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特許7265490モバイル決済用のデジタルウォレットアプリケーション
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】モバイル決済用のデジタルウォレットアプリケーション
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/32 20120101AFI20230419BHJP
   H04W 48/16 20090101ALI20230419BHJP
   H04W 4/02 20180101ALI20230419BHJP
   H04W 80/12 20090101ALI20230419BHJP
   G06Q 20/36 20120101ALI20230419BHJP
   G06Q 20/08 20120101ALI20230419BHJP
【FI】
G06Q20/32 320
H04W48/16 131
H04W4/02
H04W80/12
G06Q20/36
G06Q20/08 300
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019569307
(86)(22)【出願日】2018-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2018063693
(87)【国際公開番号】W WO2018228794
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】17305733.2
(32)【優先日】2017-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519260337
【氏名又は名称】アイデミア フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100202201
【弁理士】
【氏名又は名称】兒島 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】マコーチン,エム オレグ
(72)【発明者】
【氏名】エルハウシン,エム メーディ
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0061419(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0254642(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0112870(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0254770(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0112133(KR,A)
【文献】特表2017-507595(JP,A)
【文献】特開2015-122781(JP,A)
【文献】特表2015-532810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H04W 4/00-80/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルウォレットアプリケーション(DWA)を管理するための、モバイルデバイス(DV)によって実装される方法であって、前記デジタルウォレットアプリケーションは、ホーム決済ネットワーク(H-NT)において取引を実行するために、モバイル決済カード(C1)に関連付けられた第1データセット(DT1)で初期構成されるものであり、
前記方法は、以下のステップ:
前記モバイルデバイスの現在位置を表す位置情報(LOC)を含む情報要求を送信(S40)することと、
前記情報要求に応じて、前記モバイルデバイスの前記現在位置で利用可能な少なくとも1つの他の決済ネットワーク(R-NT)、該他の決済ネットワーク(R-NT)はいわゆるローミング決済ネットワークである、を識別するローミング情報(RI)を受信(S48)することと、
前記ローミング情報に基づいてローミング決済ネットワーク(R-NT)を選択(S50)することと、
前記モバイル決済カードに割り当てられたものであり前記選択されたローミングネットワークで動作する、第2データセット(DT2)を取得(S68)することと、
前記選択されたローミング決済ネットワークで前記モバイル決済カードを使用できるように、前記デジタルウォレットアプリケーションを前記第2データセットで構成する(S70)ことと、を備え
前記ローミング情報(RI)は、利用可能なローミング決済ネットワークを特徴付ける情報を含み、
前記第1データセットは、前記ホーム決済ネットワークにおける前記モバイル決済カードの第1識別子(H-PANID)を含み、
前記第2データセット(R-PAN、R-PANID、R-PRM)を取得する前記ステップは、
第1サーバー(TSO;DWP)に、前記選択されたローミング決済ネットワークのプロビジョニング要求(RQ1)を送信することと、ここで、前記プロビジョニング要求は前記第1識別子(H-PANID)を含む、
前記第1サーバー(TSO;DWP)から、前記第2データセット(DT2)を受信することと、を含み、前記第2データセット(DT2)は、
前記モバイル決済カードに割り当てられたものであり前記選択されたローミングネットワークで動作するローミングトークン(R-PAN)と、
前記ローミングトークン(R-PAN)の識別子(R-PANID)と、を含む、方法。
【請求項2】
構成する前記ステップが完了した後に、前記選択されたローミング決済ネットワークにおいて前記モバイル決済カードを使用して取引を実行するステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記情報要求は、前記モバイルデバイスが前記ホーム決済ネットワークの範囲外でローミングしていることを検出すると送信される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記位置情報は、
前記モバイルデバイスの地理的位置を表す地理情報と、
前記モバイルデバイスが接続されている、セルラーネットワーク又はその一部を示す、ネットワーク識別子と、のうちの少なくとも1つを備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ローミング情報は、
少なくとも1つのローミングバンクネットワークに関連付けられたパラメーターであって、前記パラメーターは、サービスレートと受け入れエリアの少なくとも1つを定義するパラメーターと、
各ローミング決済ネットワークが前記モバイルデバイスによって選択される優先順位を定義する優先順位情報と、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1データセットは、プライマリーアカウント番号に対応するものであり前記モバイル決済カードに割り当てられたものであり前記ホーム決済ネットワークで動作するものであるホームトークン(H-PAN)を含む、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記情報要求を送信する前記ステップの前に、初期構成するステップを備え、
初期構成する前記ステップにおいて、前記モバイルデバイスは、
前記モバイル決済カードに割り当てられたものであり前記ホーム決済ネットワークで動作する前記プライマリーアカウント番号を取得し、
第1サーバー(TSO)に前記プライマリーアカウント番号を送信し、
前記プライマリーアカウント番号に応じて、前記第1データセットを受信する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
デジタルウォレットアプリケーション(DWA)を管理するモバイルデバイス(DV)と連携して第1サーバー(TSO)によって実装される処理方法であって、
前記方法は、以下のステップ:
前記モバイルデバイスの現在位置を表す位置情報(LOC)を含む情報要求を受信(S42)することと、
前記位置情報に基づいて、前記モバイルデバイスによってアクセスされ得る少なくとも1つのローミング決済ネットワークを決定(S44)することと、
前記モバイルデバイスに、前記少なくとも1つのローミング決済ネットワークを識別するローミング情報(RI)を送信(S46)することと、
前記モバイルデバイスから、前記少なくとも1つのローミング決済ネットワークの中から前記モバイルデバイスによって選択されたローミング決済ネットワークのプロビジョニング要求を受信(S62)することと、
バイル決済カードに割り当てられたものであり前記選択されたローミング決済ネットワークで動作するデータセット(R-PAN、R-PANID、R-PRM)、該データセット(R-PAN、R-PANID、R-PRM)はいわゆる第2データセット(DT2)である、を取得(S64)することと、
前記選択されたローミング決済ネットワークにおいて前記モバイル決済カードを使用できるように、前記デジタルウォレットアプリケーションを構成するために、前記モバイルデバイスに前記第2データセット(R-PAN、R-PANID、R-PRM)を送信(S66)することと、を備え
前記少なくとも1つのローミング決済ネットワークを決定する前記ステップ(S44)は、特定の場所又はエリアに関連付けられた少なくとも1つの決済ネットワークのリストを格納するデータベース(DB1)を参照することによって行われ、
前記プロビジョニング要求は、ホーム決済ネットワーク内の前記モバイル決済カードの第1識別子(H-PANID)を含み、前記第1識別子は、前記第1データセットの一部であり、
前記第2データセットを取得する前記ステップ(S64)は、
前記モバイル決済カードの前記第1識別子(H-PANID)をホームトークンサービスプロバイダーの第2サーバー(H-TSP)に送信する(S64a)ことと、
前記第2サーバーから、前記ホーム決済ネットワークにおける前記モバイル決済カードのホームトークン(H-PAN)を受信する(S64c)ことと、
第1処理又は第2処理を行うことと、を連続的に含み、
前記第1処理は、
ローミングトークンサービスプロバイダーの第3サーバー(R-TSP)に、前記ホームトークン(H-PAN)を送信する(S64d)ことと、
前記第3サーバーから、前記第2データセットを受信する(S64f)ことと、を連続的に含み、
前記第2処理は、
前記ホームトークン(H-PAN)の受信に応じて、前記第1サーバー(TSO)に前記ホームトークン(H-PAN)に関連付けて既に格納されている前記第2データセットを取得することを含む、方法。
【請求項9】
前記位置情報は、
前記モバイルデバイスの地理的位置を表す地理情報と、
前記モバイルデバイスが接続されている、セルラーネットワーク又はその一部を示す、ネットワーク識別子と、のうち少なくとも1つを備える、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1サーバーは、それぞれのエリアでアクセス可能な少なくとも1つの決済ネットワークを特徴付けるネットワーク情報を格納するデータベースを参照することにより、前記少なくとも1つのローミング決済ネットワークを決定する、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記ローミング情報は、
少なくとも1つのローミングバンクネットワークに関連付けられたパラメーターであって、前記パラメーターは、サービスレートと受け入れエリアの少なくとも1つを定義するパラメーターと、
各ローミング決済ネットワークが前記モバイルデバイスによって選択される優先順位を定義する優先順位情報と、のうち少なくとも1つを含む、請求項8から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2データセットは、第1データセットとは異なる、ここで、前記第1データセットは、前記ローミング決済ネットワークとは異なる前記ホーム決済ネットワークにおいて取引を実行するために、前記第2データセットを送信する前記ステップの前に、前記デジタルウォレットアプリケーションが前記第1データセットで初期構成されるというものである、請求項8から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
記第2データセットは、前記ローミング決済ネットワークにおける前記モバイル決済カードのローミングトークン(R-PAN)と、前記ローミングトークンに関連付けられた第2識別子(R-PANID)と、を含む、請求項8から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2データセットは、
前記選択されたローミングバンキングデバイスで前記モバイル決済カードが使用されていることを示すために、前記デジタルウォレットアプリケーションの視覚的外観を構成するための視覚パラメーターと、
前記モバイル決済カードが前記ローミング決済ネットワークで使用されているときに前記デジタルウォレットアプリケーションと相互作用するために、前記モバイルデバイスにインストールされたローミング決済アプリケーションと、
前記選択されたローミング決済ネットワークにおける、前記モバイル決済カードの有効期限と、のうち少なくとも1つを含む、請求項8から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータープログラムであって、前記プログラムがコンピューターによって実行されるときに、請求項1から14のいずれか1項に記載のステップを実行するための命令を含むコンピュータープログラム。
【請求項16】
デジタルウォレットアプリケーション(DWA)を管理するためのモバイルデバイス(DV)であって、
前記モバイルデバイスの現在位置を表す位置情報(LOC)を含む情報要求を送信するローカリゼーションモジュール(MD2)と、ここで、一方で、前記デジタルウォレットアプリケーションは、ホーム決済ネットワーク(H-NT)で取引を実行するためにモバイル決済カードC1に関連付けられた第1データセット(DT1)で構成される、
