロボットと落下ロボットとが衝突することなく、それぞれが部品又はブランクを運搬する。取出ロボットは、スタンピングされたか又はプレスされた部品を取り出してプレスから出るのに対し、落下ロボットは、ブランクを運搬してプレスに積載し、これを、次のプレスサイクルにおいてスタンピングする。
3)落下ロボットとプレスとの同期:落下ロボットは、最も早い安全な時間に、プレスに次のプレスサイクルにおいて降下するように信号を送信することで、落下ロボットが衝突することなくプレスから出ようとするときに、プレスが落下インターロック角度又は位置に存在するようになる。
図1Aは、プレスサイクル時のプレス機の角度及び位置の例の図である。
【0035】
図1に示されている一連の動作は、取出ロボット及び落下ロボットが進む、単一のプレス機に利用することができる。または、複数のロボットが進む、複数のプレス機が存在していてもよい。例えば、第1のロボット(例えば、落下ロボット)は、ブランクを第1のプレスに落下させ、次いで、第1のプレスは、ブランクを部品にプレスするか又はスタンピングし、その後、第2のロボット(例えば、取出ロボット)は、第1のプレスから部品を取り出してもよい。そして、第2のロボットは、部品を第2のプレスに落下させ、次いで、第2のプレスは、部品をさらにプレスするか又はスタンピングし、また、その後、第3のロボット(例えば、取出ロボット)は、第2のプレスから、さらにプレスされたか又はスタンピングされた部品を取り出してもよい。そして、付加的なプレス及び付加的なロボットによって、加工を継続してもよい。したがって、特定のプレスの状況下では、ロボットを取出ロボットとして作動させ、同じロボットを、連続するプレスの状況下では、落下ロボットとして作動させてもよいことが理解できる。
【0036】
図2に示されているように、それぞれのロボットには、上流プレスと下流プレス両方からのエンコーダー情報、さらに、上流及び/又は下流ロボットを含む、1つ以上のロボットからの動作タイミング及び実行状態情報を提供することができる。エンコーダーは、イーサネットエンコーダー接続、又はエンコーダー信号にアクセスする別のロボットへのイーサネットI/O接続を介して、ロボットコントローラーに直接接続することができる。したがって、上流ロボットと下流ロボットとは、イーサネットなどの通信ネットワークを介して、動作計画、タイミング、及び状態情報を通信することができる。
【0037】
図3は、取出ロボット及び落下ロボットそれぞれがプレス機に出入りするときの、両ロボットの進路の概要を示している。それぞれのロボットについて、複数の動作区間が示されている。図3aは、落下ロボットが、部品を含む上流プレスを離れ、部品を、落下かぎ爪位置の方へ下流プレスに移送し、落下ロボットが部品を落下させてプレスがスタンピングする落下位置まで最終的に下がる前に、落下接近位置の周りにおいてプレスに入るときの、落下ロボット進路の詳細を示している。部品が落下した後、落下ロボットは、同様の進路を通り戻って、プレスから出て、上流プレスに向かって戻り、スタンピングされた別の部品を取り出す。図3bは、部品が落下した後、取出ロボットが下流プレスを離れ、上流プレスに向かって取出かぎ爪位置の方へ戻り、プレスに入り、取出接近位置の方へ回った後、取出位置まで下がってスタンピングされた部品を取り出し、取出ロボットが同様の進路を通りプレスから出始め、また、下流に向かって進み、部品を下流プレスに移送するときの、取出ロボット進路の詳細を示している。図3図3a及び図3bから、上流に移動するプレス間移送ロボットは、部品を取り出す取出ロボットとして機能し、そして、下流に移動して部品を下流プレスへ移送するときには、落下ロボットとして機能する。
【0038】
図4に示されているように、本技術には、プレス移動のタイミングを学習させ調節し、学習モードにおけるロボット区間移動時間及び加速時間を含むロボット動作計画情報を学習させ調節する方法が含まれる。そして、学習させた情報は、その後、同期モード時に用いられ、プレスとロボットの動きを調節し同期させる。学習又は調節モードの目的は、次の2つの要素からなる。
1)ロボットとプレスとの間の相互作用を制限することで、一度に1つのみが共通領域内において有効になる。性能は最適ではないが、動作は非常に安全であり、衝突の可能性はない。
2)同期モードにおいてシステムを作動させるのに必要なロボット動作計画情報を収集すること。同期モードでは、プレス、取出ロボット、及び落下ロボットは、共通領域において同時に有効とすることができるが、相互作用は、依然として、安全であるのと同時に、性能を最適にする。
【0039】