前記情報要求に応じて、前記モバイルデバイスの前記現在位置で利用可能な、少なくとも1つの他の決済ネットワーク(R-NT)、該他の決済ネットワーク(R-NT)はいわゆるローミング決済ネットワークである、を識別するローミング情報(RI)を受信するための受信モジュール(MD4)と、
前記ローミング情報に基づいてローミング決済ネットワーク(R-NT)を選択するための選択モジュール(MD6)と、
前記モバイル決済カードに割り当てられたものであり前記選択されたローミングネットワークで動作する第2データセット(DT2)を取得するためのデータ取得モジュール(MD8)と、
前記選択されたローミング決済ネットワークで前記モバイル決済カード(C1)を使用できるように、前記第2データセットで前記デジタルウォレットアプリケーションを構成するための構成モジュール(MD10)と、を備え
前記ローミング情報(RI)は、利用可能なローミング決済ネットワークを特徴付ける情報を含み、
前記第1データセットは、前記ホーム決済ネットワークにおける前記モバイル決済カードの第1識別子(H-PANID)を含み、
前記第2データセット(R-PAN、R-PANID、R-PRM)を前記データ取得モジュール(MD8)によって取得するために、前記モバイルデバイス(DV)は、
第1サーバー(TSO;DWP)に、前記選択されたローミング決済ネットワークのプロビジョニング要求(RQ1)を前記デジタルウォレットアプリケーション(DWA)によって送信することと、ここで、前記プロビジョニング要求は前記第1識別子(H-PANID)を含む、
前記第1サーバー(TSO;DWP)から、前記第2データセット(DT2)を受信することと、を行うように構成され、前記第2データセット(DT2)は、
前記モバイル決済カードに割り当てられたものであり前記選択されたローミングネットワークで動作するローミングトークン(R-PAN)と、
前記ローミングトークン(R-PAN)の識別子(R-PANID)と、を含む、モバイルデバイス。
【請求項17】
デジタルウォレットアプリケーション(DWA)を管理するモバイルデバイス(DV)と連携して処理方法を実装するように構成された第1サーバー(TSO)であって、
前記モバイルデバイスの現在位置を表す位置情報(LOC)を含む情報要求を受信するためのローカリゼーションモジュール(MD20)と、
前記位置情報に基づいて、前記モバイルデバイスによってアクセスされ得る少なくとも1つのローミング決済ネットワークを決定するための決定モジュール(MD22)と、
前記モバイルデバイスに、前記少なくとも1つのローミング決済ネットワークを識別するローミング情報(RI)を送信するための第1送信モジュール(MD24)と、
前記モバイルデバイスから、前記少なくとも1つのローミング決済ネットワークの中から前記モバイルデバイスによって選択されたローミング決済ネットワーク(R-NT)のプロビジョニング要求(RQ1)を受信するための要求処理モジュール(MD26)と、
バイル決済カード(C1)に割り当てられたものであり前記選択されたローミング決済ネットワークで動作するデータセット(DT2)、該データセット(DT2)はいわゆる第2データセットである、を取得するためのプロビジョニングモジュール(MD28)と、
前記選択されたローミング決済ネットワークにおいて前記モバイル決済カード(C1)を使用できるように、前記デジタルウォレットアプリケーション(DWA)を構成するために、前記モバイルデバイスに前記第2データセット(DT2)を送信する第2送信モジュール(MD30)と、を備え
前記決定モジュール(MD22)は、特定の場所又はエリアに関連付けられた少なくとも1つの決済ネットワークのリストを格納するデータベース(DB1)を参照することによって、前記少なくとも1つのローミング決済ネットワークを決定し、
前記プロビジョニング要求は、ホーム決済ネットワーク内の前記モバイル決済カードの第1識別子(H-PANID)を含み、前記第1識別子は、前記第1データセットの一部であり、
前記第2データセットを取得するために、前記第1サーバー(TSO)は、
前記モバイル決済カードの前記第1識別子(H-PANID)をホームトークンサービスプロバイダーの第2サーバー(H-TSP)に送信することと、
前記第2サーバーから、前記ホーム決済ネットワークにおける前記モバイル決済カードのホームトークン(H-PAN)を受信することと、
第1処理又は第2処理を行うことと、を連続的に行うように構成され、
前記第1処理は、
ローミングトークンサービスプロバイダーの第3サーバー(R-TSP)に、前記ホームトークン(H-PAN)を送信することと、
前記第3サーバーから、前記第2データセットを受信することと、を連続的に含み、
前記第2処理は、
前記ホームトークン(H-PAN)の受信に応じて、前記第1サーバー(TSO)に前記ホームトークン(H-PAN)に関連付けて既に格納されている前記第2データセットを取得することを含む、第1サーバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、決済取引等の金融取引を実行するためのモバイルアプリケーションの分野に関する。本開示は、より詳細には、非限定的ではあるが、特定の決済ネットワークにおいて決済取引等の取引をユーザーが実行できるようにするために、モバイルデバイスのデジタルウォレットアプリケーションを管理することに関する。
【背景技術】
【0002】
製品及びサービスの決済は、多くの場合、クレジットカード、デビットカード、又はその他の種類の決済カードを使用して行われる。モバイルウォレットに基づくモバイル決済システムは、ユーザーのモバイルデバイス又はスマートフォンから決済又は購入できるという利便性のために、より人気が高まっている。決済及びサービスプロバイダーは、通常はモバイルデバイスで実行されるモバイルアプリケーション(又はアプレット)を使用して、この機能をユーザーに提供している。このモバイルアプリケーションによれば、ユーザーはクレジットカード発行会社、銀行、又は第三者の決済プロバイダーを通じて決済を行うことができる。
【0003】
モバイルウォレットを使用したモバイル決済では、通常、ユーザーがモバイルデバイスで決済カードの詳細情報を登録する必要がある。モバイルデバイスには、決済カードを使用して決済を行うために使用できるモバイルウォレットが格納されている。モバイルウォレット決済取引では、消費者は、決済カードの詳細情報を販売者のリーダー端末に提供する自身のモバイルデバイスを提示し得る。その後、販売者はこの情報を使用して取引を承認する。
【0004】
今日、モバイル決済カードは、実際の決済カードと同様に、特定の決済ネットワーク(又は銀行ネットワーク)と互換性があるように構成され、該ネットワーク内において金融取引の実行に使用され得る。通常、モバイル決済カードは、カード発行者の仕様に従って国内決済ネットワークで動作するようにデジタルウォレット内で構成されている。この目的のために、ユーザーのデジタルウォレットアプリケーションには、この国内決済ネットワークと互換性のあるカードの詳細情報(識別子、キー、パラメーター等)が提供される。例えば、フランスでは、「バンキングカード」(又はフランス語で「Cartes Bancaires」を表すCB)として知られる決済ネットワークは、フランスの銀行が発行したモバイル決済カードを使用して決済取引を行うために一般的に使用される国内決済ネットワークである。
【0005】
しかし、ローミングユーザーは、偶然的に、自身のモバイル決済カードが動作するように構成されている国内決済ネットワークの範囲外にいる可能性がある。ユーザーにとって、利用可能な決済ネットワークがモバイル決済カードを受け入れない地域でローミングする場合、例えばユーザーの国内エリア外でローミングする場合、決済等の金融取引を実行するのが困難になる場合がある。
【0006】
今日のローミング決済で定着している規格は、VISATM又はMASTERCARDTM決済ネットワーク等のグローバル決済ネットワークの使用である。このようなグローバルネットワークには、カバーする地理的範囲が広いため、エンドユーザーに簡単にアクセスできるローミング決済ソリューションを提供できる利点がある。ただし、現在の決済ネットワークには欠点もあり、ローミング決済にそれらを使用することは必ずしも満足できるものではない。
【0007】
したがって、当技術では、効率的な決済ローミングソリューションが必要である。
【発明の概要】
【0008】
上記のように、異なる地域で(例えば、国を変えて)ローミングしているユーザーは、偶然的に、そのユーザーのモバイル決済カードが動作するように構成されている国内決済ネットワークの範囲外にいる場合がある。したがって、実際の決済カードと同様に、モバイルウォレットは、ローミングの際に国際決済ネットワークでモバイルバンキングカードを使用するように構成されている場合がある。
【0009】
現在、決済ローミングで定着している規格は、VISATM又はMASTERCARDTMによって作動する国際決済ネットワーク等の単一のグローバル決済ネットワークをユーザーが使用するものである。
【0010】
しかし、ローミングユーザーは、決済取引を実行するために国際決済ネットワークを使用することを望まない場合がある。さらに、モバイル決済ソリューションの分野の一部の関係者は、国際的な決済システムではなく、国内の決済システムの展開と使用を促進する傾向がある。
【0011】
本発明は、上記の懸念を改善し、より一般的には、ユーザーがローミング中にモバイル決済カードを使用できるように試みる。本発明は、効率的なローミングモバイル決済ソリューションを提供する。
【0012】
上記の懸念を改善するために、本発明は、ローミング決済を実行するために単一のグローバル決済を使用する、現在定着しているやり方から離れ、代わりに、例えば、互換性のある2つの異なる特許ネットワーク(すなわち、ホーム決済ネットワークとローミング決済ネットワーク)をそれらが互いに連携して決済ローミングできるようにするというような新しいアプローチに基づくソリューションを提供する。
【0013】
今日、国内決済ネットワーク間に相互運用性がないことは、各決済ネットワークの異なる、しばしば互換性のない仕様に起因している。世界的に標準化された決済システムを実施するために世界的に努力しているが、そのようなソリューションができるまでにかなりの時間と努力を必要とするだろう。
【0014】
本発明は、複数の決済ネットワーク間の相互運用性を確立することにより、決済ローミングのための効率的なソリューションを提供し、それにより、今日定着している単一のグローバル決済ネットワークを使用する代わりに、2つ(又はそれよりも多く)の異なる決済ネットワークの組み合わせを通してローミング決済を行うことができるようにする。
【0015】
本発明は、
デジタルウォレットアプリケーションを管理するための、モバイルデバイスによって実装される方法であって、前記デジタルウォレットアプリケーションは、ホーム決済ネットワークにおいて取引を実行するために、モバイル決済カードに関連付けられた第1データセットで初期構成されるものであり、
前記方法は、以下のステップ:
前記モバイルデバイスの現在位置を表す位置情報を含む情報要求を送信することと、
前記情報要求に応じて、前記モバイルデバイスの前記現在位置で利用可能な少なくとも1つの他の決済ネットワーク、該他の決済ネットワークはいわゆるローミング決済ネットワークである、を識別するローミング情報を受信することと、
前記ローミング情報に基づいてローミング決済ネットワークを選択することと、
前記モバイル決済カードに割り当てられたものであり前記選択されたローミングネットワークで動作する、第2データセットを取得することと、
前記選択されたローミング決済ネットワークで前記モバイル決済カードを使用できるように、前記デジタルウォレットアプリケーションを前記第2データセットで構成することと、を備える方法を提供する。
【0016】
特定の実施形態において、前記方法は、構成する前記ステップが完了した後に、前記選択されたローミング決済ネットワークにおいて前記モバイル決済カードを使用して取引(例えば、決済取引)を実行するステップを備える。
【0017】
特定の実施形態において、前記情報要求は、前記モバイルデバイスが前記ホーム決済ネットワークの範囲外でローミングしていることを検出すると送信される。
【0018】
特定の実施形態において、
前記位置情報は、
前記モバイルデバイスの地理的位置を表す地理情報と、
前記モバイルデバイスが接続されている、セルラーネットワーク又はその一部を示す、ネットワーク識別子と、のうちの少なくとも1つを備える。
【0019】
特定の実施形態において、
前記ローミング情報は、
少なくとも1つのローミングバンクネットワークに関連付けられたパラメーターであって、前記パラメーターは、サービスレートと受け入れエリアの少なくとも1つを定義するパラメーターと、
各ローミング決済ネットワークが前記モバイルデバイスによって選択される優先順位を定義する優先順位情報と、のうちの少なくとも1つを含む。
【0020】
特定の実施形態において、
前記第1データセットは、前記ホーム決済ネットワークにおける前記モバイル決済カードの第1識別子を含み、
第2データセットを取得する前記ステップは、
第1サーバーに、前記選択されたローミング決済ネットワークのプロビジョニング要求を送信することと、ここで、前記プロビジョニング要求は前記第1識別子を含む、
前記第1サーバーから、前記第2データセットを受信することと、を含み、前記第2データセットは、
前記モバイル決済カードに割り当てられたものであり前記選択されたローミングネットワークで動作するローミングトークンと、
前記ローミングトークンの識別子と、を含む。
【0021】
特定の実施形態において、前記第1データセットは、プライマリーアカウント番号に対応するものであり前記モバイル決済カードに割り当てられたものであり前記ホーム決済ネットワークで動作するホームトークンを含む。
【0022】
特定の実施形態において、前記方法は、前記情報要求を送信する前記ステップの前に、初期構成するステップを備え、
初期構成する前記ステップにおいて、前記モバイルデバイスは、
前記モバイル決済カードに割り当てられたものであり前記ホーム決済ネットワークで動作する前記プライマリーアカウント番号を取得し、
第1サーバーに前記プライマリーアカウント番号を送信し、
前記プライマリーアカウント番号に応じて、前記第1データセットを受信する。
【0023】
本発明の特定の実施形態において、本発明による前記方法の様々なステップは、コンピュータープログラム命令によって指定される。
【0024】
したがって、本発明は、記録媒体上のコンピュータープログラムであって、該コンピュータープログラムは、モバイルデバイスのような、デバイス、より一般的にはプロセッサーによって実装されるように構成され、該コンピュータープログラムは、上記で定義したデジタルウォレットアプリケーションを管理する方法の実装に適合した命令を備えている、コンピュータープログラムも提供する。
【0025】
本発明はまた、端末又はより一般的にはプロセッサーによって読み取り可能な非一時的な記録媒体であって、上記のコンピュータープログラム命令を記録した記録媒体を提供する。
【0026】
本発明はまた、
デジタルウォレットアプリケーションを管理するモバイルデバイスと連携して第1サーバーによって実装される処理方法に関し、
前記方法は、以下のステップ:
前記モバイルデバイスの現在位置を表す位置情報を含む情報要求を受信することと、
前記位置情報に基づいて、前記モバイルデバイスによってアクセスされ得る少なくとも1つのローミング決済ネットワークを決定することと、
前記モバイルデバイスに、前記少なくとも1つのローミング決済ネットワークを識別するローミング情報を送信することと、
前記モバイルデバイスから、前記少なくとも1つのローミング決済ネットワークの中から前記モバイルデバイスによって選択されたローミング決済ネットワークのプロビジョニング要求を受信することと、
前記モバイル決済カードに割り当てられたものであり前記選択されたローミング決済ネットワークで動作するデータセット、該データセットはいわゆる第2データセットである、を取得することと、
前記選択されたローミング決済ネットワークにおいて前記モバイル決済カードを使用できるように、前記デジタルウォレットアプリケーションを構成するために、前記モバイルデバイスに前記第2データセットを送信することと、を備える。
【0027】
特定の実施形態において、
前記位置情報は、
前記モバイルデバイスの地理的位置を表す地理情報と、
前記モバイルデバイスが接続されている、セルラーネットワーク又はその一部を示す、ネットワーク識別子と、のうち少なくとも1つを備える。
【0028】
特定の実施形態において、前記第1サーバーは、それぞれのエリアでアクセス可能な少なくとも1つの決済ネットワークを特徴付けるネットワーク情報を格納するデータベースを参照することにより、前記少なくとも1つのローミング決済ネットワークを決定する。
【0029】
特定の実施形態において、
前記ローミング情報は、
少なくとも1つのローミングバンクネットワークに関連付けられたパラメーターであって、前記パラメーターは、サービスレートと受け入れエリアの少なくとも1つを定義するパラメーターと、
各ローミング決済ネットワークが前記モバイルデバイスによって選択される優先順位を定義する優先順位情報と、のうち少なくとも1つを含む。
【0030】
特定の実施形態において、前記第2データセットは、第1データセットとは異なる、ここで、前記第1データセットは、前記ローミング決済ネットワークとは異なるホーム決済ネットワークにおいて取引を実行するために、前記第2データセットを送信する前記ステップの前に、前記デジタルウォレットアプリケーションが前記第1データセットで初期構成されるというものである。
【0031】
特定の実施形態において、
前記プロビジョニング要求は、前記ホーム決済ネットワーク内の前記モバイル決済カードの第1識別子を含み、前記第1識別子は、前記第1データセットの一部であり、
前記第2データセットは、前記ローミング決済ネットワークにおける前記モバイル決済カードのローミングトークンと、前記ローミングトークンに関連付けられた第2識別子と、を含む。
【0032】
特定の実施形態において、
前記第2データセットを取得する前記ステップは、
前記モバイル決済カードの前記第1識別子をホームトークンサービスプロバイダーの第2サーバーに送信することと、
前記第2サーバーから、前記ホーム決済ネットワークにおける前記モバイル決済カードのホームトークンを受信することと、
ローミングトークンサービスプロバイダーの第3サーバーに、前記ホームトークンを送信することと、
前記第3サーバーから、前記第2データセットを受信することと、を連続的に含む。
【0033】
特定の実施形態において、
前記第2データセットは、
前記選択されたローミングバンキングデバイスで前記モバイル決済カードが使用されていることを示すために、前記デジタルウォレットアプリケーションの視覚的外観を構成するための視覚パラメーターと、
前記モバイル決済カードが前記ローミング決済ネットワークで使用されているときに前記デジタルウォレットアプリケーションと相互作用するために、前記モバイルデバイスにインストールされたローミング決済アプリケーションと、
前記選択されたローミング決済ネットワークにおける、前記モバイル決済カードの有効期限と、のうち少なくとも1つを含む。
【0034】
本発明の特定の実施形態において、本発明による処理方法の様々なステップは、コンピュータープログラム命令によって指定される。
【0035】
したがって、本発明は、記録媒体上のコンピュータープログラムであって、該コンピュータープログラムは、サーバー、より一般的にはプロセッサーによって実装されるように構成され、該コンピュータープログラムは、上記で定義した処理方法の実装に適合した命令を備えている、コンピュータープログラムも提供する。
【0036】
本発明はまた、サーバー又はより一般的にはプロセッサーによって読み取り可能な非一時的な記録媒体であって、上記のコンピュータープログラム命令を記録した記録媒体を提供する。
【0037】
上記の様々なコンピュータープログラムは、任意のプログラミング言語で表現でき得るものであり、ソースコードの形式であってもよく、オブジェクトコードの形式であってもよく、例えば部分的にコンパイルされた形式のようなソースコードとオブジェクトコード間の中間コードの形式であってもよく、又は他の適切な形式であってもよい。
【0038】
さらに、前述の記録媒体は、コンピュータープログラムを格納できるエンティティ又はデバイス等の、任意の非一時的なコンピューターが読み取り可能な媒体であり得る。例えば、記録媒体は、ROMメモリ(CD-ROM又は超小型電子回路に実装されたROM)等の記憶手段、又は例えばフロッピーディスク又はハードディスク等の磁気記憶手段を備えていてもよい。
【0039】
さらに、前述の各記録媒体は、電気ケーブル又は光ケーブルを介して、又は無線又は他の適切な手段によって伝達し得る電気信号又は光信号等の伝送可能媒体に対応していてもよい。本発明によるコンピュータープログラムは、具体的にはインターネット又は同様のネットワークからダウンロードされてもよい。
【0040】
あるいは、記録媒体は、コンピュータープログラムがロードされる集積回路であって、本発明の方法を実行することに適合されているか又は本発明の方法の実行に使用されることに適合されている集積回路に対応していてもよい。
【0041】
本発明は、デジタルウォレットアプリケーションを管理するためのモバイルデバイスにも関し、
前記モバイルデバイスの現在位置を表す位置情報を含む情報要求を送信するローカリゼーションモジュールと、ここで、一方で、前記デジタルウォレットアプリケーションは、ホーム決済ネットワークで取引を実行するためにモバイル決済カードに関連付けられた第1データセットで構成される、
前記情報要求に応じて、前記モバイルデバイスの前記現在位置で利用可能な、少なくとも1つの他の決済ネットワーク、該他の決済ネットワークはいわゆるローミング決済ネットワークである、を識別するローミング情報を受信するための受信モジュールと、
前記ローミング情報に基づいてローミング決済ネットワークを選択するための選択モジュールと、
前記モバイル決済カードに割り当てられたものであり前記選択されたローミングネットワークで動作する第2データセットを取得するためのデータ取得モジュールと、
前記選択されたローミング決済ネットワークで前記モバイル決済カードを使用できるように、前記第2データセットで前記デジタルウォレットアプリケーションを構成するための構成モジュールと、を備える。
【0042】
さらに、本発明はサーバーに関し、
該サーバーはいわゆる第1サーバーであって、
デジタルウォレットアプリケーションを管理するモバイルデバイスと連携して処理方法を実装するように構成され、
前記モバイルデバイスの現在位置を表す位置情報を含む情報要求を受信するためのローカリゼーションモジュールと、
前記位置情報に基づいて、前記モバイルデバイスによってアクセスされ得る少なくとも1つのローミング決済ネットワークを決定するための決定モジュールと、
前記モバイルデバイスに、前記少なくとも1つのローミング決済ネットワークを識別するローミング情報を送信するための第1送信モジュールと、
前記モバイルデバイスから、前記少なくとも1つのローミング決済ネットワークの中から前記モバイルデバイスによって選択されたローミング決済ネットワークのプロビジョニング要求を受信するための要求処理モジュールと、
前記モバイル決済カードに割り当てられたものであり前記選択されたローミング決済ネットワークで動作するデータセット、該データセットはいわゆる第2データセットである、を取得するためのプロビジョニングモジュールと、
前記選択されたローミング決済ネットワークにおいて前記モバイル決済カードを使用できるように、前記デジタルウォレットアプリケーションを構成するために、前記モバイルデバイスに前記第2データセットを送信する第2送信モジュールと、を備える。
【0043】
方法に関して上記で定義された特定の実施形態は、同様の態様で本発明のモバイルデバイスに及び第1サーバーに適用される。
【0044】
前述した方法の様々なステップを実行するために本開示において機能モジュールが参照される場合、これらのモジュールはハードウェア、ソフトウェア、又はそれら2つの組み合わせで実装されていてもよいことを理解されたい。ハードウェアで実装される場合、モジュールは、1つ又は複数の特定用途向け集積回路等の1つ又は複数のハードウェアモジュールとして実装されていてもよい。ソフトウェアで実装される場合、モジュールは、1つ又は複数のプロセッサーで実行される1つ又は複数のコンピュータープログラムとして実装されていてもよい。
【0045】
本開示に記載されている技術エンティティによって実行され得る各ステップは、特定の機能モジュールに対応していてもよい。所定の機能モジュールは、複数のステップを実行するように構成されていてもよい。
【0046】
本発明は、効率的なローミングモバイル決済ソリューションを提供する。具体的には、本発明は、ユーザーが自身のモバイルデバイスを使用してアクセスできる複数の決済ネットワークでの、モバイル決済カードに関する効率的な相互運用性を実現する。
【0047】
前述のように、異なる地域で(例えば、国を変えて)ローミングしているユーザーは、偶然的に、そのユーザーのモバイル決済カードが動作するように構成されている国内決済ネットワークの範囲外にいる場合がある。本発明は、所定のローミング決済ネットワークでローミング状態にある間にモバイル決済カードを使用できるようにデジタルウォレットアプリケーションを構成することを可能にする。本発明のおかげで、ローミング決済システムで取引を行うことができるように、デジタルウォレットアプリケーションの構成を動的に調整可能である。
【0048】
本発明は、例えば、国際的な決済ネットワークの必要性を取り除く。ユーザーが自身の国内(又は地域)決済ネットワークの外でローミングしている場合、モバイルバンク取引は別の国内(又は地域)決済ネットワークで良好に実行される。本発明は、国際的な決済ネットワークの使用はもはや必要とされないような、異なる仕様を有する別個の決済システム間の適切な相互運用性を確保することができる。国内の銀行スキームは、他の銀行スキームとのローミング契約を通じて国際的に受け入れられ得る。例えば、標準的な共同バッジの双方向接続とホスト間の統合についての契約が締結され得る(Standard co-badge bi-lateral contacts and host-to-host integrations can for instance be signed)。
【0049】
本発明により、モバイルデバイスは、モバイルデバイスの位置に応じてデジタルウォレットアプリケーションを自動的に構成することができる。デジタルウォレットアプリケーションのパラメーター及び視覚的側面(ロゴ、外観等)は、ローミングの再構成をユーザーに通知するように適宜調整され得る。具体的には、必要に応じてカード画像、ロゴ、及び/又は色を調製することができる。
【0050】
本開示は、決して限定的ではないが、添付の図面を参照して、以下の実施形態及び実施例によってよりよく理解され、示されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1図1は、本発明の特定の実施形態による、モバイルデバイスと、ホームトークンサービスプロバイダーのサーバーと、を備える環境の構造及びその環境によって実行されるステップを表す概略図である。
図2図2は、本発明の特定の実施形態による、モバイルデバイスを備える環境の構造及びその環境によって実行されるステップを表す概略図である。
図3図3は、本発明の特定の実施形態による、モバイルデバイスと、トークンサービスオペレーターのサーバーと、を備える環境の構造及びその環境によって実行されるステップを表す概略図である。
図4A図4Aは、本発明の特定の実施形態によるモバイルデバイスの構造を示す。
図4B図4Bは、本発明の特定の実施形態による、図4Aのモバイルデバイスによって実装される機能モジュールを示す。
図5A図5Aは、本発明の特定の実施形態による、トークンサービスオペレーターのサーバーの構造を示す。
図5B図5Bは、本発明の特定の実施形態による、図5Aのサーバーにより実装される機能モジュールを示す。
図6図6は、本発明の特定の実施形態による、モバイルデバイスと、トークンサービスオペレーターのサーバーと、を備える環境の構造及びその環境によって実行されるステップを表す概略図である。
図7図7は、本発明の特定の実施形態による、取引を実行するモバイルデバイスを備える環境の構造及びその環境によって実行されるステップを表す概略図である。
図8図8は、図7のその他の実施形態を表す概略図である。
図9A図9Aは、本発明の特定の実施形態による、ローミングトークンサービスプロバイダーのサーバーの構造を示す。