本技術は、具体的には、さらに、次の段階を含む学習モードの方法に関する。(1)位置を指令された取出ロボットが、プレスが取出インターロック角度を越えるまで、プレスに入らない段階、(2)落下ロボットが、プレスより取出ロボットが離れるのを待ってから入る段階、及び(3)落下ロボットが、プレスから離れるまで、プレスに降下するようには信号を送信しない段階。本技術には、特定のロボットに対応する学習モードが含まれる。ロボットが学習モードにある場合、ロボットの取出タイミング情報は、上流落下ロボットが用いることができないため、上流落下ロボットは、「落下学習モード」にある必要がある。下流取出ロボットは、上流ロボットの学習モードの影響を受けない。したがって、ロボットにある、十分に安全な学習モードとは別に、「落下学習モード」という方法があり、これは、プレスより取出ロボットが離れるのを待ってから入る、落下側のロボットに関連する。プレスタイミング情報が正しくないことが判明した場合、他に2つの安全モードがあり、これらは、すなわち、(1)落下ロボットが、プレスから離れるまで、プレスに降下するようには信号を送信しない落下‐プレス安全モード、及び(2)取出側プレスが取出インターロック角度を越えるまで、位置を指令されたロボットが取出側プレスに入らない取出‐プレス安全モードである。
【0040】
また、本技術には、プレスが上死点(TDC)に存在した時からのプレスタイミングを学習させる方法も含まれる。図5は、プレスタイミング表の例を示している。プレスがTDCから移動を開始するとすぐに、本方法は、その時間を0として記録する。プレスが、あらかじめ定義されたプレス角度(例えば、0.5度)、又は位置移動間隔を横断するたびに、本方法は、プレスが上死点に存在した時から経過した合計時間を記録する。本方法は、ロボットごとに、上流プレス用と下流プレス用の2つの表を維持する。プレスサイクルごとに、本方法は、その時点の表がなお、記録された値に近いか否かを確認し、表を更新する。大半の場合、これらの時間は、ほぼ同一である必要があり、表は、同期モード時のプレスタイミング予測に用いられる。新しい時間が非常に異なる場合、記録された表の他の値は信頼することができず、本方法は、プレスが上流又は下流に存在するかに応じて、ロボットを、落下‐プレス安全モード、又は取出‐プレス安全モードにする。
【0041】
さらに、本技術には、図6に示されているように、落下ロボット動作計画データ及び取出ロボット動作計画データを、調節するか又は学習させる方法も含まれる。ロボット学習データには、区間移動時間及び減速時間が含まれる。実行時に、本方法は、学習させたロボットデータを用いて、いくつかの臨界点又は位置までの時間を決定する。これらの臨界点には、(1)落下追跡臨界点、(2)取出追跡臨界点、(3)落下退出臨界点、及び(4)取出進入臨界点が含まれる。その時点の区間の補間時にはいつでも、いずれかの臨界点までの時間は、臨界点を有する区間まで、将来のそれぞれの区間について1つずつ、その時点の区間の残り時間と、区間時間と、必要に応じて減速時間とを合計して決定される。臨界点が区間の中央の場所にある場合、区間時間の合計は、臨界点の補間点までしかない。
【0042】
学習させたプレスタイミング及び取出ロボット進路データによって、本技術は、取出ロボットがプレスに入るタイミングを自動的に調節し同期させることで、プレスが取出インターロック角度を越えた直後に、取出ロボットがプレスに達し、これによって、ロボットは、速度を落とさずに、プレスに入ることができる。これによって、スループットが向上するだけでなく、ロボットが取出かぎ爪位置まで高速で進行する必要があるが、静止しプレスが開くのを待機するには減速のみが必要である頻度が最小になるため、ロボットの寿命も延びる。
【0043】
本技術は、次の段階によって、取出側プレス同期(図7を参照)を達成する。(1)取出かぎ爪までの区間が開始しようとする直前に、本方法が、プレスの取出インターロック角度までの時間を決定する段階であり、学習させたプレス表の取出インターロック角度におけるプレスの時間から、その時点のプレス角度におけるプレスの時間を引くことによって行われる段階、及び(2)取出プレス進入点までの区間移動時間が取出インターロック角度までの時間と同じになるように、かぎ爪へ進むロボット動作区間速度が計画される段階。
【0044】
プレスに入る前に、本技術は、ロボットが取出かぎ爪に達する前にプレスが取出インターロック角度に達するか否かも確認する。取出インターロック角度までの時間は、時間表に対するプレス位置を用いて算出される。かぎ爪までの時間は、残りのロボット補間時間である。取出プレスに入る動作区間は、ロボットの取出進入臨界点までの時間が、取出プレスの取出インターロック角度までの時間よりも長くなるまで、開始させないようにする。
【0045】
図8は、本技術がロボット追跡臨界点又は位置をどのように決定するかを示している。最適な性能を達成するように、本方法は、落下動作が可能な限り速く発生し、ロボットが可能な限り短い時間プレス内に存在するように、落下ロボット動作の時間を計る。図8は、ツール及び部品を含む落下ロボットの下流縁部によって追跡された落下ロボット進路を示している。取出ロボット進路は、取出ロボットが部品を取り出した後、ツール及び部品を含む取出ロボットの上流縁部によって追跡される。考慮すべき、考え得る以下の2つの臨界点がある。点(1)図の星印は、取出ロボット進路上の考え得る臨界点を表しており、いったん取出ロボットがこの点に達すると、落下ロボット進路の邪魔にはならない。点(2)考え得る別の臨界点は、それ以降のすべての点が落下ロボット進路上のさらに下流の点よりも流れ方向に沿って速い、取出ロボット進路上の点である。そして、真の臨界点は、考え得るこれらの2つの臨界点の最上流にある。