図9B図9Bは、本発明の特定の実施形態による、図9Aのサーバーにより実装される機能モジュールを示す。
図10A図10Aは、本発明の特定の実施形態による、ホームトークンサービスプロバイダーのサーバーの構造を示す。
図10B図10Bは、本発明の特定の実施形態による、図10Aのサーバーにより実装される機能モジュールを示す。
図11図11は、本発明の特定の実施形態を表す概略図である。
図12図12は、本発明の特定の実施形態を表す概略図である。
図13図13は、本発明の特定の実施形態を表す概略図である。
図14図14は、本発明の特定の実施形態を表す概略図である。
図15図15は、本発明の特定の実施形態を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1~15では、表されているブロックの一部は純粋に機能的なエンティティであり、必ずしも物理的に別個のエンティティに対応しているわけではない。すなわち、それらはソフトウェア、ハードウェアの形で開発されるか、又は1つ若しくは複数のプロセッサーを備える、1つ若しくは複数の集積回路に実装されるか、の場合がある。
【0053】
説明を簡単かつ明確にするために、別段の指示がない限り、同じ又は対応する要素を指す場合は、図面全体にわたって同じ参照番号を使用する。
【0054】
図中の構成要素は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに本発明の原理を説明することに重点が置かれている。
【0055】
本発明の特定の実施形態の説明
本開示は多くの異なる形態の実施形態が可能であるが、本開示は、本開示の原理の1つの例示と見なされるべきであり、本開示を例示された特定の実施形態に限定することは意図されるべきではないという理解の下で、図面に示され、本明細書で特定の実施形態を詳細に説明される。代わりに、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0056】
本発明の多くの特定の詳細は、以下の説明及び図1~10Bに記載されている。しかし、当業者は、本発明が追加の実施形態を有し得ること、又は本発明が以下の説明に記載されるいくつかの詳細なしで実施され得ることと、を理解するであろう。他の例では、そこに記載されている実施形態を不明瞭にすることを避けるために、周知の方法、手順、及び構成は詳細には記載されていない。
【0057】
本発明は、モバイル決済カードを使用して効率的な態様で取引を実行できるようにするモバイルデバイス、サーバー、システム、及び対応する方法を提供する。より具体的には、本発明は、モバイルデバイス内にモバイル決済カードを備えたデジタルウォレットを使用したローミング決済取引を可能にする。本発明は、複数の決済システム間の効率的な相互運用性であって国内又は地域の決済ネットワーク等の異なる決済ネットワークで同じモバイル決済カードを容易に使用できるという態様の相互運用性を可能にすることを目的としている。
【0058】
図1は、本発明の特定の実施形態による、モバイルデバイスDVと、デジタルウォレットプロバイダーサーバーDWPと、ホームトークンサービスプロバイダーのサーバーH-TSPと、リーダー端末Tと、を備える環境を示す。
【0059】
モバイルデバイスDVは、決済ネットワークで決済取引を実行するためにユーザーURによって使用され得る。この目的のために、モバイルデバイスDVは、モバイル決済を実行するためにモバイル決済カードのデータを使用できるデジタルウォレットアプリケーション(又はアプレット)DWAを実装している。図1に示す初期状態では、デジタルウォレットアプリケーションDWAは、モバイル決済カードC1に関連付けられた第1データセットDT1で構成されている。このデジタルウォレットアプリケーションは、モバイルデバイスDVに格納されているデータDT1を取得及び使用して、ホーム決済ネットワークH-NT(又はホーム決済システム)で取引を実行できる。
【0060】
モバイル決済カードC1は、モバイルデバイスDVの画面に表示できる仮想(又はデジタル)カードであり、非実体化形式で使用して、決済取引等の金融取引を完了することができる。
【0061】
本文書では、実施形態を決済取引の文脈で説明するが、本発明は、それに限定されず、より一般的には、あらゆる種類のモバイルバンキング(又は金融)取引に適用される。
【0062】
モバイルデバイスDVは、デジタルウォレットアプリケーションDWAを管理するための処理リソースを備えたスマートフォン、タブレット、又は任意の適切なモバイル通信デバイスであってもよい。本文書で検討される例示的な実施形態では、モバイルデバイスはスマートフォン又はそれと同等の装置である。このスマートフォンは、SIMカード等に格納されている認証データを使用して、セルラーネットワークで通信できる。
【0063】
図1に示すように、モバイルデバイスDVは、モバイル決済カードC1に関する操作(構成、決済取引等)を実行するために、デジタルウォレットアプリケーションDWAと連携して使用できる決済アプリケーションPA1を実装し得る。
【0064】
図1は、本発明の特定の実施形態において、モバイル決済カードC1に対応するデータセットDT1で、デジタルウォレットアプリケーションDWAを初期構成する方法を示している。
【0065】
ステップS2において、モバイルデバイスDVは、プライマリーアカウント番号(又は決済カード番号)PANを取得する。プライマリーアカウント番号PANは、C-PANと表記されるものであり、モバイル決済カードC1に割り当てられたものであり、ホーム決済ネットワークH-NTで動作するものである。プライマリーアカウント番号は、決済カードの周知の識別子であり、決済カード番号とも呼ばれることがある。この番号は、カードの発行者を識別する。このプライマリーアカウント番号(又は識別子)C-PANは、ステップS2でデジタルウォレットアプリケーションDWAによって取得され得るように、モバイルデバイスDVに格納され得る。
【0066】
次に、モバイルデバイスDVは、デジタルウォレットアプリケーションDWAの制御下で、C-PANをデジタルウォレットサービスプロバイダーのサーバーDWPに送信する(S2)。
【0067】
サーバーDWPは、決済カードのアカウント番号C-PANをホームトークンサービスプロバイダーのサーバーH-TSPに送信する(S6)。このサーバーH-TSPは、PAN番号の置換に使用されるデジタルトークンをカード所有者に提供する役割を担っている。PANは機密データであるため、セキュリティの観点から、その拡散は制限されるべきである。
【0068】
アカウント番号C-PANに応答して、サーバーH-TSPは、第1データセットDT1を返し(S6)、データセットDT1は、サーバーDWPによって受信され、モバイルデバイスDVに転送される(S8)。データセットDT1は、ホームトークンH-PANを含む。ホームトークンH-PANは、モバイル決済カードC1に割り当てられたものであり、ホーム決済ネットワークH-NTで動作するものである。第1データセットDT1は、ホームトークンH-PANに対応する識別子H-PANID等の追加のデータを備えていてもよい。
【0069】
さらに、サーバーH-TSPは、デジタルウォレットアプリケーションDWAから受信したアカウント番号C-PANに関連付けて、例えばデータベースに、ホームトークンH-PANを格納する(S5)。
【0070】
ホームトークンH-PANは、任意の適切なデジタル形式(コード、文字列等)を取ることができるが、プライマリーアカウント番号C-PANよりも機密性の低いデータである。ホームトークンH-PANは、特定のデバイス及び指定された取引環境のみに使用が制限され得る(いわゆる取引ドメイン制限)。ホームトークンH-PANは、アカウント番号C-PANの代わりにデジタルウォレットアプリケーションDWAにより使用され得るため、より安全な決済システムが可能になる。
【0071】
ステップS10において、モバイルデバイスDVは、ホーム決済ネットワークH-NTで決済取引を実行できるようにするために、受信した第1データセットDT1でデジタルウォレットアプリケーションDWAを構成する。この構成の一部として、モバイルデバイスDVは、サーバーH-TSPによって提供される第1データセットDT1に含まれる視覚パラメーターで、デジタルウォレットアプリケーションDWAのグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)の視覚的側面(カード画像、ロゴ、色等)を個人化してもよい。
【0072】
加えて、モバイルデバイスDVは、デジタルウォレットアプリケーションDWAによる後の取得のためにデータセットDT1を格納する(S10)。
【0073】
この初期構成が完了すると、ユーザーURは、モバイルデバイスDVで実行されるデジタルウォレットアプリケーションDWAを使用して、ホーム決済ネットワークH-NTでの決済取引を完了することができる。この目的のために、ユーザーURは、図1に示すように、販売者の決済端末Tの近くにモバイルデバイスDVを提示し得る。モバイルデバイスDVは、モバイル決済を実行するために任意の適切な態様で決済端末Tと連携(S12)し得る。具体的には、モバイルデバイスDVは、端末Tによって取引を認証できるように、第1データセットDT1、又は少なくともホームトークンH-PANを送信する。前述のように、ホームトークンH-PANを代わりに使用することで、機密性の高いプライマリーアカウント番号C-PANの送信を回避できる。
【0074】
図2は、本発明の特定の実施形態に従って、ホーム決済ネットワークH-NTで、モバイル決済カードC1を使用してモバイルデバイスDVが決済取引を実行する方法を示す。
【0075】
ステップS12において、モバイルデバイスDVは、図1に関して既に上述したように、ホームトークンH-PANを決済端末Tに送信する。第1データセットDTに含まれる他の情報、例えば決済カードC1の有効期限等、をともに端末Tに送信できる。
【0076】
特定の例では、モバイルデバイスDVと決済端末Tは、決済取引を実行するために、EMV規格(「ユーロペイ、マスターカード、及びビザ」)に従って、又はEMVから派生したものであってもよく派生していないものであってもよい独自開発されたもの(proprietary)に従って、互いに連携(又は相互作用)する。これは、例えばNFCインターフェース等(ブルートゥース等)を使用した、モバイルデバイスDVと端末Tとの間の非接触通信を通じて行うことができる。
【0077】
この相互作用S12の間に、デジタルウォレットアプリケーションDWAは、決済モバイルカードC1の発行銀行によって展開された決済アプリケーションPA1と相互作用し得る。
【0078】
次に、例えば販売者の販売地点に配置された決済端末Tは、取引データDR1を取得者(例えば、販売者の銀行)の銀行システムACに送信する(S22)。取引データDR1は、認証、有効化等のさらなる処理を可能にするための決済取引を特徴付ける任意のデータ(日付、取引量等)を含む。特に、取引データDR1は、モバイルデバイスDVのデジタルウォレットアプリケーションDWAによって提供されるホームトークンH-PANを含む。
【0079】
ステップS24において、取得者の銀行システムACは、取引データDR1をホーム決済ネットワークH-NTのルーティングサーバーH-SVに送信する。このサーバーH-SVは、ホームトークンサービスプロバイダーのサーバーH-TSPにホームトークンH-PANを転送する(S26)。
【0080】
次に、サーバーH-TSPは、S26で受信したホームトークンH-PANに関連付けて格納されているプライマリーアカウント番号C-PAN(図1のS5を参照)を決定し(S27)、サーバーH-SVにこのアカウント番号C-PANを返す(S28)。
【0081】
ステップS30において、サーバーH-SVは、発行者の銀行システムISに、取引データDR1で先に受信され得る他の有用な情報(金額、日付等)とともにプライマリーアカウント番号C-PANを転送する。次に、例えばモバイル決済カードC1の発行銀行である発行者ISは、プライマリーアカウント番号C-PAN、プライマリーアカウント番号C-PANはモバイル決済カードC1に割り当てられたものでありホーム決済ネットワークH-NTで動作するものである、に基づいて決済取引を処理し得る。
【0082】
上述のように、ホーム決済ネットワークH-NT、より具体的にはサーバーH-TSPは、トークン解除処理を可能にし、それによりデジタルトークンからPAN識別子を取得することを可能にする。
【0083】
この例では、図2に示すように、取得者の銀行システムAC、サーバーH-SV及びサーバーH-TSP、並びに発行者の銀行システムISはすべて、ホーム決済ネットワークH-NTの一部である。
【0084】
デジタルウォレットアプリケーションDWAにプロビジョンされた(provisioned)第1データセットDT1のおかげで、ユーザーURはホーム決済システムでモバイル決済カードC1を使用できる。この文脈での「ホーム」という用語は、モバイル決済カードC1のデータを使用して決済取引を実行するために、デジタルウォレットアプリケーションDWAとの間に最初に互換性がある決済ネットワーク又はシステムを指す規則として使用されているに過ぎない。通常、モバイル決済カードの発行者が、カードの1つ又は複数のホーム決済システムに対応する1つ又は複数の決済システムを定義する。
【0085】
しかし、両方のデバイスが互換性のある態様で構成されている場合にのみ、モバイルデバイスDVと決済端末Tの間で取引を実行できることに注意する必要がある。言い換えれば、決済端末Tもホーム決済ネットワークH-NTで動作するように構成されている場合にのみ、取引を正常に処理できる。決済端末Tが異なる決済ネットワークの一部であり、その仕様がホーム決済ネットワークの仕様と互換性がない場合、取引は失敗する。これは、例えば、モバイルデバイスDVがホーム決済ネットワークH-NTの外部でローミングしている際に、モバイル決済デバイスC1を使用してローミングモバイル決済が試行される場合に発生する可能性がある。
【0086】
例えば、モバイルデバイスDVがローミングしており、デジタルウォレットアプリケーションDWAが、デジタルウォレットアプリケーションDWAの現在の構成と互換性のないローミング決済ネットワークに接続された決済端末との取引を試みる場合、取引は失敗する。
【0087】
本発明の目的は、これらの問題を克服することである。
【0088】
図3は、本発明の特定の実施形態に従って、図1及び2に関して上述したようなモバイルデバイスDV及びデジタルウォレットサーバーDWPを含む環境を、データベースDB1にアクセスできるトークンサービスオペレーターのサーバーTSOとともに示す。
【0089】
本発明の特定の実施形態による、モバイルデバイスDVの詳細な実装例については、図4A及び4Bで後述する。同様に、本発明の特定の実施形態によるサーバーTSOの詳細な実装例については、図5A及び5Bで後述する。
【0090】
図3に示すように、モバイルデバイスDVがホーム決済ネットワークH-NTの範囲外にあるように、ユーザーURがローミングしていると仮定する。図3は、デジタルウォレットアプリケーションDWAが、ホーム決済ネットワークH-NT以外のローミング決済ネットワークであってアクセスされて決済取引を実行し得るものを検出する方法を示している。
【0091】
ステップS40において、モバイルデバイスDVは、モバイルデバイスDVの現在位置を表す位置情報LOCを含む情報要求を送信する。本例では、この情報要求の送信S40は、デジタルウォレットアプリケーションDWAによって指令される。
【0092】
特定の例では、デジタルウォレットアプリケーションDWAは、モバイルデバイスDVがホーム決済ネットワークH-NTの外部(すなわち範囲外)でローミングしていることを検出すると、この情報要求の送信を始動する(triggers)。例えば、カード所有者URはローミングエリア(又は国)、つまり、ホーム決済ネットワークH-NTにアクセスできる所定のエリア以外のエリア(又は国)でローミングしている。
【0093】
特定の例において、デジタルウォレットアプリケーションDWAは、モバイルデバイスDVが所定のホームセルラーネットワーク以外のセルラーネットワークでローミングしていることを検出すると、この情報要求の送信(S40)を始動する。この目的のために、デジタルウォレットアプリケーションDWAは、モバイルデバイスDVが接続されているセルラーネットワークを監視し得る。例えば、ユーザーURが海外でローミングしているとき、モバイルデバイスDVは、ホームセルラーネットワークとは異なるローミングセルラーネットワークに接続する場合がある。このローミングセルラーネットワークの識別子に基づいて、モバイルデバイスDV(又はより具体的にはデジタルウォレットアプリケーションDWA)は、ホーム決済ネットワークにアクセスできなくなったと判断し、情報要求の送信(S40)を始動し得る。
【0094】
特定の例において、デジタルウォレットアプリケーションDWAは、モバイルデバイスDVが所定の地理的エリア、ホームエリアと表記する、の外にあることを検出すると、情報要求の送信(S40)を始動する。この目的のために、デジタルウォレットアプリケーションDWAは、例えば、図4A及び4Bで後述するローカリゼーションモジュール14を使用して、モバイルデバイスDVの地理的位置を監視し得る。例えば、モバイルデバイスDVがドイツでローミングしていること、つまりホームエリアとして事前定義されているフランス国外であることが検出されると、デジタルウォレットアプリケーションDWAは、ホーム決済ネットワークにアクセスできなくなったと判断し、情報要求の送信を始動する(S40)。
【0095】
前述のように、情報要求は、モバイルデバイスDVの現在位置を表す位置情報LOCを備える。位置情報は、次の少なくとも1つを備えていてもよい。
-モバイルデバイスDVの地理的位置を表す地理情報(GPS座標、国、地域、都市等)、そして、
-モバイルデバイスDVが接続されているセルラーネットワーク又はその一部を示すネットワーク識別子。
【0096】
位置情報LOCによって表される現在の位置は、モバイルデバイスDVによって検出された最後の既知の位置であってもよい。
【0097】
デジタルウォレットアプリケーションDWAは、モバイルデバイスDVの地理的位置又はネットワーク位置を監視し、それを事前定義された位置基準と比較できる。比較結果に基づいて、デジタルウォールアプリケーションDWAは、位置情報LOCを含む情報要求をS40で送信する必要があるかどうかを判断する。
【0098】
本例では、モバイルデバイスDVは、情報要求をデジタルウォレットサーバーDWPに送信し(S40)、次に、デジタルウォレットサーバーDWPはトークンサーバーオペレーターのサーバーTSOにそれを転送する(S42)。そこに記載されている実施形態でわかるように、サーバーTSOは、デジタルウォレットアプリケーションDWAに提供され、後の決済取引で使用されるトークンの処理を担当する。
【0099】
ステップS44において、サーバーTSOは、位置情報LOCに基づいて、モバイルデバイスDV、より具体的にはデジタルウォレットアプリケーションDWAによって使用又はアクセスされ得る少なくとも1つのローミング決済ネットワークを決定する。言い換えれば、サーバーTSOは、位置情報LOCに対応する位置でローミング中に決済取引を実行するために、ユーザーが利用可能な1つ又は複数のローミング決済ネットワークを決定する。これを行うために、サーバーTSOは、特定の場所又はエリアに関連付けられた少なくとも1つの決済ネットワークのリストを格納するデータベースDB1を参照してもよい。上述のように、モバイルデバイスの位置は、セルラーネットワークレベル及び/又は地理的レベルで定義されていてもよい。データベースDB1は、それぞれのエリアでアクセス可能な少なくとも1つの決済ネットワークを特徴付けるネットワーク情報を格納していてもよい。
【0100】
本実施形態によれば、世界中の銀行と決済スキームの運営者との間で特定のローミング契約を結んでもよい。国内のスキームは、以下でより明らかになるように、共同バッジの双方向接続とホスト間の統合についての契約を締結することにより、他のスキームとのローミング契約を通じて国際的に受け入れられ得る。
【0101】
この例では、サーバーTSOが、決済取引の目的でデジタルウォレットアプリケーションによって潜在的に使用できる3つのローミング決済ネットワークを識別する(S44)ということが想定されている。したがって、サーバーTSOは、デジタルウォレットサーバーDWPにローミング情報RIを送り返し(S46)、このローミング情報RIは、S44で利用可能であると識別された複数のローミング決済ネットワークを識別する。この事例では、ローミング情報は、サーバーTSOによって識別された3つのそれぞれのローミング決済ネットワークの識別子ID1、ID2及びID3を含む。
【0102】
ステップS48において、デジタルウォレットサーバーDWPは、モバイルデバイスDVにローミング情報RIを転送する。
【0103】
次に、ローミング情報RIに基づいて、デジタルウォレットアプリケーションDWAは、サーバーTSOによって識別された3つの選択可能な選択肢ID1~ID3の中から、1つのローミング決済ネットワーク(又はローミング決済システム)、R-NTと表記する、を選択する(S50)。サーバーTSOによって提供されるローミング情報RIは、識別子ID1~ID3に加えて、ローミング決済ネットワークを選択する処理においてデジタルウォレットアプリケーションDWAを支援し得る他の情報を含んでいてもよい。
【0104】
この事例では、デジタルウォレットアプリケーションDWAによって選択(S50)されたローミング決済ネットワークR-NTは、初期に動作するように構成されたホーム決済ネットワークH-NTとは異なる。
【0105】
特定の例では、ローミング情報RIは、交換レート(料金体系)、パラメーター等、利用可能なローミング決済ネットワークを特徴付ける様々な情報を含む。
【0106】
特定の例では、ローミング情報には次の少なくとも1つが含まれる。
-少なくとも1つのローミングバンクネットワークに関連付けられたパラメーター。当該パラメーターは、サービスレートと受け入れエリアの少なくとも1つを定義する。そして、
-各ローミング決済ネットワークがモバイルデバイスDVによって選択される優先順位を定義する優先順位情報。
【0107】
本例では、ローミング情報RIは、デジタルウォレットアプリケーションDWAによって優先的に選択されるネットワークとしてローミング決済ネットワークR-NTを定義する優先情報を含む。優先情報は、複数のローミング決済ネットワークからR-NTが選択されることになる優先順位を定義し得る。ローミング情報RIでは、日付、行われる取引の種類等のような基準に基づいて、複数の優先値を、利用可能な各ローミング決済ネットワークに割り当ててもよい。
【0108】
本発明では、デジタルウォレットアプリケーションDWAによってローミング決済ネットワークが選択される方法は、様々な要因に応じて時間とともに動的に調整され得る。具体的には、データベースDB1を定期的に更新して、特定の位置のデジタルウォレットアプリケーションの選択肢として提示されるローミング決済ネットワークを変更することができる。デジタルウォレットアプリケーションDWAがその選択S50を行う基準も、時間の経過とともに調整されてもよい。
【0109】
選択S50は完全に自動であってもよいし、ユーザーURによる確認を必要としてもよい。
【0110】
特定の例では、ローミング情報RIは単一のローミング決済ネットワークのみを識別する。
【0111】
さらに、サーバーTSOは、複数のローミング決済ネットワークの候補の中からユーザーURが利用可能なローミング決済ネットワークの事前選択を実行するように構成されていてもよい。この事前選択は、モバイルデバイスDV又はユーザーの識別子に基づいて行うことができる。
【0112】
特定の例では、デジタルウォレットアプリケーションDWAは、ステップS40で位置情報LOCとともにホームトークンH-PANを送信するようモバイルデバイスDVに指令する(図3)。ホームトークンH-PAN及び位置情報LOCは、デジタルウォレットサーバーDWPによってサーバーTSOに転送される(S42)。ステップS44において、サーバーTSOは、位置情報LOC及びホームトークンH-PANを考慮して、モバイルデバイスDV、より具体的にはデジタルウォレットアプリケーションDWAによって使用又はアクセスされ得る少なくとも1つのローミング決済ネットワークを決定する。ホームトークンH-PANにより、サーバーTSOは、ユーザーURが自身のモバイル決済カードC1によりアクセスして使用することを許可されているローミング決済ネットワークを確認できる。特定の例では、サーバーTSOは、特定の場所の既存の決済ネットワークごとに、該決済ネットワークへのアクセスがモバイル決済カードC1のユーザーURに対して許可されているかどうかを示すデータベースDB1を参照することができる。次に、サーバーTSOは、ローミング情報RIで、ユーザーがアクセスを許可されている既存の1つ又は複数のローミング決済ネットワークのみを識別する(S46、図3)。変形形態では、例えばMAC識別子等のモバイルデバイスDVの識別子は、モバイルデバイスDVによって送信され(S40)、ホームトークンH-PANの代わりにローミング決済ネットワーク選択基準として使用される(S44)。
【0113】
本実施形態で上述したように、モバイルデバイスDVは、デジタルウォレットサーバーDWPに位置情報LOCを含む情報要求を送信し(S40)、デジタルウォレットサーバーDWPはそれをサーバーTSOに転送する。しかしながら、他の実施形態も可能である。
【0114】
変形形態では、モバイルデバイスDVは、デジタルウォレットサーバーDWPを経由せずに、サーバーTSOに情報要求を直接送信する。この事例では、デジタルウォレットアプリケーションDWAは、モバイルデバイスDV内の決済アプリケーションPA1と連携し得る。サーバーH-TSPは、モバイルデバイスDVとサーバーTSOとの間のルーティングインターフェースとして機能できる。別の変形形態では、トークンサービスオペレーター由来のTSOモバイルアプリケーション(図示せず)は、モバイルデバイスDVに実装され、デジタルウォレットアプリケーションDWAと連携し得る。この事例では、このTSOモバイルアプリケーションにより、モバイルデバイスDVはサーバーTSOと直接対話して、情報要求を送信(S40)し、返ってくるローミング情報RIを受信(S48)することができる。
【0115】
図4Aは、本発明の特定の実施形態に従って、既に上述したモバイルデバイスDVの構造を示す。この例では、モバイルデバイスDVは、スマートフォン、又はより一般的にはコンピューターのハードウェアアーキテクチャを有する。具体的には、モバイルデバイスDVは、プロセッサー2、書き換え可能な不揮発性メモリ4(例えば、フラッシュ)、RAMメモリ6、第1通信インターフェース8、第2通信インターフェース10、及びヒューマンマシンインターフェース12を備える。本開示の明瞭性を高めるために、本実施形態では、スマートフォンに通常含まれるいくつかの要素は意図的に省略されている。
【0116】
モバイルデバイスDVの書き換え可能な不揮発性メモリ4は、本発明の特定の実施形態による非一時的な記録媒体を構成する。このメモリは、本発明の特定の実施形態によるコンピュータープログラムPG1を含み、このコンピュータープログラムは、本発明の特定の実施形態による方法を実装する命令を備える。本例では、コンピュータープログラムPG1は、モバイルデバイスDVに実装されたデジタルウォレットアプリケーションDWAに対応する。
【0117】
書換え可能な不揮発性メモリ4は、図1を参照して上述したように、ホームトークンサービスプロバイダーのサーバーH-TSPによってプロビジョンされた第1データセットDT1を格納することができる。本例では、データDT1は、ホームトークンH-PANと、ホームトークンH-PANに関連付けられた識別子H-PANIDと、を含む。
【0118】
さらに、メモリ4は、後述するように、第2データセットDT2を格納することができる。
【0119】
メモリ4はまた、決済アプリケーションPA1を実装するためのコンピュータープログラムを格納することができる。
【0120】
第1インターフェース8は、セルラーネットワークを介して通信するためにモバイルデバイスDVによって使用される通信インターフェースである。本事例では、3G、4G、LTE等の任意の適切なモバイル通信規格を検討することができる。
【0121】