【0046】
本技術は、次の条件を満たすことによって、最適性能を達成する。(1)落下ロボットが、臨界点において取出ロボットに可能な限り近い、及び(2)落下ロボットが、臨界点において可能な限り速く移動している。学習モード時に、取出ロボットは、区間番号及び区間内の補間点番号を含む進路情報を記録する。また、落下ロボットも、区間番号及び区間内の補間点番号を含む進路情報を記録する。そして、落下ロボットは、取出ロボットから進路情報を得る。両方のロボットの進路情報を得た後、落下ロボットは、取出ロボットと落下ロボット両方の区間番号及び区間内の補間点番号を含む、追跡の臨界点を決定する。その後、落下ロボットは、取出ロボットの臨界点情報を、取出ロボットに転送する。
【0047】
図9では、ロボット追跡の同期モード時に、取出ロボットは、学習モード時に記録されたロボット進路情報を用いて、臨界点までの時間を算出し、これを落下ロボットに通信する。落下ロボットによる落下かぎ爪位置への移動が開始する前に、最初に、取出ロボットの臨界点までの時間が用いられる。本技術は、次の計算に基づいて、落下かぎ爪位置への接近時の落下ロボット速度を調節する。
drop_robot_motion_time_to_drop_pounce_position =
pick_robot_time_to_critical_point -
drop_robot_time_to_critical_point_from_the_pounce_position
(落下ロボットの落下かぎ爪位置までの動作時間=
取出ロボットの臨界点までの時間-
落下ロボットのかぎ爪位置から臨界点までの時間)
【0048】
落下ロボットが落下かぎ爪への移動を開始しようとしているときに、取出ロボットの臨界点までの時間が取得できない場合、落下ロボットは、プログラムされた速度によって落下かぎ爪へ進む。落下ロボットが落下かぎ爪に接近しているとき、落下ロボットは、プレスに入ることができるか否かを確認する。取出ロボットの臨界点までの時間が、落下ロボットの臨界点までの時間よりも短い場合、すなわち、取出ロボットが、落下ロボットよりも速く臨界点に達することができる場合、落下ロボットは、プレスへの進入に移ることができる。そうでない場合は、落下ロボットは、取出ロボットの臨界点までの時間が、落下ロボットの臨界点までの時間よりも短くなるまで、落下かぎ爪位置に保持される。落下ロボットが取出ロボットを追跡している間、臨界点までの時間は終始、確認される。取出ロボットの臨界点までの時間が、落下ロボットの臨界点までの時間よりも長くなり過ぎだす(begins to cross over to become longer)場合にはいつでも、落下ロボットは直ちに保持されるか、又は潜在的な衝突を防止するように停止する。この衝突防止緩衝距離をユーザーが調節するのに、調節許容差が提供される。
【0049】
図10では、本技術は、落下ロボットがプレスを離れるときに落下ロボットとプレスとが衝突しないように、プレスに最も早い時点において降下するように信号を送信する時間を制御することによって、落下ロボットとプレスとの同期を制御する。本技術は、プレスに降下するように信号を送信するタイミングを制御することで、プレスが落下インターロック角度に達すると同時に、落下ロボットはプレスから離れるようになる。
【0050】
落下側同期モード時に、いったん落下ロボットが落下プレスに入ると、本技術は、落下ロボットがプレスから離れるまでの時間をカウントダウンし始める。これは、途中で区間時間及び減速時間を追加することによりプレス離隔点(press clear point)を有する区間進路データに達するまで、学習させた区間進路データを一つ一つ繰り返し経験させる(going through the list)ことによって行われる。この間、プレスはTDCにある必要があり、プレスの落下インターロック角度までの時間は、時間表に対するプレス位置から算出することができる。いったん、ロボットがプレスから離れるまでの時間が、プレスの落下インターロック角度までの時間よりも短くなると、落下ロボットは、プレスに降下するように信号を送信する。
【0051】
例示的な実施形態は、本開示が十分なものとなるように、また、その範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。本開示の実施形態を十分に理解させるように、特定の構成部品、装置及び方法の例などの、多数の特定の詳細が示されている。当業者であれば、具体的な詳細が採用される必要がないこと、例示的な実施形態が種々の多くの形態により具現化できること、及び、例示的な実施形態がいずれも、本開示の範囲を限定するように解釈されるべきではないことが明らかである。一部の例示的な実施形態では、周知の方法、周知の装置構造、及び周知の技術は、詳細には説明されていない。一部の実施形態、材料、組成物及び方法の、均等な変更、改変及び変形を本技術の範囲内で行うことができ、実質的に同様の結果が得られる。
図1
図1A
図2
図3
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10