第2インターフェース10は、図1に示される端末T等の決済端末との非接触通信を実行するための非接触インターフェースである。このインターフェース10は、NFCインターフェース、ブルートゥースインターフェース等であり得る。モバイルデバイス10は、この第2インターフェース10を使用して、決済端末との決済取引を実行することができる。
【0122】
ヒューマンマシンインターフェースには、ユーザーURがモバイルデバイスDV、より具体的にはデジタルウォレットアプリケーションDWAに指令すること及びこれとやり取りすることを可能にする適切な手段(画面、キーボード等)を含んでいてもよい。
【0123】
コンピュータープログラムPG1によって操作されるプロセッサー2は、図4Bに示されるようにいくつかの機能モジュールを実装している。すなわち、プロセッサー2は、ローカリゼーションモジュールMD2、受信モジュールMD4、選択モジュールMD6、データ取得モジュールMD8、構成モジュールMD10及び実行モジュールMD12を実装している。
【0124】
送信モジュールMD2は、図3で既に説明したように、モバイルデバイスの現在位置を表す位置情報LOCを含む情報要求を送信するように構成されている。
【0125】
受信モジュールMD4は、図3で既に説明したように、情報要求に応じて、モバイルデバイスDVの現在位置で利用可能な少なくとも1つのローミング決済ネットワークR-NT(ホーム決済ネットワークH-NT以外)を識別するローミング情報RIを受信するように構成されている。
【0126】
選択モジュールMD6は、図3で既に説明したように、受信したローミング情報RIに基づいてローミング決済ネットワークR-NTを選択するように構成されている。
【0127】
データ取得モジュールMD8は、図6に関して以下で説明するように、第2データセットDT2を取得するように構成されている。第2データセットDT2は、モバイル決済カードC1に割り当てられたものであり、選択されたローミングネットワークR-NTで動作するものである。
【0128】
構成モジュールMD10は、図6に関して以下で説明するように、選択されたローミング決済ネットワークR-NTにおいてモバイル決済カードC1を使用できるように、第2データセットDT2でデジタルウォレットアプリケーションDWAを構成するように構成されている。
【0129】
実行モジュールMD12は、図7図10Bに関して以下で説明されるように、選択されたローミング決済ネットワークR-NTにおいてモバイル決済カードC1を使用して決済取引(又は他の適切な銀行取引)を実行するように構成されている。
【0130】
これらのモジュールMD2-D12は、本発明の非限定的な実施形態を構成するに過ぎない。
【0131】
図5Aは、本発明の特定の実施形態に従って、既に上記で説明されたサーバーTSOの構造を示す。この例では、サーバーTSOはコンピューターのハードウェアアーキテクチャを有している。具体的には、サーバーTSOは、プロセッサー20、書き換え可能な不揮発性メモリ22(例えば、フラッシュ)、RAMメモリ24、データベース26、及び通信インターフェース28を備える。本開示の明瞭性を高めるために、本実施形態では、サーバーに通常含まれるいくつかの要素は、意図的に省略されている。
【0132】
サーバーTSOの書き換え可能な不揮発性メモリ22は、本発明の特定の実施形態による非一時的な記録媒体を構成する。このメモリは、本発明の特定の実施形態によるコンピュータープログラムPG2を含み、このコンピュータープログラムは、本発明の特定の実施形態による方法を実装する命令を備える。
【0133】
データベース26は、特定の位置(セルラーネットワーク、地理的位置等)に関連付けられた少なくとも1つの選択可能なローミング決済ネットワークのリストを定義するローミング決済ネットワーク情報を含む。図3で前述したように、データベース26は、モバイルデバイスDVの現在位置に関連付けられた、3つのそれぞれのローミング決済ネットワークの識別子ID1、ID2及びID3を格納する。
【0134】
インターフェース28は、デジタルウォレットサーバーDWPと、又は変形形態では、セルラーネットワークを介して直接モバイルデバイスDVと、通信するためにサーバーTSOによって使用される通信インターフェースである。
【0135】
コンピュータープログラムPG2により操作されるプロセッサー20は、図5Bに示されるようにいくつかの機能モジュールを実装している。すなわち、プロセッサー20は、ローカリゼーションモジュールMD20、決定モジュールMD22、第1送信モジュールMD24、要求処理モジュールMD26、プロビジョニングモジュールMD28及び第2送信モジュールMD30を実装している。特定の例では、プロセッサー20は接続モジュールMD32をさらに実装している。
【0136】
ローカリゼーションモジュールMD20は、図3で既に説明したように、モバイルデバイスDVから、モバイルデバイスDVの現在位置を表す位置情報LOCを含む情報要求を受信するように構成されている。
【0137】
決定モジュールMD22は、図3で既に説明したように、位置情報に基づいて、モバイルデバイスDVによってアクセスされ得る少なくとも1つのローミング決済ネットワークを決定するように構成されている。
【0138】
第1送信モジュールMD24は、図3で既に説明したように、モバイルデバイスDVに、決定モジュールMD22によって決定された少なくとも1つのローミング決済ネットワークを識別するローミング情報RIを送信するように構成されている。
【0139】
要求処理モジュールMD26は、後でより詳細に説明するように、モバイルデバイスDVから、少なくとも1つのローミング決済ネットワークの中からモバイルデバイスDVによって選択されたローミング決済ネットワークR-NTのプロビジョニング要求RQ1を受信するように構成されている。
【0140】
プロビジョニングモジュールMD28は、後でより詳細に説明するように、第2データセットDT2、第2データセットDT2はモバイル決済カードC1に割り当てられたものであり選択されたローミング決済ネットワークR-NTで動作するものである、を取得するように構成されている。
【0141】
第2送信モジュールMD30は、選択されたローミング決済ネットワークR-NTにおいてモバイル決済カードC1を使用できるように、デジタルウォレットアプリケーションDWAを構成するために第2データセットDT2をモバイルデバイスDVに送信するよう構成されている。
【0142】
接続モジュールMD32は、図8の特定の例でより詳細に説明されるように、決済取引が処理されている間に、ホーム決済ネットワークH-NT及び選択されたローミング決済ネットワークR-NTを互いに接続するように構成されている。
【0143】
これらのモジュールMD20~MD32は、本発明の非限定的な実施形態を構成するに過ぎない。
【0144】
特定の実施形態では、本発明は、ソフトウェア及び/又はハードウェアコンポーネントを使用して実装することができる。この文脈において、「モジュール」という用語は、この文書では、1つのソフトウェアコンポーネントだけでなく、1つのハードウェアコンポーネント又は複数のソフトウェア及び/又はハードウェアコンポーネントを指す場合がある。
【0145】
図3に示す選択ステップS50が完了すると、デジタルウォレットアプリケーションDWAは、モバイルデバイスDVの現在の位置で使用されるローミング決済ネットワークR-NTを特定し終わっている。次に、本発明の特定の実施形態に従って、図6に表されるようにデータプロビジョニングが実行される。
【0146】
より詳細には、デジタルウォレットアプリケーションDWAは、モバイルデバイスDVに、以前にS50で選択されたローミング決済ネットワークR-NTに関するプロビジョニング要求RQ1を送信する(S60)ように指令する。本実施形態では、プロビジョニング要求RQ1は、モバイルデバイスDVによってデジタルウォレットサーバーDWPに送信され、デジタルウォレットサーバーDWPはそれをトークンサービスオペレーターのサーバーTSOに転送する(S62)。
【0147】
デジタルウォレットサーバーDWPを介してサーバーTSOに送信されるプロビジョニング要求RQ1は、S10(図1)でモバイルデバイスDVによってデータDT1の一部として以前に格納された識別子H-PANIDを含む。既に述べたように、この識別子H-PANIDを使用することにより、トークンH-PAN(機密データである)の拡散を回避できる。
【0148】
本例では、プロビジョニング要求RQ1は、選択されたローミング決済ネットワークR-NTの識別子ID1も含む。この識別子ID1に基づいて、サーバーTSOはローミング決済ネットワークが選択されていることを検出する。
【0149】
ステップS64において、サーバーTSOは、第1データセットDT1とは異なる第2データセットDT2を決定する。第2データセットDT2は、モバイル決済カードC1に割り当てられたものであり、選択されたローミング決済ネットワークR-NTで動作するものである。サーバーがデータDT2を取得する特定の方法をここで説明するが、他の実施形態も可能である。
【0150】
ステップS64aにおいて、サーバーTSOは、プロビジョニング要求RQ1から抽出された識別子H-PANIDをホームサービスプロバイダーのサーバーH-TSPに送信する。次に、サーバーH-TSPは、識別子H-PANIDに対応するホームトークンH-PANを決定する(S64b)。図1(ステップS5)で既に説明したように、サーバーH-TSPは、モバイル決済カードC1の組[H-PAN、H-PANID]を含む情報を取得してもよい。
【0151】
ステップS64cにおいて、サーバーH-TSPは、対応するホームトークンH-PANをサーバーTSOに返し、次いで、サーバーTSOはローミングトークンサービスプロバイダーのサーバーR-TSPにそれを転送する(S64d)。特定の例では、サーバーTSOは、選択されたローミング決済ネットワークR-NT、該ネットワークはプロビジョニング要求RQ1でそれだと識別されたものである、に基づいて、ホームトークンH-PANが送信されるサーバーR-TSPを決定する。サーバーTSOは、例えば、サーバーR-TSPをローミング決済ネットワークR-NTの識別子ID1に関連付けて定義するリストにアクセスしてもよい。
【0152】
ステップS64eにおいて、サーバーR-TSPは、受信したホームトークンH-PANに基づいて、デジタルウォレットアプリケーションDWAにプロビジョンされる第2データセットDT2を決定する。さらに、サーバーは、受信したホームトークンH-PANを第2データセットDT2に関連付けて格納する(S64e)。
【0153】
サーバーR-TSPは第2データセットDT2をサーバーTSOに返し(S64d)、サーバーTSOはそれをデジタルウォレットサーバーDWPに転送する(S62)。第2データセットDT2は、最終的にデジタルウォレットサーバーDWPによってモバイルデバイスDVに送信される(S68)。
【0154】
第1データセットDT1とは異なるこの第2データセットDT2は、モバイル決済カードに割り当てられたものであり、選択されたローミング決済ネットワークR-NTで動作するものである。この目的のために、データDT2はローミングトークンR-PANを含み、対応する識別子R-PANIDも含んでいてもよい。
【0155】
ローミングトークンR-PANは、任意の適切なデジタル形式(コード、文字列等)をとっていてもよいのであるが、決済カードのアカウント番号C-PANよりも機密性の低いデータである。ローミングトークンR-PANは、アカウント番号C-PANの代わりにデジタルウォレットアプリケーションDWAで使用できるため、より安全な決済システムが可能になる。
【0156】
ステップS70において、モバイルデバイスDVは、選択されたローミング決済ネットワークR-NTで決済取引を実行できるようにするために、受信した第2データセットDT2でデジタルウォレットアプリケーションDWAを構成する。ステップS70において、モバイルデバイスDVは、例えば、そのメモリ4(図4A)に第2データセットDT2を格納する。
【0157】
この構成S70の一部として、モバイルデバイスDVは、デジタルウォレットアプリケーションDWAのグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)の視覚的側面を、視覚パラメーターR-PRMで個人化することができ、視覚パラメーターR-PRMは、サーバーTSOによってプロビジョンされた第2データセットDT2も含んでもよい。その結果、デジタルウォレットアプリケーションDWAのGUIの視覚的な構成(カード画像、ロゴ及び/又は色等)を、使用されるローミング決済システムを反映するように調整できる。ユーザーURは、自身のデジタルウォレットアプリケーションDWAがローミング操作モードで構成されていることを簡単に理解できる。言い換えれば、視覚パラメーターR-PRMは、選択されたローミングバンキングデバイスでモバイル決済カードC1が使用されていることを示すためにデジタルウォレットアプリケーションDWAの視覚的外観を構成するためのものである。
【0158】
特定の例では、第2データセットDT2は、モバイル決済カードC1がローミング決済ネットワークR-NTで使用されるときにデジタルウォレットアプリケーションDWAと連携する(相互作用する)ために、モバイルデバイスDVにインストールされるローミング決済アプリケーション(API以外)を備えていてもよい。したがって、構成S70の一部として、モバイルデバイスDVは、ローミング決済ネットワークでのローミング中に決済取引の適切な処理を可能にするローミング決済アプリケーションをインストールしてもよい。
【0159】
この構成S70が完了すると、ユーザーURは、モバイルデバイスDV上で実行されるデジタルウォレットアプリケーションDWAを使用して、ローミング決済ネットワークR-NTにおける決済取引を完了することができる。この目的のために、図6に示すように、ユーザーURは、販売者の決済端末Tの近くにモバイルデバイスDVを提示し得る。モバイルデバイスDVは、モバイル決済を実行するために、任意の適切な態様で決済端末Tと連携し得る(S80)。具体的には、モバイルデバイスDVは、端末Tによって取引を認証できるように、第2データセットDT2、又は少なくともローミングトークンR-PANを送信する。前述のように、アカウント番号C-PAN等の機密データの送信はこのように回避できる。
【0160】
図11は、図6を参照して上述した特定の実施形態の変形形態を示している。図11の変形形態は、サーバーTSOがS64cでホームトークンH-PANを受信するとき、対応する第2データセットDT2を既に取得し格納しているという点で図6と異なる。トークンサービスプロバイダーは、例えば、事前にサーバーTSOに第2データセット(ローミングトークンR-PAN等)を含むデータセットを提供できる。次いで、この第2データセットDT2は、サーバーTSOのメモリに格納され、サーバーTSOにより、H-PANがサーバーH-TSPから受信されると(S64c)取得される。つまり、サーバーTSOとサーバーR-TSPは1つの同じサーバーを形成する(サーバーTSOはサーバーR-TSPの役割を果たす)。したがって、図6(S64d、S64f)に示すように、サーバーTSOがリモートサーバーR-TSPに問い合わせる必要はない。
【0161】
図7は、本発明の特定の実施形態に従って、データDT2を使用しての構成S70(図6)が完了した後に、ローミング決済ネットワークR-NTにおいてモバイル決済カードC1を使用してモバイルデバイスDVによって決済取引を実行する方法を示す。
【0162】
ステップS80では、図6に関して既に説明したように、モバイルデバイスDVは、ローミングトークンR-PANを決済端末Tに送信する。決済カードC1の有効期限等、第2データセットDT2に含まれる他の情報も端末Tに送信できる。
【0163】
モバイルデバイスDVと支払端末Tとの間の相互作用S80は、図1で説明した相互作用S12と同様の態様で進み得る。特定の例では、モバイルデバイスDVと支払端末Tは、決済取引を実行するために、EMV規格に従って互いに連携する。これは、モバイルデバイスDVと端末Tとの間の非接触通信を通じて、例えばNFCインターフェース等(ブルートゥース、QRコード等)を使用して行うことができる。
【0164】
この相互作用S80の間に、デジタルウォレットアプリケーションDWAは、決済モバイルカードC1の発行銀行によって展開される決済アプリケーションPA1と、又は別の支払アプリケーション(図示せず)と相互作用し得る。別の支払アプリケーションとは、いわゆるローミング決済アプリケーションであり、モバイルデバイスDVに実装され、ローミング決済ネットワークR-NTでの取引に使用される予定であるものである。
【0165】
次に、例えば販売者の販売地点に配置された決済端末Tは、取引データDR2を取得者(例えば、販売者の銀行)の銀行システムACに送信する(S82)。取引データDR2には、認証、有効化等のさらなる処理を許可するための決済取引を特徴付けるデータ(日付、取引金額等)が含まれる。特に、取引データDR2は、モバイルデバイスDVのデジタルウォレットアプリケーションDWAによって提供されるローミングトークンR-PANを含む。
【0166】
ステップS84において、取得者の銀行システムACは、ローミング決済ネットワークR-NTのルーティングサーバーR-SVに取引データDR2を送信する。このサーバーR-SVは、ローミングトークンサービスプロバイダー(図6で既に示している)のサーバーR-TSPにローミングトークンR-PANを転送する(S86)。この例では、取得者の銀行システムAC、サーバーR-SV、及びサーバーR-TSPはローミング決済ネットワークR-NTの一部である。
【0167】
第1トークン解除ステップS88において、サーバーR-TSPは、ローミングトークンR-PANに基づいて、ホームトークンH-PAN、ホームトークンH-PANはモバイル決済カードC1に割り当てられたものでありホーム決済ネットワークH-NT(ローミング決済ネットワークR-NTとは異なる)で動作するものである、を取得(又は決定)する。この目的のために、サーバーR-TSPは、ステップS64e(図6)でローミングトークンR-PANに関連付けて以前に格納された情報からホームトークンH-PANを取得し得る。
【0168】
サーバーR-TSPは、ホームトークンH-PANをサーバーR-SVに返し(S90)、サーバーR-SVは、ホーム決済ネットワークのサーバーH-SVにそれを取引要求の一部として転送する(S92)。本実施形態では、これは、ホーム決済ネットワークH-NTとローミング決済ネットワークR-NTがホスト間(又はサーバー間)接続を介して接続されているため可能である。このホスト間接続は、2つのサーバーR-SVとサーバーH-SVの間に直接接続があることを意味する。サーバーR-SVとサーバーH-SVの間には、通信を確保するための中間ネットワーク又はスイッチは配置されていない。
【0169】
サーバーH-SVは、ローミングトークンH-PANをホームトークンサービスプロバイダーのサーバーH-TSP(既に図6に示している)に転送する(S94)。
【0170】
第2トークン解除ステップS96では、サーバーH-TSPは、ホームトークンH-PANに基づいて、銀行発行者によって割り当てられたモバイル決済カードC1のPAN番号C-PANを取得(又は決定)する。この目的のために、サーバーH-TSPは、ステップS5(図1)でホームトークンH-PANに関連付けて以前に格納された情報からプライマリーアカウント番号C-PANを取得し得る。
【0171】
サーバーH-TSPは、アカウント番号C-PANをサーバーH-SVに返し(S98)、サーバーH-SVは、発行者の銀行システムISに、アカウント番号C-PANを取引要求の一部として、取引データDR2で先に受信され得る他の有用な情報(金額、日付等)と共に転送する(S100)。図2で既に述べたように、発行者ISは、例えば、モバイル決済カードC1の発行銀行であってもよい。
【0172】
次いで、発行者ISは、アカウント番号C-PAN、アカウント番号C-PANはモバイル決済カードC1に割り当てられたものでありホーム決済ネットワークH-NTで動作するものである、に基づいて決済取引を処理し得る。
【0173】
この例では、発行者の銀行システムIS、サーバーH-SV及びサーバーH-TSPは、ホーム決済ネットワークR-NTの一部である。
【0174】
サーバーH-TSPとサーバーR-TSPは、二段階のトークン解除、つまり第1トークン解除S88(R-PANのH-PANへの変換)及び第2トークン解除S96(H-PANのC-PANへの変換)を実行するように構成されたトークン管理システムS1を形成する。
【0175】
この二段階のトークン解除処理のおかげで、決済取引が安全に実行されることを保証しながら、異なる決済システム間で相互運用性を実現できる。
【0176】
図8は、本発明の別の実施形態に従って、データDT2を使用しての構成S70(図6)が完了した後に、ローミング決済ネットワークR-NTにおいてモバイル決済カードC1を使用してモバイルデバイスDVによって決済取引を実行する方法を示す。
【0177】
この事例では、ローミング決済ネットワークR-NTとホーム決済ネットワークH-NTの間でホスト間通信を実現できないものとしていることを除いて、取引処理は図7に示すように実質的に実行される。したがって、この実施形態は、既に述べたサーバーTSO(図5A及び5B)が、取引処理中にローミング決済ネットワークR-NTとホーム決済ネットワークH-NTとの間のルーティングインターフェースとして使用される点で、図7の例とは異なる。
【0178】
図8に示すように、ホームトークン決定S88が完了すると、サーバーR-TSPは、取引要求でホームトークンH-PANをサーバーTSOに送信する(S110)。サーバーTSOは、ホームトークンH-PANを含む取引要求をサーバーR-TSPからサーバーH-TSPにルーティングする(S112)。
【0179】
サーバーH-TSPは、ステップS96でプライマリーアカウント番号C-PANを決定し、取引処理は、図7の実施形態と同じ態様でさらに進む。
【0180】
サーバーH-TSP、サーバーTSO、及びサーバーR-TSPは、二段階のトークン解除、つまり第1トークン解除S88(R-PANのH-PANへの変換)及び第2トークン解除S96(H-PANのC-PANへの変換)を実行するように構成されたトークン管理システムS2を形成する。
【0181】
ホームトークンH-PANのサーバーH-TSPへのルーティングS112は、モバイルデバイスDVへのローミング情報RIの提供(ステップS42~S46、図3)を担当しないサーバーによって実行されてもよく、又は最初にデータセットDT2のプロビジョニング(ステップS62~S66、図6)を担当しないサーバーによって実行されてもよいことに留意されたい。変形形態では、図8に示すルーティングS112は、前述のサーバーTSO以外の適切なサーバーによって実行される。
【0182】
図9Aは、本発明の特定の実施形態に従って、既に上述したサーバーR-TSPの構造を示す。この例では、サーバーR-TSPはコンピューターのハードウェアアーキテクチャを有している。具体的には、サーバーR-TSPは、プロセッサー40、書き換え可能な不揮発性メモリ42(例えば、フラッシュ)、RAMメモリ44、及び通信インターフェース46を備える。本開示の明瞭性を高めるために、本実施形態では、サーバーに通常含まれるいくつかの要素は意図的に省略されている。
【0183】
サーバーR-TSPの書き換え可能な不揮発性メモリ42は、本発明の特定の実施形態による非一時的な記録媒体を構成する。このメモリは、本発明の特定の実施形態によるコンピュータープログラムPG3を含み、このコンピュータープログラムは、図7及び8を参照して既に説明した本発明の特定の実施形態による方法を実装する命令を備える。
【0184】
書き換え可能な不揮発性メモリ42は、(図6を参照して既に説明したように)モバイル決済カードC1のローミングトークンR-PANに関連付けられたホームトークンH-PANを含むデータR-DTも格納してもよい。
【0185】
通信インターフェース46は、サーバーR-TSPがローミング決済ネットワークR-NT内で、図8の特定の場合ではサーバーTSOと通信することを可能にする。
【0186】
コンピュータープログラムPG3によって操作されるプロセッサー40は、図9Bに示されるようないくつかの機能モジュール、すなわち、受信モジュールMD40、取得モジュールMD42、及び送信モジュールMD44を実装している。
【0187】
受信モジュールMD40は、図7及び8で既に説明したように、ローミングトークンR-PAN、ローミングトークンR-PANはモバイル決済カードC1に割り当てられたものでありローミング決済ネットワークR-NTで動作するものである、を受信するように構成されている。
【0188】
取得モジュールMD42は、ローミングトークンR-PANに基づいて、対応するホームトークンH-PAN、ホームトークンH-PANはモバイル決済カードC1に割り当てられたものでありローミング決済ネットワークR-NTとは異なるホーム決済ネットワークH-NTで動作するものである、を決定するように構成されている。この目的のために、取得モジュールMD42は、格納されたデータR-DTを参照する。
【0189】
送信モジュールMD44は、サーバーR-SV(図7)又はサーバーTSO(図8)にホームトークンH-PANを送信するように構成されている。
【0190】
図10Aは、本発明の特定の実施形態に従って、図7~8に関して既に上述したサーバーH-TSPの構造を示す。この例では、サーバーH-TSPはコンピューターのハードウェアアーキテクチャを有している。具体的には、サーバーH-TSPは、プロセッサー50、書き換え可能な不揮発性メモリ52(例えば、フラッシュ)、RAMメモリ54、及び通信インターフェース56を備える。本開示の明瞭性を高めるために、本実施形態では、サーバーに通常含まれるいくつかの要素は意図的に省略されている。
【0191】
サーバーH-TSPの書き換え可能な不揮発性メモリ52は、本発明の特定の実施形態による非一時的な記録媒体を構成する。このメモリは、本発明の特定の実施形態によるコンピュータープログラムPG4を含み、このコンピュータープログラムは、図7及び8を参照して既に説明した本発明の特定の実施形態による方法を実装する命令を備える。
【0192】
書き換え可能な不揮発性メモリ52は、(図6を参照して既に説明したように)モバイル決済カードC1のホームトークンH-PANに関連付けられたアカウント番号C-PANを含むデータH-DTを格納してもよい。
【0193】
通信インターフェース56により、サーバーH-TSPは、ホーム決済ネットワークR-NT内で、図8の特定の場合にはサーバーTSOと通信することができる。
【0194】
コンピュータープログラムPG4によって操作されるプロセッサー50は、図10Bに示されるようないくつかの機能モジュール、すなわち、受信モジュールMD50、取得モジュールMD52、及び送信モジュールMD54を実装している。
【0195】
受信モジュールMD50は、図7及び8に関して既に説明したように、ホームトークンH-PAN、ホームトークンH-PANはモバイル決済カードC1に割り当てられたものでありホーム決済ネットワークH-NTで動作するものである、を受信するように構成されている。
【0196】
取得モジュールMD52は、ホームトークンH-PANに基づいて、対応するPAN、該PANはいわゆるC-PANでありモバイル決済カードC1に割り当てられたものでありホーム決済ネットワークH-NTで動作するものである、を決定するように構成されている。この目的のために、取得モジュールMD52は、格納されたデータH-DTを参照する。
【0197】
送信モジュールMD54は、アカウント番号C-PANを銀行発行者ISのシステムに送信するように構成されている。
【0198】
本発明は、効率的なローミングモバイル決済ソリューションを提供する。具体的には、単一のグローバル決済ネットワークを使用する代わりに、本発明は、ユーザーが自身のモバイルデバイスを使用してアクセスできる複数の決済ネットワークでの、モバイル決済カードに関する相互運用を可能にする。
【0199】
前述のように、異なる地域で(例えば、国を変えて)ローミングしているユーザーは、偶然的に、そのユーザーのモバイル決済カードが動作するように構成されている国内決済ネットワークの範囲外にいる場合がある。また、ユーザーが国際決済ネットワークを使用することを望まない、又は使用できない場合がある。本発明は、所定のローミング決済ネットワークでローミング状態にある間にモバイル決済カードを使用できるようにデジタルウォレットアプリケーションを構成することを可能にする。本発明のおかげで、ローカル又は国内決済ネットワーク等のローミング決済システムで取引を行うことができるように、デジタルウォレットアプリケーションの構成を動的に調整可能である。
【0200】
本発明は、グローバルな(国際的な)決済ネットワークの必要性を取り除く。グローバル決済ネットワークを使用する代わりに、ユーザーが自身の国内(又は地域)決済ネットワークの外をローミングしている場合、モバイルバンク取引は別の国内(又は地域)決済ネットワークで良好に実行される。本発明は、国際的な決済ネットワークの使用はもはや必要とされないよう、異なる仕様を有する別個の決済システム間の適切な相互運用性を確保することができる。国内の銀行スキームは、他の銀行スキームとのローミング契約を通じて国際的に受け入れられ得る。例えば、標準的な共同バッジの双方向接続とホスト間の統合についての契約が締結され得る。
【0201】
本発明により、モバイルデバイスは、モバイルデバイスの位置に応じてデジタルウォレットアプリケーションを自動的に構成することができる。デジタルウォレットアプリケーションのパラメーター及び視覚的側面(ロゴ、外観等)は、ローミングの再構成をユーザーに通知するように適宜調整され得る。具体的には、必要に応じてカード画像、ロゴ、及び/又は色を調製することができる。
【0202】
スキームパートナー間で相互運用性が確保され、一方で、取引処理において適切なレベルの安全性を維持できる。取引中に二段階のトークン解除を実行することにより、本発明は、各決済システムがそのトークンを効率的な態様で使用できるようにする。
【0203】
本発明は、前述の問題及び欠点を克服し、これを世界的に標準化された決済システムを構想及び展開する負担をせずに行う。
【0204】
デジタルウォレットアプリケーションは、複数のモバイル決済カードを収容及び管理し、これらのカードのそれぞれが本発明によるローミング決済ネットワークで使用されることを可能にし得る。特定の決済アプリケーションは、デジタルウォレットにある各モバイル決済カード用に、モバイルデバイスに実装され得る。
【0205】
ここで、図7及び図8に示される実施形態の特定の変形形態が、図12図15を参照して説明される。
【0206】
より具体的には、図12は、ローミングトークンに基づいてホームトークンH-PANを取得することによって第1トークン解除を実行するのがサーバーTSOであるという点で、図8の実施形態と異なる変形形態を表す。これは、例えば図11に示す変形形態で説明したように、サーバーがホームトークンH-PANをローミングトークンR-PANに関連付けて以前に格納しているため可能である。したがって、図12に示す変形形態では、サーバーR-TSPは第1トークン解除ステップS88を実行せず、S110でローミングトークンR-PANをサーバーTSOに送信する。ローミングトークンR-PANを対応するホームトークンH-PANに変換し、S112でこのH-PANをサーバーH-TSPに送信するのは、サーバーTSOである。
【0207】
別の変形形態では、サーバーR-SVはS86でローミングトークンR-PANをサーバーTSOに直接送信する。したがって、この事例では、サーバーR-TSPがサーバーR-SVからサーバーTSOにローミングトークンR-PANを送信する必要はない。
【0208】
したがって、上述の実施形態から理解され得るように、二段階のトークン解除処理は、様々なサーバー又は他のエンティティで実行され得る。
【0209】
図13は、決済端末T(例えば、販売時点)がユーザーデバイスDVと双方向に通信する機能を持たないという点で、図8、9及び12の前の実施形態と異なる変形形態を表す。この変形形態では、ユーザーURと販売者が決済取引を開始したい場合、販売者は決済端末Tを構成して、例えば、QRコード(又はバーコード)等のグラフィックコードを画面に表示させる。ユーザーURは、自身のモバイルデバイスDVを決済端末に向けて配置し、モバイルデバイスDVは、モバイルデバイスDVのカメラ(図示せず)を使用してQRコードを取得又は読み取る(S150)(スキャン及び決済処理)。次に、モバイルデバイスDVは、QRコードに基づいて、前述の実施形態で前述したようにデータセットDT2を決定し、このデータセットDT2を販売者のサーバーM-SVに送信する(S154)。データセットDT2は、ローミングトークンR-PANと取引に関する情報(取引識別子、金額等)を備える。QRコードに基づいて、モバイルデバイスDVはまた、データセットDT2が送信されることになるサーバーM-SVのアドレスを決定し得る。
【0210】
並列して、決済端末は、例えば取引識別子と取引金額を備える取引データDT3も送信する(S152)。次に、販売者のサーバーM-SVは、モバイルデバイスDVから受信したデータセットDT2と決済端末Tから受信した取引データセットDT3が一致することを確認し、一致する場合、他の実施形態で説明されるようなさらなる処理のために、販売者のサーバーM-SVはデータセットDT2を取得者の銀行システムACに送信する(S156)。
【0211】
したがって、図13の実施形態から理解できるように、二段階のトークナイゼーション及び二段階のトークン解除に基づく本発明の概念にスキャン及び決済処理を適用することができる。
【0212】
図14は、3Dセキュア(3DS)認証処理が実行され、オンライン決済取引を実行したいユーザーURを認証するという点で、前述の実施形態とは異なる変形形態を表す。
【0213】
3Dセキュアは、オンライン決済取引用の追加のセキュリティレイヤーとして設計された周知のXMLベースのプロトコルである。
【0214】
図14の変形形態では、ユーザーURは、自身のデジタルウォレットアプリケーションDWAにアクセスするための自身の第1モバイルデバイスDVを持ち、販売者のウェブサイトWBでオンライン決済取引を行うことを望んでいることが想定されている。この目的のために、ユーザーは、販売者のWebサイトWBにアクセスするために第2デバイスDV2を使用する。第2デバイスDV2は、任意の適切なタイプ(PC、タブレット等)であってもよく、第1デバイスDV1と同じであってもよく、第1デバイスDV1と異なっていてもよい。
【0215】
決済取引を有効化する前に、ユーザーURを認証するために、IDSプロトコルに従って認証フェーズが最初に実行される。
【0216】
ステップS170において、ユーザーURは、自身のモバイルデバイスDVを、ローミング決済ネットワークR-NTにおいてローミング決済を実行するために(前述のように)ユーザーに以前に割り当てられたローミングトークンR-PANを表示するように構成する。次に、ユーザーURは、自身の第2デバイスDV2を使用して、カードデータを販売者のウェブサイトWBに入力する(S172)。このカードデータは、モバイル決済カードC1に割り当てられたものであり、ローミング決済ネットワークR-NTで動作するものである。このカードデータはローミングトークンR-PAN、モバイルカードC1の有効期限、及びモバイルカードC1のカード検証値CVVを含む。ステップS174では、第2デバイスDV2は、ローミングトークンR-PANを含むカードデータを、ウェブサイトWBを管理する販売者のサーバーM-SVに送信する。
【0217】
このサーバーM-SVは、ローミングトークンR-PANをディレクトリサーバーDSに送信し(S176)、次いでディレクトリサーバーDSはそれをトークンサービスプロバイダーのサーバーTSO2に送信する(S178)。サーバーTSO2はサーバーTSOと同じでも、別のサーバーでもよい。
【0218】
ステップS180において、サーバーTSO2は、ローミングトークンR-PANを、R-PANに基づいてホームトークンH-PANを取得するための第1トークン解除を実行するサーバーR-TSPに送信する。次に、サーバーR-TSPは、この第1トークン解除の結果得られたホームトークンH-PANをサーバーTSO2に送り返す(S182)。ステップS184において、サーバーTSO2は、ホームトークンH-PANに基づいてモバイル決済カードC1の対応するPAN番号C-PANを取得するために、第2トークン解除を実行するサーバーH-TSPにホームトークンH-PANを送信する。次に、サーバーH-TSPは、PAN番号C-PANをサーバーTSO2に送り返す(S186)。したがって、サーバーR-TSP及びサーバーH-TSPによって二段階のトークン解除が実行され、ローミングトークンR-PANに基づいてカードC1のPAN番号C-PANが取得される。
【0219】
ステップS188において、サーバーTSO2は、PAN番号C-PANを、サーバーACSと表記されるISアクセス制御(ACS)サーバーに転送する。PAN番号C-PANに基づいて、サーバーACSはユーザーURに関連付けられた連絡先情報を決定する。この例では、サーバーACSは、モバイル決済カードC1のC-PANに関連付けて格納されている電話番号を決定する。ステップS190において、サーバーACSは、3DSコードCS1(例えば一連の数字)をユーザーURに送信する。この例では、URは自身のモバイルデバイスDV(スマートフォン等)でコードCD1を受け取る。
【0220】
次に、ユーザーURは、自身の第2デバイスDV2を使用してウェブサイトWB上でCD2と表記される3DSコードを入力し得る(S191)。それが受信されると、第2デバイスDV2は、適切な通信手段によって3DSコードCD2をサーバーACSに送信する(S192)。しかしながら、サーバーACSに3SDコードCD2を提供する他の実施形態が可能である。別の実施形態によれば、ステップS190において、モバイルデバイスDV内のモバイルアプリケーションは、サーバーACSから認証要求を受信し得る。ユーザーURは、このモバイルアプリケーションを使用して、S190で受信した3DSコードを入力することにより、S191で自身を認証できる。次いで、モバイルデバイスDV内のモバイルアプリケーションは、S192で3DSコードをサーバーACSに転送して認証を確認することができる。
【0221】
次いで、サーバーACSは、デバイスDV2上でユーザーURによって入力された3DSコードCD2が、ステップS190においてサーバーACSによって以前に提供された元のコードCD1と一致するかどうかを確認する。一致する場合、サーバーACSは認証が成功したことを示す通知をサーバーTSO2に送信する(S193)。それに応答して、サーバーTSO2は認証確認暗号と呼ばれる暗号CRYを生成し、それをディレクトリサーバーDSに送信し(S194)、ディレクトリサーバーDSはそれをサーバーM-SVに転送する(S196)。ステップS198において、サーバーM-SVは、暗号CRYと、ローミングトークンR-PANを含む取引データとを、決済取引を進めるために取得者の銀行システムACに送信する。
【0222】
前の実施形態を参照して既に説明したように、次に、二段階のトークン解除が再度実行されて、決済取引が有効化される。発行者の銀行システムISは、ユーザーURが認証されたことを示す暗号CRYを受け取った場合にのみ、決済取引を承認する。
【0223】
したがって、この実施形態から理解できるように、3DS認証処理は、二段階のトークナイゼーション及び二段階のトークン解除に基づく本発明の概念に適用することができる。
【0224】
通常、オンライン取引において、3DSをサポートすることは、販売者にも決済カード発行者にも求められない。販売者及び/又は発行者が3DSをサポートしない場合、第2デバイスDV2は、ステップS174で、ローミングトークンR-PANを含む取引データを取得者の銀行システムACに直接送信して決済取引を進めることができる。したがって、ステップS176からS198(図14)は実行されない。
【0225】
図15は、販売者のアプリケーションAPP1がユーザーURのモバイルデバイスDVに事前にインストールされているという点で、前述の実施形態とは異なる変形形態を表している。ユーザーURが自身のモバイルデバイスDVを使用して販売者のウェブサイトでオンライン決済取引を行いたい場合、ユーザーURはモバイルデバイスDVにプリインストールされたアプリケーションAPP1を実行又は呼び出す(S220)ことができる。実際には、ユーザーURは、モバイルデバイスDVで実行されている販売者のアプリケーションAPP1で清算ボタンを始動することにより、決済を完了することができる。それに応じて、モバイルデバイスDVは、モバイル決済カードC1のカードデータ、すなわち、モバイル決済カードC1に以前に割り当てられたものでありローミング決済ネットワークR-NTで動作するものであるローミングトークンR-PANを含むカードデータを、清算プロバイダーサーバーCP-SVに送信する(S222)。
【0226】
ステップS224において、サーバーCP-SVは、ローミングトークンR-PANを含むカードデータを販売者のサーバーM-SVに送信する。次に、サーバーM-SVは、取引データをローミングトークンR-PANとともに取得者の銀行システムACに送信し(S226)、前述のように決済取引を進める。
【0227】
したがって、この実施形態から理解できるように、アプリ内オンライン取引処理は、二段階のトークナイゼーション及び二段階のトークン解除に基づく本発明の概念に適用することができる。
【0228】
図12で以前に説明した変形形態は、図13、14、および15に示す実施形態を含む、本文書に説明する任意の実施形態に適用してもよい。すなわち、サーバーTSOは、本書に記載されているすべての実施形態で、第1トークン解除ステップ自体を実行するように構成されていてもよい。
【0229】
図中のフローチャート及び/又はブロック図は、本開示の様々な実施形態によるデバイス、システム、方法及びコンピュータープログラム製品の可能な実装の構成、動作及び機能を示している。これに関して、フローチャート又はブロック図の各ブロックは、モジュール、セグメント、又は、特定の1つ又は複数の論理機能を実装するための1つ又は複数の実行可能な命令を備えるコードの一部、を表し得る。
【0230】
明示的に記載されていないが、複数の本実施形態は、それらの任意の組み合わせ又は部分的な組み合わせで使用されてもよい。
【0231】
本発明を特定の実施形態で説明してきたが、当業者の能力の範囲内で、発明の力を行使することなく多数の変更及び実施形態が可能であることは明らかである。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15